JP5617798B2 - 熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材 - Google Patents

熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材 Download PDF

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Description

本発明は、棒鋼または線材に関し、さらに詳しくは、熱間鍛造用の圧延棒鋼又は線材に関する。
歯車や、プーリ、シャフト等の鋼製部品は、自動車及び産業機械に利用される。鋼製部品はたとえば、以下の製造方法により製造される。機械構造用鋼からなる圧延棒鋼又は線材を準備する。機械構造用鋼はたとえば、JIS規格のSCr420や、SCM420、SNCM420等である。準備された圧延棒鋼又は線材を熱間鍛造して中間製品を粗成形する。必要に応じて中間製品に対して焼準処理を実施する。さらに、中間製品に対して切削加工を実施する。切削加工された中間製品に対して、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れを実施し、200℃以下の焼戻しを実施する。焼入れ及び焼戻しされた中間製品に対して必要に応じてショットピーニングを実施する。以上の製造工程により、疲労強度及び耐摩耗性を有する鋼製部品が製造される。
近年、たとえば自動車の燃費を向上するため、又は、エンジンの高出力化を実現するため、鋼製部品の軽量化、小型化が進んでいる。軽量化及び小型化により、鋼製部品にかかる負荷は増大している。そのため、鋼製部品は高い接触疲労強度を求められる。
ここで、「接触疲労」は、「面疲労」、「線疲労」及び「点疲労」を含む。しかしながら、実際には、鋼製部品において、線接触や点接触は発生しにくい。ほとんどの場合、面接触が発生する。したがって、鋼製部品は、接触疲労強度として、「面疲労強度」の向上を求められる。面疲労による破壊形態の代表例はピッチングである。面疲労強度が高いことは、ピッチング強度が高いことを意味する。
上述のとおり、鋼製部品は高い面疲労強度を求められる。一方で、鋼製部品の製造コストの低減も求められる。鋼製部品の被削性が高ければ、切削加工コストが低減する。
さらに、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪みが大きければ、熱処理後に鋼製部品を切削又は研磨しなければならず、歩留まりが低下する。したがって、熱処理歪みは小さい方が好ましい。
以上より、鋼製部品用の圧延棒鋼又は線材では、高い面疲労強度及び被削性が求められ、かつ、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪みの低減も求められる。
特開2009−249685号公報(特許文献1)、特開2009−249684号公報(特許文献2)、特開平9−296250号公報(特許文献3)、特開平11−131184号公報(特許文献4)及び特開2003−320439号公報(特許文献5)は、鋼の強度の向上及び熱処理歪みの低減に関する技術を提案する。
特許文献1は、耐ピッチング性に優れた肌焼鋼を提案する。特許文献1には、肌焼鋼のSi含有量を0.02〜1.0%とし、Cr含有量を1.80〜3.0%とすることなどが記載されている。
特許文献2は、特許文献1と同様に、耐ピッチング性に優れた肌焼鋼を提案する。特許文献2には、肌焼鋼のSi含有量を0.10%超〜1.0%とし、Cr含有量を1.25%超〜3.0%とすることなどが記載されている。
特許文献3は、耐ピッチング性に優れた歯車用鋼を提案する。特許文献3には、歯車用鋼のSi含有量を0.35%以下とし、Cr含有量を1.5〜2.5%とし、さらに、Si含有量とCr含有量の和を1.8〜2.8%とすることなどが記載されている。
特許文献4は、熱処理歪みの小さい肌焼鋼を提案する。特許文献4では、横断面において等軸晶の占める領域の面積率を低下する。これにより、熱処理歪みが低減すると記載されている。
特許文献5は、熱処理歪みの小さい浸炭用鋼の鋳片を提供する。特許文献5では、連続鋳造工程における鋳型内の平均溶鋼流速を所定範囲に制御する。これにより、鋼中のC濃度のばらつきが低減し、熱処理歪みのばらつきが小さくなると記載されている。
特開2009−249685号公報 特開2009−249684号公報 特開平9−296250号公報 特開平11−131184号公報 特開2003−320439号公報
上述のとおり、特許文献1〜特許文献3では、Si含有量及び/又はCr含有量を調整することにより、高い面疲労強度が得られると記載されている。しかしながら、これらの文献には、高い面疲労強度を有するとともに、高い被削性を有する鋼に関する開示及び示唆がない。さらに、これらの文献には熱処理歪みの低減に関する開示及び示唆がない。
また、特許文献4及び特許文献5のように、鋼中の等軸晶の割合又はC濃度のばらつきを低減する場合であっても、熱処理歪みが大きい場合がある。さらに、特許文献4及び特許文献5には、面疲労強度及び被削性の改善に関する開示及び示唆がない。
本発明の目的は、高い面疲労強度及び被削性を有し、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪みが小さい、熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材を提供することである。
本発明による熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.30〜0.60%、Mn:0.60〜1.00%、S:0.003〜0.050%、Cr:1.50〜2.00%、Mo:0.10%以下(0%を含む)、Al:0.010〜0.050%、N:0.0100〜0.0250%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のP、Ti及びO(酸素)はそれぞれ、P:0.025%以下、Ti:0.003%以下、O:0.0020%以下である。さらに、式(1)で定義されるfnが、1.60〜2.10である。
fn=Cr+2×Mo (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
さらに、半径Rを有する上記棒鋼又は線材の長手方向に対して垂直な断面において、断面の中心位置と、上記中心位置を中心とした半径1/3Rの仮想円上であって中心角45°おきに配置される複数の第1測定位置と、上記中心位置を中心とした半径2/3Rの仮想円上であって、中心角45°おきに配置される複数の第2測定位置とにおける式(2)で定義されるMsのうち、最大値と最小値との差分値が10以下である。
Ms=550−361×C−39×Mn−20×Cr−5×Mo (2)
ここで、式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上記熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材は、Feの一部に代えて、Nb:0.08%以下を含有してもよい。
本発明による熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材は、高い面疲労強度及び被削性を有し、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪みを低減できる。
図1は、式(2)で定義されるMsの測定位置を示す図である。 図2は、実施例で作製したローラピッチング小ローラ試験片の側面図である。 図3は、実施例における浸炭焼入れ条件を示す図である。 図4は、実施例におけるローラピッチング試験で使用した、大ローラの正面図である。 図5は、実施例における熱処理歪み試験で使用した試験片の斜視図である。
本発明者らは、熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材の曲げ疲労強度、面疲労強度、被削性及び熱処理歪みについて調査した。その結果、本発明者らは、以下の知見を得た。
(a)面疲労強度を高めるためには、Siを含有し、さらに、Cr含有量及び/又はMo含有量を高める必要がある。
(b)Mo含有量が高すぎれば、鋼に対して熱間鍛造を実施した後、又は、熱間鍛造された鋼に対して焼準処理を実施した後、鋼中にベイナイト組織が生成しやすくなる。ベイナイト組織が生成すれば、鋼の硬度が高まる。したがって、鋼の被削性が低下する。Moが含有されなくても、Cr含有量が高すぎれば、同様にベイナイト組織が生成しやすくなる。
(c)したがって、面疲労強度及び被削性を高めるためには、Cr含有量及びMo含有量を調整しなければならない。具体的には、式(1)で定義されるfnが1.60〜2.10の範囲になるよう、Cr含有量及びMo含有量を調整する。
fn=Cr+2×Mo (1)
ここで、式(1)中の元素記号は、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
(d)浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れを実施したときにマルテンサイト変態が不均一に発生すれば、相変態に伴う不均一な体積変化が起こって熱処理歪みが発生する。熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材の横断面内におけるマルテンサイト変態点(Ms点)のばらつきが小さければ、不均一なマルテンサイト変態の発生を抑制でき、熱処理歪みが小さくなる。
以上の知見に基づいて、本発明者らは、本発明を完成した。以下、本発明の実施の形態による熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材の詳細を説明する。
[化学組成]
本実施の形態による熱間鍛造用圧延棒鋼及び線材(以下、単に棒鋼又は線材という)は、以下の化学組成を有する。以下、元素に関する「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.10〜0.30%
炭素(C)は、鋼の強度を高める。具体的には、Cは、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れを実施した鋼製部品の芯部の強度を高める。しかしながら、Cが過剰に含有されれば、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪みが増大する。したがって、C含有量は、0.10〜0.30%である。好ましいC含有量の下限は、0.10%よりも高く、さらに好ましくは、0.13%以上である。好ましいC含有量の上限は、0.30%未満であり、さらに好ましくは、0.25%以下である。
Si:0.30〜0.60%
珪素(Si)は、鋼を脱酸する。Siは、焼戻し軟化抵抗を高め、鋼の面疲労強度を高める。しかしながら、Siが過剰に含有されれば、熱間鍛造後の強度が過剰に高くなる。その結果、熱間鍛造後の鋼の被削性が大きく低下する。したがって、Si含有量は、0.30〜0.60%である。好ましいSi含有量の下限は、0.30%よりも高く、さらに好ましくは、0.35%以上である。好ましいSi含有量の上限は、0.60%未満であり、さらに好ましくは、0.55%以下である。
Mn:0.60〜1.00%
マンガン(Mn)は、焼入れ性を高める。そのため、Mnは、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れにより、鋼製部品の芯部の強度を高める。しかしながら、Mnが過剰に含有されれば、熱間鍛造後の鋼の被削性が低下する。したがって、Mn含有量は、0.60〜1.00%である。好ましいMn含有量の下限は、0.60%よりも高く、さらに好ましくは、0.65%である。好ましいMn含有量の上限は、1.00%未満であり、さらに好ましくは、0.90%以下である。
S:0.003〜0.050%
硫黄(S)は、Mnと結合してMnSを形成し、鋼の被削性を高める。しかしながら、Sが過剰に含有されれば、粗大なMnSが生成しやすくなり、鋼の疲労強度(面疲労強度)が低下する。したがって、S含有量は、0.003〜0.050%である。好ましいS含有量の下限は、0.003%よりも高く、さらに好ましくは、0.010%以上である。好ましいS含有量の上限は、0.050%未満であり、さらに好ましくは、0.040%である。
Cr:1.50〜2.00%
クロム(Cr)は、鋼の焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高め、鋼の面疲労強度を高める。しかしながら、Crが過剰に含有されれば、熱間鍛造後又は焼準処理後において、鋼中にベイナイト組織が生成しやくなる。ベイナイト組織が生成すれば、鋼の被削性が低下する。したがって、Cr含有量は、1.50〜2.00%である。好ましいCr含有量の下限は、1.50%よりも高く、さらに好ましくは、1.60%以上である。好ましいCr含有量の上限は、2.00%未満であり、さらに好ましくは、1.95%以下である。
Mo:0.10%以下(0%を含む)
モリブデン(Mo)は、選択元素である。つまり、Moは含有されなくてもよい。Moは、鋼の焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高め、鋼の曲げ疲労強度及び面疲労強度を高める。Moが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Moが過剰に含有されれば、熱間鍛造後又は焼準処理後において、鋼中にベイナイト組織が生成しやくなり、鋼の被削性が低下する。したがって、Mo含有量は、0.10%以下である。好ましいMo含有量の下限は、0.02%以上である。好ましいMo含有量の上限は、0.10未満であり、さらに好ましくは、0.08%以下である。
Al:0.010〜0.050%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Alはさらに、Nと結合してAlNを形成し、浸炭加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。オーステナイト粒の粗大化が抑制されれば、鋼の曲げ疲労強度が高まる。しかしながら、Alが過剰に含有されれば、Alは粗大な酸化物を形成する。粗大な酸化物により、鋼の曲げ疲労強度が低下する。したがって、Al含有量は、0.010〜0.050%である。好ましいAl含有量の下限は、0.010%よりも高く、さらに好ましくは、0.020%以上であり、さらに好ましくは、0.025%以上である。好ましいAl含有量の上限は、0.050%未満であり、さらに好ましくは、0.040%以下である。
N:0.0100〜0.0250%
窒素(N)は、Al又はNbと結合して、AlN又はNbNを形成する。AlN及びNbNは、浸炭加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。しかしながら、Nが過剰に含有されれば、製鋼工程において鋼を安定して製造するのが困難になる。したがって、N含有量は、0.0100〜0.0250%である。好ましいN含有量の下限は、0.0100%よりも高く、さらに好ましくは、0.0130%以上である。好ましいN含有量の上限は、0.0250%未満であり、さらに好ましくは、0.0200%である。
本実施の形態による棒鋼又は線材の残部はFe及び不純物である。不純物は、鋼の原料として利用される鉱石やスクラップ、又は、製造工程の環境等から混入されるものを意味する。
上述の不純物中のP、Ti及びO(酸素)の含有量は、以下のとおり制限される。
P:0.025%以下
燐(P)は不純物である。Pは、粒界偏析して粒界を脆化する。したがって、P含有量は少ない方が好ましい。P含有量は0.025%以下である。好ましいP含有量は、0.025%未満であり、さらに好ましくは、0.020%以下である。
Ti:0.003%以下
チタン(Ti)は、不純物である。Tiは、Nと結合して、硬質で粗大なTiNを形成する。TiNは、鋼の疲労強度を低下する。したがって、Ti含有量は少ない方が好ましい。Ti含有量は、0.003%以下である。好ましいTi含有量は、0.003%未満であり、さらに好ましくは、0.002%以下である。
O:0.0020%以下
酸素(O)は、不純物である。Oは、Alと結合して、硬質な酸化物系介在物を形成し、鋼の曲げ疲労強度を低下する。したがって、O含有量は少ない方が好ましい。O含有量は、0.0020%以下である。好ましいO含有量は、0.0020%未満であり、さらに好ましくは、0.0010%以下である。
本実施の形態による棒鋼又は線材の化学組成においてさらに、式(1)で定義されるfnは、1.60〜2.10である。
fn=Cr+2×Mo (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上述のとおり、Cr及びMoは焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高め、面疲労強度を高める。Moは、Cr含有量の半分の含有量で、Crと同等の効果を発揮する。したがって、fnを式(1)のとおり定義する。fnが1.60未満の場合、優れた面疲労強度が得られない。一方、fnが2.10を超えれば、熱間鍛造後や焼準処理後にベイナイト組織が生成しやすくなり、鋼の被削性が低下する。fnが1.60〜2.10である場合、棒鋼又は線材は、高い曲げ疲労強度及び面疲労強度を有し、かつ、高い被削性を有する。好ましいfnの下限は、1.60よりも高く、さらに好ましくは、1.85以上である。好fnの好ましい上限は、2.10未満であり、さらに好ましくは2.05以下である。
本実施の形態による棒鋼又は線材はさらに、横断面において、式(2)で定義されるMsのばらつきが小さい。
Ms=550−361×C−39×Mn−20×Cr−5×Mo (2)
ここで、式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
具体的には、図1を参照して、棒鋼又は線材の軸方向と垂直な断面(横断面)CS中の測定位置C1〜C17におけるMsの最大値と最小値との差分値が10以下である。測定位置C1は、横断面CSの中心位置である。測定位置C2〜位置C9は、横断面CSの半径がRである場合、中心位置C1を中心とした半径1/3Rの仮想円上で中心角45°おきに配置される。測定位置C10〜位置C17は、中心位置C1を中心とした半径2/3Rの仮想円上で中心角45°おきに配置される。
式(2)で定義されるMsは、マルテンサイト変態点を指標する。本実施の形態による棒鋼又は線材では、各測定位置C1〜C17におけるMsの最大値と最小値との差分値が10以下と十分に小さい。この場合、各測定位置でのマルテンサイト変態点のばらつきが十分に小さく、マクロ偏析が十分に抑制される。そのため、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れ時の各測定位置C1〜C17での鋼の相変態に伴う体積変化のタイミングのばらつきは小さい。したがって、浸炭又は浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪みが低減する。
各位置C1〜C17でのMsは次の方法により求められる。棒鋼又は線材を軸方向と垂直に切断する。切断により形成された横断面CSの各測定位置C1〜C17を中心とした、直径(5/100)R〜(10/100)Rの円領域からサンプルを採取する。サンプルはたとえば、ドリル等を用いて採取された切粉である。採取されたサンプルに対して、化学組成分析を実施して、サンプル内のC含有量、Mn含有量、Cr含有量及びMo含有量を得る。得られた各元素の含有量を利用して、式(2)に基づいて、各測定位置C1〜C17でのMsを求める。
本実施の形態による棒鋼又は線材はさらに、Feの一部に代えて、Nbを含有してもよい。
Nb:0.080%以下
ニオブ(Nb)は、選択元素である。Nbは、炭素及び窒素と結合して、Nb炭化物、Nb窒化物、Nb炭窒化物を形成する。Nb炭化物、Nb窒化物及びNb炭窒化物は、浸炭加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。しかしながら、Nb含有量が過剰に含有されれば、Nb炭化物、Nb窒化物、Nb炭窒化物が粗大化し、オーステナイト粒の粗大化を抑制できなくなる。したがって、Nb含有量は、0.080%以下である。Nbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。好ましいNb含有量の下限は、0.010%以上である。好ましいNb含有量の上限は、0.080%未満であり、さらに好ましくは、0.070%以下である。
[製造方法]
本実施の形態による棒鋼又は線材の製造方法の一例を説明する。ただし、製造方法はこれに限定されない。
上述の化学組成を有する溶鋼を周知の方法で製造する。製造された溶鋼を利用して、連続鋳造法により鋳片を製造する。連続鋳造法では、モールド下方に長さ1.5m以上の垂直部を有する連続鋳造機を用い、モールド内で電磁攪拌を実施する。これにより、各測定位置C1〜C17でのMsのばらつきを抑えることができる。上記垂直部がなければ、各測定位置C1〜C17でのMsがばらつく。さらに、連続鋳造法において、凝固途中の鋳片に圧下を加えるのが好ましい。この場合、鋳片の中心偏析を低減できるため、各測定位置C1〜C17でのMsのばらつきが低減する。ただし、圧下がなくても、Msの最大値と最小値との差分値は10以内になる。
製造された鋳片を加熱炉に装入し、1250〜1300℃の加熱温度で10時間(600分)以上加熱する。ここでいう加熱温度は炉内の平均温度を意味し、加熱時間は在炉時間を意味する。加熱された鋳片を分塊圧延して鋼片を製造する。製造された鋼片を加熱炉に装入し、1250〜1300℃の加熱温度で2時間(120分)以上加熱する。加熱された鋼片を熱間圧延し、棒鋼又は線材を製造する。棒鋼又は線材の熱間圧延の仕上げ温度を900〜1100℃にする。ここでいう仕上げ温度は、複数のスタンドを備える圧延機の最終スタンドでの棒鋼又は線材の表面温度の平均値を意味する。
製造された棒鋼又は線材において、式(3)で定義される減面率RD(%)は、87.5%以上にする。これにより、Msのばらつきが低減される。また、鋼の組織が微細になるため、鋼の曲げ疲労強度及び面疲労強度が高まる。
RD=(1−(棒鋼又は線材の断面積/鋼片の断面積))×100 (3)
ここでいう断面積は、軸方向に対して垂直な断面積(横断面積)を意味する。
鋳片及び鋼片の加熱温度が低すぎれば、各測定位置C1〜C17でのMsがばらつき、Msの最大値と最小値との差分値が10を超える。鋳片及び鋼片の加熱時間が短すぎても、Msの最大値と最小値との差分値が10を超える。連続鋳造工程において、上述の連続鋳造方法で鋳片を製造し、鋳片及び鋼片の加熱温度及び加熱時間が上述のとおりであれば、製造された棒鋼及び線材の各測定位置C1〜C17でのMsの最大値と最小値との差分値が10以下になる。
以上の製造工程により製造される棒鋼及び線材は、以下の製造工程により、鋼製部品になる。初めに、準備された圧延棒鋼又は線材を熱間鍛造して中間製品を粗成形する。必要に応じて、中間製品に対して焼準処理を実施する。中間製品に対して切削加工を実施する。切削加工された中間製品に対して、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れを実施し、200℃以下の焼戻しを実施する。以上の製造工程により鋼製部品が製造される。
表1に示す化学成分を有する鋼A〜C(溶鋼)を70トン転炉で製造した。
Figure 0005617798
表1中の「fn」欄には、各鋼A〜Cのfnが記載される。fnは式(1)を利用して求めた。製造された溶鋼を利用して、連続鋳造法により、400mm×300mmの横断面を有する鋳片を製造した。製造された鋳片を600℃まで冷却した。全ての鋳片について、連続鋳造工程において、モールド内で電磁攪拌を実施した。さらに、凝固途中で鋳片に圧下を加えた。さらに、表2に示す連続鋳造の条件に基づいて、鋳片を製造した。次に、表2に示す条件で鋳片を加熱し、分塊圧延にて180mm×180mmの横断面を有する鋼片を製造した。製造された鋼片を常温(25℃)まで水冷した。次に、表2に示す条件で鋼片を加熱し、かつ、表2に示す仕上げ温度で熱間圧延を行い、直径70mmの棒鋼を製造した。
Figure 0005617798
表2中の「連続鋳造機における垂直部」欄において、「有り」は、モールド下方に長さ2.2mの垂直部を有する連続鋳造機を使用して鋳片を製造したことを意味する。「無し」は、垂直部を有さない連続鋳造機を使用して鋳片を製造したことを意味する。「鋳片」及び「鋼片」欄の「加熱温度」欄には、炉内平均温度(℃)が記載される。「加熱時間」欄には、在炉時間(分)が記載される。「圧延条件」欄の「仕上げ温度」欄には、最終圧延スタンドでの棒鋼の表面温度(℃)が記載される。「冷却条件」欄には、圧延後の冷却方法が記載される。
上述のとおり、鋼A〜C及び製造条件1〜7を用いて、表3に示す試験番号1〜9の棒鋼を製造した。各試験番号の式(3)で求められる減面率はいずれも、88.1%であった。
Figure 0005617798
表3中の「鋼」欄には、使用した鋼の種類(A〜C)が記載される。「製造条件」欄には、使用した製造条件の種類(表2中の条件番号1〜7)が記載される。
[Ms点測定試験]
試験番号1〜9の棒鋼の各測定位置C1〜C17のMsのばらつきを求めた。具体的には、各試験番号の直径70mmの棒鋼を軸方向に対して垂直に切断した。横断面CSの測定位置C1〜C17を特定した。各測定位置C1〜C17を中心とした直径5mmの円領域を、直径5mmのドリルで切削し、切粉を採取した。採取された切粉を利用して、各測定位置C1〜C17の化学組成を分析した。そして、式(2)に基づいて各測定位置C1〜C17のMsを求めた。測定位置C1〜C17のMsのうち、最大値と最小値を選択し、それらの差分値を求めた。各試験番号のMsの最大値、最小値及び差分値を表3に示す。
[面疲労強度試験片]
各試験番号の棒鋼を、1200℃で30分加熱した。次に、仕上げ温度を950℃以上として熱間鍛造し、直径35mmの丸棒を製造した。直径35mmの丸棒を機械加工して、図2に示すローラピッチング小ローラ試験片(図中の寸法の単位はmm)を作製した。
作成された各試験片を、ガス浸炭炉を用いて、図3に示す条件で浸炭焼入れを実施した。焼入れ後、170℃で1.5時間の焼戻しを実施した。ローラピッチング試験用小ローラ試験片に対して、熱処理ひずみを除く目的で、つかみ部の仕上げ加工を実施した。
[面疲労強度試験]
ローラピッチング試験により、面疲労強度を求めた。ローラピッチング試験は、上記の小ローラ試験片と図4に示す形状の大ローラ(図中の寸法の単位はmm)とを組合せ、表4に示す条件で行った。
Figure 0005617798
図4に示す大ローラは、JIS規格SCM420Hの規格を満たす鋼からなり、一般的な製造工程、つまり、焼準処理、試験片加工、ガス浸炭炉による共析浸炭、低温焼戻し及び研磨、の工程によって作製された。
各試験番号について、ローラピッチング試験における試験数は6とした。試験後、縦軸に面圧、横軸にピッチング発生までの繰り返し数をとったS−N線図を作成した。繰り返し数2.0×10回までピッチングが発生しなかったもののうち、最も高い面圧を面疲労強度とした。なお、小ローラ試験片の表面が損傷している箇所のうち、最大のものの面積が1mm以上になった場合をピッチング発生と定義した。
表3に、試験により得られた面疲労強度を示す。表3中の面疲労強度では、試験番号1の面疲労強度を基準値(100%)とした。そして、各試験番号の面疲労強度を、基準値に対する比(%)で示した。面疲労強度が125%以上であれば、優れた面疲労強度が得られたと判断した。
[切削試験]
切削試験を実施し、被削性を評価した。以下の方法により切削試験片を得た。各試験番号の直径70mmの棒鋼を1200℃の加熱温度で30分加熱した。加熱された棒鋼を950°以上の仕上げ温度で熱間鍛造し、直径50mmの丸棒を得た。この丸棒に対して焼準処理を実施した。具体的には、丸棒を950℃の加熱温度で1時間加熱し、その後放冷した。焼準処理された丸棒から機械加工によって、直径46mm、長さ400mmの切削試験片を得た。切削試験片を用いて、下記の条件で切削試験を行った。
切削試験(旋削)
チップ:母材材質 超硬P20種グレード、コーティング なし
条件:周速200m/分、送り0.30mm/rev、切り込み1.5mm、水溶性切削油を使用
測定項目:切削時間10分後の逃げ面の主切刃摩耗量
表3に、得られた主切刃摩耗量を示す。表3では、試験番号2(鋼B使用)を浸炭した試験片の逃げ面の主切刃摩耗量を基準値(100%)とした。そして、各試験番号の主切刃摩耗量を、基準値に対する比(%)で示した。主切刃摩耗量が85%以下であれば、優れた被削性が得られたと判断した。
[熱処理歪み試験]
熱処理歪み試験を実施し、熱処理歪みを評価した。以下の方法により図5に示すリング形状の試験片を作製した。初めに、各試験番号の直径70mmの棒鋼に対して焼準処理を実施した。具体的には、棒鋼を925℃の加熱温度で1時間加熱し、その後、常温(25℃)まで放冷した。焼準処理された棒鋼から、図5に示す試験片を作製した。
試験片に対して、図3に示す条件で浸炭焼入れを実施した。焼入れされた試験片に対して、加熱温度170℃、加熱時間1.5時間で焼戻しを実施した。焼戻し後の試験片の真円度を評価した。具体的には、試験片の端面の外径を中心軸まわりに60°おきに測定した。測定された6個の外径のうち、最大値と最小値とを選択し、それらの差分値を求めた。差分値を、歪み度と定義した。歪み度が小さいほど、真円度が高いと評価した。
表3に各試験番号の歪み度を示す。表3では、試験番号1(鋼A使用)を浸炭した試験片の歪み度を基準値(100%)とした。そして、各試験番号の歪み度を、基準値に対する比(%)で示した。歪み度が70%以下であれば、真円度が高く、優れた被削性が得られたと判断した。
[評価結果]
表3を参照して、試験番号5及び6の棒鋼の化学組成(鋼C)は本発明の範囲内であり、かつ、fnは、1.60〜2.10の範囲内であった。さらに、試験番号5及び6のMsの最大値と最小値との差分値は10以下であった。そのため、試験番号5及び6の面疲労強度は125%以上であった。さらに、主切刃摩耗量は85%以下であり、歪み度は70%以下であった。要するに、試験番号5及び6の棒鋼は、優れた面疲労強度、被削性を有し、熱処理歪みも抑えられた。
一方、試験番号1の棒鋼の化学組成は、JIS規格のSCr420Hに相当した。そのため、試験番号1のSi含有量は本発明のSi含有量の下限未満であり、Cr含有量も本発明のCr含有量の下限未満であった。そのため、試験番号1の面疲労強度は125%未満であった。さらに、Msの最大値及び最小値の差分値が10を超え、歪み度が70%を超えた。試験番号1では、鋳片及び鋼片の加熱時間が短く、かつ、鋼片の加熱温度が低かったためと推定される。
試験番号2の棒鋼の化学組成(鋼B)は、JIS規格のSCM822Hに相当した。そのため、試験番号2のSi含有量は本発明のSi含有量の下限未満であり、Mo含有量は本発明のMo含有量の上限を超え、Cr含有量は本発明のCr含有量の下限未満であった。したがって、試験番号2の面疲労強度は125%未満であり、主切刃摩耗量は85%を超えた。さらに、試験番号2のMsの最大値及び最小値の差分値が10を超え、歪み度が70%を超えた。試験番号2では、鋳片及び鋼片の加熱時間が短く、かつ、鋼片の加熱温度が低かったためと推定される。
試験番号3の化学組成(鋼C)は、本発明の化学組成を満たした。さらに、fnも1.60〜2.10の範囲内であった。しかしながら、Msの最大値及び最小値の差分値が10を超えた。そのため、歪み度が70%を超え、真円度が低かった。試験番号3では、鋳片及び鋼片の加熱時間が短く、かつ、鋼片の加熱温度が低かったためと推定される。
試験番号4の化学組成は本発明の化学組成を満たし、fnも本発明の範囲内であった。しかしながら、Msの最大値と最小値との差分値が10を超えた。そのため、歪み度が70%を超え、真円度が低かった。試験番号4では、鋼片の加熱温度が低かったためと推定される。
試験番号7の化学組成は本発明の化学組成を満たし、fnも本発明の範囲内であった。しかしながら、試験番号7のMsの最大値と最小値との差分値は10を超えた。その結果、試験番号7の歪み度は70%を超え、真円度が低かった。試験番号7では鋳片の加熱時間が短かったためと推定される。
試験番号8の化学組成は本発明の化学組成を満たし、fnも本発明の範囲内であった。しかしながら、試験番号8のMsの最大値と最小値との差分値は10を超えた。そのため、歪み度が70%を超え、真円度が低かった。鋳片及び鋼片の加熱温度が低かったためと推定される。
試験番号9の化学組成は本発明の化学組成を満たし、fnも本発明の範囲内であった。しかしながら、試験番号9のMs値の最大値と最小値との差分値は10を超えた。そのため、歪み度が70%を超え、真円度が低かった。連続鋳造工程において、垂直部を有さない連続鋳造機を用いて鋳片を製造したためと推定される。
表5に示すD〜Oの化学組成を有する溶鋼を、実施例1と同様に製造した。
Figure 0005617798
そして、実施例1と同様の製造条件で、表6に示す試験番号10〜37の棒鋼を製造した。棒鋼の直径は70mmであった。製造された棒鋼を利用して、実施例1と同様の試験を実施した。そして、Msの最大値と最小値との差分値、面疲労強度、主切刃摩耗量及び歪み度をそれぞれ求めた。面疲労強度、主切刃摩耗量及び歪み度の基準値は、実施例1と同じとした。
Figure 0005617798
求めた結果を表6に示す。表6を参照して、試験番号24、26、28、30、及び32の化学組成は本発明の化学組成の範囲内であり、fnが本発明の範囲内であった。さらに、これらの試験番号のMsの最大値と最小値との差分値は10以下であった。したがって、これらの試験番号の面疲労強度は125%以上であった。さらに、主切刃摩耗量は85%以下であり、歪み度は70%以下であった。
一方、試験番号10の化学組成(鋼D)のSi含有量は、本発明のSi含有量の下限未満であった。そのため、試験番号10の面疲労強度が低かった。試験番号11の化学組成(鋼D)のSi含有量は本発明のSi含有量の下限未満であった。さらに、試験番号11の鋳片及び鋼片の加熱時間は短く、鋼片の加熱温度も低かった。そのため、Msの最大値と最小値との差分値が10を超えた。その結果、試験番号11の面疲労強度は低く、かつ、歪み度が70%を超え、真円度が低かった。
試験番号12の化学組成(鋼E)のCr含有量は、本発明のCr含有量の上限を超えた。そのため、試験番号12の主切刃摩耗量は85%を超えた。試験番号13のCr含有量は、本発明のCr含有量の上限を超えた。そのため、試験番号13の主切刃摩耗量は85%を超えた。さらに、鋳片の加熱時間が短かった。そのため、Msの最大値と最小値との差分値が10を超えた。その結果、試験番号13の歪み度は70%を超え、真円度が低かった。
試験番号14の化学組成(鋼F)のCr含有量は、本発明のCr含有量の下限未満であった。さらに、fnが本発明の下限未満であった。そのため、試験番号14の面疲労強度は低かった。試験番号15のCr含有量は、本発明のCr含有量の下限未満であり、fnが本発明の下限未満であった。さらに、鋼片の加熱温度が低かった。そのため、Msの最大値と最小値との差分値が10を超えた。その結果、試験番号15の面疲労強度は低く、かつ、歪み度が70%を超えた。
試験番号16の化学組成(鋼G)のCr含有量は本発明のCr含有量の上限を超えた。さらに、fnが本発明の上限を超えた。その結果、試験番号16の主切刃摩耗量は85%を超えた。試験番号17のCr含有量は本発明の上限を超え、fnも本発明の上限を超えた。さらに、試験番号17では、鋳片及び鋼片の加熱温度が低かった。そのため、Msの最大値と最小値との差分値が10を超えた。その結果、試験番号17の主切刃摩耗量は85%を超え、かつ、歪み度が70%を超えた。
試験番号18の化学組成(鋼H)は本発明の範囲内であるものの、fnが本発明の上限を超えた。その結果、試験番号18の主切刃摩耗量は85%を超えた。試験番号19の化学組成(鋼H)は本発明の範囲内であるものの、fnが本発明の上限を超えた。さらに、試験番号19では、連続鋳造工程において、垂直部を有さない連続鋳造機を用いて鋳片を製造した。そのため、Msの最大値と最小値との差分値が10を超えた。その結果、試験番号19の主切摩耗量は85%を超え、かつ、歪み度は70%を超えた。
試験番号20では、化学組成(鋼I)のMo含有量が、本発明のMo含有量の上限を超えた。そのため、試験番号20の主切刃摩耗量は85%を超えた。試験番号21のMo含有量は、本発明のMo含有量の上限を超えた。さらに、試験番号21では、鋳片及び鋼片の加熱時間が短く、鋼片の加熱温度が低かった。そのため、Msの最大値と最小値との差分値が10を超えた。その結果、試験番号21の主切刃摩耗量は85%を超え、歪み度は70%を超えた。
試験番号22の化学組成(鋼J)は本発明の範囲内であるものの、fnが本発明の下限未満であった。その結果、試験番号22の面疲労強度は低かった。試験番号23の化学組成(鋼J)は本発明の範囲内であるものの、fnが本発明の下限未満であった。さらに、試験番号23では、連続鋳造工程において、垂直部を有さない連続鋳造機を用いて鋳片を製造したため、Msの最大値及び最小値の差分値が10を超えた。その結果、試験番号23の面疲労強度は低く、歪み度は70%を超えた。
試験番号25、27、29、31、33及び35の化学組成(鋼L〜鋼O)は、本発明の化学組成の範囲内であり、かつ、これらの試験番号のfnは本発明の範囲内であった。しかしながら、これらの試験番号のMsの最大値及び最小値の差分値は、10を超えた。したがって、これらの試験番号の歪み度は70%を超えた。これらの試験番号の製造条件(製造条件1、2、5〜7)が、適正な条件でなかったため、Msにばらつきが生じたと推定される。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
CS 横断面
C1〜C17 測定位置

Claims (2)

  1. 熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材であって、
    質量%で、
    C :0.10〜0.30%、
    Si:0.30〜0.60%、
    Mn:0.60〜1.00%、
    S :0.003〜0.050%、
    Cr:1.50〜2.00%、
    Mo:0.10%以下(0%を含む)、
    Al:0.010〜0.050%、
    N :0.0100〜0.0250%を含有し、
    残部はFe及び不純物からなり、
    前記不純物中のP、Ti及びO(酸素)はそれぞれ、
    P :0.025%以下、
    Ti:0.003%以下、
    O :0.0020%以下であり、
    式(1)で定義されるfnが、1.60〜2.10であり、
    半径Rを有する前記棒鋼又は線材の長手方向に対して垂直な断面において、前記断面の中心位置と、前記中心位置を中心とした半径1/3Rの仮想円上であって、中心角45°おきに配置される複数の第1測定位置と、前記中心位置を中心とした変形2/3Rの仮想円上であって、中心角45°おきに配置される複数の第2測定位置とにおける式(2)で定義されるMsのうち、最大値と最小値との差分値が10以下である、熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材。
    fn=Cr+2×Mo (1)
    Ms=550−361×C−39×Mn−20×Cr−5×Mo (2)
    ここで、式(1)及び式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
  2. 請求項1に記載の熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材であって、
    前記Feの一部に代えて、
    Nb:0.080%以下を含有する、熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材。
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