JP5617798B2 - 熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材 - Google Patents
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Description
fn=Cr+2×Mo (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
さらに、半径Rを有する上記棒鋼又は線材の長手方向に対して垂直な断面において、断面の中心位置と、上記中心位置を中心とした半径1/3Rの仮想円上であって中心角45°おきに配置される複数の第1測定位置と、上記中心位置を中心とした半径2/3Rの仮想円上であって、中心角45°おきに配置される複数の第2測定位置とにおける式(2)で定義されるMsのうち、最大値と最小値との差分値が10以下である。
Ms=550−361×C−39×Mn−20×Cr−5×Mo (2)
ここで、式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上記熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材は、Feの一部に代えて、Nb:0.08%以下を含有してもよい。
本発明による熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材は、高い面疲労強度及び被削性を有し、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪みを低減できる。
fn=Cr+2×Mo (1)
ここで、式(1)中の元素記号は、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施の形態による熱間鍛造用圧延棒鋼及び線材(以下、単に棒鋼又は線材という)は、以下の化学組成を有する。以下、元素に関する「%」は、「質量%」を意味する。
炭素(C)は、鋼の強度を高める。具体的には、Cは、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れを実施した鋼製部品の芯部の強度を高める。しかしながら、Cが過剰に含有されれば、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪みが増大する。したがって、C含有量は、0.10〜0.30%である。好ましいC含有量の下限は、0.10%よりも高く、さらに好ましくは、0.13%以上である。好ましいC含有量の上限は、0.30%未満であり、さらに好ましくは、0.25%以下である。
珪素(Si)は、鋼を脱酸する。Siは、焼戻し軟化抵抗を高め、鋼の面疲労強度を高める。しかしながら、Siが過剰に含有されれば、熱間鍛造後の強度が過剰に高くなる。その結果、熱間鍛造後の鋼の被削性が大きく低下する。したがって、Si含有量は、0.30〜0.60%である。好ましいSi含有量の下限は、0.30%よりも高く、さらに好ましくは、0.35%以上である。好ましいSi含有量の上限は、0.60%未満であり、さらに好ましくは、0.55%以下である。
マンガン(Mn)は、焼入れ性を高める。そのため、Mnは、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れにより、鋼製部品の芯部の強度を高める。しかしながら、Mnが過剰に含有されれば、熱間鍛造後の鋼の被削性が低下する。したがって、Mn含有量は、0.60〜1.00%である。好ましいMn含有量の下限は、0.60%よりも高く、さらに好ましくは、0.65%である。好ましいMn含有量の上限は、1.00%未満であり、さらに好ましくは、0.90%以下である。
硫黄(S)は、Mnと結合してMnSを形成し、鋼の被削性を高める。しかしながら、Sが過剰に含有されれば、粗大なMnSが生成しやすくなり、鋼の疲労強度(面疲労強度)が低下する。したがって、S含有量は、0.003〜0.050%である。好ましいS含有量の下限は、0.003%よりも高く、さらに好ましくは、0.010%以上である。好ましいS含有量の上限は、0.050%未満であり、さらに好ましくは、0.040%である。
クロム(Cr)は、鋼の焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高め、鋼の面疲労強度を高める。しかしながら、Crが過剰に含有されれば、熱間鍛造後又は焼準処理後において、鋼中にベイナイト組織が生成しやくなる。ベイナイト組織が生成すれば、鋼の被削性が低下する。したがって、Cr含有量は、1.50〜2.00%である。好ましいCr含有量の下限は、1.50%よりも高く、さらに好ましくは、1.60%以上である。好ましいCr含有量の上限は、2.00%未満であり、さらに好ましくは、1.95%以下である。
モリブデン(Mo)は、選択元素である。つまり、Moは含有されなくてもよい。Moは、鋼の焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高め、鋼の曲げ疲労強度及び面疲労強度を高める。Moが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Moが過剰に含有されれば、熱間鍛造後又は焼準処理後において、鋼中にベイナイト組織が生成しやくなり、鋼の被削性が低下する。したがって、Mo含有量は、0.10%以下である。好ましいMo含有量の下限は、0.02%以上である。好ましいMo含有量の上限は、0.10未満であり、さらに好ましくは、0.08%以下である。
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Alはさらに、Nと結合してAlNを形成し、浸炭加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。オーステナイト粒の粗大化が抑制されれば、鋼の曲げ疲労強度が高まる。しかしながら、Alが過剰に含有されれば、Alは粗大な酸化物を形成する。粗大な酸化物により、鋼の曲げ疲労強度が低下する。したがって、Al含有量は、0.010〜0.050%である。好ましいAl含有量の下限は、0.010%よりも高く、さらに好ましくは、0.020%以上であり、さらに好ましくは、0.025%以上である。好ましいAl含有量の上限は、0.050%未満であり、さらに好ましくは、0.040%以下である。
窒素(N)は、Al又はNbと結合して、AlN又はNbNを形成する。AlN及びNbNは、浸炭加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。しかしながら、Nが過剰に含有されれば、製鋼工程において鋼を安定して製造するのが困難になる。したがって、N含有量は、0.0100〜0.0250%である。好ましいN含有量の下限は、0.0100%よりも高く、さらに好ましくは、0.0130%以上である。好ましいN含有量の上限は、0.0250%未満であり、さらに好ましくは、0.0200%である。
燐(P)は不純物である。Pは、粒界偏析して粒界を脆化する。したがって、P含有量は少ない方が好ましい。P含有量は0.025%以下である。好ましいP含有量は、0.025%未満であり、さらに好ましくは、0.020%以下である。
チタン(Ti)は、不純物である。Tiは、Nと結合して、硬質で粗大なTiNを形成する。TiNは、鋼の疲労強度を低下する。したがって、Ti含有量は少ない方が好ましい。Ti含有量は、0.003%以下である。好ましいTi含有量は、0.003%未満であり、さらに好ましくは、0.002%以下である。
酸素(O)は、不純物である。Oは、Alと結合して、硬質な酸化物系介在物を形成し、鋼の曲げ疲労強度を低下する。したがって、O含有量は少ない方が好ましい。O含有量は、0.0020%以下である。好ましいO含有量は、0.0020%未満であり、さらに好ましくは、0.0010%以下である。
fn=Cr+2×Mo (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
Ms=550−361×C−39×Mn−20×Cr−5×Mo (2)
ここで、式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
ニオブ(Nb)は、選択元素である。Nbは、炭素及び窒素と結合して、Nb炭化物、Nb窒化物、Nb炭窒化物を形成する。Nb炭化物、Nb窒化物及びNb炭窒化物は、浸炭加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。しかしながら、Nb含有量が過剰に含有されれば、Nb炭化物、Nb窒化物、Nb炭窒化物が粗大化し、オーステナイト粒の粗大化を抑制できなくなる。したがって、Nb含有量は、0.080%以下である。Nbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。好ましいNb含有量の下限は、0.010%以上である。好ましいNb含有量の上限は、0.080%未満であり、さらに好ましくは、0.070%以下である。
本実施の形態による棒鋼又は線材の製造方法の一例を説明する。ただし、製造方法はこれに限定されない。
製造された棒鋼又は線材において、式(3)で定義される減面率RD(%)は、87.5%以上にする。これにより、Msのばらつきが低減される。また、鋼の組織が微細になるため、鋼の曲げ疲労強度及び面疲労強度が高まる。
RD=(1−(棒鋼又は線材の断面積/鋼片の断面積))×100 (3)
ここでいう断面積は、軸方向に対して垂直な断面積(横断面積)を意味する。
試験番号1〜9の棒鋼の各測定位置C1〜C17のMsのばらつきを求めた。具体的には、各試験番号の直径70mmの棒鋼を軸方向に対して垂直に切断した。横断面CSの測定位置C1〜C17を特定した。各測定位置C1〜C17を中心とした直径5mmの円領域を、直径5mmのドリルで切削し、切粉を採取した。採取された切粉を利用して、各測定位置C1〜C17の化学組成を分析した。そして、式(2)に基づいて各測定位置C1〜C17のMsを求めた。測定位置C1〜C17のMsのうち、最大値と最小値を選択し、それらの差分値を求めた。各試験番号のMsの最大値、最小値及び差分値を表3に示す。
各試験番号の棒鋼を、1200℃で30分加熱した。次に、仕上げ温度を950℃以上として熱間鍛造し、直径35mmの丸棒を製造した。直径35mmの丸棒を機械加工して、図2に示すローラピッチング小ローラ試験片(図中の寸法の単位はmm)を作製した。
ローラピッチング試験により、面疲労強度を求めた。ローラピッチング試験は、上記の小ローラ試験片と図4に示す形状の大ローラ(図中の寸法の単位はmm)とを組合せ、表4に示す条件で行った。
切削試験を実施し、被削性を評価した。以下の方法により切削試験片を得た。各試験番号の直径70mmの棒鋼を1200℃の加熱温度で30分加熱した。加熱された棒鋼を950°以上の仕上げ温度で熱間鍛造し、直径50mmの丸棒を得た。この丸棒に対して焼準処理を実施した。具体的には、丸棒を950℃の加熱温度で1時間加熱し、その後放冷した。焼準処理された丸棒から機械加工によって、直径46mm、長さ400mmの切削試験片を得た。切削試験片を用いて、下記の条件で切削試験を行った。
チップ:母材材質 超硬P20種グレード、コーティング なし
条件:周速200m/分、送り0.30mm/rev、切り込み1.5mm、水溶性切削油を使用
測定項目:切削時間10分後の逃げ面の主切刃摩耗量
熱処理歪み試験を実施し、熱処理歪みを評価した。以下の方法により図5に示すリング形状の試験片を作製した。初めに、各試験番号の直径70mmの棒鋼に対して焼準処理を実施した。具体的には、棒鋼を925℃の加熱温度で1時間加熱し、その後、常温(25℃)まで放冷した。焼準処理された棒鋼から、図5に示す試験片を作製した。
表3を参照して、試験番号5及び6の棒鋼の化学組成(鋼C)は本発明の範囲内であり、かつ、fnは、1.60〜2.10の範囲内であった。さらに、試験番号5及び6のMsの最大値と最小値との差分値は10以下であった。そのため、試験番号5及び6の面疲労強度は125%以上であった。さらに、主切刃摩耗量は85%以下であり、歪み度は70%以下であった。要するに、試験番号5及び6の棒鋼は、優れた面疲労強度、被削性を有し、熱処理歪みも抑えられた。
C1〜C17 測定位置
Claims (2)
- 熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材であって、
質量%で、
C :0.10〜0.30%、
Si:0.30〜0.60%、
Mn:0.60〜1.00%、
S :0.003〜0.050%、
Cr:1.50〜2.00%、
Mo:0.10%以下(0%を含む)、
Al:0.010〜0.050%、
N :0.0100〜0.0250%を含有し、
残部はFe及び不純物からなり、
前記不純物中のP、Ti及びO(酸素)はそれぞれ、
P :0.025%以下、
Ti:0.003%以下、
O :0.0020%以下であり、
式(1)で定義されるfnが、1.60〜2.10であり、
半径Rを有する前記棒鋼又は線材の長手方向に対して垂直な断面において、前記断面の中心位置と、前記中心位置を中心とした半径1/3Rの仮想円上であって、中心角45°おきに配置される複数の第1測定位置と、前記中心位置を中心とした変形2/3Rの仮想円上であって、中心角45°おきに配置される複数の第2測定位置とにおける式(2)で定義されるMsのうち、最大値と最小値との差分値が10以下である、熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材。
fn=Cr+2×Mo (1)
Ms=550−361×C−39×Mn−20×Cr−5×Mo (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。 - 請求項1に記載の熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材であって、
前記Feの一部に代えて、
Nb:0.080%以下を含有する、熱間鍛造用圧延棒鋼又は線材。
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