JP3543557B2 - 浸炭歯車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、浸炭歯車に関し、より詳しくは疲労による剥離に対する抵抗性と曲げ疲労強度に優れた浸炭歯車に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車や産業機械に使用される動力伝達用の歯車には、歯面に繰り返しの高い応力が作用する。このため、歯車の互いに噛み合う歯の接触部となる歯面においては疲労による剥離(スポーリングやピッチング)に対する寿命の長いことが、又、非接触部となる歯元においては曲げ疲労に対する寿命の長いことが要求される。ここで、繰り返しの面圧が負荷されることによって歯面が剥離する疲労現象のうち、剥離が比較的大きなものは「スポーリング」、又、剥離が比較的小さいものは「ピッチング」と呼ばれることもある。この歯面の剥離(以下、単に「剥離」ともいう)は、歯車回転時の騒音の原因や、歯の部分欠損の原因となる。
【0003】
近年、地球環境問題に端を発して、エンジンの出力向上や構造部品の小型化、軽量化が求められるようになってきた。このため、歯車への負荷はますます大きくなり、前記の「剥離」や「曲げ疲労」に対する対策が重要になっている。
【0004】
歯車は、従来、JIS規格鋼のSCr420、SCM420やSNCM420などを母材(素材鋼)として所望形状に加工した後、これに浸炭処理を施して製造されてきた。しかし、前記のJIS規格鋼を母材とした場合には、上記の剥離や曲げ疲労に対しては充分な寿命が得られない。そこで、上記の疲労に対する抵抗性を高めるために、ガス浸炭処理を前提とした種々の鋼が提案されている。
【0005】
例えば、特開昭60−243252号、特開昭62−63653号の各公報には、SiやMn、Crの含有量を制限し、NiやMoを積極的に添加した鋼が開示されている。しかしながら、上記の各公報に提案された鋼を母材として用いても、前記の疲労に対する抵抗性、すなわち歯面の剥離及び非接触部である歯元の曲げ疲労に対する抵抗性を同時に高めることは難しかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みなされたもので、疲労による剥離に対する抵抗性と曲げ疲労に対する抵抗性(曲げ疲労強度)とに優れた浸炭歯車を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記に示す浸炭歯車にある。
すなわち、「母材が、重量%で、C:0.1〜0.3%、Mn:0.1〜1.2%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.15%を超えて0.70%以下、B:0.001〜0.005%、Al:0.01〜0.1%、Nb:0〜0.05%、Ti:0〜0.05%、N:0.0023〜0.015%、Si:0.4%以下、Ni:0.5%以下、Cu:0.4%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、残部Fe及び不可避不純物の化学組成の鋼であって、浸炭硬化層の表面C量が重量%で0.6〜1.1%で、且つその浸炭硬化層の表面から深さ0.5mmまでの領域におけるトルースタイトの面積分率が歯面部では5%以下で、歯元部では5%以上であることを特徴とする浸炭歯車」である。
【0008】
すなわち、「母材が、重量%で、C:0.1〜0.3%、Mn:0.1〜1.2%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.15%を超えて0.70%以下、B:0.001〜0.005%、Al:0.01〜0.1%、Nb:0〜0.05%、Ti:0〜0.05%、N:0〜0.015%、Si:0.4%以下、Ni:0.5%以下、Cu:0.4%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、残部Fe及び不可避不純物の化学組成の鋼であって、浸炭硬化層の表面C量が重量%で0.6〜1.1%で、且つその浸炭硬化層の表面から深さ0.5mmまでの領域におけるトルースタイトの面積分率が歯面部では5%以下で、歯元部では5%以上であることを特徴とする浸炭歯車」である。
【0009】
ここで、「表面C量」とは「表面から0.1mmまでの領域における基地のC濃度(重量%)のこと」をいい、「トルースタイトの面積分率」は、「表面から深さ0.5mmまでの領域における平均面積分率」のことを指す。
【0010】
歯車の「歯面」とは歯車の噛み合わせで互いの歯同士が接触する部分のことをいう。又、「歯元」とは、互いの歯が接触しない部分のことをいい、歯車の歯底を含む部分のことをいう。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前記した目的を達成するため、浸炭歯車の母材となる歯車用鋼の化学組成及び浸炭後の組織、並びに浸炭歯車の破壊の状態などについて研究を行った結果、下記の知見を得た。
【0012】
▲1▼Bは鋼の焼入れ性を高める元素として知られているが、浸炭層のようにC含有量が高い場合には、焼入れ性向上効果は殆ど生じない。したがって、B添加鋼を浸炭焼入れすれば母材(素材鋼)の硬度だけを高めることができる。
【0013】
▲2▼C、Mn、Cr及びMo含有量を調整して焼入れ性を制御した鋼に適正量のBを添加して浸炭焼入れすると、浸炭硬化層にマルテンサイトと残留オ−ステナイトに加えてトルースタイトを生成させることができる。
【0014】
なお、ここでいう「トルースタイト」とは、通常のガス浸炭を行った場合に鋼材表面部に見られる「不完全焼入れ層」とは異なったものである。すなわち、所謂「不完全焼入れ層」は、浸炭焼入れ時に鋼材表面部のCr、MnやSiなどの合金元素が酸化され、その周辺部で前記の合金元素(Cr、MnやSiなど)が欠乏し、焼入れ性が不足することが原因で生じた組織である。この組織は鋼材の表面に対して層状、あるいは粒界の酸化物に沿った形状で現出する。一方、上記の「トルースタイト」は、マルテンサイトと残留オ−ステナイトの中に粒状に観察されるもので、前記の所謂「不完全焼入れ層」とは明らかに形態が異なった組織である。この両者は、500倍程度の倍率で光学顕微鏡観察すれば容易に識別できる。
【0015】
▲3▼浸炭硬化層にトルースタイトが生成すると、曲げ疲労に対する抵抗性(曲げ疲労強度)は大きくなる。しかし、トルースタイトの面積分率が大きくなると剥離に対する抵抗性が劣化する。
【0016】
▲4▼上記の▲3▼から、歯車の歯面における剥離の発生と、歯元における曲げ疲労発生の問題を同時に解決するには、浸炭硬化層の組織に関して、歯車歯面の組織は主としてマルテンサイトと残留オ−ステナイトからなるものとし、歯元組織はマルテンサイトと残留オ−ステナイト及び曲げ疲労特性に優れたトルースタイトとの混合組織とすれば良い。
【0017】
なお、既に述べたように、歯車の「歯面」とは歯車の噛み合わせで互いの歯同士が接触する部分のことをいう。又、「歯元」とは、互いの歯が接触しない部分のことをいい、歯車の歯底を含む部分のことである。
【0018】
▲5▼剥離の起点は歯車の歯面の表面に生ずる。したがって、剥離に対する抵抗性を高めるには浸炭歯車の歯面部浸炭硬化層の組織を制御すれば良い。この場合、特に表面から深さ0.5mmまでの領域における組織を制御することが、剥離の進展を抑制するのに極めて効果的である。
【0019】
▲6▼歯元の曲げ疲労強度を高めるには浸炭焼入れ後の母材の強度を高めるとともに、浸炭歯車の歯元部浸炭硬化層の組織、なかでも表面から深さ0.5mmまでの領域における組織を制御すれば良い。
【0020】
▲7▼浸炭処理した歯車における浸炭硬化層の表面C量は、曲げ疲労強度と剥離に対する抵抗性に影響を及ぼす。すなわち、浸炭硬化層の表面C量が重量%で0.6%を下回ると、耐剥離性が劣化する。一方、重量%で1.1%を超えると、曲げ疲労強度が低下してしまう。
【0021】
なお、「表面C量」とは、既に述べたように「表面から0.1mmまでの領域における基地のC濃度(重量%)のこと」を指す。「表面C量が0.6%を下回る」ということは、「前記領域でのC濃度分布が一部でも0.6%を下回る」ことをいう。同様に、「表面C量が1.1%を超える」ということは、「前記領域でのC濃度分布が一部でも1.1%を超える」ことをいう。
【0022】
表面C量(表面C濃度分布)は、例えば波長分散型EPMAなどの装置を用いて検量線により測定すれば良い。
【0023】
極表面においては特性X線の発生領域の問題から、試料のマウントなどが影響して正確な分析を行い難い場合があるが、このような時には最も表面に近くてマウントなどの影響が無い点から外挿して表面C量を読み取れば良い。
【0024】
本発明は上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0025】
以下に本発明の各要件について詳しく説明する。なお、成分含有量の「%」は「重量%」を意味する。
【0026】
(A)母材(素材鋼)の化学組成
C:0.1〜0.3%
Cは、浸炭焼入れ後の母材(素材鋼)の強度を上昇させて、歯車の曲げ強度や疲労強度を向上させる作用を有する。しかし、C含有量が0.1%未満では、母材強度が低下して歯車における曲げ強度や疲労強度が大きく低下してしまう。一方、0.3%を超えると、歯車の製造工程である切削加工時に切削性が劣化して工具寿命を縮めてしまう。したがって、Cの含有量を0.1〜0.3%とした。なお、C含有量は0.15〜0.25%とすることが好ましい。
【0027】
Mn:0.1〜1.2%
Mnは、鋼の焼入れ性を高める元素で、浸炭焼入れ後の歯車の浸炭硬化層及び母材を硬化させる作用がある。しかし、その含有量が0.1%未満では上記の作用が期待できない。一方、1.2%を超えて含有させると、焼入れ性が大きくなりすぎるので歯元のトル−スタイト生成が困難となり、トルースタイトを生成させて歯元の曲げ疲労強度を高めたいとする本発明の目的が達成できない。したがって、Mnの含有量を0.1〜1.2%とした。なお、Mnの含有量は0.3〜1.1%とすることが望ましい。
【0028】
Cr:0.1〜1.5%
Crも鋼の焼入れ性を高める元素で、浸炭焼入れ後の歯車の浸炭硬化層及び母材を硬化させる作用がある。しかし、その含有量が0.1%未満では上記の作用が期待できない。一方、1.5%を超えて含有させると、焼入れ性が大きくなりすぎるので歯元のトル−スタイト生成が困難となり、トルースタイトを生成させて歯元の曲げ疲労強度を高めたいとする本発明の目的が達成できない。したがって、Crの含有量を0.1〜1.5%とした。なお、Crの好ましい含有量は0.2〜1.2%である。
【0029】
Mo:0.15%を超えて0.70%以下
Moは、鋼の焼入れ性を高める作用を有する。更に、マルテンサイトの靭性を高める作用も有する。しかし、その含有量が0.15%以下では靭性向上効果に乏しい。一方、靭性を向上させるために多量に添加すると、浸炭硬化層の焼入れ性が上昇し過ぎてトルースタイトを生成させることができなくなるし、母材の被削性や冷間鍛造性が低下してしまう。特に、Moの含有量が0.70%を超えるとこの問題が著しくなる。したがって、Moの含有量を0.15%を超えて0.70%以下とした。
【0030】
B:0.001〜0.005%
Bは、本発明において重要な元素である。Bには、浸炭後に焼入れされる浸炭層の焼入れ性は上昇させずに、母材の焼入れ性だけを高める作用がある。このため、浸炭焼入れ後の母材硬度は高めても、浸炭硬化層、なかでも歯元部の浸炭硬化層におけるトルースタイトの生成を抑制することがない。したがって、浸炭焼入れ後に、母材の高い硬度と歯元部における適正量のトルースタイトとの相乗効果によって、浸炭歯車の歯元折損寿命(曲げ疲労寿命)を高めるのに極めて有効な元素である。しかし、Bの含有量が0.001%未満では添加効果に乏しく、0.005%を超えて含有させても前記効果は飽和してコストの上昇をきたすことに加えて、熱間加工性の劣化を招く。したがって、Bの含有量を0.001〜0.005%とした。なお、Bの含有量は0.001〜0.003%とすることが好ましい。
【0031】
Al:0.01〜0.1%
Alは、浸炭処理時のオ−ステナイト粒の粗大化を抑制して、浸炭焼入れ後の硬化層及び母材部の結晶粒を微細化する作用がある。しかし、その含有量が0.01%未満では前記作用は期待できない。一方、0.1%を超えると前記作用が飽和する。したがって、Alの含有量を0.01〜0.1%とした。なお、Alの望ましい含有量は0.02〜0.06%である。
【0032】
Nb:0〜0.05%
Nbは添加しなくても良い。添加すれば浸炭処理時のオ−ステナイト結晶粒の粗大化を抑制し、浸炭焼入れ後の硬化層及び母材部の結晶粒を微細化する作用がある。この効果を確実に得るには、Nbは0.005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.05%を超えると前記作用が飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Nbの含有量を0〜0.05%とした。
【0033】
Ti:0〜0.05%
Tiも添加しなくても良い。添加すれば浸炭処理時のオ−ステナイト結晶粒の粗大化を抑制し、浸炭焼入れ後の硬化層及び母材部の結晶粒を微細化する作用がある。この効果を確実に得るには、Tiは0.005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.05%を超えると前記作用が飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Tiの含有量を0〜0.05%とした。
【0034】
N:0.0023〜0.015%
Nは、含有させれば、窒化物を生成して浸炭処理時のオ−ステナイト結晶粒の粗大化を抑制し、浸炭焼入れ後の硬化層及び母材部の結晶粒を微細化する作用がある。この効果を得るには、Nは0.0023%以上の含有量とする必要があり、0.003%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.015%を超えると前記作用が飽和し、更には前記したB添加の効果が失われてしまう。したがって、Nの含有量を0.0023〜0.015%とした。なお、N含有量の上限は0.012%とすることが好ましい。
【0035】
Si:0.4%以下
Siは、歯車の製造工程である冷間鍛造時の変形抵抗を大きくしたり、切削加工時の切削性を低下させてしまう。特に0.4%を超えて含有すると、冷間鍛造性と切削性の著しい劣化をきたす。したがって、Siの含有量の上限を0.4%とした。なお、Si含有量は0.3%以下とすることが望ましい。
【0036】
Ni:0.5%以下
Niは、歯車の製造工程である切削加工時の被削性を低下させてしまう。特に0.5%を超えて含有すると、被削性の著しい劣化をきたす。したがって、Niの含有量の上限を0.5%とした。なお、Ni含有量は0.3%以下とすることが望ましい。
【0037】
Cu:0.4%以下
Cuは、熱間加工時における割れの原因となる。特に、0.4%を超えて含有すると、高温での熱間加工性、例えば分塊圧延や熱間鍛造における加工性が著しく低下してしまう。したがって、Cuの含有量の上限を0.4%とした。なお、Cu含有量は0.3%以下とすることが望ましい。
【0038】
P:0.03%以下
Pは浸炭鋼において、特に旧オ−ステナイト粒界に偏析して浸炭硬化層を脆化し、歯元の曲げ疲労強度を低下させてしまう。特に、その含有量が0.03%を超えると、歯元の曲げ疲労強度の低下が著しい。したがって、P含有量の上限を0.03%とした。なお、Pの含有量は0.02%以下とすることが好ましい。
【0039】
S:0.03%以下
Sも浸炭鋼において、浸炭硬化層を脆化して歯元の曲げ疲労強度を低下させてしまう。特に、その含有量が0.03%を超えると、歯元の曲げ疲労強度の低下が著しい。したがって、S含有量の上限を0.03%とした。なお、Sの含有量は0.02%以下とすることが望ましい。
【0040】
(B)浸炭硬化層の表面C量
浸炭処理した歯車の浸炭硬化層の表面C量は、歯元の曲げ疲労強度と歯面の耐剥離性に影響を及ぼす。すなわち、浸炭硬化層の表面C量が0.6%未満であると、歯面の耐剥離性が劣化する。一方、1.1%を超えると、歯元の曲げ疲労強度が低下してしまう。したがって、浸炭硬化層の表面C量を0.6〜1.1%とした。なお、浸炭硬化層の表面C量は0.7〜1.0%とすることが好ましい。
【0041】
(C)浸炭硬化層の組織
剥離の起点は歯車の歯面の表面に生ずる。したがって、疲労による剥離に対する抵抗性を高めるには、浸炭歯車の歯面部浸炭硬化層の組織を制御すれば良い。この場合、特に表面から深さ0.5mmまでの領域における組織を制御することが、剥離の進展を抑制するのに極めて効果的である。
【0042】
一方、浸炭焼入れ後の母材の強度を高めるとともに、浸炭歯車の歯元浸炭硬化層の組織、なかでも表面から深さ0.5mmまでの領域における組織を制御することが、歯元の曲げ疲労強度を高めるのに効果的である。
【0043】
したがって、歯車の歯面における剥離の発生と、歯元における曲げ疲労発生の問題を同時に解決しようとする本発明においては、浸炭硬化層の組織として、表面から深さ0.5mmまでの領域における組織を規定する。
【0044】
一般に、浸炭焼入れした歯車において、浸炭硬化層の表面から深さ0.5mmまでの領域における主組織は、マルテンサイトと残留オ−ステナイトから構成される。しかし、C、Mn、Cr及びMo量を厳密に制御した上で適正量のBを添加した、本発明の対象鋼を母材(素材鋼)とした歯車の場合には、浸炭焼入れで、前記の領域にマルテンサイトと残留オ−ステナイトに加えてトルースタイトが生成する。このトルースタイトの面積分率は、浸炭焼入れ時の冷却速度の大きな歯面部では小さく、冷却速度が遅くなる歯元部では逆に大きくなる。
【0045】
前記浸炭焼入れした歯車の、浸炭硬化層の表面から深さ0.5mmまでの領域に生成したトルースタイトは、曲げ疲労に対する抵抗性(曲げ疲労強度)と耐剥離性に影響する。詳しく述べれば、前記の領域におけるトルースタイトは、歯元の曲げ疲労寿命(歯元の折損寿命)を高めるが、歯面の剥離寿命を低下させる。
【0046】
歯面部に関しては、前記領域でのトルースタイトが面積分率(平均面積分率)で5%を超えると、剥離寿命の低下をきたす。したがって、前記領域におけるトルースタイトの面積分率を5%以下とした。なお、トルースタイト分率の下限値は特に定める必要はないが、トルースタイトが剥離に対しては抵抗性のない組織であるため、なるべく少なくした方が良い。すなわち、歯車歯面部の組織はマルテンサイトと残留オ−ステナイトからなる通常の浸炭焼入れ組織であっても構わない。
【0047】
歯元部に関しては、前記領域でのトルースタイトが面積分率(平均面積分率)で5%を下回ると、曲げ疲労寿命(折損寿命)の低下をきたす。したがって、前記領域におけるトルースタイトの面積分率を5%以上とした。なお、前記領域におけるトルースタイトの面積分率は10%以上とすることが好ましい。トルースタイトは、歯元の曲げ疲労強度には影響を及ぼさない。したがって、その分率の上限は特に定める必要はないが、製造面からして、現実には80%程度が上限になってしまうと考えられる。但し、前記領域におけるトルースタイトの面積分率が80%を超えても勿論構わない。
【0048】
本発明の対象鋼を母材とした歯車の場合には、通常の浸炭焼入れを施すだけで、上記の歯面部組織と歯元部組織とを両立させることができる。しかし、より大きな耐剥離性と曲げ疲労強度とを得るためには、既に述べたように、歯面部ではトルースタイトの面積分率をできるだけ小さくし、歯元部ではトルースタイト分率が5%、特に10%を超えるようにすることが重要となる。
【0049】
したがって、通常の浸炭焼入れを施す場合には、浸炭焼入れ時の質量効果を考えて、対象とする歯車は、外径で約20mmから約250mmまでのサイズとすることが好ましい。一方、対象とする歯車のサイズに関係なく容易に所望の組織とするためには、浸炭焼入れ時の歯元部と歯面部での冷却の調整が可能な、ドブ漬け処理を行うことが望ましい。なお、「ドブ漬け」とは冷却媒体(焼入れ剤)に浸漬する方法をいう。冷却の媒体については、特に制限はなく、歯車のサイズに応じて水、油、塩(ソルト)などを適当な温度で用いれば良い。
【0050】
本発明に係わる浸炭歯車は、上記した化学組成を有する母材(素材鋼)を、例えば通常の方法で溶製した後、熱間で圧延又は鍛造し、更に必要に応じて熱処理を行い、次いで切削や圧造などで所望の歯車形状とした後、浸炭焼入れを行い、必要に応じて低温での焼戻しや研削、研磨をして製造される。
【0051】
【実施例】
表1、表2に示す化学組成の鋼を通常の方法によって150kg真空溶製した。表1における鋼 A〜J は本発明対象鋼(以下、本発明鋼という)、表2における鋼 K〜S は成分のいずれかが本発明で規定する範囲から外れた比較鋼である。なお、比較鋼のうち鋼 Sは高強度歯車用鋼として知られている高Mo−高Niの従来鋼である。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
次いで、これらの鋼を通常の方法によって鋼片とした後、1200℃に加熱してから、1200〜1000℃の温度で熱間鍛造して直径85mmの丸棒とし、更に、925℃で焼準した。
【0055】
こうして得られた焼準後の丸棒から、通常の方法で熱間鍛造して歯車素形材を作製し、その後切削加工(ホブ切りとシェービング加工)して、表3に示す諸元の「はすば歯車」を切り出した。
【0056】
【表3】
【0057】
(実施例1)
本発明鋼である鋼 Aを母材とする前記のはすば歯車に対して、浸炭条件を表4のa〜eと変えて、図1に示すヒートパターンで浸炭焼入れを施し、その後180℃で2時間の焼戻しを行った。なお、浸炭条件a〜eのすべてにおいて、浸炭後の歯車は120℃の油中に焼入れした。
【0058】
【表4】
【0059】
この後、上記の浸炭焼入れ、焼戻しを施した歯車を供試材として、図2に概要を示す試験機により、動力循環歯車試験を行った。
【0060】
すなわち、供試ギアボックス 1内に前記のようにして製作した大歯車 2と小歯車 3を装着し、ウエイトレバ− 4とストッパー 5により負荷トルク(トルク検出機 6に表示される)を一定値(200N・m)に調整して、小歯車 3を3123rpmで回転させた。この条件で動力循環歯車試験を行うと、小歯車 3の歯元が曲げ疲労によって折損するか、あるいは小歯車 3の歯面に剥離が生じる。小歯車3 の歯元における折損、あるいは歯面の剥離(以下、、これらを単に「損傷」ともいう)の発生は、供試ギアボックス 1に取り付けられた振動計 7とトルク変動により検知できる。ここでは、上記のいずれかの損傷が発生した時点における「相手歯車の歯と噛み合った回数」をその歯車対の疲労寿命(以下、単に疲労寿命という)と判定した。なお、動力循環歯車試験のn数は各5である。
【0061】
なお、各浸炭条件で処理した小歯車に関し、EPMAによる浸炭硬化層の表面C量測定と、光学顕微鏡による歯面部及び歯元部における浸炭硬化層の、表面から深さ0.5mmまでの領域の組織観察を行った。
【0062】
表5に結果を示す。この表5は、浸炭歯車の疲労寿命に及ぼす浸炭硬化層の表面C量の影響を示すものである。なお、表5において「歯面トルースタイト量」及び「歯元トルースタイト量」とあるのは、それぞれ歯面部及び歯元部における浸炭硬化層の、表面から深さ0.5mmまでの領域におけるトルースタイトの平均面積分率のことを指し、トルースタイト以外の部分(面積分率)はマルテンサイトと残留オ−ステナイトであることを意味する。
【0063】
【表5】
【0064】
表5から、浸炭硬化層の表面C量が本発明で規定する範囲から外れた浸炭条件dとeの比較例では、本発明例の浸炭条件a〜cに比べて疲労寿命が短いことが明らかである。比較例のうち浸炭条件dでは、浸炭硬化層の表面C量が0.54%と低いために表面硬度が不足し、剥離によって短時間で破損する。一方、浸炭条件eでは、表面C量が1.15%と高すぎるために浸炭硬化層が脆化し、曲げ疲労による折損が生じて短時間で破壊する。
【0065】
(実施例2)
本発明鋼である鋼 A〜J と、比較鋼である鋼 K〜S を母材とする前記のはすば歯車に対して、表4のbの浸炭条件で、図1に示すヒートパターンの浸炭焼入れを施し、その後180℃で2時間の焼戻しを行った。なお、本実施例においても浸炭後の歯車は120℃の油中に焼入れした。
【0066】
この後、上記の浸炭焼入れ・焼戻しした歯車を供試材として、上記の実施例1の場合と同じ条件で、動力循環歯車試験を行った。又、実施例1の場合と同様に小歯車に関し、EPMAによる浸炭硬化層の表面C量測定と、光学顕微鏡による歯面部及び歯元部における浸炭硬化層の、表面から深さ0.5mmまでの領域の組織観察を行った。
【0067】
表6に結果を示す。なお、表6において「歯面トルースタイト量」及び「歯元トルースタイト量」とあるのは、上記表5におけると同様に、それぞれ歯面部及び歯元部における浸炭硬化層の、表面から0.5mmまでの領域におけるトルースタイトの平均面積分率のことを指し、トルースタイト以外の部分(面積分率)はマルテンサイトと残留オ−ステナイトであることを意味する。
【0068】
【表6】
【0069】
本発明鋼を母材とする浸炭歯車では、表4のbの浸炭条件による浸炭焼入れによって、本発明で規定する範囲の浸炭硬化層における表面C量と組織が得られている。そして、いずれの場合も浸炭歯車は2.0×106 を超える疲労寿命を有している。この本発明鋼を母材とした歯車の疲労寿命は、高Mo−高Niの従来鋼(鋼 S)を母材とした浸炭歯車の疲労寿命より2倍以上長く、極めて良好である。
【0070】
本発明鋼を母材とした浸炭歯車の場合、歯面部浸炭硬化層の表面から深さ0.5mmまでの領域におけるトル−スタイトの面積分率が他のものに比べてやや高いもの(鋼 Cと鋼 Hを母材としたもの)だけが、剥離により破損した。その他は、曲げ疲労による歯元の折損を生じていた。
【0071】
一方、鋼 K〜R の比較鋼を素材鋼(母材)とした浸炭歯車の疲労寿命は、いずれも1×106 未満の短いものである。
【0072】
鋼 Kは、Mn及びCrの含有量が本発明で規定する値よりも高い。このため、鋼 Kを母材とする浸炭歯車では、浸炭硬化層の焼入れ性が高くなって歯元部にトル−スタイトが生成せず、曲げ疲労による歯元折損が生じ、疲労寿命が短い。
【0073】
鋼 Lは、不純物元素であるPとSの含有量が高い。このため、鋼 Lを素材鋼とした浸炭歯車は、浸炭硬化層が脆化して曲げ疲労による歯元折損が生じ、疲労寿命が短い。
【0074】
鋼 Mは、Nの含有量が本発明で規定する値よりも高い。このため、鋼 Mを母材とする浸炭歯車では、B添加の効果が失われるため母材の硬度が低く、曲げ疲労による歯元折損が生じ、疲労寿命が短い。ちなみに、鋼 Mの母材硬度はHv290であった。一方、AlとNを除いた他の成分元素量が鋼 Mとほぼ同じである本発明鋼 Aの場合、母材硬度はHv380であった。
【0075】
鋼 Nは、Moの含有量が本発明で規定する値よりも高い。このため、鋼 Nを素材鋼とする浸炭歯車は、浸炭硬化層の焼入れ性が高くなって歯元部にトル−スタイトが生成せず、曲げ疲労による歯元折損が生じて疲労寿命が短い。
【0076】
鋼 O及び鋼 PはBの含有量が本発明で規定する値より低い。このため、鋼 O及び鋼 Pを母材とする浸炭歯車では、母材の硬度が低く、曲げ疲労による歯元折損が生じ、疲労寿命が短い。ちなみに、鋼 O及び鋼 Pの母材硬度はそれぞれHv275とHv295であった。
【0077】
鋼 Qは、Crの含有量が本発明で規定する値より低く、Mn含有量が規定の下限値に近い。このため、鋼 Qを素材鋼とする浸炭歯車では、焼入れ性が不足して歯面部に多量のトルースタイトが生成して剥離により破損し、疲労寿命が短い。
【0078】
鋼 Rは、CrとBの含有量が本発明で規定する値より低い。このため、鋼 Rを母材とする浸炭歯車は、焼入れ性が不足して歯面部に多量のトルースタイトが生成して剥離により破損し、疲労寿命が短い。
【0079】
【発明の効果】
本発明の浸炭歯車は、疲労による剥離に対する抵抗性(耐剥離性)と曲げ疲労強度に優れることから、自動車や産業機械に使用される動力伝達用の歯車として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で施した浸炭焼入れのヒートパターンを示す図である。
【図2】実施例で用いた動力循環歯車試験機の概要を示す図である。
【符号の説明】
1 :供試ギアボックス
2 :大歯車
3 :小歯車
4 :ウエイトレバー
5 :ストッパー
6 :トルク検出機
7 :振動計
Claims (1)
- 母材が、重量%で、C:0.1〜0.3%、Mn:0.1〜1.2%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.15%を超えて0.70%以下、B:0.001〜0.005%、Al:0.01〜0.1%、Nb:0〜0.05%、Ti:0〜0.05%、N:0.0023〜0.015%、Si:0.4%以下、Ni:0.5%以下、Cu:0.4%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、残部Fe及び不可避不純物の化学組成の鋼であって、浸炭硬化層の表面C量が重量%で0.6〜1.1%で、且つその浸炭硬化層の表面から深さ0.5mmまでの領域におけるトルースタイトの面積分率が歯面部では5%以下で、歯元部では5%以上であることを特徴とする浸炭歯車。
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