JP5672740B2 - 高疲労強度肌焼鋼の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、建産機や自動車の分野で用いられる機械構造用材料に供する肌焼鋼、特に冷間鍛造性と浸炭時の粗粒化抑制能に優れた高疲労強度肌焼鋼の製造方法に関するものである。
一般に、棒鋼を冷間成形して製造される、例えば自動車等の部品素材には、高い冷間鍛造性が要求される。そのため、球状化熱処理を施して炭化物を球状化し、冷間鍛造性を高めることが行われている。また、鋼の成分組成の観点からは、変形抵抗に大きく影響するSiを低減するなどの提案もなされている。更に、Bの焼入れ性を有効活用した鋼の提案もある。
例えば、特許文献1には、Bの焼入れ性向上の効果分だけ他の合金元素を減量することによって、焼ならし工程から硬さを低くし、従来鋼に対して歯切り性を飛躍的に向上させた、浸炭歯車用鋼が提案されている。
また、特許文献2では、固溶強化元素であるSiおよびMnを低減して焼入れ性をBで確保する成分系と、製造条件との組み合わせにより、冷間加工性を確保する肌焼鋼が提案されている。
一方で、近年、自動車等に用いられる歯車等には、省エネルギー化による車体重量の軽量化に伴って、サイズの小型化が要求され、またエンジンの高出力化に伴って歯車にかかる負荷も増大している。歯車の耐久性は、主に歯元曲げ疲労破壊ならびに歯面の面圧疲労破壊によってきまる。歯元曲げ疲労強度については、浸炭時に表層に生じる不完全焼き入れ層の低減や、旧オーステナイト粒径の微細化が有効であるとされている。また、面圧疲労強度の向上については、焼戻し軟化抵抗性との関連が指摘され、Si量を高めた成分や、Moを添加した成分、または浸炭表層に微細な炭化物を分散させた鋼が、それぞれ提案されている。
例えば、特許文献3には、旧オーステナイト粒径を7μm以下にすることによって、疲労強度と靭性を改善した浸炭用鋼が提案されている。また、特許文献4には、表面の浸炭層に炭化物を微細分散させることが提案されている。
特許第3551573号明細書 特許第3764586号明細書 特許第3063399号明細書 特許第4056709号明細書
しかしながら、上述した特許文献1および2では、冷間加工性や衝撃特性の向上は認められるが、疲労特性は従来鋼と同等程度である。
また、特許文献3および4では、Nb、TiおよびVなどの炭化物生成元素を多量に使用しているため、微細析出した場合に加工時の変形抵抗を著しく上昇させる等の問題があった。更に、浸炭時の粗粒化抑制のためには、一般的に、AlNを微細分散させる技術が用いられているが、Bを活用するためにはN量を下げる必要があり、その結果、十分な量のAlNが確保できない、おそれがある。
本発明は、上記の実情に鑑み開発されたものであり、その目的とするところは、冷間鍛造性に優れるだけでなく、浸炭時の粗粒化抑制能にも優れることから高い耐疲労強度を有する肌焼鋼を製造するための方法について提案することにある。
発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下に述べる知見を得た。
まず、耐疲労強度を向上するために、肌焼鋼の浸炭表層において、粗大な炭化物の生成を抑制して炭化物を微細に分散させるための方途を鋭意究明した。
すなわち、図1に、肌焼鋼の浸炭表層における、炭化物の最大粒子径に及ぼすAl、BおよびTi量の関係を示す。同図からわかるように、粗大な炭化物の生成を抑制し、炭化物を微細に分散させるためには、AlおよびB量の制御とTi添加量の抑制とが重要である。ここで、図1には、一部の鋼に関して面疲労強度を測定した結果についても示したが、粗大な炭化物の生成の抑制により、高い面疲労強度が得られることもわかる。
なお、図1に結果を示す実験は、0.2質量%C−0.1質量%Si-0.6質量%Mn−1.5質量%Cr−0.02質量%Nb鋼を基本として、この基本組成に種々の含有量のAlおよびBを添加した鋼素材を準備し、これら鋼素材に以下の条件の処理を施した後の、炭化物の最大粒子径(μm)および面疲労強度(MPa)を評価したものである。
すなわち、鋼素材より、25mmφ丸棒を加工し、カーボンポテンシャル2%、950℃で5時間の高濃度浸炭を行い、一旦600℃に冷却した後、再度850℃で30分保持し、60℃で油冷後、170℃で2時間の焼戻し処理を行った。この処理を行ったサンプルを切断した後、切断面をピラクール液で腐食し、表面から30μm深さまでの領域を走査型電子顕微鏡で6000μmにわたって観察し、画像解析により炭化物の最大粒子径を求めた。また、上記丸棒よりローラピッチング試験片を採取し、これに上述の高濃度浸炭から焼戻し処理までの各処理を施したサンプルに対し、すべり率40%および油温80℃の条件でローラピッチング試験を行い、10回強度(試験片表面にピッチングが発生する限界強度)を評価した。
また、図2に、擬似浸炭時の粗粒化挙動に及ぼす加熱温度および冷却速度の関係を示す。同図から、加熱温度および冷却速度が粗粒化挙動における重要因子であることがわかる。すなわち、熱間加工における加熱温度を1000℃以下にすると共に、冷却速度を0.1〜1.0℃/sとすることによって、炭化物の微細化が実現されるのである。
なお、図2に示す実験は、0.2質量%C−0.1質量%Si-0.6質量%Mn−1.5質量%Cr−0.02質量%Nb−0.05質量%Al−0.002質量%Bの成分組成の鋼素材を、一旦1150〜1200℃に加熱後、熱間圧延により170mm角断面の中間素材とし、この中間素材を850〜1100℃の間で変化させて再加熱した後に熱間加工し、この熱間加工後に種々の冷却速度にて冷却して得た棒鋼について、冷間加工、擬似浸炭熱処理後の耐結晶粒粗大化特性を評価したものである。図2では、再加熱温度を横軸に、熱間加工後の冷却速度を縦軸にとり、再加熱温度と冷却速度とが耐結晶粒粗大化特性に及ぼす影響を示している。ここで、耐結晶粒粗大化特性の調査は、得られた棒鋼より8mmφ×12mmの圧縮試験片を採取し、これに70%の冷間据え込みを行った後、1000℃で3時間の擬似浸炭熱処理を行ってから急冷したものについて、旧オーステナイト粒径を評価することで行った。粒度番号が3番より大きな結晶粒が観察された場合に、「×:粗粒化」と判断し、それ以外を「○:粗粒化なし」と判断した。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨構成は、次のとおりである。
(1)C:0.10〜0.35質量%、
Si:0.01〜0.50質量%、
Mn:0.40〜1.50質量%、
P:0.02質量%以下、
S:0.03質量%以下、
Al:0.04〜0.10質量%、
Cr:0.5〜2.5質量%、
B:0.0005〜0.0050質量%、
Nb:0.003〜0.050質量%、
Ti:0.003質量%以下および
N:0.0080質量%未満
を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなる鋼素材を、一旦、1150℃以上の温度に加熱した後に500℃以下まで冷却し、その後に1000℃以下に加熱後、850℃以上の温度にて加工を終了したのち、800〜500℃の温度域を0.1〜1.0℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする高疲労強度肌焼鋼の製造方法。
(2)C:0.10〜0.35質量%、
Si:0.01〜0.50質量%、
Mn:0.40〜1.50質量%、
P:0.02質量%以下、
S:0.03質量%以下、
Al:0.04〜0.10質量%、
Cr:0.5〜2.5質量%、
B:0.0005〜0.0050質量%、
Nb:0.003〜0.050質量%、
Ti:0.003質量%以下および
N:0.0080質量%未満
を含有し、
更に、
Cu:1.0質量%以下、
Ni:0.50質量%以下、および
V:0.5質量%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなる鋼素材を、一旦、1150℃以上の温度に加熱した後に500℃以下まで冷却し、その後に1000℃以下に加熱後、850℃以上の温度にて加工を終了したのち、800〜500℃の温度域を0.1〜1.0℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする高疲労強度肌焼鋼の製造方法。
(3)前記鋼素材は、更に、
Ca:0.0005〜0.0050質量%および
Mg:0.0002〜0.0020質量%
の1種または2種を含有する前記(1)または(2)に記載の高疲労強度肌焼鋼の製造方法。
(4)前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の肌焼鋼に対して浸炭を施し、表面から0.4mmまでの表層域における炭素量を0.85質量%以上、かつ前記表層域における、炭化物の最大径を10μm以下、かつ平均粒子径を4μm以下に制御することを特徴とする高疲労強度浸炭材の製造方法。
本発明によれば、冷間鍛造性と浸炭時の粗粒化抑制能に優れるだけでなく、疲労強度にも優れた肌焼鋼を提供できるため、工業上非常に有用である。
炭化物の析出状態に及ぼすAl,B、Ti量の影響を示す図である。 擬似浸炭時の粗粒化挙動に及ぼす棒鋼圧延における加熱温度および冷却速度の影響を示す図である。
以下、本発明の肌焼鋼の製造方法を、具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼素材の成分組成を上記の範囲に限定した理由について成分毎に詳しく説明する。
C:0.10〜0.35質量%
浸炭熱処理後の焼入れにより中心部の硬度を高めるために、0.10質量%以上のCを必要とするが、含有量が0.35質量%を超えると、芯部の靭性が低下するため、C量は0.10〜0.35質量%の範囲に限定した。好ましくは、0.3質量%以下の範囲である。
Si:0.01〜0.50質量%
Siは、脱酸剤として必要であり、少なくとも0.01質量%以上の添加が必要である。しかしながら、Siは浸炭表層で優先的に酸化し、粒界酸化を促進する元素である。また、フェライトを固溶強化し変形抵抗を高めて冷間鍛造性を劣化させるため、上限を0.50質量%とする。好ましくは0.03〜0.35質量%である。
Mn:0.40〜1.50質量%
Mnは、焼入性の向上に有効な元素で有り、少なくとも0.40質量%の添加を必要とする。しかし、Mnは粒界酸化を引き起こしやすく、また過剰な添加は残留オーステナイトを増加させ、表面硬さの低下を招くことから、上限を1.50質量%とした。好ましくは0.60〜1.40質量%の範囲である。
P:0.02質量%以下
Pは、結晶粒界に偏析し、靭性を低下させるため、その混入は低いほど望ましいが、0.02質量%までは許容される。好ましくは、0.018質量%以下である。
S:0.03質量%以下
Sは、硫化物系介在物として存在し、被削性の向上に有効な元素である。しかしながら、過剰な添加は疲労強度の低下を招くため、上限を0.03質量%とした。
Al:0.04〜0.10質量%
Alは、鋼中のNをAlNとして固定することによって、Bの焼入れ性効果を得るための重要な元素である。この効果を得るためには、少なくとも0.04質量%の添加が必要である。しかしながら、含有量が0.10質量%を超えると、疲労強度に対して有害なA1203介在物の生成を助長するため、Al量は0.04〜0.10質量%の範囲に限定した。
Cr:0.5〜2.5質量%
Crは、焼入性のみならず、焼戻し軟化抵抗の向上に寄与し、さらには炭化物の球状化促進にも有用な元素であるが、含有量が0.5質量%に満たないと、その添加効果に乏しく、一方、2.5質量%を超えると、浸炭部での残留オーステナイトの生成を促進し、疲労強度に悪影響を与える場合がある。よって、Cr量は0.5〜2.5質量%の範囲に限定した。好ましくは0.6〜2.0質量%の範囲である。
B:0.0005〜0.0050質量%
Bは、本発明において最も重要な元素である。Bは、焼入れ熱処理時にオーステナイト粒界に偏析することで焼入れ性を高め、素材の硬度上昇に寄与する。この効果により、他の強化元素を削減でき、その結果、変形抵抗の低下による冷間鍛造性の向上が得られる。この効果を発揮するためには、少なくとも0.0005質量%以上の添加が必要である。一方、過剰な添加は、靭性や鍛造性などの低下を招くことから、上限を0.0050質量%とした。
Nb:0.003〜0.050質量%
Nbは、鋼中でNbCを形成し、浸炭熱処理時のオーステナイト粒径の粗粒化をピン止め効果により抑制する。この効果を得るためには、少なくとも0.003質量%の添加が必要である。一方、0.050質量%を超えて添加すると、粗大なNbCの析出による粗粒化抑制能の低下や疲労強度の劣化を招く、おそれがあるため、0.050質量%以下とする。好ましくは、0.010〜0.045質量%である。
Ti:0.003質量%以下
Tiは、鋼中への混入を極力回避することが好ましい成分である。Tiは、Nと結合し、粗大なTiNを形成しやすい。かように、浸炭表層の炭化物の粗大化や疲労強度の低下を招くため、上限を0.003質量%とする。
N:0.008質量%未満
Nは、鋼中への混入を極力回避することが好ましい成分である。従って、Nは、Bの焼入れ性を確保することと、TiNの形成を抑制するために、0.008質量%未満とした。
また、本発明では、焼入性を高めるために上記成分に、更に、Cu:1.0質量%以下、Ni:0.50質量%以下、およびV:0.5質量%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することができる。
Cuは、焼き入れ性の向上に有効な元素であり、好ましくは0.1質量%以上で添加するが、多量の添加は鋼材の表面性状の劣化や合金コストの増加を招くため、上限を1.0質量%とした。
NiおよびVは、焼入れ性や靭性の向上に有効な元素であり、好ましくはそれぞれ0.1質量%以上および0.02質量%以上であるが、高価であることから上限をそれぞれ0.50質量%とした。
さらに、本発明では、硫化物の形態を制御し、被削性や冷間鍛造性を高めるために、上記成分に更に、Ca:0.0005〜0.0050質量%およびMg:0.0002〜0.0020質量%の1種または2種を含有することが出来る。
すなわち、CaおよびMgによる上記効果を得るには、各々、少なくともそれぞれ0.0005質量%、0.0002質量%の添加が必要である。一方、過剰に添加した場合には、粗大な介在物を形成し、疲労強度に悪影響を与えるため、CaおよびMgについて上限をそれぞれ0.0050質量%および0.0020質量%とした。
次に、上述した成分組成になる鋼素材を、一旦1150℃以上に加熱した後に500℃以下まで冷却し、更に1000℃以下に加熱後、850℃以上の温度域で加工を終了したのち、800〜500℃の温度域を0.1〜1.0℃/sの冷却速度で冷却することが必要である。
鋼素材加熱温度:1150℃以上
本発明では、鋳造時の冷却過程で、析出した粗大なNbC粒子を固溶させておく必要があるため、熱間加工に先立ち鋼素材を1150℃以上の温度に加熱する。その後、500℃以下まで冷却する。これは、後続する1000℃以下での加熱時のオーステナイト粒を微細化するためである。
なお、1150℃以上に加熱後、圧延等の加工を行って中間素材とし、これを500℃以下まで冷却してもよい。
再加熱温度:1000℃以下
前述の図2に示したように、上記の加熱により固溶したNbCを微細に析出し、浸炭時の粗粒化抑制効果を向上させるために、1000℃以下の温度範囲に再加熱することが肝要である。好ましくは、980℃以下の範囲とする。なお、再加熱温度は、後述する仕上げ温度を850℃以上にできる温度以上とすればよい。
仕上げ温度:850℃以上
本発明では、圧延後の組織とNbCの状態を制御するために、熱間加工の仕上げ温度を850℃以上とする。すなわち、仕上げ温度が850℃未満では、非常に細かいNbCが歪誘起析出し、ピン止め効果が不均一になることによって、浸炭時に粗粒化し易くなる。
800〜500℃の冷却速度:0.1〜1.0℃/s
熱間加工後の冷却過程において、800〜500℃の温度域における冷却速度が0.1℃/sに満たないと、フェライト粒径が大きくなり、また浸炭時における粒径も粗大となる。一方、1.0℃/sを超えると、冷却後のフェライト分率が減少して、浸炭時に粗大粒が発生しやすくなるだけでなく、圧延材の硬さが上昇する。従って、この温度域における冷却速度は0.1〜1.0℃/sの範囲にした。好ましくは、0.2〜0.8℃/sの範囲である。
以上に従って得られた肌焼鋼は、冷間加工を施して部品形状とした後、浸炭処理に供する。この浸炭処理によって、表面下0.4mmまでの表層域において、炭素量は0.85%以上、ここに形成される炭化物の最大径は10μm以下かつ平均粒子径は4μm以下、とすることが特に好ましい。この範囲内であれば、特に面疲労強度の向上に効果がある。逆に、この範囲を外れると、面疲労強度の向上は期待できない。
すなわち、表層の炭素量が0.85%未満では、十分な量の炭化物が得られず面疲労強度の向上が図れない。また、炭化物の最大径が10μmを超えると、粗大な炭化物が疲労亀裂の起点になる等により、疲労寿命が低下する。平均粒子径が4μmを超える場合においても同様に、疲労寿命の低下を招く。
なお、上記の規定に従う炭化物を得るには、浸炭処理を次の条件で行うことが好ましい。すなわち、カーボンポテンシャル:1.5%以上の下、950℃で5時間保持し、一旦600℃まで冷却した後に、再度850℃で30分保持した後、油冷する。その後、焼戻しを施すことが好ましく、焼戻し温度は170〜200℃の範囲が適している。
次に、本発明の実施例について説明する。
表1に示す成分組成の鋼を溶製し、これを加熱(鋼片加熱)して170mm角断面の中間素材へ熱間圧延して室温まで冷却し、さらに再加熱(棒鋼圧延時加熱)した後、熱間圧延して表2に示す径の棒鋼とした。表2には、鋼片加熱温度、棒鋼圧延時加熱温度、仕上げ温度、圧延後800〜500℃の冷却速度を示す。得られた棒鋼について、冷間鍛造性の評価を行った。
Figure 0005672740
Figure 0005672740
冷間加工性は、限界据え込み率および変形抵抗の2項目で評価した。すなわち、棒鋼の表面から直径Dの1/4の深さ位置(1/4D位置)から、直径10mm、高さ15mmの試験片を採取し、300tプレス機を用いて、60%据え込み時の圧縮荷重を測定し、日本塑性加工学会が提唱している、端面拘束圧縮により変形抵抗測定方法を用いて求めた。
限界据え込み率は、変形抵抗を測定した方法で圧縮加工を行い、端部に割れが入ったときの据え込み率を限界据え込み率とした。変形抵抗値が899MPa以下かつ限界割れ率が74%以上であれば、冷間鍛造性は良好であるといえる。
次に、上記棒鋼から、8mmφ×12mmの据え込み試験片を作製し、圧下率70%の据え込み加工を行った後、浸炭シミュレーションを行った。浸炭シミュレーションの条件は、950〜1025℃の種々の温度に3時間加熱後、水冷する条件である。その後、試験片を、軸を含む面で軸方向に切断後、切断面を研磨・エッチングし、旧オーステナイト粒径を観察して粗粒が発生する温度(粗粒化温度)を求めた。浸炭処理は、通常、900〜970℃の温度域で行われるため、粗粒化温度が975℃未満のものは、結晶粒の粗大化抑止効果に劣ると判定した。なお、粒度番号3より大きい粗粒があった場合に、粗大化したと判定した。
また、疲労特性は、回転曲げ疲労と面疲労の2項目で評価した。
すなわち、上記の棒鋼の1/4D位置から回転曲げ試験片とローラーピッチング試験片を採取し、これらの試験片に通常浸炭と炭化物を多く生成させるための高濃度浸炭との2種類の熱処理を行った。通常浸炭は930℃、7時間、カーボンポテンシャル1.1質量%の条件で浸炭を実施後、60℃で油冷し、170℃、2時間の焼戻し処理を施した。一方、高濃度浸炭は、950℃、5時間、カーボンポテンシャル2質量%の条件で保持し、一旦600℃に冷却した後、再度850℃に30分保持し、60℃で油冷後、170℃、2時間の焼戻し処理を施した。
ここで、浸炭後の炭化物の測定は、ピクラール液でエッチング後に、表面から30μm深さまでの領域を走査電子顕微鏡で6000μm2にわたって観察し、画像解析にて炭化物の最大径および平均径を求めた。
上記浸炭後の各試験片につき、回転曲げ試験およびローラーピッチング試験を行った。まず、回転曲げ疲労試験は、回転数3500rpmで実施し、107回の耐疲労強度にて評価した。また、ローラーピッチング試験は、すべり率40%、油温80℃の条件で10回強度(試験片表面にピッチングが発生する限界強度)で評価した。
得られた評価結果を表3に示す。
Figure 0005672740
表3に示したとおり、本発明により得られた発明例はいずれも、冷間加工性に優れかつ疲労強度にも優れていることが分かる。

Claims (4)

  1. C:0.10〜0.35質量%、
    Si:0.01〜0.50質量%、
    Mn:0.40〜1.50質量%、
    P:0.02質量%以下、
    S:0.03質量%以下、
    Al:0.04〜0.10質量%、
    Cr:0.5〜2.5質量%、
    B:0.0005〜0.0050質量%、
    Nb:0.003〜0.050質量%、
    Ti:0.003質量%以下および
    N:0.0080質量%未満
    を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなる鋼素材を、一旦、1150℃以上の温度に加熱した後に500℃以下まで冷却し、その後に1000℃以下に加熱後、850℃以上の温度にて加工を終了したのち、800〜500℃の温度域を0.1〜1.0℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする高疲労強度肌焼鋼の製造方法。
  2. C:0.10〜0.35質量%、
    Si:0.01〜0.50質量%、
    Mn:0.40〜1.50質量%、
    P:0.02質量%以下、
    S:0.03質量%以下、
    Al:0.04〜0.10質量%、
    Cr:0.5〜2.5質量%、
    B:0.0005〜0.0050質量%、
    Nb:0.003〜0.050質量%、
    Ti:0.003質量%以下および
    N:0.0080質量%未満
    を含有し、
    更に、
    Cu:1.0質量%以下、
    Ni:0.50質量%以下、および
    V:0.5質量%以下
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなる鋼素材を、一旦、1150℃以上の温度に加熱した後に500℃以下まで冷却し、その後に1000℃以下に加熱後、850℃以上の温度にて加工を終了したのち、800〜500℃の温度域を0.1〜1.0℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする高疲労強度肌焼鋼の製造方法。
  3. 前記鋼素材は、更に、
    Ca:0.0005〜0.0050質量%および
    Mg:0.0002〜0.0020質量%
    の1種または2種を含有する請求項1または2に記載の高疲労強度肌焼鋼の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の肌焼鋼に対して浸炭を施し、表面から0.4mmまでの表層域における炭素量を0.85質量%以上、かつ前記表層域における、炭化物の最大径を10μm以下、かつ平均粒子径を4μm以下に制御することを特徴とする高疲労強度浸炭材の製造方法。
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