JP3464356B2 - 耐疲労性に優れたボロン鋼歯車およびその製造方法 - Google Patents
耐疲労性に優れたボロン鋼歯車およびその製造方法Info
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Description
車の改善に関するものであり、耐疲労性および耐衝撃性
に一層優れたボロン鋼製歯車およびその製造方法に関す
るものである。
鋼材の代表的なものとして、JISG 4052(焼入
れ性を保証した構造用鋼鋼材)のSCr420(Cr:
0.85〜1.25wt.%)やSCM420(Cr:0.
85〜1.25wt.%、Mo:0.15〜0.35)が挙
げられる。しかし近年、鋼材コストの低減、加工工程の
合理化および簡略化に対する要求が強まっており、これ
に伴い下記技術の開発が望まれている。
で、主として浸炭焼入れによって表面硬化させる鋼)の
CrおよびMo含有率を下げ、コストの低減を図る。 歯車の製造工程で、熱間圧延により棒鋼を製造し、次
いで焼鈍した後に鍛造により歯車形状に加工する場合、
素材の強度を低下させ上記焼鈍を省略乃至簡略化するこ
とができる肌焼鋼を開発し、製造工程を効率化する。
しては、合金元素の含有率を減らすのが効果的である。
しかし、肌焼鋼においてはCrやMoは浸炭焼入れ性や
製品歯車の強度を確保するため重要な元素であり、いた
ずらにこれらの元素を削減することはできない。
生する肌焼鋼用合金鋼の問題を解決使用とするものとし
てボロン鋼がある。ボロンは微量の添加により焼入れ性
を大幅に向上させるので、高価な合金元素を削減したう
えで浸炭焼入れ性や歯車の強度を確保するためには有益
な元素である。しかしながら、焼入れ性向上に有効なの
は固溶ボロンであって、窒化物(BN)として存在する
ボロンはその効果を発揮しない。そこで通常のボロン鋼
では、Tiを添加してNをTiNの形態で固定し、Bが
Nと結合しないように考慮されている。このような技術
が、例えば特開昭57−70261号公報および特開昭
58−120719号公報に開示されている。
Tiは上述したようにNをTiNの形態で固定する。し
かしながら、TiNは比較的大きい角型の介在物として
鋼中に存在するので、これが疲労の起点となり、歯車に
おいてはチッピング等の面疲労や歯元疲労強度を低下さ
せる。また、角型のTiNは歯車の耐衝撃値を低下さ
せ、歯車に衝撃的な荷重がかかった場合に歯車の折損に
つながる恐れがある。そこで、このような恐れがなく、
耐疲労性および耐衝撃性に優れたボロン鋼の開発が望ま
れている。
しやすく、これが歯車の歪みを増大させ、歯車からの騒
音発生の原因になったりする。従って、この発明の目的
は、上述した問題を解決して、Ti添加型の従来のボロ
ン鋼歯車よりも靱性および疲労強度において一層優れた
ものとし、従来のSCM420が有する程度の靱性およ
び疲労強度を備え、且つ、合金元素の削減により素材を
軟質化させ、冷間または熱間鍛造前の軟化焼鈍の省略乃
至簡略化や鍛造工具の寿命延長が可能な、耐疲労性に優
れたボロン鋼歯車およびその製造方法を提供することに
ある。
観点から耐疲労性に優れたボロン鋼歯車およびその製造
方法を開発すべく鋭意研究を重ねた。その結果、Tiを
添加せず、鋼中におけるAl−B−Nの化学平衡により
決定される固溶Bの含有率を、焼入れ性に効果のある3
ppm以上に確保する方策を研究し、浸炭処理中に粒成
長を起こさず、衝撃特性および耐疲労性に優れたボロン
鋼歯車を開発するに至った。
歯車は、下記化学成分組成を有し、且つ、下記表面層硬
さを有することに特徴を有するものである。 (a)化学成分組成 C:0.10〜0.30wt.%、Si:0.01〜0.5
0wt.%、Mn:0.3〜2.0wt.%、S:0.005〜
0.050wt.%、Cr:0.10〜2.0wt.%、Nb:
0.005〜0.100wt.%、B:0.0005〜0.
0050wt.%、および、N:0.0150wt.%以下を含
有し、不純物として、P:0.030wt.%以下、Ti:
0.005wt.%以下、および、O:0.0030wt.%以
下に限定する。更に、Alを、B−(10.8/14)N≧0.
0003 wt.% の時は、0.010 wt.%≦Al≦0.150 wt.%の範
囲内、そして、B−(10.8/14)N<0.0003 wt.% の時
は、27/14{(N−(14 /10.8) B+0.024 }≦Al≦
0.150 wt.%の範囲内含有し、残部がFeおよび不可避的
不純物よりなる。
面から0.30mm以上まで形成されている。
歯車は、請求項1記載の発明において、その化学成分組
成に更に、Ni:0.01〜1.00wt.%、および、M
o:0.01〜0.50wt.%からなる群から選ばれた1
種以上を付加して含有することに特徴を有するものであ
る。
歯車の製造方法は、請求項1記載の発明の化学成分組成
(上記(イ)に同じ)を有する鋼塊または鋳片を調製
し、得られた鋼塊または鋳片を熱間圧延して丸棒を調製
し、得られた丸棒を鍛造または/および切削加工により
歯車形状に加工し、850〜1000℃の温度範囲内で
浸炭し、次いで焼入れおよび焼戻しを施すことに特徴を
有するものである。
歯車の製造方法は、請求項3記載の発明において、その
化学成分組成に更に、Ni:0.01〜1.00wt.%、
および、Mo:0.01〜0.50wt.%からなる群から
選ばれた1種以上を付加して含有することに特徴を有す
るものである。
分組成を上記の通り限定する理由を説明する。
t.% Cは鋼の強度を確保するために必要な元素である。C含
有率が0.10wt.%未満では所望の強度を確保するのが
困難であるが、0.30wt.%を超えると靱性の低下が大
きくなる。従って、C含有率は0.10〜0.30wt.%
の範囲内に限定する。
50wt.% Siはこの発明においては添加する必要はないが、製鋼
工程においてはSiはAlとの共同脱酸に効果を発揮す
る。しかしながら、Siは歯車においては浸炭性を阻害
し、0.50wt.%を超えると浸炭に長時間を要する。従
って、Si含有率は0.50wt.%以下に限定する。な
お、歯車段階では実質的に含有されなくてもよいが、通
常、0.01wt.%程度のSiは不可避的に残留する。
wt.% Mnは鋼の焼入れ性を確保し、またSをMnSとして固
定するので、靱性を向上させ、切削性を向上させるため
に必要な元素である。Mn含有率が0.3wt.%未満では
所望の強度を確保するのが困難である。一方、2.0w
t.%を超えると切削性が劣化する。従って、Mn含有率
は0.30〜2.0wt.%の範囲内に限定する。
0wt.%、 Sは切削性を確保するために必要な元素である。しかし
ながら、0.005wt.%未満では切削性が劣る。一方、
0.050wt.%を超えると靱性が劣化する。従って、S
含有率は0.005〜0.050wt.%の範囲内に限定す
る。
wt.% Crは鋼の焼入れ性を確保するために必要な元素であ
る。しかしながら、0.10wt.%未満では所望の強度を
確保するのが困難である。一方、2.0wt.%を超えると
切削性並びに靱性および疲労強度が劣化する。従って、
Cr含有率は0.10〜2.0wt.%の範囲内に限定す
る。
10wt.% 従来のボロン鋼歯車の欠点である、浸炭時の粒成長を抑
止し、歯車の歪みをなくすことは、この発明の重要課題
である。この観点からNbを添加する。NbはNbの微
細な炭窒化物をつくり、これが浸炭時の結晶の成長を抑
止するので、結晶粒の粗大化防止に有効である。この目
的のためにはNbを0.005wt.%以上添加する必要が
あるが、0.10wt.%を超えて添加しても効果は飽和
し、コストが高くなる。従って、Nb含有率は0.00
5〜0.10wt.%の範囲内に限定する。
0050wt.% Bは微量の添加により焼入れ性を確保するのに有効な元
素である。ところがBによる焼入れ性向上のためには、
窒化物(BN)、炭化物(BC)あるいは炭窒化物(B
(C、N))のような化合物となっていない固溶Bの存
在が必要である。その効果を発揮するためには固溶Bを
0.0003wt.%以上確保し、且つトータルB(以下、
単に「B」という)として0.0005wt.%以上確保す
る必要がある。固溶Bが0.0003wt.%未満だと、更
に、歯車の芯部組織が充分にマルテンサイト化せず、ベ
イナイトやフェライトが混在して靱性および疲労強度が
向上しない。一方、Bが0.0050wt.%を超えるとB
の一部は炭堋化物を形成し、靱性を低下させる。また、
炭堋化物の析出が破壊の起点になるので疲労限強度も低
くなる。従って、B含有率は0.0005〜0.005
0wt.%の範囲内に限定する。
30wt.%以下に限定する。
下 従来のボロン鋼歯車の欠点である、TiN介在物の生成
を抑止して疲労強度および靱性を向上させることは、こ
の発明の重要課題である。この観点からTi含有率を低
く限定する。そして、Ti含有率を低く限定することに
伴い、鋼材中のTiの固定機能をAl含有率を適切に添
加することにより解決する。TiはNとの結合力が強く
TiNを生成する。しかしながら、これは比較的大きい
介在物を形成するので、疲労強度および靱性を低下させ
る原因となる。従って、本発明ではTiは不純物であり
できるだけ少ない方がよい。そしてTiが0.005w
t.%を超えると、上記弊害が現れる。従って、Ti含有
率は0.005wt.%以下としなければならない。
介在物と同様に疲労強度および靱性を低下させる原因と
なる。従って、本発明ではOは不純物でありできるだけ
少ない方がよい。そしてOが0.0030wt.%を超える
と、上記弊害が現れる。従って、O含有率は0.003
0wt.%以下としなければならない。
せるのでBの焼入れ性効果を減ずる。しかし、NはAl
と結合して微細なAlNを析出し結晶粒の粗大化を抑止
する。しかし、Nが0.0150wt.%を超えると、製鋼
時に窒素ガスのブローホールを生じ易くなり、靱性およ
び疲労限低下の原因となるので、Nは0.0150wt.%
以下としなければならない。
その理由は次の通りである。上述した通り、この発明に
おいてNは微細なAlNの形態で有用な作用をする。従
って、下記(ヲ)の項で限定する通りのAl含有率が確
保されれば、Nの下限値を限定する必要はない。一方、
鋼材中のN含有率は、通常、製鋼段階終了時点、即ち、
鋳造終了時までに定まる。そして、この発明における歯
車の対象となる鋼材のN含有率は、製鋼段階で脱Nを目
的とする真空脱ガス処理をしない限り、大半の場合、
0.002乃至0.003wt.%以上含有されることが経
験上知られている。脱Nを目的とする上記真空脱ガス処
理はコストが余分にかかる。よって、N含有率の下限値
は設けるべきではない。
炉(例えば電気炉の場合)により、製鋼段階終了時のN
含有率は0.0150wt.%程度となることもあり得るの
で、上記理由により上限値を限定する。
し、0.0150wt.%以下とする。そして下限値は限定
しない。 (ヲ)アルミニウム(Al)含有率: B−(10.8 /14) N≧0.0003 wt.% ------------ (1) の時は、 0.010 wt.%≦Al≦0.150 wt.% ------------ (2) B−(10.8 /14) N<0.0003 wt.% -------------(3) の時は、 (27 /14){N−(14/10.8)B+0.024 }≦Al≦0.150 wt.% -------------(4) Alは脱酸剤として必要な元素であると同時に、本発明
においては固溶Bを確保するためにも必要な元素であ
る。AlがNを固定したときに生成するAlNは、Ti
がNを固定して生成する比較的大型なTiN介在物とは
異なり、微細な析出物となるので疲労強度や靱性を低下
させる原因とはならないばかりか、逆に結晶粒を微細化
することによって疲労強度や靱性を向上させる効果を有
する。これが、従来型のTi添加ボロン鋼よりも疲労強
度や靱性に格段に優れた歯車が得られる要因である。
Nと結合し易い合金元素がないとNは全量、Bと結合す
る。従って、Bの含有率が、化学量論的にNと結合する
B量より0.0003wt.%以上多い場合、即ち、下記
(1)式: B−(10.8/14)N≧0.0003wt.% ----------(1) を満たす場合には、0.0003wt.%以上の固溶Bが確
保される。(1)式の意味は、例えば、B=0.002
5wt.%の時は、(1)式により、N≦0.0029wt.%
が得られるから、Nが0.0029wt.%以下であれば固
溶Bを0.0003wt.%以上残すことができることを示
すものである。
り立つときは、固溶Bが0.0003wt.%以上確保され
るから、Al含有率の下限は、脱酸に必要な量だけあれ
ばよい。Alが0.010wt.%未満では脱酸が十分でな
く、酸素量が0.0030wt.%を超えアルミナ系介在物
による疲労強度および靱性の低下原因となる。一方、A
lを0.150wt.%を超えて添加すると、連続鋳造時の
ノズル詰まりの発生や、アルミナクラスター介在物の発
現により靱性の低下を招く。従って、Al含有率は、下
記(2)式: 0.010≦Al≦0.150wt.% ------------(2) に限定すべきである。
Bが化学量論的にNと結合するB量を差し引いた残部の
Bが0.0003wt.%未満の場合、即ち、下記(2)
式: B−(10.8/14)N<0.0003wt.% ----------(3) の場合は、他にNと結合し易い合金元素がない限り、N
は全量、Bと結合するので、固溶Bを0.0003wt.%
以上確保することができない。そこで、Nと比較的結合
し易いAlの量を増やし、Bと結合するNの量を減らし
てBが焼入れ性向上に有効に作用するようにする。即
ち、固溶B量を0.0003wt.%以上に確保する。その
際、Alの上限値を0.150wt.%超えに増やすと、上
記と同じく疲労強度および靱性が低下するので増やして
はならず、下限値のみを増やす。
における通常の焼入温度920℃で固溶Bを0.000
3wt.%以上確保する。そのためには、Al−B−N系の
化学平衡に基づき本発明者が実験的に見い出した下記
(5)式: (27/14){N−(14/10.8)B+0.024}≦Al ------------(5) を満たすように、Alを、NおよびB含有率に応じて添
加することが必要である。(5)式は、例えば、N=
0.0030wt.%でB=0.0025wt.%のときは、A
lを0.047wt.%以上、N=0.0100wt.%でB=
0.0025wt.%のときは、Alを0.060wt.%以上
添加する必要があることを示す。
も、Alが0.010wt.%未満では脱酸が十分でなく、
酸素量が0.0030wt.%を超えてアルミナ系介在物に
よる疲労強度および靱性の低下原因となる。一方、Al
を0.150wt.%を超えて添加すると、連続鋳造時のノ
ズル詰まりや歯車の靱性の低下を招く。従って、Al含
有率は、(3)式の場合であっても、少なくとも0.0
10≦Al≦0.150wt.%を満たさなければならず、
更に、上述したように、下限は(5)式によって定まる
値でなければならない。ところが、B含有率とN含有率
との間に(3)式の関係があるときは、(5)式の左辺
は常に0.046と算出される。
り定まる値(NおよびB含有率に依存して定まる値)で
あり、上限は常に0.150wt.%とすべきである。即
ち、Al含有率は上記(4)式を満たす範囲内に限定す
べきである。
値のN含有率への依存性を、B含有率が0.0005、
0.0025および0.0050wt.%の各場合について
例示する。図1について説明する。
N≦0.0003wt.%なら、Alを0.010wt.%以上
添加すれば固溶Nを0.0003wt.%以上に確保するこ
とができるが、N>0.0003wt.%となるとAlを
0.046wt.%超え添加しなければ固溶Bを0.000
3wt.%以上に確保することができない。即ち、通常得ら
れるN含有率として例えば、N=0.0030wt.%ある
いは0.0150wt.%のときには、それぞれAl=0.
051wt.%以上あるいは0.075wt.%以上添加しなけ
れば固溶Bを0.0003wt.%以上に確保することがで
きない。ところが、 B=0.0050wt.%と高くなったとき:Nが、N≦
0.0061wt.%なら、Alを0.010wt.%以上添加
すれば固溶Bを0.0003wt.%以上に確保することが
できる。そして、N=0.0061wt.%超えあるいは
0.0150wt.%のときは、それぞれAl=0.046
wt.%超えあるいは0.064wt.%以上添加すれば固溶B
を0.0003wt.%以上に確保することができる。
は0.0004wt.%以上確保するのが望ましく、そのた
めには、Al含有率を下記(6)式: 27/14(N−14/10.8B+0.033)≦Al≦0.150wt.% ------------(6) を満たすようにしなければならないことを本発明者は見
い出した。例えば、N=0.0030wt.%でB=0.0
025wt.%のときは、Alの範囲は0.063≦Al≦
0.150wt.%となる。
下、モリブデン(Mo):0.5wt.%以下 NiおよびMoはいずれも、強度および靱性を向上させ
る作用を有する。歯車に与えようとする所定の強度およ
び靱性の大きさに応じた量を添加する。Ni:1wt.%以
下(添加しない場合も含む)およびMo:0.5wt.%以
下(添加しない場合も含む)の両方またはいずれか一方
を添加する。NiおよびMoは高価な元素であるから、
コスト高にならないようにするために上限を定める。
の快削性を向上させる元素を適宜添加してもよい。この
他にCuおよびSn等の不可避的に混入する元素を不純
物として含んでもよい。
成を有する鋼塊または鋳片を上述した通りの製造方法に
限定した理由を説明する。丸棒を熱間圧延により調製す
るのは、コストが安価で効率よく製造することができる
からである。次に、従来は、素材である上記丸棒を歯車
形状に加工するに先立って軟化焼鈍を施し、素材の強度
を適切に下げて次工程の鍛造性または/および切削加工
性をよくすると共に、鍛造工具や切削工具の延命を図っ
ていた。これに対して、請求項3記載の発明では、素材
の強度を下げるためにMo添加を全く行わず、軟化焼鈍
を省略乃至簡略化(焼鈍時間の短縮化等)し、そして鍛
造、切削加工を行なうことができる。
を、850〜1000℃の温度範囲内で浸炭する。浸炭
温度をこのように広範囲にとることができるのは、鋼の
化学成分組成を上記の通り限定したためである。浸炭温
度を広範囲にとることができるので、浸炭処理工程の管
理が容易で且つ工程運用がやり易い。次いで行なう焼入
れおよび焼戻しの条件は常法によればよく、特に限定す
る必要はない。
歯車の製造方法を、実施例によって更に詳細に説明す
る。実施例は試験1〜試験3で行なった。
有率を0.0025wt.%で一定とし、AlおよびN含有
率を種々変化させた化学成分組成の鋼(鋼1〜9)のそ
れぞれを150kg真空溶解し鋼塊を調製した。
示す。図2で斜線内部は、B含有率=0.0025wt.%
の場合の本発明の範囲内のAlおよびN含有率の組合わ
せ領域を示す。従って、鋼1〜5は本発明の範囲内の化
学成分組成を有し、鋼6、7および9はAl含有率のみ
が本発明の範囲外、そして鋼8はN含有率が本発明の範
囲外の化学成分組成を有する。上記各鋼塊を70mmφ
棒に熱間圧延し、次いで熱間鍛造および切削によりモジ
ュ−ル2.5、歯数28枚の歯車形状に加工した。これ
らの歯車を920℃×5hrの浸炭処理後、840℃か
ら焼入れをし、170℃で焼戻しを行った。なお、熱間
圧延以降の製造方法は本発明の範囲内である。
通り製造された歯車をそれぞれ、実施例1〜5および比
較例6〜9という。このようにして得られた各歯車を試
験に供した。
ッカース硬さHV ≧550で表わし測定した。また、浸
炭および熱処理後の歯車からJIS3号の衝撃試験片を
採取し、室温での衝撃試験を行なった。一方、歯車をシ
ョットピ−ンニング処理後、疲労試験を行って歯車の疲
労限強度を求めた。上記試験結果を図3に示す。
囲内にある実施例1〜5はいずれも、浸炭・焼入れ後の
硬化層深さが0.55mm前後と良好であり、且つ、衝
撃値および疲労限強度も十分高い。
本発明の範囲外である比較例6〜9はいずれも、硬化層
深さ、衝撃値および疲労限強度の内少なくとも一つにお
いて劣っている。即ち、比較例6は、Al含有率が本発
明の範囲より低く(0.010wt.%未満)脱酸不良のた
め、靱性および疲労限強度とも低い。
25wt.%で本発明の範囲内にあるが、N=0.0065
wt.%であるから上記(3)式のときに該当し、Al含有
率は(4)式を満たさなければならないが、その下限値
よりも小さい。従って、固溶Bが0.0003wt.%以上
に確保されていない。よって、焼入れ性不足のため硬化
層が浅く、芯部組織が十分にマルテンサイト化しておら
ずベイナイトやフェライトが混在して靱性および疲労限
強度も低い。
0.0156wt.%であるから、B−(10.8/14)
N=−0.0095wt.% となる。従って、(3)式が
成り立つ時に該当する。そこで(5)式の左辺:(27
/14){N−(14/10.8)B+0.024}を
計算すると、0.070wt.%となるので、(5)式は、
0.070wt.%≦Al≦0.150wt.%となる。比較例
8のAl含有率は図2によれば、0.107wt.%であ
る。従って、Al含有率は十分含まれているので、固溶
Bは0.0003wt.%以上に確保されている。従って、
硬化層深さは約0.6mmあり良好である。しかしなが
ら、N含有率が本発明の範囲より高い(0.0156w
t.%)ので、鋼中に窒素ガスのブローホールが発生した
ため靱性が不足し、また疲労限強度も低い。
で、アルミナクラスター介在物の発現により靱性が不足
し、また疲労限強度も低い。 〔試験2〕表2に示す鋼Bのように、N含有率を0.0
050wt.%で一定とし、BおよびN含有率を種々変化さ
せた化学成分組成の鋼(鋼10〜18)のそれぞれを1
50kg真空溶解し鋼塊を調製した。
に示す。図4で斜線内部は、N含有率=0.0050w
t.%の場合の本発明の範囲内のAlおよびB含有率の組
合わせ領域を示す。従って、鋼10〜14は本発明の範
囲内の化学成分組成を有し、鋼15、16および18は
Al含有率のみが本発明の範囲外、そして鋼17はN含
有率が本発明の範囲外の化学成分組成を有する。上記各
鋼塊を試験1と同じく、70mmφ棒に熱間圧延し、次
いで熱間鍛造および切削によりモジュ−ル2.5、歯数
28枚の歯車形状に加工した。これらの歯車を920℃
×5hrの浸炭処理後、840℃から焼入れをし、17
0℃で焼戻しを行った。なお、この熱間圧延以降の製造
方法は本発明の範囲内である。
ら上記の通り製造された歯車をそれぞれ、実施例10〜
14および比較例15〜18という。このようにして得
られた各歯車を試験1と同じ試験をし、歯車の硬化層深
さ、衝撃値および疲労限強度を求めた。試験結果を図5
に示す。
囲内にある実施例10〜14はいずれも、浸炭・焼入れ
後の硬化層深さが0.60mm前後と良好であり、且
つ、衝撃値および疲労限強度も十分高い。
本発明の範囲外である比較例15〜18はいずれも、硬
化層深さ、衝撃値および疲労限強度の内少なくとも一つ
において劣っている。即ち、比較例15はB(トータル
B)としては0.0016wt.%で本発明の範囲内にある
が、N含有率=0.0050wt.%であるから上記(3)
式のときに該当する。従って、Al含有率は(4)式を
満たさなければならないが、その下限値よりも小さい。
従って、固溶Bが0.0003wt.%以上に確保されてい
ない。よって、焼入れ性不足のため硬化層が浅く、ま
た、マルテンサイトへの変態が不完全で、内部の強度も
不足して靱性および疲労限強度も低い。
より低く(0.010wt.%未満)脱酸不良のため、靱性
および疲労限強度とも低い。比較例17は、B含有率が
本発明の範囲より高い(0.0055wt.%)ので靱性が
低下し、疲労限強度も低い。
いため、靱性が不足し、また疲労限強度も低い。 〔試験3〕表3に示す化学成分組成の鋼(鋼19〜3
2)のそれぞれを150kg真空溶解し鋼塊を調製し
た。上記各鋼塊を試験1および2と同じく、70mmφ
棒に熱間圧延し、必要に応じて軟化焼鈍した後、冷間鍛
造および切削によりモジュ−ル2.5、歯数28枚の歯
車形状に加工した。これらの歯車を本発明の範囲内の各
種温度で5hrの浸炭処理をした後、840℃から焼入
れをし、170℃で焼戻しを行った。
組成および製造方法のものであり、一方、鋼25〜32
は少なくとも一つの化学成分組成が本発明の範囲外のも
のである。
ら上記の通り製造された歯車をそれぞれ、実施例19〜
24および比較例25〜32という。このようにして得
られた各歯車を試験1および2と同じ試験をし、歯車の
硬化層深さ、衝撃値および疲労限強度を求めた。試験結
果を表3に併記する。
例19〜24はいずれも、浸炭・焼入れ後の硬化層深さ
が0.3mm以上と良好であり、且つ、衝撃値および疲
労限強度も良好なものであった。
本発明の範囲外である比較例25〜32はいずれも、硬
化層深さ、衝撃値および疲労限強度の内少なくとも一つ
において劣っている。即ち、比較例25は、CおよびO
含有率が本発明の範囲内より高いので、靱性が低い。
が本発明の範囲内より高いので、靱性および疲労限強度
が低い。比較例27は、本発明の範囲内よりC含有率が
低いので硬化層が0.3mm以下と浅く疲労強度が低
い。一方S含有率が高いので靱性および疲労限強度も低
い。
有率が低く、Nb含有率が高いので靱性および疲労強度
が低い。比較例29は、Ti含有率が本発明の範囲内
(0.005wt.%以下)より高いので靱性および疲労強
度共に低い。
内より高いので、靱性および疲労強度が低い。比較例3
1は、TiでNを固定した従来型のボロン鋼であるが、
Tiが本発明の範囲内より高いので、靱性および疲労強
度共に低い。
り、NbおよびBを含有しないので本発明の範囲外であ
るが、靱性および疲労特性共に優れている。しかしなが
ら、比較例32では、棒に熱間圧延後、歯車形状に冷間
鍛造する前に軟化焼鈍をする必要がある。これに対し
て、実施例19においては、熱間圧延ままの素材強度が
910N/mm2 から680N/mm2 に低下し、これ
によって鍛造前の軟化焼鈍を省略することができた。ま
た、他の実施例ではいずれも、焼鈍時間を短縮すること
ができた。
Ti添加型の従来型のボロン鋼歯車より格段に優れた靱
性および疲労強度を有し、従来のSCM420と同等の
靱性および疲労強度特性を有する歯車が得られる。ま
た、請求項1および2記載の発明によれば、従来のSC
M420よりも合金元素の削減が可能になり、これによ
って素材が軟質化するので従来鋼で行なわれていた軟化
焼鈍を省略乃至簡略化することができ、また、鍛造工具
の寿命が延び、切削性が向上するという利点を有する。
このように耐疲労性に優れたボロン鋼歯車およびその製
造方法を提供することができ、工業上有用な効果がもた
らされる。
への依存性を、B含有率が0.0005、0.0025
および0.0050wt.%の各場合について示すグラフで
ある。
発明の範囲内のAlおよびN含有率を示す領域と、実施
例および比較例のAlおよびN含有率をプロットしたグ
ラフである。
示すグラフである。
発明の範囲内のAlおよびB含有率を示す領域と、実施
例および比較例のAlおよびB含有率をプロットしたグ
ラフである。
を示すグラフである。
Claims (4)
- 【請求項1】 C :0.10〜0.30wt.%、 Si:0.01〜0.50wt.%、 Mn:0.3〜2.0wt.%、 S :0.005〜0.050wt.%、 Cr:0.10〜2.0wt.%、 Nb:0.005〜0.100wt.%、 B :0.0005〜0.0050wt.%、および、 N :0.0150wt.%以下 を含有し、不純物としての下記元素の含有率を、 P :0.030wt.%以下、 Ti:0.005wt.%以下、および、 O :0.0030wt.%以下 に限定し、さらにAlを、 B−(10.8/14)N≧0.0003 wt.% の時は、 0.010 wt.%≦Al≦0.150 wt.%、そして、 B−(10.8/14)N<0.0003 wt.% の時は、 27/14{(N−(14 /10.8) B+0.024 }≦Al≦0.15
0 wt.% 含有し、残部鉄および不可避的不純物よりなる化学成分
組成を有し、且つ、ビッカ−ス硬さHv≧550である
有効硬化層深さが表面から0.30mm以上まで形成さ
れていることを特徴とする、耐疲労性に優れたボロン鋼
歯車。 - 【請求項2】 請求項1記載の発明の化学成分組成に、
更に、 Ni:0.01〜1.00wt.%、および、 Mo:0.01〜0.50wt.% からなる群から選ばれた1種以上を付加して含有する、
請求項1記載の耐疲労性に優れたボロン鋼歯車。 - 【請求項3】 C :0.10〜0.30wt.%、 Si:0.01〜0.50wt.%、 Mn:0.3〜2.0wt.%、 S :0.005〜0.050wt.%、 Cr:0.10〜2.0wt.%、 Nb:0.005〜0.100wt.%、 B :0.0005〜0.0050wt.%、および、 N :0.0150wt.%以下 を含有し、不純物としての下記元素の含有率を、 P :0.030wt.%以下、 Ti:0.005wt.%以下、および、 O :0.0030wt.%以下 に限定し、さらにAlを、 B−(10.8/14)N≧0.0003 wt.% の時は、 0.010 wt.%≦Al≦0.150 wt.%、そして、 B−(10.8/14)N<0.0003 wt.% の時は、 27/14{(N−(14 /10.8) B+0.024 }≦Al≦0.15
0 wt.% 含有し、残部鉄および不可避的不純物よりなる化学成分
組成を有する鋼塊または鋳片を調製し、得られた前記鋼
塊または鋳片を熱間圧延して丸棒を調製し、得られた前
記丸棒を鍛造または/および切削加工により歯車形状に
加工し、850〜1000℃の温度範囲内で浸炭し、次
いで焼入れおよび焼戻しを施すことを特徴とする、耐疲
労性に優れたボロン鋼歯車の製造方法。 - 【請求項4】 請求項3記載の発明の化学成分組成に、
更に、 Ni:0.01〜1.00wt.%、および、 Mo:0.01〜0.50wt.% からなる群から選ばれた1種以上を付加して含有する、
請求項3記載の耐疲労性に優れたボロン鋼歯車の製造方
法。
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