JP4060225B2 - 快削熱間工具鋼 - Google Patents
快削熱間工具鋼 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4060225B2 JP4060225B2 JP2003097597A JP2003097597A JP4060225B2 JP 4060225 B2 JP4060225 B2 JP 4060225B2 JP 2003097597 A JP2003097597 A JP 2003097597A JP 2003097597 A JP2003097597 A JP 2003097597A JP 4060225 B2 JP4060225 B2 JP 4060225B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- tool steel
- work tool
- less
- hot work
- toughness
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
- Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被削性に優れた熱間工具鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱間金型において、耐ヒートチェック性、耐割れ性は重要な特性であり、これらの特性を高めるためには、靱性の向上が必須である。一方で、最近、金型コスト低減および製作期間短縮の観点から被削性の向上が求められているが、靱性と被削性は、一般的に相反する特性であり、両者を兼備する熱間工具鋼の開発が望まれている。それらの開発の一つとして、例えば特開昭53−16315号公報(特許文献1)は、SとZrを複合添加することにより、S単独添加による効果を上回る被削性の向上、硫化物の延伸の抑制を図っている。また、特開平2−285049号公報(特許文献2)は、35〜55Hs級のプラスチック金型用快削鋼において、Bおよび硼化物、CaおよびCa化合物、PおよびP化合物が快削性の付与に有効であることが開示されている。
【0003】
また、特開平2−285050号公報(特許文献3)は、50〜70Hs級のプラスチック金型用快削鋼に関するもので、快削性の付与については、上記特許文献2と同じで、Alを脱酸および金属間化合物形成元素として、0.6〜1.5%添加してAlを0.1%以下に制限したことが開示されている。
さらに、特開平3−64429号公報(特許文献4)は、O含有量を規制することによって、B酸化物の生成を抑制し、また、Ti,Zr,REMなどの窒化物形成傾向の強い元素の含有量を規制することによって窒化物の生成を抑制し、窒化物BNの析出が十分に得られるように成分を限定している。
【0004】
【引用文献】
(1)特許文献1(特開昭53−16315号公報)
(2)特許文献2(特開平2−285049号公報)
(3)特許文献3(特開平2−285050号公報)
(4)特許文献4(特開平3−64429号公報)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した特許文献1の場合は、SとZrを複合添加することにより、S単独添加による効果を上回る被削性の向上、硫化物の延伸の抑制を図っているが、衝撃値の異方性が大きい。また、特許文献2の場合は、硬さが熱間工具鋼として不十分である。また、特許文献3の場合は、Alを積極的に金属間化合物形成元素として添加するものであり、さらに、特許文献4の場合は、窒化物BNの析出が十分に得られるように成分を限定しているものであるが、いずれも靱性および耐ヒートチェック性として十分でないという問題がある。
【0006】
上述したような問題を解消するために発明者らは鋭意開発を進めた結果、従来、工具鋼の快削化に適用されてきた硫化物ではなく、BNを切削時の潤滑材として用いることにより、靱性を低下させることなく、被削性の向上を図る優れた熱間工具鋼を提供するものである。その発明の要旨とするところは、
(1)質量%で、C:0.15〜0.6%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.1〜0.7%、Cr:3.5〜6.0%、B:0.0003〜0.02%、N:0.003〜0.08%、Al:0.10%以下、O:20ppm以下、を含有し、かつ、W,Moの1種または2種が、Mo+1/2W:0.9〜2.3、V,Nbの1種または2種が、V+1/2Nb:0.11〜1.84、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とる快削熱間工具鋼。
(2)前記(1)に加えて、Ni:0.05〜1.2%を含有させたことを特徴とする快削熱間工具鋼である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る成分組成の限定理由について述べる。
C:0.15〜0.6%
Cは、焼入焼戻時の硬さを向上させる重要な元素であるが、しかし、0.15%未満ではその効果が十分でなく、また、0.6%を超えると靱性を低下させることから、その範囲を0.15〜0.6%とする。
Si:0.1〜1.5%
Siは、製鋼時脱酸剤として有用であり、耐酸化性および焼入性を向上させる元素である。しかし、0.1%未満ではその効果が十分でなく、1.5%を超えると熱伝導性の低下および靱性が低下することから、その範囲を0.1〜1.5%とした。
【0008】
Mn:0.1〜0.7%
Mnは、Siと同様に脱酸剤として有用であり、また、焼入性を向上させる元素である。しかし、0.1%未満ではその効果が十分でなく、0.7%を超えると硫化物形成(MnS)による靱性を低下させることから、その範囲を0.1〜0.7%とした。
Cr:3.5〜6.0%
Crは、耐食性および硬質炭化物を形成し耐摩耗性並びに焼入性を向上させる元素である。しかし、3.5%未満ではその効果が十分でなく、6.0%を超えると高温軟化抵抗性が低下し靱性も低下させることから、その範囲を3.5〜6.0%とした。
【0009】
B:0.0003〜0.02%
Bは、本発明の最大の特徴とするBNを形成し被削性を向上させる。しかし、0.0003%未満ではその効果が十分でなく、0.02%を超えると粒界脆化による靱性を低下させることから、その範囲を0.0003〜0.02%とした。望ましくは0.001〜0.01%とする。
N:0.003〜0.08%
Nは、Bと同様に、本発明の最大の特徴とするBNを形成し被削性を向上させる。しかし、0.003%未満ではその効果が十分でなく、0.08%を超えると粗大AlNを形成し、靱性を低下させることから、その範囲を0.003〜0.08%とした。望ましくは0.01〜0.05%とする。
【0010】
Al:0.10%以下
Alは、粗大AlNを形成し、靱性を低下させることから、その上限を0.10%とする。望ましくは0.05%以下とする。
O:20ppm以下
Oは、低融点酸化物(B2 O3 )を形成し耐ヒートチェック性を低下させる。従って、不可避的不純物であるが、特に、その上限を20ppmとした。望ましくは15ppmとする。
【0011】
Mo+1/2W:0.9〜2.3
Mo、Wは、硬質炭化物を形成し耐摩耗性を向上させ、かつ焼入性、高温軟化抵抗性および高温強度を向上させる。しかし、Mo+1/2Wが0.9未満ではその効果が十分でなく、2.3を超えると靱性を低下させることから、その範囲を0.9〜2.3とした。
V+1/2Nb:0.11〜1.84
V、Nbは、硬質炭化物を形成し耐摩耗性を向上させ、かつ結晶粒微細化させる。しかし、V+1/2Nbが0.11未満ではその効果が十分でなく、1.84を超えると靱性を低下および熱処理歪みが大きくなることから、その範囲を0.11〜1.84とした。
【0012】
Ni:0.05〜1.2%
Niは、靱性を向上させる有用な元素である。しかし、0.05%未満ではその効果が十分でなく、1.2%を超えると被削性が低下することから、その範囲を0.05〜1.2%とした。
このように、B、Nを添加することによりBNを形成させる最適範囲を定め、一方、BN形成を阻害する合金元素であるAlおよびOを制限して、B、Nが他元素との化合物を生成することを抑制したものである。
【0013】
【実施例】
以下、本発明について実施例をもって具体的に説明する。
100kg真空誘導溶解炉で溶製し、表1に示す化学成分を有する各種鋼をインゴットに鋳造し、角50H×100Wに鍛伸(加熱温度1200℃)し、焼鈍後、試験片を粗加工後焼入焼戻して仕上げ加工し、各種試験材に供した。その結果を表1に示す。表1に示す各種性能試験は以下の通りである。
(1)被削性試験
試験片:50H×100W×200L、焼鈍硬さ80〜90HRB
試験条件:SKH51製φ8ドリル、深さ12mm穿孔するのに要する時間で評価した。
【0014】
(2)シャルピー衝撃試験
試験片:50H×100WのL方向(鍛伸方向)、T方向(L方向の垂直方向)10×10×55L、焼入焼戻硬さ45HRC、10R2mmUノッチ
(3)ヒートチェック試験
試験片:φ40×100L、焼入焼戻硬さ45HRC
試験条件:650℃←→室温の加熱冷却を1000回繰返し、試験片表面に生じたクラックの平均長さで評価した。
【0015】
【表1】
【0016】
表1に示すように、No.1〜6は本発明例であり、No.7〜10は比較例である。比較例No.7はSi量が低く、O量が高いために、被削性が悪い。比較例No.8はC、Cr,B、N、Al量が高く、Mo+1/2Wが低いために、衝撃値比(T/L)および耐ヒートチェック性が悪い。比較例No.9はC量が低く、Si量が高く、また、Mo+1/2Wが高く、かつ、V+1/2Nbが低いために、被削性が悪い。比較例No.10はMn、Al、O、Ni量が高く、Cr量が低く、かつV+1/2Nbが高いために、衝撃値L方向、衝撃値比(T/L)および耐ヒートチェック性が悪い。これに対し、本発明例であるNo.1〜6はいずれの特性にも優れていることが判る。
【0017】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により被削性および靱性を兼備し、異方性の小さい熱間工具鋼を提供できる極めて優れた効果を奏するものである。
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.15〜0.6%、
Si:0.1〜1.5%、
Mn:0.1〜0.7%、
Cr:3.5〜6.0%、
B:0.0003〜0.02%、
N:0.003〜0.08%、
Al:0.10%以下、
O:20ppm以下、
を含有し、かつ、W,Moの1種または2種が、Mo+1/2W:0.9〜2.3、V,Nbの1種または2種が、V+1/2Nb:0.11〜1.84、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする快削熱間工具鋼。 - 請求項1に加えて、Ni:0.05〜1.2%を含有させたことを特徴とする快削熱間工具鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003097597A JP4060225B2 (ja) | 2003-04-01 | 2003-04-01 | 快削熱間工具鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003097597A JP4060225B2 (ja) | 2003-04-01 | 2003-04-01 | 快削熱間工具鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004300557A JP2004300557A (ja) | 2004-10-28 |
JP4060225B2 true JP4060225B2 (ja) | 2008-03-12 |
Family
ID=33409339
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003097597A Expired - Fee Related JP4060225B2 (ja) | 2003-04-01 | 2003-04-01 | 快削熱間工具鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4060225B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
SE536596C2 (sv) * | 2011-03-04 | 2014-03-18 | Uddeholms Ab | Varmarbetsstål och en process för tillverkning av ett varmarbetsstål |
-
2003
- 2003-04-01 JP JP2003097597A patent/JP4060225B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2004300557A (ja) | 2004-10-28 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5487689B2 (ja) | 油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管の製造方法 | |
EP3135777B1 (en) | Steel for mold and mold | |
US20100132429A1 (en) | Cold-work die steel and dies for cold pressing | |
JP5655366B2 (ja) | ベイナイト鋼 | |
JP2003129190A (ja) | マルテンサイト系ステンレス鋼およびその製造方法 | |
JP5974623B2 (ja) | 時効硬化型ベイナイト非調質鋼 | |
JP5815946B2 (ja) | 鋼の焼入方法 | |
JP4269293B2 (ja) | 金型用鋼 | |
JP4258772B2 (ja) | 変寸抑制特性に優れた冷間ダイス鋼 | |
JP6620490B2 (ja) | 時効硬化性鋼 | |
JP2007308784A (ja) | 合金鋼 | |
JP5351528B2 (ja) | 冷間金型用鋼および金型 | |
JP5061455B2 (ja) | 水冷孔からの割れが抑制されたアルミニウムダイカスト用熱間工具鋼 | |
JP2005336553A (ja) | 熱間工具鋼 | |
JP2000226635A (ja) | 高温強度と靱性に優れた熱間工具鋼 | |
JP5762217B2 (ja) | 被削性に優れた熱間鍛造用非調質鋼 | |
JP4060225B2 (ja) | 快削熱間工具鋼 | |
JP2010132998A (ja) | 高強度及び冷鍛性に優れた高耐食フェライト系ステンレス鋼の製造方法 | |
JP4877688B2 (ja) | 被削性に優れたオーステナイト工具鋼及びオーステナイト工具の製造方法 | |
JP4487257B2 (ja) | 変寸抑制特性に優れた冷間ダイス鋼 | |
JP2021147624A (ja) | 熱間加工用金型用鋼、熱間加工用金型およびその製造方法 | |
JP4290459B2 (ja) | 快削熱間工具鋼 | |
JP4347033B2 (ja) | プリハードン金型用鋼の製造方法 | |
KR20210035238A (ko) | 열간 공구강 및 열간 공구 | |
JPH07316742A (ja) | 耐銹性に優れた高強度マルテンサイト系ステンレス鋼および冷間成形加工品の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050812 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070822 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070904 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20071002 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20071030 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20071126 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20071218 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20071219 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101228 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111228 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121228 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121228 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131228 Year of fee payment: 6 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |