JP2000226635A - 高温強度と靱性に優れた熱間工具鋼 - Google Patents
高温強度と靱性に優れた熱間工具鋼Info
- Publication number
- JP2000226635A JP2000226635A JP11028385A JP2838599A JP2000226635A JP 2000226635 A JP2000226635 A JP 2000226635A JP 11028385 A JP11028385 A JP 11028385A JP 2838599 A JP2838599 A JP 2838599A JP 2000226635 A JP2000226635 A JP 2000226635A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- toughness
- temperature strength
- less
- bainite
- content
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Landscapes
- Heat Treatment Of Articles (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【解決手段】 重量％で、Ｃ：０．２５〜０．４０％、
Ｓｉ：０．１０〜１．００％未満、Ｍｎ：０．３０〜
１．５０％、Ｎｉ：０．５０〜２．００％、Ｃｒ：２．
７０〜５．５０％、Ｍｏ：２．００〜３．００％、Ｖ：
０．５０％を超え、１．００％以下、Ｂ：０．０００５
〜０．０１００％、Ａｌ：０．００５〜０．１０％未満
を含有し、残部はＦｅ及び不可避的不純物で、不純物中
のＰは０．０１５％以下、Ｓは０．００５％以下、Ｎは
０．０１５％以下であり、かつ、焼入時の組織がマルテ
ンサイト＋ベイナイトで、そのうちのベイナイト率が５
〜８０％である高温強度と靱性に優れた熱間工具鋼。 【効果】 高温強度と靱性を、従来技術では成し得なか
った高いレベルで両立させることができ、熱間鍛造、押
し出し、ダイカストに用いられる金型や、マンドレル等
に使用した場合には、その工具寿命を延ばすことが可能
である。
Ｓｉ：０．１０〜１．００％未満、Ｍｎ：０．３０〜
１．５０％、Ｎｉ：０．５０〜２．００％、Ｃｒ：２．
７０〜５．５０％、Ｍｏ：２．００〜３．００％、Ｖ：
０．５０％を超え、１．００％以下、Ｂ：０．０００５
〜０．０１００％、Ａｌ：０．００５〜０．１０％未満
を含有し、残部はＦｅ及び不可避的不純物で、不純物中
のＰは０．０１５％以下、Ｓは０．００５％以下、Ｎは
０．０１５％以下であり、かつ、焼入時の組織がマルテ
ンサイト＋ベイナイトで、そのうちのベイナイト率が５
〜８０％である高温強度と靱性に優れた熱間工具鋼。 【効果】 高温強度と靱性を、従来技術では成し得なか
った高いレベルで両立させることができ、熱間鍛造、押
し出し、ダイカストに用いられる金型や、マンドレル等
に使用した場合には、その工具寿命を延ばすことが可能
である。
Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば熱間鍛造用
金型、押し出し型、ダイカスト金型の使用に適した、高
温強度と靱性に優れた熱間工具鋼に関するものである。
金型、押し出し型、ダイカスト金型の使用に適した、高
温強度と靱性に優れた熱間工具鋼に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】熱間での鍛造、押し出し、ダイカスト等
の金型に使用される工具鋼は、使用時の熱応力や作業応
力によるヒートチェックの発生、大割れ、摩耗に耐え得
るだけの十分な高温強度と靱性が要求される。
の金型に使用される工具鋼は、使用時の熱応力や作業応
力によるヒートチェックの発生、大割れ、摩耗に耐え得
るだけの十分な高温強度と靱性が要求される。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】熱間工具鋼としては、
ＪＩＳ Ｇ ４４０４に多種類のものが規定されている
が、中でも５Ｃｒ−Ｍｏ−Ｖ系のＳＫＤ６１やＳＫＤ６
２等、３Ｃｒ−３Ｍｏ−Ｖ系のＳＫＤ７、及び、Ｎｉ−
Ｃｒ−Ｍｏ−Ｖ系の低合金鋼であるＳＫＴ３やＳＫＴ４
等が多用されている。しかしながら、これらの工具鋼で
は前記の要求される高温強度と靱性を共に満足すること
は不可能である。
ＪＩＳ Ｇ ４４０４に多種類のものが規定されている
が、中でも５Ｃｒ−Ｍｏ−Ｖ系のＳＫＤ６１やＳＫＤ６
２等、３Ｃｒ−３Ｍｏ−Ｖ系のＳＫＤ７、及び、Ｎｉ−
Ｃｒ−Ｍｏ−Ｖ系の低合金鋼であるＳＫＴ３やＳＫＴ４
等が多用されている。しかしながら、これらの工具鋼で
は前記の要求される高温強度と靱性を共に満足すること
は不可能である。
【０００４】そこで、本出願人は、Ｂを添加することに
より、靱性の低下を伴わずに焼戻し後の高温強度を上昇
させるものを、特開平８−２６９６２５号で開示してい
る。また、本出願人は、特願平１０−７４３４６号で、
焼入時のマルテンサイト組織にベイナイト組織を混合さ
せることによって、マルテンサイト組織に比べて靱性は
若干低下するものの、焼戻し後の高温強度を上昇させる
ものを提案している。しかしながら、これらにあって
も、用途によっては、前記の要求される特性を得るには
不十分である。
より、靱性の低下を伴わずに焼戻し後の高温強度を上昇
させるものを、特開平８−２６９６２５号で開示してい
る。また、本出願人は、特願平１０−７４３４６号で、
焼入時のマルテンサイト組織にベイナイト組織を混合さ
せることによって、マルテンサイト組織に比べて靱性は
若干低下するものの、焼戻し後の高温強度を上昇させる
ものを提案している。しかしながら、これらにあって
も、用途によっては、前記の要求される特性を得るには
不十分である。
【０００５】本発明は、上記した現状に鑑みてなされた
ものであり、高温強度と靱性が共に優れた熱間工具鋼を
提供することを目的としている。
ものであり、高温強度と靱性が共に優れた熱間工具鋼を
提供することを目的としている。
【０００６】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明の高温強度と靱性に優れた熱間工具鋼
は、Ｂを添加すると共に、焼入時の組織がマルテンサイ
ト＋ベイナイトで、そのうちのベイナイト率が５〜８０
％とすることとしている。そして、このようにすること
で、高温強度と靱性を高いレベルで両立させることがで
きる。
ために、本発明の高温強度と靱性に優れた熱間工具鋼
は、Ｂを添加すると共に、焼入時の組織がマルテンサイ
ト＋ベイナイトで、そのうちのベイナイト率が５〜８０
％とすることとしている。そして、このようにすること
で、高温強度と靱性を高いレベルで両立させることがで
きる。
【０００７】
【発明の実施の形態】高温強度を上昇させるために、Ｂ
を添加したり、焼入時のマルテンサイト組織にベイナイ
ト組織を混合させることが有効であることは、上記した
特開平８−２６９６２５号や特願平１０−７４３４６号
によって判明しているが、本発明者らのその後の研究に
より、ある特定範囲のベイナイト率のときには、夫々の
単独の技術では成し得なかった高温強度レベルが得られ
ることを知見した。
を添加したり、焼入時のマルテンサイト組織にベイナイ
ト組織を混合させることが有効であることは、上記した
特開平８−２６９６２５号や特願平１０−７４３４６号
によって判明しているが、本発明者らのその後の研究に
より、ある特定範囲のベイナイト率のときには、夫々の
単独の技術では成し得なかった高温強度レベルが得られ
ることを知見した。
【０００８】すなわち、焼入組織へのベイナイトの混合
比率を増加させることによって、マルテンサイト組織に
比べて靱性が若干低下するものの高温強度を上昇させる
ことができるのは、ベイナイトとマルテンサイトから析
出する炭化物の形態に起因している。すなわち、焼戻し
後のベイナイトは、マルテンサイトと比較すると、粗大
な炭化物が析出するので、靱性が低下するものの、Ｍｏ
2 Ｃが微細析出するので、高温強度が上昇するからであ
る。一方、Ｂを添加した場合には、炭化物を微細に析出
させる効果があり、高温強度の低下を抑えることにな
る。
比率を増加させることによって、マルテンサイト組織に
比べて靱性が若干低下するものの高温強度を上昇させる
ことができるのは、ベイナイトとマルテンサイトから析
出する炭化物の形態に起因している。すなわち、焼戻し
後のベイナイトは、マルテンサイトと比較すると、粗大
な炭化物が析出するので、靱性が低下するものの、Ｍｏ
2 Ｃが微細析出するので、高温強度が上昇するからであ
る。一方、Ｂを添加した場合には、炭化物を微細に析出
させる効果があり、高温強度の低下を抑えることにな
る。
【０００９】しかしながら、ベイナイト率が０〜４％と
低い場合には、ベイナイトからの微細炭化物の析出量が
少ないので、高温強度を上昇させる効果が小さい。反対
に、ベイナイトの混合率が８０％を超えると、微細な炭
化物量は増加するものの、粗大な炭化物も多くなるの
で、靱性を大きく低下させると考えられる。つまり、ベ
イナイトの混合率が５〜８０％の場合に、Ｂを添加した
場合には、粗大な炭化物量が少なく、微細な炭化物量が
多くなって、図１に示すように、高温強度と靱性を高い
レベルで両立させることができる。
低い場合には、ベイナイトからの微細炭化物の析出量が
少ないので、高温強度を上昇させる効果が小さい。反対
に、ベイナイトの混合率が８０％を超えると、微細な炭
化物量は増加するものの、粗大な炭化物も多くなるの
で、靱性を大きく低下させると考えられる。つまり、ベ
イナイトの混合率が５〜８０％の場合に、Ｂを添加した
場合には、粗大な炭化物量が少なく、微細な炭化物量が
多くなって、図１に示すように、高温強度と靱性を高い
レベルで両立させることができる。
【００１０】本発明の高温強度と靱性に優れた熱間工具
鋼は、上記知見に加え、その他の元素の影響を調査した
結果に基づいて成されたものであり、重量％で、Ｃ：
０．２５〜０．４０％、Ｓｉ：０．１０〜１．００％未
満、Ｍｎ：０．３０〜１．５０％、Ｎｉ：０．５０〜
２．００％、Ｃｒ：２．７０〜５．５０％、Ｍｏ：２．
００〜３．００％、Ｖ：０．５０％を超え、１．００％
以下、Ｂ：０．０００５〜０．０１００％、Ａｌ：０．
００５〜０．１０％未満を含有し、残部はＦｅ及び不可
避的不純物で、不純物中のＰは０．０１５％以下、Ｓは
０．００５％以下、Ｎは０．０１５％以下であり、か
つ、焼入時の組織がマルテンサイト＋ベイナイトで、そ
のうちのベイナイト率が５〜８０％であること要旨とす
るものである。
鋼は、上記知見に加え、その他の元素の影響を調査した
結果に基づいて成されたものであり、重量％で、Ｃ：
０．２５〜０．４０％、Ｓｉ：０．１０〜１．００％未
満、Ｍｎ：０．３０〜１．５０％、Ｎｉ：０．５０〜
２．００％、Ｃｒ：２．７０〜５．５０％、Ｍｏ：２．
００〜３．００％、Ｖ：０．５０％を超え、１．００％
以下、Ｂ：０．０００５〜０．０１００％、Ａｌ：０．
００５〜０．１０％未満を含有し、残部はＦｅ及び不可
避的不純物で、不純物中のＰは０．０１５％以下、Ｓは
０．００５％以下、Ｎは０．０１５％以下であり、か
つ、焼入時の組織がマルテンサイト＋ベイナイトで、そ
のうちのベイナイト率が５〜８０％であること要旨とす
るものである。
【００１１】以下に、本発明の高温強度と靱性に優れた
熱間工具鋼における成分組成を限定する理由について説
明する。 Ｃ：Ｃは鋼の焼入性を高め、靱性を向上させ、焼戻し時
に炭窒化物として二次析出して高温強度を向上させる作
用を有する。しかし、その含有量が０．２５％未満では
添加効果が乏しく、０．４０％を超えて含有させると、
被削性の低下を引き起こすため、本発明ではその含有量
を０．２５〜０．４０％とした。
熱間工具鋼における成分組成を限定する理由について説
明する。 Ｃ：Ｃは鋼の焼入性を高め、靱性を向上させ、焼戻し時
に炭窒化物として二次析出して高温強度を向上させる作
用を有する。しかし、その含有量が０．２５％未満では
添加効果が乏しく、０．４０％を超えて含有させると、
被削性の低下を引き起こすため、本発明ではその含有量
を０．２５〜０．４０％とした。
【００１２】Ｓｉ：Ｓｉは鋼の被削性を向上する作用を
有する。しかし、その含有量が０．１０％未満では添加
効果に乏しく、１．００％以上であると靱性、高温強度
を共に低下させて熱間工具寿命の低下を引き起こす。そ
こで、本発明ではその含有量を０．１０〜１．００％未
満とした。特に望ましい範囲は０．１０〜０．３０％未
満である。
有する。しかし、その含有量が０．１０％未満では添加
効果に乏しく、１．００％以上であると靱性、高温強度
を共に低下させて熱間工具寿命の低下を引き起こす。そ
こで、本発明ではその含有量を０．１０〜１．００％未
満とした。特に望ましい範囲は０．１０〜０．３０％未
満である。
【００１３】Ｍｎ：Ｍｎは鋼の焼入性を向上させて靱性
を高めるのに有効な元素である。しかし、その含有量が
０．３０％未満では添加効果が得られず、１．５０％を
超えると偏析が生じて靱性、強度を低下するようになる
ので、本発明ではその含有量を０．３０〜１．５０％と
した。
を高めるのに有効な元素である。しかし、その含有量が
０．３０％未満では添加効果が得られず、１．５０％を
超えると偏析が生じて靱性、強度を低下するようになる
ので、本発明ではその含有量を０．３０〜１．５０％と
した。
【００１４】Ｎｉ：ＮｉもＭｎと同様に焼入性を向上さ
せて靱性を改善するのに有効な元素であるが、その含有
量が０．５０％未満ではその効果が乏しく、２．００％
を超えると変態点を下げて高温強度の低下を招く。従っ
て、本発明ではその含有量を０．５０〜２．００％とし
た。
せて靱性を改善するのに有効な元素であるが、その含有
量が０．５０％未満ではその効果が乏しく、２．００％
を超えると変態点を下げて高温強度の低下を招く。従っ
て、本発明ではその含有量を０．５０〜２．００％とし
た。
【００１５】Ｃｒ：Ｃｒは靱性、耐摩耗性の向上に有効
な元素であるが、その含有量が２．７０％未満では十分
な効果が得られず、５．５０％を超えると高温強度の低
下を招くようになるので、本発明ではその含有量を２．
７０〜５．５０％とした。より望ましい範囲は、３．５
０〜４．５０％である。
な元素であるが、その含有量が２．７０％未満では十分
な効果が得られず、５．５０％を超えると高温強度の低
下を招くようになるので、本発明ではその含有量を２．
７０〜５．５０％とした。より望ましい範囲は、３．５
０〜４．５０％である。
【００１６】Ｍｏ：Ｍｏは鋼の焼入性と焼戻し軟化抵抗
を向上させて、靱性と高温強度を高める作用を有する。
しかし、その含有量が２．００％未満では添加効果が得
られない。一方、３．００％を超えると被削性、靱性が
低下する。従って、本発明ではその含有量を２．００〜
３．００％とした。
を向上させて、靱性と高温強度を高める作用を有する。
しかし、その含有量が２．００％未満では添加効果が得
られない。一方、３．００％を超えると被削性、靱性が
低下する。従って、本発明ではその含有量を２．００〜
３．００％とした。
【００１７】Ｖ：Ｖは高温強度を高めるのに必要な元素
である。Ｖの含有量が０．５０％未満であるとその効果
が乏しく、１．００％以上では被削性と靱性を悪化させ
る。そこで、本発明ではその含有量を０．５０％を超
え、１．００％以下とした。
である。Ｖの含有量が０．５０％未満であるとその効果
が乏しく、１．００％以上では被削性と靱性を悪化させ
る。そこで、本発明ではその含有量を０．５０％を超
え、１．００％以下とした。
【００１８】Ｂ：Ｂは鋼中で固溶Ｂを形成し、高温時の
炭化物の粒成長を抑制し、高温強度の低下を防止する。
しかし、０．０００５％未満ではその効果が得られず、
０．０１００％を超えると靱性が低下するので、本発明
ではその含有量を０．０００５〜０．０１００％とし
た。
炭化物の粒成長を抑制し、高温強度の低下を防止する。
しかし、０．０００５％未満ではその効果が得られず、
０．０１００％を超えると靱性が低下するので、本発明
ではその含有量を０．０００５〜０．０１００％とし
た。
【００１９】Ａｌ：Ａｌは鋼の脱酸の安定化及び均質化
を図るのに有効な元素であり、その含有量が０．００５
％未満ではその効果を得ることができない。また、０．
１０％以上では被削性の低下や鋼中の地きずの原因とな
る。そのため、本発明ではその含有量を０．００５〜
０．１０％未満とした。
を図るのに有効な元素であり、その含有量が０．００５
％未満ではその効果を得ることができない。また、０．
１０％以上では被削性の低下や鋼中の地きずの原因とな
る。そのため、本発明ではその含有量を０．００５〜
０．１０％未満とした。
【００２０】本発明の熱間工具鋼では、不純物元素とし
てのＰ，Ｓ及びＮの含有量を夫々下記の通り規制する。 Ｐ：Ｐは含有量が多いと偏析が大きくなり、靱性の低下
や熱亀裂の発生を助長するので、その含有量は可能な限
り少ないことが望ましい。そこで、本発明ではその含有
量を０．０１５％以下に限定した。
てのＰ，Ｓ及びＮの含有量を夫々下記の通り規制する。 Ｐ：Ｐは含有量が多いと偏析が大きくなり、靱性の低下
や熱亀裂の発生を助長するので、その含有量は可能な限
り少ないことが望ましい。そこで、本発明ではその含有
量を０．０１５％以下に限定した。
【００２１】Ｓ：Ｓは硫化物を形成し、被削性を向上さ
せるが、靱性を低下させるので、含有量は可能な限り少
ないことが望ましい。そこで、本発明ではその含有量を
０．００５％以下に限定した。
せるが、靱性を低下させるので、含有量は可能な限り少
ないことが望ましい。そこで、本発明ではその含有量を
０．００５％以下に限定した。
【００２２】Ｎ：ＮはＶと窒化物を形成して焼入加熱時
の固溶Ｖ量を減少させる。固溶Ｖ量が少ないと焼戻し時
に二次析出するＶ炭窒化物の量が減少し、高温強度が低
下する。そこで、本発明ではその含有量を０．０１５％
以下に限定した。
の固溶Ｖ量を減少させる。固溶Ｖ量が少ないと焼戻し時
に二次析出するＶ炭窒化物の量が減少し、高温強度が低
下する。そこで、本発明ではその含有量を０．０１５％
以下に限定した。
【００２３】焼入組織：本発明が対象とする焼入時の組
織はマルテンサイトとベイナイトの混合組織に限定され
る。この時の混合組織のベイナイトの混合比率を示すベ
イナイト率は、厚さ１０ｍｍの素材を焼入れする際に、
水冷した場合の素材の硬さをＨ１、室温まで２０時間か
けて冷却した場合の素材の硬さをＨ２とし、実際に熱処
理をしたときの素材の硬さをＨとしたとき、下記の式
によって算出される。なお、硬さはビッカース硬さで表
示する。 ベイナイト率（％）＝１００−（Ｈ−Ｈ２）／（Ｈ１−Ｈ２）×１００…
織はマルテンサイトとベイナイトの混合組織に限定され
る。この時の混合組織のベイナイトの混合比率を示すベ
イナイト率は、厚さ１０ｍｍの素材を焼入れする際に、
水冷した場合の素材の硬さをＨ１、室温まで２０時間か
けて冷却した場合の素材の硬さをＨ２とし、実際に熱処
理をしたときの素材の硬さをＨとしたとき、下記の式
によって算出される。なお、硬さはビッカース硬さで表
示する。 ベイナイト率（％）＝１００−（Ｈ−Ｈ２）／（Ｈ１−Ｈ２）×１００…
【００２４】本発明者らの実験によれば、図１に示した
ように、ベイナイト率が０（１００％マルテンサイト）
〜４％のときは、Ｂを添加しても、高温強度の低下が著
しく、反対に、ベイナイト率が８０％を超えるときは、
Ｂ添加による高温強度の低下の抑制効果がなく、しか
も、靱性の低下をも招く。そこで、本発明ではベイナイ
ト率を５〜８０％に限定した。
ように、ベイナイト率が０（１００％マルテンサイト）
〜４％のときは、Ｂを添加しても、高温強度の低下が著
しく、反対に、ベイナイト率が８０％を超えるときは、
Ｂ添加による高温強度の低下の抑制効果がなく、しか
も、靱性の低下をも招く。そこで、本発明ではベイナイ
ト率を５〜８０％に限定した。
【００２５】
【実施例】本発明の熱間工具鋼の効果を実施例に基づい
て説明する。下記表１に示す成分組成を有する本発明鋼
（Ｎｏ．２２〜Ｎｏ．３７）、並びに、＊印を付した成
分が本発明で規定する範囲から外れる比較鋼（Ｎｏ．１
〜Ｎｏ．２１及びＮｏ．３８〜Ｎｏ．５１、このうちＮ
ｏ．１６はＪＩＳ ＳＫＤ６１）を、電気炉を溶製して
得た鋼塊を分塊し、鍛錬比５以上で鍛造した後、８００
〜８５０℃で焼鈍した。焼入組織を変化させるために、
厚さを１０〜８００ｍｍにし、９００〜１０５０℃から
水冷、油冷、炉冷により焼入を実施した。そして、引き
続き、焼戻しを５５０〜６４０℃で行い、硬さＨＳ５５
〜６０に調整して金型を製造し、高温強度試験と破壊靱
性試験を実施した。このうち、高温強度試験は、ＪＩＳ
１４Ａ 号試験片（直径Ｄ＝６ｍｍ）にて、ＪＩＳ
Ｇ ０５６７に準拠し、７００℃の試験温度で行い、
０．２％耐力を測定した。また、破壊靱性試験は、ＡＳ
ＴＭ Ｅ３９９ ８３に準じて測定した。
て説明する。下記表１に示す成分組成を有する本発明鋼
（Ｎｏ．２２〜Ｎｏ．３７）、並びに、＊印を付した成
分が本発明で規定する範囲から外れる比較鋼（Ｎｏ．１
〜Ｎｏ．２１及びＮｏ．３８〜Ｎｏ．５１、このうちＮ
ｏ．１６はＪＩＳ ＳＫＤ６１）を、電気炉を溶製して
得た鋼塊を分塊し、鍛錬比５以上で鍛造した後、８００
〜８５０℃で焼鈍した。焼入組織を変化させるために、
厚さを１０〜８００ｍｍにし、９００〜１０５０℃から
水冷、油冷、炉冷により焼入を実施した。そして、引き
続き、焼戻しを５５０〜６４０℃で行い、硬さＨＳ５５
〜６０に調整して金型を製造し、高温強度試験と破壊靱
性試験を実施した。このうち、高温強度試験は、ＪＩＳ
１４Ａ 号試験片（直径Ｄ＝６ｍｍ）にて、ＪＩＳ
Ｇ ０５６７に準拠し、７００℃の試験温度で行い、
０．２％耐力を測定した。また、破壊靱性試験は、ＡＳ
ＴＭ Ｅ３９９ ８３に準じて測定した。
【００２６】経験的に、破壊靱性値が１００ｋｇｆ／ｍ
ｍ3/2 以上、かつ、６００℃の０．２％耐力が１００ｋ
ｇｆ／ｍｍ2 以上のとき、高温強度と靱性が高いレベル
で両立し、工具寿命が優れることが判っている。下記表
１に示される本発明鋼は、下記表２に示すように、破壊
靱性値、６００℃の０．２％耐力のすべてが高いレベル
で両立し、比較鋼よりも優れている。また、本発明鋼を
熱間鍛造金型として評価した例を下記表３に示すが、い
ずれも比較鋼よりも工具寿命が長かった。
ｍ3/2 以上、かつ、６００℃の０．２％耐力が１００ｋ
ｇｆ／ｍｍ2 以上のとき、高温強度と靱性が高いレベル
で両立し、工具寿命が優れることが判っている。下記表
１に示される本発明鋼は、下記表２に示すように、破壊
靱性値、６００℃の０．２％耐力のすべてが高いレベル
で両立し、比較鋼よりも優れている。また、本発明鋼を
熱間鍛造金型として評価した例を下記表３に示すが、い
ずれも比較鋼よりも工具寿命が長かった。
【００２７】
【表１】
【００２８】
【表２】
【００２９】
【表３】
【００３０】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の熱間工具
鋼は、高温強度と靱性を、従来技術では成し得なかった
高いレベルで両立させることができ、熱間鍛造、押し出
し、ダイカストに用いられる金型や、マンドレル等に使
用した場合には、その工具寿命を延ばすことが可能であ
る。
鋼は、高温強度と靱性を、従来技術では成し得なかった
高いレベルで両立させることができ、熱間鍛造、押し出
し、ダイカストに用いられる金型や、マンドレル等に使
用した場合には、その工具寿命を延ばすことが可能であ
る。
【図１】ベイナイト率を変化させた場合の、破壊靱性値
と、０．２％耐力を、Ｂを添加した場合と、添加しない
場合とで測定した結果を示した図である。
と、０．２％耐力を、Ｂを添加した場合と、添加しない
場合とで測定した結果を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 近藤 邦夫 大阪府大阪市中央区北浜４丁目５番33号 住友金属工業株式会社内
Claims (1)
- 【請求項１】 重量％で、Ｃ：０．２５〜０．４０％、
Ｓｉ：０．１０〜１．００％未満、Ｍｎ：０．３０〜
１．５０％、Ｎｉ：０．５０〜２．００％、Ｃｒ：２．
７０〜５．５０％、Ｍｏ：２．００〜３．００％、Ｖ：
０．５０％を超え、１．００％以下、Ｂ：０．０００５
〜０．０１００％、Ａｌ：０．００５〜０．１０％未満
を含有し、残部はＦｅ及び不可避的不純物で、不純物中
のＰは０．０１５％以下、Ｓは０．００５％以下、Ｎは
０．０１５％以下であり、かつ、焼入時の組織がマルテ
ンサイト＋ベイナイトで、そのうちのベイナイト率が５
〜８０％であることを特徴とする高温強度と靱性に優れ
た熱間工具鋼。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP02838599A JP4123618B2 (ja) | 1999-02-05 | 1999-02-05 | 高温強度と靱性に優れた熱間工具鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP02838599A JP4123618B2 (ja) | 1999-02-05 | 1999-02-05 | 高温強度と靱性に優れた熱間工具鋼 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2000226635A true JP2000226635A (ja) | 2000-08-15 |
| JP4123618B2 JP4123618B2 (ja) | 2008-07-23 |
Family
ID=12247202
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP02838599A Expired - Fee Related JP4123618B2 (ja) | 1999-02-05 | 1999-02-05 | 高温強度と靱性に優れた熱間工具鋼 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP4123618B2 (ja) |
Cited By (10)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| CN102162071A (zh) * | 2010-02-23 | 2011-08-24 | 宝山钢铁股份有限公司 | 轧管用限动芯棒钢材料及其制造方法 |
| JP2012193451A (ja) * | 2011-03-03 | 2012-10-11 | Hitachi Metals Ltd | 靭性に優れた熱間工具鋼 |
| JP2013032576A (ja) * | 2011-07-04 | 2013-02-14 | Hitachi Metals Ltd | 靭性に優れた熱間工具鋼の製造方法 |
| CN103103459A (zh) * | 2013-02-18 | 2013-05-15 | 无锡市派克重型铸锻有限公司 | 一种大型风电回转支承锻件及其制造工艺 |
| EP2662460A1 (en) * | 2012-05-07 | 2013-11-13 | Valls Besitz GmbH | Tough bainitic heat treatments on steels for tooling |
| WO2014131907A1 (en) * | 2013-03-01 | 2014-09-04 | Rovalma, S.A. | High thermal diffusivity, high toughness and low crack risk during heat treatment tool steel |
| JP2015521235A (ja) * | 2012-05-07 | 2015-07-27 | ヴァルス ベジッツ ゲーエムベーハー | 優れた機械加工性を有する低温硬質鋼 |
| JP2017512913A (ja) * | 2014-03-18 | 2017-05-25 | イノマク ２１，ソシエダ リミターダ | 超高伝導低コスト鋼 |
| CN114737035A (zh) * | 2022-04-25 | 2022-07-12 | 武钢集团襄阳重型装备材料有限公司 | 一种提高热作模具钢56NiCrMoV7硬度均匀性的方法 |
| CN115181901A (zh) * | 2022-04-07 | 2022-10-14 | 燕山大学 | 一种高强韧硬低温贝氏体热作模具钢及其制备方法 |
Families Citing this family (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| CN102337464A (zh) * | 2011-09-02 | 2012-02-01 | 上海大学 | 高强韧连轧管机芯棒用钢及其制备工艺 |
-
1999
- 1999-02-05 JP JP02838599A patent/JP4123618B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (15)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| CN102162071A (zh) * | 2010-02-23 | 2011-08-24 | 宝山钢铁股份有限公司 | 轧管用限动芯棒钢材料及其制造方法 |
| JP2012193451A (ja) * | 2011-03-03 | 2012-10-11 | Hitachi Metals Ltd | 靭性に優れた熱間工具鋼 |
| JP2013032576A (ja) * | 2011-07-04 | 2013-02-14 | Hitachi Metals Ltd | 靭性に優れた熱間工具鋼の製造方法 |
| JP2015521235A (ja) * | 2012-05-07 | 2015-07-27 | ヴァルス ベジッツ ゲーエムベーハー | 優れた機械加工性を有する低温硬質鋼 |
| EP2662460A1 (en) * | 2012-05-07 | 2013-11-13 | Valls Besitz GmbH | Tough bainitic heat treatments on steels for tooling |
| WO2013167628A1 (en) * | 2012-05-07 | 2013-11-14 | Valls Besitz Gmbh | Tough bainitic heat treatments on steels for tooling |
| CN104271775A (zh) * | 2012-05-07 | 2015-01-07 | 沃斯贝茨公司 | 对用于加工的钢的韧贝氏体热处理 |
| CN103103459A (zh) * | 2013-02-18 | 2013-05-15 | 无锡市派克重型铸锻有限公司 | 一种大型风电回转支承锻件及其制造工艺 |
| WO2014131907A1 (en) * | 2013-03-01 | 2014-09-04 | Rovalma, S.A. | High thermal diffusivity, high toughness and low crack risk during heat treatment tool steel |
| JP2017512913A (ja) * | 2014-03-18 | 2017-05-25 | イノマク ２１，ソシエダ リミターダ | 超高伝導低コスト鋼 |
| JP2020111829A (ja) * | 2014-03-18 | 2020-07-27 | イノマク ２１，ソシエダ リミターダ | 超高伝導低コスト鋼 |
| JP7072268B2 (ja) | 2014-03-18 | 2022-05-20 | イノマク ２１，ソシエダ リミターダ | 超高伝導低コスト鋼 |
| CN115181901A (zh) * | 2022-04-07 | 2022-10-14 | 燕山大学 | 一种高强韧硬低温贝氏体热作模具钢及其制备方法 |
| CN115181901B (zh) * | 2022-04-07 | 2023-09-26 | 燕山大学 | 一种高强韧硬低温贝氏体热作模具钢及其制备方法 |
| CN114737035A (zh) * | 2022-04-25 | 2022-07-12 | 武钢集团襄阳重型装备材料有限公司 | 一种提高热作模具钢56NiCrMoV7硬度均匀性的方法 |
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JP4123618B2 (ja) | 2008-07-23 |
Similar Documents
| Publication | Publication Date | Title |
|---|---|---|
| JP5076683B2 (ja) | 高靭性高速度工具鋼 | |
| JP5929963B2 (ja) | 鋼の焼入方法 | |
| JP6714334B2 (ja) | 優れた熱伝導率および靱性を有する熱間工具鋼 | |
| JP6925781B2 (ja) | 優れた高温強度および靱性を有する熱間工具鋼 | |
| JP2000226635A (ja) | 高温強度と靱性に優れた熱間工具鋼 | |
| JP6798557B2 (ja) | 鋼 | |
| JP5029942B2 (ja) | 靭性に優れた熱間工具鋼 | |
| JP2021017623A (ja) | 熱伝導率に優れる熱間工具鋼 | |
| JP2021031695A (ja) | 靱性に優れた熱間工具鋼 | |
| JP3535112B2 (ja) | 耐溶損性・高温強度に優れた熱間工具鋼および該熱間工具鋼からなる高温用部材 | |
| JP5351528B2 (ja) | 冷間金型用鋼および金型 | |
| JP4186340B2 (ja) | 耐摩耗性に優れた熱間工具鋼 | |
| KR100368540B1 (ko) | 인성 및 강도가 우수한 열간·온간 겸용 저합금고속도공구강 및 그의 제조방법 | |
| JP5061455B2 (ja) | 水冷孔からの割れが抑制されたアルミニウムダイカスト用熱間工具鋼 | |
| JP2005336553A (ja) | 熱間工具鋼 | |
| JP2001158937A (ja) | 熱間加工用工具鋼とその製造方法および熱間加工用工具の製造方法 | |
| JP7149250B2 (ja) | 高温強度と靭性に優れた熱間工具鋼 | |
| JP3612459B2 (ja) | 小ロット生産用金型鋼 | |
| JP2018131654A (ja) | 優れた靱性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼 | |
| JP3780690B2 (ja) | 被削性および工具寿命に優れた熱間工具鋼 | |
| JPH09165649A (ja) | 高温強度及び破壊靭性に優れた熱間工具鋼 | |
| JP3191008B2 (ja) | 熱間工具鋼 | |
| JP2001234278A (ja) | 被削性に優れた冷間工具鋼 | |
| JP7220750B1 (ja) | 高温強度と靭性に優れた熱間工具鋼 | |
| JP7141944B2 (ja) | 非調質鍛造部品および非調質鍛造用鋼 |
Legal Events
| Date | Code | Title | Description |
|---|---|---|---|
| A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050819 |
|
| A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20071026 |
|
| A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20071127 |
|
| A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080123 |
|
| TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
| A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20080415 |
|
| A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
| A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080428 |
|
| R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
| FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110516 Year of fee payment: 3 |
|
| FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110516 Year of fee payment: 3 |
|
| FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120516 Year of fee payment: 4 |
|
| FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120516 Year of fee payment: 4 |
|
| FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130516 Year of fee payment: 5 |
|
| FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130516 Year of fee payment: 5 |
|
| S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111 |
|
| R371 | Transfer withdrawn |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R371 |
|
| FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130516 Year of fee payment: 5 |
|
| S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111 |
|
| FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130516 Year of fee payment: 5 |
|
| R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
| FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140516 Year of fee payment: 6 |
|
| LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |