JPH09165649A - 高温強度及び破壊靭性に優れた熱間工具鋼 - Google Patents

高温強度及び破壊靭性に優れた熱間工具鋼

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JPH09165649A
JPH09165649A JP32671095A JP32671095A JPH09165649A JP H09165649 A JPH09165649 A JP H09165649A JP 32671095 A JP32671095 A JP 32671095A JP 32671095 A JP32671095 A JP 32671095A JP H09165649 A JPH09165649 A JP H09165649A
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JP
Japan
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less
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steel
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high temperature
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JP32671095A
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English (en)
Inventor
Kenichi Nomoto
賢一 野元
Kunio Kondo
邦夫 近藤
Masahide Unno
正英 海野
Tomoaki Sera
知暁 瀬羅
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】工具寿命を改善するに充分な高温強度と靭性を
有する熱間工具鋼を提供する。 【解決手段】C:0.25〜0.40%、Si:0.20〜0.50%、
Mn:0.30〜1.50%、Ni:0.50〜2.00%、Cr:2.70
〜5.50%、Mo:1.00〜2.00%、V:0.50超〜0.80%、
Al: 0.005〜0.10%未満、P: 0.015%以下、S:
0.005%以下、N: 0.004%以下、残部はFeと不純物
からなる高温強度及び破壊靭性に優れた熱間工具鋼。更
に、B:0.0005〜0.01%を単独で含む場合のNは 0.007
%以下、Ti、Zr、Nbのうちの1種以上をTi
(%)+[48/91]Zr(%)+[48/93]Nb(%)
の合計で 0.005〜0.05%含む場合のNは 0.008%以下、
上記のB並びにTi、Zr、Nbのうちの1種以上を含
む場合のNは 0.010%以下でも良い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は熱間工具鋼に関し、
より詳しくは熱間鍛造用金型、ダイカスト金型やプラス
チック金型などに使用される高温強度及び靭性(なかで
も破壊靭性)に優れた熱間工具鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】熱間鍛造、熱間押出しやダイカストなど
に用いられる金型やマンドレルといった熱間工具には、
作業応力や熱応力による亀裂の発生及び摩耗などに耐え
得る充分な高温強度、耐摩耗性と靭性が要求される。
【0003】合金工具鋼鋼材としてJIS G 4404に規格化
されている鋼のうち熱間工具用としては、5CrーMo
ーV系のSKD61やSKD62など、3Cr−3Mo
−V系のSKD7及びNi−Cr−Mo−V系の低合金
鋼であるSKT3やSKT4などが多用されている。し
かし、JISに規定されているこうした合金工具鋼鋼材
では、前記した熱間工具に対する要求特性の全てを満た
すことができていないのが実状である。
【0004】このような状況に対して、高温強度や靭性
を改善して熱間工具の寿命を高めようとする技術がいく
つか提案されている。
【0005】例えば、特開平2−73951号公報には
SKD61を基本組成にしてNbを添加し、更にN量を
規制した上でZr及び/又はCeを添加することによっ
て耐熱疲労特性を向上させる技術が提案されている。し
かし、この公報に開示されている鋼にはNiが含まれて
いないので、靭性低下の問題を避け難いという問題があ
った。
【0006】特開昭53−70940号公報には、低〜
中Cr−Mo(W)−V−Niを基本成分とし、これに
Nb、Ta、Al、Zr、TiなどNとの親和力の大き
い元素を添加して表面窒化層の特性を改善して寿命を高
める技術が開示されている。
【0007】しかし、この公報で提案された鋼にはN
b、Ta、Al、Zr、Tiの多量の添加が必要であ
り、母材の靭性が低下してしまう場合があった。
【0008】特開昭55−21548号、特開昭55−
24973号、特開昭56−5956号、特開昭56−
35756号、特開昭56−35757号、特開昭60
−56055号、特開平1−123051号、特開平2
−57632号、特開平3−31445号の各公報には
Nb、Ta、TiやZrの添加により結晶粒を微細化し
て靭性を高める技術が述べられている。しかし、結晶粒
の微細化は靭性と常温強度の向上には有効であるもの
の、高温強度は逆に低下してしまう場合もあるという問
題を有していた。
【0009】特開昭57−23048号、特開昭58−
123859号、特開昭58−123860号及び特開
昭58−123861号の各公報にはTi、Zr及びN
bを添加し、これらの元素の2次析出を利用して熱間工
具の高温強度を向上させる技術が提案されている。しか
しTi、Zr及びNbはいずれも焼入れの加熱時におい
て固溶量が小さく、従って、2次析出量は非常に少な
い。このため、上記した元素の2次析出によって高温強
度の向上を図るには多量の添加が必要となるのでコスト
が嵩んでしまい、経済性の面で問題である。
【0010】上記の特開昭57−23048号、特開昭
58−123859号、特開昭58−123860号及
び特開昭58−123861号の各公報、並びに特開昭
59−166657号公報には、B添加により焼入性を
高めて熱間工具の靭性を向上させる技術が開示されてい
る。しかしながら、上記の各公報に記載の鋼にはN含有
量に対する配慮がなされていないために、溶製チャンス
によってNの含有量がばらつくとBの焼入性向上効果も
ばらつくこととなり、必ずしも熱間工具の靭性が安定し
て向上するというものでもなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上記した様に、熱間工
具に対して所望の高温強度と靭性とを兼備させることは
困難な状況にある。
【0012】加えて近年、熱間加工に対する要求がます
ます厳しくなってきた。例えば、熱間鍛造サイクルの高
速化や複雑な製品形状が要求されており、熱間工具の使
用条件も一層過酷なものとなって、従来技術により得ら
れる工具鋼を使用したのでは充分な熱間工具寿命を実現
し難くなっている。
【0013】本発明は、かかる現状に鑑みなされたもの
で、工具寿命を改善するに充分な高温強度と靭性を有す
る熱間工具鋼の提供を課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題
を解決するためにJISのSKD61を基本組成とする
熱間工具鋼の特性に及ぼす各種元素の影響について検討
を重ねた。その結果、先ず、上記成分系の熱間工具鋼の
靭性改善にはMn及びNiの含有量を増やすことが非常
に効果的であることを見出した。しかし、これらの元素
の増量は高温強度の低下を招くことも同時に判明した。
【0015】そこで、MnとNiの増量がもたらす靭性
改善効果を維持しつつ高温強度を向上させるために更な
る検討を加えた。その結果、溶製チャンスによって高温
強度が変化し、性能に大きなばらつきが生ずることが判
明した。この現象に関して詳細に解析したところ、従来
は制御されることが殆どなかったN含有量が大きく影響
していることが明らかになった。
【0016】次いで、表1に示す組成を基本組成とする
鋼について、N含有量を0.002〜0.008重量%
の範囲で変化させて溶製した。これらの鋼を用いて、通
常の方法で100mm厚さ×100mm幅の角材を作製
し、これを素材として1000℃に加熱して空冷する焼
入れを行い、その後600〜630℃で4hr加熱の焼
戻しを行った。各Nレベルの鋼について、常温(室温)
硬さがロックウェルC硬さで42に調整された角材から
JIS14A号の引張試験片(直径D=6mm)を切り
出し、600℃で引張試験を行った。この引張試験の結
果、図1に示すように、N含有量を低減すれば、特にN
含有量を0.004重量%以下に低減すれば高温強度が
著しく増大することが明らかになった。
【0017】なお、常温硬さをロックウェルC硬さで4
2に調整した角材から採取した試験片を用いて600℃
で引張試験を行ったのは、熱間加工時に工具は600℃
程度まで昇温するが、常温でロックウェルC硬さ42程
度を有しておれば工具に生ずる摩耗を防止できるとの経
験に基づくものである。
【0018】次いで、この高温強度の変化の原因を解明
するためにN含有量が0.008重量%の鋼と0.00
2重量%の鋼を用いて、焼入れまま及び焼入れ焼戻し後
の基地中の析出物を抽出残渣法により定量分析した。そ
の結果、図2に示す様に、焼戻しまで終えた両方の鋼に
おいて析出物(V炭窒化物)として存在するVの量はほ
ぼ同じであるのに対して、焼入れままでは未固溶のV炭
窒化物として存在するV量が0.008重量%のNを含
む鋼では多く、N含有量が0.002重量%の鋼では少
ない。この結果は、N含有量を低減することにより、焼
入れの加熱処理でオ−ステナイト中に固溶するV量が増
加し、このため焼戻しによりV炭窒化物として2次析出
するV量が増加することを意味する。
【0019】上記の2次析出したV炭窒化物は析出強化
に寄与する。従って、鋼中のN含有量を低減して焼入れ
時の固溶V量を増加させると、2次析出するV炭窒化物
の量が増加して高温強度が向上することとなる。
【0020】
【表1】
【0021】ところで、現在工業的に行われている通常
の製鋼法で恒常的にN含有量を0.004%以下に規制
することは技術的に困難であり、又、かなりのコスト上
昇を伴うものである。この場合、Nとの親和力がVより
も大きい元素であるB、Ti、ZrやNbを同時添加す
れば、これらの元素によってNが固定されるため、鋼中
のVを有効に活用することが可能になると考えられる。
【0022】そこで次に、表2に示すBを添加した組成
を基本組成とする鋼について、N含有量を0.002〜
0.010重量%の範囲で変化させて溶製した。これら
の鋼を用いて、通常の方法で100mm厚さ×100m
m幅の角材を作製し、これを素材として1000℃に加
熱して空冷する焼入れを行い、その後600〜630℃
で4hr加熱の焼戻しを行った。各Nレベルの鋼につい
て、常温(室温)硬さがロックウェルC硬さで42に調
整された上記寸法の角材からJIS14A号の引張試験
片(直径D=6mm)を切り出し、600℃で引張試験
を行った。
【0023】
【表2】
【0024】この引張試験の結果、図3に示すように、
N含有量を0.007重量%以下に低減すれば高温強度
が著しく増大することが明らかになった。
【0025】同様にTi、Zr及びNbのうちの1種以
上を添加した場合にはN含有量を0.008%重量以下
に、又、B並びに、Ti、Zr及びNbのうちの1種以
上を同時に添加した場合にはN含有量を0.01重量%
以下に規制すると、高温強度が向上することが明らかに
なった。
【0026】本発明は、上記の知見に基づいてなされた
もので、下記(1)〜(4)の高温強度及び靭性に優れ
た熱間工具鋼を要旨とする。
【0027】(1)重量%で、C:0.25〜0.40
%、Si:0.20〜0.50%、Mn:0.30〜
1.50%、Ni:0.50〜2.00%、Cr:2.
70〜5.50%、Mo:1.00〜2.00%、V:
0.50%を超え0.80%まで、Al:0.005〜
0.10%未満を含有し、残部はFe及び不可避不純物
からなり、不純物中のPは0.015%以下、Sは0.
005%以下、Nは0.004%以下であることを特徴
とする高温強度及び破壊靭性に優れた熱間工具鋼。
【0028】(2)重量%で、C:0.25〜0.40
%、Si:0.20〜0.50%、Mn:0.30〜
1.50%、Ni:0.50〜2.00%、Cr:2.
70〜5.50%、Mo:1.00〜2.00%、V:
0.50%を超え0.80%まで、Al:0.005〜
0.10%未満、B:0.0005〜0.01%を含有
し、残部はFe及び不可避不純物からなり、不純物中の
Pは0.015%以下、Sは0.005%以下、Nは
0.007%以下であることを特徴とする高温強度及び
破壊靭性に優れた熱間工具鋼。
【0029】(3)重量%で、C:0.25〜0.40
%、Si:0.20〜0.50%、Mn:0.30〜
1.50%、Ni:0.50〜2.00%、Cr:2.
70〜5.50%、Mo:1.00〜2.00%、V:
0.50%を超え0.80%まで、Al:0.005〜
0.10%未満、Ti、Zr及びNbのうちの1種以上
をTi(%)+[48/91]Zr(%)+[48/9
3]Nb(%)の合計で0.005〜0.05%を含有
し、残部はFe及び不可避不純物からなり、不純物中の
Pは0.015%以下、Sは0.005%以下、Nは
0.008%以下であることを特徴とする高温強度及び
破壊靭性に優れた熱間工具鋼。
【0030】(4)重量%で、C:0.25〜0.40
%、Si:0.20〜0.50%、Mn:0.30〜
1.50%、Ni:0.50〜2.00%、Cr:2.
70〜5.50%、Mo:1.00〜2.00%、V:
0.50%を超え0.80%まで、Al:0.005〜
0.10%未満、B:0.0005〜0.01%、並び
にTi、Zr及びNbのうちの1種以上をTi(%)+
[48/91]Zr(%)+[48/93]Nb(%)
の合計で0.005〜0.05%を含有し、残部はFe
及び不可避不純物からなり、不純物中のPは0.015
%以下、Sは0.005%以下、Nは0.010%以下
であることを特徴とする高温強度及び破壊靭性に優れた
熱間工具鋼。
【0031】
【発明の実施の形態】以下に、本発明における鋼の化学
組成を上記のように限定する理由について説明する。な
お、「%」は「重量%」を意味する。
【0032】C:Cは鋼の焼入性を高めると共に、焼戻
し時に炭窒化物(なかでもV炭窒化物)として2次析出
して高温強度を向上させる作用を有する。しかし、その
含有量が0.25%未満では添加効果に乏しく、一方、
0.40%を超えて含有させると却って高温強度の低下
をきたす。従って、Cの含有量を0.25〜0.40%
とした。
【0033】Si:Siは鋼の被削性を向上する作用を
有する。しかし、その含有量が0.20%未満では添加
効果に乏しく、一方、0.50%を超えると高温強度の
著しい低下をきたすようになる。従って、Siの含有量
を0.20〜0.50%とした。
【0034】Mn:Mnは鋼の焼入性を向上させて靭性
を高めるのに有効な元素である。しかし、その含有量が
0.30%未満では所望の効果が得られず、1.50%
を超えると偏析が生じて靭性と強度の低下を招くように
なるので、Mnの含有量を0.30〜1.50%とし
た。
【0035】Ni:NiもMnと同様に鋼の焼入性を向
上させて靭性を改善するのに有効な元素である。しか
し、その含有量が0.50%未満では添加効果に乏し
く、一方、2.00%を超えると変態点を下げて高温強
度の低下をきたす。従って、Niの含有量を0.50〜
2.00%とした。
【0036】Cr:Crは焼入性、靭性及び耐摩耗性の
向上に有効な元素である。しかし、その含有量が2.7
0%未満では充分な効果が得られず、5.50%を超え
ると高温強度や被削性の低下を招くようになるので、C
rの含有量を2.70〜5.50%とした。
【0037】Mo:Moは鋼の焼入性と焼戻し軟化抵抗
を向上させて、靭性と高温強度を高める作用を有する。
しかし、その含有量が1.00%未満では所望の効果が
得られず、一方、2.00%を超えると靭性の低下をき
たす。従って、Moの含有量を1.00〜2.00%と
した。
【0038】V:Vは本発明において特に重要な意味を
持つ。すなわち、Vは焼戻し時に炭窒化物を形成して、
熱間工具の高温強度を高めるのに最も寄与する元素であ
る。本発明における検討では焼戻しにより2次析出する
V炭窒化物の量が多いほど高温強度向上の効果が大きい
ことが判明した。しかし、Vの含有量が0.50%以下
では前記の効果が得難く、0.80%を超えて含有させ
ると靭性の低下をきたす。
【0039】従って、Vの含有量を0.50%を超え
0.80%までとした。
【0040】Al:Alは鋼の脱酸の安定化及び均質化
を図るのに有効な元素であるが、その含有量が0.00
5%未満では所望の効果を得ることができない。一方、
0.10%以上ではブルームや製品の疵の原因となる。
従って、Alの含有量を0.005〜0.10%未満と
した。
【0041】本発明の高温強度及び靭性に優れた熱間工
具鋼には、上記の成分に加えて更に、B、Ti、Zr及
びNbのうちの1種以上を含んでいても良い。これらの
合金元素の作用効果と望ましい含有量は下記のとおりで
ある。
【0042】B:Bは脱N剤として作用し、焼入れ時の
固溶V量を増加させて熱間工具の高温強度を高める効果
を有する。このため、安定した高温強度を確保する目的
で含有させるが、0.0005%未満ではその効果が小
さく、一方、0.01%を超えて含有させると靭性劣化
をきたすようになる。従って、Bを添加する場合には
0.0005〜0.01%の含有量とするのが良い。
【0043】Ti、Zr及びNb:Ti、Zr及びNb
も脱N剤として作用し、Bと同様に焼入れ時の固溶V量
を増加させて熱間工具の高温強度を高める効果を有す
る。更に、焼入れの加熱時にオ−ステナイト中に固溶し
ておれば、それ自体焼戻し時に析出して高温強度を高め
る効果も有する。
【0044】しかし、Ti(%)+[48/91]Zr
(%)+[48/93]Nb(%)の合計で0.005
%未満の含有量では所望の効果が得られず、又、前記の
式の合計で0.05%を超えて含有させると靭性劣化を
きたすようになる。従って、これらの合金元素を1種以
上添加する場合には、Ti(%)+[48/91]Zr
(%)+[48/93]Nb(%)の合計で0.005
〜0.05%の含有量とするのが良い。
【0045】本発明においては不純物元素としてのP、
S及びNはそれぞれ下記のとおりに規制する。
【0046】P:Pを多量に含有すると偏析が生じて靭
性の劣化をきたし、更に熱亀裂の発生が促進される。従
って、不純物としてのPは可及的に低減することが望ま
しい。そこで、本発明ではPの許容上限を0.015%
とした。なお、不純物としてのPは0.01%以下まで
低減することが好ましい。
【0047】S:Sは硫化物を形成して靭性を低下させ
るので、極力その含有量を低く制限することが必要であ
る。従って、本発明では不純物としてのS含有量を0.
005%以下とした。
【0048】N:NはVと窒化物を形成して焼入れ加熱
時の固溶V量を減少させてしまう。固溶V量が少ないと
焼戻し時に2次析出するV炭窒化物の量も必然的に減少
し、高温強度が低下する。
【0049】本発明ではB、Ti、Zr及びNbのいず
れをも含まない場合においては、N含有量が0.004
%を超えると高温強度が低下する。Bを含んでTi、Z
r及びNbのいずれをも含まない場合においては、N含
有量が0.007%を超えると高温強度が低下する。
又、Bを含まずにTi、Zr及びNbのうちの1種以上
を含む場合においては、N含有量が0.008%を超え
ると高温強度が低下する。更に、B並びにTi、Zr及
びNbのうちの1種以上を含む場合においては、N含有
量が0.010%を超えると高温強度が低下する。
【0050】従って、本発明では不純物としてのN含有
量を、B、Ti、Zr及びNbのいずれをも含まない
場合には0.004%以下、Bを含んでTi、Zr及
びNbのいずれをも含まない場合には0.007%以
下、Bを含まずにTi、Zr及びNbのうちの1種以
上を含む場合には0.008%以下、B並びにTi、
Zr及びNbのうちの1種以上を含む場合には0.01
0%以下とした。
【0051】なお、一層安定して高い高温強度を確保す
るために、不純物としてのN含有量を、上記のの場合
には0.003%以下に、の場合には0.004%以
下に、の場合には0.005%以下に、の場合には
0.008%以下に規制することが好ましい。
【0052】
【実施例】表3〜5に示す化学組成を有する鋼を通常の
方法により試験炉を用いて真空溶製した。表3、4にお
ける鋼1、2、4、5、8〜18及び21〜28は本発
明鋼であり、鋼3、6、7、19、20、29及び30
は成分のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から
外れた比較鋼である。なお、比較鋼のうち鋼3はJIS
のSKD61をベースにした従来鋼である。
【0053】次いで、これらの本発明鋼及び比較鋼を通
常の方法によって鋼片となした後、1200℃に加熱し
てから1200〜900℃の温度で100mm厚さ×1
00mm幅の角材に熱間鍛造し、その後常温まで空冷し
た。
【0054】こうして得られた熱間鍛造ままの角材を1
000℃に加熱・保持してから空冷(空気焼入れ)し、
600〜640℃で焼戻しを行い、各鋼について常温
(室温)硬さをロックウェルC硬さで42に調整して、
600℃での引張試験による降伏強度と常温(室温)で
の破壊靭性を調査した。
【0055】引張試験は、上記の熱処理を施した角材か
らJIS14A号試験片(直径D=6mm)を切り出
し、JIS G 0567に準拠して行った。また、破壊靭性試験
はASTME399-83に準じて長さ方向から試験片を採取して
行った。試験結果を表6に示す。
【0056】又、各鋼の鋼片を1200℃に加熱してか
ら1200〜900℃の温度で280mm厚さ×320
mm幅の角材に熱間鍛造し、その後1000℃に加熱・
保持して油焼入れし、更に590℃で焼戻しを行い、熱
間鍛造金型を得た。金型寸法は250mm厚さ×300
mm幅×750mm長さである。
【0057】得られた金型を、6500t熱間プレスに
て実際の型鍛造に供し、寿命を測定した。なお熱間鍛造
金型の寿命は、型彫り面の欠損やへたり摩耗により金型
が著しく損傷して型鍛造の継続が不能になるまでの型打
ち数で評価した。この結果も表6に併せて示す。
【0058】表6から、600℃における降伏強度は、
従来鋼である鋼3では571MPaであるのに対し、本
発明鋼では633MPaを最高に何れも600MPa以
上の高強度が得られている。一方、比較鋼である鋼7、
20及び30では、いずれもN含有量が本発明で規定す
る値を超えるため、B、Ti、Zr及びNbを添加して
Nを固定しているにも関わらず、高温強度向上の効果が
小さいことが明らかである。
【0059】破壊靭性についても、本発明鋼ではいずれ
も従来鋼である鋼3とほぼ同様の良好な値が得られてい
る。これに対して比較鋼である鋼6、19及び29では
B、Ti、Zr、Nbの含有量が本発明で規定する範囲
を超えているため、破壊靭性値は低いものである。
【0060】金型寿命に関しては、本発明鋼を用いて作
製した熱間鍛造金型ではいずれも従来鋼である鋼3を用
いて作製した金型の寿命の70%増し程度に長寿命化
し、10000回以上の型打ちが可能であった。しか
し、比較鋼を用いて作製した熱間鍛造金型の寿命は、破
壊靭性が従来鋼である鋼3と同等のレベルであっても高
温強度の改善が不十分であったり、高温強度が従来鋼に
比べて充分大きくても破壊靭性値が従来鋼よりも低いた
めに、型打ち回数は8000回前後と従来鋼を用いた金
型に比べて大きく向上することはなかった。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
【発明の効果】本発明による高温強度及び靭性に優れた
熱間工具鋼は、600℃における降伏強度が600MP
aを超え、常温での破壊靭性値はJISのSKD61を
ベースにした従来鋼と同程度の良好な値を有している。
従って、本発明鋼を用いれば、熱間鍛造、熱間押出しや
ダイカストなどに用いられる金型やマンドレルといった
熱間工具の寿命を延ばすことが可能で、産業上の効果は
非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】B、Ti、Zr及びNbのいずれをも含まない
鋼材をロックウェルC硬さで42に調整した場合の60
0℃降伏強度に及ぼすN含有量の影響を示す図である。
【図2】ベースの化学組成が同じでN含有量の異なる鋼
について、焼入れまま及び焼入れ焼戻し後の析出V量を
示す図である。
【図3】Bを含んでTi、Zr及びNbのいずれをも含
まない鋼材をロックウェルC硬さで42に調整した場合
の600℃降伏強度に及ぼすN含有量の影響を示す図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 海野 正英 大阪府大阪市此花区島屋5丁目1番109号 住友金属工業株式会社関西製造所製鋼品事 業所内 (72)発明者 瀬羅 知暁 大阪府大阪市此花区島屋5丁目1番109号 住友金属工業株式会社関西製造所製鋼品事 業所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.25〜0.40%、S
    i:0.20〜0.50%、Mn:0.30〜1.50
    %、Ni:0.50〜2.00%、Cr:2.70〜
    5.50%、Mo:1.00〜2.00%、V:0.5
    0%を超え0.80%まで、Al:0.005〜0.1
    0%未満を含有し、残部はFe及び不可避不純物からな
    り、不純物中のPは0.015%以下、Sは0.005
    %以下、Nは0.004%以下であることを特徴とする
    高温強度及び破壊靭性に優れた熱間工具鋼。
  2. 【請求項2】重量%で、C:0.25〜0.40%、S
    i:0.20〜0.50%、Mn:0.30〜1.50
    %、Ni:0.50〜2.00%、Cr:2.70〜
    5.50%、Mo:1.00〜2.00%、V:0.5
    0%を超え0.80%まで、Al:0.005〜0.1
    0%未満、B:0.0005〜0.01%を含有し、残
    部はFe及び不可避不純物からなり、不純物中のPは
    0.015%以下、Sは0.005%以下、Nは0.0
    07%以下であることを特徴とする高温強度及び破壊靭
    性に優れた熱間工具鋼。
  3. 【請求項3】重量%で、C:0.25〜0.40%、S
    i:0.20〜0.50%、Mn:0.30〜1.50
    %、Ni:0.50〜2.00%、Cr:2.70〜
    5.50%、Mo:1.00〜2.00%、V:0.5
    0%を超え0.80%まで、Al:0.005〜0.1
    0%未満、Ti、Zr及びNbのうちの1種以上をTi
    (%)+[48/91]Zr(%)+[48/93]N
    b(%)の合計で0.005〜0.05%を含有し、残
    部はFe及び不可避不純物からなり、不純物中のPは
    0.015%以下、Sは0.005%以下、Nは0.0
    08%以下であることを特徴とする高温強度及び破壊靭
    性に優れた熱間工具鋼。
  4. 【請求項4】重量%で、C:0.25〜0.40%、S
    i:0.20〜0.50%、Mn:0.30〜1.50
    %、Ni:0.50〜2.00%、Cr:2.70〜
    5.50%、Mo:1.00〜2.00%、V:0.5
    0%を超え0.80%まで、Al:0.005〜0.1
    0%未満、B:0.0005〜0.01%、並びにT
    i、Zr及びNbのうちの1種以上をTi(%)+[4
    8/91]Zr(%)+[48/93]Nb(%)の合
    計で0.005〜0.05%を含有し、残部はFe及び
    不可避不純物からなり、不純物中のPは0.015%以
    下、Sは0.005%以下、Nは0.010%以下であ
    ることを特徴とする高温強度及び破壊靭性に優れた熱間
    工具鋼。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009517546A (ja) * 2005-11-29 2009-04-30 オウベル・アンド・デュヴァル 熱間工具鋼及び当該鋼から製造される部品、部品を製造する方法及び部品の使用
JP2011195917A (ja) * 2010-03-23 2011-10-06 Sanyo Special Steel Co Ltd 靱性に優れた熱間工具鋼
JP2013087322A (ja) * 2011-10-18 2013-05-13 Sanyo Special Steel Co Ltd 熱間金型用鋼
CN111057950A (zh) * 2019-12-27 2020-04-24 潘少俊 一种耐高温和高韧性的热作模具钢及其制备方法
CN111057934A (zh) * 2019-12-24 2020-04-24 潘少俊 一种高性能热作模具钢及其生产工艺

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