JP7141944B2 - 非調質鍛造部品および非調質鍛造用鋼 - Google Patents

非調質鍛造部品および非調質鍛造用鋼 Download PDF

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本発明は、非調質鍛造部品および非調質鍛造用鋼に関する。特に、高強度でありながら、優れた製造性、特には優れた連続鋳造性を示す非調質鍛造部品および非調質鍛造用鋼に関する。
コンロッド等の自動車用部品として用いられる鍛造部品には、自動車の軽量化等に伴い、更なる高強度化が求められている。具体的には0.2%耐力で850MPa以上、硬さに換算すると350HV以上であることが求められている。また、低コスト化や製造効率などの観点から、鍛造後に熱処理を行わない非調質鍛造部品で上記強度を達成することが求められている。
強度を高めた非調質鍛造部品として、例えば特許文献1には、C、Mn、Cr、Vなどの元素を、2Mn+5Mo+Cr≦3.1、C+Si/5+Mn/10+10P+5V≧1.8、およびCeq=C+Si/7+Mn/5+Cr/9+Vが0.90~1.10の範囲を満たすよう調整して含有させることで、硬さを330HV以上とした熱間鍛造非調質鋼部品が示されている。
特開2011-195862号公報
特許文献1は、上述の通りパラメータ式の制御を行うことで330HV以上の達成を目標としている。しかしながら、一般的にC、Mn等の元素を添加した場合、硬さを向上できるが、製造時に割れが生じやすくなる。また上記特許文献1では、一定量のVを含有させ、このVの炭窒化物を製造時に微細に析出させることで高強度化を図っている。この様なV強化型非調質鋼は、高強度化を確保できる反面、合金添加量の増加による製造性の低下、特には連続鋳造時の鋳片の内部割れや表面割れが発生しやすくなる。また合金添加量が増えることで、熱間鍛造後の冷却で過冷組織が発生し、強度が却って落ちることもある。以下では、連続鋳造時に、特に表面割れを生じさせることなく鋳造できることを、「連続鋳造性に優れた」または単に「製造性に優れた」ということがある。
上述の通り特許文献1では、製造時の割れ防止に関する知見は一切記述されておらず、高強度と製造時の割れ防止を両立した例はない。本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、高強度と、優れた製造性、特には連続鋳造時の表面割れ防止とを両立できる非調質鍛造部品と、該非調質鍛造部品の製造に有用な非調質鍛造用鋼を提供することにある。
本発明の態様1は、
C :0.40~0.60質量%、
Si:0質量%超、1.0質量%以下、
Mn:0.01~0.70質量%、
P :0質量%超、0.20質量%以下、
S :0質量%超、0.20質量%以下、
Cr:0.01~1質量%、
Al:0質量%超、0.1質量%以下、
V :0.30~0.38質量%、および
N :0質量%超、0.0080質量%以下
を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
下記式(1)~(4)を全て満たし、更に、
全組織に対するベイナイトの分率が5面積%以下であり、かつ全組織に対するフェライトの分率が25面積%以下であり、残部がパーライトであることを特徴とする非調質鍛造部品である。
1.10≦[C]+0.5×[Mn]+0.3×[Cr]+0.9×[V]≦1.28
・・・(1)
[Mn]/[Cr]≦1.2 ・・・(2)
[C]×([V]-[N]×50.94/14.0)≧0.130 ・・・(3)
[V]×([N]-[Ti]×14.0/47.9)×10000≦35.0 ・・・(4)
但し、上記式(1)~(4)において、[元素名]は各元素の質量%で表される含有量を意味する。
本発明の態様2は、更に、Tiを0.001~0.030質量%含む態様1に記載の非調質鍛造部品である。
本発明の態様3は、
C :0.40~0.60質量%、
Si:0質量%超、1.0質量%以下、
Mn:0.01~0.70質量%、
P :0質量%超、0.20質量%以下、
S :0質量%超、0.20質量%以下、
Cr:0.01~1質量%、
Al:0質量%超、0.1質量%以下
V :0.30~0.38質量%、および
N :0質量%超、0.0080質量%以下
を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
下記式(1)~(4)を全て満たすことを特徴とする非調質鍛造用鋼である。
1.10≦[C]+0.5×[Mn]+0.3×[Cr]+0.9×[V]≦1.28
・・・(1)
[Mn]/[Cr]≦1.2 ・・・(2)
[C]×([V]-[N]×50.94/14.0)≧0.130 ・・・(3)
[V]×([N]-[Ti]×14.0/47.9)×10000≦35.0 ・・・(4)
但し、上記式(1)~(4)において、[元素名]は各元素の質量%で表される含有量を意味する。
本発明の態様4は、更に、Tiを0.001~0.030質量%含む態様3に記載の非調質鍛造用鋼である。
本発明によれば、高強度と、優れた製造性、特には連続鋳造時の表面割れ防止とを両立できる非調質鍛造部品、および該非調質鍛造部品の製造に有用な非調質鍛造用鋼を提供することができる。
図1は、実施例で使用する鍛造鋼材において、組織及びビッカース硬さの評価用試験片の採取位置を説明する概略説明図であり、(a)は試験片の概略上面図、(b)は試験片の概略断面図を示す。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。特には、350HV以上の高強度と、連続鋳造時の表面割れ防止を両立できる非調質鍛造部品と、該非調質鍛造部品の製造に有用な非調質鍛造用鋼を実現すべく、鋭意研究を行った。以下、非調質鍛造部品を単に「鍛造部品」ということがある。
鍛造部品の高強度化を実現するには、該部品の組織において、(i)ベイナイトの抑制、(ii)パーライトのラメラ間隔の微細化、及び(iii)バナジウム炭化物(VC)による析出強化が有効である。上記(ii)のラメラ間隔の微細化にはMn、Crを含有させることが有効であるが、Mn、Crが多く含まれるとベイナイトが発生し易く、上記(i)の実現が難しい。また、上記(iii)のVCによる析出強化のために含有させるVも、その含有量を増やすとベイナイトが発生し易くなり、上記(i)の実現が難しくなる。
そこで、350HV以上の高強度を実現するための条件について鋭意検討を進めた結果、以下の式(1)~(3)の全てを満たせばよいことを見出した。特にMnとCrの含有量の比について着目し、下記式(2)の通りMnとCrの質量比である[Mn]/[Cr]を1.2以下とし、かつ下記式(1)および式(3)を満たすことで、ベイナイトの生成を抑制しつつパーライトのラメラ間隔を微細にできること;更に、VCが微細なラメラに析出することで析出強化され、高強度を実現できること;を見出した。
1.10≦[C]+0.5×[Mn]+0.3×[Cr]+0.9×[V]≦1.28
・・・(1)
[Mn]/[Cr]≦1.2 ・・・(2)
[C]×([V]-[N]×50.94/14.0)≧0.130 ・・・(3)
但し、上記式(1)~(3)において、[元素名]は各元素の質量%で表される含有量を意味する。
また上記高強度と共に、優れた製造性、特に連続鋳造時の表面割れを防止するには、上記式(1)~(3)と共に下記式(4)を満たす必要があることを見出した。
[V]×([N]-[Ti]×14.0/47.9)×10000≦35.0 ・・・(4)
但し、上記式(4)において、[元素名]は各元素の質量%で表される含有量を意味する。
以下、上記式(1)~(4)の詳細について説明する。
上記式(1)における[C]+0.5×[Mn]+0.3×[Cr]+0.9×[V](以下、「式(1)の値」という)は、焼入れ性、具体的にベイナイトの発生し易さを表す式である。式(1)の値が高すぎると、ベイナイトのような過冷組織が生成しやすく、強度が低下する。よって本発明では、式(1)の値を1.28以下とする。式(1)の値は、好ましくは1.27以下、より好ましくは1.26以下、さらに好ましくは1.24以下である。一方、上記式(1)の値が低すぎると、固溶強化、析出強化による高強度化効果が不足する。よって、上記式(1)の値は、1.10以上であり、好ましくは1.15以上、より好ましくは1.18以上、さらに好ましくは1.20以上である。
上記式(2)における[Mn]/[Cr](以下、「式(2)の値」という)は、パーライトのラメラ間隔を微細にするための指標であり、上記式(1)と共に上記式(2)を満たすことによって、ベイナイト生成が十分に抑えられてラメラ間隔を微細にでき、高強度の確保に寄与する。上記式(2)の値は、1.2以下であり、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.0以下である。上記式(2)の値は小さければ小さいほど好ましい。上記式(2)の下限値は、高強度確保の観点からは特に限定されず、MnとCrの各含有量の範囲から0.01程度となる。
上記式(3)における[C]×([V]-[N]×50.94/14.0)(以下、「式(3)の値」という)は、バナジウム炭化物(VC)による析出強化度合いを表す指標である。具体的には、鋼中に存在するVのうち、析出強化に寄与しないバナジウム窒化物(VN)を構成するVを除き、炭化物形成に寄与するVに基づいた指標である。上記式(1)および式(2)を満たした上で、上記式(3)を満たすことによって、ベイナイト生成が十分に抑えられ、パーライトのラメラ間隔が微細であるフェライト-パーライト型組織にて、VCが微細なラメラに析出し、析出強化により350HV以上の高強度が得られる。この効果を発現させるため、式(3)の値を0.130以上とする。式(3)の値は、好ましくは0.140以上、より好ましくは0.150以上、さらに好ましくは0.160以上である。尚、被削性を確保する観点からは、式(3)の値を0.220以下とすることが好ましく、より好ましくは0.200以下、さらに好ましくは0.175以下である。
上記式(4)における[V]×([N]-[Ti]×14.0/47.9)×10000(以下、「式(4)の値」という)は、製造時、特に連続鋳造時における表面割れのリスクの程度を表す式である。バナジウム窒化物(VN)が粒界に多く析出することによって、前記表面割れが生じやすくなる。本発明では、VNの生成量の指標として[V]×([N]-[Ti]×14.0/47.9)×10000を用い、この[V]×([N]-[Ti]×14.0/47.9)×10000の値を抑えることで表面割れの防止を図る。上記式(1)~(3)を全て満たしていても、式(4)の値が高すぎると、上記VNが粒界に多く析出して高温延性が低下し、連続鋳造時に表面割れが発生して製造できないといった不具合が生じる。本発明ではこの表面割れを防止するため、式(4)の値を35.0以下とする。式(4)の値は、好ましくは20.0以下、より好ましくは15.0以下、さらに好ましくは10.0以下である。式(4)の下限値は、小さければ小さいほど好ましい。
本発明の非調質鍛造部品は、全組織に対するベイナイトの分率が5面積%以下に抑えられ、かつ全組織に対するフェライトの分率が25面積%以下であり、残部がパーライトであるフェライト-パーライト型の非調質鍛造部品である。以下では、全組織に対するベイナイトの面積分率を「ベイナイト分率」、全組織に対するフェライトの面積分率を「フェライト分率」という。ベイナイト分率が5面積%を超えるか、またはフェライト分率が25面積%を超えると、強度が低下し350HV以上の硬さとならない。ベイナイト分率は、好ましくは3面積%以下であり、最も好ましくは0面積%である。またフェライト分率は、好ましくは20面積%以下であり、より好ましくは15面積%以下、さらに好ましくは10面積%以下である。フェライト分率は低いほど好ましいが、その下限値は3面積%であってもよい。これらベイナイト分率とフェライト分率が抑えられ、パーライト分率が例えば75面積%以上、更には80面積%以上、より更には90面積%以上と高ければ高いほど、高強度となるため好ましい。
上記式(1)~(4)の制御による効果を十分に発揮させるため、各元素の含有量を下記範囲内とする。本発明は、上記非調質鍛造部品の製造に用いられる非調質鍛造用鋼も包含し、該非調質鍛造用鋼の各元素の含有量と式(1)~(4)の規定は、非調質鍛造部品と同じである。
C:0.40~0.60質量%
Cは、強度の確保に必要な元素であり、Cが少なすぎると強度が低下する。こうした観点から、C含有量は0.40質量%以上とする必要がある。C含有量は、好ましくは0.45質量%以上であり、より好ましくは0.48質量%以上である。しかしながら、C含有量が過剰になると、強度が必要以上に高くなり、被削性及び製造性が劣化する。こうした観点から、C含有量は0.60質量%以下とする必要がある。C含有量は、好ましくは0.58質量%以下であり、より好ましくは0.56質量%以下である。更に0.54質量%以下、より更には0.52質量%以下としてもよい。
Si:0質量%超、1.0質量%以下
Siは、鋼溶製時の脱酸元素として有用であると共に、鍛造部品の強度を高めるためにも有用な元素である。強度を確保する観点から、Si含有量を、0.05質量%以上とすることができ、更には0.10質量%以上、より更には0.15質量%以上とすることができる。しかしながら、Si含有量が過剰になると、強度が必要以上に高くなり被削性が劣化する。また、熱間圧延と熱間鍛造で生じるスケールの生成量が増加し、工具摩耗の原因にもなる。よって、Si含有量は、1.0質量%以下とする必要がある。Si含有量は、好ましくは0.9質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下である。更に0.50質量%以下、より更には0.30質量%以下としてもよい。
Mn:0.01~0.70質量%
Mnは、固溶強化や組織強化による鋼材の強度確保に有用な元素である。よって、Mn含有量は0.01質量%以上とする。Mn含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上である。しかしながら、Mn含有量が過剰になると、ベイナイトなどの過冷組織が生成し、耐力が却って低下する。よって、Mn含有量は0.70質量%以下とする必要がある。Mn含有量は、好ましくは0.60質量%以下、より好ましくは0.55質量%以下、更に好ましくは0.50質量%以下である。
P:0質量%超、0.20質量%以下
Pは、連続鋳造時に割れなどの鋳造欠陥を誘発しうる元素である。こうした観点から、P含有量は0.20質量%以下とする。P含有量は、好ましくは0.10質量%以下であり、より好ましくは0.030質量%以下、更に好ましくは0.020質量%以下、より更に好ましくは0.010質量%以下である。
S:0質量%超、0.20質量%以下
Sは被削性確保に有用な元素である。具体的にSは、鋼中にほとんど固溶せず、例えばMnS等の硫化物を形成し、切削時に該硫化物へ応力が集中することで切り屑が分離し易くなり、被削性を高める効果を有する。この効果を十分発揮させるには、S含有量を0.010質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.020質量%以上である。一方、過剰のSは、連続鋳造時の割れ、熱間鍛造時の割れ、疲労強度の低下、及び欠けの誘発の原因となる。よって、S含有量は0.20質量%以下とする必要がある。S含有量は、好ましくは0.070質量%以下、より好ましくは0.050質量%以下、さらに好ましくは0.040質量%以下である。
Cr:0.01~1質量%
Crは、固溶強化や組織強化による鋼材の強度確保に有用な元素である。よって、Cr含有量は0.01質量%以上とする。Cr含有量は、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.10質量%以上である。Cr含有量は、更に0.20質量%以上、より更には0.30質量%以上、特には0.40質量%以上とすることができる。しかしながら、Cr含有量が過剰になると、ベイナイトなどの過冷組織が生成し、却って耐力が低下してしまう。こうした観点から、Cr含有量は1質量%以下とする必要がある。Cr含有量は、好ましくは0.80質量%以下であり、より好ましくは0.70質量%以下、さらに好ましくは0.60質量%以下である。
Al:0質量%超、0.1質量%以下
Alは、鋼溶製時の脱酸に有用な元素である。また溶製時、Alと共に適量のSi、Caが溶鋼中に存在することで被削性の確保に有用な複合酸化物が形成される。これらの観点から、Al含有量を0.001質量%以上としてもよい。しかしながら、Al含有量が過剰になると、硬質な酸化物が形成されて被削性が阻害される。こうした観点から、Al含有量は0.1質量%以下とする必要がある。Al含有量は、好ましくは0.05質量%以下であり、より好ましくは0.030質量%以下である。Al含有量は、更に0.020質量%以下、より更に0.010質量%以下とすることが好ましい。最も好ましくは0.005質量%以下である。
V:0.30~0.38質量%
Vは、強度の確保に必要な元素であるため、V含有量は0.30質量%以上とする必要がある。V含有量は、好ましくは0.31質量%以上、より好ましくは0.32質量%以上である。しかしながら、V含有量が過剰になると、上記の効果が飽和し、添加コストに見合わなくなる。また、連続鋳造性の低下が生じやすくなる。こうした観点から、V含有量は0.38質量%以下とする必要がある。V含有量は、好ましくは0.37質量%以下であり、より好ましくは0.36質量%以下である。
N:0質量%超、0.0080質量%以下
Nは不可避的不純物であり、通常の製鋼技術では約0.0030質量%以上は混入しうる。Nを添加しても構わないが、N含有量が過剰になると、製造性の劣化、特に熱間加工性が阻害される。こうした観点から、N含有量は0.0080質量%以下とする必要がある。N含有量は、好ましくは0.0070質量%以下、より好ましくは0.0060質量%以下である。
本発明の非調質鍛造部品の基本成分は上記の通りであり、残部は鉄および不可避的不純物である。不可避的不純物は、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素である。不可避的不純物には、例えばO、Sb等の他、0.001質量%未満のTiも含まれる。なお、例えばPおよびSのように、通常、含有量が少ないほど好ましく、従って不可避的不純物であるが、その組成範囲について上記のように別途規定した元素がある。このため、本明細書における上記「不可避的不純物」とは、別途その組成範囲が規定された元素を除いたものを意味する。
本発明の非調質鍛造部品は、化学組成において、上記元素を含み、式(1)~(4)を満たしていればよい。下記に述べる選択元素は、含まれていなくてもよいが、上記元素と共に必要に応じて含有させることにより、高強度化や優れた連続鋳造性をより容易に達成させたり、これらの特性をより高めたり、被削性等の兼備を実現することができる。以下、選択元素について述べる。
Ti:0.001~0.030質量%
Tiは、固溶強化により高強度の確保に有用な元素である。また、TiがNとTiNを形成し析出することで、粒界に生成するVNが相対的に抑制されて高温延性を著しく改善でき、表面割れのリスクをより回避することができる。上記効果を発揮させるには、Ti含有量を0.001質量%以上とすることが好ましい。Ti含有量は、より好ましくは0.0012質量%以上、更に好ましくは0.0015質量%以上である。しかしながら、Ti含有量が過剰になると、硬質介在物が形成されて被削性が劣化しやすくなる。こうした観点から、Ti含有量は、0.030質量%以下であることが好ましい。Ti含有量は、より好ましくは0.025質量%以下であり、更に好ましくは0.020質量%以下である。最も好ましくは0.015質量%以下である。
Cu:0質量%超、0.2質量%以下、
Ni:0質量%超、0.2質量%以下、
Mo:0質量%超、0.2質量%以下、および
Nb:0質量%超、0.2質量%以下
よりなる群から選択される1種以上の元素
これらの元素は、非調質鍛造部品と非調質鍛造用鋼を構成する鋼材の更なる強度向上に有用な元素である。以下、各元素について説明する。
Cu:0質量%超、0.2質量%以下
Cuを含むことによって、鋼材の焼入れ性を向上でき、鋼材の安定した強度を得ることができる。この効果を得るには、Cu含有量を0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.03質量%以上である。しかしながら、Cu含有量が過剰になると、熱間加工性が阻害されるため、製造性が劣化する。こうした観点から、Cu含有量は0.2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.15質量%以下であり、更に好ましくは0.10質量%以下である。
Ni:0質量%超、0.2質量%以下
Niを含むことによって、鋼材の焼入れ性を向上でき、鋼材の安定した強度を得ることができる。この効果を得るには、Ni含有量を0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.03質量%以上である。しかしながら、Ni含有量が過剰になると、鋼材の靭性が高まりすぎて、例えば破断分離型コンロッドの製造時に嵌合性良く分離することが難しくなる。こうした観点から、Ni含有量は0.2質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.15質量%以下であり、更に好ましくは0.10質量%以下である。
Mo:0質量%超、0.2質量%以下
Moを含むことによって、鋼材の焼入れ性を向上でき、鋼材の安定した強度を得ることができる。この効果を得るには、Mo含有量を0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.03質量%以上である。しかしながら、Mo含有量が過剰になると、強度が過剰に高くなり被削性が劣化する。こうした観点から、Mo含有量は0.2質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.15質量%以下であり、更に好ましくは0.10質量%以下である。
Nb:0質量%超、0.2質量%以下
Nbを含むことによって、鋼材の強度が向上する。この効果を得るには、Nb含有量を0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.03質量%以上である。しかしながら、Nb含有量が過剰になると、強度向上効果が飽和するため、効果が合金コストに見合わなくなる。こうした観点から、Nb含有量は0.2質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.15質量%以下であり、更に好ましくは0.10質量%以下である。
Pb:0質量%超、0.20質量%以下、
Te:0質量%超、0.20質量%以下、
Sn:0質量%超、0.20質量%以下、
Zr:0質量%超、0.20質量%以下、
Ca:0質量%超、0.01質量%以下、
Mg:0質量%超、0.01質量%以下、および
B:0質量%超、0.02質量%以下
よりなる群から選択される1種以上の元素
これらの元素は、被削性の確保に有用な元素である。以下、各元素について説明する。
Pb:0質量%超、0.20質量%以下、Te:0質量%超、0.20質量%以下、Sn:0質量%超、0.20質量%以下、Zr:0質量%超、0.20質量%以下
Pb、Te、Sn、Zrは被削性確保に有用な元素であり、鋼中にほとんど固溶せず、溶融脆化やMnSの球状化などの効果により被削性を高める効果を有する。この効果を発揮させるべく上記元素を含有させる場合、各元素の含有量を、0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.03質量%以上である。しかしながら、過剰なPb、Te、Sn、Zrは、連続鋳造で生じる鋳片の割れ、熱間鍛造で生じる鍛造部品の割れ、および疲労強度低下の原因となる。よって、各元素の含有量は0.20質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.10質量%以下であり、更に好ましくは0.05質量%以下である。
Ca:0質量%超、0.01質量%以下
Caは被削性確保に有用な元素であり、ベラーグ(工具保護膜)生成などの効果により被削性を高める効果を持つ。また、硫化物系介在物を球状化して脆化を促進させて被削性を高める効果も有する。これらの効果を発揮させるには、Ca含有量を、0質量%超とすることが好ましい。しかしCaを過剰に添加しても上記効果が飽和するため、コスト上昇を招く。こうした観点から、Ca含有量は、0.01質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.005質量%以下であり、更に好ましくは0.004質量%以下であり、より更に好ましくは0.003質量%以下である。
Mg:0質量%超、0.01質量%以下
Mgは脱酸元素であり、鋼中にほとんど固溶せず、MnSに固溶し球状化を促進することで、機械特性の異方性を低減する。しかしながら、過剰なMgは、連続鋳造で生じる鋳片の割れ、熱間鍛造で生じる鍛造部品の割れ、および疲労強度低下の原因となる。よってMg含有量は、0.01質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.005質量%以下、更に好ましくは0.004質量%以下であり、より更に好ましくは0.003質量%以下である。
B:0質量%超、0.02質量%以下
Bは、Nが十分に存在する場合にBNを形成し、このBNが工具との潤滑作用をもたらして被削性を高める。良好な被削性を得るため、Bを0.0001質量%以上含有させてもよい。より好ましくは0.0005質量%以上である。しかしながら、過剰にBが含まれると、Bが固溶してベイナイトが発生し易くなる。よって、B含有量は、好ましくは0.02質量%以下であり、より好ましくは0.015質量%以下、更に好ましくは0.010質量%以下である。
本発明の非調質鍛造用鋼は、上記化学組成を満たす鋼を通常の方法で溶製し、その後、鋳造工程、必要に応じて熱間での分塊圧延工程を行った後、熱間圧延工程を順に経て製造することができる。本発明の非調質鍛造用鋼は、上記熱間圧延により例えば棒鋼として得ることができる。また本発明の非調質鍛造部品は、前記熱間圧延工程の後、更に熱間鍛造工程を経ることで製造することができる。所望の組織の非調質鍛造部品を得るには、上記工程のうち、熱間鍛造工程、特に熱間鍛造後の冷却条件を制御する必要がある。以下、各工程について順に説明する。
まず、前述した化学組成を満たす鋼を溶製し、鋳造する。鋳造方法は特に限定されず、通常用いられる方法を採用すれば良い。例えば造塊法や連続鋳造法を採用できる。連続鋳造法の場合はブルーム連続鋳造機で鋳造することができる。
鋳造後、必要に応じて熱間での分塊圧延を行ってもよい。分塊圧延は、分塊圧延前の均熱処理を包含してもよい。分塊圧延条件は特に限定されず、通常、用いられる方法を採用することができる。例えば、分塊圧延は1000℃~1250℃で行うことができる。熱間圧延工程での条件も特に限定されず、通常、用いられる方法を採用することができる。例えば熱間圧延は850℃~1200℃で行うことができる。
本発明の非調質鍛造部品を得るには、上記熱間圧延後、熱間鍛造を行う。上述の通り、所望の組織の非調質鍛造部品を得るには、この熱間鍛造工程で、熱間鍛造後の冷却条件を制御する必要がある。具体的には、熱間鍛造後の冷却において、800℃から600℃までの温度域の平均冷却速度を1.2℃/sec以上、3.0℃/sec以下とする。この温度域の平均冷却速度を制御することで、ラメラ間隔の狭いパーライト主体の組織を得ることができる。上記平均冷却速度が遅すぎると、フェライト分率が増大するとともに、パーライトのラメラ間隔が粗大となる。よって本発明では、上記平均冷却速度を1.2℃/sec以上とする。好ましくは1.25℃/sec以上、より好ましくは1.30℃/sec以上、さらに好ましくは1.35℃/sec以上である。尚、上記温度や平均冷却速度はいずれも、鋼の表面温度に基づくものである。
一方、上記温度域の平均冷却速度が速すぎると、ベイナイトが発生しやすくなり、350HV以上の高強度を達成できない。よって本発明では、上記平均冷却速度を3.0℃/sec以下とする。好ましくは2.8℃/sec以下、より好ましくは2.6℃/sec以下である。熱間鍛造終了から800℃までの冷却と、600℃から室温までの冷却は特に限定されず、例えば放冷することができる。
熱間鍛造におけるその他の製造条件は特に限定されず、通常行われている条件を採用することができる。例えば、鍛造前の加熱温度は1100℃以上、1320℃以下とすることができる。また、鍛造時の温度、すなわち鍛造温度は1100℃以上とすることができる。鍛造温度の上限は特に限定されず、前記加熱温度以下とすればよい。
鍛造後は、必要に応じて例えば切削等の機械加工を行い所望の部品形状に成形することで、鍛造部品を得ることができる。
本発明の非調質鍛造部品と非調質鍛造用鋼は、上述の通り製造性、特に連続鋳造性に優れている。本発明において「連続鋳造性に優れた」とは、後記する実施例で評価する高温延性、具体的に800℃での引張試験での絞り値が13%以上であることをいう。前記絞り値は好ましくは15.0%以上、より好ましくは18.0%以上、さらに好ましくは20.0%以上である。
また本発明の非調質鍛造部品は、ビッカース硬さが350HV以上の高強度を示す。該ビッカース硬さは、好ましくは360HV以上であり、より好ましくは370HV以上である。また、0.2%耐力は、895MPa以上、好ましくは900MPa以上、より好ましくは910MPa以上、更に好ましくは950MPa以上である。
本発明の非調質鍛造部品として、例えば具体的に、自動車、船舶などの輸送機のエンジンおよび足回り等に用いられるコンロッド、ロアアーム、クランクシャフト等の鍛造部品が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
通常の溶製方法に従って鋼を溶解し、下記表1に示す化学組成を満たすよう調整した後、鋳造し、次いで分塊圧延を1100℃~1250℃の範囲内で行った。尚、表1においてTiの欄の「-」は無添加を示し、0.001質量%未満を下回る。前記分塊圧延の後、本実施例では前述の熱間圧延を模擬して、加熱温度1200℃に加熱してから熱間鍛造を行った。そして、長手方向に垂直な断面が一辺20mmの略正方形であって長さが1100mmの、非調質鍛造用鋼に相当する角棒を得た。
上記角棒を長手方向に垂直に切断し、断面が一辺20mmの略正方形であって長さが100mmの角棒片を10本得た。一部の例では、このうちの1本の角棒片を用いて、連続鋳造性の指標である高温延性を後記の通り測定した。
また、残りの角棒片に次の通り鍛造を施して鍛造鋼材を得た。具体的に、試験No.1~14、16~22では、角棒片を1250℃で10分間保持後、炉から取出し、60%圧縮のプレス鍛造を実施した後、衝風冷却を行うかまたは放冷により常温まで冷却して、非調質鍛造部品に相当する鍛造鋼材を得た。800℃から600℃の平均冷却速度は、衝風冷却ではおおよそ2.3~2.5℃/secの範囲内であり、放冷ではおおよそ1.3~1.6℃/secの範囲内であった。
また試験No.15のみ、角棒片から直径8mm×長さ12mmの鋼片を切り出し、富士電波工機製の熱間加工再現試験装置(TERMEC MASTOR-Z)を使用して鍛造鋼材を得た。詳細には、まず平均昇温速度10℃/secで室温から1230℃まで昇温させ、平均昇温速度1℃/secで1230℃から1250℃まで昇温させたのち、分塊圧延を想定して1250℃にて10分保持した。その後、熱間圧延を想定して平均冷却速度5℃/secで1250℃から1100℃まで降温させてから、熱間鍛造を模擬して圧縮率60%、圧縮速度10/secで圧縮した。さらにその後、1100℃にて5sec保持し、平均冷却速度1.8℃/secで1100℃から800℃まで降温させ、更に平均冷却速度0.1℃/secで800℃から300℃まで降温させた後、室温まで急冷して、非調質鍛造部品に相当する鍛造鋼材を得た。この試験No.15の製造条件では、後記する表4に示す通り800℃から600℃の平均冷却速度も0.10℃/secであった。
上記の様にして得られた試験No.1~22の各鍛造鋼材を用い、下記の通り切削して用意した試験片を用い、組織とビッカース硬さを評価した。また、一部の例については下記の通り0.2%耐力も測定した。これらの結果を表2に示す。
(1)組織の評価方法
図1は、上記鍛造鋼材における、組織の評価と後記するビッカース硬さの評価に用いる試験片の採取位置を説明する概略説明図であり、(a)は試験片の概略上面図、(b)は試験片の概略断面図を示す。前記図1において、長手方向Lの中央部、幅方向Wの中央部および厚さ方向Dの中央部のいずれも観察できるように、まずは、長手方向の中央部、即ち該長手方向に垂直な切断線X-Xで切断した。そして、切断線X-Xで切断して得られた切断面Qにおいて、幅方向の中央部と厚さ方向の中央部を観察できる(b)の観察領域Rを含む試験片を用意した。前記観察領域Rのサイズは、最大で幅方向Wが20mmかつ厚さ方向Dが4mmである。この試験片の上記観察領域Rを含む面を鏡面研磨した後、ナイタールで腐食させて組織観察用試験片とした。そして光学顕微鏡を用い、上記観察領域Rを100倍~400倍で撮影し、得られた写真から金属組織の解析を行って、全組織に対する、フェライト組織、パーライト組織、及びベイナイト組織のそれぞれの面積分率、すなわちフェライト分率、パーライト分率、及びベイナイト分率を測定した。表2において「F率」はフェライト分率、「P率」はパーライト分率、「B率」はベイナイト分率を示す。
(2)ビッカース硬さの評価方法
前記組織の評価と同様に各鍛造鋼材を切削して用意した試験片を用い、次の通りビッカース硬さを評価した。即ち、JIS Z 2244(2009)のビッカース硬さ試験-試験方法に準じて、ビッカース硬さ試験機を用い、荷重5kgfで、前記図1に示した組織の観察領域R付近のビッカース硬さを測定した。該評価では、ビッカース硬さを5点測定して平均値を算出した。なお、ビッカース硬さは350HV以上を合格とした。
(3)0.2%耐力の測定方法
一部の例については、下記の通り引張試験を行って0.2%耐力を測定した。
(引張試験)
各鍛造鋼材を切削し、該鍛造鋼材の長手方向の中央部、幅方向の中央部および厚さ方向の中央部のいずれも含む部位から、JIS Z 2241(2011)に示された14B号板状引張試験片を得た。この引張試験片の採取では、引張試験片の長手方向と、鍛造鋼材の長手方向が一致するようにした。また、引張試験で加える引張力も上記長手方向と同一の向きとした。引張試験は、JIS Z 2241(2011)に従い、常温で実施した。その結果を表2に示す。
上述の通り一部の例については、連続鋳造性の指標である高温延性を下記の通り測定した。
(4)高温延性の評価方法
前記角棒片を切削し、該角棒片の長手方向の中央部、幅方向の中央部および厚さ方向の中央部のいずれも含む部位から、平行部が直径6mm×長さ15mmで全長が68mmである引張試験片を得た。上記引張試験片の採取では、引張試験片の長手方向と、角棒片の長手方向が一致するようにした。また、引張試験で加える引張力も上記長手方向と同一の向きとした。高温延性試験は、Ar雰囲気中で1300℃に一旦加熱保持した後、800℃まで5℃/secで冷却し、800℃に保持した状態において、引張速度0.01mm/secで引張力を試験片が破断するまで与え、破断後は急冷し、試験片の破断後の絞り値を計測した。そして連続鋳造性の指標として、絞り値が13%以上のものを合格とした。その結果を表3に示す。
また上記実施例のうち、試験No.1~6、13、及び20については、前記プレス鍛造後の冷却時の温度履歴を測定し、試験No.15については、平均冷却速度0.1℃/secで800℃から300℃まで降温時の温度履歴を測定した。そして、この温度履歴から800~600℃の温度域の平均冷却速度を求めた。具体的には、試験No.1~6、13、及び20については、プレス鍛造後、DUAL THERMO AR-1600を用いて、試験片から装置間距離500mm、測温スポット直径12mmにて試験片の表面温度を実測して温度履歴を求めた。試験No.15については、試験片の表面に熱電対を取り付け、実測して温度履歴を求めた。そしてこの温度履歴から、800℃から600℃までの冷却に要した時間を求め、800~600℃の温度域の平均冷却速度を算出した。その結果を、表1に示した式(1)~(3)の値、並びに、表2に示した組織割合及びビッカース硬さと共に、表4に示す。
Figure 0007141944000001
Figure 0007141944000002
Figure 0007141944000003
Figure 0007141944000004
表1~4より、試験No.1~5は、本発明で規定する全ての要件を満たす本発明例であり、ビッカース硬さが350HV以上の高強度を示し、かつ高温延性が高く連続鋳造性に優れている。尚、試験No.4は、同じ鋼種Cを用いた試験No.3よりもパーライト分率が低いが、ビッカース硬さが高い。その理由として、熱間鍛造後の室温までの冷却方法が衝風冷却であり、ラメラ間隔が前記試験No.3よりも微細となったため強度が高くなったことが考えられる。
更に、鋼種Aを用いた試験No.1と鋼種Bを用いた試験No.2の対比から、Tiを0.009質量%含有させることで、表3に示す800℃での絞り値が20%以上を達成し、より優れた連続鋳造性を実現できることが分かった。尚、このTi添加による連続鋳造性向上の効果は、比較例である試験No.6と試験No.8の対比においてもみられた。
これに対して、表2の試験No.6~22、ならびに表3の試験No.23および24はいずれも、本発明の実施形態で規定する要件を満たしていない比較例であり、強度が低いか、連続鋳造性に劣る結果となった。
試験No.6~8は、Mn量が過剰であり、式(1)の値が上限を超えた鋼種E~Gを用いた例である。また試験No.6では、熱間鍛造後の800~600℃の温度域の冷却を推奨される範囲を超える速い平均冷却速度で行った。これらを原因として、試験No.6~8はいずれも、ベイナイトが多く形成されてビッカース硬さが低くなった。
試験No.9~11は、各元素の含有量は規定範囲内にあるが、式(1)の値が上限を超えた鋼種H~Jを用いたため、ベイナイトが多く形成され、ビッカース硬さが低くなった。
試験No.12及び13は、Mn量が過剰であり、式(1)及び式(2)の値が上限を超えた鋼種K及びLを用いたため、ベイナイトが多く形成され、ビッカース硬さが低くなった。
試験No.14、16~18及び22は、C量が不足し、Mn量が過剰であり、更に式(1)~(3)の全ての値が規定範囲を外れた鋼種M~P及びTを用いたため、ベイナイトが多く形成され、ビッカース硬さが低くなった。
試験No.15は、前記試験No.14と同じ鋼種Mを用いた例であるが、前記試験No.14と異なり、熱間鍛造後の800~600℃の温度域の冷却を、推奨される範囲を下回る遅い平均冷却速度で行ったために、フェライトが多く形成され、ビッカース硬さが低くなった。
試験No.19は、C量が不足し、Mn量が過剰であり、V量が不足し、更に式(2)及び式(3)を満たさない鋼種Qを用いたため、フェライトが多く形成され、ビッカース硬さが低くなった。尚、試験No.19は、表3に示す通り式(4)の値は規定範囲内にあるため、連続鋳造性には優れていた。
試験No.20は、C量が不足し、Mn量が過剰であり、更に式(2)及び式(3)を満たさない鋼種Rを用いたため、フェライトが多く形成され、ビッカース硬さが低くなった。尚、試験No.20は、表3に示す通り式(4)の値は規定範囲内にあるため、連続鋳造性には優れていた。
試験No.21は、C量が不足し、Mn量が過剰であり、N量が過剰であって、更に式(2)及び(3)を満たさない鋼種Sを用いたため、フェライトが多く形成され、ビッカース硬さが低くなった。尚、試験No.21は、表3に示す通り式(4)の値は規定範囲内にあるため、連続鋳造性には優れていた。
試験No.23は、C量が不足し、Mn量が過剰であり、N量が過剰であって、更に式(1)~(4)の全てが規定範囲を外れた鋼種Uを用い、連続鋳造性を評価した例である。表3に示す通り式(4)を満たしていないため、高温延性が低く、優れた連続鋳造性が得られていない。またこの鋼種は式(1)~(3)も満たしていないため、所望の組織が得られず強度が低いと考えられる。
試験No.24は、C量が不足し、Mn量が過剰であり、N量が過剰であって、更に式(2)及び(3)を満たさない鋼種Vを用い、連続鋳造性を評価した例である。この試験No.24では、式(4)を満たしているため、優れた連続鋳造性が得られた。しかし、試験No.24で用いた鋼種Vは式(2)及び式(3)を満たしていないため、所望の組織が得られず強度が低いと考えられる。
以上のことから、連続鋳造性に関し、特に表3から下記のことがいえる。即ち、鋼種Uを用いた試験No.23では、Vを0.341質量%と多量に添加し、式(4)の値が上限を超えたため、800℃での絞り値が12.2%と低く、表面割れのリスクが高かった。これに対して、試験No.1及び2では、式(4)を満たすことで、高温延性を改善でき、表面割れのリスクを低減できた。尚、この式(4)を満たすことによる連続鋳造性向上の効果は、比較例である試験No.6、8、19~21及び24においてもみられた。但し、これらの比較例は、式(4)以外の式の値を満たさないため強度が低い。
また推奨される製造条件について、表4から下記のことがいえる。試験No.1~5と試験No.6、13、15及び20との対比から、高強度確保のために所定の組織を得るには、化学組成、特に式(1)~(3)を全て満たすと共に、熱間鍛造後の冷却時に、800℃から600℃までの温度域の平均冷却速度を1.2℃/sec以上、3.0℃/sec以下とするのがよいことがわかる。
d1 試験片の1/2幅
d2 試験片の1/2長さ
X 切断線
W 幅方向
L 長手方向
D 厚さ方向
Q 切断面
R 観察領域

Claims (4)

  1. C :0.40~0.60質量%、
    Si:0質量%超、1.0質量%以下、
    Mn:0.01~0.70質量%、
    P :0質量%超、0.20質量%以下、
    S :0質量%超、0.20質量%以下、
    Cr:0.01~1質量%、
    Al:0質量%超、0.1質量%以下、
    V :0.30~0.38質量%、および
    N :0質量%超、0.0080質量%以下
    を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
    下記式(1)~(4)を全て満たし、更に、
    全組織に対するベイナイトの分率が5面積%以下であり、かつ全組織に対するフェライトの分率が25面積%以下であり、残部がパーライトであることを特徴とする非調質鍛造部品。
    1.10≦[C]+0.5×[Mn]+0.3×[Cr]+0.9×[V]≦1.28
    ・・・(1)
    [Mn]/[Cr]≦1.2 ・・・(2)
    [C]×([V]-[N]×50.94/14.0)≧0.130 ・・・(3)
    [V]×([N]-[Ti]×14.0/47.9)×10000≦35.0 ・・・(4)
    但し、上記式(1)~(4)において、[元素名]は各元素の質量%で表される含有量を意味する。
  2. 更に、Tiを0.001~0.030質量%含む請求項1に記載の非調質鍛造部品。
  3. 1250℃で10分間保持後、60%圧縮のプレス鍛造を実施した後に、衝風冷却による常温までの冷却であって、800℃から600℃の平均冷却速度が2.3~2.5℃/secの範囲内となるように冷却するか、または、放冷による常温までの冷却であって、800℃から600℃の平均冷却速度が1.3~1.6℃/secの範囲内となるように冷却したときに、全組織に対するベイナイトの分率が5面積%以下であり、かつ全組織に対するフェライトの分率が25面積%以下であり、残部がパーライトである組織が得られる、非調質鍛造用鋼であって、
    C :0.40~0.60質量%、
    Si:0質量%超、1.0質量%以下、
    Mn:0.01~0.70質量%、
    P :0質量%超、0.20質量%以下、
    S :0質量%超、0.20質量%以下、
    Cr:0.01~1質量%、
    Al:0質量%超、0.1質量%以下
    V :0.30~0.38質量%、および
    N :0質量%超、0.0080質量%以下
    を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
    下記式(1)~(4)を全て満たすことを特徴とする非調質鍛造用鋼。
    1.10≦[C]+0.5×[Mn]+0.3×[Cr]+0.9×[V]≦1.28
    ・・・(1)
    [Mn]/[Cr]≦1.2 ・・・(2)
    [C]×([V]-[N]×50.94/14.0)≧0.130 ・・・(3)
    [V]×([N]-[Ti]×14.0/47.9)×10000≦35.0 ・・・(4)
    但し、上記式(1)~(4)において、[元素名]は各元素の質量%で表される含有量を意味する。
  4. 更に、Tiを0.001~0.030質量%含む請求項3に記載の非調質鍛造用鋼。
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