JP5030695B2 - 破断分離性に優れる高炭素鋼およびその製造方法 - Google Patents

破断分離性に優れる高炭素鋼およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、破断分離性に優れる高炭素鋼およびその製造方法に関し、詳しくは、鍛造、切削などによって成形部品にした後、破断させて使用する部品、例えばクラッキングコンロッドなどの素材として好適な破断分離性に優れる高炭素鋼およびその製造方法に関する。より詳しくは、軽自動車や小型乗用車等に使用される硬さ(強度)レベルの低いコンロッドなどのようなクラッキング製品の素材として好適な、破断分離性に優れるとともに成分コストの低い高炭素鋼およびその製造方法に関する。
クラッキングコンロッド、なかでも、軽自動車や小型乗用車等に使用されるクラッキングコンロッドに代表されるような製品の素材鋼として、成分コストが低く、しかも、加工コストを低減するために、優れた破断分離性を有する鋼材に対する要望が大きい。
軽自動車や小型乗用車等に使用されるコンロッドの場合、その硬さ(強度)レベルとして、ブリネル硬さ(以下、「HB硬さ」ともいう。)で300以下の低いものが用いられる場合がある。
しかしながら、一般に、硬さ(強度)が低い場合には延性や靱性が高くなる。このため、軽自動車や小型乗用車等に使用される硬さ(強度)レベルの低いコンロッドを、加工コスト低減の目的から破断分離させて「クラッキングコンロッド」として製造することは難しい。
一方、延性や靱性を低くして破断分離性を高めるために、例えば、TiやVなどの元素を添加して低靱性化や低延性化を行った場合には、硬さ(強度)の上昇をきたすので、被削性などの加工性が著しく低下してしまう。しかも、この場合には成分コストも嵩んでしまう。
破断分離性に優れた鋼材に関する技術は、特許文献1や特許文献2などに提案されている。
具体的には、特許文献1に、鋼の化学成分を規定することにより、延性および靱性が低く、破断分離可能な非調質鋼に関する技術が開示されている。
また、特許文献2には、鋼の化学成分を規定することにより、被削性と破断分離性を両立させた技術が開示されている。
特開平9−176785号公報 特開2003−27178号公報
前述の特許文献1で開示された技術は、800MPa以上の引張強度を有する鋼を狙っており、実施例を見ると実質的には1000MPa、すなわちHB硬さ換算で約300を超える高い硬さ(強度)となっている。このため、HB硬さで300以下という低い硬さ(強度)レベルの場合にも、十分な破断分離性を確保することができるとは必ずしもいえない。
特許文献2で開示された技術の場合、VおよびTiを含有させる必要があるため、成分コストが嵩んでしまう。しかも、その実施例に示されているように、靱性としてのシャルピー衝撃値や延性としての伸びが高く、このため、必ずしも十分な破断分離性が確保できるとはいえない。
そこで、本発明の目的は、TiやVなどの合金元素を含まないために成分コストが低く、しかも、HB硬さで300以下という低い硬さ(強度)レベルであっても、十分な破断分離性を具備させることができる高炭素鋼とその製造方法を提供することである。
より具体的には、本発明の目的は、TiやVなどの合金元素を含まないために成分コストが低く、しかも、上記のHB硬さで300以下という低い硬さ(強度)レベルであっても、JIS Z 2202(1998)で規定されるUノッチシャルピー衝撃試験片を用いた場合の室温における衝撃値が10J/cm2以下で靱性が低く、さらに、室温での引張試験における伸びが10%以下で延性も低い破断分離性に優れる高炭素鋼とその製造方法を提供することである。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、鋼の化学成分、加熱温度や冷却速度などを種々変化させて検討を行った。その結果、下記(a)〜(d)の知見を得た。
(a)高炭素鋼をオーステナイト域から遅い冷却速度で冷却した場合に粒界に析出する初析セメンタイトを積極的に活用することによって、延性と靱性を低下させることができる。
(b)旧オーステナイト粒径が200μm以上である場合、延性と靱性が著しく低下する。
(c)旧オーステナイト粒径を200μm以上とするには、特定の化学組成を有する高炭素鋼の場合には、1150℃以上で30分以上保持する加熱処理を行えばよい。
(d)上記特定の化学組成を有する高炭素鋼の場合、前記条件での加熱処理後の冷却過程において、730〜700℃の温度域を1時間当たり20℃以下の速度で徐冷することによって、硬さがHB硬さで300以下の低い値となって、良好な被削性を備えたものとなる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)に示す破断分離性に優れる高炭素鋼および(2)に示す破断分離性に優れる高炭素鋼の製造方法にある。
(1)質量%で、C:0.70〜1.20%、Si:0.4%以下、Mn:0.9%以下、P:0.10%以下、S:0.015%以下、Cr:0.5〜2.0%およびAl:0.05%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、旧オーステナイト粒径が200μm以上、硬さがブリネル硬さで300以下であることを特徴とする破断分離性に優れる高炭素鋼。
(2)質量%で、C:0.70〜1.20%、Si:0.4%以下、Mn:0.9%以下、P:0.10%以下、S:0.015%以下、Cr:0.5〜2.0%およびAl:0.05%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなる鋼を部品形状に加工した後、1150℃以上の温度域で30分以上加熱し、その後さらに、730〜700℃の温度域を20℃/時以下の冷却速度で冷却することを特徴とする破断分離性に優れる高炭素鋼の製造方法。
以下、上記(1)の破断分離性に優れる高炭素鋼に係る発明および(2)の破断分離性に優れる高炭素鋼の製造方法に係る発明を、それぞれ、「本発明(1)」および「本発明(2)」という。また、総称して「本発明」ということがある。
本発明の鋼は、TiやVなどの合金元素を含まないために成分コストが低く、しかも、HB硬さで300以下という低い硬さ(強度)レベルであっても十分な破断分離性を有しており、さらに硬さ(強度)レベルが低いために良好な被削性も備えているので、軽自動車や小型乗用車等に使用される硬さ(強度)レベルの低いコンロッドなどのようなクラッキング製品の素材として利用することができる。この鋼は、本発明の方法によって製造することができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成
C:0.70〜1.20%
粒界に析出する初析セメンタイトを積極的に活用することによって、延性と靱性を低下させるためには、Cの含有量を0.70%以上とする必要がある。Cの含有量が0.70%を下回ると、たとえ後述する旧オーステナイト粒径が200μm以上であっても粒界に初析セメンタイトが析出しないため、延性は低下しても靭性が低下しないことがある。一方、Cの含有量が1.20%を超えると、硬さが高くなって被削性などの加工性が著しく低下してしまう。したがって、Cの含有量を0.70〜1.20%とした。なお、Cの含有量は0.90〜1.10%とすることが好ましい。
Si:0.4%以下
Siは、脱酸作用を有する元素である。しかしながら、Siの多量の含有は熱間加工性の低下を招くとともに成分コストも高くなり、特に、Siの含有量が0.4%を超えると、熱間加工性の低下が著しくなるとともに成分コストの上昇も大きくなる。したがって、Siの含有量を0.4%以下とした。なお、脱酸作用を確実に発揮させるために、Siの含有量は0.01%以上とすることが好ましい。
Mn:0.9%以下
Mnも、上記Siと同様に脱酸作用を有する元素である。しかしながら、Mnの含有量が多くなると熱間加工性の低下を招くことに加えて成分コストも高くなり、特に、Mnの含有量が0.9%を超えると、熱間加工性の低下が著しくなるとともに成分コストの上昇も大きくなる。したがって、Mnの含有量を0.9%以下とした。なお、脱酸作用を十分に発揮させるために、Mnの含有量は0.1%以上とすることが好ましい。
P:0.10%以下
Pは、鋼中に不純物として存在する元素である。しかしながら、不純物であるPの含有量が多すぎる場合には、熱間加工性の低下を招き、特に、その含有量が0.10%を超えると、熱間加工性の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.10%以下とした。
S:0.015%以下
Sは、Mnとともに硫化物を形成して、被削性を改善する作用を有する。しかしながら、Sの含有量が多くなるとMnSの量も多くなり、特に、Sの含有量が0.015%を超えるとMnSの量が極めて多くなるので、粗粒化させるために高温での焼ならし処理を施した場合であっても、多量に存在するMnSのピンニング作用によって、粗粒化の程度は小さくなってしまう。そして、粗粒化の程度が小さい場合には、延性としての伸びが大きくなるので、破断分離性に劣るものとなる。したがって、Sの含有量を0.015%以下とした。なお、Sの被削性改善作用を発揮させるためには、Sの含有量を0.002%以上とすることが好ましい。
Cr:0.5〜2.0%
旧オーステナイト粒界に網状の初析セメンタイトを安定して析出させて、延性と靱性を低下させるためには、Crの含有量を0.5%以上とする必要がある。しかしながら、Crの含有量が2.0%を超えると、硬さが高くなって被削性などの加工性が著しく低下してしまう。したがって、Crの含有量を0.5〜2.0%とした。なお、Crの含有量は0.9〜1.6%とすることが好ましい。
Al:0.05%以下
Alは、脱酸作用を有する元素である。しかしながら、Alを0.05%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、成分コストが嵩むばかりである。したがって、Alの含有量を0.05%以下とした。なお、脱酸作用を確実に発揮させるために、Alの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
上記の理由から、本発明(1)の破断分離性に優れる高炭素鋼は、上述した範囲のCからAlまでの元素を含有し、残部はFeおよび不純物からなることと規定した。
また、本発明(2)の破断分離性に優れる高炭素鋼の製造方法においては、上述した範囲のCからAlまでの元素を含有し、残部はFeおよび不純物からなる鋼を素材として用いることとした。
(B)旧オーステナイト粒径
前記(A)項で述べた化学組成を有する鋼は、旧オーステナイト粒径が200μm以上である場合、延性と靱性が著しく低下して、室温での引張試験における伸びが10%以下となり、また、JIS Z 2202(1998)で規定されるUノッチシャルピー衝撃試験片を用いた場合の室温における衝撃値が10J/cm2以下となって、優れた破断分離性を備えるものとなる。
したがって、本発明(1)の破断分離性に優れる高炭素鋼は、旧オーステナイト粒径が200μm以上であることと規定した。なお、より一層優れた破断分離性を確保するためには、旧オーステナイト粒径は400μm以上であることが好ましい。
高温で長時間熱処理すれば旧オーステナイト粒径は大きくなり、旧オーステナイト粒径が大きければ大きいほど破断分離性が良好になるが、熱処理コストが嵩むことに加えて生産性が低下し、さらに、炉壁が劣化するなど設備面における問題も生じる。このため、上記旧オーステナイト粒径の現実的な最大値は2000μm程度である。
なお、前記(A)項で述べた化学組成を有する鋼の場合、旧オーステナイト粒界に網状の初析セメンタイトが析出している。このため、上記の旧オーステナイト粒径は、例えば次の〈1〉に述べるような方法によって、初析セメンタイトの網状組織を観察することによって容易に測定することができる。また、〈2〉に述べるような焼入れ処理材を用いてオーステナイト粒界を現出させることによって、旧オーステナイト粒径を測定することもできる。
〈1〉樹脂に埋め込んだ試験片を鏡面研磨した後、研磨面をアルカリ性ピクリン酸ナトリウム溶液で腐食し、倍率を50倍または100倍として、4視野について光学顕微鏡写真を撮影して画像解析し、初析セメンタイトで囲まれた領域を1つの旧オーステナイト粒として、JIS G 0551(2005)に記載された「切断法」に準じて、それぞれの視野における旧オーステナイトの粒径を測定する。そして、上記のようにして測定した各視野の旧オーステナイト粒径を算術平均して、「旧オーステナイト粒径」を求める。
〈2〉所定の熱処理を施した後に水焼入れまたは油焼入れした試験片を樹脂に埋め込んで鏡面研磨した後、研磨面を界面活性剤を添加したピクリン酸飽和水溶液で腐食し、倍率を50倍または100倍として、4視野について光学顕微鏡写真を撮影して画像解析し、JIS G 0551(2005)に記載された「切断法」に準じて、それぞれの視野における旧オーステナイトの粒径を測定する。そして、〈1〉の場合と同様に、上記のようにして測定した各視野の旧オーステナイト粒径を算術平均して、「旧オーステナイト粒径」を求める。
(C)ブリネル硬さ
前記(A)項で述べた化学組成を有する鋼は、硬さがHB硬さで300以下の低い値であれば、良好な被削性を備えたものとなる。したがって、本発明(1)の破断分離性に優れる高炭素鋼は、硬さがブリネル硬さで300以下であることと規定した。なお、硬さが低くなりすぎると却って被削性が低下するので、HB硬さの下限は150程度とするのがよい。
(D)製造方法
次に本発明(2)の破断分離性に優れる高炭素鋼の製造方法について述べる。
(D−1)部品形状への加工
本発明(2)の破断分離性に優れる高炭素鋼の製造方法においては、前記(A)項で述べた範囲のCからAlまでの元素を含有し、残部はFeおよび不純物からなる鋼を素材として用い、これを所望の部品形状に加工する。なお、この部品形状への加工の方法は特に限定されるものではなく、熱間鍛造、切削加工など通常の方法でよい。
(D−2)部品形状に加工した後の熱処理
前記部品形状に加工した後は、1150℃以上の温度域で30分以上加熱する処理を行う必要がある。
上記の加熱温度が1150℃よりも低い場合には、前記(B)項で述べた200μm以上という旧オーステナイト粒径が得られないので、所望の低延性および低靱性、すなわち、室温での引張試験における伸びが10%以下という低延性およびJIS Z 2202(1998)で規定されるUノッチシャルピー衝撃試験片を用いた場合の室温における衝撃値が10J/cm2以下という低靱性が得られず、このために破断分離性が低下してしまう。
また、加熱温度が1150℃以上であっても、加熱の保持時間が30分未満の場合には、前記(B)項で述べた200μm以上という旧オーステナイト粒径が得難くなるので、所望の低延性および低靱性、すなわち、室温での引張試験における伸びが10%以下という低延性およびJIS Z 2202(1998)で規定されるUノッチシャルピー衝撃試験片を用いた場合の室温における衝撃値が10J/cm2以下という低靱性を確実に得ることが困難になる。
したがって、本発明(2)の破断分離性に優れる高炭素鋼の製造方法においては、前記した鋼を部品形状に加工した後、1150℃以上の温度域で30分以上加熱することとした。
なお、通常の熱処理炉の能力や実生産における生産性および熱処理コストなどの観点から、加熱温度の上限は1300℃、また、加熱温度域での保持時間の上限は120分とすることが望ましい。
(D−3)熱処理後の冷却
本発明(2)の破断分離性に優れる高炭素鋼の製造方法においては、前記(D−2)項の熱処理を行った後、パーライト変態が生じる温度の近傍を徐冷すること、具体的には、730〜700℃の温度域を、1時間当たり20℃以下の冷却速度で冷却することが必要である。
前記(A)項で述べた化学組成を有する鋼は、(D−2)項で述べた熱処理後に上記の条件で冷却することによって、その硬さがHB硬さで300以下の低い値となって、良好な被削性を備えたものとなる。
なお、前記730〜700℃の温度域における冷却速度は1時間当たり15℃以下とすることが好ましい。しかしながら、冷却速度が遅くなりすぎると、生産性が低下するので、コストの上昇をきたす。したがって、前記温度域での現実的な冷却速度の下限は、1時間当たり5℃程度である。
以上の理由で、本発明(2)の破断分離性に優れる高炭素鋼の製造方法は、前記(A)項で述べた化学組成を有する鋼を部品形状に加工した後、1150℃以上の温度域で30分以上加熱し、その後さらに、730〜700℃の温度域を20℃/時以下の冷却速度で冷却することとした。
なお、上記において、730〜700℃の温度域を、1時間当たり20℃以下の冷却速度で冷却しさえすれば、HB硬さで300以下の低い硬さが得られるので、730℃を上回る温度域および700℃を下回る温度域の冷却は特に規定する必要はない。このため、例えば、(D−2)項で述べた熱処理を行った後の730℃に至るまでの高温域および700℃を下回る低温域での冷却として、強制風冷など冷却速度が大きくなる手段を採用することによって、生産性を高めることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼1〜7を70トン転炉溶製−連続鋳造して得た鋳片を分塊圧延して一辺が180mmの角材とした。
Figure 0005030695
上記のようにして得た一辺が180mmの角材を素材として、1200℃加熱、1000℃仕上げの熱間鍛造によって、直径25mmの丸棒を作製した。
次いで、上記の直径が25mmの丸棒を、1100℃または1200℃で30分保持した後大気中で放冷し、放冷途中で一旦低温炉に装入し、低温炉の中で730〜700℃の温度域での冷却速度を制御した。なお、700℃を下回る温度域の冷却は、再度大気中での放冷とした。
表2に、熱処理とその後の冷却の詳細を示す。
Figure 0005030695
上記のようにして得た直径が25mmの丸棒から各種の試験片を採取して、HB硬さ、旧オーステナイト粒径、引張特性および衝撃特性を調査した。
HB硬さは、各丸棒から鍛錬軸に垂直な面(以下「横断面」という。)を試験面とする試験片を1条件あたり3個ずつ切り出し、R/2部位(ただし、「R」は丸棒の半径を表す。)1点、計3点について、JIS Z 2243(1998)に記載の方法で、直径が10mmの圧子を用いて29.42kNの試験力で測定し、これらの値を算術平均することによって求めた。
旧オーステナイト粒径は、次のようにして求めた。すなわち、各丸棒から横断面が被検面になるようにミクロ試験片を切り出し、樹脂に埋め込んで鏡面研磨した後、研磨面をアルカリ性ピクリン酸ナトリウム溶液で腐食し、倍率を50倍または100倍として、R/2部位の4視野について光学顕微鏡写真を撮影した。そして画像解析し、初析セメンタイトで囲まれた領域を1つの旧オーステナイト粒として、JIS G 0551(2005)に記載された「切断法」に準じて、それぞれの視野における旧オーステナイトの粒径を測定し、各視野の旧オーステナイト粒径を算術平均することによって求めた。
なお、鋼5に熱処理を施した試験番号12については上記の方法では粒界のセメンタイトが現出できなかった。したがって、試験番号12については、鋼5の直径25mmの熱間鍛造材より別途丸棒試験片を作製し、表2の加熱温度、すなわち1200℃に30分保持した後、水焼入れした。そして、丸棒試験片から横断面が被検面になるようにミクロ試験片を切り出し、樹脂に埋め込んで鏡面研磨した後、研磨面を界面活性剤を添加したピクリン酸飽和水溶液で腐食し、倍率を50倍または100倍として、R/2部位の4視野について光学顕微鏡写真を撮影した。そして画像解析し、JIS G 0551(2005)に記載された「切断法」に準じて、それぞれの視野における旧オーステナイトの粒径を測定し、各視野の旧オーステナイト粒径を算術平均することによって旧オーステナイト粒径を求めた。
引張特性は、各丸棒の中心の部位から、JIS Z 2201(1998)に記載の14A号試験片(ただし、平行部は直径と長さがそれぞれ、6mmと42mm)を切り出し、標点距離を30mmとして室温で引張試験を行って、伸びを測定した。なお、室温での伸びの目標は10%以下とした。
衝撃特性は、各丸棒の中心の部位から、JIS Z 2202(1998)で規定されるUノッチシャルピー衝撃試験片を切り出し、室温でシャルピー衝撃試験を行って、衝撃値を測定した。なお、室温でのシャルピー衝撃値の目標は10J/cm2以下とした。
表2に、旧オーステナイト粒径、HB硬さ、伸びおよびシャルピー衝撃試験の衝撃値の結果を併せて示した。また、図1に、旧オーステナイト粒径と伸びの関係を整理して示した。
表2から、「本発明例」とした試験番号、つまり、本発明(1)で規定する条件を満たす試験番号1、試験番号6、試験番号8および試験番号10は、HB硬さで300以下という低い硬さレベルを有するにもかかわらず、室温での伸びおよびJIS Z 2202(1998)で規定されるUノッチシャルピー衝撃試験片を用いた室温での衝撃値がそれぞれ、10%以下および10J/cm2以下という目標を達成しており、低延性かつ低靱性であることが明らかである。
これに対して、「比較例」とした試験番号のうちHB硬さが300を超えるものは、被削性に劣ると考えられ、また、室温での伸びが10%以下およびJIS Z 2202(1998)で規定されるUノッチシャルピー衝撃試験片を用いた室温での衝撃値が10J/cm2以下という目標の少なくとも一方が未達のものはHB硬さで300以下という低い硬さレベルの下では破断分離性に劣るものである。
具体的には、試験番号2、試験番号3および試験番号5は、上記室温での伸びおよびUノッチシャルピー衝撃試験片を用いた室温での衝撃値はそれぞれ、10%以下および10J/cm2以下という目標を達成を達成しているものの、HB硬さはそれぞれ、309、314および307で、本発明(1)で規定する300というHB硬さの上限値を超えている。したがって、被削性に劣ると考えられる。
試験番号4、試験番号7、試験番号9および試験番号11は、旧オーステナイト粒径がそれぞれ、83.05μm、141.60μm、168.41μmおよび146.12μmで、本発明(1)で規定する旧オーステナイト粒径の200μmという下限値を下回っている。したがって、室温での伸びが目標とする値を超えている。このため、本発明(1)で規定するHB硬さで300以下という低い硬さレベルの下では破断分離性に劣るものである。
試験番号12は、鋼5のC含有量が本発明で規定する0.70%というC含有量の下限値を下回るため、旧オーステナイト粒径は200μm以上であるものの、粒界に初析セメンタイトが析出せず、Uノッチシャルピー衝撃試験片を用いた室温での衝撃値が目標とする値を超えている。このため、本発明(1)で規定するHB硬さで300以下という低い硬さレベルの下では破断分離性に劣るものである。
試験番号13は、鋼6のC含有量が本発明で規定する1.20%というC含有量の上限値を超えるため、室温での伸びおよびUノッチシャルピー衝撃試験片を用いた室温での衝撃値はともに目標を達成を達成しているもののHB硬さが314で、本発明(1)で規定する300というHB硬さの上限値を超えている。したがって、被削性に劣ると考えられる。
試験番号14は、鋼7のCr含有量が本発明で規定する0.50%というCr含有量の下限値を下回るため、Uノッチシャルピー衝撃試験片を用いた室温での衝撃値が目標とする値を超えている。このため、本発明(1)で規定するHB硬さで300以下という低い硬さレベルの下では破断分離性に劣るものである。
本発明の鋼は、TiやVなどの合金元素を含まないために成分コストが低く、しかも、HB硬さで300以下という低い硬さ(強度)レベルであっても十分な破断分離性を有しており、さらに硬さ(強度)レベルが低いために良好な被削性も備えているので、軽自動車や小型乗用車等に使用される硬さ(強度)レベルの低いコンロッドなどのようなクラッキング製品の素材として利用することができる。この鋼は、本発明の方法によって製造することができる。
実施例の試験番号1〜14における旧オーステナイト粒径と伸びの関係を整理して示す図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.70〜1.20%、Si:0.4%以下、Mn:0.9%以下、P:0.10%以下、S:0.015%以下、Cr:0.5〜2.0%およびAl:0.05%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、旧オーステナイト粒径が200μm以上、硬さがブリネル硬さで300以下であることを特徴とする破断分離性に優れる高炭素鋼。
  2. 質量%で、C:0.70〜1.20%、Si:0.4%以下、Mn:0.9%以下、P:0.10%以下、S:0.015%以下、Cr:0.5〜2.0%およびAl:0.05%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなる鋼を部品形状に加工した後、1150℃以上の温度域で30分以上加熱し、その後さらに、730〜700℃の温度域を20℃/時以下の冷却速度で冷却することを特徴とする破断分離性に優れる高炭素鋼の製造方法。
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