JP5245544B2 - 疲労特性の優れたコモンレール - Google Patents

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Description

本発明は、自動車などの燃料噴射システム部品として使用される疲労特性の優れたコモンレールに関するものである。
コモンレールは、例えばディーゼルエンジン用の燃料噴射システムの部品として使用され(例えば、特許文献1および特許文献2参照)、高圧燃料を蓄圧するパイプ状中空本体部と、該中空本体部と交差する通孔を有して高圧燃料を流出入するパイプ接続部から構成されている。
コモンレールは、パイプ接続部が、高圧燃料により高応力が繰り返し付加され、疲労破壊を起こし易いが、熱間圧延や熱間鍛造の熱間加工により伸長した硫化物系介在物の伸長方向とパイプ接続部に生じる引張応力の方向とが交差していることが一因と考えられている。
一般に、降伏応力以上の応力が負荷されると鋼材が変形するが、降伏応力以下の応力であっても、繰り返し負荷されると鋼材が破壊される、いわゆる金属疲労という現象が知られている。鋼材が使用されている多くの部品はこのような応力環境下にあるため、鋼材の疲労強度を向上することは極めて重要である。疲労強度を改善する最もオーソドックスな方法は鋼材の強度を上げるという方法であるが、近年、鋼中の介在物が疲労強度に悪影響を及ぼすことが明らかになり、介在物、特にMnSなど硫化物系介在物の種類や大きさ、密度などの影響を詳細に研究し、その制御技術が開発されてきている。
コモンレールとしては、例えば、上記特許文献1においては、Mn硫化物系介在物の長さと幅の比を一定値以下に小さくすることにより製品の疲労特性を向上させる技術が示されている。また、上記特許文献2においては、TiNを利用してその周りにMnSを析出させて硫化物系介在物を微細化し、これによりBi金属介在物も微細化して被削性を向上させる技術が示されている。
特許第3934511号公報 特開2005−154886号公報
しかしながら、昨今においては、部品の高寿命化、或いは軽量化のため、さらなる疲労強度の向上が求められている。そこで、本発明は、被削性を確保しつつ、疲労強度に優れたコモンレールを提供することを課題とする。
昨今においては、溶銑および溶鋼の脱硫技術が発達し、製品中のSを質量%で0.0015%以下と極めて低い濃度に安定して抑えることができるようになった。すなわち、硫化物系介在物だけでなく、TiNのような窒化物系介在物、Al23のような酸化物系介在物による悪影響がコモンレールの性能を改善する上で見逃せなくなってきているが、前に述べた2つの発明はTiNのような窒化物系介在物、Al23のような酸化物系介在物の制御による製品性能の改善策に関して解決を与えていない。
本発明者らは鋭意研究した結果、コモンレール用鋼溶製中にREMを適量添加することにより、
(1) 硫化物系介在物の平均粒径を小さくし、アスペクト比(長さ/幅)を下げられる
(2) 窒化物系介在物の平均粒径を小さくできる
(3) 酸化物系介在物の平均粒径を小さくできる
という3つの効果を同時に発現させられることを見出し、前記課題が解決できることを知見し、本発明を完成した。
なお、硫化物系介在物とは、純粋なMnSや(Mn、REM)Sが主体であるが、その他に酸化物を核として析出したMnS、(Mn、REM)S、あるいは(Mn,REM)Sを主体として含有し、Fe、Ca、Ti、Zr、Mg、等の硫化物がMnSと固溶したり、結合したりして共存している介在物を指す。また、窒化物系介在物とは、TiNやAlNを指す。また、酸化物系介在物とは、Al23や(Al、REM)23が主体であるが、一部介在物においては(Al、REM)(O、S)のようないわゆるオキシサルファイドの形をとるものも存在した。これらの介在物中のSはOと比較して十分低濃度だったため、ここではSを含まないものと区別せず酸化物系介在物と称することとした。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1) 質量%で、
C:0.3〜0.5%、
Si:0.05〜0.5%、
Mn:0.3〜1.5%、
Al:0.01〜0.1%、
Ti:0.003〜0.02%、
Cr:0.4〜1.5%、
Mo:0.1〜1.5%、
N:0.003〜0.015%、
REM:0.0003〜0.01%、
Bi:0.01〜0.03%
を含有し、
S:0.0015%以下、
P:0.035%以下、
O:0.003%以下
に制限し、
残部がFeおよび不可避不純物からなり、L断面において、長さ(L)と幅(D)の比(L/D)の平均値が4.5以下、かつ、
円相当径0.01〜5.0μmである硫化物系介在物が5×10 1 〜1×10 4 個/mm 2 分散し、円相当径5.0μmを超える硫化物系介在物が5×10 1 個/mm 2 以下であり、
円相当径0.002〜0.5μmの窒化物系介在物が1×10 3 〜1×10 6 個/mm 2 分散し、円相当径0.5μmを超える窒化物系介在物が2×10 2 個/mm 2 以下であり、
さらに円相当径0.01〜5.0μmの酸化物系介在物が5×10 1 〜1×10 4 個/mm 2 分散し、円相当径5.0μmを超える酸化物系介在物が5×10 1 個/mm 2 以下であることを特徴とするコモンレール。
(2) さらに、質量%で、
Mg:0.0002〜0.01%、
Ca:0.0005〜0.01%、
Zr:0.0005〜0.02%、
Te:0.0002〜0.005%
のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)記載のコモンレール。
なお、L断面とは、圧延や鍛造等の圧縮加工による延伸方向断面をいう。
本発明によれば、被削性を確保し、疲労強度、耐久性に優れたコモンレールとすることができるという顕著な効果を奏する。
まず、本発明者らが鋭意検討の結果見出したREMを適量添加することによる、
(1) 硫化物系介在物の平均粒径を小さくし、アスペクト比(長さ/幅)を下げられる
(2) 窒化物系介在物の平均粒径を小さくできる
(3) 酸化物系介在物の平均粒径を小さくできる
という3つの効果と本発明の介在物の形態、分布に関する規定理由について述べる。
質量%で0.4%のC、1.0%のMn、0.001%のS、0.05%のAl、0.01%のTi、0.001%のOを含む溶鋼を2つのるつぼに分け、片方にのみ0.0035%のREMを添加し、鋳型内で凝固させた。このように得られた2つの鋼塊を通常の条件で熱間圧延し、厚さ15〜40mm、幅80mmの鋼板を作製した。
析出物の分散状態は、以下のように測定した。鋼板ごとに厚さの中心付近から、L方向(熱間圧延による延伸方向)に20mm角の試験片を採取し、この試験片のL断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1000〜100000倍の倍率で少なくとも1000μm2以上の領域にわたって観察し、対象となる大きさの粒子を測定し円相当径に換算するとともに、観察された個数と被験面積から単位面積(mm2)当たりの個数に換算した。なお、本発明内に記載の粒子径は断りのない限り円相当径を指すものとする。
対象となる硫化物系介在物、窒化物系介在物、酸化物系介在物のうち少なくとも20個以上について付属の波長分散型分光法(WDS)を用いて組成を分析し、酸化物の平均組成を求めた。この時、酸化物組成の分析値に地鉄のFeが検出される場合は、分析値からFeを除外して酸化物の平均組成を求めた。
(1) 硫化物系介在物
REMを含有する水準の硫化物系介在物の長さ(L)と幅(D)の比(L/D)の平均値は2.8、REMを含有しない水準のL/Dの平均値は3.7となり、REMを含有する硫化物系介在物のL/Dが小さくなることがわかった。REMはSとの親和力が大きく、MnSより硬質なREM−Sを形成したことが理由と考えられる。
硫化物系介在物は、熱間加工により伸長形状になり、これが引張応力方向とある角度で交差すると、切欠き作用が起こり、あたかも表面欠陥のような作用として働くものと推定される。本発明では、硫化物系介在物の平均L/Dが4.5を超えると耐久比が大きく低下するため、硫化物系介在物のL/Dの平均値を4.5以下とした。
平均L/Dは、REMの添加、さらには後述するMg、Ca、Zrの添加の他、鋼塊、鋳片からの減面率によって制御される。
また、硫化物系介在物の平均粒径を調査した結果、REMを含有する微細な硫化物系介在物が多く見られることを見出した。その粒子径は円相当径で0.01〜5.0μmであった。
REMを添加することにより硫化物系介在物の平均粒径が小さくなる現象に関しては検討中であるが、以下の機構が推定される。すなわち、REMを添加しない場合に主たる構成物となるMnSより融点の高いREM−Sが溶鋼段階に存在することで、硫化物系介在物同士の衝突による凝集がおこりづらくなり、結果として硫化物系介在物が粒子径0.01〜5.0μmと細粒化される。なお、REMを添加しない水準においては5.0μmを超える粗大な硫化物系介在物がREMを添加した水準と比較して多く残存していた。この硫化物系介在物の組成はほぼ純粋なMnSであり、溶鋼中にて凝集合体して粗大化したものと推定される。
硫化物系介在物は脱硫処理において不可避的に発生する介在物である。粒子径5.0μmを超えるものはL/Dによらず少量でも疲労寿命に不利となり、5×101個/mm2を超えるとその影響が大きくなるため好ましくない。よって上限を5×101個/mm2とする。粒子径0.01〜5.0μmのものに関しても低減するほど疲労強度に有利となるが、5×101個/mm2未満ではその効果はほぼ飽和し、さらなる低減はコストの増大を招き好ましくない。よって下限を5×101個/mm2とする。また、1×104個/mm2を超えると疲労寿命に及ぼす影響が大きくなるため好ましくない。よって上限を1×104個/mm2とする。
(2) 窒化物系介在物
鋼中に析出している窒化物系介在物を詳細に観察したところ、微小な酸化物を核生成サイトとして析出している窒化物系介在物、特にTiNが頻度高く存在することを見いだした。そのような微小な酸化物として、REMを含み、さらにTiとAlのいずれか1種類以上を含む酸化物(以後、TiあるいはAlが含まれずともTi−Al−REM酸化物と呼ぶ)であることを見出した。窒化物系介在物を含めたその粒子径は0.002〜0.5μmであった。
すなわち、Ti−Al−REM酸化物が鋼中に存在することで、それら酸化物が存在しない場合に比較して窒化物系介在物が析出するサイトが増加し、窒化物系介在物の析出個数が増加する。その結果として窒化物系介在物が粒子径0.002〜0.5μmと細粒化される。なお、REMを添加しない水準においては0.5μmを超える粗大な窒化物系介在物がREMを添加した水準と比較して多く残存していた。
窒化物系介在物は0.5μmを超える粗大なものが2×102個/mm2を超えて存在すると疲労強度に悪影響がある。よって上限を2×102個/mm2とする。逆に、本発明で多数観察されるような0.002〜0.5μmの微細な粒子であれば適正な数の分散により結晶粒粗大化抑制効果を発現させることができる。しかし1×103個/mm2未満であるとその効果が得られない。よって下限を1×103個/mm2とする。また、1×106個/mm2を超えると疲労強度や母材の靭性に悪影響が出る。よって上限を1×106個/mm2とする。
酸化物系介在物
REMを添加しない場合、Al23を主な成分とする酸化物系介在物が生成する。Al23は凝集力が大きく、クラスター状の粗大酸化物系介在物を形成しやすい。しかし、Alより強い脱酸力を有するREMの添加により、一部のAl23が還元され、(REM、 Al)23なる酸化物系介在物が生成する。本実験により観察された酸化物系介在物の粒径は、REM添加水準は0.01〜5.0μmであったが、REMを添加しない水準においては5.0μmを超える粗大な酸化物系介在物がREMを添加した水準と比較して多く残存していた。メカニズムは不明であるが、REMを含有する酸化物系介在物はREMを含有しない酸化物系介在物と比較して微細に分散する傾向があり、コモンレールの疲労強度向上に有利に作用する。
酸化物系介在物は脱硫処理において不可避的に発生する介在物である。粒子径5.0μmを超えるものは少量でも疲労寿命に不利となり、5×101個/mm2を超えるとその影響が大きくなるため好ましくない。よって上限を5×101個/mm2とする。粒子径0.01〜5.0μmのものに関しても低減するほど疲労強度に有利となるが、5×101個/mm2未満ではその効果はほぼ飽和し、さらなる低減はコストの増大を招き好ましくない。よって下限を5×101個/mm2とする。また、1×104個/mm2を超えると疲労寿命に及ぼす影響が大きくなるため好ましくない。よって上限を1×104個/mm2とする。
次に、本発明の鋼成分組成の規定理由について述べる。
単位はいずれも質量%である。
C:0.3〜0.5%
Cは静的強度だけでなく、疲労強度、靭性、延性に影響する最も基本的な元素である。Cが0.3%未満では静的強度および疲労強度が不十分である。よって下限を0.3%とする。また、0.5%を超えると靭性が劣化する。よって上限を0.5%とする。
Si:0.05〜0.5%
SiはCに次いで固溶強化能が大きい重要な元素である。Siが0.05%未満では十分な強度を得ることができない。よって下限を0.05%とする。また、0.5%を超えると靭性や加工性を著しく劣化させる元素でもある。よって、上限を0.5%とする。
Mn:0.3〜1.5%
Mnは焼入れ性を向上させ、冷却速度が不十分な場合でも部品の内部まで硬度を確保するのに重要な元素である。Mnが0.3%未満では必要な強度が確保できない。よって下限を0.3%とする。また、1.5%を超えると靭性および加工性が劣化する。よって上限を1.5%とする。
Al:0.01〜0.1%
Alは脱酸目的で用いられる必須元素であり、またAlNを生成して結晶粒の粗大化を抑制する効果がある。Alが0.01%未満ではこの効果が得られにくく、結晶粒の粗大化は靭性劣化をもたらすだけでなく、部品の一部に粗大粒が発生することは機械的性質が不均一になるので望ましくない。よって下限を0.01%とする。また、0.1%を超えると、鋳造中にノズル詰まりが発生したり、鋼中に残存する酸化物系介在物が性能を劣化させたりするなどの不具合が生じやすい。よって上限を0.1%とする。
Ti:0.003〜0.02%
TiはAl同様窒化物を生成する元素であるが、熱的安定性に優れ、より高温まで結晶粒粗大化抑制効果を持続させる。Tiが0.003%未満ではこの効果が得られにくいため、下限を0.003%とする。また、0.02%を超えると、本発明で述べるREM添加による窒化物微細化効果が飽和し、TiN自体が粗大に成長しやすくなり、疲労強度を低下させる原因となる。よって上限を0.02%とする。
Cr:0.4〜1.5%
CrはMnと同様、鋼の焼入れ性を向上する有用な元素である。0.4%未満ではこの効果が十分得られない。よって下限を0.4%とする。また、1.5%を超えると効果がほぼ飽和するため、コストの増大を招いて好ましくない。よって上限を1.5%とする。
Mo:0.1〜1.5%
Moはその炭窒化物を微細に析出させることにより、焼戻し時に鋼を硬化させる、いわゆる2次硬化を起こす元素であり、疲労強度を改善に有効である。また、焼入れ性向上効果も大きい。0.1%未満では十分な効果が得られない。よって下限を0.1%とする。また、1.5%を超えると焼き入れ熱処理時に未溶解の炭化物が残存しやすくなり、靭性を劣化させる。よって上限を1.5%とする。
N:0.003〜0.015%
NはTiN、AlN等の窒化物系介在物を生成し、結晶粒粗大化抑制効果を発現させる。0.003%未満ではこの効果が十分に得られない。よって下限を0.003%とする。また、0.015%を超えると窒化物系介在物の粗大化を招き、疲労強度を低下させる原因となるため好ましくない。また、熱間延性を低下させ、鋳造時あるいは圧延時に表面疵の要因となる。よって上限を0.015%とする。鋼材清浄性の観点から、0.01%以下とするとさらに望ましい。
REM:0.0003〜0.01%
REMは本発明において最も重要な元素であり、硫化物系介在物のアスペクト比低下、窒化物系介在物の微細化、酸化物系介在物の微細化効果を持つ。0.0003%未満ではこれらの効果が十分に得られない。よって下限を0.0003%とするが、0.001%以上であればさらに望ましい。また、0.01%を超えると鋼の清浄性を低下させ、母材の靭性を劣化させる。よって上限を0.01%とする。なお、ここでREMとはLaやCe等の希土類元素を表すが、そのうちの任意の1種類、あるいは2種類以上のREMを用いることができる。
Bi:0.01〜0.03%
Biは鋼材の被削性を向上させる効果がある。本発明では疲労強度改善を志向し、後述するようにSを低位に抑制しているため、同じく被削性向上効果のあるMnSが十分に生成しない。コモンレールは燃料噴射用の細長い孔を必要とする場合が多く、Bi添加により被削性を確保することが必須となる。十分な被削性を得るためには0.01%未満では効果がなく、下限を0.01%とする。また、0.03%を超えると被削性向上はさらに期待できるものの熱間延性が極端に劣化し、製造が困難になる。よって上限を0.03%とする。
S:0.0015%以下
本発明においてSの低位制御は非常に重要である。Sが0.0015%を超えると、REMによる硫化物系介在物改質効果が十分に発揮されず、粗大化しやすくなるためコモンレールの性能を劣化させる。0.0015%以下に制限する。0.0010%以下とするとさらに望ましい。
P:0.035%以下
Pは鋼に添加する元素の中でも最も粒界に偏析しやすく、かつ粒界を脆弱にする元素である。本発明では極力低減したほうが望ましい。特に、0.035%を超えると粒界破壊が著しくなるため、Pの上限を0.035%とする。0.015%以下とするとさらに望ましい。
O:0.003%以下
Oは溶鋼中に含まれる元素で、主にAlやREMにより脱酸される。Oが0.003%を超えると鋼の清浄性を劣化させ、母材の靭性を劣化させる。よって上限を0.003%とする。鋼材清浄性の観点から、0.001%以下とするとさらに望ましい。
本発明においては、製品に求める特性を発現させるため、さらに以下の元素を1種または2種以上を溶鋼に添加しても良い。
Mg:0.0002〜0.01%
MgはREM同様、Al23を改質し、酸化物系介在物粗大化を抑制する効果がある。また、硫化物系介在物にも作用し、アスペクト比を低下させる効果がある。しかし、0.0002%未満ではこれらの効果が見られないため、下限を0.0002%とする。また、0.01%を超えるとMgOを主成分とする粗大なクラスター状酸化物系介在物を形成し、疲労破壊の基点となって好ましくない。よって上限を0.01%とする。
Ca:0.0005〜0.01%
CaはREM同様、Alを改質し、酸化物系介在物粗大化を抑制する効果がある。また、硫化物系介在物にも作用し、アスペクト比を低下させる効果がある。しかし、0.0005%未満ではこれらの効果が見られないため、下限を0.0005%とする。また、0.01%を超えるとCaO−Al23を主成分とする、硫化物系介在物同様伸長性に富んだ酸化物系介在物を形成し、疲労破壊の基点となって好ましくない。よって上限を0.01%とする。
Zr:0.0005〜0.02%
Zrは硫化物系介在物に作用し、アスペクト比を低下させる効果がある。しかし、0.0005%未満ではこれらの効果が見られないため、下限を0.0005%とする。しかし0.02%を超えると、硬質のクラスター状酸化物系介在物を発生させ、鋼の清浄性ならびに疲労強度に悪影響を及ぼす。よって上限を0.02%とする。
Te:0.0002〜0.005%
Teは主にMnTeの化合物の形で存在し、MnS近傍に存在してアスペクト比の低下に寄与する。
しかし、0.0002%未満ではこれらの効果が見られないため、下限を0.0002%とする。反面、熱間延性を大きく劣化させ、0.005%を超えると鋳片の表面疵やブレークアウトが頻発するなど連続鋳造での製造が困難になる。よって上限を0.005%とする。
以下に本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
表1に示した化学成分(残部はFeおよび不可避不純物)で、鋼材を試作した。1〜10が本発明鋼、11〜32が比較鋼である。試作鋼は転炉溶製し、転炉出鋼時にSi、Mnによる脱酸を、取鍋精錬にて真空脱ガス処理時にその他の元素による脱酸および脱硫およびその他の成分調整を行った。なお、Bi、Ca、Mg、Teは蒸気圧が高いことを考慮し、ワイヤーを用いた添加を連続鋳造開始5分前以内とした。この溶鋼を連続鋳造により200mm厚鋳片に鋳造し、一旦室温まで冷却した後1170℃に加熱して熱間圧延を行い、板厚15〜35mm、幅80mmの鋼板とし、鋼板の厚さ中心付近からC方向に15mm角、長さ80mmの角棒を採取した。
Figure 0005245544
さらに各角棒の前記鋼板でのL断面の内の厚み方向断面(該角棒の長手方向との直角断面)において介在物観察用サンプルを採取した。
介在物の大きさ、個数は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて調査した。硫化物系介在物、0.5μmを超える窒化物系介在物、および酸化物系介在物に関しては約5000倍の倍率で少なくとも10000μm2以上の領域にわたって写真撮影し、この写真を元に各介在物の大きさ(円相当径に変換)と個数を測定し、被験面積から単位面積(mm2)当たりの個数に換算した。さらに、0.01〜5.0μmの硫化物系介在物に関してはそれぞれのL/Dを測定し、平均値(相加平均)を求めた。0.002〜0.5μmの窒化物系介在物に関しては微細かつ多量に分散していたため、倍率を約20000倍とし、少なくとも250μm2以上の領域にわたって写真撮影し、この写真を元に各介在物の大きさ(円相当径に変換)と個数を測定し、被験面積から単位面積(mm2)当たりの個数に換算した。
L/Dは断面の中心付近にある100個程度の硫化物系介在物を撮影し、その写真を画像処理装置で読み取り、それぞれのL/Dを求め、それらの平均値を計算した。
析出物の分散状態は、対象となる硫化物系介在物、窒化物系介在物、酸化物系介在物のうち少なくとも30個以上について付属の波長分散型分光法(WDS)を用いて組成を分析し、酸化物の平均組成を求めた。この時、酸化物組成の分析値に地鉄のFeが検出される場合は、分析値からFeを除外して酸化物の平均組成を求めた。
同時に、各角棒を850〜960℃に加熱後、焼入れ、530〜660℃で焼戻した。その後、これらの角棒から引張試験片と小野式回転曲げ疲労試験片を作製し、耐久比(疲労限界/引張強さ)を求めた。さらに同じ角棒から被削性試験片を作成し、ドリル穿孔試験に供した。ドリル穿孔試験は累積穴深さ1000mmまで切削可能な最高の切削速度(いわゆるVL1000、単位:m/min)で被削性を評価する方法であり、数値が大きいほど被削性が良好であることを示す。
以上の結果を表2に示す。
Figure 0005245544
鋼種1〜10は本発明コモンレールの鋼であり、本発明範囲を満たしていて、いずれも十分な耐久比を持っている。一方、比較例鋼の11〜26、28〜30は本発明範囲を満たしておらず、本発明鋼ほどの十分な耐久比もしくは被削性を持っておらず、比較例鋼の27は製造が困難となった。
比較例11、12はMnに関するものである。比較例11はMnが過少であったため、強度が劣化したために耐久比が劣化した例である。また、比較例12はMnが過大であったため、靭性を劣化させ耐久比を満足しなかった例である。
比較例13、14はSに関するものであり、いずれも過大であったため、硫化物系介在物が過多となり耐久比が劣化した例である。
比較例15、16はAlに関するものである。比較例15はAlが過少であったため、0.002〜0.5μmの窒化物系介在物を十分量生成できず、耐久比が劣化した例である。また、比較例16はAlが過大であったため、鋼中に5.0μmを超えるクラスター状酸化物系介在物を過剰に生成させ、耐久比を劣化させた例である。
比較例17、18はTiに関するものである。比較例17はTiが過少であったため、0.002〜0.5μmの窒化物系介在物を十分量生成できず、耐久比が劣化した例である。また、比較例18はTiが過大であったため、鋼中に0.5μmを超える窒化物系介在物を過剰に生成させ、耐久比を劣化させた例である。
比較例19、20はOに関するものであり、いずれも過大であったため、0.5μmを超える酸化物系介在物が過多となり耐久比が劣化した例である。
比較例21、22はNに関するものである。比較例21はNが過少であったため、0.002〜0.5μmの窒化物系介在物を十分量生成できず、耐久比が劣化した例である。また、比較例22はNが過大であったため、鋼中に0.5μmを超える窒化物系介在物を過剰に生成させ、耐久比を劣化させた例である。また、鋳片に表面疵が発生しており、これもNが課題であることが原因と考えられる。
比較例23、24、25はREMに関するものである。比較例23はREMが過少であり、Mg、Caなどの硫化物系介在物展伸抑制効果を持つ元素も含有しないため、L/Dが4.5を超え、さらに硫化物系介在物の微細化効果、窒化物系介在物の微細化効果、酸化物系介在物の微細化効果がいずれも得られず、耐久比が大きく劣化した例である。比較例24はZr添加により硫化物系介在物の伸長は抑制できているものの、窒化物系介在物の核生成サイトとなるTi−Al−REM酸化物が十分量存在しないため、窒化物系介在物の微細分散に至らず、また酸化物系介在物の微細化もなされなかったために耐久比が劣化した例である。また、比較例25はREMが過大であったため、5.0μmを超える酸化物系介在物を過剰に生成させ、耐久比を劣化させた例である。
比較例26、27はBiに関するものである。比較例26はBiが過少であり、十分な耐久比が得られているものの、十分な被削性が得られなかった例である。また、比較例鋼の27はBiが過大であり、分塊圧延段階で大きなクラックが生じたため、サンプルを採取することができなかった例である。
比較例鋼の28、29、30は化学成分が本発明範囲内であるが、圧延での減面率が大きすぎ、粒子径0.01〜5.0μmの硫化物系介在物の平均L/Dが本発明範囲を超えたため、耐久比が劣化した例である。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.3〜0.5%、
    Si:0.05〜0.5%、
    Mn:0.3〜1.5%、
    Al:0.01〜0.1%、
    Ti:0.003〜0.02%、
    Cr:0.4〜1.5%、
    Mo:0.1〜1.5%、
    N:0.003〜0.015%、
    REM:0.0003〜0.01%、
    Bi:0.01〜0.03%
    を含有し、
    S:0.0015%以下、
    P:0.035%以下、
    O:0.003%以下
    に制限し、
    残部がFeおよび不可避不純物からなり、L断面において、長さ(L)と幅(D)の比(L/D)の平均値が4.5以下、かつ、
    円相当径0.01〜5.0μmである硫化物系介在物が5×10 1 〜1×10 4 個/mm 2 分散し、円相当径5.0μmを超える硫化物系介在物が5×10 1 個/mm 2 以下であり、
    円相当径0.002〜0.5μmの窒化物系介在物が1×10 3 〜1×10 6 個/mm 2 分散し、円相当径0.5μmを超える窒化物系介在物が2×10 2 個/mm 2 以下であり、
    さらに円相当径0.01〜5.0μmの酸化物系介在物が5×10 1 〜1×10 4 個/mm 2 分散し、円相当径5.0μmを超える酸化物系介在物が5×10 1 個/mm 2 以下であることを特徴とするコモンレール。
  2. さらに、質量%で、
    Mg:0.0002〜0.01%、
    Ca:0.0005〜0.01%、
    Zr:0.0005〜0.02%、
    Te:0.0002〜0.005%
    のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載のコモンレール。
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