JP4379620B2 - 溶接熱影響部の靱性に優れた溶接構造用鋼材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、船舶、海洋構造物、橋梁、建材などに使用される溶接熱影響部の靭性に優れた溶接構造用鋼材およびその製造方法に関する。特に、近年要求の高まっている、溶接熱影響部が安定した高靭性を有する鋼材に関する。
近年、船舶、海洋構造物、橋梁、建築などの大型構造物に使用される溶接構造用鋼材の材質特性に対する要望は厳しさを増しており、母材の靭性と同様に溶接熱影響部の靭性への要求も厳しさを増している。例えば、タンカーが破壊すると海洋汚染を引き起こし、海洋環境に甚大な被害を及ぼす場合がある。そのような事故の防止にも溶接熱影響部の靱性に優れた鋼材が必要である。以下、溶接熱影響部をHAZと略記することがある。
例えば、特許文献1(特開2002-256379号公報)には、鋼材中のCa、O(酸素)、Sの含有量を調整し、大入熱溶接をした際に、溶接熱影響部を微細な組織とすることにより、優れたHAZ靭性を有する大入熱溶接用鋼材に関する発明が記載されている。この特許文献1に開示される発明では、鋼板を溶製する際の凝固段階でCaSを晶出させ、さらに、CaSの表面上にMnSを析出させる。さらにMnS上には、TiN、BN、AlN、VN等のフェライト生成核を析出させることにより、大入熱溶接時の高温下でも溶解しないフェライト変態生成核を微細に分散させ、HAZ組織を微細なフェライト−パーライト組織として高靭性化を達成している。
また、特許文献2(特開2001-288509号公報)には、製鋼における脱酸剤をTi、Al、Caの順に添加し、さらにAlを添加する鋼材の製造方法に関する発明が記載されている。その発明では、Ca、AlおよびTiのいずれか2種以上を含有する酸化物の微細分散と個数増加を図り、オーステナイト粒の細粒化や微細フェライト生成によって優れたHAZ靭性を持つ鋼材が製造できるとされている。
特開2002-256379号公報 特開2001-288509号公報
前述のとおり、近年、鋼構造物に対する安全性確保の要求はますます高まっており、従来であれば、シャルピー試験においても、靭性値の平均値で満足すれば、それでよしとする風潮があったが、最近では安定な高靭性が求められ、シャルピー試験の個々の測定値のバラツキまで問題にされるようになってきた。その背景は、次の2点である。
第一は、平均値が高くても、個々の測定値にバラツキがあるということは、本質的に靭性が安定しておらず、何度か試験を繰り返すと、平均値としても低値を示す確率が高いと考えられるようになってきたことである。
第二に、重要な鋼構造物に対しては、安全性確認のために、例えば溶接長100m当り1回のシャルピー試験を行い合格することを求められる場合があることである。そのような場合には、シャルピー試験の個々の測定値のレベルで安定した高靭性が得られなければ、何度も繰り返される試験にすべて合格することはおぼつかない。
上記のようなことから、本発明は、重要構造物に用いられる鋼材であって、溶接熱影響部(HAZ)の靭性について、安定して高い値を確保できる鋼材およびその鋼材を製造する方法の提供を目的としている。
本発明者は、溶接熱影響部においても安定した高靭性を得られる鋼材の開発を目的として、適正な介在物制御とシャルピー試験時の応力集中緩和効果とを組み合わせることによって得られる、新たな金属学的効果を知見して本発明に至った。本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.005%を超えて0.08%まで、Ti:0.0005〜0.02%、Ca:0.0003〜0.02%、N:0.001〜0.009%およびO(酸素):0.0025%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記の(1)式を満足するとともに、粒径0.5〜5μmのCaO・Al23系介在物が分散していることを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた溶接構造用鋼材。
0.50≦Ca/O≦1.30 ・・・・・(1)
ただし、(1)式の元素記号はその元素の含有量(質量%)を示す。
上記の粒径0.5〜5μmのCaO・Al23系介在物のアスペクト比は、1〜1.9であることが望ましい。なお、アスペクト比とは、鋼材の圧延方向に平行な断面で観察される介在物の長径を短径で除した値である。
また、粒径が0.5μmを超え、かつアスペクト比が5を超えるAl23およびCaOは、それぞれ5×10個/mm2以下であることが望ましい。
上記の溶接構造用鋼材は、Feの一部に代えて、質量%で、B:0.002%以下、Nb:0.05%以下、V:0.1%以下、Cu:1.5%以下、Ni:6%以下、Cr:1%以下およびMo:0.8%以下のなかから選んだ1種以上を含有することができる。
(2)溶鋼中のAlが0.005%を超えて0.08%までの範囲となるようにAlを添加して脱酸した後、Tiを添加し、さらに脱ガス装置で15分以上処理した後、溶鋼温度を1600±70℃に保った状態でCaを添加し、鋳造し、圧延することを特徴とする上記の溶接熱影響部靭性に優れた溶接構造用鋼材の製造方法。
まず、本発明者が知見した新たな金属学的効果について説明する。
一般に、溶接熱影響部に高靭性が要求される重要構造物には、Alにより鋼中の酸素を除去したAlキルド鋼が用いられる。本発明も、このような重要構造物に用いられるAlキルド鋼に関するものであるが、Alキルド鋼の問題点は、溶接熱影響部においては、シャルピー試験などの個々の測定値のバラツキが大きいことである。
近年、破壊安全性に対する要求は更に高まり、安全確保のために溶接熱影響部においても靱性が安定していることが求められている。
本発明者らは、シャルピー試験の吸収エネルギーの個々の値のバラツキについて鋭意研究した結果、その原因が鋼中の粗大介在物または圧延で点列状につらなった介在物の集合体にあることが判明した。これらの介在物が、溶接熱影響部のシャルピー試験時にき裂の発生と伝播を助長し、吸収エネルギーのバラツキの原因になるのである。従って、HAZ組織の微細化だけでは上記のバラツキは抑えられないことが明らかになった。
鋼中の粗大介在物は、例えば、圧延で伸延された硫化物系の介在物、またはAl23系の介在物が圧延で砕かれて点列状につらなった介在物である。これらの圧延で伸延された硫化物系の介在物やAl23系の介在物が圧延で砕かれて点列状につらなって生じる介在物群の生成を防止することが、シャルピー試験における吸収エネルギーの個々の測定値のバラツキを防止する上で非常に重要である。
このような粗大介在物群が、シャルピー試験片のノッチ近傍に存在すれば、そこから発生する亀裂の伝播によって劈開破壊が容易となり、シャルピー試験の吸収エネルギーは著しく低下する。したがって、鋼材中の介在物形態を制御すれば、これらを防止することができる。本発明では、製鋼段階における脱酸材の添加を制御して、酸化物を制御することにより、これらを防止する。以下、本発明で定める鋼材の化学組成、介在物の分布形態および製造方法について順次説明する。なお、成分含有量についての「%」は「質量%」を意味する。
(1)化学組成
C:0.01〜0.2%
Cは、母材および溶接部の強度と靭性を確保するため0.01%以上含有させる。しかし、Cが多すぎると母材およびHAZの靭性を低下させるとともに溶接性を劣化させるため、その上限を0.2%とする。
Si:0.03〜0.5%
Siは、予備脱酸のために鋼に添加され、また母材の強度確保に有効である。これらの効果を得るために、その含有量を0.03%以上とする。しかし、Siが多すぎると溶接性およびHAZ靭性が劣化するため、上限を0.5%とする。より良好なHAZ靭性を得るためにはSiを0.3%以下にするのが一層望ましい。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは、母材およびHAZ部の強度と靭性の確保に不可欠であり、その含有量の下限を0.5%とする。しかし、Mnが多すぎるとHAZ靭性の劣化や、スラブの中心偏析助長による溶接性劣化などが起こるため、上限を2.0%とする。
P:0.02%以下
Pは、本発明の鋼材においては不純物であり、0.02%以下とする。Pの低減は、スラブ中心偏析の軽減を通じて母材およびHAZの靱性等の機械的性質を改善し、さらにはHAZの粒界破壊を抑制する。
S:0.01%以下
Sは、鋼中に不純物として存在し、多すぎると中心偏析を助長したり、延伸したMnSが多量に生成したりするため、母材およびHAZの靭性等の機械的性質が劣化する。また、後述するCaとの親和力が大きく、CaSを生成するため、適正な複合酸化物の生成を阻害する。従って、Sは0.01%以下とする。より好ましいのは0.001%未満、最も好ましいのは0.0004%未満である。
Al:0.005%を超えて0.08%まで
Alは、本発明鋼材において脱酸剤として重要な元素の一つである。この作用を確保するために、Alは0.005%を超える量で含有させる。Alを溶鋼に添加した場合、脱酸材として作用しAl23を生成する。Al23は溶鋼中にてクラスターを形成し、圧延を施した場合にはこれらのクラスターが分離し、点列状につらなって鋼材中に存在することとなる。この場合、点状につらなったAlはシャルピー試験時の亀裂の発生起点となり、母材の靭性を劣化させる。また、Al23は安定な酸化物であるため溶接によっても変化せず、最終的にHAZに残留するため、HAZ靭性をも劣化させる。
しかし、本発明ではAlとともにCaを添加することにより、鋼中にCaO・Al23系介在物を生成せしめる。したがって、Alを0.005%を超えて含有させることができる。より好ましいのは0.04%を超える含有量である。一方、Al含有量が過多になると、鋼中に固溶するAlが増加し、溶接後の冷却過程において残留オーステナイトのセメンタイトへの分解反応を抑制して、島状マルテンサイトを増加させ、溶接部の靭性を低下させる。したがって、Al含有量の上限は0.08%とする。
Ti:0.0005〜0.02%
Tiは、鋼中でTiNとして析出し、HAZ部でのオーステナイトの粗大化を抑制し、かつフェライト変態の核となって靭性を向上させる。この効果を得るには、0.0005%以上含有させる必要がある。一方、含有量が過多になると、固溶Tiが増加し、HAZ靭性が低下する。そのため、0.02%以下とする。
Ca:0.0003〜0.02%
Caは、本発明鋼材において最も重要な元素であり、介在物の球状化を達成するためにはAlおよびO(酸素)とともに厳密に制御する必要がある。Caは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中にCaO・Al23系介在物を形成するためにも必要な元素である。したがって、0.0003%以上含有させる。しかし、Caを大量に添加すると鋼の清浄性を低下させ、母材およびHAZの靭性を劣化させる。このため、その含有量は0.02%以下とする。
N:0.001〜0.009%
Nは、TiNの析出に極めて重要な元素であり、0.001%未満ではTiNの析出量が不足し、溶接後の冷却時に有害なTi炭化物が生成するため、0.001%を下限とした。より好ましいのは0.004%を超える含有量、最も好ましいのは0.006%を超える含有量である。一方、固溶Nの増大はHAZ靭性の劣化を招くので、0.009%を上限とした。
O(酸素):0.0025%以下
Oは、Caとならんで本発明鋼材において最も重要な元素であり、介在物の球状化のみならず、分散個数や介在物粒径とも直接的に関わるため、その含有量は厳密に制御されなければならない。本発明の鋼材においては、0.0025%を超える過剰なOは、粗大な酸化物を形成するとともに、介在物個数を必要以上に増加させ、母材の清浄性を劣化させるため靭性に悪影響を及ぼす。よって、Oの許容上限を0.0025%とした。一方、本発明の鋼材においては、Oは少ないほど好ましいので、下限値を設ける必要はないが、Oの低減には工業的に限界があり、通常は少なくとも0.0010%は含まれる。
Ca/O:0.50〜1.30
溶鋼中で生成されるCaO・Al23系介在物において、CaOとAl23がほぼ1:1で共存した場合、CaO・Al23系介在物の融点は溶鋼温度以下に低下し液化する。この時、CaO・Al23系介在物には表面張力が作用し球状となる。この作用を利用してCaO・Al23系介在物を球状化させるには、Ca/Oを0.50〜1.30とする必要がある。
Ca/Oが1.30を超えると、CaOがAl23よりも多くなり、また、Ca/Oが0.50未満であると、Al23がCaOよりも多くなり、いずれの場合も、CaO・Al23系介在物の融点が溶鋼温度を超えることとなり、CaO・Al23系介在物の球状化は困難となる。球状化をより一層促進するためにはCa/Oを0.63〜1.13とすることが望ましい。
本発明鋼材の一つは、上記の成分のほか、残部がFeおよび不純物からなるものである。本発明鋼材の他の一つは、さらにB、Nb、V、Cu、Ni、CrおよびMoの中から選んだ1種または2種以上を含有する鋼材である。これらの元素は、いずれも母材およびHAZの強度、靱性等の機械的性質の改善に役立つ。
B:0.002%以下
Bは、焼入性を高めて母材やHAZの機械的性質を向上させる。この効果を得るには、0.0003%以上含有することが好ましい。しかし、Bの含有量が0.002%を超えるとHAZ靭性や溶接性が劣化する。よって上限を0.002%とする。
Nb:0.05%以下
Nbは、母材組織の微細化に有効な元素であり、母材の機械的性質を向上させる。この効果を得るには、0.0040%以上含有することが好ましい。しかし、0.05%を超えると母材およびHAZの靭性が劣化する。よって上限を0.05%とする。
V:0.1%以下
Vは、主に焼戻し時の炭窒化物析出により母材の強度を向上させる。その含有量が0.005%未満では上記の効果が得られない。一方、0.1%を超えると母材の性能向上効果が飽和し、靱性劣化を招く。
Cu:1.5%以下
Cuを含有させると、母材およびHAZの靭性を劣化させずに強度を上昇させることができる。これらの効果を確実に得るには、Cuは0.1%以上の含有量とすることが好ましい。しかし1.5%を超えると、鋼の焼入性を過度に高め、HAZ靱性を損なう傾向が強くなる。したがって、1.5%を超えて含有させるべきではない。
Ni:6%以下
Niは、適正量を添加することによって、溶接性およびHAZ靱性に悪影響を及ぼすこともなく、母材の強度および靱性を向上させる。含有量を0.1%以上とすると焼入性向上効果も得られるので、0.1%以上とすることが望ましい。特に、Cuを添加する場合は圧延時のひび割れ(Cuチェッキング)を防止するために、0.1%以上のNiを含有させる必要がある。Ni含有量が6%を超えると構造用鋼材として極めて高価になって経済性を失うので、添加する場合、Ni含有量は6%以下に限定する。
Cr:1%以下
Crは、適正量を添加することによって、焼入性を高めるのに有用である。Crのこのような効果を積極的に利用しようとする場合、0.05%以上の含有量とするのがよい。一方、1%を超えて含有させると、他の成分の含有量の条件を満足させても、HAZ靭性が劣化する。
Mo:0.8%以下
Moは、母材の強度と靱性を向上させる効果がある。しかし、含有量が0.05%未満ではこの効果が小さいので、0.05%以上含有させるのが望ましい。一方、0.8%を超えると、特にHAZの硬度が高まり靱性が損なわれる。
(2)介在物の分布形態
(2)−1.CaO・Al23系介在物
本発明に係る溶接熱影響部の靭性に優れた溶接構造用鋼材では、その組織に粒径が0.5〜5μmのCaO・Al23系介在物が分散していることが必要である。なお、介在物が非円形であるときは、その長径を介在物の粒径とする。
前述のようにCa/Oをコントロールすることにより、CaO・Al23系介在物は球状のものとなる。ここで、介在物の粒径を0.5μm以上としたのは、これより小さい介在物は、破壊起点として影響する確率が低く、HAZ靭性に大きな影響を与えないためである。よって本発明では粒径が0.5μmよりも小さい介在物に関しては、その個数および形状について問題としない。
また、介在物の粒径を5μm以下としたのは、粒径が5μmを超えるCaO・Al23系介在物が多数分散している場合は、たとえその球状化が達成されていたとしても、シャルピー試験時の破壊起点として作用し、特に溶接熱影響部における靭性のバラツキが大きくなるからである。
なお、本発明では、粒径が5μmを超えるCaO・Al23系介在物が鋼材中に存在することを否定するものではない。すなわち、粒径が5μmを超えるCaO・Al23系介在物であっても、その粒径が10μm以下であり、その個数が1×10個/mm2未満であれば鋼の靭性のバラツキに影響はない。即ち、粒径が5μmを超えるCaO・Al23系介在物は、1×10個/mm2未満であれば許容できる。
前記のとおり、本発明鋼材には粒径が0.5〜5μmのCaO・Al23系介在物が分散する。ただし、CaO・Al23系介在物が多量に存在すると、鋼材の清浄性が劣化し、靭性に悪影響を与える。一方、CaO・Al23系介在物が少ないと、鋼中に存在する酸素がCaO・Al23以外に、SiやTiと酸化物を形成し、介在物形状のコントロールが困難となる。前記のように、工業的には鋼中のOを完全に取り除くことは困難であり、Oは少なくとも0.0010%程度は含まれているので、CaO・Al23系介在物を生成させ、SiやTiの酸化物は生成させないことが肝要である。したがって、CaO・Al23系介在物は適度に存在していることが好ましく、具体的には、1×10〜1×104個/mm2分散していることが好ましい。
CaO・Al23系介在物の分散状態は、以下のような方法で定量的に測定することができる。すなわち、鋼材の圧延方向に対し平行な断面から、好ましくはその断面の中心部から観察用試料を作製し、これを走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて800〜2000倍の倍率で少なくとも10mm2以上の面積を観察し、CaO・Al23系介在物の数を測定し、単位面積当たりの個数に換算すればよい。
CaO・Al23系介在物のアスペクト比は、1〜1.9であることが望ましい。介在物が球状化し、アスペクト比(長径/短径)が1に近くなった場合、シャルピー試験時の介在物およびその周辺組織への応力集中が緩和されるため、靭性が向上、安定化する。一方で、アスペクト比が、1.9を超えるCaO・Al23系介在物がシャルピー試験片のノッチ近傍に存在する場合、応力集中源となり、そこから発生する亀裂の伝播によって靭性が著しく低下し、シャルピー衝撃試験の測定値のバラツキが大きくなる。
CaO・Al23系介在物は、Ca/Oが0.50〜1.30の範囲であれば、溶鋼中で球状化し、またこの組成の介在物は圧延によって破砕や延伸されることがないため、そのアスペクト比は1に近い値となる。しかし、Ca/Oバランスが0.50未満の場合、または1.30を超える場合、CaO・Al23系介在物は溶鋼中で完全に球状化せず、一部が圧延中に破砕され点列状につらなった形状となり、シャルピー試験における応力集中源となるため、靱性に悪影響を及ぼす。なお、点列状につらなった介在物は、一つの延伸した介在物と見なしてそのアスペクト比を測定する。
(2)−2.CaOおよびAl23
粒径0.5μm以上でアスペクト比が5以上のAl23またはCaOは、5×10個/mm2以下であることが望ましい。
粒径0.5μm以上のAl23やCaOは、圧延により延伸した粗大な介在物や点列状につらなった介在物群を形成し、シャルピー試験における応力集中源となり、HAZ靭性の安定性を著しく低下させる。特に、アスペクト比が5以上の場合、他の介在物よりも有効な応力集中源として作用する。したがって、このような延伸した粗大なAl23またはCaOは5×10個/mm2以下に抑えるのが望ましいのである。
なお、CaO・Al23系介在物と同様に、点列状に並んだCaOおよびAl23の介在物も、一つの延伸した介在物と見なしてそのアスペクト比を測定する。
本発明のCaO・Al23系介在物、CaOおよびAl23のアスペクト比は、鋼材の圧延方向に対し平行な断面から、好ましくは断面中心部から観察用試料を作製し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000〜10000倍の倍率で、少なくとも100個以上の介在物を観察し、その長径を短径で除した値の平均値を算出すればよい。
(3)製造方法
本発明の製造方法は、その製鋼段階に特徴を有する。すなわち、溶鋼中のAlが0.005%を超えて0.08%となるようにAlを添加して脱酸した後、Tiを添加し、さらに脱ガス装置、例えばRH装置で15分以上処理した後、溶鋼温度を1600±70℃に保った状態でCaを添加する。この溶鋼温度は、1600℃±50℃であるのがより望ましく、1600±20℃であることがさらに望ましい。なお、このCa添加の前にあらかじめ溶鋼の成分調整を行っておくのが望ましい。
最初に添加するAlは、脱酸力が強いため、溶鋼中の固溶酸素と結合し、Al23を生成する。次にAlより脱酸力の低いTiを添加することにより、Tiは酸化物を生成せず、TiNを生成し、HAZ靭性の改善に寄与することになる。
この時、Alは、前記のように溶鋼中のAlが0.005%を超えて0.08%までの範囲となるように添加する。溶鋼中のAlが0.005%以下の場合には、Alによる脱酸が不十分となり、Tiの酸化物が鋼中に生成してしまい、鋼中にTiNを十分に形成させることができない。一方、溶鋼中のAlが0.08%を超えると、余分なAlが鋼中に固溶Alとして残留し、母材およびHAZの靭性が劣化する。
さらにRH法等によって15分以上の脱ガス処理することにより、粗大なAl23を浮上分離させた後、溶鋼中にCaを添加する。このCa添加により、Al23介在物が一部還元され、CaO・Al23系介在物が形成される。このとき、溶鋼の温度を1600±70℃に制御することによりCaO・Al23系介在物は液化が促進され、表面張力が作用するために、同介在物は球状化する。なお、球状化には、Ca、AlおよびOの含有量を前述の含有量となるように制御することが必要である。
本発明の製造方法において、「Alを添加した後」とは、投入したAlが溶鋼中に均一に混合した後のことを意味する。また、Ti添加およびCa添加についても同様である。
上記のように溶製した鋼を鋳造し、圧延することにより溶接熱影響部の靭性に優れた溶接構造用鋼材を製造する。本発明の製造方法においては、製鋼段階後の鋳造および圧延は、通常の方法により行うことができる。圧延以後のプロセスとして、通常圧延まま、制御圧延、さらにこれと制御冷却と焼戻しの組合せ、および焼入れと焼戻しの組合せなどを行っても、CaO・Al23系介在物の分散状態には影響はなく、介在物が及ぼす靭性への影響にはなんら変化はない。
表1に示した化学組成を有する鋼を溶製し、加熱、圧延を経て板厚19〜25mmの鋼板を製造した。得られた鋼板を入熱100〜500kJ/cmで溶接し、−60℃でシャルピー試験を行い、HAZ靭性を評価した。試験番号の1〜24が本発明例、a〜kが比較例である。母材の製造条件は下記のとおりである。
表2に母材の製造方法、母材特性およびHAZの靭性を示す。HAZ靭性評価のためのシャルピー試験は、フュージョンラインから採取した3本の試験片で行った。表2にその3本の試験片による測定値を示す。なお、表2の各例において、アスペクト比が5を超えるCaO介在物およびAl23介在物は、ほとんど観察されなかった。そのため、同表では観察されたCaO介在物およびAl23介在物の平均粒径と個数を参考までに示した。
Figure 0004379620
Figure 0004379620
表2から明らかなように、No.1〜24の本発明鋼材は、比較例の鋼材と比べて、優れたHAZ靭性を有し、−60℃でのHAZ靭性がいずれも70J以上と極めて優れている。
一方、比較例のa〜kの鋼材は、いずれも−60℃でのシャルピー試験でバラツキが大きく、3本中の少なくとも1本は70J未満の値を示した。これらのa〜kは、基本成分が本発明の要件を満たさない例である。また、iは、CaO・Al23系介在物の粒径およびアスペクト比が本発明の所定の値を超えた例、jおよびkは、ともにCa添加温度が本発明で定める温度範囲内ではないためHAZ靭性が劣化した例である。
本発明の鋼材は、溶接熱影響部が安定して高靭性となる鋼材である。この鋼材は、船舶、海洋構造物などの海上構造物に用いる溶接鋼板等に好適である。本発明は、このような鋼材の製造方法をも提供するものであり、溶接構造物の安全性を高めることにおいても寄与するところが大きい。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.005%を超えて0.08%まで、Ti:0.0005〜0.02%、Ca:0.0003〜0.02%、N:0.001〜0.009%およびO(酸素):0.0025%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記の(1)式を満足するとともに、粒径0.5〜5μmのCaO・Al23系介在物が分散していることを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた溶接構造用鋼材。
    0.50≦Ca/O≦1.30 ・・・・・(1)
    ただし、(1)式の元素記号はその元素の含有量(質量%)を示す。
  2. 粒径0.5〜5μmのCaO・Al23系介在物のアスペクト比が1〜1.9であることを特徴とする請求項1に記載の溶接熱影響部の靭性に優れた溶接構造用鋼材。ただし、アスペクト比とは、鋼材の圧延方向に平行な断面で観察される介在物の長径を短径で除した値である。
  3. 粒径が0.5μmを超え、かつアスペクト比が5を超えるAl23が5×10個/mm2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接熱影響部靭性に優れた溶接構造用鋼材。
  4. 粒径が0.5μmを超え、かつアスペクト比が5を超えるCaOが5×10個/mm2以下であることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の溶接熱影響部靭性に優れた溶接構造用鋼材。
  5. Feの一部に代えて、質量%で、B:0.002%以下、Nb:0.05%以下、V:0.1%以下、Cu:1.5%以下、Ni:6%以下、Cr:1%以下およびMo:0.8%以下のなかから選んだ1種以上を含有することを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の溶接熱影響部靭性に優れた溶接構造用鋼材。
  6. 溶鋼中のAlが0.005%を超えて0.08%までの範囲となるようにAlを添加して脱酸した後、Tiを添加し、さらに脱ガス装置で15分以上処理した後、溶鋼温度を1600±70℃に保った状態でCaを添加し、鋳造し、圧延することを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の溶接熱影響部靭性に優れた溶接構造用鋼材の製造方法。

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