JP4276576B2 - 大入熱溶接熱影響部靭性に優れた厚手高強度鋼板 - Google Patents

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本発明は、船舶、海洋構造物、中高層ビル、橋梁などに使用される溶接熱影響部(Heat Affected Zone、以下、HAZと称す。)の低温靭性に優れた厚手高強度鋼板に関するもので、特に、板厚55〜80mm、母材引張強度490〜620MPa級の鋼板で、溶接入熱が20〜100kJ/mmの優れた低温HAZ靭性を有する鋼板に関するものである。
近年、船舶、海洋構造物、中高層ビル、橋梁などの大型構造物に使用される溶接用鋼材の材質特性に対する要望は厳しさを増している。特に、これら構造物においては、板厚50mm超える厚手で、母材の引張強度が570MPa級である鋼板の使用も多くなってきている。
また、溶接の効率化を促進するため、このような厚手高強度鋼板の溶接には、エレクトロガス溶接法、エレクトロスラグ溶接法などに代表されるような大入熱溶接法による1パス溶接が検討されており、母材そのものの靭性と同様に、HAZ靭性の要求も厳しさを増している。
大入熱溶接法が適用される鋼材のHAZ靭性に注目した提案は、これまで数多くなされてきた。例えば、特許文献1では、Ti窒化物とMnSとの複合析出物をフェライトの変態核として活用し、フェライトの生成サイトを増やすことによりHAZ組織を微細化しHAZ靭性を向上させる方法が提案されている。さらに、特許文献2では、Ti窒化物とB窒化物との複合析出物を粒界フェライトの析出核として活用し、HAZ靭性を向上させる方法が提案されている。但し、鋼材の要求強度が高い場合では、焼入性が向上するため十分に機能しない。
また、特許文献3等に開示されるように、溶接時に粒成長し粗大化するオーステナイト粒を、鋼中に微細分散させたTi窒化物によりピンニングさせ抑制し、靭性を向上させる方法もある。しかしながら、Ti窒化物は、HAZのうち最高到達温度が1400℃を超える溶接金属との境界(以下、溶接ボンド部とも称する。)近傍ではほとんど固溶してしまうので、靭性向上効果が低下するという問題がある。そのため、このようなTi窒化物をオーステナイト粒の粗大化抑制に利用した鋼材は、近年のHAZ靭性に対する厳しい要求や、超大入熱溶接におけるHAZ靭性の必要特性を達成することが困難である。
この溶接ボンド部近傍の靭性を改善する方法として、Ti酸化物を含有した鋼が厚板、形鋼などの様々な分野で使用されている。例えば、厚板分野では特許文献4や特許文献5に例示されているように、Ti酸化物を含有した鋼は大入熱溶接部靭性向上に非常に有効であり、高張力鋼への適用が有望である。この原理は、鋼の融点においても安定なTi酸化物をサイトとして、溶接後の温度低下途中にTi窒化物、MnS等が析出し、さらにそれらをサイトとして微細フェライトが生成し、その結果、靭性に有害な粗大フェライトの生成が抑制されて、靭性の劣化が防止できるというものである。
しかしながら、このようなTi酸化物は、鋼中へ分散される個数をあまり多くすることができないという問題がある。その原因は、Ti酸化物の粗大化や凝集合体であり、Ti酸化物の個数を増加させようとすれば5μm以上の粗大なTi酸化物、いわゆる介在物が増加してしまうためと考えられる。この5μm以上の介在物は、構造物の破壊の起点となったり、靭性の低下を引き起こしたりして、有害であるため回避すべきものである。そのため、さらなるHAZ靭性の向上を達成するためには、粗大化や凝集合体が起こりにくく、Ti酸化物よりも微細に分散する酸化物を活用する必要があった。
また、このようなTi酸化物の鋼中への分散方法としては、Al等の強脱酸元素を実質的に含まない溶鋼中へのTi添加によるものが多い。しかしながら、単に溶鋼中にTiを添加するだけでは鋼中のTi酸化物の個数、分散度を制御することは困難であり、さらには、TiN,MnS等の析出物の個数、分散度を制御することも困難である。そのため、Ti脱酸のみによってTi酸化物を分散させた鋼においては、例えば、Ti酸化物の個数が充分に得られない、あるいは、厚板の板厚方向の靭性が変動するといった問題があった。
さらに、上記特許文献4などの方法では、Ti酸化物を生成しやすくするために、Al量の上限を、0.007%という非常に少ない量で制限している。そのため、鋼材中のAl量が少ない場合、AlN析出物量の不足などの原因により、母材の靭性が低下することがあった。また、通常使用されている溶接材料を用いてAl量の少ない鋼板を溶接した場合、溶接金属の靭性が低下することがあった。
このような問題に対して、特許文献6や特許文献7において、Ti添加直後のAl添加、あるいはAl,Ca複合添加で、生成するTi−Al複合酸化物やTi,Al,Caの複合酸化物を活用する技術が提案されている。このような技術により、大入熱溶接HAZ靭性を大幅に向上させることが可能となった。
特開平03−264614号公報 特開平04−143246号公報 特公昭55−026164号公報 特開昭61−079745号公報 特開昭62−103344号公報 特開平06−293937号公報 特開平10−183295号公報
近年、特に造船業界において、板厚50〜80mm、母材強度が引張強度で490〜620MPa級の鋼板が適用されている。この厚手高強度鋼板を現行の製造方法で製造する場合、強度確保の点から合金元素を増量して焼入性を向上させる必要がある。この合金元素の増量よる焼入性を、鋼材の溶接性と同時に化学成分的な焼入性を示す炭素当量(Ceq)で示した場合、強度確保にはCeqで0.35以上が必要となる。このCeqの値は溶接HAZの硬さと関係しており、この値が高れば高いほど溶接HAZも硬くなる。
また、このような厚手鋼板の溶接では、作業の効率性から入熱20〜100kJ/mmの大入熱溶接が適用される。従来は、Ceqがそれほど高くなかったため、上記の特許文献5〜7記載の従来手法を適用することによりHAZ靭性は改善された。しかし、このようにCeqが0.35以上と高い場合では、焼入性が向上してHAZ硬さも高くなるため、従来手法の適用では、特に溶接ボンド部近傍で十分なHAZ靭性が得られない。
そこで、本発明は、Ceqが0.35〜0.40で、例えば、板厚55〜80mm、引張強度490〜620MPa級の鋼板であって、入熱20〜100kJ/mmの大入熱溶接において優れたHAZ靭性を有する厚手高強度鋼板を提供することを目的とするものである。
これまでHAZ靭性の向上手段として、前述のとおり、フェライト変態核の生成によるHAZ組織の微細化や高温でのオーステナイト粒の成長を抑制することが考えられてきた。その中でも、酸化物の微細分散によるオーステナイト粒の粗大化の抑制は、上記のように入熱20〜100kJ/mmの大入熱溶接で溶接ボンド部が1400℃の高温に長時間さらされる場合においても機能し、有効である。しかし、オーステナイト粒の粗大化が抑制されても、Ceqが0.35〜0.40の鋼材では大入熱溶接後のHAZの硬さが高くなるため十分な靭性が得られない。HAZ硬さが高くなるのは、Ceqが高いためにHAZの焼入性が高くなり、HAZ組織に占める粒界フェライトの量が少ないのに加え、オーステナイト粒内が上部ベイナイト主体の組織となるためである。
そこで、発明者らは、オーステナイト粒内にフェライト生成核を多数生成させ、HAZ硬さの上昇抑制と組織微細化によりHAZ靭性を改善させる方法を鋭意検討した。まず、粒内フェライト生成核になり得る析出物を調査するため、Ceqが0.35以上0.40以下である種々の鋼材を用いて、図1に示す大入熱溶接を模擬した熱サイクルを付与し、得られた再現HAZ組織中に粒内フェライトが生成するものを調査した。その結果、B添加鋼の一部で、このようなCeqが高い条件においても粒内にフェライトを生成させていることを確認した。
続いて、上記知見に基づき、粒内フェライトが生成する鋼材の粒内フェライトの生成核をTEM観察により調査した。その結果、その多くがTiの一部がNbに置換されたTi窒化物(以下、Ti(Nb)窒化物と記載)を核として析出していることを確認した。さらに、このTi(Nb)窒化物についてさらに調査した結果、Ti(Nb)窒化物は、単独で析出するものだけでなく、サブミクロンサイズ以下のAlやCaを主体とする微細複合酸化物をサイトとして析出していることを確認した。そして、フェライトを生成させるB窒化物は、これらのTi(Nb)窒化物、複合酸化物とTi(Nb)窒化物の複合物を囲む形で外周部に多結晶の状態で析出する、サブミクロンサイズのものが主体であることを確認した。
そこで、フェライト生成核を多数生成させるため、このB窒化物を多数析出させる条件を鋭意調査した。
まず、Ti(Nb)窒化物の析出サイトとなる複合酸化物について検討した。その結果、複合酸化物の大きさは0.5μm以下であり、Al,Caを主体とする酸化物のほか、これらにMg,REMを含む複合酸化物においてもTi(Nb)窒化物が生成することを確認した。
次に、これらの複合酸化物を多数生成させる条件を検討した。まず、酸化物を多く析出させるためにこれら酸化物を構成する元素の量を増やす方法であるが、単に量を増やすだけではミクロンサイズの粗大な酸化物を形成させる一方で数を増やすことが難しい。
そこで、酸化物を微細化させることで酸化物の個数を増やす方法について検討を行った。この方法は、酸素濃度を酸化物の粗大化を防ぐために低く調整し、その後、脱酸力の比較的弱い脱酸元素から強い脱酸元素へ順に脱酸元素を投入するものであるため、酸素濃度調整のもと複数の脱酸元素を脱酸力の弱い順に投与することから微細な酸化物を多数生成させることが可能となる。
そして、この考えのもと脱酸方法を検討した結果、溶鋼時の脱酸過程でCもしくはSiの脱酸元素を用いて溶鋼中の酸素濃度を0.0010〜0.0050%に制御し、その後,Tiのような弱脱酸元素で脱酸し、さらにAlで脱酸後、強脱酸元素であるCa,Mg,REMを1鋼種以上添加することを行い、円相当径が0.005〜0.5μmの複合酸化物(例えば、Al酸化物等、この他、Ca,Mg,REMの添加により、Ca−Al酸化物、Ti−Mg酸化物、REM酸化物やその複合酸化物も生成される)を、100〜3000個/mm含有させることできることが判明した。なお、酸素濃度が0.0050%を超えると粗大な酸化物が生成し、酸化物の個数が激減する場合がある。
次に、Ti(Nb)窒化物とB窒化物の構成元素であるTi,NおよびBのバランスに関して詳細検討した。まず、Nの量をB窒化物生成の点からBの量と化学量論的に等しくなるように調整した。この場合、再現HAZ組織中のオーステナイト粒内はベイナイト主体の組織となり、粒内フェライトは殆ど確認できなった。そこでさらにNの量を増やし、BとTiの量の総和と化学量論的にほぼ等しい場合では、オーステナイト粒内に多数のフェライトの生成が確認された。さらにN量を増やした場合も同様にオーステナイト粒内に多数のフェライトの生成が確認された。
そこで、これらの再現HAZ組織を有するものの靭性を調査した結果、オーステナイト粒内に多数フェライトが生成するものは、ベイナイト主体のものに比較しても優れた靭性を有することが判明した。さらに粒内フェライトを生成するものの中でも、Nの量がBとTiの量の総和と化学量論的に等しい場合よりも多く添加されている場合の方が優位であることが判明した。但し、過剰に添加されると逆に靭性が低下する。
Nの量の増加により靭性が変化する理由について、析出するTi窒化物のTiの一部がNbに置換されているという事実をもとに、Nの量がBとTiとNbの量の総和に化学量論的に多いものと少ないものとに分けて再現HAZ靭性の優劣を比較し検討した。その結果、Nの量がBとTiとNbの量の総和より化学量論的に多い場合では、再現HAZ靭性が大きく低下することが判明した。
以上の検討結果から、鋼中のNb,Ti,N,Bの量は〔2〕式を満たすことがHAZ靭性を向上させるための必要条件であることを見出した。即ち、Nの量が化学量論的にTiとBの量より多く、NbとTiとBの量より少ない条件であれば、靭性低下を引起す固溶Bや固溶Nを殆ど残さずに、粒内フェライト生成に必要なTi(Nb)窒化物とB窒化物を生成することができ、靭性を向上させることができることを見出した。
0.29Ti+1.3B≦N≦0.29Ti+1.3B+0.15Nb・・・〔2〕式
さらに、鋼中に含まれる添加する成分に関しては、強度確保や耐食性の向上の観点から、Ni,Cu,Cr,Mo,Vを添加した場合でのHAZ靭性も検討した。その結果、〔1〕式で表されるCeqの値が0.35以上0.40以下の条件で、それぞれ、0.1〜3.0%、0.1〜0.3%、0.1〜0.5%、0.03〜0.2%、0.005〜0.050%の範囲での添加であれば、HAZ靭性を大きく低下しないことが判明した。
なお、この発明の鋼板の製造方法は、特に制限されることはなく、公知の方法に従って製造すれば良い。例えば、上記の好適成分組成に調整した溶鋼を連続鋳造法でスラブとしたのち、1000〜1250℃に加熱してから、熱間圧延を施せばよい。
本発明は、上記した知見に基づき完成されたものである。すなわち、本発明は、下記を要旨とする。
(1)質量%で、
C :0.03〜0.14%、 Si:0.01〜0.30%、
Mn:0.8〜2.0%、 P :0.02%以下、
S :0.005%以下、 Nb:0.003〜0.050%、
Al:0.005〜0.040%、 Ti:0.005〜0.030%、
B :0.0010〜0.0050%、 N :0.0030〜0.0080%、
O :0.0010〜0.0050%
を含有し、
〔1〕式で表されるCeqの値が0.35〜0.40であり、かつ、
Nb,Ti,NおよびBの質量関係が〔2〕式を満たし、
さらに、質量%で、
Ca:0.0005〜0.0030%、 Mg:0.0005〜0.0050%、
REM:0.005〜0.030%
のうち1種または2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、円相当径が0.005〜0.5μmの複合酸化物を、100〜3000個/mm含有することを特徴とする、大入熱溶接熱影響部靭性に優れた、板厚55〜80mmの厚手高強度鋼板。
Ceq=C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5・・〔1〕式
0.29Ti+1.3B≦N≦0.29Ti+1.3B+0.15Nb・・・〔2〕式
(2)さらに、質量%で、
Ni:0.1〜3.0%、 Cu:0.1〜0.3%、
Cr:0.1〜0.5%、 Mo:0.03〜0.2%、
V :0.005〜0.050%
を1種または2種以上含有することを特徴とする、上記(1)に記載の大入熱溶接熱影響部靭性に優れた、板厚55〜80mmの厚手高強度鋼板。
本発明は、船舶、海洋構造物、中高層ビルなどの破壊に対する厳しい靭性要求を満足する鋼板を供給するものであり、この種の産業分野にもたらす効果は極めて大きく、さらに構造物の安全性の意味から社会に対する貢献も非常に大きい。
本発明で使用する鋼素材の組成限定理由について説明する。以下、組成における質量%は単に%で記す。
Cは、鋼の強度を向上させる有効な成分として下限を0.03%とし、また過剰の添加は、炭化物やMAを多量に生成し、HAZ靭性を著しく低下させるので、上限を0.14%とした。
Siは、母材の強度確保、脱酸などに必要な成分であり、0.01%以上添加するが、HAZの硬化により靭性が低下するのを防止するため、上限を0.30%とした。
Mnは、母材の強度、靭性の確保に有効な成分として0.8%以上の添加が必要であるが、溶接部の靭性、割れ性などの許容できる範囲で上限を2.0%とした。
Pは、含有量が少ないほど望ましいが、これを工業的に低減させるためには多大なコストがかかることから、含有範囲を0.02%以下とした。
Sは、含有量が少ないほど望ましいが、これを工業的に低減させるためには多大なコストがかかることから、含有範囲を0.005%以下とした。
Nbは、焼き入れ性を向上させることにより母材の強度を向上させるために有効な元素であり、また本発明においては、大入熱溶接でのHAZ組織中に粒内フェライト生成させるための核となるBNの析出サイトであるTi(Nb)窒化物を生成させるために必要である。但し、母材強度向上には0.003%未満の添加では十分な強度上昇が得られず、また0.050%を超える過剰な添加は母材の靭性を著しく低下させることから、Nbの添加範囲は0.003%以上0.050%以下とした。
Alは、重要な脱酸元素であることから0.005%以上添加するが、多量に存在すると鋳片の表面品位劣化や粗大な酸化物の生成が生じることから、上限を0.040%とした。
Tiは、重要な脱酸元素であると同時に、本発明においては、大入熱溶接でのHAZ組織中に粒内フェライト生成させるための核となるBNの析出サイトであるTi(Nb)窒化物を生成させるために必要であるため、0.005%以上添加する。しかし、過剰の添加は粗大な酸化物の生成を招くことから、0.030%を上限とした。
Bは、B窒化物を生成させるために0.0010%以上添加する。しかし、過剰の添加は母材の靭性を劣化させるため、0.0050%を上限とした。
Nは、B窒化物およびTi(Nb)窒化物を生成させるために必要である。その量は、Nb,Ti,Bの添加量と〔2〕式の関係が成立つ量添加することが必要であるため、0.0030%以上の添加が必要であるが、過剰の添加は粗大なTiNを生成することから、0.0080%を上限とした。
Oは、鋼中に微細酸化物を生成させるために0.0050%以下に抑える必要があるが
、0.0010%以下では十分な酸化物が得られないため、その範囲を0.0010%以上0.0050%以下とした。
Ca,Mg,REMは、鋼中の酸化物の個数を増加させるために、Ti,Alの脱酸後にいずれか1種類以上添加する必要であるが、Ca,Mg,REMのいずれか単独の過剰添加は粗大な介在物を生成させることを考慮し、それぞれの範囲をCa:0.0005〜0.0030%、Mg:0.0005〜0.0050%、REM:0.005〜0.030%とした。
Niは、鋼材の強度および耐食性を向上させるために、必要に応じて0.1%以上添加するが、経済性から3.0%を上限とした。
Cuは、鋼材の強度および耐食性を向上させるために、必要に応じて0.1%以上添加するが、0.3%を超えるとMAが生成しやすくなりHAZ靭性が低下することから、0.3%を上限とした。
Crは、鋼材の耐食性を向上させるために必要に応じて0.1%以上添加するが、過剰の添加はMA生成によるHAZ靭性の低下を招くことから、0.5%を上限とした。
Moは、母材の強度および耐食性を向上させるために有効な元素であり必要に応じて0.03%以上添加するが、過剰の添加はMA生成によるHAZ靭性の低下を招くことから、0.2%を上限とした。
Vは、母材の強度を向上させるために有効な元素であり必要に応じて0.005%以上添加するが、過剰の添加はMA生成によるHAZ靭性の低下を招くことから、0.050%を上限とした。
表1に示した化学成分の溶鋼を連続鋳造して綱片を作製した。脱酸方法は、C5以外のものは、Ti投入前に溶鋼の溶存酸素をSiで0.0010%〜0.0050%に調整し、その後、まずTiで脱酸し、引き続きAlで脱酸した後、Ca,Mg,REMのうち1種以上添加し脱酸した。C5はAlで脱酸後のCa,Mg,REMのいずれも添加していない。これらを1100〜1250℃で再加熱したあと、以下の2種類の圧延方法により板厚55〜80mmの鋼板を製造した。一つは、表面温度が750〜900℃の温度範囲で圧延したあと、水冷後の板表面の温度が200〜400℃の温度範囲内で復熱するまで水冷する方法(表2ではTMCPと記載)であり、もう1つは、熱間圧延したのち室温まで水冷し、500〜600℃の範囲で焼戻す製造方法(表2ではDQ−Tと記載)である。
表2に鋼板の製造条件、板厚、機械的性質を示す。表2には鋼板の任意の箇所において測定した、円相当径0.005〜0.5μmの微細酸化物の個数を併記した。酸化物の個数は、鋼板の任意の箇所から抽出レプリカを作製し、それを電子顕微鏡にて10000倍で100視野以上(観察面積にして10000μm以上)を観察し、観察される0.005〜0.5μm径の各粒子において元素分析を行い、酸化物であるものカウントすることにより求めた。C5以外の鋼材は、円相当径で0.01〜0.5μmの微細酸化物が本発明範囲の100〜3000個/mm分散させている。
これら鋼板に、溶接入熱量が20〜100kJ/mmであるエレクトロガス溶接(EGW)あるいはエレクトロスラグ溶接(ESW)を用いて、鋼板を突き合せて立て向き1パス溶接を行った。そして、板厚中央部(t/2)に位置するHAZにおいて、FLから1mm離れたHAZとFLの2箇所にノッチを入れ、−40℃でシャルピー衝撃試験を行った。表2に溶接条件とHAZ靭性を示す。ここでのシャルピー衝撃試験では、JIS4号の2mmVノッチのフルサイズ試験片を用いた。
D1〜D10は本発明鋼である。鋼の化学成分が適正に制御されているために、所定の母材性能を満たしつつ、−40℃での大入熱HAZ靭性が良好である。また、微細酸化物の個数が100個以上含まれて、かつ、Nb,Ti,N,Bの量が式〔2〕式を満足しているため、−40℃での大入熱HAZ靭性が100Jを超える高い値となっている。
一方、比較鋼のC1〜5は、いずれも本発明範囲外であるため、大入熱HAZ靭性が不充分である。即ち、C1,C4はNの量が式〔2〕式を満足しておらず、C2はBが本発明範囲外であり、C3はNbが本発明範囲外であり、C5はCa,Mg,REMのいずれも含有せず、脱酸が適切ではないために微細酸化物の個数が本発明範囲外である。
Figure 0004276576
Figure 0004276576
Figure 0004276576
45kJ/mm相当の溶接熱サイクルを示す図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C :0.03〜0.14%、
    Si:0.01〜0.30%、
    Mn:0.8〜2.0%、
    P :0.02%以下、
    S :0.005%以下、
    Nb:0.003〜0.050%、
    Al:0.005〜0.040%、
    Ti:0.005〜0.030%、
    B :0.0010〜0.0050%、
    N :0.0030〜0.0080%、
    O :0.0010〜0.0050%
    を含有し、
    〔1〕式で表されるCeqの値が0.35〜0.40であり、かつ、
    Nb,Ti,NおよびBの質量関係が〔2〕式を満たし、
    さらに、質量%で、
    Ca:0.0005〜0.0030%、
    Mg:0.0005〜0.0050%、
    REM:0.005〜0.030%
    のうち1種または2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、円相当径が0.005〜0.5μmの複合酸化物を、100〜3000個/mm含有することを特徴とする大入熱溶接熱影響部靭性に優れた、板厚55〜80mmの厚手高強度鋼板。
    Ceq=C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5・〔1〕式
    0.29Ti+1.3B≦N≦0.29Ti+1.3B+0.15Nb・・〔2〕式
  2. さらに、質量%で、
    Ni:0.1〜3.0%、
    Cu:0.1〜0.3%、
    Cr:0.1〜0.5%、
    Mo:0.03〜0.2%、
    V :0.005〜0.050%
    を1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の大入熱溶接熱影響部靭性に優れた、板厚55〜80mmの厚手高強度鋼板。
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