JP5343486B2 - 大入熱溶接用鋼材 - Google Patents
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Description
そして、本発明は、上記知見にさらに検討を加えて完成したものである。
0<(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/S<1.0 ・・・(1)
ここで、Ca,SおよびOは、各成分の含有量(mass%)
を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する入熱量が300kJ/cmを超える大入熱溶接用鋼材である。
C:0.03〜0.09mass%
Cは、鋼の強度を高める成分であり、構造用鋼として必要な強度(YS≧460MPa)を得るためには、0.03mass%以上添加する必要がある。しかし、0.09mass%を超えて添加すると、大入熱溶接した熱影響部に島状マルテンサイトが生成して熱影響部の靭性の低下を招いたり、スラブ表面性状の低下を招いたりする。よって、Cの含有量は0.03〜0.09mass%とする。好ましくは0.03〜0.07mass%の範囲である。
Siは、脱酸材として、また、鋼を高強度化するために添加される成分である。しかし、Siを0.20mass%超え添加すると、大入熱溶接を行った場合、溶接熱影響部に島状マルテンサイトが生成して靭性を低下させる。よって、Siは0.20mass%以下とする。
Mnは、母材の強度を確保するために、0.8mass%以上添加する。しかし、2.0mass%を超える添加は、溶接部の靭性を著しく劣化させる。よって、Mnは0.80〜2.0mass%の範囲とする。
Pは、鋼中に不可避的に混入してくる不純物成分であり、0.012mass%を超えて含有すると、大入熱溶接した熱影響部に島状マルテンサイトが生成して、靭性やCTOD特性を低下させる。よって、Pは0.012mass%以下とする。
Sは、本発明においては、CaS,MnSを生成させて、溶接熱影響部の靭性を向上させるために必要な成分である。斯かる効果を得るためには、Sは0.0005mass%以上含有させる必要がある。一方、0.0050mass%超え含有すると、母材の靭性を低下させる。よって、本発明では、Sは0.0005〜0.0050mass%の範囲とする。
Alは、鋼の脱酸剤として0.005mass%以上添加する必要がある。しかし、0.1mass%を超える添加は、母材の靭性を低下させるとともに、溶接時に溶接金属部に混入して靭性を低下させる。よって、Alは0.005〜0.1mass%の範囲とする。
Crは、フェライト安定化元素であり、δフェライト領域を拡大し、亜包晶領域を高C側に移行させることによりスラブ表面性状を改善する、本発明においては重要な成分である。この効果を得るには、0.3mass%以上の添加が必要である。特に、0.7mass%を超える添加により、その効果は顕著となる。しかし、2.0mass%を超える過剰の添加は、溶接熱影響部の靭性が劣化を招く。よって、Crは0.3〜2.0mass%の範囲とする。好ましくは、Crは0.7mass%超〜1.6mass%である。
Niは、母材の靭性向上や溶接熱影響部のCTOD特性の向上に有効である他、鋼の強度を高める成分である。しかし、Niを2.0mass%超え添加しても、その効果が飽和するだけである。よって、Niは2.0mass%以下とする。
Nbは、母材の強度、靭性および溶接継手の強度を確保するために添加する。しかし、Nbの0.03mass%を超える添加は、溶接熱影響部の靭性の低下を招くため、0.03mass%以下とする。
Tiは、溶鋼が凝固する際、TiNを生成して析出し、溶接熱影響部におけるオーステナイト粒の粗大化を抑制すると共に、フェライト変態の核となってフェライトの生成を促進し、靭性を向上させるため、0.004mass%以上添加する必要がある。一方、Tiを0.03mass%超え添加すると、TiN粒子が粗大化し、却って靭性が低下する。よって、Tiは0.004〜0.03mass%の範囲で添加する。
Bは、溶接熱影響部でBNを生成して固溶Nを低減し、また、フェライト変態の核となってフェライトの生成を促進し、靭性を向上させる効果があるので、0.0003mass%以上添加する必要がある。一方、0.0025mass%を超えて添加すると、焼入れ性が高くなりすぎ、靭性が低下する。よって、Bは0.0003〜0.0025mass%の範囲で添加する。
Nは、Tiと結合してTiNを生成し、溶接熱影響部におけるオーステナイト粒の粗大化を抑制すると共に、フェライト変態を促進し、靭性を向上させる効果があるため、0.0020mass%以上とする。一方、0.0070mass%を超えると、溶接時の入熱によってTiNが溶解を起こす領域において、固溶Nが増大し、靭性を劣化させる。よって、Nは0.0020〜0.0070mass%の範囲とする。
Caは、CaSを形成してSを固定し、靭性を改善する元素である。斯かる効果は、Caを0.0005mass%以上添加することにより得られる。一方、0.0030mass%を超える添加は、その効果が飽和するだけである。よって、Caは0.0005〜0.0030mass%の範囲で添加する。
Oは、後述するように、鋼中に析出したCaS上にさらにMnSが析出した複合硫化物(サルファイド)の生成に間接的に影響を与える成分である。斯かる効果を得るためには、Oは0.0040mass%未満、好ましくは0.0030mass%以下とする。
ここで、Ca,S,O:各元素の含有量(mass%)
上記パラメータ式(1)は、上述した成分組成を満たす鋼を大入熱溶接した際、溶接熱影響部の靭性を良好たらしめる条件を規定したもので、上記式を満たすようCa,S,Oを制御することで、鋼中に析出したCaS上に、さらにMnSが析出した複合硫化物(サルファイド)が生成し、これが鋼中に微細に分散することにより、溶接熱影響部の靭性を向上させることができる。上記(1)式中の(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/(1.25/S)は、硫化物形態制御に有効なCaとSの原子濃度の比を示す値であり、この値から、硫化物の形態を推定することができる(持田他、「鉄と鋼」、日本鉄鋼協会、第66年(1980)、第3号、P354〜362)。
一方、(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/Sの値が1.0以上では、SがほとんどCaによって固定され、フェライトの生成核となるMnSがCaS上に析出しないため、複合硫化物が形成されない。そのため、溶接熱影響部にフェライトが生成することができず、靭性向上効果が得られない。
これに対して、Ca,SおよびOが、上記(1)式を満たした場合には、CaS上にMnSが析出して複合硫化物を形成し、フェライト生成核として有効に機能することができる。なお、好ましくは、((Ca−(0.18+130×Ca)×O)/(1.25/S)の値は0.2〜0.8の範囲である。
V:0.2mass%以下
Vは、母材の強度、靭性を向上すると共に、VNを生成してフェライトの生成核となるので添加することができる。しかし、0.2mass%を超える添加は、靭性を低下させるので、添加する場合は0.2mass%以下とする。
Cuは、Niと同様の効果を有するが、1.0mass%を超えて添加すると、熱間脆性を引き起こし、鋼板の表面性状を悪化させる。よって、添加する場合は1.0mass%以下とする。
Moは、母材の高強度化に有効な成分であるが、多量に添加すると靭性を劣化させるので、添加する場合は0.7mass%以下とする。
Wは、母材の高強度化に有効な成分であるが、多量に添加すると靭性を劣化させるので、添加する場合は1.5mass%以下とする。
本発明の鋼材は、常法により鋼を溶製し、鋼素材としたのち、この鋼素材を熱間圧延して、または熱間圧延後、焼戻し処理して製造する。例えば、溶銑を転炉で精錬して溶鋼を得た後、RH脱ガス処理して成分組成を上記適正範囲に調整後、連続鋳造または造塊−分塊圧延工程を経て鋼素材(鋼スラブ)とする。
この鋼スラブを再加熱後、熱間圧延し、制御圧延、加速冷却等を適宜施し、所望の板厚の鋼材とするのが好ましい。この際の鋼スラブの加熱温度は950〜1250℃の範囲とすることが好ましい。また、熱間圧延終了温度は、700〜850℃の範囲とし、熱間圧延後の冷却は、加速冷却とし、600℃以下の冷却停止温度まで、3〜20℃/secの冷却速度で冷却することが好ましい。さらに、本発明の鋼材は、残留する内部応力を低減する目的で、上記冷却後の鋼材に、450〜600℃の温度で焼戻処理を施すことが好ましい。
その後、割れの認められなかった鋼スラブを、表2に示した条件で、再加熱し、熱間圧延し、加速冷却し、450℃以下の温度域まで冷却して、板厚が50〜80mmの鋼板とした。なお、一部の鋼板については、その後、450〜600℃の温度域で焼戻し処理を施した。
<引張試験>
各鋼板の板厚中央部から、圧延幅方向にJIS4号引張試験片を採取し、引張試験を行い、降伏応力(YS)、引張強さ(TS)を測定した。
<シャルピー衝撃試験>
各鋼板の母材の板厚中央部から、圧延幅方向にJIS4号衝撃試験片を採取し、0〜−100℃の温度範囲でシャルピー衝撃試験を行い、延性−脆性の破面遷移温度(vTrs)を求めた。また、各鋼板から得たサンプルにV開先を加工し、入熱量を320〜550kJ/cmとした大入熱のエレクトロガスアーク溶接により継手を作製し、この溶接ボンド部からシャルピー衝撃試験片を採取し、−40℃の温度でシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギー(vE−40)を測定した。
<CTOD試験>
上記エレクトロガスアーク溶接で、靭性が良好(vTrs≦−40℃)であった母材を用いて作製した溶接継手から、溶接ボンド部をノッチ位置とし、板厚方向全厚にノッチ加工したCTOD試験片を作製し、BS7448規格に準じて、−10℃でCTOD試験を行い、限界CTOD値を測定した。
これらの結果から、本発明の鋼材は、母材の強度、靭性特性および溶接部の靭性特性のいずれにおいても優れていることがわかる。
Claims (2)
- C:0.03〜0.09mass%、
Si:0.20mass%以下、
Mn:0.8〜2.0mass%、
P:0.012mass%以下、
S:0.0005〜0.0050mass%、
Al:0.005〜0.1mass%、
Cr:0.7mass%超え2.0mass%以下、
Ni:2.0mass%以下、
Nb:0.03mass%以下、
Ti:0.004〜0.03mass%、
B:0.0003〜0.0025mass%、
N:0.0020〜0.0070mass%、
Ca:0.0005〜0.0030mass%、
O:0.0040mass%未満を含有し、かつ、Ca,SおよびOが下記(1)式を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する入熱量が300kJ/cmを超える大入熱溶接用鋼材。
記
0<(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/S<1.0 ・・・(1)
ここで、Ca,SおよびOは、各成分の含有量(mass%) - 上記成分組成に加えてさらに、V:0.2mass%以下、Cu:1.0mass%以下、Mo:0.7mass%以下およびW:1.5mass%以下から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の入熱量が300kJ/cmを超える大入熱溶接用鋼材。
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