JP6308148B2 - 超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、溶接鋼構造物用、なかでも建築構造物用として好適な、高強度厚鋼板に係り、とくに建築ボックス柱等の施工に際し適用されるような大入熱溶接、例えば、サブマージアーク溶接あるいはエレクトロスラグ溶接で、入熱400kJ/cmを超える超大入熱溶接を施されても溶接熱影響部靭性の低下がない、超大入熱溶接熱影響部靭性に優れ高強度で、かつ低降伏比である、低降伏比高強度厚鋼板およびその製造方法に関する。なお、ここでいう「高強度」とは、降伏強さYS:385MPa以上、引張強さTS:550MPa以上である場合を、また、「低降伏比」とは、降伏比YR:80%以下である場合をいうものとする。また、ここでいう「厚鋼板」とは、板厚:60mm以上、好ましくは100mm以下である鋼板をいうものとする。
近年、溶接鋼構造物の大型化に伴い、使用する鋼材として、高強度の厚肉鋼材が要望されてきた。最近では、建築構造物において、鉄骨部材用として、引張強さTS:550MPa以上で、板厚60mm以上の高強度厚鋼板が要求されている。さらに阪神淡路大震災以来、とくに建築構造物の耐震性向上が強く要望され、鋼材自体の塑性変形能を確保するために鋼材には、降伏比YR:80%以下を有することが要求されている。しかも、鋼構造物は溶接接合により組み立てられるため、鋼材には溶接部を含め、優れた靭性を保持することが求められている。さらに最近では、経済性という観点から、溶接鋼構造物の施工コストの削減も要望されている。
このような要望に対し、溶接効率を高め、施工効率を高めるために、大入熱溶接の適用範囲の拡大が指向されている。例えば、高層建築物に用いられるボックス柱のうち、角継手部やダイヤフラム接合部などの部位では、サブマージアーク溶接やエレクトロスラグ溶接などの溶接入熱が400kJ/cmを超えるような超大入熱溶接が適用されるようになっている。
一般に、このような大入熱溶接あるいは超大入熱溶接を施された溶接部では、溶接熱影響部(以下、HAZともいう)の靭性劣化が問題となる。これは、大入熱溶接あるいは超大入熱溶接により融点近傍まで加熱された領域では、冷却が遅くなり、高温域での滞留時間が長くなって、オーステナイト粒が粗大化しやすいうえ、さらにその後の冷却の際に、MA(島状マルテンサイトともいう)等の硬質な脆化相が生じやすいことに起因する。このようなHAZの靭性劣化は、鋼材の強度が増加するにしたがい顕著となり、とくに、引張強さTSが550MPa級以上の高強度鋼材で顕著となる。このため、高強度鋼材におけるHAZ靭性の向上が要望されていた。
このような要望に対し、従来から、鋼中に微細な介在物や析出物を分散させて、オーステナイト粒の粗大化を防止するとともに、これら介在物や析出物を粒内フェライトの核生成サイトとして機能させて、旧オーステナイト粒内組織の微細化を図る技術が、数多く提案されてきた。
最近では、例えば、特許文献1には、溶鋼に、Siおよび/またはMnを添加して脱酸し、溶存酸素量を0.0030〜0.0120質量%に調整したのち、REMを添加し溶存酸素量を0.0010〜0.0050質量%に調整するとともに、質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:0.05〜0.40%、Mn:0.5〜2.0%、REM:0.0030〜0.0200%、N:0.0040〜0.0070%を含み、さらにNb、Cu、Niのうちの1種または2種以上を含有し、AlおよびTiをそれぞれ0.004%以下に調整した溶鋼とし、鋳造して鋼素材としたのち、1000℃以上に加熱し圧延終了温度をAr変態点以上とする熱間圧延を施し、1℃/s以上の冷却速度で、冷却停止温度を600〜250℃とする加速冷却を施し、空冷する、優れた超大入熱溶接熱影響部靭性を有する建築構造用厚鋼板の製造方法が記載されている。これにより、溶接冷却時にREMオキシサルファイド、REMサルファイドを核として、REMのうちCeがNと結合したCeNが析出し、このCeNがフェライト生成核として作用して、微細なフェライトが多数生成し、大入熱HAZ靭性が向上するとしている。
また、特許文献2には、質量%で、C:0.04〜0.20%、Si:0.05〜0.35%、Mn:0.50〜2.50%、Al:0.003〜0.03%、Ti:0.001〜0.02%、B:0.0002〜0.003%、Ca:0.0003〜0.0025%を含みN:0.006%以下で、C+100Bの値が0.1〜0.32%である組成を有し、鋼中に、0.005〜2.0μmのCa、Alを含む酸化物粒子を100〜3000個/mm分散させた鋼板を、熱間圧延終了後、Ar変態点以上から水冷焼入れを開始し、150℃以下まで水冷し、板厚方向で、板表面下5mmまでを除いた領域においてベイナイト分率が50%以上の組織とする、低YR高張力鋼板の製造方法が記載されている。これにより、板厚が70mm以上であっても、焼入れままで、耐力440MPa以上、引張強さ590MPa以上、降伏比80%以下で優れた大入熱継手靭性を有する鋼板とすることができるとしている。
また、特許文献3には、溶鋼中のAl含有量が0.005〜0.08質量%の範囲となるようにAlを添加して脱酸し、さらに脱ガス装置で15分以上処理した後、溶鋼温度を1600±70℃に保った状態でCaを添加し、鋳造して、質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.005%超0.08%以下、Ti:0.0005〜0.02%、Ca:0.0003〜0.02%、N:0.002〜0.009%、O:0.001〜0.0035%を含有するスラブとし、該スラブを熱間圧延したのち、750℃以下の温度から水冷を開始する、大入熱溶接熱影響部靭性に優れた鋼材の製造方法が記載されている。これにより、球状化したCa酸硫化物が鋼中に分散し、さらに熱延後に、750℃以下の温度から水冷することにより、フェライト面積率が15%以上となり、低降伏比で、大入熱溶接熱影響部靭性にすぐれた鋼材が得られるとしている。
また、特許文献4には、質量%で、C:0.05〜0.12%、Si:0.3%以下、Mn:1〜2%、B:0.0003〜0.003%、V:0.03〜0.15%、Al:0.001〜0.1%、Ti:0.005〜0.02%を含有し、炭素当量Ceqが0.32〜0.45%、有効ボロン量が0%以下、有効チタン量が0.005%以上である連続鋳造スラブを、1100℃超1300℃以下に加熱した後、鋼表面温度が850℃以上で累積圧下率が50%以上の圧延を行い、ついで鋼表面温度が800℃以上から加速冷却を適用し500℃以下まで冷却する、大入熱溶接熱影響部靭性に優れた厚手高強度鋼板の製造方法が記載されている。特許文献4に記載された技術では、V、Bを複合含有させ、N量を調整することにより、γ中のBとVの存在状態を最適化し、母材と大入熱溶接HAZの変態組織を制御でき、板厚50〜100mmで、降伏強さ400〜650MPa、引張強さ490〜720MPaの厚手高強度で、溶接入熱20kJ/mm以上のHAZでも、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーが70J以上となる良好な大入熱溶接HAZ靭性を有する鋼板が得られるとしている。
特開2003−277828号公報 特開2005−336541号公報 特開2010−180424号公報 特許第4681690号公報
しかしながら、特許文献1〜4に記載された技術では、板厚60mm以上の厚鋼板において、母材および溶接継手で、550MPa以上の引張強さTSを確保するためには、Cu、Niの添加や、N量の増加が必要となる。Cu、Niの添加や、N量の増加は、連鋳スラブの表面性状を劣化させ、鋳片表面の手入負荷が増大したり、歩留が低下したりして、製造コストの高騰を招くという問題があった。
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、表面性状を低下させる合金元素や、製造コストを高騰させる合金元素を低減、あるいは、含有することなく、建築構造物用として好適な、降伏強さYS:385MPa以上、引張強さTS:550MPa以上、降伏比YR:80%以下を有し、さらに入熱400kJ/cmを超える超大入熱溶接で形成された溶接部(以下、超大入熱溶接部ともいう)において、優れた溶接熱影響部(HAZ)靭性(以下、超大入熱溶接HAZ靭性ともいう)を有する高強度厚鋼板およびその安価な製造方法を提供することを目的とする。なお、ここでいう「優れた超大入熱溶接HAZ靭性」とは、超大入熱溶接(入熱:1000kJ/cm)のHAZで、シャルピー衝撃試験における試験温度:0℃での吸収エネルギーが平均で70J以上である場合をいうものとする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、鋼板の製造性、強度、HAZ靭性に及ぼす各種要因について、鋭意検討した。その結果、不純物としてCu、Ni、Vを所定値以下に調整し、さらにN量を所定範囲に低く調整したうえで、Cr、Bを複合含有し、かつC、Cr、Bを特定関係を満足するように調整して含有することにより、優れた超大入熱溶接HAZ靭性を有する鋼板を、安定して、しかも安価に製造できることを、新規に知見した。
本発明者らの更なる研究によれば、質量%で、C:0.05〜0.15%、Cr:0.10〜0.50%、B:0.0003〜0.0020%の範囲内で含み、かつC、Cr、Bを次(1)式
0.28 ≦ 3/2×C+1/2×Cr+100×B ≦ 0.38 ‥‥(1)
(ここで、C、Cr、B:各元素の含有量(質量%))
を満足するように調整して含有することにより、とくに超大入熱溶接HAZにおいても、粗大な粒界フェライトや上部ベイナイト、フェライトサイドプレートの生成を抑え、粒内アシキュラーフェライトの生成を促進して、高強度でかつ優れた靭性を有する溶接HAZとすることができることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎの通りである。
(1)質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.01〜0.5%、Mn:1.0〜1.6%、P:0.02%以下、S:0.003%以下、Al:0.001〜0.060%、Ti:0.005〜0.030%、Cr:0.10〜0.50%、B:0.0003〜0.0020%、N:0.0025〜0.0055%、O:0.003%以下を含み、さらにC、Cr、Bを次(1)式
0.28 ≦ 3/2×C+1/2×Cr+100×B ≦ 0.38 ‥‥(1)
(ここで、C、Cr、B:各元素の含有量(質量%))
を満足するように調整して含み、かつ不純物としてCu、Ni、Vを、それぞれ:0.05%以下に調整してなり、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、板厚1/4位置において、体積率で40%以上の焼戻ベイナイト相、あるいはさらにフェライト相を合計で90%以上含み、残部が体積率で10%以下(0%を含む)のパーライトからなる組織と、を有し、降伏強さ:385MPa以上、引張強さ:550MPa以上の高強度、降伏比:80%以下の低降伏比で、超大入熱溶接熱影響部靭性に優れることを特徴とする建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.01〜0.30%、Nb:0.003〜0.020%のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0020%、REM:0.0010〜0.0030%、Mg:0.0010〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板。
(4)鋼素材に、熱間圧延とそれに引続き、直接焼入れ処理と焼戻処理とを施して厚鋼板とする、建築構造物用厚鋼板の製造方法であって、前記鋼素材が、質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.01〜0.5%、Mn:1.0〜1.6%、P:0.02%以下、S:0.003%以下、Al:0.001〜0.060%、Ti:0.005〜0.030%、Cr:0.10〜0.50%、B:0.0003〜0.0020%、N:0.0025〜0.0055%、O:0.003%以下を含み、さらにC、Cr、Bを次(1)式
0.28 ≦ 3/2×C+1/2×Cr+100×B ≦ 0.38 ‥‥(1)
(ここで、C、Cr、B:各元素の含有量(質量%))
を満足するように調整して含み、かつ不純物としてCu、Ni、Vを、それぞれ:0.05%以下に調整してなり、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材であり、前記熱間圧延を、前記鋼素材を平均温度で1050〜1200℃の範囲の温度に加熱し、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下率が30%以上で、圧延終了温度を表面温度で900℃以下Ar変態点以上とする圧延とし、前記直接焼入れ処理を、表面温度でAr変態点以上の温度から冷却を開始し、板厚1/4位置で2℃/s以上40℃/s以下の平均冷却速度で、板厚1/4位置の温度で200℃以下の温度域の冷却停止温度まで冷却する処理とし、前記焼戻処理を、表面温度で400℃以上Ac変態点未満の温度域に加熱する処理とすることを特徴とする建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板の製造方法。
(5)(4)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.01〜0.30%、Nb:0.003〜0.020%のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板の製造方法。
(6)(4)または(5)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0020%、REM:0.0010〜0.0030%、Mg:0.0010〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、建築構造物用として好適な、板厚60mm以上で、降伏強さ:385MPa以上、引張強さTS:550MPa以上の高強度で、降伏比YR:80%以下という低降伏比を有し、かつ超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高強度厚鋼板を、鋼素材(スラブ)の手入を必要とすることなく安価にしかも生産性高く製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明は、鋼構造物の大型化や、耐震性の向上、施工効率の向上などに、大きく寄与するという効果もある。
実施例で用いた溶接継手の開先形状を模式的に示す説明図である。 実施例で実施したシャルピー衝撃試験で使用するVノッチ試験片の採取要領を模式的に示す説明図である。
まず、本発明低降伏比高強度厚鋼板の組成限定理由について、説明する。なお、とくに断わらないかぎり、質量%は単に%で記す。
C:0.05〜0.15%
Cは、鋼の強度を増加させ、建築構造物用鋼材として必要な強度を確保するのに有用な元素である。このような効果を得るため、さらに他の合金元素量を必要最小限に抑えるために、Cは、0.05%以上含有する必要がある。一方、0.15%を超えて含有すると、耐溶接割れ性の低下、HAZ靭性の低下が顕著になる。このため、Cは0.05〜0.15%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.08〜0.12%である。
Si:0.01〜0.5%
Siは、固溶して鋼の強度を増加させ、建築構造用鋼板として必要な強度を確保するのに有用な元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.5%を超える含有は、超大入熱溶接HAZにおいて、MA(Martensite-Austenite constituent)相の生成を助長し、HAZ靭性を低下させる恐れが高くなる。このようなことから、Siは0.01〜0.5%の範囲に限定した。なお、SiはHAZ靭性の観点から、好ましくは0.30%以下である。
Mn:1.0〜1.6%
Mnは、鋼の強度を増加させ、建築構造物用鋼板として必要な強度を確保するのに有用な元素である。このような効果を得て、引張強さ550MPa以上を確保するためには、1.0%以上の含有を必要とする。一方、1.6%を超えて含有すると、凝固時に中央偏析部への濃化が著しくなり、スラブ欠陥の増加などの原因となる。また、多量のMn含有は、母材およびHAZ靱性の著しい低下を招く。このため、Mnは1.0〜1.6%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.2〜1.6%であり、より好ましくは、1.4〜1.6%の範囲である。
P:0.02%以下
Pは、不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、鋼板の靭性を低下させるため、できるだけ低減することが好ましいが、0.02%以下であれば許容できる。0.02%を超える含有は、とくにHAZ靭性を著しく低下させる。このため、Pは0.02%以下に限定した。なお、過度のP低減は、精錬コストを高騰させ、経済的に不利となるため、0.005%以上とすることが好ましい。
S:0.003%以下
Sは、鋼中では硫化物系介在物として存在し、鋼板の延性、靭性の低下を招くため、できるだけ低減することが好ましい。とくに、Mnと結合したMnSは、板厚中央の中心偏析部に多く偏在し、熱間圧延により伸長して、特に板厚方向(Z方向)のシャルピー衝撃試験吸収エネルギーを顕著に低下させる。このような悪影響を避けるためには、Sは0.003%以下に低減する必要がある。とくに、エレクトロスラグ溶接の熱影響部は広範囲に及ぶため、中心偏析部が熱影響部に含まれることがあり、このような場合には、熱影響部におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーは顕著に低下する。そのため、Sは0.003%以下に限定した。なお、好ましくは0.002%以下である。また、過度のS低減は、精錬コストの高騰を招き、経済的に不利となるため、0.0005%以上とすることが好ましい。
Al:0.001〜0.060%
Alは、脱酸剤として作用し、高張力鋼の溶鋼脱酸プロセスにおいて、もっとも汎用的に使われる元素である。また、鋼中のNをAlNとして固定し、Nによる靭性低下や割れ発生を抑制する効果も有する。このような効果は、0.001%以上の含有で認められるが、0.060%を超えて含有すると、母材靱性が低下するうえ、溶接時に溶接金属に混入して溶接部靱性を低下させる。このため、Alは0.001〜0.060%の範囲とする。なお、好ましくは0.010〜0.045%、より好ましくは、0.020〜0.035%である。
Ti:0.005〜0.030%
Tiは、Nとの親和力が強く凝固時にTiNとして析出し、HAZでのオーステナイト粒の粗大化抑制、あるいはフェライト変態核として作用しHAZの高靱化に寄与する。このような効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.030%を超える含有は、TiN粒子が粗大化し、上記した効果が期待できなくなる。このため、Tiは0.005〜0.030%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.008〜0.020%である。
Cr:0.10〜0.50%
Crは、本発明における重要な元素の1つである。Crは、固溶して母材と大入熱溶接HAZの強度を高めるとともに、とくに大入熱溶接HAZにおいて、粒界フェライトの生成を抑制し、アシキュラーフェライトの生成を促進して、HAZ組織の微細化を図りHAZ靭性向上に寄与する作用を有する。このような効果を得るためには、0.10%以上の含有を必要とする。一方、0.50%を超えて含有すると、溶接性が低下する。このようなことから、Crは0.10〜0.50%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.15〜0.30%である。
B:0.0003〜0.0020%
Bは、本発明では重要な元素の1つである。Bは、大入熱溶接HAZにおいて、粒界フェライトの生成を抑制するとともに、その後、オーステナイト(γ)中にB炭窒化物として析出し、変態核として、γ粒内におけるフェライトの核生成を促進し、HAZの組織微細化に寄与し、大入熱HAZ靭性を向上させる。このような効果を得るためには0.0003%以上の含有を必要とする。一方、0.0020を超える含有は、粗大なB析出物を生成しHAZ靭性を低下させる。このため、Bは0.0003%〜0.0020%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.0010%以下である。
N:0.0025〜0.0055%
Nは、Ti、Nb等の窒化物形成元素と結合し窒化物を形成し、ピンニング効果によりオーステナイト粒の粗大化を防いだり、フェライトやベイナイトの核生成サイトとして機能し、HAZ組織の微細化に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0025%以上含有する必要がある。また、Nは、固溶して、母材や、超大入熱溶接のCGHAZ(Coarse Grain HAZ)および小入熱多パス溶接におけるICCGHAZ(Inter Critically reheated Coarse Grain HAZ)で、島状マルテンサイトの生成を促進し、靭性の低下をもたらす。一方、Nが0.0055%を超えて多すぎると、窒化物量が多くなりすぎ、また窒化物が粗大化して、靱性が低下する。このようなことから、Nは0.0025〜0.0055%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.0030〜0.0050%である。
O:0.003%以下
O(酸素)は、鋼中では酸化物系介在物として存在するが、酸化物系介在物は、延性、靭性を低下させるため、できるだけ低減することが好ましい。0.003%を超えて含有すると、鋼板の清浄度が著しく低下し、延性、靭性が著しく低下する。このため、Oは0.003%以下に限定した。
さらに本発明では、C、Cr、Bは、上記した範囲で含有し、かつ次(1)式
0.28 ≦ 3/2×C+1/2×Cr+100×B ≦ 0.38 ‥‥(1)
(ここで、C、Cr、B:各元素の含有量(質量%))
を満足するように調整して含有する。
(1)式を満足するように、C、Cr、Bの含有量を調整することにより、B炭窒化物による粒内核生成サイトの増加と、固溶Crによる焼入性の増加でγ粒内におけるアシキュラーフェライトの生成が促進されて、高強度でかつ優れた靭性を有する溶接HAZとすることができる。(1)式中央値が0.38を超えて大きくなると、靭性に悪影響を及ぼす上部ベイナイトやフェライトサイドプレートが生成し、靭性が低下する。一方、(1)式中央値が0.28未満では、溶接継手部強度を低下させる恐れがある粒内ポリゴナルフェライトや粗大な粒界フェライトの生成を抑制できなくなる。このようなことから、本発明ではC、Cr、Bの含有量を(1)式を満足するように調整することとした。
さらに本発明では、不純物としてCu、Ni、Vを、それぞれ0.05%以下になるように調整する。
Cu、Niは、スラブ割れを発生しやすくし、歩留、生産性に悪影響を及ぼし、またVは、析出脆化による靭性低下が懸念される元素であり、本発明ではできるだけ低減し、それぞれ、0.05%以下に制限した。なお、好ましくは0.03%以下である。
以上が、本発明の基本の成分であるが、本発明では基本の組成に加えてさらに、選択元素として、Mo:0.01〜0.3%、Nb:0.003〜0.020%のうちから選ばれた1種または2種、および/または、Ca:0.0005〜0.0020%、REM:0.0010〜0.0030%、Mg:0.0010〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上、を含有してもよい。
Mo:0.01〜0.30%、Nb:0.003〜0.020%のうちから選ばれた1種または2種
Mo、Nbは、いずれも鋼の強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて、選択して1種または2種を含有できる。
Moは、鋼の強度増加に有効に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.30%を超えて含有すると、大入熱溶接HAZ靭性が低下する。このため、含有する場合には、Moは0.01〜0.30%の範囲に限定することが好ましい。なお、MoはNiと同様に、高価な元素であり、またMoは、HAZにおけるMA生成を助長する恐れが高いため、上記した範囲内のうち、極力低くすることが好ましい。HAZ靭性向上の観点からは、Moは0.10%以下とすることがより好ましい。
Nbは、析出強化によって鋼の強度増加に寄与するとともに、オーステナイトの再結晶を抑制し、未再結晶温度域を拡大する作用を有し、未再結晶温度域での加工を容易にして、その後の変態組織を微細化し、母材の強靱化に寄与する元素である。このような効果を得るためには、Nbは、0.003%以上の含有を必要とする。一方、0.020%を超える含有は、母材およびHAZ靱性を著しく低下させる。このため、含有する場合には、Nbは0.003〜0.020%範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.003〜0.010%である。
Ca:0.0005〜0.0020%、REM:0.0010〜0.0030%、Mg:0.0010〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上
Ca、REM、Mgはいずれも、硫化物の形態制御を介して鋼の延性向上に寄与する元素である。またさらに、これらの元素の硫化物または酸化物粒子は、MnSと複合して、溶接時にフェライト変態核として作用し、HAZ靱性の向上に寄与する。このような効果を得るためには、Ca:0.0005%以上、REM:0.0010%以上、Mg:0.0010%以上の含有を必要とする。一方、Ca:0.0020%、REM:0.0030%、Mg:0.0020%、をそれぞれ、超えて含有すると、過剰の介在物が生成し、かえって靭性が低下する場合がある。このため、含有する場合には、Ca:0.0005〜0.0020%、REM:0.0010〜0.0030%、Mg:0.0010〜0.0020%の範囲にそれぞれ限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Fe及び不可避的不純物からなる。
つぎに、本発明厚鋼板の組織限定理由について、説明する。
本発明厚鋼板は、上記した組成を有し、板厚1/4位置において、体積率で40%以上の焼戻ベイナイト相、あるいはさらにフェライト相を合計で90%以上含み、残部が体積率で10%以下(0%を含む)のパーライトからなる組織を有する。
本発明厚鋼板は、板厚1/4位置において、体積率で40%以上の焼戻ベイナイト相と、あるいはさらにフェライト相とからなる組織を主体とする。ここでいう「主体とする」とは、体積率で90%以上である場合をいうものとする。
焼戻ベイナイト相が、体積率で40%未満では、建築構造物用として、所望の高強度(降伏強さ:385MPa以上、引張強さ:550MPa以上)を確保できなくなる。このため、焼戻ベイナイト相は体積率で40%以上に限定した。焼戻ベイナイト相を体積率で40%以上含むことで、高強度と高靭性を兼備することができる。なお、より確実に所望の高強度を確保するためには、焼戻ベイナイト相は体積率で50%以上とすることが好ましい。また、焼戻ベイナイト相は降伏比が低いため、焼戻ベイナイト相のみでも所望の高強度と降伏比:80%以下の低降伏比を兼備させることができるが、より確実に降伏比:80%以下の低降伏比を得るためには、体積率で20%以上のフェライト相を含むことが望ましい。
上記した焼戻ベイナイト相とフェライト相以外の残部は、体積率で10%以下(0%を含む)のパーライトとする。体積率で10%を超えると所望の母材靭性を確保できなくなる。パーライトは母材靭性を低下させるため、少ないほど望ましい。
このようなことから、本発明厚鋼板の組織は、板厚1/4位置において、体積率で40%以上の焼戻ベイナイト相と、あるいはさらにフェライト相とを合計で90%以上含み、残部が体積率で10%以下(0%を含む)のパーライトからなる組織に限定した。
なお、組織を、板厚1/4位置で規定したのは、板厚1/4位置の組織が、鋼板の表層および板厚中央の中間の組織を示し、鋼板全体の平均的な組織を代表していると考えられるためである。
つぎに、本発明厚鋼板の製造方法について説明する。
本発明では、上記した組成の鋼素材に、熱間圧延とそれに引続き、直接焼入れ処理と焼戻処理とを施して、所定寸法の厚鋼板とする。
なお、鋼素材の製造方法は、特に限定する必要はないが、転炉、電気炉、真空溶解炉等の常用の溶製方法で、上記した組成の溶鋼を溶製し、あるいはさらに常用の脱酸処理や脱ガスプロセスを経て、連続鋳造法等の常用の鋳造方法で鋼素材(スラブ)とすることが好ましい。なお、これらに限定されないことは言うまでもない。
ついで、得られた鋼素材(スラブ)に、熱間圧延を施す。
熱間圧延は、鋼素材を平均温度で1050〜1200℃の範囲の温度に加熱し、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下率が30%以上で、圧延終了温度を表面温度で900℃以下Ar変態点以上とする圧延とする。
加熱温度:平均温度で1050〜1200℃
加熱温度が、平均温度で1050℃未満では、凝固時に析出した粗大な炭化物等の析出物を完全に溶解することができず、所望の高強度を確保できない。一方、1200℃を超える高温では、組織が粗大化し、所望の母材靱性を確保できなくなり、また焼入性が増加しすぎて、所望の組織が得られなくなる。このようなことから、鋼素材の加熱温度は平均温度で1050〜1200℃の範囲の温度に限定した。なお、好ましくは1080〜1150℃である。なお、ここでいう「平均温度」とは、測定される表面温度から伝熱計算により算出した鋼素材の温度分布から求めた肉厚方向断面での平均値をいう。
表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下率:30%以上
本発明では、ミクロ組織を適度に微細化するため、表面温度で950℃以下の温度域で制御圧延を行う。950℃以下の温度域での累積圧下率が30%未満では、組織が粗大化し、所望の組織微細化が図れず所望の高靭性を確保できない。また、組織の粗大化により焼入性が増加しすぎて、所望の組織を確保できなくなる。このため、熱間圧延における、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下率を30%以上に限定した。なお、好ましくは35%以上である。なお、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下率が60%を超えて高すぎると圧延方向に結晶粒が伸展した組織となり、シャルピー衝撃試験でセパレーションが発生し、母材靭性が低下する。このため、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下率は60%以下とすることが好ましい。
圧延終了温度:表面温度で900℃以下Ar変態点以上
圧延終了温度が表面温度で900℃を超えると、組織が粗大化し所望の母材靭性を確保できないうえ、焼入性が増加しすぎて、所望の組織を確保できなくなる。一方、圧延終了温度が表面温度でAr変態点未満では、圧延中あるいは圧延直後にフェライト相が生成し粗大化して、母材の靱性が低下する。このため、圧延終了温度は表面温度で900℃以下Ar変態点以上に限定した。なお、好ましくは880〜780℃である。
なお、Ar変態点は、次式
Ar変態点(℃)=900−332C+6Si−77Mn−20Cu−50Ni−18Cr−68Mo
(ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo:各元素の含有量(質量%))
を用いて算出した値を用いるものとする。なお、式中に記載された元素のうち、含有されない元素については、当該元素を零として計算するものとする。
また、上記した熱間圧延で得られた厚鋼板には、熱間圧延に引続き、直接焼入れ処理を施す。
直接焼入れ処理は、表面温度で、Ar変態点以上の温度から、板厚1/4位置の温度で2℃/s以上40℃/s以下の平均冷却速度で、200℃以下の温度域の冷却停止温度まで冷却する処理とする。
冷却の開始温度:表面温度でAr変態点以上の温度
冷却の開始温度が、表面温度でAr変態点未満では、冷却処理の開始前にフェライト相が生成し、粗大化する。このため、表層部のフェライト粒の微細化が達成できなくなり、所望の低降伏比を達成できなくなる。このため、冷却の開始温度は表面温度でAr変態点以上に限定した。
平均冷却速度:板厚1/4位置の温度で、2℃/s以上40℃/s以下
板厚1/4位置の温度での平均冷却速度が2℃/s未満では、冷却が遅く、冷却中に粗く靭性の低いフェライト粒が生成する。板厚1/4位置の温度で平均冷却速度が40℃/sを超えると、マルテンサイト相が生成し靭性が低下する。このため、直接焼入れ処理における冷却は、板厚1/4位置での平均冷却速度で2〜40℃/sの範囲に限定した。なお、板厚が100mmを超えると、板厚1/4位置での平均冷却速度で2℃/s以上を確保することが困難となる。
なお、ここでいう「平均冷却速度」とは、冷却開始から500℃までの平均の冷却速度をいうものとする。また、「板厚1/4位置」の冷却速度は、測定された表面温度から伝熱計算により算出された板厚1/4位置の温度から計算された値を用いるものとする。
冷却停止温度:板厚1/4位置で200℃以下の温度域の温度
冷却停止温度が、板厚1/4位置で200℃超では、ベイナイト相への変態量が低下し、焼戻ベイナイト相が体積率で40%以上となる組織を得ることができず、所望の高強度を確保することができなくなる。このため、冷却停止温度を板厚1/4位置で200℃以下に限定した。
また、直接焼入れ処理を施した後に、さらに、鋼板表面温度で400℃以上Ac変態点未満の温度に加熱する焼戻処理を施す。
焼戻温度が表面温度で400℃未満では、所望の高強度・高靭性を兼備させることができない。一方、鋼板表面温度でAc変態点を超える温度では、強度低下が著しくなる。このため、焼戻処理は、鋼板表面温度で400℃以上Ac変態点未満の温度に加熱する処理とした。なお、この焼戻処理は、雰囲気温度(炉温)で400〜700℃の温度に調整した加熱炉に厚鋼板を装入することにより達成できる。
なお、Ac変態点は、次式
Ac変態点(℃)=751−27C+18Si−12Mn−23Cu−23Ni+24Cr+23Mo−40V−6Ti+233Nb−169Al−895B
(ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Ti、Nb、Al、B:各元素の含有量(質量%))
を用いて算出した値を用いるものとする。なお、式中に記載された元素のうち、含有されない元素は、零として計算するものとする。
つぎに、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
転炉と取鍋精錬とを用いて、表1に示す組成の溶鋼を溶製し、連続鋳造法で鋳造して、鋼素材(スラブ:肉厚250mm)とした。得られた鋼素材を、表2に示す加熱温度に加熱したのち、表2に示す条件の熱間圧延と、それに引続き、表2に示す条件の直接焼入れ処理と焼戻処理とを施し、表2に示す板厚の厚鋼板とした。
得られた厚鋼板から、試験片を採取し、組織観察、引張試験、衝撃試験、溶接継手試験を実施した。試験方法はつぎの通りである。
(1)組織観察
得られた厚鋼板から組織観察用試験片を採取し、圧延方向に直交する断面(C断面)が観察面となるように研磨し、腐食(ナイタール液腐食)して、板厚1/4位置近傍での組織を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察し、撮像した。得られた組織写真を画像解析して、組織の同定および組織分率を測定した。
(2)引張試験
得られた厚鋼板の板厚1/4位置から、引張方向が圧延方向と平行な方向(L方向)となるようにJIS 4号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS)を測定し、降伏比YR(=(YS/TS)×100%)を算出した。
(3)衝撃試験
得られた厚鋼板の板厚1/4位置から、試験片長手方向が圧延方向に直交する方向(C方向)となるようにVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して、試験温度:0℃でシャルピー衝撃試験を実施し、吸収エネルギーvE(J)を求めた。なお、吸収エネルギーは各3本の平均値とした。
(4)溶接継手試験
得られた厚鋼板から、継手用試験板(大きさ:400×600mm)を採取し、図1に示す開先形状となるように組み立てたのち、エレクトロスラグ溶接(溶接入熱量:1000kJ/cm)により、溶接継手を作製した。なお、使用したワイヤは、JIS Z 3353 YES62相当品とし、フラックスはJIS Z 3353 FS−FG3相当品とした。
得られた溶接継手部から、図2に示すように、切欠き位置をボンド部とするVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して、試験温度:0℃でシャルピー衝撃試験を実施し、吸収エネルギーvE(J)を求め、超大入熱溶接熱影響部(超大入熱溶接継手ボンド部)の靭性を評価した。なお、吸収エネルギーは各3本の平均値とした。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0006308148
Figure 0006308148
Figure 0006308148
本発明例はいずれも、降伏強さYS:385MPa以上、引張強さTS:550MPa以上、降伏比YR:80%以下と、低降伏比高強度で、かつ0℃における吸収エネルギーvE:70J以上と、高母材靭性を有する、厚鋼板となっている。さらに、本発明例はいずれも、入熱400kJ/cmを超える、入熱1000kJ/cmのエレクトロスラグ溶接継手ボンド部で0℃における吸収エネルギーvE:70J以上となる、超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた厚鋼板となっている。
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、母材部強度が所望の範囲を低く外れているか、あるいは溶接熱影響部靭性が所望の範囲を低く外れている。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C :0.05〜0.15%、 Si:0.01〜0.5%、
    Mn:1.0〜1.6%、 P :0.02%以下、
    S :0.003%以下、 Al:0.001〜0.060%、
    Ti:0.005〜0.030%、 Cr:0.10〜0.50%、
    B :0.0003〜0.0020%、 N :0.0025〜0.0055%、
    O :0.003%以下
    を含み、さらにC、Cr、Bを下記(1)式を満足するように調整して含み、かつ不純物としてCu、Ni、Vを、それぞれ:0.05%以下に調整してなり、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、
    板厚1/4位置において、体積率で40%以上の焼戻ベイナイト相と体積率で20%以上のフェライト相を合計で90%以上含み、残部が体積率で10%以下(0%を含む)のパーライトからなる組織と、を有し、降伏強さ:385MPa以上、引張強さ:550MPa以上、降伏比:80%以下で、超大入熱溶接熱影響部靭性に優れることを特徴とする建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板。

    0.28 ≦ 3/2×C+1/2×Cr+100×B ≦ 0.38 ‥‥(1)
    ここで、C、Cr、B:各元素の含有量(質量%)
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.01〜0.30%、Nb:0.003〜0.020%のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板。
  3. 記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0020%、REM:0.0010〜0.0030%、Mg:0.0010〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板。
  4. 鋼素材に、熱間圧延とそれに引続き、直接焼入れ処理と焼戻処理とを施して厚鋼板とする、建築構造物用厚鋼板の製造方法であって、
    前記鋼素材が、質量%で、
    C :0.05〜0.15%、 Si:0.01〜0.5%、
    Mn:1.0〜1.6%、 P :0.02%以下、
    S :0.003%以下、 Al:0.001〜0.060%、
    Ti:0.005〜0.030%、 Cr:0.10〜0.50%、
    B :0.0003〜0.0020%、 N :0.0025〜0.0055%、
    O :0.003%以下
    を含み、さらにC、Cr、Bを下記(1)式を満足するように調整して含み、かつ不純物としてCu、Ni、Vを、それぞれ:0.05%以下に調整してなり、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材であり、
    前記熱間圧延を、前記鋼素材を平均温度で1050〜1200℃の範囲の温度に加熱し、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下率が30%以上で、圧延終了温度を表面温度で900℃以下Ar変態点以上とする圧延とし、
    前記直接焼入れ処理を、表面温度でAr変態点以上の温度から冷却を開始し、板厚1/4位置で2℃/s以上40℃/s以下の平均冷却速度で、板厚1/4位置の温度で200℃以下の温度域の冷却停止温度まで冷却する処理とし、
    前記焼戻処理を、表面温度で400℃以上Ac変態点未満の温度域に加熱する処理とし、板厚1/4位置において、体積率で40%以上の焼戻ベイナイト相と体積率で20%以上のフェライト相とを合計で90%以上含み、残部が体積率で10%以下(0%を含む)のパーライトからなる組織と、を有し、降伏強さ:385MPa以上、引張強さ:550MPa以上、降伏比:80%以下で、超大入熱溶接熱影響部靭性に優れる厚鋼板とすることを特徴とする建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板の製造方法。

    0.28 ≦ 3/2×C+1/2×Cr+100×B ≦ 0.38 ‥‥(1)
    ここで、C、Cr、B:各元素の含有量(質量%)
  5. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.01〜0.30%、Nb:0.003〜0.020%のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項4に記載の建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板の製造方法。
  6. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0020%、REM:0.0010〜0.0030%、Mg:0.0010〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項4または5に記載の建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板の製造方法。
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