JP5079419B2 - 溶接熱影響部の靱性が優れた溶接構造物用鋼とその製造方法および溶接構造物の製造方法 - Google Patents
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C:0.04〜0.11%、
Si:0.02〜0.30%、
Mn:1.70〜2.50%、
P:0.010以下、
S:0.007%以下、
Nb:0.005〜0.030%、
Cu:0.05〜0.70%、
Ni:0.05〜0.70%、
V:0.02〜0.07%、
N:0.0020〜0.0060%、
Al:0.04%以下、
Ti:0.005〜0.030%、
Ca:0.0035%以下、
O:0.0005〜0.0030%
を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる化学成分の鋼であって、かつ、
Ceq(M)=Mn/15+Cu/20+Ni/60
が0.1より高く、
Ceq(WES)=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/4
が0.48未満であり、
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/15+5B
が0.24未満であり、入熱が30kJ/mm以上の超大入熱溶接での溶接熱影響部(Heat Affected Zone;HAZ)でのHAZ組織において粒内フェライト(Intragranular Ferrite;IGF)が面積率で30%以上、島状マルテンサイト(martensite−austnite constituent;MA)が面積率で1%未満で構成されることを特徴とする溶接熱影響部の靱性が優れた溶接構造物用鋼。
Cr:0.80%以下、
Mo:0.30%以下、
B:0.0003〜0.0030%、
の一種または二種以上を含有することを特徴とする上記(1)記載の溶接熱影響部の靱性が優れた溶接構造物用鋼。
Cは強度を確保するために必要な元素であり、0.04%以上の添加が必要であるが、多量の添加はHAZの靱性低下を招くおそれがあるために、その上限値を0.11%とする。好ましくは0.4〜0.08%である。
Siは脱酸元素として、また固溶強化により鋼の強度を増加させるのに有効な元素であるが、0.02未満の添加ではそれらの効果が認められない。また、0.30%を超えて添加すると、HAZ靱性を劣化させる。このため、Siの添加量は0.02〜0.30%とした。
Mnは、鋼の強度を増加するため高強度化には有効な元素である。またMnはSと結合してMnSを生成するが、粒内フェライトの生成核となり溶接熱影響部の微細化を促進することで、HAZ靱性の劣化を抑制する。そのため、強度を維持しつつ、溶接熱影響部の靱性を確保するためには1.70%以上の添加が必要である。しかし、2.50%を超えると、HAZ靱性が著しく劣化する。このため、Mnの添加量の適正範囲を1.70〜2.50%とした。
Pは、0.010%超となると粒界に偏析して鋼の靱性を著しく劣化させる。このため添加量の上限を0.010%とした。なお、靭性値の低下の観点からはできるだけ低減することが望ましい。
Sは、MnSを形成して鋼中に存在し、圧延冷却後の組織を微細にする作用を有するが、0.007%を超えると母材および溶接部の靭性を劣化させる。このため、Sは0.007%以下とした。
Nb添加は、スラブ再加熱時や焼入れ時の加熱オーステナイトの細粒化により高強度化がはかれる。そのためには0.005%以上添加する必要がある。しかしながら、過量なNb添加はHAZの硬化やMAの生成を助長するためかえってHAZ靭性を劣化させる。そのため、Nb添加量の上限値を0.030%とした。特に大入熱溶接を実施した場合、HAZ靭性を劣化が著しいため望ましくは0.005〜0.015%がよい。
Cuは高強度化をはかるために必要不可欠な元素である。Cuによる析出効果を確保するためには0.05%以上の添加が必要である。しかし過剰な添加は溶接性を害するためその上限を0.70%とした。好ましくは0.10〜0.5%である。
Niは溶接性に悪影響をおよぼすことなく、強度、靭性を向上させるほか、Cu割れの防止にも効果がある。これらの効果が得られるためには0.05%以上の添加が必要である。しかし、Niは効果であるため0.70%以上とすると廉価に鋼を製造できなくなるため0.70%以下とした。
Vは、Nbとほぼ同様の作用を有するものであるが、Nbに比べてその効果は小さい。Nbと同様の効果は0.02%未満では効果が少ない。しかし、0.07%を超えるとHAZ靭性が著しく劣化する。このため、Vの添加量の適正範囲を0.02〜0.07%とした。
Nは、Tiと結合して鋼中にTiNを形成させるために、0.0020%以上の添加が必要である。ただし、Nは固溶強化元素としても非常に大きな効果があるため、多量に添加するとHAZ靱性を劣化するおそれが考えられる。そのため、HAZ靱性に大きな影響を与えずTiNの効果を最大限に得られるように、Nの上限を0.0060%とした。
Alは脱酸上必要な元素であるが、0.04%を超える過度の添加は溶接性を低下させる。特にフラックスを使用するSAW等で顕著であり溶接金属の靭性を劣化させ、HAZ靱性も低下する。このため、Alの上限を0.04%としたが、上限を0.03%とすることが好ましい。本発明ではAlの下限値を規定しない。本発明の範囲内でAlを高値とするとHAZ組織のIGF生成核はTiNが主となり、低値ではTiOとなる。両鋼ともにHAZ靭性を向上させるため溶接性を劣化させる上限値のみを規制した。
Tiは、Nと結合して鋼中にTiNとOと結合して鋼中にTiOを形成させるために、0.005%以上の添加が望まれる。ただし、0.030%を超えてTiを添加すると、介在物を粗大化させ、本発明の目的であるTiNによる結晶粒径粗大化抑制効果を低下させるおそれがある。このため、Tiは0.005〜0.030%の範囲としたが、0.010〜0.025%とすることが好ましい。
Caは硫化物(MnS)の形態を制御し、シャルピーの吸収エネルギーを増大させ低温靭性を向上させる効果がある。ただし、0.0035%を超えると粗大なCaOやCaSが多量に発生するため鋼の靱性と耐ラメラテア性に悪影響を及ぼすため、0.0035%上限と限定した。なお、厚手建築用鋼で耐ラメラテア性を確保するためには0.0005〜0.0025%が望ましい。
OはTi酸化物等を生成しHAZ靭性を向上させるために必要な元素であり、その最低必要量は0.0005%である。しかし、高強度項の場合、0.0030%を超えると鋼の清浄度、靱性劣化を招く。このため上限値を0.0030%とした。
Ceq(M)=Mn/15+Cu/20+Ni/60>0.1
Ceq(WES)=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/4<0.48
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/15+5B<0.24
望ましくは0.22以下がよい。
Crは母材および溶接部の強度を高める元素であり、0.80%を超えると大入熱溶接HAZ靭性を劣化させる。そのため上限値を0.80%とした。大入熱溶接HAZ靭性を低下させず、強度を確保するためには、望ましくは0.05〜0.30%添加がよい。
Moは母材強度および靱性を高める元素である。また、少量の添加でHAZ軟化を抑制する効果がある。しかし、0.30%を超えると大入熱溶接HAZ靭性を劣化させる。そのため上限値を0.30%としたが、好ましくは0.10%以下である。Moは大入熱溶接HAZ靭性を確保する観点では著しく有害な元素であるため極力添加量を減らすことが望ましい。
Bは鋼中に固溶して焼入れ性を高め強度を上昇させる元素である。また、溶接時に粒界フェライトの生成を抑制し、HAZ靭性を向上させる。これらの効果が得られるためには0.0003%以上の添加が必要である。しかし、Bを過多に添加すると母材靭性やHAZ靭性を低下させるためその上限値を0.0030%とした。
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.04〜0.11%、
Si:0.02〜0.30%、
Mn:1.70〜2.50%、
P:0.010以下、
S:0.007%以下、
Nb:0.005〜0.030%、
Cu:0.05〜0.70%、
Ni:0.05〜0.70%、
V:0.02〜0.07%、
N:0.0020〜0.0060%、
Al:0.04%以下、
Ti:0.005〜0.030%、
Ca:0.0035%以下、
O:0.0005〜0.0030%
を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる化学成分の鋼であって、かつ、
Ceq(M)=Mn/15+Cu/20+Ni/60
が0.1より高く、
Ceq(WES)=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/4
が0.48未満であり、
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/15+5B
が0.24未満であり、入熱が30kJ/mm以上の超大入熱溶接での溶接熱影響部(Heat Affected Zone;HAZ)でのHAZ組織において粒内フェライト(Intragranular Ferrite;IGF)が面積率で30%以上、島状マルテンサイト(martensite−austnite constituent;MA)が面積率で1%未満で構成されることを特徴とする溶接熱影響部の靱性が優れた溶接構造物用鋼。 - 前記鋼が、さらに、質量%で、
Cr:0.80%以下、
Mo:0.30%以下、
B:0.0003〜0.0030%、
の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の溶接熱影響部の靱性が優れた溶接構造物用鋼。 - 請求項1または2に記載の化学成分を有する鋳片を、連続鋳造法により鋳造し、該鋳片を1250℃以下の温度に再加熱後、未再結晶温度域において累積圧下率で40%以上の熱間圧延をし、850℃以上で熱間圧延を完了させた後、800℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で400℃以下まで冷却することを特徴とする溶接熱影響部の靱性が優れた溶接構造物用鋼の製造方法。
- 前記冷却後、さらに400〜650℃で焼戻し処理を施すことを特徴とする請求項3記載の溶接熱影響部の靱性が優れた溶接構造物用鋼の製造方法。
- 請求項1または2に記載の溶接構造溶鋼を、入熱が30kJ/mm以上の超大入熱で溶接することを特徴とする溶接鋼構造物の製造方法。
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