JP5659949B2 - 溶接熱影響部の靱性に優れた厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、建築物、橋梁、船舶、及び、海洋構造物などの大型構造物に使用される厚鋼板であって、主に450〜620MPaの強度を有し、かつ、入熱量が200kJ/cm以上の超大入熱溶接に対する適用も可能な溶接熱影響部靭性を改善した厚鋼板およびその製造方法に関する。
ここで、入熱量が50kJ/cm以上の溶接を大入熱溶接、特に、200kJ/cm以上の溶接を超大入熱溶接、50kJ/cm未満の溶接を小入熱溶接と定義する。
建築物、橋梁、船舶、及び、海洋構造物などの大型構造物に使用される厚鋼板の中で、溶接作業性を高めるために、エレクトロスラグ溶接、エレクトロガスアーク溶接などの大入熱溶接が適用されている。安全性の向上のために、継手靭性の保証温度が厳格化されたことにより、大入熱溶接での継手靭性の確保が困難となっている。
従来、建築物、橋梁、船舶、及び、海洋構造物などの大型構造物に使用される厚鋼板の強度と靭性を確保する技術としてTMCP法(Thermo−Mechanical Control Process)が知られており、こうした、TMCP技術の開発によって、鋼板の低成分化が進み、HAZ(溶接熱影響部)靭性を改善した厚鋼板も様々、提案されている。
しかしながら、TMCP法によって強度を確保した鋼板に、大入熱溶接を施した場合には、溶接金属(Weld Metal)と母材の界面(ボンド部、フュージョンラインFL)から数mm離れた領域で軟化が生じることがあり、大入熱溶接において、継手強度を確保する事が困難な状況となることがある。HAZでの軟化を抑制するためには、焼入性が確保できるような合金設計を行う必要があるが、そうすると、大入熱溶接時の硬化が著しくなって靭性が確保できないとういう事態を招くという問題がある。
上記の問題点を解決するものとして、鋼中に分散した介在物・析出物を利用して、HAZ組織を制御する技術が知られている。例えば、特許文献1には、鋼中に分散した析出物(TiN、BN)を起点として、オーステナイト粒内からフェライトを析出させ、HAZ組織を微細フェライト化する事によって靭性を改善する方法が示されている。
この様な鋼板において、入熱量が200kJ/cm以上となるとHAZ靭性が著しく劣化するため、目的とする特性が得られないという問題があった。これを解決する手法として、Ni等の合金元素の添加により継手強度を確保しつつ、HAZ靭性を確保することが可能であることが知られているが、Ni等の合金元素の添加はコストを著しく増加させるため、Ni非添加での特性確保が必要である。但し、スクラップを原料として用いた場合には、Niは不可避的不純物として存在するため、意図的に添加していない場合にも、0.05%以下の含有は認められる。
また、HAZ靭性を改善する手段として特許文献2は、C、Nbの低減と、適量のMoを添加する事が知られているが、本発明の目的とする強度レベルは引張強度が、450以上620MPa未満であり強度レベルが異なっている。さらに、特許文献2の鋼は、極低炭素ベイナイト鋼であり、低CとMo等の合金元素の添加が必須であり、合金コスト増加となるという問題がある。
特開昭58−213855号公報 特開2005−97683号公報
上述した問題点に鑑み、本発明では著しいコスト増加を招くような合金元素の添加なしに、特に超大入熱溶接、更には大入熱溶接、小入熱溶接においてもHAZ靭性に優れ、かつ、引張強度が450〜620MPaの高張力厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく、従来広く用いられている引張強度が450〜620MPaの高張力厚鋼板の超大入熱溶接HAZ靭性を改善するための成分設計指針において綿密な検討を行った。
その結果以下(a)、(b)に述べる知見を得た。
(a)超大入熱HAZ靭性を改善するためには、Nbの低減が有効である。しかしながら、継手強度を確保するために、Nbの添加は必要であり、その効果を得るために、0.001%〜0.004%とすることが有効である。
(b)大入熱溶接HAZ靭性を改善する手段として、オーステナイト粒内からフェライトを析出させ、HAZ組織を微細フェライト化する手法が知られているが、その効果を得るために、B添加をすることにより、BN等のフェライト生成核を増加させ、粒界にBを析出させる事により、粒内からのフェライトの生成をより促進することで、HAZ組織の微細化が可能である。
本発明は上記知見に基づいて完成したもので、その発明の要旨は次の通りである。
(1) 鋼の化学成分が、質量%で、
C :0.08〜0.14%、
Si:0.02〜0.30%、
Mn:1.00〜1.60%、
Al:0.001〜0.030%、
P :0.025%以下、
S :0.015%以下、
Ti:0.005〜0.015%、
Nb:0.001〜0.004%、
N :0.0010〜0.0060%、
B :0.0005〜0.0020%、
を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、かつ、下記式(1)で示される炭素当量Ceqが、0.32≦Ceq≦0.38であることを特徴とする、溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板。
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15・・・(1)
(2) 鋼の化学成分が、さらに、質量%で、
Cu:1.00%以下、
Cr:0.10%以下、
Mo:0.10%以下、
V :0.10%以下、
W :0.10%以下、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板。
(3) 鋼の化学成分が、さらに、質量%で
Ca:0.0020%以下、
Mg:0.0020%以下、
の1種又は2種を含有することを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかを満足する化学成分を有する鋼スラブをAc3変態点以上、1250℃以下の温度に加熱し、950℃以下での累積圧下率が30%以上の圧延を行った後、5℃/sec以上の冷却速度で200〜650℃の温度まで冷却することを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板の製造方法。
(5)上記(1)〜(3)のいずれかを満足する化学成分を有する鋼スラブをAc3変態点以上、1250℃以下の温度に加熱し、950℃以下での累積圧下率が30%以上の圧延を行った後、5℃/sec以上の冷却速度で室温〜650℃の温度まで冷却し、その後、500〜650℃以下の温度で焼き戻しすることを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板の製造方法。
本発明の厚鋼板は、溶接条件に制約されることなく溶接熱影響部の靭性、及び、強度を優れたものとすることができ、そして、その厚鋼板の製造方法では、生産性の低下を招いたり、成分コストを著しく増加させることなく、また、製造上の制約なしに、安定して製造する事が可能となるという顕著な効果を奏する。
超大入熱溶接の継手強度とNb量(質量%)の関係を示した図である。 超大入熱溶接の継手シャルピー(−20℃、FLの値)とNb量(質量%)の関係を示した図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者は、引張強度が450〜620MPaの高張力厚鋼板について、著しいコスト増加を招くような合金元素の添加なしに、超大入熱溶接のHAZ靭性を向上させることについて鋭意研究をした。
その結果、比較的安価なNbとBの添加量によって、HAZ靭性が特段によくなることを見出した。その試験結果について説明する。
図1は、継手靭性におよぼすNb添加量の影響を調査したものである。添加成分は、C:0.08〜0.12%、Si:0.20〜0.30%、Mn:1.30〜1.60%、Al:0.020〜0.030%、P:0.025%以下、S:0.015%以下、Ti:0.005〜0.010%、N:0.0020〜0.0040%、B:0.0005〜0.0010%、Ceq:0.32〜0.36%に固定し、Nb添加量を種々変化させ、継手靭性値(FL-20℃)を調査した。その結果、Nb添加量を0.001%〜0.004%にすることにより、超大入熱の継手靭性(FL-20℃)は著しく向上した。このため、超大入熱溶接を実施した際、継手靭性はNbを0.005%以上含有させると、シャルピー値は急激に悪化するため、0.004%以下とする事が必要であることが分かった。
図2は、継手強度におよぼすNb添加量の影響を調査したものである。添加成分は、C:0.08〜0.12%、Si:0.20〜0.30%、Mn:1.30〜1.60%、Al:0.020〜0.030%、P:0.025%以下、S:0.015%以下、Ti:0.005〜0.010%、N:0.0020〜0.0040%、B:0.0005〜0.0010%、Ceq:0.32〜0.36%に固定し、Nb添加量を種々変化させ、継手強度を調査した。上記成分範囲で、Nbを0.001%以上添加する事により継手強度は、目的とする450〜620MPaを満足した。このため、継手強度を満足するためにはNbを0.001%以上含有させる事が必要であることが分かった。
また、B添加をすることにより、BN等のフェライト生成核を増加させ、粒界にBを析出させる事により、粒内からのフェライトの生成をより促進することで、HAZ組織の微細化が可能で、大入熱溶接HAZ靭性を改善できるものと推定される。
本発明では、これらの試験結果に基づいて、溶接熱影響部の靭性に優れた引張強度が450〜620MPaの高張力厚鋼板の成分設計を行なったもので、成分限定理由は以下の通りである。ここで、成分についての「%」は、質量%を意味する。
(C:0.08%〜0.14%)
Cは鋼材の強度確保の為に有用な元素であるが、この効果を有効に発揮させるためには、0.08%以上含有させる必要がある。過剰に添加すると母材、及び、溶接部の靭性の劣化を招くため上限を0.14%とする。好ましくは0.09〜0.12%とする。
(Si:0.02〜0.30%)
Siは脱酸に必要な元素であるが、その効果を有効に発揮させるためには、0.02%以上含有する必要がある。過剰に添加すると、溶接部の靭性の劣化を招くため上限を0.30%とする。好ましくは0.10〜0.20%とする。好ましくは0.10〜0.20%とする。
(Mn:1.00〜1.60%)
Mnは強度と母材靭性の向上を目的として添加するが、こうした効果を有効に発揮させるためには、1.00%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に添加すると、溶接部の靭性を劣化させるため上限を1.60%とする。好ましくは1.20〜1.50%とする。
(Al:0.001〜0.030%)
AlはSiと同様、脱酸の為に必要であり、結晶粒を微細化して靭性向上に寄与するが、その効果を有効に発揮させるためには、0.001%以上含有する事が必要である。過剰に添加すると靭性劣化を生じるため、上限を0.030%とする。好ましくは0.005〜0.020%とする。
(P:0.025%以下)
Pは、鋼中では不可避不純物として存在する元素であり、0.025%を超えて多量に含有させると、母材靭性、及び、溶接部靭性を低下させるため、上限を0.025%とする。好ましくは0.020%以下とする。
(S:0.015%以下)
Sは鋼中に硫化物として存在する元素であり、0.015%を超えて含有すると溶接部の靭性を低下させるため、上限を0.015%とする。好ましくは、0.010%以下とする。
(Ti:0.005〜0.015%)
Tiは鋼中にTiNとして微細分散する事により、継手靭性を改善する。その効果は、Ti0.005%以上で効果があるが、過剰にTiを添加すると、継手靭性の劣化を招くので上限を0.015%とする。好ましくは0.007〜0.012%とする。
(N:0.0010〜0.0060%)
Nは、TiNとして鋼中に微細分散する事により、継手靭性を改善する。添加量は、0.0010%以上で効果があるが、添加しすぎると、微細分散した粒子の粗大化を招くため上限を0.0060%とする。好ましくは、0.0020〜0.0040%とする。
(Nb:0.001〜0.004%)
Nbの低減は本発明の特徴の一つである。継手強度確保に有効な元素であるため、下限を0.001%とする。但し、溶接部の硬化による、HAZ靭性の低下を引き起こすため上限を0.004%とする。
(B:0.0005〜0.0020%)
Bは溶接熱影響部でTiNの溶解によるNをBNとして固定し、溶接部靭性の劣化を抑制する。更に、粒界に固溶Bを偏析させることにより、粒内からのフェライト変態を促進し、HAZ部の組織を微細化する。固溶Bを確保し、粒界に偏析させるためには、0.0005%以上添加する事が必要であり、0.0020%以上添加してもその効果は飽和するため上限を0.0020%とする。好ましくは0.0010〜0.0015%とする。
以上、基本成分について説明したが、本発明ではその他にも、鋼のHAZ靭性を劣化させることなく、強度を改善する成分として、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Cu:1.00%以下(0を含まない)、Cr:0.10%以下(0を含まない)、Mo:0.10%以下(0を含まない)、V:0.10%以下(0を含まない)、W:0.10%以下(0を含まない)のうちから選んだ、1種、または、2種以上を含有させることができる。
Cu、Cr、Mo、V、及び、Wはいずれも、主に固溶強化によって強度を上昇させる元素であり、必要に応じて添加する。しかしながら、目的とする、強度レベルが450MPa〜620MPaであることから、積極的に含む必要はなく、夫々の上限を超えると溶接性が低下し、また合金添加コストが増加するので、それぞれ上記の範囲で添加させるのが好ましい。更に上限を超えて添加することにより、島状マルテンサイト(MA)の生成が認められるため、HAZ靭性の低下に繋がる事が懸念される。
(Ca:0.0020%以下、Mg:0.0020%以下の1種又は2種)
Ca、Mgは、酸化物、硫化物を形成して、鋼中に分散して、ピンニング効果によってHAZのオーステナイト粒径を微細化する効果があるが、0.0020%を超えて添加することにより、酸化物、硫化物が粗大化し、HAZ靭性を低下させるため、夫々の上限を0.0020%とする。
(炭素当量Ceq:0.32〜0.38)
炭素当量Ceqは母材強度、継手強度を確保するために有効であり、目的とする母材強度、継手強度を満足するために下限を0.32とする。但し、0.38を超えると継手靭性の著しい劣化を招くので炭素当量Ceqの範囲を0.32〜0.38とする。
なお、炭素当量Ceqは、公知の下記式(1)にしたがって求めたものである。
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15・・・(1)
上記式中に記載の成分元素は、鋼板中に添加して含有されている各成分の質量%であり、添加されていない成分元素は0%としたが、Niは不可避元素の質量%である。
本発明は、引張強さが450MPa以上で、超大入熱HAZ靭性に優れた高張力鋼を対象にしているが、入熱量が小さい鋼板においても同じく優れた特性を得る事が可能である。
なお、本発明における厚鋼板とは、板厚が10mm以上を対象とするが、50mm以下であることが好ましい。また、溶接熱影響部の靭性に優れたとは、vTrsが−40℃を満足し、更に継手特性は、継手引張強度450MPa以上を有し、継手靭性は−20℃におけるシャルピー吸収エネルギーが100J以上を満足するものを意味する。
本発明の厚鋼板の製造方法は、上記範囲に調整した成分の溶鋼を、転炉等の方法で溶製した後、連続鋳造等により鋳造して製造すればよい。その後、加熱炉にて加熱し、粗圧延機により粗圧延し、仕上げ圧延機により仕上げ圧延し、冷却設備により冷却すればよい。HAZ靭性は、一旦造り込んだ組織においても、溶接により高温とすることで組織がリセットされるため、製造条件は、その時に目的とする母材強度、母材靭性レベルにより、適宜変更すればよく好ましい条件は以下とする。
(加熱温度:Ac3変態点〜1250℃)
圧延前の組織を均一な整粒オーステナイと組織にするためには、Ac3変態点(例えば950℃)以上とする事が好ましく、加熱温度が1250℃を超えると組織が著しく粗大化するため、加熱温度はAc3変態点〜1250℃の範囲が好ましい。
(950℃以下での累積圧下率:30%以上)
950℃以下(オーステナイト未再結晶域)で十分な圧下率の圧延を施すことは、低Nbの条件下で、組織の粗大化による、母材靭性劣化を抑制するために、重要である。そのためには、オーステナイト未再結晶域における累積圧下率は少なくとも30%以上、望ましくは50%以上が好ましい。累積圧下率の上限は特に限定するものではないが、95%を上限とするのが現実的である。なお、本発明のオーステナイト未再結晶温度域は、概ね700〜950℃の範囲である。
なお、本発明による、圧延終了温度は、650〜850℃が好ましい。それは、850℃を超えると母材靭性の劣化を招くこととなり、650℃未満に低くなると、変態点を割るために、生成したフェライト、又は、ベイナイトが加工される結果、靭性の低下や異方性の増大といった問題が生じる。そのため、圧延終了温度は650〜850℃が好ましい。
また、圧延後の冷却開始温度は、特段温度待ちをさせる必要はなく、圧延終了後速やかに冷却開始する事が好ましい。特に、目的とする強度レベルに合わせて開始温度は決定するが好ましくは600〜850℃とする。
(冷却速度5℃/sec以上、冷却停止温度:200〜650℃)
冷却停止温度は、目標とする強度レベルに応じて変更すればよいが、強度確保の効果を十分に発揮させるためには5℃/sec以上の冷却速度で650℃以下とする事が好ましい。なお、冷却速度の上限は特に限定するものではないが500℃/secとすることがさらに好ましい。冷却停止温度が200℃未満となると、ベイナイト−ラス間に島状マルテンサイト(MA相)を形成し、母材靭性が著しく低下するため、冷却速度5℃/sec以上での冷却停止温度の下限は200℃とする。
(冷却速度5℃/sec以上、冷却停止温度:室温〜650℃、焼き戻し温度:500〜600℃)
冷却停止温度は、目標とする強度レベルに応じて変更すればよいが、強度確保の効果を十分に発揮させるためには5℃/sec以上の冷却速度で650℃以下〜室温(焼き戻し処理をする場合)とすることが好ましい。なお、冷却速度の上限は特に限定するものではないが500℃/secとすることがさらに好ましい。上記した冷却処理の後、更に焼き戻し処理を施す。この焼き戻し処理は、冷却時に生成した島状マルテンサイト(MA相)の分解、または、ベイナイトの強度、靭性の調整により、靭性を向上させるために施すものであるが、処理温度が500℃に満たないと上記効果が認められず、一方650℃を超えると強度が著しく低下してしまうので、焼き戻し温度は500〜650℃とする事が好ましい。
上記の工程により、引張強さが450〜620MPaであり、超大入熱HAZ靭性に優れた厚鋼板を得る事できる。この時、加熱条件、圧延条件、冷却条件は、目的とする、強度、靭性レベルに合わせて調整する事が好ましい。
以下、実施例に基づいて本発明の効果を説明する。
表1に示す種々の成分組成からなる溶鋼を、真空溶解炉で溶製し、小型鋼塊に鋳造した。その後、表2に示す条件で、加熱処理、圧延処理、及び、冷却処理を施して、板厚20〜50mmの厚鋼板とした。
こうして得られた厚鋼板の母材特性について調査した結果を表3に示す。また、併せて、表3に超大入熱1パス継手溶接、及び、多層盛りCO2継手溶接を行ったときの、溶接熱影響部(HAZ)の靭性について調査した結果を示す(3本試験した中のmin値、FL-20℃)。
表3に示すように、発明鋼(No.1〜12)は、いずれも母材強度450〜620MPaを有し、また、vTrsが−40℃を満足する。更に継手特性は、継手引張強度450MPa以上を有し、継手靭性は−20℃におけるシャルピー吸収エネルギーが100J以上と極めて良好な結果が得られた。
これに対して、表1に示すように比較鋼No.13〜28は、本発明の成分範囲の要件を満たしておらず、比較鋼No.29、30は、本発明の炭素当量Ceqの範囲外である。本発明鋼と比較鋼とを対比すると、表3に示すように、母材特性の靭性(vTrs)については、比較鋼No.14、20、22、30が劣っていて、太径EGW溶接継手特性の継手引張強さ(MPa)については、比較鋼No.13、22、30が劣り、太径EGW溶接継手特性のHZA靭性FLについては、比較鋼No.14〜21、23〜30が劣っていた。さらに、多層盛りCO2溶接継手特性については、比較鋼No.16、18、25が劣っていた。
以上の実施例に示すように、本発明によれば、著しいコスト増加を招くような合金元素の添加なしに、特に超大入熱継手溶接や多層盛りCO2継手溶接においてもHAZ靭性に優れ、かつ、引張強度が450〜620MPaの高張力厚鋼板を得ることができた。
Figure 0005659949
Figure 0005659949
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Claims (5)

  1. 鋼の化学成分が、質量%で、
    C :0.08〜0.14%、
    Si:0.02〜0.30%、
    Mn:1.00〜1.60%、
    Al:0.001〜0.030%、
    P :0.025%以下、
    S :0.015%以下、
    Ti:0.005〜0.015%、
    Nb:0.001〜0.004%、
    N :0.0010〜0.0060%、
    B :0.0005〜0.0020%、
    を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、かつ、下記式(1)で示される炭素当量Ceqが、0.32≦Ceq≦0.38であることを特徴とする、溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板。
    Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15・・・(1)
  2. 鋼の化学成分が、さらに、質量%で、
    Cu:1.00%以下、
    Cr:0.10%以下、
    Mo:0.10%以下、
    V :0.10%以下、
    W :0.10%以下、
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板。
  3. 鋼の化学成分が、さらに、質量%で
    Ca:0.0020%以下、
    Mg:0.0020%以下、
    の1種又は2種を含有することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれかを満足する化学成分を有する鋼スラブをAc3変態点以上、1250℃以下の温度に加熱し、950℃以下での累積圧下率が30%以上の圧延を行った後、5℃/sec以上の冷却速度で200〜650℃の温度まで冷却することを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかを満足する化学成分を有する鋼スラブをAc3変態点以上、1250℃以下の温度に加熱し、950℃以下での累積圧下率が30%以上の圧延を行った後、5℃/sec以上の冷却速度で室温〜650℃の温度まで冷却し、その後、500〜650℃の温度で焼き戻しすることを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板の製造方法。
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