JP5958428B2 - 大入熱溶接用鋼板の製造方法 - Google Patents

大入熱溶接用鋼板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5958428B2
JP5958428B2 JP2013146146A JP2013146146A JP5958428B2 JP 5958428 B2 JP5958428 B2 JP 5958428B2 JP 2013146146 A JP2013146146 A JP 2013146146A JP 2013146146 A JP2013146146 A JP 2013146146A JP 5958428 B2 JP5958428 B2 JP 5958428B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
heat input
steel
cooling
high heat
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013146146A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014043642A (ja
Inventor
善明 村上
善明 村上
長谷 和邦
和邦 長谷
三田尾 眞司
眞司 三田尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2013146146A priority Critical patent/JP5958428B2/ja
Publication of JP2014043642A publication Critical patent/JP2014043642A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5958428B2 publication Critical patent/JP5958428B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

本発明は、本発明は、船舶、海洋構造物、建築、鋼管分野などの各種鋼構造物に使用される厚鋼板であり、特に大入熱溶接に適した厚鋼板の製造方法として好適なものに関する。
船舶、海洋構造物、建築、鋼管等の分野で使用される鋼構造物は、溶接接合により所望の形状の構造物に仕上げられるのが一般的である。したがって、これらの構造物は、安全性を確保する観点から、使用される鋼材の母材特性、すなわち強度、靱性の確保に加えて、溶接部の靱性にも優れていることが要請されている。
さらに、近年では、上記船舶や鋼構造物はますます大型化し、使用される鋼材も高強度化や厚肉化が積極的に進められている。それに伴い、溶接施工には、サブマージアーク溶接やエレクトロガス溶接、エレクトロスラグ溶接などの高能率で大入熱の溶接方法が適用されるようになってきており、大入熱溶接によって溶接施工した場合においても、溶接部の靱性に優れる鋼材が必要となってきている。
しかしながら、上述した鋼材、特に高強度鋼板、あるいは厚肉鋼板においては、母材の機械的特性(特に低温靱性)と溶接熱影響部(以下、熱影響部のことをHAZと記載する。)の低温靱性の両立が困難である、という事例がしばしば散見される。厚鋼板母材の低温靱性は一般的に鋼板の強度、板厚の増加とともに低下する傾向があるため、例えば特許文献1および特許文献2に記載のように、制御圧延や制御冷却方法で解決しようとする技術が開示されている。また、特許文献3には、直接焼き入れ−焼き戻し技術を適用するなどの方策により、鋼板の結晶組織を微細化させて低温靱性を確保する工夫が開示されている。
一方、大入熱溶接により形成されるHAZは上述した各種制御圧延・冷却プロセスによる結晶粒微細化効果が消失してしまうために、製造工程依存のない、化学成分調整により低温靱性の確保を図る必要がある。中でも広く知られている対策として、溶接中の高温域で比較的安定なTiNを鋼中に微細分散させることによりオーステナイト粒の粗大化を抑制する技術や、その他では例えば特許文献4に記載のように、より高温で安定なTi酸化物を分散させる技術等が開示されている。しかしながらTiN単独のオーステナイト粒微細化効果は溶接部溶融線に近接した、鋼の融点に近い箇所では溶解してしまうために固溶Nの増大をまねき低温靱性を著しく低下させるという課題があり、一方、Ti酸化物を活用する技術は、所定の酸化物を微細に、且つ鋼板に均一に分散させることが困難であるという課題がある。
上記課題に対応するための他の技術として、特許文献5には、鋼中に適量のBを添加させることにより、低温靱性の低下を防ぐ方法が開示されている。Bは窒化物形成元素であり、且つ、特に高温域での拡散速度が速いため、溶接時の冷却途上で低温靱性に悪影響をおよぼす固溶Nを窒化物として固定するためにHAZの高靱性化を達成することが出来る。
特開昭57−134518号公報 特開昭59−83722号公報 特開昭63−223125号公報 特開昭57−051243号公報 特開2005−2476号公報
しかし、Bは母材製造過程の制御圧延および冷却の各段階で、製造条件によっては窒化物を形成する場合がある。B窒化物は比較的高いフェライト生成能を有することが知られており、高強度、厚肉材のように比較的高い鋼板強度を必要とする場合、上記の特許文献に開示された制御圧延・冷却条件では窒化物の形成を制御出来ない場合があることが課題となっている。
既述したように、特に靱性の低下する大入熱溶接部のHAZでの靱性確保を意図したTi、B複合添加組成に対して、従来の厚板製造プロセスを用いた厚肉高強度、高靱性鋼板の安定的な製造には限界があり、更なる合金成分の改良や、制御圧延・冷却条件の改良が望まれている。本発明は、大入熱溶接部の低温靱性を確保しつつ、且つ、厚肉高強度鋼板としての安定的な低温靱性を両立させるための鋼板の製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するため、鋼板製造時の制御圧延・制御冷却中の熱履歴と、大入熱溶接時に鋼板に付与される熱履歴の差異に着目して鋭意検討を行った。その結果、高強度厚肉鋼板の大入熱溶接部のHAZ対策(HAZの良好な靱性を得るための対策)としての成分設計の適正化に加え、鋼板製造過程において、初めにオーステナイト再結晶温度域圧延を実施した後にオーステナイト未再結晶温度域まで加速冷却し、引き続きオーステナイト未再結晶温度域圧延を行い、その後再度加速冷却を実施することにより、優れた鋼板母材の強度、低温靱性が得られることを見出した。
すなわち、大入熱溶接部のHAZ対策として活用するB窒化物を、大入熱溶接熱履歴が付与された場合には積極的に析出させ、一方で鋼板製造時にはB窒化物の析出温度域であるオーステナイト再結晶温度域からオーステナイト未再結晶温度域を加速冷却させることによりB窒化物の析出を可能な限り防止し、以降のオーステナイト未再結晶域圧延工程、当該圧延工程終了後の二段階目の加速冷却工程で鋼板母材として優れた強度、低温靱性が得られるとの知見を得た。本発明の要旨は以下の通りである。
第一の発明は、質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.01〜0.10%、Mn:1.2〜2.5%、P:0.008%以下、S:0.0005〜0.0040%、Al:0.005〜0.1%、Nb:0.003〜0.04%、Ti:0.003〜0.04%、N:0.003〜0.01%、B:0.0003〜0.003%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ、下記(1)式で表される炭素当量Ceqが0.33〜0.45の範囲となるよう含有した鋼素材を、1000℃以上に加熱し、オーステナイト再結晶温度域において圧延後、オーステナイト未再結晶温度域まで空冷より大きい冷却速度で第1の加速冷却を実施し、引き続いてオーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率40%以上の圧延を実施した後、Ar変態点以上の温度から600℃以下の温度域に第2の加速冷却を実施する工程を有する大入熱溶接用鋼板の製造方法である。
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ・・・(1)
ただし、上式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を示し、含有していない元素は0とする。
第二の発明は、さらに、質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:0.5%以下およびV:0.1%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする第一の発明に記載の大入熱溶接用鋼板の製造方法である。
第三の発明は、さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%、Zr:0.001〜0.02%およびREM:0.001〜0.02%、の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする、第一の発明または第二の発明に記載の大入熱溶接用鋼板の製造方法である。
第四の発明は、前記第2の加速冷却をする工程の後、さらに、Ac変態点以下の温度域に焼き戻す工程を有することを特徴とする第一の発明〜第三の発明のいずれか一つに記載の大入熱溶接用鋼板の製造方法である。
本発明によれば、特定組成の鋼を素材として、オーステナイト再結晶域において圧延し、これに続きオーステナイト未再結晶温度域までの第1の加速冷却を実施し、その後オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率40%以上の圧延を行い、その後600℃以下の温度域に第2の加速冷却を行うことにより、優れた大入熱溶接HAZの低温靱性と、鋼板自体の優れた低温靱性の両者を具備した大入熱溶接用鋼板が得られ、産業上極めて有用である。
以下に本発明を実施するための形態について説明する。まず、本発明の構成要件の限定理由について説明する。本発明で対象とする厚鋼板とは、熱間圧延で製造される20mm以上の板厚を有する鋼板をいう。本発明において、大入熱溶接とは、300kJ/cm以上の溶接入熱量の溶接をいう。
1.成分組成
以下に成分組成の限定理由を説明する。なお、成分組成を示す単位は、全て質量%とする。
C:0.03〜0.08%
Cは、鋼材の強度を高める元素であり、構造用鋼として必要な強度を確保するためには、0.03%以上の添加が必要である。一方、0.08%を超えると、大入熱溶接HAZ中に島状マルテンサイトが生成し易くなるため、上限は0.08%とする。好ましくは、0.04〜0.07%の範囲である。
Si:0.01〜0.1%
Siは、鋼を溶製する際の脱酸剤として添加される元素であり、0.01%以上の添加が必要である。しかし、0.1%を超えると、大入熱溶接HAZ中に島状マルテンサイトが生成し、靱性の低下を招きやすくなる。よって、Siは0.01〜0.1%の範囲とする。
Mn:1.2〜2.5%
MnはCと同様に、鋼板母材の強度を高める元素であり、また他の合金成分に比較して安価であることから、積極的な添加が有効であるが、2.5%を超えると焼入性が過剰となり、母材靱性が低下するとともに溶接性を損なう問題がある。従ってMn量は1.2〜2.5%とする。好ましくは1.5%〜2.2%の範囲である。
P:0.008%以下
Pは不純物として鋼中に含有される元素の一つであるが、鋼板母材および、大入熱溶接HAZの靱性を低下させるため、素材溶製時の経済性を考慮した上で可能な範囲で低減することが好ましい。このため、P量は0.008%以下とする。
S:0.0005〜0.0040%
SはPと同様不純物として鋼中に含有される元素の一つであるが、Pと異なり、MnSやCaS、REM−Sなどの硫化物として存在した場合にフェライトの生成核となり、大入熱溶接HAZの靱性を向上させる効果がある。この効果は0.0005%以上の添加で有効である。一方で過剰の添加は多量の硫化物生成を招き、母材靱性の低下を引き起こす。従って、S量は0.0005〜0.0040%の範囲とする。
Al:0.005〜0.1%
Alは、鋼の脱酸のために添加される元素であり、0.005%以上含有させる必要がある。一方で、0.1%を超えて添加すると、介在物量が過剰となり、母材の靱性を低下させる。従って、Alは0.005〜0.1%の範囲とする。好ましくは0.01〜0.06%とする。
Nb:0.003〜0.04%
Nbは、添加により未再結晶温度域を拡大させる効果を有し、鋼板母材の強度靱性を確保するのに有効な元素である。しかし、0.003%未満の添加では上記効果が小さく、一方で0.04%を超えて添加すると、大入熱溶接HAZに島状マルテンサイトが生成しやすくなり、靱性を低下させる。このため、Nbは0.003〜0.04%の範囲とする。好ましくは、0.005〜0.025%の範囲である。
Ti:0.003〜0.04%
Tiは、凝固時にTiNとして析出し、特に大入熱溶接HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制し、且つ、フェライトの変態核となるなど、大入熱HAZの高靭化に極めて有用な元素である。この効果を得るためには、0.003%以上の添加が必要である。一方で、0.04%を超えて添加すると、析出したTiNが粗大化し、上記効果が得られにくくなる。よって、Tiは、0.003〜0.04%の範囲とする。好ましくは、0.005〜0.025%の範囲である。
N:0.003〜0.01%
Nは、上述したTiNの生成、また、後述するB窒化物の形成に必要な元素であり、本発明において最も重要な元素の一つである。大入熱溶接HAZにおいて、これらの窒化物を生成させ、靱性向上に有効に寄与させるためには、0.003%以上含有させる必要がある。一方で、0.01%を超えて添加すると、溶接入熱条件によってはTiNが溶解する領域における固溶N量が増加し、却って溶接部の靱性を低下させる場合がある。従って、Nは、0.003〜0.01%の範囲とする。好ましくは、0.004〜0.007%の範囲である。
B:0.0003〜0.003%
Bは固溶状態で存在する場合は、粒界に偏在して焼入性を確保し、母材強度の確保に寄与し、B窒化物として存在する場合は、フェライト核として作用し、大入熱溶接HAZの靱性を高める2つの効果がある。従って、Bは、本発明で最も重要な元素の一つである。しかし、Bの含有量が0.0003%未満では前者の効果が得られず、また、0.003%を超えて添加するとB窒化物を上回る固溶Bが多量に存在することになり、逆に大入熱溶接HAZの靱性低下を引き起こす。従って、Bは0.0003〜0.003%の範囲とする。
炭素当量Ceq:0.33〜0.45
本発明の鋼材は、上記成分が、上記組成範囲を満たして含有していることに加えて、下記(1)式で表される炭素当量Ceqが0.33〜0.45の範囲であることが必要である。
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ・・・(1)
ただし、上記式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を示し、含有していない元素は0とする。
炭素当量Ceqが0.33未満では、制御圧延・加速冷却条件を調整した場合においても必要な母材強度が得られない。一方、炭素等量Ceqが0.45を超えると、大入熱溶接HAZに生成する島状マルテンサイトの量が極めて多くなり、靭性低下を引き起こす。このため、炭素等量Ceqは、0.33〜0.45に規定する。また、好ましくは0.35〜0.42の範囲である。
本発明の基本成分組成は以上であるが、更に所望の特性を向上させる場合は、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Ca、Zr、REMの中から選ばれる1種以上を選択元素として添加することができる。
Cu:1.0%以下
Cuは強度を増加させるために添加することができる元素であるが、1.0%を超えて添加すると、熱間脆性により鋼板母材表面の性状を劣化させることがあるため、添加する場合は、その量は1.0%以下の範囲とすることが好ましい。
Ni:1.0%以下
Niは母材の強度を増加させつつ靭性も向上させることが可能な元素である。1.0%を超えて添加した場合、効果が飽和するとともに経済的に不利となることがあるため、添加する場合は、その量は1.0%以下の範囲とすることが好ましい。
Cr:1.0%以下
Crは強度を増加させるために有効な元素であるが、1.0%を超えて添加すると、母材靭性を劣化させることがあるため、添加する場合は、その量は1.0%以下の範囲とすることが好ましい。
Mo:0.5%以下
Moは母材強度を増加するのに有効な元素であるが、0.5%を超えて添加すると、著しく靭性を劣化させるとともに経済性を損なうため、添加する場合は、その量は0.5%以下の範囲とすることが好ましい。
V:0.1%以下
Vは母材強度を増加するのに有効な元素であるが、0.1%を超えて添加すると、著しく靭性を劣化させるため、添加する場合は、その量は0.1%以下の範囲とすることが好ましい。
Ca:0.0005〜0.005%、Zr:0.001〜0.02%およびREM:0.001〜0.02%の中から選ばれる1種以上を含有
Ca、Zr、REMは鋼中のSを固定して鋼板の靭性を向上させる効果があり、強い硫化物形成元素であるCaは0.0005%以上で、また、ZrおよびREMに関しては0.001%以上の添加でそれぞれ効果がある。しかしながら、それぞれの量が0.005%、0.02%、0.02%を超えて添加すると鋼中の介在物量が増加し靭性をかえって劣化させる場合がある。従って、これらの元素を添加する場合は、Caは0.0005〜0.005%、Zrは0.001〜0.02%、REMは0.001〜0.02%の範囲とすることが好ましい。
なお、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
2.製造条件
上記した成分構成を有する鋼を、転炉あるいは電気炉等の常法の溶製手法を用いて溶製し、連続鋳造法あるいは造塊法等の常法の工程により、鋼板製造のためのスラブ素材とすることが好ましい。以下、本発明で規定するところの、鋼板製造条件の限定理由に関して説明する。
加熱温度:1000℃以上
鋳造後のスラブは、室温まで冷却した後、あるいは可能であれば高温の状態のままで、加熱炉に装入し、その加熱温度を1000℃以上に規定する。この加熱温度は本発明の成分規定のうち、主にNb炭窒化物を溶解せしめ、固溶Nbを十分に確保する観点から下限を1000℃とした。また、加熱温度の上限は特に規定しないが、あまりに高温の場合、加熱時のオーステナイト粒の粗大化が起こり母材靱性に悪影響を及ぼすため、通常は1250℃以下、望ましくは1200℃以下であることが好ましい。
オーステナイト再結晶温度域における圧延
オーステナイト再結晶温度域における圧延は、加熱時のオーステナイト粒をある程度微細化するために必要であり、最低1パス以上、好ましくは累積圧下率20%以上行うのが望ましい。上記成分範囲の鋼であれば、オーステナイト再結晶温度域の下限温度は概ね900〜1000℃の範囲にある。
オーステナイト再結晶温度域からオーステナイト未再結晶温度域までの第1の加速冷却
本工程は、本発明の中で最も重要な項目の一つである。上述したように、本発明では大入熱溶接HAZの靱性を向上させるための施策としてTiNによる粒径微細化と、B窒化物の形成によるフェライト変態促進効果を適用しているが、鋼板製造の熱履歴過程において、特にB窒化物が大量に生成した場合、鋼板の焼入性を確保するための固溶Bが消失し、一方で析出したB窒化物からフェライト核生成が生じやすくなることから、鋼板の圧延組織に占めるフェライト分率が増加し、所定の強度が得られなくなる場合がある。
従って、鋼板製造時の冷却過程においては、B窒化物が生成する温度域である、オーステナイト再結晶温度域からオーステナイト未再結晶温度域までの冷却速度を、可能な限り速くすることが必要である。通常この工程は熱間圧延の温度低下待機時間として空冷されるが、本発明においては、空冷より大きい冷却速度を有する加速冷却を実施することにより、次工程である制御圧延工程に短時間で移行させることとする。
本発明においては、後述のオーステナイト未再結晶温度域における圧延に続く加速冷却と区別するため、オーステナイト再結晶温度域において圧延後、オーステナイト未再結晶温度域まで空冷より大きい冷却速度で実施する加速冷却を第1の加速冷却と称する。この第1の加速冷却においては、水冷による加速冷却設備、あるいは圧延中に鋼板表面に発生する酸化物スケールを除去する、いわゆるデスケ設備等により、空冷より大きい冷却速度を達成することが必要である。好ましくは、3℃/秒以上の冷却速度とする。
オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率40%以上の圧延
上記加速冷却に引き続き、オーステナイト未再結晶温度域にて制御圧延を行う。この制御圧延はその圧下率が小さい場合、所定の母材靱性を得ることが出来ない。このため、累積圧下率の下限を40%と規定する。また、圧下率は高い方が好ましいが、工業的には80%程度が上限となる場合があるので、好ましくは、50〜80%である。
オーステナイト未再結晶温度域圧延後、Ar変態点以上の温度から600℃以下の温度域に第2の加速冷却をする工程
既述したB窒化物の生成を抑制するための第1の加速冷却とは異なり、本工程の第2の加速冷却をする工程は、制御圧延により加工されたオーステナイト組織を相変態させるための処理を目的とする。
相変態を完了させるためには600℃以下の温度域まで冷却する必要があることから、冷却終了温度の上限を600℃に規定した。第2の加速冷却をする工程の冷却速度は、空冷より大きい速度での冷却速度が必要であり、5℃/sec以上の強冷却が好ましい。さらに好ましくは、10℃/sec以上の強冷却である。冷却方法は特に限定しないが、水冷による冷却が好ましい。
焼戻しの実施
上記の第2の加速冷却をする工程の後、必要に応じて焼戻し処理を行うことができる。焼戻しは、主として、第2の加速冷却により焼入れを行った鋼材に対して、強度・靭性バランスの適正化、残留応力の軽減などの目的で行われ、実施する場合はAc変態点以下の温度で行う。
ここで、本発明における鋼材温度は、鋼材の表面と中心部の平均温度を示している。Ar変態点、Ac変態点は鋼成分によって異なるため、簡易的に下式によって求めることができる。但し、各式において、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を示し、含有されない場合は0とする。
Ar(℃)=910−273C−74Mn−56Ni−16Cr−9Mo−5Cu
Ac(℃)=751−26.6C+17.6Si−11.6Mn−169Al−23Cu−23Ni+24.1Cr+22.5Mo+233Nb−39.7V−5.7Ti−895B
一方、オーステナイト再結晶温度域の下限温度は、鋼組成のほか、結晶粒径や加工履歴や歪量などの影響を受けるが、概ね800〜950℃の範囲にある。詳しくは、事前に予備試験をして調査することにより、前記下限温度を推測することができる。
以下、本発明の効果を実施例により詳細に説明する。
表1に示す組成の鋼を転炉で溶製後、連続鋳造法でスラブ(鋼素材)とし、表2に示す制御圧延、制御冷却条件により40〜80mm厚の鋼板を作製した。なお、表1において、鋼番号1〜12が本発明の範囲内となる発明例であり、鋼番号13〜17は、成分組成のいずれかが本発明の範囲外となる比較例である。また、表2において、鋼番号に続く枝番がAから始まる例は本発明によるところの制御圧延・冷却条件によるものであり、枝番がBから始まる例は第1の加速冷却、オーステナイト再結晶温度域圧延、第2の加速冷却のうちいずれか一つ以上が本発明の範囲外となる比較例である。ここで、第1の加速冷却は、再結晶温度域圧延機の出側に設置した水冷装置により行い、その平均冷却速度が、3℃/秒であることを確認している。
Figure 0005958428
Figure 0005958428
上記組成ならびに製造工程を経て製造された厚鋼板について、板厚方向1/4の位置から平行部直径6mmφの引張試験片を採取して、JIS Z 2241(1998)の規定に準拠して引張試験を実施し、引張強さ(以下TSと記載する)および0.2%耐力(以下YSと記載する)を求めた。なお、本発明はその対象として高強度鋼板を想定しているため、その強度目標は、YS:450N/mm以上とした。
また、板厚方向1/4の位置からJIS Z 2202(1998)の規定に準拠して、Vノッチ標準寸法のシャルピー衝撃試験片を採取して、JIS Z 2242(1998)の規定に準拠して衝撃試験を実施し、破面遷移温度(以下vTrsと記載する)を求めた。
母材靭性の目標値はvTrsで−50℃以下とした。
さらに、大入熱溶接HAZの靭性を評価するため、上記厚鋼板から、幅80mm×長さ80mm×厚み15mmの試験片を採取し、1450℃に加熱後、800〜500℃を400secで冷却する熱処理を付与した後、2mmVノッチシャルピー試験片を採取して、上記と同様にしてシャルピー衝撃試験を行った。なお、この再現熱サイクルは入熱量500kJ/cmの溶接に相当する。衝撃試験温度は−40℃とし、3本の試験の平均値により評価した。溶接部HAZ靭性の目標値は−40℃における吸収エネルギー平均値(以下vE−40℃と記載する)で50J以上とした。そして、母材評価、大入熱HAZ評価は上記した各目標値に達している場合を○、各目標値に達していない場合を×とした。総合評価は全ての目標値を満たす場合を○、何れかの値が目標値に未達の場合を×とした。
表3に、上記の鋼板母材特性ならびに大入熱溶接HAZの靱性評価結果を示す。本発明からなるところの鋼番号1〜12かつ枝番がAで始まる例においては、母材ならびにHAZ特性とも良好な値が得られている。これに対して、鋼番号1〜12かつ枝番がBで始まる例においては、化学成分規定は本発明の範囲内であるため大入熱溶接HAZ特性は満足するものの、製造条件が範囲外であるため母材の特性が劣っている。一方で、鋼番号13〜17においては、枝番がA、Bのいずれから始まるものも、成分範囲が本発明の範囲外であるために、大入熱溶接HAZ部の靱性が劣っている。
Figure 0005958428

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.01〜0.10%、Mn:1.2〜2.5%、P:0.008%以下、S:0.0005〜0.0040%、Al:0.005〜0.1%、Nb:0.003〜0.04%、Ti:0.003〜0.04%、N:0.003〜0.01%、B:0.0003〜0.003%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ、下記(1)式で表される炭素当量Ceqが0.33〜0.45の範囲となるよう含有した鋼素材を、1000℃以上に加熱し、オーステナイト再結晶温度域において圧延後、オーステナイト未再結晶温度域まで冷却速度3℃/秒以上の水冷で第1の加速冷却を実施し、引き続いてオーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率40%以上80%以下の圧延を実施した後、Ar3変態点以上の温度から600℃以下の温度域に冷却速度5℃/秒以上の条件で第2の加速冷却を実施する工程を有する、板厚が40〜80mm、YS:450N/mm 以上の大入熱溶接用鋼板の製造方法。
    Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ・・・(1)
    ただし、上式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を示し、含有していない元素は0とする。
  2. さらに、質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:0.5%以下およびV:0.1%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の大入熱溶接用鋼板の製造方法。
  3. さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%、Zr:0.001〜0.02%およびREM:0.001〜0.02%、の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の大入熱溶接用鋼板の製造方法。
  4. 前記第2の加速冷却をする工程の後、さらに、Ac変態点以下の温度域に焼き戻す工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の大入熱溶接用鋼板の製造方法。
JP2013146146A 2012-07-30 2013-07-12 大入熱溶接用鋼板の製造方法 Active JP5958428B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013146146A JP5958428B2 (ja) 2012-07-30 2013-07-12 大入熱溶接用鋼板の製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012168397 2012-07-30
JP2012168397 2012-07-30
JP2013146146A JP5958428B2 (ja) 2012-07-30 2013-07-12 大入熱溶接用鋼板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014043642A JP2014043642A (ja) 2014-03-13
JP5958428B2 true JP5958428B2 (ja) 2016-08-02

Family

ID=50395115

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013146146A Active JP5958428B2 (ja) 2012-07-30 2013-07-12 大入熱溶接用鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5958428B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111926259A (zh) * 2020-08-20 2020-11-13 钢铁研究总院 一种大线能量焊接用低合金钢及其制备方法

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6128276B2 (ja) * 2014-03-17 2017-05-17 Jfeスチール株式会社 溶接用鋼材
JP6280824B2 (ja) * 2014-06-20 2018-02-14 株式会社神戸製鋼所 高強度鋼板およびその製造方法
CN106574316B (zh) * 2014-07-15 2019-10-01 杰富意钢铁株式会社 大线能量焊接用钢板的制造方法
KR101657828B1 (ko) * 2014-12-24 2016-10-04 주식회사 포스코 Pwht 후 인성이 우수한 고강도 압력용기용 강재 및 그 제조방법
CN110747408B (zh) * 2019-10-15 2022-03-08 江阴兴澄特种钢铁有限公司 一种薄规格asnzs 3678-350l15结构用钢板及其制造方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01275719A (ja) * 1988-04-26 1989-11-06 Sumitomo Metal Ind Ltd 高強度高靭性を有する厚鋼板の製造法
JP4418391B2 (ja) * 2005-03-30 2010-02-17 新日本製鐵株式会社 音響異方性が小さい降伏強さ650MPa以上の高張力鋼板およびその製造方法
JP5439887B2 (ja) * 2008-03-31 2014-03-12 Jfeスチール株式会社 高張力鋼およびその製造方法
JP5348386B2 (ja) * 2008-10-24 2013-11-20 Jfeスチール株式会社 低降伏比かつ耐脆性亀裂発生特性に優れた厚肉高張力鋼板およびその製造方法
JP5342902B2 (ja) * 2009-03-11 2013-11-13 株式会社神戸製鋼所 溶接熱影響部の靭性および母材疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法
CN102428198A (zh) * 2009-05-22 2012-04-25 杰富意钢铁株式会社 大热输入焊接用钢材
JP5477578B2 (ja) * 2010-04-01 2014-04-23 新日鐵住金株式会社 脆性き裂伝播停止特性に優れた厚手高強度鋼板及びその製造方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111926259A (zh) * 2020-08-20 2020-11-13 钢铁研究总院 一种大线能量焊接用低合金钢及其制备方法
CN111926259B (zh) * 2020-08-20 2021-08-03 钢铁研究总院 一种大线能量焊接用低合金钢及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014043642A (ja) 2014-03-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4844687B2 (ja) 低降伏比高強度高靭性鋼板及びその製造方法
JP5604842B2 (ja) 大入熱溶接用鋼材
JP5476763B2 (ja) 延性に優れた高張力鋼板及びその製造方法
JP5532800B2 (ja) 耐歪時効特性に優れた低降伏比高強度高一様伸び鋼板及びその製造方法
JP5958428B2 (ja) 大入熱溶接用鋼板の製造方法
JP5949682B2 (ja) 脆性亀裂伝播停止特性に優れた大入熱溶接用鋼板の製造方法
JP6128057B2 (ja) 低yrクラッド鋼板及びその製造方法
JP2009127069A (ja) 高靭性ラインパイプ用鋼板およびその製造方法
TWI525199B (zh) 厚鋼板及其製造方法
JP5509654B2 (ja) 耐pwht特性および一様伸び特性に優れた高強度鋼板並びにその製造方法
JP5477089B2 (ja) 高強度高靭性鋼の製造方法
WO2014199488A1 (ja) 溶接用超高張力鋼板
TWI526545B (zh) 熔接用鋼材
JP6311633B2 (ja) ステンレス鋼およびその製造方法
JP5194572B2 (ja) 耐溶接割れ性が優れた高張力鋼材の製造方法
JPWO2013088715A1 (ja) 大入熱溶接用鋼材
JP5849892B2 (ja) 大入熱溶接用鋼材
JP2006241510A (ja) 大入熱溶接部hazの低温靭性に優れた高強度溶接構造用鋼とその製造方法
JP2007138203A (ja) 溶接性に優れた高張力厚鋼板およびその製造方法
JP5772620B2 (ja) テーパプレートの製造方法
JP2011074448A (ja) 大入熱溶接用鋼
JP2004323966A (ja) 耐震性と溶接性に優れた鋼板およびその製造方法
JP2005272854A (ja) 耐火性および溶接熱影響部の靭性に優れる高張力鋼の製造方法
JP4299743B2 (ja) 母材靭性と超大入熱溶接部haz靭性に優れた高強度溶接構造用高靭性鋼とその製造方法
JP5659949B2 (ja) 溶接熱影響部の靱性に優れた厚鋼板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150223

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20151116

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20151124

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160120

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160524

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160606

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5958428

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250