JP5958428B2 - 大入熱溶接用鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ・・・(1)
ただし、上式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を示し、含有していない元素は0とする。
第四の発明は、前記第2の加速冷却をする工程の後、さらに、Ac1変態点以下の温度域に焼き戻す工程を有することを特徴とする第一の発明〜第三の発明のいずれか一つに記載の大入熱溶接用鋼板の製造方法である。
以下に成分組成の限定理由を説明する。なお、成分組成を示す単位は、全て質量%とする。
Cは、鋼材の強度を高める元素であり、構造用鋼として必要な強度を確保するためには、0.03%以上の添加が必要である。一方、0.08%を超えると、大入熱溶接HAZ中に島状マルテンサイトが生成し易くなるため、上限は0.08%とする。好ましくは、0.04〜0.07%の範囲である。
Siは、鋼を溶製する際の脱酸剤として添加される元素であり、0.01%以上の添加が必要である。しかし、0.1%を超えると、大入熱溶接HAZ中に島状マルテンサイトが生成し、靱性の低下を招きやすくなる。よって、Siは0.01〜0.1%の範囲とする。
MnはCと同様に、鋼板母材の強度を高める元素であり、また他の合金成分に比較して安価であることから、積極的な添加が有効であるが、2.5%を超えると焼入性が過剰となり、母材靱性が低下するとともに溶接性を損なう問題がある。従ってMn量は1.2〜2.5%とする。好ましくは1.5%〜2.2%の範囲である。
Pは不純物として鋼中に含有される元素の一つであるが、鋼板母材および、大入熱溶接HAZの靱性を低下させるため、素材溶製時の経済性を考慮した上で可能な範囲で低減することが好ましい。このため、P量は0.008%以下とする。
SはPと同様不純物として鋼中に含有される元素の一つであるが、Pと異なり、MnSやCaS、REM−Sなどの硫化物として存在した場合にフェライトの生成核となり、大入熱溶接HAZの靱性を向上させる効果がある。この効果は0.0005%以上の添加で有効である。一方で過剰の添加は多量の硫化物生成を招き、母材靱性の低下を引き起こす。従って、S量は0.0005〜0.0040%の範囲とする。
Alは、鋼の脱酸のために添加される元素であり、0.005%以上含有させる必要がある。一方で、0.1%を超えて添加すると、介在物量が過剰となり、母材の靱性を低下させる。従って、Alは0.005〜0.1%の範囲とする。好ましくは0.01〜0.06%とする。
Nbは、添加により未再結晶温度域を拡大させる効果を有し、鋼板母材の強度靱性を確保するのに有効な元素である。しかし、0.003%未満の添加では上記効果が小さく、一方で0.04%を超えて添加すると、大入熱溶接HAZに島状マルテンサイトが生成しやすくなり、靱性を低下させる。このため、Nbは0.003〜0.04%の範囲とする。好ましくは、0.005〜0.025%の範囲である。
Tiは、凝固時にTiNとして析出し、特に大入熱溶接HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制し、且つ、フェライトの変態核となるなど、大入熱HAZの高靭化に極めて有用な元素である。この効果を得るためには、0.003%以上の添加が必要である。一方で、0.04%を超えて添加すると、析出したTiNが粗大化し、上記効果が得られにくくなる。よって、Tiは、0.003〜0.04%の範囲とする。好ましくは、0.005〜0.025%の範囲である。
Nは、上述したTiNの生成、また、後述するB窒化物の形成に必要な元素であり、本発明において最も重要な元素の一つである。大入熱溶接HAZにおいて、これらの窒化物を生成させ、靱性向上に有効に寄与させるためには、0.003%以上含有させる必要がある。一方で、0.01%を超えて添加すると、溶接入熱条件によってはTiNが溶解する領域における固溶N量が増加し、却って溶接部の靱性を低下させる場合がある。従って、Nは、0.003〜0.01%の範囲とする。好ましくは、0.004〜0.007%の範囲である。
Bは固溶状態で存在する場合は、粒界に偏在して焼入性を確保し、母材強度の確保に寄与し、B窒化物として存在する場合は、フェライト核として作用し、大入熱溶接HAZの靱性を高める2つの効果がある。従って、Bは、本発明で最も重要な元素の一つである。しかし、Bの含有量が0.0003%未満では前者の効果が得られず、また、0.003%を超えて添加するとB窒化物を上回る固溶Bが多量に存在することになり、逆に大入熱溶接HAZの靱性低下を引き起こす。従って、Bは0.0003〜0.003%の範囲とする。
本発明の鋼材は、上記成分が、上記組成範囲を満たして含有していることに加えて、下記(1)式で表される炭素当量Ceqが0.33〜0.45の範囲であることが必要である。
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ・・・(1)
ただし、上記式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を示し、含有していない元素は0とする。
Cuは強度を増加させるために添加することができる元素であるが、1.0%を超えて添加すると、熱間脆性により鋼板母材表面の性状を劣化させることがあるため、添加する場合は、その量は1.0%以下の範囲とすることが好ましい。
Niは母材の強度を増加させつつ靭性も向上させることが可能な元素である。1.0%を超えて添加した場合、効果が飽和するとともに経済的に不利となることがあるため、添加する場合は、その量は1.0%以下の範囲とすることが好ましい。
Crは強度を増加させるために有効な元素であるが、1.0%を超えて添加すると、母材靭性を劣化させることがあるため、添加する場合は、その量は1.0%以下の範囲とすることが好ましい。
Moは母材強度を増加するのに有効な元素であるが、0.5%を超えて添加すると、著しく靭性を劣化させるとともに経済性を損なうため、添加する場合は、その量は0.5%以下の範囲とすることが好ましい。
Vは母材強度を増加するのに有効な元素であるが、0.1%を超えて添加すると、著しく靭性を劣化させるため、添加する場合は、その量は0.1%以下の範囲とすることが好ましい。
Ca、Zr、REMは鋼中のSを固定して鋼板の靭性を向上させる効果があり、強い硫化物形成元素であるCaは0.0005%以上で、また、ZrおよびREMに関しては0.001%以上の添加でそれぞれ効果がある。しかしながら、それぞれの量が0.005%、0.02%、0.02%を超えて添加すると鋼中の介在物量が増加し靭性をかえって劣化させる場合がある。従って、これらの元素を添加する場合は、Caは0.0005〜0.005%、Zrは0.001〜0.02%、REMは0.001〜0.02%の範囲とすることが好ましい。
上記した成分構成を有する鋼を、転炉あるいは電気炉等の常法の溶製手法を用いて溶製し、連続鋳造法あるいは造塊法等の常法の工程により、鋼板製造のためのスラブ素材とすることが好ましい。以下、本発明で規定するところの、鋼板製造条件の限定理由に関して説明する。
鋳造後のスラブは、室温まで冷却した後、あるいは可能であれば高温の状態のままで、加熱炉に装入し、その加熱温度を1000℃以上に規定する。この加熱温度は本発明の成分規定のうち、主にNb炭窒化物を溶解せしめ、固溶Nbを十分に確保する観点から下限を1000℃とした。また、加熱温度の上限は特に規定しないが、あまりに高温の場合、加熱時のオーステナイト粒の粗大化が起こり母材靱性に悪影響を及ぼすため、通常は1250℃以下、望ましくは1200℃以下であることが好ましい。
オーステナイト再結晶温度域における圧延は、加熱時のオーステナイト粒をある程度微細化するために必要であり、最低1パス以上、好ましくは累積圧下率20%以上行うのが望ましい。上記成分範囲の鋼であれば、オーステナイト再結晶温度域の下限温度は概ね900〜1000℃の範囲にある。
本工程は、本発明の中で最も重要な項目の一つである。上述したように、本発明では大入熱溶接HAZの靱性を向上させるための施策としてTiNによる粒径微細化と、B窒化物の形成によるフェライト変態促進効果を適用しているが、鋼板製造の熱履歴過程において、特にB窒化物が大量に生成した場合、鋼板の焼入性を確保するための固溶Bが消失し、一方で析出したB窒化物からフェライト核生成が生じやすくなることから、鋼板の圧延組織に占めるフェライト分率が増加し、所定の強度が得られなくなる場合がある。
上記加速冷却に引き続き、オーステナイト未再結晶温度域にて制御圧延を行う。この制御圧延はその圧下率が小さい場合、所定の母材靱性を得ることが出来ない。このため、累積圧下率の下限を40%と規定する。また、圧下率は高い方が好ましいが、工業的には80%程度が上限となる場合があるので、好ましくは、50〜80%である。
既述したB窒化物の生成を抑制するための第1の加速冷却とは異なり、本工程の第2の加速冷却をする工程は、制御圧延により加工されたオーステナイト組織を相変態させるための処理を目的とする。
上記の第2の加速冷却をする工程の後、必要に応じて焼戻し処理を行うことができる。焼戻しは、主として、第2の加速冷却により焼入れを行った鋼材に対して、強度・靭性バランスの適正化、残留応力の軽減などの目的で行われ、実施する場合はAc1変態点以下の温度で行う。
Ac1(℃)=751−26.6C+17.6Si−11.6Mn−169Al−23Cu−23Ni+24.1Cr+22.5Mo+233Nb−39.7V−5.7Ti−895B
一方、オーステナイト再結晶温度域の下限温度は、鋼組成のほか、結晶粒径や加工履歴や歪量などの影響を受けるが、概ね800〜950℃の範囲にある。詳しくは、事前に予備試験をして調査することにより、前記下限温度を推測することができる。
母材靭性の目標値はvTrsで−50℃以下とした。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.01〜0.10%、Mn:1.2〜2.5%、P:0.008%以下、S:0.0005〜0.0040%、Al:0.005〜0.1%、Nb:0.003〜0.04%、Ti:0.003〜0.04%、N:0.003〜0.01%、B:0.0003〜0.003%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ、下記(1)式で表される炭素当量Ceqが0.33〜0.45の範囲となるよう含有した鋼素材を、1000℃以上に加熱し、オーステナイト再結晶温度域において圧延後、オーステナイト未再結晶温度域まで冷却速度3℃/秒以上の水冷で第1の加速冷却を実施し、引き続いてオーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率40%以上80%以下の圧延を実施した後、Ar3変態点以上の温度から600℃以下の温度域に冷却速度5℃/秒以上の条件で第2の加速冷却を実施する工程を有する、板厚が40〜80mm、YS:450N/mm 2 以上の大入熱溶接用鋼板の製造方法。
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ・・・(1)
ただし、上式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を示し、含有していない元素は0とする。 - さらに、質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:0.5%以下およびV:0.1%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の大入熱溶接用鋼板の製造方法。
- さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%、Zr:0.001〜0.02%およびREM:0.001〜0.02%、の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の大入熱溶接用鋼板の製造方法。
- 前記第2の加速冷却をする工程の後、さらに、Ac1変態点以下の温度域に焼き戻す工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の大入熱溶接用鋼板の製造方法。
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