JP4299743B2 - 母材靭性と超大入熱溶接部haz靭性に優れた高強度溶接構造用高靭性鋼とその製造方法 - Google Patents

母材靭性と超大入熱溶接部haz靭性に優れた高強度溶接構造用高靭性鋼とその製造方法 Download PDF

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本発明は、建築、橋梁、造船、海洋構造物、ラインパイプ、建設機械などの溶接構造物として広く利用可能な、母材靭性と溶接部HAZ靭性の両方に優れた490MPa級以上の引張強度を有する高強度溶接構造物用高靭性鋼に関するものである。
建築、橋梁、造船、海洋構造物など溶接構造物の脆性破壊防止の観点から、母材の靭性だけでなく、溶接部からの脆性破壊の発生抑制すなわち、使用される鋼板のHAZ靱性の向上に関する研究が数多く報告されてきた。一般に、母材靭性の確保のためには最終のフェライト粒径などの母材のミクロ組織をより小さくすることが肝要であり、必要靭性レベルにより普通圧延、制御圧延、さらには制御圧延+加速冷却などのプロセスが利用されてきた。その基本はAlNやTiNなどの高温で安定な窒化物をピニング粒子として用いて、まず母材の加熱オーステナイト(γ)粒径を微細化した上で、その後の圧延・変態を通して最終的なミクロ組織(フェライト組織、ベイナイト組織、マルテンサイト組織など)を微細にすることにある。たとえば、フェライト主体の組織の場合には、圧延によりオーステナイト中にフェライトの核生成サイトを多数導入し、最終のフェライト粒径を微細にすることができる。したがって、このような母材の製造方法では、用いられる窒化物の種類により熱間圧延前の再加熱温度を変える必要が生じたり、加熱γ粒径の変動から最終のフェライト粒径にも変化が生じ、結果的に、母材靭性にバラツキが生じることがしばしば起こる。一方、溶接部HAZ靭性も加熱γ粒径が入熱量によって異なることから、要求靭性値が高いほどその値を小さくする必要があるにも関わらず、近年では加熱γ粒径が大きくなる条件、すなわち溶接施工能率の向上の観点から、大入熱溶接(およそ20kJ/mm以下)や超大入熱溶接(20〜150kJ/mm)が実施される場合が増加している。大入熱溶接と超大入熱溶接の鋼板への影響の差異は、高温での滞留時間の差異に起因しており、特に超大入熱溶接ではその時間が極めて長時間であるために、結晶粒径が著しく粗大化するHAZ領域が広くなり、HAZ靱性の低下が著しくなる点にある。
以上のような母材靭性のバラツキと溶接部HAZ靭性の入熱依存性の問題点を回避する抜本的な方法として、母材組織および溶接部HAZ組織の加熱γ粒径を同一のピニング粒子によって制御し、両者の高温での粒成長を抑制することが最も有効と考えられる。これが実現できた場合は、母材靭性の安定性はもとより入熱が極めて大きくなった場合にも溶接部HAZ靱性を十分に向上させることができる。なお、母材の加熱γ粒径が著しく微細になる場合には、従来の制御圧延や加速冷却を用いることなく普通圧延でも同程度のフェライト粒径と母材靭性を付与できる可能性も出てくることから、本技術の確立は工業的価値が高い。
加熱γ粒径のピニング効果が最も期待できる粒子として、高温でも溶解しにくい酸化物や硫化物が考えられる。例えば、酸化物の導入方法としては鋼の溶製工程においてTiなどの脱酸元素を単独に添加する方法や、Mg、Caにより鋼の清浄度を高め、酸化物の分散を制御する方法があるが(例えば、特許文献1参照)、多くの場合に溶鋼保持中に酸化物の凝集合体がおこり粗大な酸化物の生成をもたらすことによりかえって鋼の清浄度を損ない靱性を低下させてしまうことが知られている。そのため、複合脱酸法などさまざまな工夫がなされているが、従来知られている方法では、高温での母材の加熱γ粒径、さらには溶接入熱が大きく、しかも冷却速度が極めて小さい場合[例えば、800℃から500℃までの冷却速度が1℃/s以下]の加熱γ粒径および変態後に生成されるHAZ靭性に大きく影響すると考えられる粒界フェライト[オーステナイトの粒界に優先的に析出する初析フェライトのこと]の結晶粒粗大化を完全に阻止しうるほどの技術は未だに確立されていない。
特開2003−49237号公報
本発明者らは、酸化物(あるいは硫化物)を最大限に微細分散させた上で、さらに超大入熱溶接時の粒界フェライトの粗大化抑制技術を鋭意検討し、超大入熱溶接においても溶接部HAZ組織を均質に微細化させ、溶接部HAZ靭性に優れた高強度溶接構造用鋼の製造技術の確立を課題とした。
本発明の要旨は、以下の通りである。すなわち、
(1) 質量%で
質量%で、
C :0.01〜0.20%、
Si:0.02〜0.50%、
Mn:0.3〜2.0%、
P :0.03%以下、
S :0.0001〜0.030%、
Al:0.0123〜0.050%、
Ti:0.003〜0.050%、
Mg:0.0012〜0.005%、
Ca:0.0001〜0.005%
を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなり、さらに、質量%で、
Cr:0.005〜0.30%、
Nb:0.001〜0.20%、
Mo:0.005〜0.30%
のうち1種以上を含有し、且つ、
溶接部HAZ組織の加熱γ粒径(旧オーステナイト粒径)が溶接入熱によらず200μm以下であり、溶接部HAZ組織中の粒界フェライト粒径が30μm以下であることを特徴とする母材靭性と超大入熱溶接部HAZ靭性に優れた高強度溶接構造用高靭性鋼。
(2) 質量%で、さらに、
Cu:0.05〜1.5%、
Ni:0.05〜1.5%、
V :0.005〜0.50%、
Zr:0.0001〜0.050%、
Ta:0.0001〜0.050
のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)記載の高強度溶接構造用高靭性鋼。
) (1)または(2)記載の鋼と同一成分を有する鋼塊をAC3点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延した後、自然冷却することを特徴とする超大入熱溶接部HAZ靭性に優れた高強度溶接構造用鋼の製造方法。
) (1)または(2)記載の鋼と同一成分を有する鋼塊をAC3点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延をした後、自然冷却することを特徴とする高強度溶接構造用高靭性鋼の製造方法。
) (1)または(2)記載の鋼と同一成分を有する鋼塊をAC3点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延をした後、1〜60℃/secの冷却速度で0〜600℃まで冷却することを特徴とする高強度溶接構造用高靭性鋼の製造方法。
) (1)または(2)記載の鋼と同一成分を有する鋼塊をAC3点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延をした後、1〜60℃/secの冷却速度で0〜600℃まで冷却し、引き続いて300℃〜AC1点に加熱して焼戻し熱処理することを特徴とする高強度溶接構造用高靭性鋼の製造方法。
本発明の化学成分および製造方法に限定し、MgとCaを同時添加することで、母材の加熱γ粒径を微細化することができ、さらにCr、Nb、Moのいずれか1種以上の添加との組合せによって、溶接入熱に関わらずHAZの加熱γ粒径だけでなく靭性に悪影響を及ぼす粒界フェライトを同時に微細化することができ、これらの微細化効果により母材靭性と溶接部HAZ靱性の両者に優れた画期的な高強度溶接構造用鋼の製造が可能となる。その結果、建築、橋梁、造船、海洋構造物、ラインパイプ、建設機械などの溶接構造物の脆性破壊に対する安全性が大幅に向上し、産業上の効果は著しく大きい。
Mg、Caは、従来から強脱酸剤、脱硫剤として鋼の清浄度を高めることで、溶接熱影響部の靱性を向上させることが知られている。また、これら元素を含有する酸化物の分散を制御して、母材靭性および溶接部HAZ靱性の両方を向上させる技術として用いた例がある(特許文献1)。
本発明者らは、同じようにMg、Caの強脱酸剤あるいは強力な硫化物生成能に着目し、これら元素の添加順序および量を制御することで、超大入熱溶接部HAZ組織の加熱γ粒径の微細化に効果を有する酸化物あるいは硫化物の微細分散が期待できる余地があり、この技術とCr、Nb、Mo含有鋼に見られるこれら元素のHAZ組織中の粒界フェライトに対する成長抑制効果との組合せにより、超大入熱かつ冷却速度が著しく小さい場合(例えば、実構造物における薄手スキンプレート等が想定される)の溶接部HAZの高靭性化が達成可能と考えた。
以下、本発明に関して詳細に説明する。
本発明者らは、Tiを添加し弱脱酸した溶鋼中にMgあるいはCaを添加した場合の酸化物の状態を系統的に調べた。その結果、Si、Mnによる脱酸後に、Ti添加、Mg(Ca)添加の順に添加した場合に、あるいはTi添加とMg(Ca)添加を同時に行い、さらに溶存酸素が少なくなった状態で再度Mg(Ca)を添加するというサイクルを付与することで、Mg(あるいはCa)の酸化物あるいは硫化物が極めて微細に、かつ高密度に生成されることを見出した。このMg添加の効果はCaをMgの代わりに用いても同様に得られるが、両元素を同時に添加したときに最も効果が大きく、その場合にはこれらの添加元素を含む酸化物もしくは硫化物が生成され、その粒子径は0.005〜0.5μm、粒子数は鋼中に1mm当たり10000個以上であり、強力なピニング力を有していることが確認され、母材製造時のスラブ加熱段階における加熱γ粒径が微細化すること、さらには溶接部HAZ組織の加熱γ粒径も溶接入熱によらず200μm以下になる。一般的に、200μm以下のような微細な加熱γ粒径の場合には、粒界フェライトの核生成頻度が増大し、成長速度も大きくなるのが普通である。例えば1℃/s以下のような冷却速度の場合には粒界フェライトが数10μmから、場合によっては100μm程度にまで成長し、この粗大化が著しく靭性レベルを劣化させることが知られている。本発明者らはこのHAZ細粒鋼の粒界フェライトの成長抑制方法について鋭意検討した結果、Cr、Nb、Mo添加が極めて有効であるとの知見を得るに至った。これは、CrやMoのようなFe原子と同程度あるいはそれ以上のサイズである元素が固溶した場合には、Feの拡散速度を小さくすることから、拡散を伴う粒界フェライトの成長速度が小さくなるものと思われる。
以上のような「加熱γ粒径の細粒化技術とMo等の添加による粒界フェライトの成長抑制技術の組合せ」は超大入熱溶接の靭性改善策として有益であり、本技術はVNのような析出粒子を活用した粒内変態技術とは異なり、固溶状態での粒成長抑制効果との併用技術について初めて言及した方法であり、工業的見地からもその利用価値は高い。すなわち、本発明はMgあるいはCaの介在物の存在状態とMo添加等により達成される母材靭性と溶接部HAZ靱性の両方に優れた鋼材に関するものであり、加熱γ粒径の変化を極力抑えた画期的な技術である。本発明の特徴は、母材の加熱γ粒径(旧オーステナイト粒径)が再加熱温度によらず100μm以下であり、さらに溶接部HAZ組織の加熱γ粒径(旧オーステナイト粒径)が前述したように溶接入熱によらず200μm以下であり、しかも溶接部の冷却速度が極めて小さくなるような板厚が50mm以下のような柱部材[例えば、スキンプレート]溶接のような場合にも、粒界フェライトの粒径が30μm以下となり、これらのミクロ組織を反映して、母材靭性と溶接部HAZ靭性の両方に優れた高強度溶接構造用鋼を提供できる点にある。
本発明におけるMgとCaの添加方法であるが、これら元素を同時に添加した場合に、両元素の細粒化効果が工業的に安定して発揮されることと、Moなどの粒界フェライトの成長抑制効果もそれら元素の単独添加の場合に比べてより助長されることも確認されており、MgとCaの同時添加を原則とする。一方で、粗大な酸化物・硫化物が生成されることから、母材とHAZのいずれにおいても高靭性を得るためには上限値を設定する必要があり、その値は0.005%である。また、同時添加の効果が発揮されるための各元素の最小量は0.001%である。
以下、本発明の各成分の限定理由について詳しく述べる。
C:Cは鋼における母材強度を向上させる基本的な元素として欠かせない元素であり、その有効な下限として0.01%以上の添加が必要であるが、0.20%を越える過剰の添加では、鋼材の溶接性や靱性の低下を招くので、その上限を0.20%とした。
Si:Siは製鋼上脱酸元素として必要な元素であり、鋼中に0.02%以上の添加が必要であるが、0.50%を越えるとHAZ靱性を低下させるのでそれを上限とする。
Mn:Mnは、母材の強度および靱性の確保に必要な元素であるが、2.0%を越えるとHAZ靱性を著しく阻害するが、逆に0.3%未満では、母材の強度確保が困難になるために、その範囲を0.3〜2.0%とする。
P:Pは鋼の靱性に影響を与える元素であり、0.03%を越えて含有すると鋼材の母材だけでなくHAZの靱性を著しく阻害するのでその含有される上限を0.03%とした。
S:Sは0.030%を越えて過剰に添加されると粗大な硫化物の生成の原因となり、靱性を阻害するが、その含有量が0.0001%未満になると、粒内フェライトの生成に有効なMnS等の硫化物生成量が著しく低下するために、0.0001〜0.030%をその範囲とする。
Al:Alは通常脱酸剤として添加されるが、本発明においては、0.050%越えて添加されるとMg、Caの添加の効果を阻害するために、これを上限とする。また、Mg、Caの酸化物を安定に生成するためには0.0123%は必要であり、これを下限とした。
Ti:Tiは、脱酸剤として、さらには窒化物形成元素としてし結晶粒の細粒化に効果を発揮する元素であるが、多量の添加は炭化物の形成による靱性の著しい低下をもたらすために、その上限を0.050%にする必要があるが、所定の効果を得るためには0.003%以上の添加が必要であり、その範囲を0.003〜0.050%とする。
Mg:Mgは主に脱酸剤あるいは硫化物生成元素として添加され、目安としては0.005%を越えて添加されると、粗大な酸化物あるいは硫化物が生成し易くなり、母材およびHAZ靱性の低下をもたらす。しかしながら、0.0012%未満の添加では、ピニング粒子として必要な酸化物の生成が十分に期待できなくなるため、その添加範囲を0.0012〜0.005%と限定する。
Ca:Caは硫化物を生成することにより伸長MnSの生成を抑制し、鋼材の板厚方向の特性、特に耐ラメラティアー性を改善する。さらに、CaはMgと同様な効果を有している。Caの範囲はMgと同じ理由により、その範囲は0.0001%〜0.005%の範囲とする。
Cr:CrはHAZにおける粒界フェライトの成長抑制作用を有し、0.005%以上の添加が有効であるが、多量に添加すると、焼入れ性を上昇させ、必要以上にベイナイト組織を生じさせ、靱性を低下させる。従って、その上限を0.30%とする。
Nb:Nbは、炭化物、窒化物を形成し強度の向上に効果がある元素であると同時に、Crと同様な粒界フェライトの成長抑制効果がある。通常、0.001%以下の添加ではその効果が小さく、0.20%を越える添加では、靱性の低下を招くために、その範囲を0.001〜0.20%以下とする。
Mo:Moは、焼入れ性を向上させると同時に、炭窒化物を形成し強度を改善する元素である。さらに、粒界フェライト抑制効果を有し、これらの効果を得るためには、0.005%以上の添加が必要になるが、0.30%を越えた多量の添加は必要以上の強化とともに、靱性の著しい低下をもたらすために、その範囲を0.005〜0.30%以下とする。
なお、本発明においては、強度および靱性を改善する元素として、Cu、Ni、V、Zr、Ta、Bの中で、1種または2種以上の元素を添加することができる。
Cu:Cuは、靱性を低下させずに強度の上昇に有効な元素であるが、0.05%未満では効果がなく、1.5%を越えると鋼片加熱時や溶接時に割れを生じやすくする。従って、その含有量を0.05〜1.5%以下とする。
Ni:Niは、靱性および強度の改善に有効な元素であり、その効果を得るためには0.05%以上の添加が必要であるが、1.5%以上の添加では溶接性が低下するために、その上限を1.5%とする。
V:Vは、炭化物、窒化物を形成し、強度向上に効果がある。この効果は、0.005%以下の添加では十分でなく、0.50%を越える添加では、逆に靱性の低下を招くために、その範囲を0.005〜0.50%とする。
Zr、Ta:ZrとTaもNbやVと同様に炭化物、窒化物を形成し強度の向上に効果がある元素であるが、0.0001%以下の添加ではその効果がなく、0.050%を越える添加では、逆に靱性の低下を招くために、その範囲を0.0001〜0.050%以下とする。
上記の成分を含有する鋼は、製鋼工程で溶製後、連続鋳造などを経て再加熱、圧延、冷却処理を施される。この場合、以下の点を限定した。
熱間圧延・制御圧延ともに、鋼塊をオーステナイト化するためにAC点以上の温度に加熱する必要がある。しかし、1350℃を超えて加熱すると、熱源コストの増大が生じることから、加熱温度は1350℃以下とした。
次いで、熱間圧延・制御圧延ともに、再結晶温度域で圧延することによりオーステナイト粒径を小さくすることが必要である。また、制御圧延を用いて、強度上昇と靭性向上を図る場合には、さらに未再結晶温度域で圧延することによりオーステナイト粒内に変形帯を導入し、フェライト変態核を導入することが有効である。未再結晶域での累積圧下率が40%未満では変形帯が十分に形成されないので、未再結晶域で累積圧下率の下限値を40%とした。しかし、累積圧下率が90%を超えると、母材シャルピー試験の吸収エネルギーの低下が著しくなるために、上限を90%にした。
自然放冷よりさらに強度を上昇させるためには加速冷却が必要である。しかしながら、冷却速度が1℃/sec未満では、十分な強度を得ることができない。逆に、冷却速度が60℃/sec超ではベイナイト主体組織が生成するため母材の靭性が低下する。したがって、冷却速度を1〜60℃/secに限定した。本発明においては、母材の強度を得るために変態が終了するまで加速冷却を継続する必要がある。このため、冷却停止温度の上限を600℃とした。600℃超の停止温度では変態が終了しないために、十分な強度が得られない。通常、加速冷却は水を冷却媒体として用いる。それ故、実際上の冷却停止温度の下限は0℃となるので、下限値を0℃した。
加速冷却後の焼戻し熱処理は回復による母材組織の靭性向上を目的としたものであるから、加熱温度は逆変態が生じない温度域であるAC点以下でなければならない。回復は転位の消滅・合体により格子欠陥密度を減少させるものであり、これを実現するためには300℃以上に加熱することが必要である。このため、加熱温度の下限を300℃とした。上限は変態点以下であるため、ACを上限とした。
次に、本発明の実施例について述べる。
表1および表2の化学成分を有する鋼塊を表3に示す製造条件により、板厚12mm〜100mmの厚鋼板とした後、 溶接入熱が100kJ/mm、800℃から500℃での冷却速度が0.35℃/sの超大入熱かつ超緩冷却の溶接を付与し、旧γ粒と粒界フェライトのそれぞれの粒径を測定するとともに、溶接部HAZ靭性を0℃におけるシャルピー吸収エネルギーにより評価した。なお、母材靭性については、加熱温度を1100℃〜1350℃の範囲で5水準の温度にて製造しているが、全て良好な母材靭性であった。表3右端に−40℃のシャルピー吸収エネルギーの値を示す。本発明鋼の延性・脆性遷移温度(vTrs)は明らかに−40℃以下にあることがわかる。以下、溶接部のHAZ靭性について記述する。
まず、鋼1〜5は本発明の例を示したものである。表3に示すように、本発明の鋼板は化学成分と製造条件の各要件を満足しており、HAZの加熱γ粒径が200μm以下となっていることに加えて、冷却中に旧γ粒界にそって生成した粒界フェライトの粒径がいずれも30μm以下であり、HAZ靭性はいずれも良好な結果となっている。
それに対し、鋼23〜34は本発明方法から逸脱した比較例である。すなわち、鋼23、〜27は基本成分あるいは選択元素の内いずれかの元素が、発明の要件を越えて添加されている例であり、本発明の重要な論点である「MgとCaの同時添加」と「Cr、Nb、Moの1種以上の添加」に関す要件を満たしているものの靱性劣化要因となる元素が過剰に添加された事により超大入熱HAZ靱性の劣化が大きい。鋼28〜30ではAlとTiがいずれも下限値ないしは上限値を逸脱した場合に相当している。まず鋼28は加熱γ粒径が大きい反面、Nb量が多いためにHAZの粒界フェライトは比較的に細粒となっているが、一方でNbが靭性劣化を生じさせるベイナイト等の脆化組織を増やすために靭性値は低い。鋼29はAl量が著しく高いために、やはり靭性値が劣化していることがわかる。鋼30はTi量の影響が大きいことを示しており、この場合も靭性は低い。次に、鋼31〜鋼33はいずれもMg,Caの量が範囲外になっている例である。鋼31と32は一方あるいは両元素が過剰添加されている例であり、粒界フェライトは微細になっているにも関わらず、5μm以上の粗大酸化物数が増大したことにより靭性値が大きく低下している。
次いで、鋼33はMgとCaの2元素がいずれも添加されていない場合であり、HAZの加熱γ粒径が著しく大きくなっており、しかも添加Mo量が下限よりも少ないため、他の鋼に比べて粒界フェライトも著しく粗大化しており、HAZ靭性は最も悪い。鋼34はMgとCaの2元素が適正な量であるものの、Cr、Nb、Moの添加が全くなされていないことからやはり粒界フェライトが粗大化し、靭性値が低い値となっている。
Figure 0004299743
Figure 0004299743
Figure 0004299743

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C :0.01〜0.20%、
    Si:0.02〜0.50%、
    Mn:0.3〜2.0%、
    P :0.03%以下、
    S :0.0001〜0.030%、
    Al:0.0123〜0.050%、
    Ti:0.003〜0.050%、
    Mg:0.0012〜0.005%、
    Ca:0.0001〜0.005%
    を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなり、さらに、質量%で、
    Cr:0.005〜0.30%、
    Nb:0.001〜0.20%、
    Mo:0.005〜0.30%
    のうち1種以上を含有し、且つ、
    溶接部HAZ組織の加熱γ粒径(旧オーステナイト粒径)が溶接入熱によらず200μm以下であり、溶接部HAZ組織中の粒界フェライト粒径が30μm以下であることを特徴とする母材靭性と超大入熱溶接部HAZ靭性に優れた高強度溶接構造用高靭性鋼。
  2. 質量%で、さらに、
    Cu:0.05〜1.5%、
    Ni:0.05〜1.5%、
    V :0.005〜0.50%、
    Zr:0.0001〜0.050%、
    Ta:0.0001〜0.050
    のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度溶接構造用高靭性鋼。
  3. 請求項1または請求項2記載の鋼と同一成分を有する鋼塊をAC3点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延した後、自然冷却することを特徴とする高強度溶接構造用高靭性鋼の製造方法。
  4. 請求項1または請求項2記載の鋼と同一成分を有する鋼塊をAC3点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延をした後、自然冷却することを特徴とする高強度溶接構造用高靭性鋼の製造方法。
  5. 請求項1または請求項2記載の鋼と同一成分を有する鋼塊をAC3点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延をした後、1〜60℃/secの冷却速度で0〜600℃まで冷却することを特徴とする高強度溶接構造用高靭性鋼の製造方法。
  6. 請求項1または請求項2記載の鋼と同一成分を有する鋼塊をAC3点以上、1350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延をした後、1〜60℃/secの冷却速度で0〜600℃まで冷却し、引き続いて300℃〜AC1点に加熱して焼戻し熱処理することを特徴とする高強度溶接構造用高靭性鋼の製造方法。
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