JP5217385B2 - 高靭性ラインパイプ用鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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3)鋼中のP含有量を低減することでTMCPにより製造される鋼板の母材強度を下げることなく、溶接熱影響部の固溶強化による硬化を低減させることが可能で、0.006%以下とすることで著しくHAZ靭性を向上させる。
1.成分組成が、質量%で
C:0.045〜0.071%
Si:0.03%以下
Mn:1.0〜2.0%
P:0.006%以下
S:0.005%以下
Al:0.02〜0.05%
Nb:0.005〜0.025%
Ti:0.005〜0.030%
Ni:0.22〜0.28%
V:0.005%以下
N:0.001〜0.010%
さらに
Cu:0.10〜0.60%
Cr:0.05〜0.40%
Mo:0.05〜0.40%
の1種または2種以上を含有し、
0.30≦Ceq≦0.45
残部Feおよび不可避的不純物で、溶接入熱4〜10kJ/mmで溶接した際の溶接熱影響部組織(溶融線から500μmの範囲のミクロ組織)に占める上部ベイナイト組織が90%以上、当該上部ベイナイト組織に含まれる島状マルテンサイトが3%以下であることを特徴とする高靭性ラインパイプ用鋼板。
但し、Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5 ・・・(1)
2.成分組成にさらに、質量%で、
Zr:0.0005〜0.0300%
Ca:0.0005〜0.0100%
Mg:0.0005〜0.0100%
REM:0.0005〜0.0200%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする1記載の高靭性ラインパイプ用鋼板。
3.1または2記載の成分組成の鋼を、1000〜1200℃に再加熱後、熱間圧延を開始し、未再結晶温度域で累積圧下率が50%以上、二相域で累積圧下率が10〜50%で圧延終了温度が660℃以上となる熱間圧延を行った後、ただちに冷却速度10〜80℃/sで加速冷却を開始し、300〜600℃の温度域で冷却を停止することを特徴とする高靭性ラインパイプ用鋼板の製造方法。
4.300〜600℃の温度域で冷却を停止後、ただちに2℃/s以上の昇温速度で鋼板表層温度を冷却停止時の鋼板表層温度よりも高く、且つ450〜700℃に再加熱することを特徴とする請求項3記載の高靭性ラインパイプ用鋼板の製造方法。
5.加速冷却停止後の再加熱を誘導加熱により行うことを特徴とする4記載の高靭性ラインパイプ用鋼板の製造方法。
6.3乃至5の何れか一つに記載の製造方法で得られた鋼板を、筒状に成型し、突合せ部を溶接入熱4〜10kJ/mmで溶接したことを特徴とする高靱性ラインパイプ用鋼管。
1.化学成分
C:0.03〜0.08%
Cは低温変態組織においては、過飽和に固溶することで強度上昇に寄与する。この効果を得るためには、0.03%以上の添加が必要であるが、0.08%を超えて添加すると大入熱の溶接熱影響部の硬度を上昇させたり、溶接熱影響部の組織中に島状マルテンサイトを生成し靭性を劣化させるため、上限を0.08%とする。
Siは脱酸材として作用し、さらに固溶強化により鋼材の強度を増加させる元素であるが、溶接熱影響部の組織が上部ベイナイトの場合は、島状マルテンサイトの生成を助長し、HAZ靭性を著しく劣化させる。従って、化学成分においてSiをできるだけ低減することが望ましいが、本発明では、製鋼プロセス上の制約から0.05%までは許容する。
Mnは焼入れ性向上元素として作用し、1.0%以上の添加によりその効果が得られるが、連続鋳造プロセスを適用する場合、中心偏析部の濃度上昇が著しく、2.0%を超える添加を行うと偏析部の靭性が劣化するため、上限を2.0%とする。
Pは鋼中に不可避的不純物として存在し、固溶強化により強度を増加させる元素であるが、母材靭性およびHAZ靭性、溶接性を劣化させるため、一般的にその含有量を低減することが望まれる。本発明では、TMCPで製造される鋼板の強度を下げることなく溶接熱影響部の硬さを低減させ、HAZ靭性を向上させるため、Pの含有量を0.006%以下とする。
Sは鋼中に不可避的不純物として存在する。特に、中心偏析部での偏析が著しい元素であり、母材の偏析部起因の靱性劣化を助長する。従って、Sはできるだけ低減することが望ましいが、製鋼プロセス上の制約から0.005%までは許容する。
Alは脱酸元素として作用する。0.02%以上の添加で十分な脱酸効果が得られるが、0.05%を超えて添加すると鋼中の清浄度が低下し、靭性劣化の原因となるため上限を0.05%とする。
Nbは、熱間圧延時のオーステナイト未再結晶領域を拡大する効果があり、特に900℃まで未再結晶領域とするためには、0.005%以上の添加が必要である。一方で、Nbの添加量を増大させると大入熱溶接熱影響部組織に島状マルテンサイトを生成し、さらに多層溶接時の再熱溶接熱影響部では析出脆化を引き起こすことにより靭性が著しく劣化するため、上限を0.025%とする。Nbの添加量は、HAZ靭性の観点からは低いほど好ましい。
Tiは窒化物を形成し、鋼中の固溶N量の低減に有効である。析出したTiNはピンニング効果で熱間圧延前のスラブ加熱時の母材および大入熱溶接時の溶接熱影響部のオーステナイト粒の粗大化を抑制し、母材および溶接熱影響部の靭性の向上に寄与する。この効果を得るためには、0.005%以上の添加が必要であるが、0.030%を超えて添加すると、粗大化したTiNや炭化物の析出により母材およびHAZ靭性が劣化するため上限を0.030%とする。
Nは通常、鋼中に不可避的不純物として存在するが、前述の通りTi添加により、オーステナイト粗大化を抑制するTiNを形成するためその含有量を規定する。必要とするピンニング効果を得るため、0.001%以上鋼中に存在することが必要であるが、0.010%を超える場合は、固溶Nの増大による母材および溶接熱影響部の靭性劣化が著しいため、上限を0.010%とする。
Cuは、0.10%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。一方で、過剰に添加すると母材および溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、添加する場合は、0.10〜0.60%とする。
Niは、0.10%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。特に多量に添加しても他の元素に比べ靭性劣化が小さいため、強靭化には有効な元素であるが、高価な元素であり、1.20%を超えて添加すると過剰な焼入れ性の増加によりHAZ靭性が劣化するので、添加する場合は、0.10〜1.20%とする。
Crは、0.05%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。一方で、過剰に添加すると母材および溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、添加する場合は、0.05〜0.40%とする。
Moは、0.05%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。一方で、Moの添加量を増大させると大入熱溶接部、特に多層溶接時に再熱された溶接熱影響部で析出脆化を引き起こし靭性が劣化させるため、添加する場合は、0.05〜0.40%とする。尚、Moの添加量は、HAZ靭性の観点からは低いほど好ましい。
本発明に係る鋼は、上述した元素をCeq(=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5、各元素は含有量で質量%)が、0.30〜0.45%を満足するように含有する。Ceq(=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5、各元素は含有量で質量%)は、C、Mnなどの焼入れ性元素の効果を表す指標で、強度確保の観点から0.30%以上に制御することが望ましい。一方で、0.45%を超えると靭性や溶接性を損なうこととなるのでCeq:0.30〜0.45%とする。
Zrは、鋼中で炭窒化物を形成し、特に溶接熱影響部においてオーステナイト粒の粗大化を抑制するピンニング効果をもたらす。十分なピンニング効果を得るためには0.0005%以上の添加が必要であるが、0.0300%を超えて添加すると鋼中の清浄度が著しく低下し、靭性が低下するようになるので、添加する場合は、0.0005〜0.0300%とする。
Caは、鋼中の硫化物の形態制御に有効な元素であり、0.0005%以上添加することで靭性に有害なMnSの生成を抑制する。しかし、0.0100%を超えて添加するとCaO−CaSのクラスタを形成し、靭性を劣化させるようになるので、添加する場合は、0.0005〜0.0100%とする。
Mgは、製鋼過程で鋼中に微細な酸化物として生成し、特に溶接熱影響部においてオーステナイト粒の粗大化を抑制するピンニング効果をもたらす。十分なピンニング効果を得るためには、0.0005%以上の添加が必要であるが、0.0100%を超えて添加すると鋼中の清浄度が低下し、靭性が低下するようになるため、添加する場合は、0.0005〜0.0100%とする。
REMは、鋼中の硫化物の形態制御に有効な元素であり、0.0005%以上添加することで靭性に有害なMnSの生成を抑制する。しかし、高価な元素であり、かつ0.0200%を超えて添加しても効果が飽和するため、添加する場合は、0.0005〜0.0200%とする。
溶接入熱:4〜10kJ/mm
本発明に係る鋼は、溶接入熱:4〜10kJ/mmで得られる溶接熱影響部において優れた靭性が得られることを特徴とする。溶接入熱4kJ/mmは一般的なラインパイプの管厚である20mmの場合のシーム溶接を内外面1層ずつで溶接する場合の溶接能率の低下による弊害が生じない施工限界である。
溶接影響部組織を、溶接熱影響部組織に占める上部ベイナイトが90%以上、当該上部ベイナイト組織に含まれる島状マルテンサイトが3%以下の組織に規定する。尚、本発明で溶接影響部組織は溶融線から500μmの範囲のミクロ組織とする。
上部ベイナイト組織に含まれる島状マルテンサイトの割合が3%以下
一般的に上部ベイナイトはHAZ靭性の観点からは不利とされる。しかしながら、溶接熱影響部組織にフェライトを混入させて、靭性を改善した場合、軟質なフェライトの導入により継手強度の確保が困難になる。
スラブをオーステナイト化し、Nbを固溶させるため加熱温度は1000℃以上とする。一方、1200℃を超える温度までスラブを加熱すると、オーステナイト粒成長が著しく、母材靭性が劣化するため、1000〜1200℃とする。
熱間圧延条件は、未再結晶温度域での累積圧下率≧50%以上、且つ、Ar3点〜Ar1点での累積圧下率:10〜50%で、圧延終了温度:680℃以上とする。
熱間圧延終了後、直ちに、冷却速度:10〜80℃/s、冷却停止温度:300〜600℃の加速冷却を行う。
Claims (6)
- 成分組成が、質量%で
C:0.045〜0.071%
Si:0.03%以下
Mn:1.0〜2.0%
P:0.006%以下
S:0.005%以下
Al:0.02〜0.05%
Nb:0.005〜0.025%
Ti:0.005〜0.030%
Ni:0.22〜0.28%
V:0.005%以下
N:0.001〜0.010%
さらに
Cu:0.10〜0.60%
Cr:0.05〜0.40%
Mo:0.05〜0.40%
の1種または2種以上を含有し、
0.30≦Ceq≦0.45
残部Feおよび不可避的不純物で、溶接入熱4〜10kJ/mmで溶接した際の溶接熱影響部組織(溶融線から500μmの範囲のミクロ組織)に占める上部ベイナイト組織が90%以上、当該上部ベイナイト組織に含まれる島状マルテンサイトが3%以下であることを特徴とする高靭性ラインパイプ用鋼板。
但し、Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5 ・・・(1) - 成分組成にさらに、質量%で、
Zr:0.0005〜0.0300%
Ca:0.0005〜0.0100%
Mg:0.0005〜0.0100%
REM:0.0005〜0.0200%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の高靭性ラインパイプ用鋼板。 - 請求項1または2記載の成分組成の鋼を、1000〜1200℃に再加熱後、熱間圧延を開始し、未再結晶温度域で累積圧下率が50%以上、二相域で累積圧下率が10〜50%で圧延終了温度が660℃以上となる熱間圧延を行った後、ただちに冷却速度10〜80℃/sで加速冷却を開始し、300〜600℃の温度域で冷却を停止することを特徴とする高靭性ラインパイプ用鋼板の製造方法。
- 300〜600℃の温度域で冷却を停止後、ただちに2℃/s以上の昇温速度で鋼板表層温度を冷却停止時の鋼板表層温度よりも高く、且つ450〜700℃に再加熱することを特徴とする請求項3記載の高靭性ラインパイプ用鋼板の製造方法。
- 加速冷却停止後の再加熱を誘導加熱により行うことを特徴とする請求項4記載の高靭性ラインパイプ用鋼板の製造方法。
- 請求項3乃至5の何れか一つに記載の製造方法で得られた鋼板を、筒状に成型し、突合せ部を溶接入熱4〜10kJ/mmで溶接したことを特徴とする高靱性ラインパイプ用鋼管。
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