JP4341395B2 - 大入熱溶接用高張力鋼と溶接金属 - Google Patents

大入熱溶接用高張力鋼と溶接金属 Download PDF

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Description

本発明は、圧力容器、船舶、建築、海洋構造物及びパイプライン等の溶接構造物に使用される大入熱溶接用高張力鋼及び大入熱溶接を行った時の溶接金属に関する。さらには、船舶搭載用タンク、特に低温タンクに適した、低温靱性に極めて優れた大入熱溶接用鋼材およびそのような鋼材にサブマージアーク溶接を行ったときに得られる溶接部材に関する。
船舶やLNGタンク等の大型溶接構造物に使用される鋼材に対して、特に大入熱溶接を行った場合の溶接熱影響部(以下、HAZ(Heat Affected Zone)と呼ぶ)や溶接金属部の靱性を向上させる要望が強く寄せられている。
この種の鋼構造物の建造コストに占める溶接施工コストは大きいものがあり、この溶接施工コストを低減するためには、高能率の溶接を行う必要がある。溶接施工コストを低下する最も直接的な方法は、溶接層数を減らすことである。このためには大入熱溶接が可能な高能率溶接法を採用して大入熱にて溶接することが望ましい。
しかし、大入熱溶接を行った場合、HAZ靱性や溶接金属部靱性が低下することは避けられない。
従来より、高張力鋼板のHAZ靱性の向上に対して、例えば、非特許文献1には、Tiを微量添加し鋼中にTiNを微細析出させてオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する方法が提案されている。その他、特許文献1には、Ti酸化物粒子を核生成サイトとして粒内フェライトを生成させて組織を微細化する方法が、特許文献2には、Ti、REM若しくはCaを含有する酸化物をBNの核生成サイトとして形成し、BNを核として組織を微細化する方法が提案されている。
しかし、以上の方策におけるTiNについては、1400℃以上に加熱される部分ではTiNは大部分が母材に固溶し、特に大入熱溶接の場合、HAZ溶融線近傍におけるオーステナイト結晶粒の粗大化を免れ得ない。加熱過程で溶解したTiNは溶接後の冷却過程において再析出しない。従って、TiNが溶解した部分では、冷却過程における粒内でのフェライト変態が起こる析出物もなく結晶粒の粗大化が避けられず、さらには固溶Nの増加をも招き、HAZ靱性の劣化をさけ得ないという欠点がある。
一方、Ti酸化物粒子の利用については、特許文献3に開示されるように、Ti酸化物を微細に分散した鋼は溶融線近傍のオーステナイト粒が粗大化した領域(粗粒域HAZ:1400℃以上に加熱された領域)のHAZ組織を微細化する効果は大きいが、オーステナイト粒径がやや大きい領域(亜粗粒域:1200〜1350℃に加熱された領域)では、その効果が小さいという問題がある。同文献にはCe酸化物の利用による粒内フェライトの析出促進が提案されているが、Ce酸化物も必ずしもHAZの全領域の靱性を良好にするわけではない。また、これらの酸化物制御によるHAZ組織微細化技術は現状では製鋼工程において甚大な生産性の低下を招き、工業的生産ベースでは実現が難しいという難点がある。
しかも、上記の先行技術はいずれもHAZ靱性を向上させるものであり、溶接金属部の靱性を向上させることについては記載が無い。
一方、溶接金属部の靱性向上に関する研究もなされてきた。たとえば、Harrisonは非特許文献2で、サブマージアーク溶接の溶接金属を対象とし、溶接金属中の化学成分の影響を種々調査している。しかしながら、やはり溶接金属だけについての靱性の評価をするだけであり、HAZ靱性と両立させるとの観点での記述は一切ない。
特開昭61−79745号公報 特開昭61−270354号公報 特開平5−78740号公報 鉄と鋼 65(‘79) p.1232 THE WELDINGINSTITUTE BULLETIN 1989 MARCH/APRILp64−67
本発明の目的は、大入熱溶接、特に、150kJ/cm以上のサブマージアーク溶接での高能率溶接施工に対して、HAZおよび溶接金属部いずれの領域においても、良好な低温靱性 (−56℃での衝撃値がHAZで80J以上、溶接金属部で50J以上という極めて高い衝撃値)を安定して示す大入熱溶接用高張力鋼及び溶接金属を提供することにある。
大入熱溶接、例えば、片面大入熱サブマージアーク溶接のような、希釈率の高い溶接施工法では母材化学成分が溶接金属の化学成分に大きく関与しており、ひいては、溶接金属の特性に大きな影響を与えていることが本発明者らの実験によって明らかになってきた。つまり、母材の化学成分を設計する際には溶接金属の特性を向上させることも念頭に置き実施する必要があるのである。
本発明者らが鋭意行った研究により、HAZ靱性を向上させると溶接金属部の靱性は低下し、一方、溶接金属部の靱性を向上させるとHAZ靱性が低下するというように、HAZ靱性向上と溶接金属部の靱性向上とは相反する技術であることが判った。
本発明者らは、されに研究開発を進めた結果、主にAl、Mn、Ti及びSiを含む酸化物による粒内微細フェライトの生成促進と、B及びNの最適化による焼入性のコントロールとにより上記目的を達成することができることを知り、本発明を完成した。
ここに、本発明は、次の通りである。
(1)質量%で、C:0.07%以下、Si:0.30%以下、Mn:1.0〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.043〜0.10%、N:0.0020〜0.010%、Ti:0.012〜0.020%、B:0.0005〜0.005%残部Feおよび不可避不純物からなる化学組成を有し、かつ以下の式(1)で表されるARMの値が40〜80であることを特徴とする大入熱溶接用高張力鋼。
ARM=197−1457C−1140sol.Al+11850N−316(Pcm−C)・・・(1)
ここで、Pcm= C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
(2) 前記化学組成が、さらに、質量%で、Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%、Cr:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.20%、V:0.005〜0.20%のうちの1種または2種以上を含有する上記(1)に記載の大入熱溶接用高張力鋼。
(3) 前記化学組成が、さらに、質量%で、Mg、REMのうちの1種以上を合計で0.0005〜0.0010%含有する上記(1)または(2)に記載の大入熱溶接用高張力鋼。
(4) 質量%で、C:0.07%以下、Si:0.30%以下、Mn:1.0〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.04〜0.10%、N:0.0020〜0.010%、Ti:0.005〜0.020%、B:0.0005〜0.005%、残部Feおよび不可避不純物からなる化学組成を有し、かつ以下の式(1)で表されるARMの値が40〜80である化学組成を有する鋼材に大入熱溶接を施して得られる溶接金属であって、その化学組成が、質量%で、C:0.12%以下、Si:0.30%以下、Mn:1.0〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、合計Al量:0.01〜0.05%、N:0.0020〜0.010%、O(酸素):0.01〜0.04%、Ti:0.005〜0.020%、B:0.002〜0.008%0.008%、Feおよび不可避不純物からなり、かつ以下の式(2)で表されるARWの値が50以上であることを特徴とする溶接金属。
ARM=197−1457C−1140sol.Al+11850N−316(Pcm−C)・・・(1)
ARW=145×B/N+142×f(Al/O)−140・・・(2)
ここで、B、N、Al、O(酸素)は溶接金属中の各成分の含有量(質量%)
f(Al/O)は、Al/O<0.6のとき、f(Al/O)=−1.00+3.33×Al/O
Al/O>=0.6のとき、 f(Al/O)=1.60−Al/O である。
ここで、Pcm= C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
(5)前記鋼材の化学組成が、さらに、質量%で、Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%、Cr:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.20%、V:0.005〜0.20%のうちの1種または2種以上を含有する上記(4)に記載の溶接金属。
(6)前記鋼材の化学組成が、さらに、質量%で、Mg、REMのうちの1種以上を合計で0.0005〜0.0010%含有する上記(4)または(5)に記載の溶接金属。
(7) 上記(4)〜(6)のいずれかに記載の化学組成を有する溶接金属を含む溶接金属部から成る溶接部材であって、−56℃におけるHAZの靱性値が80J以上、溶接金属部の靱性値が50J以上である溶接部材。
(8) 上記(4)〜(6)のいずれかに記載の高張力鋼からなる鋼材に大入熱溶接を行って得られる、上記(4)の化学組成を有し、上記(7)の性能を満足する溶接金属部を有した船舶搭載用タンク。
本明細書において、「大入熱溶接」とは、入熱量が150kJ/cm以上、およそ500kJ/cmまでのサブマージアーク溶接、FCB溶接等の溶接をいう。特に、本発明はFCB溶接に適している。
ここで、FCB溶接とは、Flux Copper Backing(フラックスカッパーバッキング)溶接の略で、片面から1パスでサブマージアーク溶接をする場合に、冷却を促すことと裏ビードをきれいに生成させるために銅板を裏当て材として用いるサブマージアーク溶接のことである。
また「溶接金属部」とは、母材とHAZを除いた溶接部であり、鋼材と溶接ワイヤーの金属とが溶融凝固した部分のことをいい、溶接金属から構成される。
「鋼材」とは、板材、管材、棒材、線材、さらには形材など、鋼材一般を意味する。代表的には、板材である。さらに「溶接部材」とは、溶接により製作された部品、構造物一般を意味する。具体的には、溶接継手、あるいはタンクなどの溶接構造物である。
本発明によれば、入熱量150kJ/cm以上という大入熱溶接により高能率溶接施工を行っても、HAZおよび溶接金属のいずれにおいても良好な低温靱性を確保できる高張力鋼が提供され、圧力容器、船舶、建築、海洋構造物等の用途への高張力鋼の適用範囲の拡大を可能とする。
次に、本発明を完成するに到った研究内容の詳細について説明する。
本発明者らは脱酸現象に著しい影響を与えるAlとO(酸素)のバランス(Al/O)
及び焼き入れ性に大きな影響を与えるBとNのバランス(B/N)に着目し、Al/O、
B/Nが溶接金属部の靱性に与える影響について調査した。その結果、次に述べる点を見
出し確認した。実験には溶接金属の化学成分により算出される炭素等量Ceq値が0.25から0.38の間のものを用いた。
ここで、
Ceq= C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 (単位はいずれもmass%)
である。
(a)Al/Oの大小による溶接金属組織の変化を詳細に観察したところ、最も微細な組織(アシキュラーフェライト)が得られるのはAl/Oが0.6近傍であり、それよりも大きくても小さくても粗大な上部ベイナイトの比率が高くなり、組織は粗大化する。これは、溶接金属中に生成するスピネル型の酸化物と変態によって生成するα相との整合度の最適点を意味していると考えられる。また、FCB溶接の場合、溶接金属の酸素量は母材酸素量に関係なく、200〜300ppm程度の値を示すため、Al量は0.01〜0.02%程度にコントロールする必要があることが判った。しかしながら、これまでのHAZの靱性改善に主眼をおいた大入熱対策鋼ではHAZ中のMA(島状マルテンサイト;上部ベイナイトのラス間に生成する硬化相)量の低減およびHAZ外層でのBによる硬化を抑制するため、Alは低めに設定するのが常法であった。しかしながら、前述のように大入熱サブマージアーク溶接のような希釈率の高い溶接では、このような母材との組み合わせでは溶接金属中のAl量が少なくなりすぎて、最適なAl/Oが得られないことが判った。勿論、Alが高すぎても最適Al/Oを超えてしまうため、あるいは、HAZ靱性を損ねるため、Alの添加量の最適値には下限と上限が存在することを知見した。つまり、溶接金属中の合計Al量を0.01〜0.05%、母材のSol. Alを0.04〜0.10%にコントロールすることである。
(b)また、別の観点で溶接金属組織を観察した結果、靱性の良否を決定しているもう一つの要因として粒界フェライトの有無が挙げられた。つまり、粒界フェライトが生成しているものは、靱性が劣化していることが判った。これは他のアシキュラーフェライト組織に比べ、粒界フェライトが柔らかく、そのような軟相への歪集中が起こり靱性が損ねられているものと考えられる。
このことを回避するためには焼き入れ性を高め、フェライト変態をすることなく、冷却される状況を作る必要がある。種々実験により焼き入れ性に寄与する化学成分を適正な範囲にコントロールすることがまず必要であることが判った。
つまり、溶接金属の化学成分として、C:0.12%以下、Si:0.30%以下、Mn:1.0〜2.0%を満足すること、母材化学成分としては、C:0.07%以下、Si:0.30%以下、Mn:1.0〜2.0%、また任意に合金元素を付加的に添加する場合は、Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%、Cr:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.20%、V:0.005〜0.20%の範囲を満足することである。
これらを前提として、本発明者らは、さらに研究を続けた結果、特にB/Nを適正にコントロールすることが極めて重要であることを知見した。Bはγ時に粒界に偏析し焼き入れ性を高めることができる元素であるが、Nとの親和力が強くNと結合してしまい、単体としてのBが少なくなると焼き入れ性向上の効果は小さくなってしまう。しかしながら、Nは不可避的に鋼中に存在する元素であることから、B/Nとして適正にコントロールすることが重要であることが判った。つまり、単体としてのBを増加させるためにはB/Nは高い方が良い。しかし、Bの量を増加させすぎると析出物の増加により母材、HAZ、溶接金属の靱性または、延性破壊抵抗を損ねるため、Bの量は多すぎても良くない。また、Nに関しても低くしすぎるとHAZの結晶粒粗大化を引き起こす原因となる。つまり、B、Nをそれぞれ単独で、溶接金属中にN:0.0020〜0.010%、B:0.002〜0.008%、母材化学成分で、N:0.0020〜0.010%、B:0.0005〜0.005%にコントロールした上で、B/Nは高めに調整する。
(c)以上に述べたように溶接金属の靱性を向上させるためには、Al/OとB/Nのコントロールが最も効果的であることが判った。これは、B/Nによって、溶接金属中の固溶Bの量を制御し粒界フェライトの生成を制御し、Al/Oによって、溶接金属中の介在物を制御し、溶接金属組織がアシキュラーフェライトになるよう制御する働きを指すものである。また、この二つのパラメータには靱性向上に対して、相対的な重みがあることから、さらに詳細に分析し、効果的に溶接金属靱性を向上させるための回帰式を知見した。
つまり、溶接金属成分において、下記式で表されるARWの値を50以上とするのである。
ARW=145×B/N+1.42×f(Al/O)−140
ここで、B、N、Al、O(酸素)は溶接金属中の各成分の含有量(質量%)を示す。
なお、このARWの値を求める式を導出するための回帰計算は、同一板厚、溶接条件、および溶接材料によるデータを元にし、溶接金属中央部の−56℃シャルピー吸収エネルギーを予測する式として作成した。
さらに、HAZの靱性と溶接金属部の靱性を両立させるためには、同様の方法で多数の母材成分による回帰計算を実施したところ、下記式で表されるARMの値が40〜80であることを知見した。
ARM=197−1457C−1140sol.Al+11850N−316(Pcm−C)
ここで、C、sol.Al、Nは母材中の各成分の含有量(質量%)、
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B である。
なお、このARMを求める式の導出のための回帰計算は同一板厚・溶接条件・溶接材料によるデータを元にし、HAZの1mm母材側の位置での−56℃シャルピー吸収エネルギーを予測する式として作成した。
これら二つの回帰式の単位は敢えて言うなら[J]で表すことができる。
次に、本発明おいて高張力鋼および溶接金属の化学成分、つまり化学組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
本発明において、上述のように合金元素を限定した理由は下記の通りである。本明細書において鋼の化学組成を示す「%」は、特にことわりがない限り、「質量%」を表示するものとする。
C:
Cは強度確保のために添加される。過剰に含むと溶接熱影響部(HAZ)にマルテンサイトや擬似パーライト(パーライト中の層状セメンタイトが層状から崩れた組織)を生成してHAZ靱性を劣化させるとともに母材の靱性及び溶接性を劣化させる。そこで、上限を0.07%とする。好ましくは0.06%以下である。なお、0.01%未満では強度が不足する場合もあるので、好ましくは0.01%以上である。
Si:
Siは溶鋼の脱酸に有効な元素であり、粒内フェライトの生成核となる酸化物を構成する元素である。Siはセメンタイト中に固溶しないため、過剰に含むと未変態オーステナイトがフェライトとセメンタイトに分解するのを阻害し、微細な硬化組織である島状マルテンサイトの生成を助長し、HAZ靱性を劣化させる。このためその上限を0.30%とする。
Mn:
Mnは溶鋼の脱酸に有効な元素であり、本発明においてはフェライト生成核となる酸化物の構成元素としても必須の元素である。また、強度靱性の確保にも有効な元素である。このため、1.0%以上含有させる。しかし、過剰な含有は焼入性を過大にして溶接低温割れ性及びHAZ靱性を劣化させるため、2.0%以下とする。
P:
Pは不可避的に含有される不純物元素であり、粒界に偏析してHAZにおける粒界割れの原因となる。このため、Pは低いほど好ましいが、経済的観点を考慮して許容される範囲を0.02%以下とする。さらに、母材及びHAZの靱性を向上させ、スラブ中心偏析も低減するには、0.01%以下とすることが望ましい。
S:
SもPと同様に鋼に不可避的に含有される不純物元素である。Sが多量に存在する場合、MnS等の溶接割れ起点となる析出物を形成する。このためSは低いほど好ましいが、経済性を考慮して許容できる範囲を0.01%以下とする。さらに母材及びHAZの靱性を向上させ並びにスラブ中心偏析も低減するには、0.005%以下とすることが望ましい。
sol.Al:
Alは脱酸剤として必要な元素であり、また本発明においてはフェライト生成核となる酸化物の構成元素としても必須である。添加量については前述のように、少なすぎると、溶接金属の組織を良好に制御することが出来ず、また、高すぎるとHAZおよび溶接金属部の靱性を損ねるため、適正量には上下限が存在する。つまり、0.04%以上0.10%以下とする。
N:
本発明において、適切な範囲のNはHAZ亜粗粒域においてBNを形成し固溶Bを低減するか、あるいは、HAZ粗粒域でTiNを生成しγ粒粗大化抑制効果を発揮させる必要がある。これらの効果を得るためには0.0020%以上とする。しかし、Nが高くなりすぎると、溶接金属においてBの焼き入れ性を減じることになり、また過剰なNは固溶Nの増加によるHAZ全体にわたって一定の靱性の低下を生ずるため0.010%以下とする。
Ti:
TiはFeO等の不安定な酸化物の生成を抑制するために添加される。このため0.005%以上含有させる。また、HAZ靱性確保のため、TiN析出によるピンニング効果を得るために、含有させる。しかし、過剰なTiは粗大なTiCの析出を招きHAZ及び母材の靱性に著しく有害であるため上限を0.020%とする。好ましくは、0.018%以下とする。
B:
Bは、150kJ/cm以上の超大入熱溶接でのHAZ粗粒域の粒界フェライト生成抑制のため必須の元素であり、その効果を得るための下限値は0.0005%である。一方、過剰になると過度の焼入性上昇をもたらし特に小入熱溶接時の耐溶接低温割れ性を劣化させるので、上限を0.005%とする。好ましい下限は、0.0003%、上限は、0.0025%である。
次に、選択元素について述べる。選択元素は強度を確保したり、HAZや溶接金属部の靱性をさらに向上させるために、下記元素を少なくとも1種含有させてもよい。
Cu:
Cuは、母材の強度を高めるのに有効なので高強度鋼とする場合には添加する。0.05%未満では明確な効果が得られないので含有させる場合には0.05%以上とすることが望ましい。一方、0.50%を超えると鋳片の表面性状を劣化させ表面手入れ費用が無視できなくなるので0.50%以下とすることが望ましい。
Ni:
Niは鋼中に固溶して靱性を高め、かつ焼入性を向上させることにより強度を高めるので低温環境で使用する高強度鋼の場合には添加する。高強度鋼の場合、0.05%未満では靱性の向上が期待できないので、含有させる場合には0.05%以上とすることが望ましい。一方、0.50%を超えると焼入性が過剰になりHAZ靱性がかえって劣化するので0.50%以下とするのがよい。
Cr:
Crは安価に焼入性を高めることができるので、高強度鋼とする場合には添加する。0.05%未満では焼入性向上効果が明確に現れないので、含有させる場合には0.05%以上とすることが望ましい。一方、0.50%を超えるとHAZ靱性がかえって劣化するので0.50%以下とするのがよい。
Mo:
Moは焼入性と焼戻し軟化抵抗を高め強度を向上させるので、より一層強度を高める場合には含有させる。0.05%未満では焼戻し軟化抵抗をそれほど期待できないので、焼戻し軟化抵抗も併せて得る場合には0.05%以上とすることが望ましい。一方、0.50%を超えるとHAZの靱性低下大きくなるので0.50%以下とすることが望ましい。
Nb:
Nbは熱間圧延時の未再結晶温度域を広げ制御圧延を容易にし、強度及び靱性を向上させるのに有効である。0.005%未満では十分な強度の上昇が得られないので、含有させる場合には、0.005%以上、好ましくは、0.01%以上とすることが望ましい。一方、0.20%を超えるとHAZ靱性 を劣化させるので0.20%以下とすることが望ましい。より好ましくは、0.05%以下である。
V:
Vは炭窒化物を析出することにより焼戻し軟化抵抗を高め強度を向上させるので、強度を一層高める場合に含有させる。0.005%未満では焼戻し軟化抵抗が明確に現れないので、含ませる場合には0.005%以上とすることが望ましい。一方、0.20%を超えて過剰になると母材靱性の低下が大きくなるので0.20%以下とするのがよい。より好ましくは、0.05%以下である。
また、Mg、REM、Caも靱性向上のため必要により少なくとも1種含有させてもよい。
これらの元素を含有させる場合、Mg、REM、Caのうちの1種以上を合計で0.0005〜0.0010%含有させる。これは特にγ粒内核生成サイトを供給することによりHAZ靱性を改善させる目的で添加するものであるが、0.0005%未満であれば、その効果はなく、逆に0.0010%以上であれば靱性、あるいは延性破壊抵抗を減じることになるため、その範囲を合計で0.0005〜0.0010%と規定している。
次に、本発明にかかる鋼の製造方法について具体的に述べる。
本発明において規定する上記の組成範囲内にある鋼を転炉又は電気炉で溶製し、所定の酸化物が凝固時に均一に分散するようにする。そのためには精錬にあたって、精錬初期にAl脱酸を大部分進行させることは避けることが望ましい。Al以外の組成の調整をMn及びSi等と共に行い、さらにTi等により脱酸が進行した後、出鋼直前にAlを微量溶鋼中に投入し、得られた溶鋼を鋳造することが望ましい。
鋳造にあたっては、連続鋳造またはインゴット鋳造を行うが、凝固速度の点から連続鋳造のほうが好ましい。また、インゴット鋳造の場合は、熱間圧延に先立って、分塊圧延により鋼片(スラブ)を製造する工程を余分に通さなければならず、歩留まりも低下する。
母材中心部に介在物が残存するとHAZの靱性が悪化するので、好ましくは以下のように管理する。
JIS G0555(1998)の「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」の表1の点算法による顕微鏡試験方法によって測定された鋼の清浄度が、dA60×400で、0.040%以下、dB60×400で、0.030%以下、dC60×400で、0.030%以下、となるようにする。
これは、溶製段階において介在物を減少させる工夫をすることで達成できる。つまり、例えば、転炉→取鍋内溶鋼への不活性ガス吹き込み処理を実施することである。
さらに連続鋳造の場合、鋳片の偏析もHAZの靱性に悪影響を及ぼすので、好ましくは偏析部において、Cが0.29%以下、Pが0.30%以下、Mnが3.5%以下、Ps’が 0.62%以下となるような管理を行う方がよい。
ただし、Ps’=C+(Si/30)+(Mn/10)+P
鋳造条件については、好ましくは例えば連続鋳造にて実施すればよい。表1に精錬条件と連続鋳造条件についてまとめて示す。
Figure 0004341395
本発明において鋼板を製造する場合には、その後、熱間圧延を施して所定の厚みの鋼鈑とする。
熱間圧延の製造条件については現在公知になっている制御圧延、加速冷却、直接焼入れ焼戻し等の種々の技術を適用してもHAZおよび溶接金属の性質になんら悪影響を及ぼさない。また母材の機械的特質を向上させるために、熱間圧延後、適当な熱処理を施してもHAZおよび溶接部靱性の性質になんら悪影響を及ぼすものではない。
なお、本発明において鋼片の再加熱は必ずしも実施する必要はなく、ホットチャージ圧延やダイレクト圧延を行っても本発明の特徴を損なうものではない。
すでに述べたように、本発明にかかる鋼材には、鋼管、棒鋼などが包含されるが、その場合には、上述の製造方法を適宜変更することでそれぞれの鋼材を製造することができ、当業者には本明細書の記載からも明らかであろう。
次に、本発明において溶接金属の化学組成を前述のように限定した理由について述べる。
本発明ではより直接的に溶接金属の化学成分も規定しているが、そのときの「溶接金属」は、母材を溶接ワイヤを使用して溶接したときに得られる母材組成が溶接ワイヤにより希釈されて得られた金属組織を言い、その化学組成は、具体的には、溶接金属部の中心部に沿った化学組成を云う。なお、溶接ワイヤは、その組成は、本発明で規定する溶接金属の化学組成を実現できるものであれば、特に制限はない。
C(溶金):
Cは強度確保のために適正量含有させる。しかし、過剰に含むとマルテンサイトや擬似パーライト(パーライト中の層状セメンタイトが層状から崩れた組織)を生成して溶金靱性を劣化させる。そこで、上限を0.12%とする。
Si(溶金):
Siは強度確保のために適正量含有させる。しかしながら、過剰に含むと未変態オーステナイトがフェライトとセメンタイトに分解するのを阻害し、微細な硬化組織である島状マルテンサイトの生成を助長し溶金靱性を劣化させる。このためその上限を0.30%とする。
Mn(溶金):
Mnは強度確保のために1.0%以上含有させる。しかしながら、過剰に含むと焼入性を過大にして溶金靱性を劣化させるため、2.0%以下とする。
P(溶金):
Pは不可避的に含有される不純物元素であり、粒界に偏析して溶金組織における粒界割れの原因となる。このため、0.02%以下とする。
S(溶金):
SもPと同様に鋼に不可避的に含有される不純物元素である。Sが多量に存在する場合、MnS等の溶接割れ起点となる析出物を形成する。このためSは低いほど好ましいが、経済性を考慮して許容できる範囲の0.01%以下とする。
合計Al量(溶金):
Alは溶接金属中で極めて重要な元素である。溶接金属中には酸素が比較的豊富に存在することから、酸化物が生成し、それを積極的にアシキュラーフェライトの析出核として用いているが、酸化物からのα核生成能を良好に確保するためにはAl/Oを望ましくは、0.6近傍にコントロールする。Al量としては合計Al量として、0.01〜0.05%とする。
N(溶金):
Nも重要な元素であるが、特に溶接金属においてはBと結合し、Bが有している焼き入れ性向上効果を減殺することがある。このため、0.010%以下にコントロールすることが望ましい。また、溶接金属のNが少なすぎることは、つまりは母材Nが少なすぎることを意味しており、この場合HAZ靱性を損ねる結果となるため、下限を0.0020%とした。
O(溶金):
OはAlの項で述べたように酸化物生成の観点で重要である。少なすぎると酸化物の個数自体が不足する、あるいは最適Al/Oが得られないこととなり、多すぎると、組織の靱性を下げる結果となる、あるいは最適Al/Oが得られないこととなるため、0.01〜0.04%の間にコントロールする。
Ti(溶金):
TiはHAZ靱性の確保のため、TiN析出によるピンニング効果を得るために、0.005%以上添加の必要がある。しかし、過剰なTiは粗大なTiCの析出を招き溶金靱性 に著しく有害であるため上限を0.020%とする。
B(溶金):
Bは溶金の焼き入れ性向上の観点で極めて重要な元素である。少なすぎると十分な焼き入れ性向上効果が得られず、また多すぎると組織の靱性を下げる結果となるため、0.002〜0.008%の間にコントロールする。
上記した必須元素以外にも、任意元素を添加しても本発明の効果は残る。
ここで、ARMおよびARWのそれぞれの値を求める式の意味について述べる。
HAZあるいは溶接金属部の靱性を確保するためには、母材の化学成分を上述の個々の最適範囲に満足させた上で、下記式(1) で示すARMの値を40〜80にコントロールする。
ARM=197−1457C−1140sol.Al+11850N−316(Pcm−C)・・・(1)
ここで、Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
この式は本発明者らの研究によって得られた化学成分による回帰式であるが、特にAl、N、Bのこれまで述べてきた効果の靱性に対する影響を相対的に重み付けしている。この式により、極めて効率的に大入熱溶接用高張力鋼を得ることが可能になる。
本発明によれば、このようにして大入熱溶接用高張力鋼を得ることができるが、さらに直接的に溶接金属の化学成分を用いて同様の最適範囲を決定する回帰式を提案している。
つまり、下記式(2) に示すARWの値を50以上にコントロールすることで良好な靱性を有した溶接金属を得ることができる。
ARW=145×B/N+142×f(Al/O)−140・・・(2)
ここで、B,N,Al,O(酸素)は溶接金属中の各成分の含有量(質量%)
f(Al/O)は、Al/O<0.6のとき、 f(Al/O)=−1+3.33×Al/O
Al/O≧0.6のとき、f(Al/O)=1.6−Al/O である。
この組成を満たすには、鋼材とともに使用する溶接ワイヤーも重要であり、本発明の鋼材を用いてサブマージアーク溶接する場合には、例えば
ワイヤー:US255(神戸製鋼製)AWS規格でF9A5-EG-G又はF8P5-EG-G相当
フラックス:PFI-50LT(表)、PFI-50R(裏)(神戸製鋼製)
を使用することが好ましい。この溶接ワイヤーは、低温用鋼溶接用溶接材料であり、このような材料を用いて前述したような溶接金属の組成を得ることができる。
また、HAZおよび溶接金属部での靱性は、−56℃においてHAZで80J以上、溶接金属部で50J以上が好ましい。
これは船舶搭載用タンク用として要求される性能で、非常に厳しいものである。なお、80J以上は平均値であり、個々の値は50J以上が好ましい。溶接金属部も平均値50J以上であるが、個々の値は30J以上が好ましい。
なお、本発明において、靱性値を測定する箇所は表面下2mmの位置とする。
また、組織制御の観点で、粒界フェライトを抑制することが重要であると前述したが、粒界フェライトの観察方法についても紹介しておく。すなわち、溶接方向と垂直断面を割断し、ダイヤモンドペーストを用いて鏡面研磨を実施した後、ナイタルエッチングにより溶融線を明確化し、溶接金属領域を確定する。溶接金属部の全域について倍率100倍の光学顕微鏡にて観察し、粒界フェライトの有無を調査した。
ここで、靱性の良かったもの、つまり、焼き入れ性の高かったものについては溶接金属組織の任意断面中において粒界フェライトの面積率が5%以下であることを確認している。
表2に示す鋼種A1〜A18の鋼を、実験設備の80Kg転炉で溶製し、得られた鋼塊から分塊圧延および熱間圧延を経て、厚さ25mmの熱延鋼板を得た。
得られた熱延鋼板に圧延方向に溶接施工を実施した。溶接条件は表3の通りである。このとき得られた溶接継手に、シャルピー衝撃試験および化学成分分析を実施した。シャルピー衝撃試験は表面下2mmから採取し、ノッチ位置は溶接金属、溶融線および溶融線+1mmとした。繰り返し数は3とし試験温度を−56℃とした。化学成分分析は母材の1/4tで実施したほか、溶接金属中央においても実施した。
Figure 0004341395
Figure 0004341395
Figure 0004341395
Figure 0004341395
表4に溶接金属の分析結果を、そして表5に衝撃試験結果を示す。
表5からも分かるように、本発明の範囲に適合しているW1〜W30の継手はいずれのノッチ位置においても優れたシャルピー衝撃特性を有している。
しかしながら、C量の高いW33は溶接金属部およびHAZともに目標を満足できていない。Alの少ないまたは、ARM値の低いW34、35ではアシキュラーフェライトが目標通りに生成しておらず、主に溶接金属部が特性を満足できていない。Al過多のW36は主にHAZが特性を満足できていない。N量の少ないW37はHAZが特性を満足できていない。TiNによるγ粒微細化効果が得られていないことによるものと考えられる。N量過多のW38は溶接金属部が不芳の他、F.L..+1mmでも特性が劣化している。これは固溶Nの増加によりマトリックスの靱性が劣化したためと考えられる。また、成分単味では全て適正範囲を満たしているものの、ARMパラメータが適合範囲を上限側に逸脱しているW39は溶接金属部が不芳である。 B過多のW40はARMパラメータも上限側に範囲を逸脱しているため、溶接金属部が不芳であるほか、F.L.位置においても低値が発生している。Ti過多であるW41はARM、ARWも満足しているが、TiCなどの析出により靱性が全体的に低下していると考えられ、溶接金属部およびHAZともに目標に未達である。

Claims (8)

  1. 質量%で、C:0.07%以下、Si:0.30%以下、Mn:1.0〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.043〜0.10%、N:0.0020〜0.010%、Ti:0.012〜0.020%、B:0.0005〜0.005%
    残部Feおよび不可避不純物からなる化学組成を有し、かつ以下の式(1)で表されるARMの値が40〜80であることを特徴とする大入熱溶接用高張力鋼。
    ARM=197−1457C−1140sol.Al+11850N−316(Pcm−C)・・・(1)
    ここで、Pcm= C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
  2. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%、Cr:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.20%、V:0.005〜0.20%のうちの1種または2種以上を含有する請求項1に記載の大入熱溶接用高張力鋼。
  3. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Mg、REMのうちの1種以上を合計で0.0005〜0.0010%含有する請求項1または2に記載の大入熱溶接用高張力鋼。
  4. 質量%で、C:0.07%以下、Si:0.30%以下、Mn:1.0〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.04〜0.10%、N:0.0020〜0.010%、Ti:0.005〜0.020%、B:0.0005〜0.005%、残部Feおよび不可避不純物からなる化学組成を有し、かつ以下の式(1)で表されるARMの値が40〜80である化学組成を有する鋼材に大入熱溶接を施して得られる溶接金属であって、
    その化学組成が、質量%で、C:0.12%以下、Si:0.30%以下、Mn:1.0〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、合計Al量:0.01〜0.05%、N:0.0020〜0.010%、O(酸素):0.01〜0.04%、Ti:0.005〜0.020%、B:0.002〜0.008%、Feおよび不可避不純物からなり、かつ以下の式(2)で表されるARWの値が50以上であることを特徴とする溶接金属。
    ARM=197−1457C−1140sol.Al+11850N−316(Pcm−C)・・・(1)
    ARW=145×B/N+142×f(Al/O)−140・・・(2)
    ここで、B、N、Al、O(酸素)は溶接金属中の各成分の含有量(質量%)
    f(Al/O)は、 Al/O<0.6のとき、 f(Al/O)=−1+3.33×Al/O
    Al/O≧0.6のとき、 f(Al/O)=1.6−Al/O である。
    ここで、Pcm= C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
  5. 前記鋼材の化学組成が、さらに、質量%で、Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%、Cr:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.20%、V:0.005〜0.20%のうちの1種または2種以上を含有する請求項4に記載の溶接金属。
  6. 前記鋼材の化学組成が、さらに、質量%で、Mg、REMのうちの1種以上を合計で0.0005〜0.0010%含有する請求項4または5に記載の溶接金属。
  7. 請求項〜6のいずれかに記載の化学組成を有する溶接金属を含む溶接金属部から成る溶接部材であって、−56℃におけるHAZの靱性値が80J以上、前記溶接金属部の靱性値が50J以上である溶接部材。
  8. 請求項4〜6のいずれかに記載の高張力鋼からなる鋼材に大入熱溶接を行って得られる、請求項記載の化学組成を有し、請求項記載の性能を満足する溶接金属部を有した船舶搭載用タンク。
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