JP4299754B2 - 大入熱溶接熱影響部の低温靭性に優れた厚手高強度Ni含有鋼材 - Google Patents

大入熱溶接熱影響部の低温靭性に優れた厚手高強度Ni含有鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、大入熱溶接継手における溶接熱影響部(Heat Affected Zone:HAZ)の低温靭性に優れた厚手高強度鋼材に関するものである。本発明は、鉄鋼業において製造される厚鋼板に主に適用されるが、厚鋼板以外のH形鋼や鋼管などの鉄鋼製品へ適用することも可能である。本発明を適用した鋼材は、造船、建築、橋梁、タンク、海洋構造物、ラインパイプなどの溶接構造物に使用され、溶接施工能率の高い大入熱溶接を施され、かつ、低温での溶接部靭性が厳しく要求される場合に好適である。
近年、造船に代表される溶接構造物に対する主要な要求は、構造の大型化、建造の高能率化、破壊に対する安全性向上等である。このような動向を受け、溶接構造用鋼材には厚手化、高強度化、大入熱溶接化、溶接部靭性の低温保証化等への対応が求められている。例えば、近年急速な進化を遂げつつある大型コンテナ船に用いられる鋼板に対して、50〜100mmの厚みと390〜460MPa級の降伏強度を有しつつ、20kJ/mm以上の大きな溶接入熱量で高能率な1パス溶接を施した場合のHAZにおいて、−40℃という低温でのシャルピー衝撃特性を満足することが求められつつある。
このような大入熱溶接に伴うHAZ組織の粗大化による脆化の問題に対して、オーステナイト(γ)結晶粒の粗大化抑制を狙った析出物粒子によるピン止めが有効であり(例えば、非特許文献1参照。)、また、γ結晶粒内の析出物粒子からのフェラト変態が有効であること(例えば、特許文献1〜4参照。)が知られている。
また、このような厚手高強度鋼の大入熱HAZ靭性に関する最新技術として、例えば、非特許文献2に記載された技術がある。この技術は、CuやNiなどの有害元素の添加を控えて、Ceq低減によって焼入性を低下させ、大入熱HAZ靭性を確保するものである。
なお、大入熱HAZ靱性の要求に対応できた従来例もあるが、その場合は、母材の強度が高くても板厚が小さい場合や、母材の板厚が大きくても強度が低い場合であり、しかも靭性評価温度が−20℃と比較的高い場合であって、そのままでは上記のような問題を解決できるものではなかった。
特開昭60−245768号公報 特開昭60−152626号公報 特開昭63−210235号公報 特開平02−250917号公報 鉄と鋼、第62年(1976)、第9号、p.1209−1218、「低炭素・低合金鋼のオーステナイト粒度に及ぼすTiNの分散状態の影響」 R&D神戸製鋼技報、Vol.52、No.1(Apr.2002)、p.2〜5、「大型コンテナ船用大入熱溶接型YP355〜460MPa級鋼板および溶接材料」
しかしながら、本発明が目的とする−40℃でのHAZ靭性は、上記特許文献1〜4ないし非特許文献1に記載の発明に基づく組織微細化技術を適用しても十分には確保できないことが判明した。
また、上記の非特許文献2に記載の発明では、母材の厚手高強度化を達成するために、圧延後の加速冷却を強化する必要があり、加速冷却設備の改造や新設などの設備投資が強いられる。しかも、同文献に記載の発明のように加速冷却工程に大きな負荷をかけたとしても、溶融線近傍HAZにおいて−40℃のシャルピー衝撃特性を達成できるか否かは同文献には開示されていない。さらに、同文献に記載の発明での母材性能の到達レベルは、0.33の低いCeqのもとで高々55mmの厚みで460MPa級の降伏強度を達成するレベルのものであるため、同文献に記載の発明では、本発明が目的とする最難関レベルの、100mmの板厚で460MPa級の降伏強度を達成することは困難である。
ところで、本発明が対象とする技術領域では、母材の厚手高強度化が進むほど大入熱HAZ靭性が劣化する運命にある。この理由の一つは、母材の厚手高強度化に伴って化学成分的な焼入性(たとえばCeq)が増加し、HAZが硬化するためである。二つ目の理由は、母材の厚手化に伴って1パス溶接時の溶接入熱量が増加し、HAZが受ける熱ダメージが大きくなって金属組織が粗大化するためである。板厚が小さいと1パス溶接に必要な溶接入熱量が小さくなるので、このような難しさはない。以上のHAZ硬化とHAZ組織粗大化という二つの理由が重畳する点に大入熱HAZ靭性を確保することの困難さがあり、母材の厚みと強度を勘案したうえで、大入熱HAZ靭性の到達レベルの向上を検討することが重要である。
以上のように、本発明が目的とする母材とHAZの性能を満足する鋼材を、特定の技術思想に基づいて安定的に製造できる技術は確立されていない。大型コンテナ船をはじめ、年々進化する大型溶接構造物に対して、本発明が目的とする性能を有する鋼材の提供が強く求められつつある。
本発明は、母材の厚手高強度化を前提としたうえで、良好な大入熱HAZ靭性を達成すること、例えば、50〜100mmの厚みと390〜460MPa級の降伏強度を有し、20kJ/mm以上の溶接入熱量で1パス溶接されたHAZにおいて、−40℃でのシャルピー衝撃特性(吸収エネルギー平均値≧47J)を満足することのできる、大入熱溶接熱影響部の低温靭性に優れた厚手高強度Ni含有鋼材を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は、下記のとおりである。
(1)質量%で、C :0.03〜0.08%、Ni:0.5〜4%、Mn:0.7〜2%、Nb:0.001〜0.025%、P :0.015%以下、S :0.005%以下、Al:0.001〜0.05%、O :0.004%以下を含有するとともに、質量%を用いて計算される式(1)〜(4)を満たし、残部が鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする、大入熱溶接熱影響部の低温靭性に優れた、板厚50〜100mmの厚手高強度Ni含有鋼材。
0.35≦Ceq≦0.45 (1)
ただし、
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15
Mn≦−10C+2.3 (2)
S≦−0.0014Mn+0.0057 (3)
Si+Cu+Cr+1.5Mo+15Nb+4V≦0.4 (4)
(2)さらに質量%で、Si:0.01〜0.4%、Cu:0.01〜0.4%、Cr:0.01〜0.4%、Mo:0.01〜0.27%、V :0.001〜0.1%の中から1種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の大入熱溶接熱影響部の低温靭性に優れた、板厚50〜100mmの厚手高強度Ni含有鋼材。
(3)さらに、質量%で、Ni:0.5〜1.2%であり、N :0.002〜0.008%、Ti:0.005〜0.02%を含有することを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の大入熱溶接熱影響部の低温靭性に優れた板厚50〜100mmの厚手高強度Ni含有鋼材。
(4)さらに、質量%で、Ni:0.5〜1.2%であり、B :0.0003〜0.003%を含有することを特徴とする、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の大入熱溶接熱影響部の低温靭性に優れた、板厚50〜100mmの厚手高強度Ni含有鋼材。
(5)さらに、質量%で、Ni:0.5〜1.2%であり、Ca:0.0003〜0.004%、Mg:0.0003〜0.004%、La+Ce:0.001〜0.02%、Zr:0.001〜0.02%の1種以上を含有することを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の大入熱溶接熱影響部の低温靭性に優れた、板厚50〜100mmの厚手高強度Ni含有鋼材。
本発明によれば、50〜100mmの厚みと390〜460MPa級の降伏強度を有し、20kJ/mm以上の溶接入熱量で1パス溶接されたHAZにおいて、−40℃でのシャルピー衝撃特性(吸収エネルギー平均値≧47J)を満足する鋼材を提供することが可能となる。そのため、本発明を適用した鋼材を造船をはじめとする各種の大型溶接構造物に用いて、溶接施工能率の高い大入熱溶接を施した場合でも、良好なHAZ靭性を低温域でも確保することが可能である。その結果、鋼構造物の経済性と安全性を飛躍的に向上させることができる等、産業上の効果は計り知れない。
本発明の化学成分に関する基本的な前提として、本発明では、まず、炭素当量Ceqの許容範囲が規定される。すなわち、Ceqは、溶接性を表す一般的な指標であると同時に、化学成分的な焼入性を意味するものであるが、本発明が目的とする母材の厚手高強度化を従来の加速冷却設備を用いて安定的に達成するために、0.35以上のCeqを確保して化学成分的な焼入性を維持する必要がある。一方、良好な溶接性を維持するために0.45以下のCeqに抑える必要がある。これが式(1)を規定する理由である。
次に、20kJ/mm以上の溶接入熱量の大入熱HAZ靭性を−40℃で保証するための技術的課題を検討すると、まず第一に、大入熱溶接に伴うHAZ組織の粗大化によって脆化する課題があり、第二には、−40℃という低い試験温度に起因して脆性破壊が生じやすくなるという課題があることが分かる。一つ目の課題に対して、非特許文献2に記載されているような、オーステナイト(γ)結晶粒の粗大化抑制を狙った析出物粒子によるピン止め効果や、特許文献1〜4に記載されているような、γ結晶粒内の析出物粒子からのフェラト変態の効果は、本発明が目的とする−40℃でのHAZ靭性評価では、十分な靭性は得られないことは先に述べたとおりである。
そこで、本発明では、二つ目の課題に焦点をあて、これを克服することに注力した。−40℃のような低温での脆性破壊は、局部脆化相の存在と、マトリックス(フェライト地)の靭性が、大きく影響すると考え、C低減とNi増加を基本思想とした。C低減の技術思想は、局部脆化相であるC濃化相(セメンタイト、パーライト、MA:Martensite-Austenite constituent)の減少を、Ni増加の技術思想は、固溶Niによるマトリックス(フェライト)の高靭化を意図したものである。この理由から、Cを0.08%以下に抑え、Niを0.5%以上含有させることを、本発明の特徴とした。
厚手母材の強度と溶接性を確保する観点から、Ceqを0.35〜0.45の高い範囲に制御し、0.03〜0.08%CのもとでNiを0.5%以上含有させ、厚手材特有の高能率溶接である大入熱溶接のHAZ靭性の向上を検討した結果、新たな二つの技術的課題が生じた。一つ目の課題は、経済性の観点から高価なNiの添加を極力抑え、安価なMnを添加して母材強度を確保することを考えると、Mnが多い場合に中心偏析(マクロ偏析)に対応する大入熱HAZに粗大なMnSやMAが生成し、−40℃のHAZ靭性が向上しないことである。二つ目の課題は、Niを含有することに起因してミクロ偏析が発達し、その部分に対応する大入熱HAZにMAが生成し、−40℃のHAZ靭性が向上しないことである。つまり、低C化してNiを含有させつつ経済性の観点からMnを併用すると、マクロおよびミクロな凝固偏析に起因してMnSやMAが生成し、−40℃での大入熱HAZ靭性が向上しない懸念が判明した。このような大入熱HAZにおける凝固偏析起因の脆化現象は、これまでほとんど注目されてこなかったものである。従来鋼ではCレベルが比較的高くて、Ceqレベルが比較的低いため、NiやMnなどの偏析助長元素を本発明のように多く添加する必要がなかったからである。したがって、従来鋼での凝固偏析の発達は軽微であり、大入熱HAZでのその有害性は顕在化しなかったのである。一方、本発明では母材の強度と板厚の観点から高いCeqを余儀なくされた上で、−40℃保証の観点から低Cを指向してNiとMnを多く添加する必要があるため、凝固偏析が著しく発達し、大入熱HAZでの凝固偏析の有害性が顕在化するのである。特に、Ni含有に起因するミクロ偏析部の大入熱HAZにおける有害性は、これまでほとんど検討されてこなかった全く新しい技術課題である。以上の凝固偏析に起因する大入熱HAZの脆化現象を、いかに解決するかが本発明のもっとも重要な課題であり、これらの偏析にかかわる技術課題を鋭意検討していくなかで、下記の解決策を見出すことで、本発明の完成に至った。
すなわち、まず、Mnが多い場合に顕在化するマクロ偏析の有害性を解決するために、Cに応じてMnを適正化し、さらにMnに応じてSを適正化することが有効と判明した。本発明が目的とする大入熱HAZにおいて、式(2)を満たすときにMAやMnSの生成が抑えられ、靭性が向上する。Cが低いほどMnの中心偏析が軽減されることは知られているが、ここでは大入熱HAZでのMAやMnSの生成挙動と対応させて式(2)を導いた点が新しい。さらに、式(3)に従ってMnに応じてSを制御することで、MnS生成が効果的に抑えられ、大入熱HAZ靭性が安定的に向上することを確認した。
次に、本発明の最も大きな技術課題である、Ni含有に起因するミクロ偏析部の大入熱HAZにおける有害性を解決するめに、Si、Cu、Cr、Mo、Nb、Vの添加量を厳格に制御することが有効であることが判明した。これらの合金元素は、大入熱HAZにおけるミクロ偏析部でMAの生成を助長する点で、いずれの元素も著しく有害であることを発見した。これは、凝固時にNiがデンドライト樹間に偏析するときに、これらの合金元素も一緒に偏析してしまい、ミクロ偏析中の合金濃化度が著しく高まるためである。このようなミクロ偏析のHAZにおける有害性は、溶接入熱量の増加とともに顕在化し、小入熱多層溶接では有害性は小さく、1パス大入熱溶接では著しく有害であることを知見した。一方で、本発明が目的とする厚手母材の強度を安定的に満たすためには、C、Ni、Mnの添加に加えてこれらの元素をできる限り活用することが望まれる。そこで、20kJ/mm以上の大入熱溶接を適用する場合、式(4)に従ってSi、Cu、Cr、Mo、Nb、Vの添加量を厳格に制限すれば、大入熱HAZのミクロ偏析部のMA生成が抑えられ、Ni含有に起因するHAZ靭性の有害性を回避しつつ、厚手母材の強度を高められることが判明した。
本発明の鋼成分に近いNi含有鋼板として、低温圧力容器用ニッケル鋼鋼板が知られており、JIS G 3127で規格化されている。このような規格品のNi含有鋼板は、板厚、強度、鋼成分の点で必ずしも本発明に合致するものではなく、さらには、厚手材特有の高能率溶接である1パス大入熱溶接のHAZ靭性は考慮されていない。このような汎用のNi含有鋼板は、LPGタンク向けなどを中心に低温靭性を重視する目的で使用されるから、HAZ靭性を大きく損なう危険のある大入熱溶接は適用されず、小入熱多層溶接が施されるからである。従って、汎用のNi含有鋼をベースに鋼成分を改良して本発明の母材特性(板厚、強度)を造り込んだとしても、大入熱溶接部のHAZ靭性を確保するための技術的な要点をつかまない限り、安定的に−40℃の大入熱HAZ靭性を確保することは難しい。本発明はこの観点から、Ni含有に起因するミクロ偏析の大入熱HAZにおける有害性を抽出し、この有害性を回避する手段を鋭意検討し、式(4)で示される厳格な合金設計手法を確立した点で新しい。
以下に、本発明における化学成分の限定理由について詳細に説明する。
Cは、厚手母材の強度と靭性を確保するために0.03%以上必要である。低温でのHAZ靭性を確保するためにCを0.08%以下に抑える必要がある。Cに応じて式(2)を満たす化学成分の調整を行い、大入熱HAZでの偏析の有害性を回避する必要がある。
Niは、本発明の特徴的な元素である。低温でのHAZ靭性を確保するために0.5%以上のNiが必要である。Niは厚手母材の強度と靭性を確保することにも有効である。ただし、4%を超えてNiを添加すると、HAZ靭性におけるミクロ偏析の有害性が顕著となると同時に、合金コストの観点から経済性を大きく損なうため、これを上限とする。
Mnは、厚手母材の強度と靭性を経済的に確保するために0.7%以上必要である。ただし、2%を超えてMnを添加すると、HAZ靭性における中心偏析の有害性が顕著となるため、これが上限である。なお、このMnは、式(2)に従ってCに応じて制御する必要がある。
Nbは厚手母材の強度と靭性を安定的に確保するために0.001%以上必要である。ただし、0.025%を超えてNbを添加すると、大入熱HAZでの析出硬化が顕著となって、HAZ靭性が劣化するため、これが上限である。また、大入熱HAZのミクロ偏析部のMA生成を抑制する観点から、Nbは式(4)に従ってその他の合金元素とのバランスをとりながら厳格に制御する必要がある。
PとSは、不純物元素であり、低温でのHAZ靭性を安定的に確保するために、それぞれ0.015%以下、0.005%以下に低減する必要がある。特に、Sは、式(3)に従ってMnに応じて制御する必要がある。
Alは、脱酸を担い、不純物元素であるOを0.004%以下に低減するために必要である。Al以外にもMnやTiやSiも脱酸に寄与するが、たとえこれらの元素が添加される場合でも、0.001%以上のAlがないと安定的にOを0.004%以下に抑えることは難しい。ただし、Alが0.05%を超えると、アルミナ系の粗大酸化物やそのクラスターが生成し、母材とHAZの機械的性質が損なわれるため、これが上限である。
Oは、0.004%以下に抑える必要がある。Oが0.004%を超えると、酸化物の一部が粗大化し、母材とHAZの靭性が損なわれる。
Si、Cu、Cr、Mo、Vは、厚手母材の強度と靭性を確保するために、必要に応じて1種以上を添加する。このような効果を発揮する下限は、Si、Cu、Cr、Moについては0.01%であり、Vについては0.001%である。ただし、これらの元素が多すぎると、大入熱HAZにおけるミクロ偏析部でMAが生成する有害性が顕著となるため、各々の元素について上限を設ける必要がある。Si、Cu、Crの上限は0.4%であり、Moの上限は0.27%であり、Vの上限は0.1%である。さらに、これらを複合添加する場合は、Nbを含めて式(4)に従って厳格に制御することが本発明では極めて重要である。
TiとNは、TiNを形成し、HAZ組織の微細化を通じてHAZ靭性の向上に寄与する。TiNによるγ粒成長のピン止め効果や、TiNやTi系酸化物からのフェラト変態効果により、HAZ組織を微細化する。そのためには0.005%以上のTiと、0.002%以上のNが必要である。ただし、Tiが0.02%を超えたり、Nが0.008%を超えると、粗大TiNやTiC析出による脆化や、固溶Nによる脆化が生じるため、これが上限である。
Bは、厚手母材の製造において焼入性を高め、強度と靭性の確保に寄与する。また、大入熱HAZにおいてNをBNとして固定し、固溶Nによる脆化を軽減する。同時に、BNからのフェライト変態効果によってHAZ組織が微細化し、靭性が向上する。これらの効果を発揮するためには、0.0003%以上のBが必要である。ただし、Bが0.003%を超えると溶接性が劣化する恐れがあるため、これが上限である。
Ca、Mg、LaとCe、Zrは、脱硫元素であり、中心偏析部の粗大な延伸MnSの生成を抑え、硫化物を球状化して無害化することで、母材とHAZの機械的性質を改善する。また、TiNの微細析出を促し、ピン止め効果を強化する場合もある。これらの効果を発揮するためには、CaとMgは0.0003%以上、La+CeとZrは0.001%以上必要である。ただし、これらの添加量を増やしても効果は飽和するため、経済性の観点から、CaとMgの上限は0.004%、La+CeとZrの上限は0.02%である。
次に、本発明を適用した鋼材の製造方法を厚鋼板の製造方法を例にして説明する。
鉄鋼業の製鋼工程において、溶鋼を所定の化学成分に調整した後、連続鋳造によって鋳片を造る。鋳造時の冷却途中あるいは冷却後に鋼片を再加熱し、厚板圧延によって所定の厚みの鋼板を造り、Ar3点以上の温度から水冷による加速冷却を行う。冷却後に焼き戻し処理を行い、所定の強度と靭性に調整する。HAZ靭性は鋼の化学成分できまり、母材の製造工程に大きく依存しない。
転炉で合金成分を調整した溶鋼を連続鋳造して鋼片を作製し、これを再加熱して厚板圧延によって50〜100mm厚みの鋼板とし、引き続きAr3点以上から加速冷却を適用して室温付近まで冷却した後、500〜600℃で焼戻し熱処理を行った。表1に鋼の化学成分を、表2に鋼板の機械的性質を示す。鋼の化学成分と鋼板の板厚を考慮して、鋼板の降伏強度ができるだけ増加するように鋼板の製造条件を調整した。溶接入熱量が20〜120kJ/mmであるエレクトロガス溶接(EGW)あるいはエレクトロスラグ溶接(ESW)を用いて、鋼板を突き合せて立て向き1パス溶接を行った。そして、板厚中央部(t/2)に位置するHAZにおいて、FL(溶融線)から1mm離れたHAZとFLの2箇所にノッチを入れ、−40℃でシャルピー衝撃試験を行った。表2に溶接条件とHAZ靭性を示す。ここでのシャルピー衝撃試験は、JISZ2242に準拠して行った。また、試験片は、JISZ2202に準拠したVノッチ試験片(高さ10mm×幅10mm×長さ55mm)を用いた。
鋼1〜14は本発明鋼であり、鋼の化学成分が適正に制御されているために、所定の母材性能を満たしつつ、−40℃での大入熱HAZ靭性が良好である。一方、鋼15〜22は比較鋼であり、鋼の化学成分が適正に制御されていないために、母材強度や大入熱HAZ靭性が不十分である。鋼15はCが低すぎるため、たとえCeqレベルが適正であっても、80mm厚みの母材で390MPa級の降伏強度を確保することが難しい。鋼16はNiが少なすぎるため、−40℃での大入熱HAZ靭性が不十分である。鋼17はMnが多過ぎると同時に、式(2)が満たされないため、中心偏析部にMnSやMAが生成し、母材および大入熱HAZの両方において、−40℃での靭性が不十分である。鋼18は式(2)を満たさないため、鋼19は式(3)を満たさないため、中心偏析部にMnSやMAが生成し、母材や大入熱HAZの靭性が不十分である。鋼20、鋼21、鋼22はSi,Cu,Cr,Mo,Nb,Vの総和が多すぎて式(4)を満たさないため、ミクロ偏析部にMAが多く生成し、大入熱HAZ靭性が不十分である。
Figure 0004299754
Figure 0004299754

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C :0.03〜0.08%、
    Ni:0.5〜4%、
    Mn:0.7〜2%、
    Nb:0.001〜0.025%、
    P :0.015%以下、
    S :0.005%以下、
    Al:0.001〜0.05%、
    O :0.004%以下
    を含有するとともに、質量%を用いて計算される式(1)〜(4)を満たし、残部が鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする、大入熱溶接熱影響部の低温靭性に優れた、板厚50〜100mmの厚手高強度Ni含有鋼材。
    0.35≦Ceq≦0.45 (1)
    ただし、
    Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15
    Mn≦−10C+2.3 (2)
    S≦−0.0014Mn+0.0057 (3)
    Si+Cu+Cr+1.5Mo+15Nb+4V≦0.4 (4)
  2. さらに質量%で、
    Si:0.01〜0.4%、
    Cu:0.01〜0.4%、
    Cr:0.01〜0.4%、
    Mo:0.01〜0.27%、
    V :0.001〜0.1%、
    の中から1種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の大入熱溶接熱影響部の低温靭性に優れた、板厚50〜100mmの厚手高強度Ni含有鋼材。
  3. さらに、質量%で、
    Ni:0.5〜1.2%であり、
    N :0.002〜0.008%、
    Ti:0.005〜0.02%
    を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の大入熱溶接熱影響部の低温靭性に優れた、板厚50〜100mmの厚手高強度Ni含有鋼材。
  4. さらに、質量%で、
    Ni:0.5〜1.2%であり、
    B :0.0003〜0.003%
    を含有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の大入熱溶接熱影響部の低温靭性に優れた、板厚50〜100mmの厚手高強度Ni含有鋼材。
  5. さらに、質量%で、
    Ni:0.5〜1.2%であり、
    Ca:0.0003〜0.004%、
    Mg:0.0003〜0.004%、
    La+Ce:0.001〜0.02%、
    Zr:0.001〜0.02%
    の1種以上を含有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の大入熱溶接熱影響部の低温靭性に優れた、板厚50〜100mmの厚手高強度Ni含有鋼材。
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