JP4912725B2 - 溶接熱影響部靭性の優れた鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼板の製造方法に関し、特に本発明は、船舶、海洋構造物、中高層ビルなどに使用される溶接熱影響部(Heat Affected Zone:以下、HAZと記載)の靭性を向上させることができる溶接構造用鋼板の製造方法に関するものである。
近年、造船に代表される溶接構造物に対する主要な要求は、構造の大型化、建造の高能率化、破壊に対する安全性向上である。このような動向を受け、溶接構造用鋼材には厚手化、高強度化、大入熱溶接化に対応しつつ、より一層の高いHAZ靭性が求められる。たとえば、近年急速な進化を遂げつつある大型コンテナ船に用いられる鋼板に対しては、50〜80mmの大きな厚みと390MPa以上の高い母材強度(例えば、降伏強度や引張強度)を有しつつ、200kJ/cm以上の大きな溶接入熱量で高能率な1パス溶接を施した場合のHAZにおいて、−40℃という低温で高いシャルピー衝撃吸収エネルギーを要求されることがある。このように、母材の厚手高強度化を前提としたうえで、良好な大入熱溶接HAZ靭性を達成することが求められている。一般的には、母材の厚手高強度化に伴って化学成分的な焼入性(たとえばCeq)が増加するため、HAZが硬化しHAZ靭性の確保が難しくなる。また、母材の厚手化に伴って1パス溶接時の溶接入熱量が増加し、HAZが受ける熱ダメージが大きくなり金属組織が粗大化し、HAZ靭性の確保が難しくなる。さらに、要求される靭性レベル(破壊吸収エネルーや靭性保証温度)が高度化することでHAZ靭性の確保がますます難しくなる。
HAZ靭性を向上させるためには、大入熱溶接に伴うHAZ組織の粗大化による脆化を抑制し、大入熱溶接においてHAZ組織を微細化する必要がある。従来の方法として、オーステナイト(γ)結晶粒の粗大化抑制を狙った析出物によるγ粒界移動のピン止め効果を利用した方法がある。ピン止め効果によって、HAZにおけるγ結晶粒粗大化を抑制すると、γ粒界から変態組織がγ細粒化に伴って微細化するため、靭性が向上する。(例えば特許文献1)
さらに、前記ピン止め効果とγ粒界に存在する析出VNによる変態促進効果を組み合わせることで、HAZ組織をさらに微細化し、靭性を向上させる方法もある。γ粒界に析出したVNが優先的な変態場所として機能することにより、特にVNの周囲において変態組織を微細化させることができる。なお、γ粒界にピン止め粒子とVNが共存する形態として、複合と単独の二種類が存在するが、γ粒界に存在するピン止め粒子にVNの複合した粒子は、変態促進能が極めて高く、一つの粒子から複数の変態組織を生成させる特殊な能力がある。(例えば特許文献2)
特開2001−342537号公報 特開2005−298900号公報
一般的に鋳造工程時に、熱粒不均一などの原因により母材組織内の化学成分に溶質濃度の高い部分(以下、ミクロ偏析と記載)が生成されることがある。ピン止め効果と析出VNによってHAZ組織を微細化する方法においてVとNがミクロ偏析すると、大入熱溶接に伴うHAZ組織のVN析出量の分布が不均一になり、HAZ組織の微細化効果が生じない部分も出てくる。これにより、HAZの靭性向上効果が低下するという問題が出てくる。
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、鋳造工程後の母材内のミクロ偏析を是正することにより、大入熱溶接に伴うHAZ組織のVN析出量の分布を均一性をよくし、HAZ組織の微細化効果が生じない部分を抑制することことにより、HAZの靭性を向上させる溶接構造用鋼板の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決すため、本発明に係る鋼板の製造方法は、質量%で、
C :0.03〜0.18%、
Si:≦0.5%、
Mn:0.4〜2.0%、
P :≦0.02%、
S :≦0.02%、
Al:0.005〜0.04%、
V :0.005〜0.05%、
Ca:0.0005〜0.003%、
N :0.0015〜0.006%、
O :0.0005〜0.006%、
を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなる成分を有し、かつ、円相当径で0.005〜2.0μmの介在物粒子を単位面積当たりの個数密度で100〜5000個/mm2含有し、前記介在物粒子の組成が少なくともCa、Al、Oの元素からなり、該Oを除いた元素が質量%で、Ca:5%以上、Al:5%以上からなる鋳片を形成し、
前記鋳片を1200℃以上で60分間以上300分間以下の時間加熱保持した後、圧延することにより鋼板を形成することを特徴とする。
本発明に係る他の鋼板の製造方法は、質量%で、
C :0.03〜0.18%、
Si:≦0.5%、
Mn:0.4〜2.0%、
P :≦0.02%、
S :≦0.02%、
Al:0.005〜0.04%、
V :0.005〜0.05%、
Ti:0.005〜0.03%、
Ca:0.0005〜0.003%、
N :0.0015+[%Ti]/10.2〜0.006+[%Ti]/10.2%、
O :0.0005〜0.006%、
を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなる成分を有し、かつ、円相当径で0.005〜2.0μmの介在物粒子を単位面積当たりの個数密度で100〜5000個/mm2含有し、前記介在物粒子の組成が少なくともCa、Al、Oの元素からなり、該Oを除いた元素が質量%で、Ca:5%以上、Al:5%以上からなる鋳片を形成し、
前記鋳片を1200℃以上で60分間以上300分間以下の時間加熱保持した後、圧延することにより鋼板を形成することを特徴とする。
また、本発明に係る鋼板の製造方法において、前記鋳片は、質量%で、Cu:≦1.0%、Ni:≦1.5%、Nb:≦0.03%、Cr:≦0.6%、Mo:≦0.6%、REM:≦0.05%を含有してもよい。また、前記介在物粒子の組成が、さらに、Sを質量%で1%以上含有してもよい。また、前記鋳片は質量%で、Mg:0.0001〜0.002%をさらに成分として有しており、前記介在物粒子の組成は、さらに、Mgを質量%で1%以上含有してもよい。また、前記介在物粒子の円相当径が0.1〜2.0μmであることが好ましい。
以上説明したように本発明によれば、ピン止め効果とVN析出効果を同時に利用し、かつ鋳造工程においてミクロ偏析したVやNを加熱保持によって拡散することにより、HAZ組織のVN析出量の分布を均一にし、HAZ組織の微細化効果が生じない部分をなくすことができ、HAZの靭性を向上させることができる。
以下、本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態に係る鋼板のHAZ靭性を向上させる方法は、ピン止め強化によるγ細粒化を基本技術として、冷却時のHAZにおいてγ粒界とγ粒内の両方にフェライト変態核となるVNを析出させる技術を組み合わせ、且つ鋳造時に生じたミクロ偏析を拡散させることにより、大入熱溶接HAZ組織を微細にする方法である。
本実施形態におけるHAZ組織の微細化は、以下の四つの効果によって達成される。第一の効果は、ピン止めによるγ細粒化によってγ粒界の曲率が大きくなることで、γ粒界からの変態組織が生成して成長する過程で隣接する結晶粒との合体が困難となり、変態組織の粗大化が抑制されることである。第二の効果は、γ細粒化によってγ粒界の面積が増加することで、変態場所そのものが増えてγ粒界からの変態組織が微細化することである。第三の効果は、γ粒成長をピン止めしている粒子が変態場所として機能することでγ粒からの変態組織が微細化することである。そして、第四の効果は、γ粒界に析出したVNが優先的な変態場所として機能することで、γ粒界からの変態組織が微細化することである。この第四の効果は上記三つの効果に重畳することで増幅されるが、特に第三の効果であるピン止め粒子との相乗効果が大きい。γ粒界にピン止め粒子とVNが共存する形態として、複合と単独の二種類が存在する。γ粒界に存在するピン止め粒子にVNの複合した粒子は、変態促進能が極めて高く、一つの粒子から複数の変態組織を生成させる特殊な能力がある。
また、ピン止め粒子が0.005μmよりも小さいと、これにVNが複合析出する頻度が激減するため、γ粒界におけるVN析出の効果が減少する。したがって、HAZの冷却時におけるγ粒界でのVN析出に先立ち、γ粒界に0.005μm以上の大きさのピン止め粒子を多数存在させておく必要がある。一方、γ粒界に単独析出するVNからは概ね一つの変態組織が生成される。
このように、γ粒界に存在する複合析出および単独析出のVNがγ粒界からの変態組織の微細化に大きく貢献している。ピン止め現象を用いることなくγ粒を小さくした場合(たとえばHAZの加熱温度が低い場合)、γ粒界には単独析出したVNしか存在しないため、γ粒界からの変態組織の微細化効果は本発明より劣る結果となる。VNのもう一方の析出場所であるHAZのγ粒内においては、析出したVNを核としてフェライト変態が促され、これもHAZ組織の微細化に貢献する。
以上説明したように、HAZ組織の微細化を目的にしたピン止め効果とVN析出効果を同時に利用する。これら二つの金属学的な効果を具体的に発現させるための方法を説明する。ピン止め効果については、従来のピン止め粒子であるTiNよりも熱的に安定な介在物を利用し、これらの粒子を鋼中に高密度に分散させるために微細化をはかる。そのために、OやSと親和力の強い元素を利用する。一般的にはAlが用いられる。しかしながら、Alだけでは酸素を十分利用するには不充分で、さらにAlよりも強い親和力を有する元素が必要で、鉄鋼の脱酸工程で汎用的に使用されるCaを活用することが有効である。Caは酸素との溶解度積が小さいため、同量の酸素に対してAlよりも一層多量の介在物を生成することができる。鋼中に生成するピン止め粒子の組成として、Caが5%以上、Alが5%以上含まれることで、介在物の体積分率すなわち介在物量を大きくすることができる。よって、鋼中に含まれるピン止め粒子の組成を、少なくともCa、Al、Oを含み、Oを除いた元素が質量比でCaを5%以上、Alを5%以上とする。
また、Caと同時にMgを使用してもよい。MgはCaほどの効果はないものの、Alより強い親和力を有する元素であり、酸素との溶解度積が小さい。したがって、MgをCaと複合して脱酸に使用することで介在物個数を一層増加させることが可能となる。鋼中に生成するピン止め粒子の組成として、Caが5%以上、Alが5%以上、Mgが1%以上含まれることで、介在物の体積分率すなわち介在物量を一層大きくすることができる。よって、鋼中に含まれるピン止め粒子の組成を、少なくともCa、Al、Mg、Oを含み、Oを除いた元素が質量比でCaを5%以上、Alを5%以上、Mgを1%以上とする。
さらには、介在物の周囲にCaSおよびMgSが析出することで、より一層の体積分率の増加が可能となる。よって、鋼中に含まれるピン止め粒子の組成を、少なくともCa、Al、O、Sを含み、Oを除いた元素が質量比でCaを5%以上、Alを5%以上、Sを1%以上、もしくは、少なくともCa、Al、Mg、O、Sを含み、Oを除いた元素が質量比でCaを5%以上、Alを5%以上、Mgを1%以上、Sを1%以上とする。
また、ピン止め粒子の粒子径は、0.1μmより小さくなるとピン止め効果は徐々に減少し、0.005μmより小さくなるとほとんどピン止め効果を発揮しない。また、2.0μmより大きいピン止め粒子はピン止め効果はあるものの、脆性破壊の起点となることがあるため鋼板の特性上不適である。よって、ピン止め粒子の粒子径は、0.005〜2.0μmとする。その中でも特に0.1〜2.0μmであることが好ましい。
また、ピン止め粒子の個数が多いいほど組織単位は微細になり、HAZ靭性が向上し、要求されるHAZ靭性を満足するためには、ピン止め粒子の個数が100個/mm2以上必要である。ただし、粒子数が5000個/mm2を超えると粒子間隔が小さくなり、加熱γ粒の微細化には有効であるが、介在物を起点とする破壊の間隔が小さくなるいためHAZ靭性には有害である。よって、ピン止め粒子の個数は、100〜5000個/mm2とする。
次に、VN析出効果については、必要最低限のVN析出量を確保するために、VとNを適正に添加する必要がある。また、Vよりも強力な窒化物形成元素であるTiを添加する場合は、冷却時のHAZにおけるVNの析出に先立って、TiNがγ相の高温側で析出することを考える必要がある。このような場合には、次式(1)に示す範囲でNを添加する必要がある。
0.0015+Ti/10.2 ≦ N ≦ 0.006+Ti/10.2 ・・・(1)
つまり、Tiと化学量論的に見合うNを差し引いた残りのNがVと結合できると考えられる。
しかし、前述したように、鋳造工程において、母材組織内でVやNがミクロ偏析すると、HAZ組織のVN析出量の分布が不均一になり、VN析出効果を十分に発揮できない。そこで、本発明では、鋳造後の鋳片を1200℃以上の温度で60分間以上300分間以下の時間加熱保持する。これにより、ミクロ偏析したVやNを拡散することができる。
以下に本発明の基本成分範囲について述べる。
Cは鋼の強度と靭性を確保するために0.03%以上必要であり、これを下限とする。また、過剰の添加は、鋼板の溶接性やHAZ靭性などを著しく低下させ、0.18%を超えると良好なHAZ靭性を確保することは難しいため、これを上限とする。
Siは母材の強度確保、脱酸などに必要な成分であるが、0.5%を超えるとHAZの硬化により靭性が大きく低下するため、これを上限とする。SiはMA生成を助長して大入熱溶接HAZ靭性を劣化させる傾向があるため、本発明ではできるだけ少ないほうが好ましい。
Mnは母材の強度、靭性を経済的に確保するためにて0.4%以上の添加が必要であるため、これを下限とする。ただし、2.0%を超えると中心偏析の有害性が顕著となってこの部分の母材とHAZの靭性が劣化するため、これを上限とする。
Pは不純物元素であり、HAZ靭性を安定的に確保するために含有量が少ないほど望ましいが、これを工業的に低減させるためには多大なコストがかかることから、0.02%を上限とする。
Sは粗大な硫化物を生成して母材やHAZの靭性を低下させるため含有量が少ないほど望ましいが、これを工業的に低減されるためには多大なコストがかかることから、0.02%を上限とする。
Alは重要な脱酸元素であり、不純物元素であるOを0.006%以下に低減する為に必要である。Al以外にもMnやSiも脱酸に寄与するが、たとえこれらの元素が添加される場合でも、0.005%以上のAlがないと安定的にOを0.006%以下に抑えることは難しいため、これを下限とする。ただし、Alが0.04%を超えると、アルミナ系の粗大酸化物やそのクラスターが生成し、母材とHAZの表面品位が劣化する。また、機械的性質も損なわれるため、0.04%を上限とする。
Vは本発明で重要な成分である。大入熱溶接の遅い冷却速度に起因してHAZ冷却時にγ粒界とγ粒内にVNが析出し、これが変態場所として機能することで変態組織の微細化をもたらす。そのために0.005%以上必要であるため、これを下限とする。しかし、Vが0.05%を超えるとHAZにおけるVNの量が多くなりすぎて析出硬化が顕著となるためHAZ靭性が劣化し、溶接性も損なわれるため、これを上限とする。
Tiは脱酸元素であると同時に、Nと結合してTi窒化物を形成し、母材の強度と靭性を確保するために添加される。加熱γとHAZの細粒化に一定の効果を発揮する下限は0.005%である。しかし、固溶Ti量が増加するとHAZ靭性や溶接性が低下するため、0.03%を上限とする。
Caは本発明で重要である。Caを0.0005%以上添加することで、0.005〜2.0μmのCa系介在物粒子を100〜5000個/mm確保することができる。Caが0.0005%未満では、ピン止め粒子である介在物の個数と大きさが不足するため、これを下限とする。しかし、0.003%以上の過剰の添加は介在物の粗大化をまねき、所定の分散状態を確保できず、経済性を失うため、これを上限とする。
Mgを0.0001%以上添加することで、0.005〜2.0μmのMg系介在物粒子を100〜5000個/mm確保することができる。Mgが0.0001%未満では、ピン止め粒子である介在物の個数と大きさが不足するため、これを下限とする。しかし、0.002%以上の過剰の添加は介在物の粗大化をまねき、所定の分散状態を確保できず、経済性を失うため、これを上限とする。
Nは本発明で重要な成分である。VNを生成されるために、Vの下限に合わせて少なくとも0.0015%のNが必要であるため、これを下限とする。しかし、0.006%を超えると固溶Nが増大し、連続鋳造における鋳片表面割れが顕著となり、HAZ靭性の低下を招くため、これを上限とする。また、Vよりも強力な窒化物形成元素であるTiを添加する場合は、冷却時のHAZにおけるVNの析出に先立って、TiNがγ相の高温側で析出することを考える必要がある。よって、必要最低限のVN析出量を確保するために、前記上限値及び前記下限値に[%Ti]/10.2を加える。
Oはピン止め粒子である円相当径で0.005〜2.0μmの介在物粒子を100〜5000個/mm確保するために0.0005%以上必要であるため、これを下限とする。しかし、Oが0.006%を超えると介在物の一部が粗大かして母材とHAZの靭性を損なわれるため、これを上限とする。
Cuは板厚に応じて母材の強度と靭性を確保するために添加される。ただし、1.0%を超えるとHAZ靭性を低下させることから、これを上限とする。
Niは板厚に応じて母材の強度と靭性を確保するために添加される。ただし、Ni量の増加は製造コストを上昇させるので、1.5%を上限とする。
Nbは焼入れ性を向上させることにより母材の強度および靭性を向上させるために板厚に応じて添加される。ただし、HAZ組織においては過剰な添加は靭性を著しく低下させるため0.03%を上限とする。
Cr、MoについてもNbと同様な効果を有することから、0.6%を上限とする。
REMは溶鋼中Caに次ぐ脱酸力を有し、Caによる微細酸化物形成を補助する働きがあるが、過剰に入れるとCaと比較してコストアップが大きいとともに、粗大介在物を作って鋼板およびHAZの靭性を阻害することから、上限を0.05%とする。
なお、実際の製造プロセスでは、添加した元素が100%溶鋼中に含まれることになるわけではないので、歩留を考慮して余分に添加する必要がある。また、添加方法については、特に規定はしない。上記条件を満足するように鋼中に含有できる方法であれば、どのような方法でもかまわない。ただし前述のごとく、Ti、Al、Caおよび脱酸元素であるMg、REMは、該脱酸元素を含む合金の形で添加することにより、脱酸元素の歩留まりが向上するとともに、溶鋼中生成の酸化物の微細化が一層促進される。
次に、本実施形態に係る鋼板の製造方法を説明する。鉄鋼業の製鋼工程において、溶鋼の成分調整を行った後、連続鋳造によって鋳片を形成する。鋳造時の冷却途中あるいは冷却後に鋳片を再加熱し、1200℃以上で60分間以上300分間以下の時間保持をする。これにより、母材組織内のミクロ偏析したVやNの拡散処理が行われる。次いで、加熱保持されていた鋳片を厚板圧延によって所定の厚みの鋼板を造り、圧延後に徐冷、あるいは水冷を行う。また、水冷途中で水冷を停止して徐冷することもある。冷却後に適当な熱処理を行うことで、母材の強度と靭性を調整する。
製鋼工程で溶鋼の成分調整を行った後、連続鋳造により280mm厚の鋳片を作製した。(成分調整は、転炉及びRH脱ガス処理によって行った。)次いで、鋳片を再加熱し、加熱保持を行った。次いで、加熱保持されていた鋳片を圧延処理し、鋼1〜4及び鋼8〜14は水冷を行い、鋼5〜6及び鋼15は徐冷を行った。これらの工程を経て、板厚が50mmであり、かつ引張強度が500MPaである鋼板を製造した。得られた鋼板を1パスのSEGARC溶接した。入熱は約200kJ/cm2である。また、表1は、各鋼板の化学成分を示し、表2は、加熱保持及び圧延処理条件を示す。表1に示す計算Nの範囲は、上式(1)により算出した。表3は、介在物粒子の組成、介在物粒子の個数密度、及びHAZの靭性を示す。HAZ靭性評価は、溶接フュージョンライン部から試験片を採取し、−40℃でのシャルピー衝撃試験によって行った。鋼1〜7は、上記の本発明に係る実施形態の方法を用いて製造した本発明鋼であり、鋼8〜15は比較鋼である。
Figure 0004912725
Figure 0004912725
Figure 0004912725
鋼1〜7の本発明鋼は、鋼の化学成分や製造段階の加熱保持時間及び温度が適正に制御されている。これにより、−40℃での吸収エネルギーの最低値が全ての本発明鋼で50J以上に達している。また、鋼6及び7は、吸収エネルギーの最低値が特に高く、120J以上である。これは、鋳片に含有しているCの量が0.06%以下で、他の試作鋼よりも少ないことが主な要因であると考えられる。
一方、鋼12及び鋼15の吸収エネルギー最低値は、21J以下である。これは、鋼12は加熱保持時間が短いため、また鋼15は加熱温度が低いために、それぞれ母材にVやNのミクロ偏析が残留し、HAZ組織のVN析出量の分布が不均一となり、HAZ組織の微細化効果が生じない部分があったためと考えられる。
また、鋼8、鋼10及び鋼13の吸収エネルギーの最低値は15J以下である。鋼8はVの量が少ないため、また鋼10及び鋼13はNの量が少ないために、それぞれHAZ組織のVN析出量が不十分となり、HAZ組織の微細化効果が十分に行われなかったためと考えられる。
鋼9の吸収エネルギーの最低値は10J以下であり、鋼11及び鋼14の吸収エネルギーの最低値は15J以下である。鋼9、鋼11及び鋼14のV及びNの量が多いため、VNを十分に生成しHAZ組織が微細化される。しかし、鋼9はVの量が多すぎるために、HAZ組織の析出硬化が顕著となったため、HAZ靭性が低下したと考えられる。また、鋼11及び鋼14はNが多すぎるために、固溶N脆化が原因でHAZ靭性が低下したと考えられる。
以上の鋼8〜15の比較鋼は、鋼の化学成分や加熱時間及び温度が適正でないために、吸収エネルギーの最低値が低く、HAZ靭性が低下している。
このように、VとNを適正に添加し、かつ鋳片を1200℃以上の温度で60分間以上300分間以下の時間加熱保持して、ミクロ偏析したVやNを拡散させることにより、高いHAZ靭性が得られることが確認された。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C :0.03〜0.18%、
    Si:≦0.5%、
    Mn:0.4〜2.0%、
    P :≦0.02%、
    S :≦0.02%、
    Al:0.005〜0.04%、
    V :0.005〜0.05%、
    Ca:0.0005〜0.003%、
    N :0.0015〜0.006%、
    O :0.0005〜0.006%、
    を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなる成分を有し、かつ、円相当径で0.005〜2.0μmの介在物粒子を単位面積当たりの個数密度で100〜5000個/mm2含有し、前記介在物粒子の組成が少なくともCa、Al、Oの元素からなり、該Oを除いた元素が質量%で、Ca:5%以上、Al:5%以上からなる鋳片を形成し、
    前記鋳片を1200℃以上で60分間以上300分間以下の時間加熱保持した後、圧延することにより鋼板を形成することを特徴とする溶接熱影響部靭性の優れた鋼板の製造方法。
  2. 質量%で、
    C :0.03〜0.18%、
    Si:≦0.5%、
    Mn:0.4〜2.0%、
    P :≦0.02%、
    S :≦0.02%、
    Al:0.005〜0.04%、
    V :0.005〜0.05%、
    Ti:0.005〜0.03%、
    Ca:0.0005〜0.003%、
    N :0.0015+[%Ti]/10.2〜0.006+[%Ti]/10.2%、
    O :0.0005〜0.006%、
    を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなる成分を有し、かつ、円相当径で0.005〜2.0μmの介在物粒子を単位面積当たりの個数密度で100〜5000個/mm2含有し、前記介在物粒子の組成が少なくともCa、Al、Oの元素からなり、該Oを除いた元素が質量%で、Ca:5%以上、Al:5%以上からなる鋳片を形成し、
    前記鋳片を1200℃以上で60分間以上300分間以下の時間加熱保持した後、圧延することにより鋼板を形成することを特徴とする溶接熱影響部靭性の優れた鋼板の製造方法。
  3. 前記鋳片は、
    質量%で、
    Cu:≦1.0%、
    Ni:≦1.5%、
    Nb:≦0.03%、
    Cr:≦0.6%、
    Mo:≦0.6%、
    REM:≦0.05%、
    を含有することを特徴とする請求項1または2記載の溶接熱影響部靭性の優れた鋼板の製造方法。
  4. 前記介在物粒子の組成は、さらに、Sを質量%で1%以上含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶接熱影響部靭性の優れた鋼板の製造方法。
  5. 前記鋳片は質量%で、
    Mg:0.0001〜0.002%をさらに成分として有しており、
    前記介在物粒子の組成は、さらに、Mgを質量%で1%以上含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の溶接熱影響部靭性の優れた鋼板の製造方法。
  6. 前記介在物粒子の円相当径が0.1〜2.0μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の溶接熱影響部靭性の優れた鋼板の製造方法。
JP2006106227A 2006-04-07 2006-04-07 溶接熱影響部靭性の優れた鋼板の製造方法 Active JP4912725B2 (ja)

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