JP5888119B2 - Haz靱性に優れた厚鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、溶接熱影響部(Heat Affected Zone:以下、「HAZ」という。)の靱性に優れた厚鋼板に関する。特に、近年要求の高まっている溶接入熱量が250kJ/cm以上の大入熱溶接を施工した場合であっても、HAZにおいて優れた靭性を有する厚鋼板に関するものである。
建築、橋梁、造船、ラインパイプ、建設機械、海洋構造物、タンクなどの各種溶接鋼構造物に用いられる厚鋼板は、溶接部の破壊に対する安全性および信頼性を高める観点から、靱性に対する要求が年々厳しさを増しており、母材鋼板の靭性と同様に、HAZにおいてもより優れた靱性を確保することが要求されている。
HAZにおいては、溶融線に近づくほど溶接時の加熱温度は高くなり、特に溶融線近傍の1400℃以上に加熱される領域では、オーステナイト(γ)粒が著しく粗大化してしまい、冷却後のHAZ組織が粗大化して靱性が劣化する。この傾向は溶接入熱量が大きくなるほど顕著である。
一方で、この種の溶接鋼構造物の建造コストに占める溶接施工コストの割合は大きく、溶接施工コストを低減するために、高能率の溶接法が用いられるようになった。溶接施工コストを低下させるために最も有効な方法は、溶接パス数を減らすことであり、このためには溶接入熱を大きくした高能率溶接法を用いて大入熱溶接施工を行うことが望ましい。しかし、大入熱溶接を行った場合、HAZ靭性が低下することは避けられない。したがって、靭性の要求が厳しい溶接鋼構造物に対しては、入熱を制限して溶接パス数を増やし、能率と経済性を犠牲にして溶接施工せざるを得ないという問題点があった。
これらの問題を解決するため、これまでにも大入熱溶接HAZ靱性を改善するための種々の対策が実施されてきた。
例えば、特許文献1には、微細なTiNを鋼中に確保することによって、HAZのオーステナイト粒を小さくすることで、大入熱溶接HAZの靭性を向上させることができる方法が開示されている。
次に、特許文献2には、REMの硫・酸化物を利用して大入熱溶接時でもHAZのオーステナイト粒を小さくし、靭性を向上させる方法が開示されている。ここでは、硫・酸化物はTiNのような窒化物と比べて1350℃以上の高温においても安定性が高いとしている。
そして、特許文献3には、Ti酸化物、あるいはTi酸化物とTi窒化物との複合体のいずれかの粒子がフェライト変態核として作用することにより、HAZ組織を微細化させて靭性を向上させる方法が開示されている。Ti酸化物は高温で安定であることから、大入熱溶接においてもその効果が維持されるとしている。
また、特許文献4には、溶接により、1400℃以上に加熱される部分での旧オーステナイト粒の粗大化を防止し、靭性を確保する手法が開示されている。ここでは鋼中のsol.Al量とO量を規定し、鋼中に微細Alを分散させることで、旧オーステナイト粒の成長を抑制し、HAZの優れた低温靭性を得ている。
特開昭50−33920号公報 特開昭60−184663号公報 特開昭60−245768号公報 特開平06−207243号公報
しかし、特許文献1に記載の方法では、HAZの最高到達温度が1350℃を超えると、鋼中のTiNが溶解してしまうため、TiNによる粒成長抑制効果(粒粗大化抑制効果)を期待できなくなり、オーステナイト粒が粗大化し、靭性が低下する。
次に、特許文献2に関しては、十分な数の硫・酸化物を鋼中に微細分散させることは製造上の困難が多いため、オーステナイト粒粗大化抑制効果を発現させるには至らない。
特許文献3については、粒内変態核から生成するフェライトの結晶方位は全くランダムというわけではなく、母相オーステナイトの結晶方位の影響を受ける。したがって、大入熱溶接HAZにおいて、粒内変態だけではHAZ組織を微細化することは困難であり、オーステナイト粒の粗大化を阻止することができない。
そして、特許文献4では溶接入熱量を100kJ/cm程度までに制限しており、それ以上の溶接入熱量にて溶接を実施した場合、旧オーステナイト粒が粗大化する場合があった。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、溶接入熱量が250kJ/cm以上となる大入熱溶接を実施した場合であっても、旧オーステナイト粒の粗大化を抑制し、もって優れたHAZ靭性を有する鋼を提供することを目的とする。
本発明者等は、250kJ/cm以上の大入熱溶接したときであっても、より安定した旧オーステナイト粒粗大化抑制効果を発現し、HAZにおける靱性を確保するために、種々の検討と実験を行った。その結果、次の(a)〜(d)に示す知見を得た。
(a) 鋼中に微細Alに加えて微細MnAlも分散させることで、大入熱HAZの旧オーステナイト粒の成長を抑制することができる。
(b) そのためには、鋼中に微細Alを分散させるための酸可溶性Al(以下、「sol.Al」と略記する。)の含有量とO(酸素)含有量の厳密な管理に加えて、鋼中に微細MnAlを分散させるための酸不溶性Al(以下、「sol.Al」と略記する。)の含有量も規定する必要がある。具体的には、これらの含有量をそれぞれ、sol.Al:0.0001〜0.0005%およびinsol.Al: 0.0001〜0.005%の範囲に規定する必要があることが分かった。
(c)また、sol.Al: 0.0001〜0.0005%、かつ、insol.Al:0.0001〜0.005%の各含有量をいずれも満足する条件の下で、酸可溶性Mn(以下、「sol.Mn」と略記する。)の含有量と酸不溶性Mn(以下、「insol.Mn」と略記する。)の含有量を、それぞれ、sol.Mn:0.5〜2.0%およびinsol.Mn:0.001〜0.01%の範囲に制御すると、Al系酸化物上に微細なMnSを析出させることができ、オーステナイト変態した直後の旧オーステナイト初期粒径の微細化効果を発現するので、旧オーステナイト粒の粗大化を抑制できることが分かった。
(d) さらに、微細Alと微細MnAlを所定量確保するためには、製鋼時のSi脱酸を制限する必要があり、そのために、酸不溶性Si(以下、「insol.Si」と略記する。)の含有量を0.001〜0.01%に規定する必要があることが分かった。これは、insol.Siの含有量が0.01%を超えると、Si酸化物の生成が増加して、微細Al23と微細MnAl24の生成に必要なO(酸素)量が確保できなくなるからである。
本発明は、このような知見に基づいて完成したものであり、その要旨は、下記の(1)〜(5)のHAZ靱性に優れた厚鋼板にある。
(1) 質量%で、
C:0.05〜0.25%、
sol.Si:0.001〜0.3%、
insol.Si:0.001〜0.01%
sol.Mn:0.5〜2.0%、
insol.Mn:0.001〜0.01%、
P:0.03%以下、
S:0.001〜0.02%、
N:0.02%以下、
sol.Al:0.0001〜0.0005%、
insol.Al:0.0001〜0.005%、
O:0.001〜0.005%、
を含有し、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする、HAZ靱性に優れた厚鋼板。
(2) さらに、質量%で、
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下
のうちの1種または2種を含有することを特徴とする、上記(1)のHAZ靱性に優れた厚鋼板。
(3) さらに、質量%で、
Cr:0.5%以下、
Mo:0.5%以下、
Nb:0.05%以下、
V:0.2%以下、
B:0.005%以下
のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)のHAZ靱性に優れた厚鋼板。
(4) さらに、質量%で、
Ca:0.005%以下、
Mg:0.005%以下、
REM:0.05%以下
のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかのHAZ靱性に優れた厚鋼板。
(5) さらに、質量%で、
Sn:0.5%以下
を含有することを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかのHAZ靱性に優れた厚鋼板。
(6) さらに、質量%で、
Ti:0.01%以下
を含有することを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかのHAZ靱性に優れた厚鋼板。
本発明によれば、HAZの靱性に優れた鋼板を提供することができる。特に、溶接入熱量が250kJ/cm以上の大入熱溶接を実施した場合であっても、旧オーステナイト粒の粗大化を抑制することができ、もって優れたHAZ靭性を有する鋼を提供することができる。
以下、本発明に係る厚鋼板の化学組成について説明する。なお、含有量に関する「%」は、質量%を意味する。
C:0.05〜0.25%
Cは鋼材の強度を確保するのに有効な元素であるが、その含有量が0.05%未満ではその効果が得られない。しかし、0.25%を超えるとHAZ靭性に影響を及ぼす。したがって、Cの含有量は0.05〜0.25%とする。Cの含有量の好ましい下限は0.07%であり、そして、好ましい上限は0.15%である。
sol.Si:0.001〜0.3%、insol.Si:0.001〜0.01%
Siは、溶鋼の予備脱酸のために有効な元素である。酸可溶性Si(以下、「sol.Si」と略記する。)の含有量が0.001%未満であると、十分な予備脱酸効果が得られないためOが溶鋼中に過剰に残存し清浄度が低下する。そのため、sol.Siの含有量は0.001%以上とする。一方、sol.Siの含有量が0.3%を超えると未変態γ粒がα粒とセメンタイトに分解するのを阻害し、微細な硬化相である島状マルテンサイトの生成を助長し、HAZ靭性を低下させるため、その含有量の上限を0.3%とした。
また、insol.Siは、その含有量を0.001〜0.01%の範囲に制御することで、Si系介在物を生成し、オーステナイト変態した直後の旧オーステナイト初期粒径の微細化効果を発現する。このことにより、微細Alと微細MnAlの分散による旧オーステナイト粒の粗大化抑制を助長する。しかし、insol.Siの含有量が0.001%未満では、前記効果を得られないため、その含有量の下限を0.001%とした。一方、insol.Siの含有量が0.01%を超えると、Si系介在物が凝集粗大化し、破壊の起点となる。さらに、所望のAlとMnAlの生成に必要なO量の低減を招くため、insol.Siの含有量の上限を0.01%とした。
sol.Mn:0.5〜2.0%、insol.Mn:0.001〜0.01%
Mnは、強度および靭性の確保に必要な元素であるとともに、微細AlとMnAlの生成を促進する主要な元素となる。
Alが、sol.Al:0.0001〜0.0005%、かつ、insol.Al:0.0001〜0.005%の各含有量をいずれも満足する条件の下で、sol.Mnを0.5〜2.0%の範囲に制御することで、Al系酸化物上にMnSを析出し、旧オーステナイト粒の粗大化を抑制することができる。しかし、sol.Mnの含有量が2.0%を超えると、焼入れ性を増大させて、溶接性およびHAZ靭性を劣化するため、その上限を2.0%とする。一方、0.5%未満では強度および靭性の確保ができず、さらにMnAlの生成が不十分であるので、sol.Mnの含有量の下限を0.5%とする。
一方、insol.Mnは、その含有量を0.001〜0.01%の範囲に制御することで、MnSを生成し、オーステナイト変態した直後の旧オーステナイト初期粒径の微細化効果を発現する。このことにより、微細Alと微細MnAlによる旧オーステナイト粒の粗大化抑制を助長する。しかし、insol.Mnの含有量が0.001%未満では、前記効果を得られないため、その下限を0.001%とする。一方、insol.Mnの含有量が0.01%を超えると、MnSが凝集粗大化し、破壊の起点となる。さらに、所望の微細Alと微細MnAlの生成に必要なO量の低減を招くため、insol.Mnの含有量の上限を0.01%とする。
P:0.03%以下
Pは粒界偏析を起こす不可避的不純物として鋼中に存在する。0.03%を超えると、HAZにおける粒界割れの原因となるため、母材及びHAZの靭性が劣化する。したがって、その含有量は少ないほど望ましいが、経済性を考慮してPの含有量の上限は0.03%とする。望ましい上限は0.01%である。
N:0.02%以下
Nは不可避的不純物として存在する。母材靭性の低下、溶接時に希釈による溶接金属中への混入から溶接金属の靭性低下を招き、さらに溶接割れの原因となるため、Nの含有量の上限を0.02%とする。
S:0.001〜0.02%
SはAl系酸化物上に微細なMnSを析出させるために必要な元素である。Sが0.001%未満では、十分なMnSが形成できず、MnAlの生成が不十分となるので、その下限を0.001%とする。一方、Sの含有量が多すぎるとMnSが過剰に生成して、板厚中心部に偏析し、溶接割れの起点となる。従って、その上限を0.02%とする。望ましい上限は0.01%である。
sol.Al:0.0001〜0.0005%、insol.Al:0.0001〜0.005%
Alは代表的な脱酸元素であるとともに、本発明においては旧オーステナイト粒の粗大化を抑制するためのAl系酸化物を供給する重要な元素である。Alは、鋼中においては固溶AlやAl窒化物を含むsol.Alと、主にAlよりなるinsol.Alとして、存在する。
本発明において最も重要な点はAlに加えてMnAlをいかに微細且つ多量に分散させるかにある。ここで、sol.AlはAlとMnAlの微細分散に対してマイナス要因となる。すなわち、sol.Alが増加して全体としてsol.Alが0.0005%を超えると、MnAlの生成が生じず、Alのみが生成することになるため、250kJ/cm以上の大入熱溶接に耐えることのできるだけのMnAlの微細析出を確保することが困難となる。従って、sol.Alの含有量の上限を0.0005%とする。ただし、sol.Alの含有量が0.0001%未満では十分な脱酸効果が得られず、製造上問題となるため、その下限を0.0001%とする。
一方、insol.AlはAlとMnAlの微細分散を促進し、insol.Alの含有量が0.0001%未満であると、微細Alと微細MnAlの鋼中での分布が極めて粗となり、十分な旧オーステナイト粒微細化効果が得られなくなるため、insol.Alの含有量の下限を0.0001%とする。しかし、insol.Alの含有量が0.005%を超えると、全体としてAl量が増加し、微細AlとMnAlが凝集・粗大化し所望の旧オーステナイト粒微細化効果が得られなくなるため、insol.Alの含有量の上限を0.005%とする。
O:0.001〜0.005%
O(酸素)は、鋼の清浄度の観点から、低い方が望ましい。しかし、所望のAlとMnAlを得る必要があるため、その下限を0.001%とする。一方、O量が増加すると鋼の清浄度を低下させるだけでなく、AlとMnAlの凝集粗大化を招き、所望の粒度のAl系酸化物を得られなくなる。したがって、その上限を0.005%とする。
本発明に係る鋼板は、上記の元素を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。ここで、不可避的不純物とは、鋼板を工業的に製造する際に鉱石やスクラップ等のような原料をはじめとして製造工程の種々の要因によって混入する成分を意味する。
本発明に係る鋼板には、必要に応じて、次の第1群から第5群のうちの少なくとも1群の中から選んだ1種または2種以上の元素を含有させることができる。
(1) 第1群:CuおよびNiのうちの1種または2種、
(2) 第2群:Cr、Mo、Nb、VおよびBのうちの1種または2種以上、
(3) 第3群:Ca、Mg、REMのうちの1種または2種以上、
(4) 第4群:Sn、
(5) 第5群:Ti。
(1) 第1群:CuおよびNiのうち1種または2種
第1群の元素であるCuおよびNiは強度と靭性を向上させる作用を有するので、必要に応じて、いずれかまたは両方を含有させることができる。以下、第1群の元素について詳しく説明する。
Cu:1.0%以下
Cuを含有させると、母材の強度と靭性を向上させることができる。しかし、その含有量が1.0%を超えると、逆に母材の強度と靭性を低下させる。したがって、Cuの含有量は1.0%以下とする。Cuの含有量の好ましい上限は0.7%である。なお、Cuによる効果を得たい場合には、Cuを0.1%以上含有させることが好ましく、0.2%以上含有させることがより好ましい。
Ni:1.0%以下
Niは、Cuと同様に、母材の強度と靭性を確保するために有効な元素である。しかし、Niの含有量が1.0%を超えると、逆に母材の強度と靭性を低下させる。したがって、Niの含有量は1.0%以下とする。Niの含有量の好ましい上限は0.7%である。なお、Niによる効果を得たい場合には、Niを0.1%以上含有させることが好ましく、0.2%以上含有させることがより好ましい。
第1群の元素であるCuとNiを共存させると、CuまたはNiを単独で多量に含有させることによる過度の焼入れ性上昇を回避し、HAZ靭性および溶接性への悪影響を最小限に抑制できるので、所望の強度と靭性のバランスをとりやすくなる。この場合、CuとNiの合計含有量を2.0%以下に制御することが望ましい。
(2) 第2群:Cr、Mo、Nb、VおよびBのうちの1種または2種以上
第2群の元素であるCr、Mo、Nb、VおよびBはいずれも鋼材の焼入れ性を増加させ、強度を確保する作用を有するので、必要に応じて、これらの元素のうち1種または2種以上を含有させることができる。以下、第2群の元素について詳しく説明する。
Cr:0.5%以下
Crは、鋼材の焼入れ性を増加させ、強度を確保するために有効である。一方、Crの含有量が0.5%を超えると、母材およびHAZ靭性の劣化を招くと共に溶接低温割れが発生するので、Cr含有量は0.5%以下とする。Cr含有量の好ましい上限は0.4%である。なお、Crによる効果を得たい場合には、Crの含有量を0.1%以上とするのが好ましく、0.2%以上とするのがより好ましい。
Mo:0.5%以下
Moは、Crと同様に、鋼材の焼入れ性を増加させ、強度を確保するために有効である。一方、Moの含有量が0.5%を超えると、母材およびHAZ靭性の劣化を招くと共に溶接低温割れが発生するので、Mo含有量は0.5%以下とする。Mo含有量の好ましい上限は0.4%である。なお、Moによる効果を得たい場合には、Moの含有量を0.1%以上とするのが好ましく、0.2%以上とするのがより好ましい。
Nb:0.05%以下
Nbは、Crと同様に、鋼材の焼入れ性を増加させ、強度を確保するために有効である。一方、Nbの含有量が0.05%を超えると、母材およびHAZ靭性の劣化を招くと共に溶接低温割れが発生するので、Nb含有量は0.05%以下とする。Nb含有量の好ましい上限は0.04%である。なお、Nbによる効果を得たい場合には、Nbの含有量を0.005%以上とするのが好ましく、0.008%以上とするのがより好ましい。
V:0.2%以下
Vは、Crと同様に、鋼材の焼入れ性を増加させ、強度を確保するために有効である。一方、Vの含有量が0.2%を超えると、母材およびHAZ靭性の劣化を招くと共に溶接低温割れが発生するので、V含有量は0.2%以下とする。なお、Vによる効果を得たい場合には、Vの含有量を0.02%以上とするのが好ましい。
B:0.005%以下
Bは、Crと同様に、鋼材の焼入れ性を増加させ、強度を確保するために有効である。一方、Bの含有量が0.005%を超えると、母材およびHAZ靭性の劣化を招くと共に溶接低温割れが発生するので、B含有量は0.005%以下とする。なお、Bによる効果を得たい場合には、Bの含有量を0.001%以上とするのが好ましい。
第2群の元素を2種以上含有させると、それぞれの元素を単独で多量に含有させることによる過度の焼入れ性上昇を回避し、HAZ靭性および溶接性への悪影響を最小限に抑制できるので、所望の強度と靭性のバランスをとりやすくなる。この場合、それらの元素の合計含有量を1.0%以下に制御することが望ましい。
(3) 第3群:Ca、Mg、REMのうちの1種または2種以上
第3群の元素であるCa、MgおよびREMはいずれも硫化物の形態を制御し、熱間加工性を増加させ、低温靭性を確保する作用を有するので、必要に応じて、これらの元素のうち1種または2種以上を含有させることができる。以下、第3群の元素について詳しく説明する。
Ca:0.005%以下
Caは、硫化物の形態を制御し、熱間加工性を増加させ、低温靭性を確保するために有効である。一方、Caの含有量が0.005%を超えると、大型介在物やクラスターを生成して鋼の清浄度を害するので、Ca含有量は0.005%以下とする。なお、Caによる効果を得たい場合には、Caの含有量を0.001%以上とするのが好ましい。
Mg:0.005%以下
Mgは、Caと同様に、硫化物の形態を制御し、熱間加工性を増加させ、低温靭性を確保するために有効である。一方、Mgの含有量が0.005%を超えると、大型介在物やクラスターを生成して鋼の清浄度を害するので、Mg含有量は0.005%以下とする。なお、Mgによる効果を得たい場合には、Mgの含有量を0.001%以上とするのが好ましい。
REM:0.05%以下
REMは、Caと同様に、硫化物の形態を制御し、熱間加工性を増加させ、低温靭性を確保するために有効である。一方、REMの含有量が0.05%を超えると、大型介在物やクラスターを生成して鋼の清浄度を害するので、REM含有量は0.05%以下とする。なお、REMによる効果を得たい場合には、REMの含有量を0.01%以上とするのが好ましい。ここで、REMとは、ランタノイドの15元素にYおよびScを合わせた17元素の総称であり、これらの元素のうちの1種または2種以上を含有させることができる。REMの混合体であるミッシュメタルを添加することでREMを含有させてもよい。なお、REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。
第3群の元素を2種以上含有させると、それぞれの元素を単独で多量に含有させることによる過度の焼入れ性上昇を回避し、HAZ靭性および溶接性への悪影響を最小限に抑制できるので、所望の強度と靭性のバランスをとりやすくなる。この場合、それらの元素の合計含有量を0.05%以下に制御することが望ましい。
(4) 第4群:Sn
第4群の元素であるSnは耐食性を改善する作用を有するので、必要に応じて、含有させることができる。以下、詳しく説明する。
Sn:0.5%以下
Snは耐食性を改善するために有効である。一方、Snの含有量が0.5%を超えると、母材および熱影響部靭性が低下するので、Snの含有量は0.5%以下とする。Snの好ましい含有量は0.4%以下である。なお、Snの効果を得たい場合には、Snの含有量を0.002%以上とするのが好ましく、0.05%以上とするのがより好ましい。
(5) 第5群:Ti。
第5群の元素であるTiは、窒化物を生成し、鋼中の固溶N量を低減するとともに析出したTiNはHAZでの旧オーステナイト粒の粗大化を抑制する作用を有するので、必要に応じて、含有させることができる。以下、詳しく説明する。
Ti:0.01%以下
TiはNと反応してTiNを生成するので、鋼中の固溶N量を低減する。また、析出したTiNはピン止め効果で熱間圧延前のスラブ加熱時の母材および大入熱溶接時のHAZでの旧オーステナイト粒の粗大化を抑制し、母材およびHAZ靭性の向上に寄与する。一方、Tiの含有量が0.01%を超えると、微細Alと微細MnAlの生成に必要なO(酸素)含有量の低減を招くため、ピン止め効果が低減しHAZ靭性が低下するので、Tiの含有量は0.01%以下とする。なお、Tiの効果を得たい場合には、Tiの含有量を0.002%以上とするのが好ましい。
表1に示す39種類の化学組成を有する試験鋼から連続鋳造法によりスラブを作製し、このスラブを複数枚重ねることにより脱水素を行った。その後、加熱炉に装入して1150〜1200℃まで加熱した後、スラブを加熱炉から取り出し、生成したスケールに高圧水をかけて完全に除去し、続けてスラブを1パスあたり5%以上の圧下量で圧延して厚さ55mmの厚鋼板とした。圧延後の鋼材の温度が800〜900℃程度に低下した後、続いて5℃/秒以上の冷却温度で400〜500℃まで水冷した。このような工程を経て得た厚鋼板から機械加工により板両面を5mmずつ切削して、厚さ55mmの平滑な鋼板とした。
Figure 0005888119
このようにして得た各厚鋼板について、側面の一方を10°に加工し、2枚の鋼板を突き合わせることにより、20°V開先としてエレクトロスラグ溶接を実施した。溶接入熱は300kJ/cm、ワイヤはDWS−1LG、電流400A、電圧42V、溶接速度は3.4cm/minとした。
溶接後に、HAZ再現熱サイクル試験装置にて1440℃で10秒保持する測定条件により、HAZ1mmでの平均旧オーステナイト(γ)粒径を調査した。この平均旧オーステナイト(γ)粒径の目標値は200μm以下であり、この目標を満足する場合を表2に「○」で示した。一方、この目標値を満足しない場合(すなわち、200μmを超える場合)を表2に「×」で示した。
また、溶接後に、HAZにJIS4号に基づいてノッチを形成した試験片を作成し、JISZ2242金属シャルピー衝撃試験方法に基づいて試験を行うことによって、靱性を調査した。このシャルピー衝撃値(vE-30)の目標値は、試験温度−30℃での吸収エネルギー値が70J以上であり、この目標値を満足する場合を表2に「○」で示した。一方、この目標値を満足しない場合(すなわち、70J未満の場合)を表2に「×」で示した。
Figure 0005888119
表2より、本発明に係る化学組成の範囲内にある本発明鋼(鋼No.1〜28)は、いずれも平均旧オーステナイト粒径が200μm以下に抑制されており、さらに旧オーステナイト粒微細化効果によりシャルピー衝撃値(vE-30)は、いずれも70J以上であり、優れたHAZ靭性を示すことが分かる。
これに対して、本発明に係る化学組成の範囲外にある比較鋼(鋼No.29〜39)は、いずれも平均旧オーステナイト粒径が200μmを超えていて粗大化しており、シャルピー衝撃値(vE-30)は、いずれも70J未満であり、HAZ靱性が劣ることが分かる。
本発明に係る厚鋼板は、溶接入熱量が250kJ/cm以上となる大入熱溶接を実施した場合であっても、旧オーステナイト粒の粗大化を抑制し、もって優れたHAZ靭性を有するので、重要構造物に用いることができる。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.05〜0.25%、
    sol.Si:0.001〜0.3%、
    insol.Si:0.001〜0.01%
    sol.Mn:0.5〜2.0%、
    insol.Mn:0.001〜0.01%、
    P:0.03%以下、
    S:0.001〜0.02%、
    N:0.02%以下、
    sol.Al:0.0001〜0.0005%、
    insol.Al:0.0001〜0.005%、
    O:0.001〜0.005%、
    を含有し、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする、HAZ靱性に優れた厚鋼板。
  2. さらに、質量%で、
    Cu:1.0%以下、
    Ni:1.0%以下
    のうちの1種または2種を含有することを特徴とする、請求項1に記載のHAZ靱性に優れた厚鋼板。
  3. さらに、質量%で、
    Cr:0.5%以下、
    Mo:0.5%以下、
    Nb:0.05%以下、
    V:0.2%以下、
    B:0.005%以下
    のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のHAZ靱性に優れた厚鋼板。
  4. さらに、質量%で、
    Ca:0.005%以下、
    Mg:0.005%以下、
    REM:0.05%以下
    のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載のHAZ靱性に優れた厚鋼板。
  5. さらに、質量%で、
    Sn:0.5%以下
    を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれかに記載のHAZ靱性に優れた厚鋼板。
  6. さらに、質量%で、
    Ti:0.01%以下
    を含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれかに記載のHAZ靱性に優れた厚鋼板。
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