JP5880306B2 - オーステナイト系耐熱鋼管 - Google Patents

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Description

本発明は、オーステナイト系耐熱鋼管に関する。詳しくは、本発明は、排熱回収ボイラ(HGSR:Heat Recovery Steam Generator)や太陽熱発電プラントの過熱器管などのように、高温加熱と冷却が繰り返される機器の部材として好適に用いることができ、特に、フェライト系耐熱鋼部材と異材溶接しても優れた耐熱疲労特性を有する、オーステナイト系耐熱鋼管に関する。
近年、環境負荷軽減の観点から各種発電プラントにおいて、運転条件の高温・高圧化が世界的規模で進められている。
例えば、ガスタービン複合発電プラントについては燃焼ガスの高温化が図られ、また、排熱回収ボイラについても蒸気温度の高温化による発電効率の向上が指向されている。
上記の排熱回収ボイラの過熱器管材料としては従来、ASME T91(9%Cr−1%Mo−Nb、V)鋼が広く使用されてきた。しかし、この鋼はCr含有量が少ないので、高効率化のために蒸気温度を高温化した場合、耐水蒸気酸化特性が不十分であるとともに、クリープ強度も不十分である。
そのため、最近では過熱器管の高温部に、特許文献1、2に開示されている12%Crフェライト系耐熱鋼や特許文献3〜6に開示されている石炭火力発電ボイラの過熱器管に使用されるオーステナイト系耐熱鋼を適用しようとする動きがある。
しかしながら、12%Crフェライト系耐熱鋼は、耐水蒸気酸化特性には優れているものの、非特許文献1に示されているように高温強度、特に溶接部のクリープ強度が十分ではなく、溶接にて構造化される過熱器管として使用する場合には課題が残る。
それに対し、Crを18%以上含有するオーステナイト系耐熱鋼は溶接部を含めて十分な耐水蒸気酸化性とクリープ強度を具備する。
一方、近年、太陽熱発電プラントのような再生可能エネルギーを活用した新発電プラントが注目を浴びている。そして、太陽熱発電プラントにおいては実用化のために過熱器管材料の選定が進められ、排熱回収ボイラと同様、使用性能の観点からCrを18%以上含有するオーステナイト系耐熱鋼も候補材料として考えられている。
ところで、排熱回収ボイラは石炭火力発電ボイラのように連続稼働することは少なく、必要な発電量に応じて停機と稼動を繰り返すのが一般的である。例えば、電力需要の多い昼間のみ稼働し、夜間は停機するような運転がなされている。その結果、使用されている過熱器管などの部材には、加熱と冷却が繰り返されることとなる。
同様に、太陽熱発電プラントにおいても過熱器管などの部材は、昼間は加熱され、一方、夜間は冷却されるので、加熱と冷却が繰り返されることとなる。
このように、高温への加熱と冷却が繰り返される場合、使用される部材にはその温度差に応じた熱応力が発生、作用する。
このため、排熱回収ボイラや太陽熱発電プラントの過熱器管に使用される部材には、重要な性能の1つとして、繰り返し作用する熱応力に対する特性、すなわち、耐熱疲労特性に優れることが要求される。
特開2004−526058号公報 特開平2−232345号公報 特開2003−268503号公報 特開2009−84606号公報 特開昭62−243742号公報 特開平11−21624号公報 特開2003−166039号
H.Cerjak and E.Letofsky:Science and Technology of Welding and Joining、Vol.1(1996)、No.1、pp.36〜42
特許文献1および2に開示されている12%Crフェライト系耐熱鋼は、耐水蒸気酸化特性には優れているものの、既に述べたように、高温強度、特に溶接部のクリープ強度が十分ではない。このため、溶接構造体、例えば、溶接にて構造化される過熱器管には用い難い。
特許文献3〜6に開示されているCrを18%以上含有するオーステナイト系耐熱鋼は溶接部を含めて十分な耐水蒸気酸化性とクリープ強度を備えている。このため、連続稼働される石炭火力発電ボイラの過熱器管には好適に用いることができる。
なお、既に述べたように、排熱回収ボイラや太陽熱発電プラントの過熱器管に使用される部材には、重要な性能の1つとして、耐熱疲労特性に優れることが要求される。特に、排熱回収ボイラや太陽熱発電プラントにおいて、過熱器管は長尺の鋼管を溶接して構造化されるため溶接部の拘束が大きく、これらの溶接部近傍では繰り返し作用する熱応力に対する疲労損傷が問題となる。なかでも、過熱器管の低温部や管寄せ管として使用されるフェライト系耐熱鋼との異材溶接部では、オーステナイト系耐熱鋼の熱膨張係数がフェライト系耐熱鋼に比べて大きいことに起因して、より大きな熱応力が発生する。
しかしながら、上述の特許文献3〜6において提案された技術は、必ずしも耐熱疲労特性について十分考慮されたものではない。したがって、上記特許文献3〜6で提案されたオーステナイト系耐熱鋼は、石炭火力発電ボイラの過熱器管に対しては好適に用いることができるものの、その耐熱鋼を排熱回収ボイラや太陽熱発電プラントの過熱器管として用いるだけでは、必ずしも十分な耐熱疲労特性、なかでも異材溶接部近傍における深刻な熱疲労損傷に対する抵抗性を確保できるというものではない。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、排熱回収ボイラや太陽熱発電プラントの過熱器管などのように、高温加熱と冷却が繰り返される機器の部材として好適に用いることができ、特に、フェライト系耐熱鋼部材と異材溶接しても優れた耐熱疲労特性を有するオーステナイト系耐熱鋼管を提供することを目的とする。
なお、特許文献7には、フェライト系耐熱鋼と異材溶接しても優れた溶接部特性を具備するオーステナイト系耐熱鋼が開示されている。しかしながら、特許文献7に開示されている技術の目的は、溶接熱影響部(以下、「HAZ」という。)の耐食性の改善であって、上記本発明の目的である耐熱疲労特性の確保とは完全に異なる。
本発明者らは前記した課題を解決するために、最も厳しい使用条件であると考えられるオーステナイト系耐熱鋼管とフェライト系耐熱鋼管の異材溶接継手の熱疲労試験を行い、発生した損傷(亀裂)について解析した。その結果、下記[i]および[ii]の事項が明らかになった。
[i]損傷(亀裂)は溶接部近傍の鋼管の外表面または内表面のHAZの結晶粒界に発生する。
[ii]亀裂が生じた部分の鋼管表面には酸化物層の存在が認められるとともに、酸化物層が破壊し、その亀裂の底部からHAZに亀裂が生じている。
上記[i]、[ii]から、本発明者らは、熱疲労により生じた損傷は、下記(a)〜(c)の機構により発生するものと推定した。
(a)先ず、鋼管表面に存在する酸化物層がオーステナイト鋼管材質との熱膨張差により破壊する。
(b)繰り返しの熱サイクルにより溶接部には熱応力が作用するが、オーステナイト系耐熱鋼管とフェライト系耐熱鋼管との異材溶接部では熱膨張係数差に起因し、さらに大きな熱応力が生じる。
(c)上記(a)の酸化物層が破壊した部分では、亀裂が切り欠きとして作用し、その底部に熱応力が集中する。特に、上記(b)の異材溶接部ではより大きな熱応力が作用する。そのため、その亀裂底部に存在する粒界には大きな熱応力が繰り返し作用し、損傷が生じる。
上記の推定の下、本発明者らは熱疲労による損傷を軽減、抑止するための詳細な検討を実施した。
その結果、鋼管表面に形成される酸化物層を薄く、かつ密着性の高い緻密なものとして繰り返しの熱サイクルを受けても成長し難くすることが、上述した損傷の軽減・抑止に有効であることがわかった。
そこで、本発明者らは、さらに詳細な検討を実施した。その結果、次の(d)および(e)の対策を講じて、初期の酸化物層厚さを薄く保つとともに、密着性が高く、かつ薄くて緻密な酸化物を形成するCrおよびSiを、多孔質で脆いスピネル酸化物を形成するMnに対して一定量以上含有させれば、酸化物層の破壊が抑制され、さらに、繰り返しの熱サイクル過程での酸化物層の成長も抑制されて、熱疲労による損傷を軽減、抑止できることが判明した。
(d)被溶接端からの距離が5mmの範囲にある領域の鋼管表面に生成した酸化物層の厚さを30μm以下に管理する。
(e)Cr、SiおよびMnの含有量が下記の式を満足するように鋼管の化学組成を管理する。
Cr+2×Si−0.5×Mn≧17.5。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(3)に示すオーステナイト系耐熱鋼管にある。
(1)溶接して用いられる鋼管であって、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Ni:7〜13.5%、Cr:16〜20%、Nb:0.2〜1.2%、Al:0.05%以下、N:0.01〜0.20%およびO:0.01%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなり、かつ下記の[1]式を満足する化学組成を有し、さらに、被溶接端からの距離が5mmの範囲にある領域の管の外表面および内表面における酸化物層の厚さが20μm以下であることを特徴とするオーステナイト系耐熱鋼管。
Cr+2×Si−0.5×Mn≧17.5・・・[1]
[1]式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
(2)Feの一部に代えて、質量%で、下記の第1群から第3群までのいずれかに属する1種以上の元素を含有することを特徴とする上記(1)に記載のオーステナイト系耐熱鋼管。
第1群:Mo:1%以下、W:1%以下、Co:1%以下、Cu:4%以下およびB:0.012%以下
第2群:Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下およびREM:0.06%以下
第3群:V:0.5%以下およびTi:0.5%以下。
(3)排熱回収ボイラおよび太陽熱発電プラントの過熱器管として用いることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のオーステナイト系耐熱鋼管。
本発明のオーステナイト系耐熱鋼管を用いた溶接構造体は、良好な耐熱疲労特性、なかでも異材溶接部近傍における熱疲労損傷に対して十分な抵抗性を備えている。このため、本発明のオーステナイト系耐熱鋼管は、排熱回収ボイラや太陽熱発電プラントの過熱器管などのように、高温加熱と冷却が繰り返される機器の部材として好適に用いることができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、以下の説明における各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(A)化学組成
C:0.03〜0.15%
Cは、オーステナイトを安定にするとともに粒界に微細な炭化物を形成し、高温でのクリープ強度を向上させる。その効果を十分に得るためには、0.03%以上のC含有量が必要である。しかしながら、Cが過剰に含有された場合には、炭化物が粗大となり、かつ多量に析出して、粒界の延性を低下させ、靱性およびクリープ強度の低下を招く。このため、上限を設け、Cの含有量を0.03〜0.15%とする。C含有量の下限は0.04%であることが望ましく、0.06%であればより望ましい。また、C含有量の上限は0.12%であることが望ましく、0.10%であればより望ましい。
Si:1%以下
Siは、脱酸剤として添加され、高温での耐食性および耐酸化性の向上にも有効な元素である。Siは、特に本発明においては、鋼管の製造過程で表面に生成する酸化物層の厚さおよび密着性に影響を及ぼすとともに、高温での使用中の成長に影響を及ぼす重要な元素である。すなわち、Siは、後述のCrと同様に、初期の酸化物層厚さを薄く保つとともに、密着性が高く、かつ薄くて緻密な酸化物を形成する。しかしながら、Siの過剰の含有はオーステナイトの安定性を低下させ、靱性およびクリープ強度の低下を招く。そのため、Siの含有量に上限を設けて1%以下とする。Siの含有量は、望ましくは、0.8%以下である。
なお、後述の[1]式を満足すれば、Siの含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端な低下は、脱酸効果が十分に得られず鋼の清浄度が大きくなって清浄性が劣化するとともに、製造コストの上昇を招く。そのため、Si含有量の下限は0.02%であることが望ましく、0.05%であればより望ましい。
Mn:2%以下
Mnは、Siと同様、脱酸剤として添加される。Mnは、オーステナイトの安定化にも寄与する。しかしながら、Mnは、特に本発明においては、鋼管の製造過程で表面に生成する酸化物層厚さおよび密着性に影響を及ぼすとともに、高温での使用中の成長に影響を及ぼす元素であって、多孔質で脆いスピネル酸化物を形成するため、過剰の含有は避ける必要がある。しかも、Mnの過剰の含有は脆化を招き、靱性およびクリープ延性が低下する。そのため、Mnの含有量に上限を設けて2%以下とする。Mnの含有量は、望ましくは、1.5%以下である。
なお、後述の[1]式を満足すれば、Mnの含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端な低下は、脱酸効果が十分に得られず鋼の清浄度が大きくなって清浄性が劣化するとともに、製造コストの上昇を招く。そのため、Mn含有量の下限は0.02%であることが望ましく、0.05%であればより望ましい。
P:0.04%以下
Pは、不純物として鋼中に含まれ、溶接中にHAZの結晶粒界に偏析して、液化割れ感受性を高めるとともにクリープ延性を低下させる元素である。そのため、Pの含有量に上限を設けて0.04%以下とする。Pの含有量は、望ましくは、0.038%以下、より望ましくは0.035%以下である。
なお、Pの含有量は可能な限り低減することが好ましいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、P含有量の下限は0.0005%であることが望ましい。
S:0.01%以下
Sは、Pと同様に不純物として鋼中に含まれ、溶接中にHAZの結晶粒界に偏析して、液化割れ感受性を高めるとともにクリープ延性にも悪影響を及ぼす元素である。そのため、Sの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Sの含有量は、望ましくは、0.008%以下、より望ましくは0.005%以下である。
なお、Sの含有量は可能な限り低減することが好ましいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、S含有量の下限は0.0001%であることが望ましい。
Ni:7〜13.5%
Niは、オーステナイトを得るために有効な元素であり、長時間使用時の組織安定性を確保するために必須の元素である。後述の16〜20%という本発明のCr含有量の範囲で、上記したNiの効果を十分に得るためには、7%以上のNi含有量が必要である。しかし、Niは高価な元素であるため、多量の含有はコストの増大を招く。そのため、上限を設け、Niの含有量を7〜13.5%とする。Ni含有量の下限は7.5%であることが望ましく、8%であればより望ましい。また、Ni含有量の上限は13.2%であることが望ましく、13.0%であればより望ましい。
Cr:16〜20%
Crは、高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。Crは、特に本発明においては、鋼管の製造過程で表面に生成する酸化物層の厚さおよび密着性に影響を及ぼすとともに、高温での使用中の成長に影響を及ぼす重要な元素である。すなわち、Crは、前述のSiと同様に、初期の酸化物層厚さを薄く保つとともに、密着性が高く、かつ薄くて緻密な酸化物を形成する。上記7〜13.5%というNi含有量の範囲で、上記したCrの効果を得るためには、16%以上のCr含有量が必要である。しかしながら、Crの含有量が20%を超えると、高温でのオーステナイトの安定性を劣化させ、クリープ強度の低下を招く。したがって、Crの含有量を16〜20%とする。Cr含有量の下限は16.2%であることが望ましく、16.5%であればより望ましい。また、Cr含有量の上限は19.8%であることが望ましく、19.5%であればより望ましい。
Nb:0.2〜1.2%
Nbは、CまたはNと結合して、微細な炭化物または炭窒化物を形成し、クリープ強度に大きく寄与する。その効果を得るためには0.2%以上のNb含有量が必要である。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると、炭化物または炭窒化物として多量に析出し、逆にクリープ延性の低下を招く。このため、上限を設けて、Nbの含有量を0.2〜1.2%とする。Nb含有量の下限は0.25%であることが望ましく、0.3%であればより望ましい。また、Nb含有量の上限は1.1%であることが望ましく、1.0%であればより望ましい。
Al:0.05%以下
Alは、脱酸剤として添加される。しかしながら、Alの含有量が過剰になると、鋼の清浄性が著しく劣化して、熱間加工性および延性が低下する。そのため、Alの含有量に上限を設けて0.05%以下とする。Alの含有量は、望ましくは、0.03%以下、より望ましくは0.02%以下である。
なお、Alの含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端な低減は、脱酸効果が十分に得られず鋼の清浄性を逆に劣化させるとともに、製造コストの上昇を招く。そのため、Al含有量の下限は0.0005%であることが望ましく、0.001%であればより望ましい。
N:0.01〜0.25%
Nは、オーステナイトを安定にするとともに、マトリックスに固溶または長時間使用中に窒化物として粒内に微細に析出し、クリープ強度の向上に寄与する元素である。上記したNの効果を得るためには、0.01%以上のN含有量が必要である。しかしながら、Nの含有量が過剰になると、高温での使用中に多量の窒化物の析出を招き、クリープ延性や靱性の低下をきたす。そのため、上限を設け、Nの含有量を0.01〜0.25%とする。N含有量の下限は0.03%であることが望ましく、0.05%であればより望ましい。また、N含有量の上限は0.23%であることが望ましく、0.20%であればより望ましい。
O:0.01%以下
O(酸素)は、不純物として鋼中に含まれ、過剰に含まれると熱間加工性の低下や靱性、延性の劣化を招く元素である。そのため、Oの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Oの含有量は、望ましくは、0.008%以下、より望ましくは0.005%以下である。
なお、Oの含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端な低下は、脱酸効果が十分に得られず鋼の清浄度が大きくなって清浄性が劣化するとともに、製造コストの上昇を招く。そのため、O含有量の下限は0.0005%であることが望ましい。
本発明のオーステナイト系耐熱鋼管の一つは、上述のCからOまでの元素を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ後述する[1]式を満足する化学組成を有するものである。
なお、「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入するものを指す。
本発明のオーステナイト系耐熱鋼管の他の一つは、上述のFeの一部に代えて、Mo、W、Co、Cu、B、Ca、Mg、REM、VおよびTiから選択される1種以上の元素を含有し、かつ[1]式を満足する化学組成を有するものである。
以下、任意元素である上記Mo、W、Co、Cu、B、Ca、Mg、REM、VおよびTiの作用効果と、含有量の限定理由について説明する。
第1群:Mo:1%以下、W:1%以下、Co:1%以下、Cu:4%以下およびB:0.012%以下
Mo、W、Co、CuおよびBは、いずれも、高温でのクリープ強度を高める作用を有する。このため、より大きなクリープ強度を得たい場合には、これらの元素を以下に述べる範囲で含有させてもよい。
Mo:1%以下
Moは、高温でのクリープ強度を高める作用を有する。具体的には、Moは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度を高める作用を有する。このため、必要に応じてMoを含有させてもよい。しかしながら、Moの含有量が過剰になると、オーステナイトの安定性を低下させ、却ってクリープ強度の低下を招く。したがって、含有させる場合のMoの量に上限を設け、1%以下とする。含有させる場合のMoの量は、0.8%以下であることが好ましい。
一方、前記したMoの効果を安定して得るためには、含有させる場合のMoの量は0.05%以上であることが好ましい。
W:1%以下
Wは、高温でのクリープ強度を高める作用を有する。具体的には、Wは、Moと同様にマトリックスに固溶して高温でのクリープ強度を高める作用を有する。このため、必要に応じてWを含有させてもよい。しかしながら、Wの含有量が過剰になると、オーステナイトの安定性を低下させ、却ってクリープ強度の低下を招く。したがって、含有させる場合のWの量に上限を設け、1%以下とする。含有させる場合のWの量は、0.8%以下であることが好ましい。
一方、前記したWの効果を安定して得るためには、含有させる場合のWの量は0.05%以上であることが好ましい。
Co:1%以下
Coは、高温でのクリープ強度を高める作用を有する。具体的には、Coは、Niと同様オ−ステナイト生成元素であり、オーステナイトの相安定性を高め、高温でのクリープ強度の向上に寄与する。このため、必要に応じてCoを含有させてもよい。しかしながら、Coは極めて高価な元素であるため、過剰に含有させると大幅なコスト増を招く。したがって、含有させる場合のCoの量に上限を設け、1%以下とする。含有させる場合のCoの量は、0.8%以下であることが好ましい。
一方、前記したCoの効果を安定して得るためには、含有させる場合のCoの量は0.05%以上であることが好ましい。
Cu:4%以下
Cuは、高温でのクリープ強度を高める作用を有する。具体的には、Cuは、NiやCoと同様オ−ステナイトを得るために有効な元素であり、オーステナイトの相安定性を高めることによって、さらに、長時間での使用時に析出することによって、高温でのクリープ強度の向上に寄与する。このため、必要に応じてCuを含有させてもよい。しかしながら、多量のCuを含有させても上記の効果は飽和し、しかも、脆化を招く。したがって、含有させる場合のCuの量に上限を設け、4%以下とする。含有させる場合のCuの量は3.8%以下であることが好ましい。
一方、前記したCuの効果を安定して得るためには、含有させる場合のCuの量は0.05%以上であることが好ましい。
B:0.012%以下
Bは、高温でのクリープ強度を高める作用を有する。具体的には、Bは、高温使用中の粒界に偏析して粒界を強化するとともに粒界炭化物を微細分散させることにより、高温でのクリープ強度の向上に寄与する。加えて、Bは、粒界に偏析して固着力を向上させ、靱性改善にも寄与する。このため、必要に応じてBを含有させてもよい。しかしながら、Bの含有量が過剰になると、溶接中にHAZの結晶粒界に偏析し、液化割れ感受性を高める。したがって、含有させる場合のBの量に上限を設け、0.012%以下とする。含有させる場合のBの量は、0.010%以下であることが好ましい。
一方、前記したBの効果を安定して得るためには、含有させる場合のBの量は0.0005%以上であることが好ましい。
上記のMo、W、Co、CuおよびBは、そのうちのいずれか1種のみ、または、2種以上の複合で含有させることができる。これらの元素を複合して含有させる場合の合計量は、5%以下であることが好ましい。
第2群:Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下およびREM:0.06%以下
Ca、MgおよびREMは、いずれも、鋼の熱間加工性を改善する作用を有する。このため、これらの元素を以下に述べる範囲で含有させてもよい。
Ca:0.01%以下
Caは、鋼の熱間加工性を改善する作用を有する、このため、必要に応じてCaを含有させてもよい。しかし、Caの含有量が過剰になると、O(酸素)と結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、含有させる場合のCaの量に上限を設け、0.01%以下とする。含有させる場合のCaの量は、0.008%以下であることが好ましい。
一方、前記したCaの効果を安定して得るためには、含有させる場合のCaの量は0.0005%以上であることが好ましい。
Mg:0.01%以下
Mgは、Caと同様に鋼の熱間加工性を改善する作用を有する、このため、必要に応じてMgを含有させてもよい。しかしながら、Mgの含有量が過剰になると、O(酸素)と結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、含有させる場合のMgの量に上限を設け、0.01%以下とする。含有させる場合のMgの量は、0.008%以下であることが好ましい。
一方、前記したMgの効果を安定して得るためには、含有させる場合のMgの量は0.0005%以上であることが好ましい。
REM:0.06%以下
REMは、Ca、Mgと同様に鋼の熱間加工性を改善する作用を有する、このため、必要に応じてREMを含有させてもよい。しかしながら、REMの含有量が過剰になると、O(酸素)と結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、含有させる場合のREMの量に上限を設け、0.06%以下とする。含有させる場合のREMの量は、0.05%以下であることが好ましい。
一方、前記したREMの効果を安定して得るためには、含有させる場合のREMの量は0.0005%以上であることが好ましい。
なお、「REM」とは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量はREMのうちの1種または2種以上の元素の合計含有量を指す。また、REMについては一般的にミッシュメタルに含有される。このため、例えば、ミッシュメタルの形で添加して、REMの量が上記の範囲となるように含有させてもよい。
上記のCa、MgおよびREMは、そのうちのいずれか1種のみ、または2種以上の複合で含有させることができる。これらの元素を複合して含有させる場合の合計量は0.08%であってもよい。
第3群:V:0.5%以下およびTi:0.5%以下。
VおよびTiは、いずれも、クリープ強度を高める作用を有する。このため、これらの元素を以下に述べる範囲で含有させてもよい。
V:0.5%以下
Vは、クリープ強度を高める作用を有する。具体的には、Vは、CまたはNと結合して微細な炭化物または炭窒化物を形成し、クリープ強度を高める作用を有する。このため、必要に応じてVを含有させてもよい。しかしながら、Vの含有量が過剰になると、炭化物または炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性の低下を招く。したがって、含有させる場合のVの量に上限を設け、0.5%以下とする。含有させる場合のVの量は、0.4%以下であることが好ましい。
一方、前記したVの効果を安定して得るためには、含有させる場合のVの量は0.02%以上であることが好ましい。
Ti:0.5%以下
Tiは、クリープ強度を高める作用を有する。具体的には、Tiは、微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度を高める作用を有する。このため、必要に応じてTiを含有させてもよい。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると、炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。したがって、含有させる場合のTiの量に上限を設け、0.5%以下とする。含有させる場合のTiの量は、0.4%以下であることが好ましい。
一方、前記したTiの効果を安定して得るためには、含有させる場合のTiの量は0.02%以上であることが好ましい。
上記のVおよびTiは、そのうちのいずれか1種のみ、または、2種の複合で含有させることができる。これらの元素を複合して含有させる場合の合計量は、1.0%であってもよい。
〔Cr+2×Si−0.5×Mn〕:17.5以上
本発明のオーステナイト系耐熱鋼管は、さらに、下記の[1]式を満足する化学組成でなければならない。
Cr+2×Si−0.5×Mn≧17.5・・・[1]
ただし、[1]式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
これは、密着性が高く、かつ薄くて緻密な酸化物を形成するCrおよびSiの含有量と、多孔質で脆く剥離しやすいスピネル酸化物を形成するMnの含有量とが、[1]式を満たせば、酸化物層の破壊が抑制されるため、切り欠きとして作用する亀裂の発生を防止でき、さらに、繰り返しの熱サイクル過程での酸化物層の成長も抑制されるため、熱疲労による損傷を軽減、抑止できるからである。
なお、〔Cr+2×Si−0.5×Mn〕は、CrとSiの含有量がそれぞれ上限の20%と1%で、Mnの含有量が0に近い場合の、22に近い値であっても構わない。
(B)オーステナイト系耐熱鋼管の外表面および内表面における酸化物層
本発明のオーステナイト系耐熱鋼管は、被溶接端からの距離が5mmの範囲にある領域の管の外表面および内表面における酸化物層の厚さが30μm以下でなければならない。
管表面に存在する酸化物層は高温に加熱、冷却される過程においてオーステナイト系耐熱鋼管との熱膨張差により破壊する。加えて、繰り返しの熱サイクルにより溶接部には熱応力が発生し、酸化物層が破壊した部分では、亀裂が切り欠きとして作用し、その底部に熱応力が集中する。特に、オーステナイト系耐熱鋼管とフェライト系耐熱鋼管との異材溶接部ではその熱膨張係数差に起因し、より大きな熱応力が生じるため、酸化物層が破壊した部分の底部での熱応力がより大きくなる。
そして、上述のとおり、酸化物層が破壊した部分では、亀裂底部に存在する粒界に大きな熱応力が繰り返し作用し、疲労損傷の起点として作用する。
しかしながら、前記(A)項で述べた化学組成を有するオーステナイト系耐熱鋼管においては、被溶接端からの距離が5mmの範囲にある領域の管の外表面および内表面における酸化物層の厚さが30μm以下であれば、酸化物層の破壊が抑止されるため、熱疲労による損傷を軽減、抑止することができる。
被溶接端からの距離が5mmの範囲にある領域の管の外表面および内表面における酸化物層の厚さは、望ましくは20μm以下、さらに望ましくは10μm以下である。
上記の被溶接端からの距離が5mmの範囲にある領域の管の外表面および内表面における酸化物層の厚さは、溶接施工時に被溶接端部となる箇所を決定し、該被溶接端部からの距離が5mmの範囲となる管外表面および内表面のみに酸洗、研磨あるいはショットブラスト等の処理を施すことによって管理することができる。
なお、耐熱鋼管の外表面および内表面における酸化物層の厚さは、上記の被溶接端からの距離が5mmの範囲にある領域について管理しさえすればよく、被溶接端からの距離が5mmを超える領域の管の外表面および内表面における酸化物層の厚さについては、特に管理するに及ばない。
しかしながら、オーステナイト系耐熱鋼管の製造に際して、例えば、水素等の還元性ガス中で熱処理して管全長にわたってその表面が酸化されることを防止したり、大気中または燃焼ガス中での熱処理により酸化物層が形成された場合には、酸洗、研磨あるいはショットブラスト等の処理を施す等、管の全長にわたって酸化物層の厚さを所定の範囲に管理してもよいことは勿論である。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有し、外径が45mmで肉厚が7mmのオーステナイト系耐熱鋼管A1〜A5およびフェライト系耐熱鋼管F1を製造した。
表1中のオーステナイト系耐熱鋼管A1〜A4は、化学組成が本発明で規定する範囲内にあるオーステナイト系耐熱鋼管である。一方、オーステナイト系耐熱鋼管A5は、[1]式の左辺、すなわち〔Cr+2×Si−0.5×Mn〕が本発明で規定する条件から外れた比較例のオーステナイト系耐熱鋼管である。
Figure 0005880306
上記の各耐熱鋼管のうち、オーステナイト系耐熱鋼管を200mm長さに切断し、大気中で温度1180℃、時間1hの条件で固溶化熱処理を行った。
次いで、得られた管の外表面および内表面を機械研磨または酸洗して、酸化物層厚さを種々に変化させた。
なお、機械研磨による管の外表面および内表面の処理については、後述の開先を加工する側の管の端部からの距離が5mmの範囲にある領域について実施した。一方、酸洗による管の外表面および内表面の処理は、200mm長さの供試鋼管の全長にわたって実施した。
管の外表面および内表面の酸化物層厚さを種々に変化させた上記の各オーステナイト系耐熱鋼管について、開先を加工する側の管の端部からの距離が5mmの範囲にある領域での酸化物層の最大の厚さを、管の長手方向に垂直な横断面を現出し、光学顕微鏡観察により、測定した。
次いで、酸化物層厚さを測定した鋼管と同様の処理を施した200mm長さの各オーステナイト系耐熱鋼管を、同じ200mm長さに切断したフェライト系耐熱鋼管F1とともに管の端部にU開先を加工した後、突き合わせ、溶接ワイヤ(JIS Z 3334(2011)に規定の「S Ni 6082」)を用いて、TIG溶接により開先内に多層溶接を行い、異材溶接継手J1〜J18を作製した。
得られた溶接継手J1〜J18に、高周波誘導加熱により「100℃→620℃→100℃」の加熱、冷却のサイクルを1000回繰り返す熱疲労試験を行った。
その後、熱疲労試験を行った各溶接継手から溶接線を横断する面を8断面現出させ、オーステナイト系耐熱鋼管側の溶接継手外表面および内表面を光学顕微鏡により検鏡して、疲労亀裂の有無を調査した。
なお、耐熱疲労特性は、上記の調査で疲労亀裂が全く観察されなかった場合を「合格」、1断面でも割れが観察された場合を「不合格」として、外表面および内表面について、それぞれ判定した。そして、上記外表面および内表面における判定がともに「合格」である場合に耐熱疲労特性が優れているとし、総合評価を「合格」とした。
表2に、異材溶接継手構成のために用いた各オーステナイト系耐熱鋼管の被溶接端からの距離が5mmの範囲にある領域(つまり、開先を加工する側の管の端部からの距離が5mmの範囲にある領域)での酸化物層の最大厚さ測定結果およびオーステナイト系耐熱鋼管側の溶接継手の耐熱疲労特性の調査結果を示す。なお、表2では単に、「酸化物層の厚さ」および「耐熱疲労特性」と表記した。
Figure 0005880306
表2から、本発明で規定する条件を満足するオーステナイト系耐熱鋼管を使用して得られた溶接継手J1、J2、J4、J5、J7、J8、J10、J11の場合、「100℃→620℃→100℃」の加熱、冷却のサイクルを1000回繰り返しても、断面観察で外表面および内表面のいずれにも疲労亀裂の発生は認められず、良好な耐熱疲労特性を有していることが明らかである。
一方、本発明で規定する条件から外れたオーステナイト系耐熱鋼管を使用して得られた溶接継手J13〜J18の場合、断面観察で疲労亀裂の発生が認められ、耐熱疲労特性に劣っている。
具体的には、溶接継手J13、J14およびJ16は、用いたオーステナイト系耐熱鋼管の外表面および内表面の酸化物層の厚さがいずれも30μmを上回ったため、酸化物層が破壊し、その底部に熱応力が集中した結果、外表面および内表面の双方に疲労亀裂が発生して、耐熱疲労特性に劣っている。
溶接継手J15の場合、用いたオーステナイト系耐熱鋼管の外表面の酸化物層の厚さは30μm以下の規定を満たすため、外表面には疲労亀裂は発生しなかった。しかしながら、上記オーステナイト系耐熱鋼管の内表面の酸化物層の厚さが30μmを上回ったため、内表面に疲労亀裂が発生して、耐熱疲労特性に劣っている。
溶接継手J17は、用いたオーステナイト系耐熱鋼管の外表面および内表面の酸化物層の厚さはともに30μmを超えなかったものの、上記耐熱鋼管は、[1]式の左辺である〔Cr+2×Si−0.5×Mn〕が17.5より小さい17.3で[1]式を満足せず、本発明で規定する化学組成条件から外れる。このため、疲労試験中に酸化物層が30μm以上にまで成長し、脆くて多孔質の酸化物層となった結果、外表面および内表面のいずれにも疲労亀裂が発生して、耐熱疲労特性に劣っている。
溶接継手J18は、用いたオーステナイト系耐熱鋼管の外表面および内表面の酸化物層の厚さがいずれも30μmを上回るとともに、化学組成が[1]式を満足しなかったため、疲労試験中にさらに酸化物層が成長し、疲労亀裂が発生して、耐熱疲労特性に劣っている。
上述のことから明らかなように、本発明で規定するオーステナイト系耐熱鋼管を用いた溶接継手のみが、良好な耐熱疲労特性を備えていることがわかる。
本発明のオーステナイト系耐熱鋼管を用いた溶接構造体は、良好な耐熱疲労特性、なかでも異材溶接部近傍における熱疲労損傷に対して十分な抵抗性を備えている。このため、本発明のオーステナイト系耐熱鋼管は、排熱回収ボイラや太陽熱発電プラントの過熱器管などのように、高温加熱と冷却が繰り返される機器の部材として好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 溶接して用いられる鋼管であって、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Ni:7〜13.5%、Cr:16〜20%、Nb:0.2〜1.2%、Al:0.05%以下、N:0.01〜0.20%およびO:0.01%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなり、かつ下記の[1]式を満足する化学組成を有し、さらに、被溶接端からの距離が5mmの範囲にある領域の管の外表面および内表面における酸化物層の厚さが20μm以下であることを特徴とするオーステナイト系耐熱鋼管。
    Cr+2×Si−0.5×Mn≧17.5・・・[1]
    [1]式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、下記の第1群から第3群までのいずれかに属する1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋼管。
    第1群:Mo:1%以下、W:1%以下、Co:1%以下、Cu:4%以下およびB:0.012%以下
    第2群:Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下およびREM:0.06%以下
    第3群:V:0.5%以下およびTi:0.5%以下。
  3. 排熱回収ボイラ又は太陽熱発電プラントの過熱器管として用いることを特徴とする請求項1または2に記載のオーステナイト系耐熱鋼管。
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