JP5880306B2 - オーステナイト系耐熱鋼管 - Google Patents
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Cr+2×Si−0.5×Mn≧17.5。
Cr+2×Si−0.5×Mn≧17.5・・・[1]
[1]式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
第1群:Mo:1%以下、W:1%以下、Co:1%以下、Cu:4%以下およびB:0.012%以下
第2群:Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下およびREM:0.06%以下
第3群:V:0.5%以下およびTi:0.5%以下。
C:0.03〜0.15%
Cは、オーステナイトを安定にするとともに粒界に微細な炭化物を形成し、高温でのクリープ強度を向上させる。その効果を十分に得るためには、0.03%以上のC含有量が必要である。しかしながら、Cが過剰に含有された場合には、炭化物が粗大となり、かつ多量に析出して、粒界の延性を低下させ、靱性およびクリープ強度の低下を招く。このため、上限を設け、Cの含有量を0.03〜0.15%とする。C含有量の下限は0.04%であることが望ましく、0.06%であればより望ましい。また、C含有量の上限は0.12%であることが望ましく、0.10%であればより望ましい。
Siは、脱酸剤として添加され、高温での耐食性および耐酸化性の向上にも有効な元素である。Siは、特に本発明においては、鋼管の製造過程で表面に生成する酸化物層の厚さおよび密着性に影響を及ぼすとともに、高温での使用中の成長に影響を及ぼす重要な元素である。すなわち、Siは、後述のCrと同様に、初期の酸化物層厚さを薄く保つとともに、密着性が高く、かつ薄くて緻密な酸化物を形成する。しかしながら、Siの過剰の含有はオーステナイトの安定性を低下させ、靱性およびクリープ強度の低下を招く。そのため、Siの含有量に上限を設けて1%以下とする。Siの含有量は、望ましくは、0.8%以下である。
Mnは、Siと同様、脱酸剤として添加される。Mnは、オーステナイトの安定化にも寄与する。しかしながら、Mnは、特に本発明においては、鋼管の製造過程で表面に生成する酸化物層厚さおよび密着性に影響を及ぼすとともに、高温での使用中の成長に影響を及ぼす元素であって、多孔質で脆いスピネル酸化物を形成するため、過剰の含有は避ける必要がある。しかも、Mnの過剰の含有は脆化を招き、靱性およびクリープ延性が低下する。そのため、Mnの含有量に上限を設けて2%以下とする。Mnの含有量は、望ましくは、1.5%以下である。
Pは、不純物として鋼中に含まれ、溶接中にHAZの結晶粒界に偏析して、液化割れ感受性を高めるとともにクリープ延性を低下させる元素である。そのため、Pの含有量に上限を設けて0.04%以下とする。Pの含有量は、望ましくは、0.038%以下、より望ましくは0.035%以下である。
Sは、Pと同様に不純物として鋼中に含まれ、溶接中にHAZの結晶粒界に偏析して、液化割れ感受性を高めるとともにクリープ延性にも悪影響を及ぼす元素である。そのため、Sの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Sの含有量は、望ましくは、0.008%以下、より望ましくは0.005%以下である。
Niは、オーステナイトを得るために有効な元素であり、長時間使用時の組織安定性を確保するために必須の元素である。後述の16〜20%という本発明のCr含有量の範囲で、上記したNiの効果を十分に得るためには、7%以上のNi含有量が必要である。しかし、Niは高価な元素であるため、多量の含有はコストの増大を招く。そのため、上限を設け、Niの含有量を7〜13.5%とする。Ni含有量の下限は7.5%であることが望ましく、8%であればより望ましい。また、Ni含有量の上限は13.2%であることが望ましく、13.0%であればより望ましい。
Crは、高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。Crは、特に本発明においては、鋼管の製造過程で表面に生成する酸化物層の厚さおよび密着性に影響を及ぼすとともに、高温での使用中の成長に影響を及ぼす重要な元素である。すなわち、Crは、前述のSiと同様に、初期の酸化物層厚さを薄く保つとともに、密着性が高く、かつ薄くて緻密な酸化物を形成する。上記7〜13.5%というNi含有量の範囲で、上記したCrの効果を得るためには、16%以上のCr含有量が必要である。しかしながら、Crの含有量が20%を超えると、高温でのオーステナイトの安定性を劣化させ、クリープ強度の低下を招く。したがって、Crの含有量を16〜20%とする。Cr含有量の下限は16.2%であることが望ましく、16.5%であればより望ましい。また、Cr含有量の上限は19.8%であることが望ましく、19.5%であればより望ましい。
Nbは、CまたはNと結合して、微細な炭化物または炭窒化物を形成し、クリープ強度に大きく寄与する。その効果を得るためには0.2%以上のNb含有量が必要である。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると、炭化物または炭窒化物として多量に析出し、逆にクリープ延性の低下を招く。このため、上限を設けて、Nbの含有量を0.2〜1.2%とする。Nb含有量の下限は0.25%であることが望ましく、0.3%であればより望ましい。また、Nb含有量の上限は1.1%であることが望ましく、1.0%であればより望ましい。
Alは、脱酸剤として添加される。しかしながら、Alの含有量が過剰になると、鋼の清浄性が著しく劣化して、熱間加工性および延性が低下する。そのため、Alの含有量に上限を設けて0.05%以下とする。Alの含有量は、望ましくは、0.03%以下、より望ましくは0.02%以下である。
Nは、オーステナイトを安定にするとともに、マトリックスに固溶または長時間使用中に窒化物として粒内に微細に析出し、クリープ強度の向上に寄与する元素である。上記したNの効果を得るためには、0.01%以上のN含有量が必要である。しかしながら、Nの含有量が過剰になると、高温での使用中に多量の窒化物の析出を招き、クリープ延性や靱性の低下をきたす。そのため、上限を設け、Nの含有量を0.01〜0.25%とする。N含有量の下限は0.03%であることが望ましく、0.05%であればより望ましい。また、N含有量の上限は0.23%であることが望ましく、0.20%であればより望ましい。
O(酸素)は、不純物として鋼中に含まれ、過剰に含まれると熱間加工性の低下や靱性、延性の劣化を招く元素である。そのため、Oの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Oの含有量は、望ましくは、0.008%以下、より望ましくは0.005%以下である。
Mo、W、Co、CuおよびBは、いずれも、高温でのクリープ強度を高める作用を有する。このため、より大きなクリープ強度を得たい場合には、これらの元素を以下に述べる範囲で含有させてもよい。
Moは、高温でのクリープ強度を高める作用を有する。具体的には、Moは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度を高める作用を有する。このため、必要に応じてMoを含有させてもよい。しかしながら、Moの含有量が過剰になると、オーステナイトの安定性を低下させ、却ってクリープ強度の低下を招く。したがって、含有させる場合のMoの量に上限を設け、1%以下とする。含有させる場合のMoの量は、0.8%以下であることが好ましい。
Wは、高温でのクリープ強度を高める作用を有する。具体的には、Wは、Moと同様にマトリックスに固溶して高温でのクリープ強度を高める作用を有する。このため、必要に応じてWを含有させてもよい。しかしながら、Wの含有量が過剰になると、オーステナイトの安定性を低下させ、却ってクリープ強度の低下を招く。したがって、含有させる場合のWの量に上限を設け、1%以下とする。含有させる場合のWの量は、0.8%以下であることが好ましい。
Coは、高温でのクリープ強度を高める作用を有する。具体的には、Coは、Niと同様オ−ステナイト生成元素であり、オーステナイトの相安定性を高め、高温でのクリープ強度の向上に寄与する。このため、必要に応じてCoを含有させてもよい。しかしながら、Coは極めて高価な元素であるため、過剰に含有させると大幅なコスト増を招く。したがって、含有させる場合のCoの量に上限を設け、1%以下とする。含有させる場合のCoの量は、0.8%以下であることが好ましい。
Cuは、高温でのクリープ強度を高める作用を有する。具体的には、Cuは、NiやCoと同様オ−ステナイトを得るために有効な元素であり、オーステナイトの相安定性を高めることによって、さらに、長時間での使用時に析出することによって、高温でのクリープ強度の向上に寄与する。このため、必要に応じてCuを含有させてもよい。しかしながら、多量のCuを含有させても上記の効果は飽和し、しかも、脆化を招く。したがって、含有させる場合のCuの量に上限を設け、4%以下とする。含有させる場合のCuの量は3.8%以下であることが好ましい。
Bは、高温でのクリープ強度を高める作用を有する。具体的には、Bは、高温使用中の粒界に偏析して粒界を強化するとともに粒界炭化物を微細分散させることにより、高温でのクリープ強度の向上に寄与する。加えて、Bは、粒界に偏析して固着力を向上させ、靱性改善にも寄与する。このため、必要に応じてBを含有させてもよい。しかしながら、Bの含有量が過剰になると、溶接中にHAZの結晶粒界に偏析し、液化割れ感受性を高める。したがって、含有させる場合のBの量に上限を設け、0.012%以下とする。含有させる場合のBの量は、0.010%以下であることが好ましい。
Ca、MgおよびREMは、いずれも、鋼の熱間加工性を改善する作用を有する。このため、これらの元素を以下に述べる範囲で含有させてもよい。
Caは、鋼の熱間加工性を改善する作用を有する、このため、必要に応じてCaを含有させてもよい。しかし、Caの含有量が過剰になると、O(酸素)と結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、含有させる場合のCaの量に上限を設け、0.01%以下とする。含有させる場合のCaの量は、0.008%以下であることが好ましい。
Mgは、Caと同様に鋼の熱間加工性を改善する作用を有する、このため、必要に応じてMgを含有させてもよい。しかしながら、Mgの含有量が過剰になると、O(酸素)と結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、含有させる場合のMgの量に上限を設け、0.01%以下とする。含有させる場合のMgの量は、0.008%以下であることが好ましい。
REMは、Ca、Mgと同様に鋼の熱間加工性を改善する作用を有する、このため、必要に応じてREMを含有させてもよい。しかしながら、REMの含有量が過剰になると、O(酸素)と結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、含有させる場合のREMの量に上限を設け、0.06%以下とする。含有させる場合のREMの量は、0.05%以下であることが好ましい。
Vは、クリープ強度を高める作用を有する。具体的には、Vは、CまたはNと結合して微細な炭化物または炭窒化物を形成し、クリープ強度を高める作用を有する。このため、必要に応じてVを含有させてもよい。しかしながら、Vの含有量が過剰になると、炭化物または炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性の低下を招く。したがって、含有させる場合のVの量に上限を設け、0.5%以下とする。含有させる場合のVの量は、0.4%以下であることが好ましい。
Tiは、クリープ強度を高める作用を有する。具体的には、Tiは、微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度を高める作用を有する。このため、必要に応じてTiを含有させてもよい。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると、炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。したがって、含有させる場合のTiの量に上限を設け、0.5%以下とする。含有させる場合のTiの量は、0.4%以下であることが好ましい。
本発明のオーステナイト系耐熱鋼管は、さらに、下記の[1]式を満足する化学組成でなければならない。
Cr+2×Si−0.5×Mn≧17.5・・・[1]
ただし、[1]式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
本発明のオーステナイト系耐熱鋼管は、被溶接端からの距離が5mmの範囲にある領域の管の外表面および内表面における酸化物層の厚さが30μm以下でなければならない。
Claims (3)
- 溶接して用いられる鋼管であって、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Ni:7〜13.5%、Cr:16〜20%、Nb:0.2〜1.2%、Al:0.05%以下、N:0.01〜0.20%およびO:0.01%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなり、かつ下記の[1]式を満足する化学組成を有し、さらに、被溶接端からの距離が5mmの範囲にある領域の管の外表面および内表面における酸化物層の厚さが20μm以下であることを特徴とするオーステナイト系耐熱鋼管。
Cr+2×Si−0.5×Mn≧17.5・・・[1]
[1]式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。 - Feの一部に代えて、質量%で、下記の第1群から第3群までのいずれかに属する1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋼管。
第1群:Mo:1%以下、W:1%以下、Co:1%以下、Cu:4%以下およびB:0.012%以下
第2群:Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下およびREM:0.06%以下
第3群:V:0.5%以下およびTi:0.5%以下。 - 排熱回収ボイラ又は太陽熱発電プラントの過熱器管として用いることを特徴とする請求項1または2に記載のオーステナイト系耐熱鋼管。
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