JP5920047B2 - オーステナイト系耐熱部材 - Google Patents
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HV0.025(max)≦−1.2×Rz+380
なお、上記の「HV0.025」は、試験力を0.2452N(25gf)としてマイクロビッカース硬さ試験を実施した場合の「硬さ記号」を意味する(JIS Z 2244(2009)参照)。
HV0.025(max)≦−1.2×Rz+380・・・[1]。
第1群:Ca:0.05%以下、Mg:0.05%以下およびREM:0.1%以下
第2群:Co:1%以下、Cu:1%以下、Mo:1%以下、V:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびZr:0.5%以下
(3)肉厚が20mm以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のオーステナイト系耐熱部材。
C:0.03〜0.15%
Cは、オーステナイトを安定にするとともに粒界に微細な炭化物を形成し、高温でのクリープ強度を向上させる。この効果を十分に得るためには、0.03%以上のC含有量が必要である。しかしながら、Cが過剰に含有された場合には、炭化物が粗大となり、かつ多量に析出するので、粒界の延性が低下し、さらに、靱性およびクリープ強度の低下も生じる。したがって、上限を設け、Cの含有量を0.03〜0.15%とする。C含有量の望ましい下限は0.04%、さらに望ましい下限は0.05%である。また、C含有量の望ましい上限は0.12%、さらに望ましい上限は0.10%である。
Siは、脱酸作用を有するとともに、高温での耐食性および耐酸化性の向上に有効な元素である。しかしながら、Siが過剰に含有された場合にはオーステナイトの安定性が低下して、靱性およびクリープ強度の低下を招く。そのため、Siの含有量に上限を設けて1%以下とする。Siの含有量は望ましくは0.8%以下、さらに望ましくは0.6%以下である。
Mnは、Siと同様、脱酸作用を有する。Mnは、オーステナイトの安定化にも寄与する。しかしながら、Mnの含有量が過剰になると脆化を招き、さらに、靱性およびクリープ延性の低下も生じる。そのため、Mnの含有量に上限を設けて2%以下とする。Mnの含有量は望ましくは1.8%以下、さらに望ましくは1.5%以下である。
Pは、不純物として合金中に含まれ、溶接中にHAZの結晶粒界に偏析して液化割れ感受性を高める元素である。さらに、Pは、長時間使用後のクリープ延性も低下させる。そのため、Pの含有量に上限を設けて0.03%以下とする。Pの含有量は、望ましくは0.025%以下、さらに望ましくは0.02%以下である。
Sは、Pと同様に不純物として合金中に含まれ、溶接中にHAZの結晶粒界に偏析して液化割れ感受性を高める元素である。さらに、Sは、長時間使用後のクリープ延性および靱性にも悪影響を及ぼす元素である。そのため、Sの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Sの含有量は、望ましくは0.008%以下、さらに望ましくは0.005%以下である。
Niは、オーステナイトを得るために有効な元素であり、長時間使用時の組織安定性を確保するために必須の元素である。後述の20〜35%という本発明のCr含有量の範囲で、上記したNiの効果を十分に得るためには、40%以上のNi含有量が必要である。しかしながら、Niは高価な元素であり、多量の含有はコストの増大を招く。そのため、上限を設けて、Niの含有量を40〜55%とする。Ni含有量の望ましい下限は41%、さらに望ましい下限は42%である。また、Ni含有量の望ましい上限は54%、さらに望ましい上限は53%である。
Crは、高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。上記40〜55%という本発明のNi含有量の範囲で、上記したCrの効果を得るためには、20%%以上のCr含有量が必要である。しかしながら、Crの含有量が35%を超えると、高温でのオーステナイトの安定性が劣化してクリープ強度の低下を招く。したがって、Crの含有量を20〜35%とする。Cr含有量の望ましい下限は20.5%、さらに望ましい下限は21%である。また、Cr含有量の望ましい上限は34.5%、さらに望ましい上限は34%である。
Wは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度の向上に大きく寄与する元素である。その効果を十分に発揮させるためには少なくとも3%以上のW含有量が必要である。しかしながら、Wを過剰に含有させても効果は飽和し、かえってクリープ強度を低下させる場合もある。さらに、Wは高価な元素であるため、過剰のW含有はコストの増大を招く。そのため、上限を設けて、Wの含有量を3〜10%とする。W含有量の望ましい下限は3.5%、さらに望ましい下限は4%である。また、W含有量の望ましい上限は9.5%、さらに望ましい上限は9%である。
Tiは、微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度に寄与する。その効果を得るためには0.01%以上のTi含有量が必要である。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。このため、上限を設けて、Tiの含有量を0.01〜1.2%とする。Ti含有量の望ましい下限は0.03%、さらに望ましい下限は0.05%である。また、Ti含有量の望ましい上限は1.0%、さらに望ましい上限は0.8%である。
Alは、脱酸作用を有する元素である。しかしながら、Alの含有量が過剰になると合金の清浄性が著しく劣化して、熱間加工性および延性が低下する。そのため、Alの含有量に上限を設けて0.3%以下とする。Alの含有量は望ましくは0.2%以下、さらに望ましくは0.1%以下である。
Bは、高温での使用中に粒界に偏析して粒界を強化するとともに粒界炭化物を微細分散させることにより、クリープ強度を向上させるのに必要な元素である。この効果を得るためには0.0001%以上のB含有量が必要である。しかしながら、Bの含有量が過剰になると、溶接中の溶接熱サイクルにより溶融境界近傍の高温HAZにBが多量に偏析して粒界の融点を低下させ、HAZの液化割れ感受性を高める。そのため、上限を設けて、Bの含有量を0.0001〜0.01%とする。B含有量の望ましい下限は0.0005%、さらに望ましい下限は0.001%である。また、B含有量の望ましい上限は0.008%、さらに望ましい上限は0.006%である。
Nは、オーステナイトを安定にするのに有効な元素であるものの、過剰に含有されると、高温での使用中に多量の微細窒化物が粒内に析出してクリープ延性および靱性の低下を招く。そのため、Nの含有量に上限を設けて0.02%以下とする。Nの含有量は望ましくは0.018%以下、さらに望ましくは0.015%以下である。
O(酸素)は、不純物として合金中に含まれ、その含有量が過剰になると熱間加工性が低下し、さらに靱性および延性の劣化を招く。このため、Oの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Oの含有量は望ましくは0.008%以下、さらに望ましくは0.005%以下である。
Caは、熱間加工性を改善する作用を有する。このため、Caを含有させてもよい。しかしながら、Caの含有量が過剰になるとOと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、Caを含有させる場合には、その含有量を0.05%以下とする。Ca含有量の上限は、望ましくは0.04%である。
Mgは、Caと同様、熱間加工性を改善する作用を有する。このため、Mgを含有させてもよい。しかしながら、Mgの含有量が過剰になるとOと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、Mgを含有させる場合には、その含有量を0.05%以下とする。Mg含有量の上限は、望ましくは0.04%である。
REMは、熱間加工性を改善する作用を有する。すなわち、REMは、Sとの親和力が強く、熱間加工性の向上に寄与する。このため、REMを含有させてもよい。しかしながら、REMの含有量が過剰になると、Oと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、REMを含有させる場合には、その含有量を0.1%以下とする。REM含有量の上限は、望ましくは0.08%である。
Coは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Coは、Niと同様オ−ステナイト生成元素であり、相安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。したがって、Coを含有させてもよい。しかしながら、Coは極めて高価な元素であるため、Coの過剰の含有は大幅なコスト増を招く。このため、Coを含有させる場合には、その含有量を1%以下とする。Co含有量の上限は、望ましくは0.8%である。
Cuは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Cuは、NiおよびCoと同様オ−ステナイト生成元素であり、相安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。したがって、Cuを含有させてもよい。しかしながら、Cuが過剰に含有された場合には熱間加工性の低下を招く。このため、Cuを含有させる場合には、その含有量を1%以下とする。Cu含有量の上限は、望ましくは0.8%である。
Moは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Moは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度を向上させる作用を有する。したがって、Moを含有させてもよい。しかしながら、Moが過剰に含有された場合にはオーステナイトの安定性が低下して、却ってクリープ強度の低下を招く。そのため、Moを含有させる場合には、その含有量を1%以下とする。Mo含有量の上限は、望ましくは0.8%である。
Vは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Vは、CまたはNと結合して微細な炭化物または炭窒化物を形成し、クリープ強度を向上させる作用を有する。したがって、Vを含有させてもよい。しかしながら、Vが過剰に含有された場合、炭化物または炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性の低下を招く。そのため、Vを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。V含有量の上限は、望ましくは0.4%である。
Nbは、Vと同様にCやNと結合して微細な炭化物や炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度に寄与する。したがって、Nbを含有させてもよい。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると炭化物や炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。そのため、Nbを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。Nb含有量の上限は、望ましくは0.4%である。
Zrは、マトリックスに固溶してクリープ強度を向上させる作用を有する。したがって、Zrを含有させてもよい。しかしながら、Zrが過剰に含有された場合、クリープ延性を低下させることに加えHAZでの液化割れ感受性を高める。そのため、Zrを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。Zr含有量の上限は、望ましくは0.4%である。
前述の(A)項に記載の化学組成を有する本発明のオーステナイト系耐熱部材は、製造時の表面疵や酸化皮膜を除去するために、表面を工具により切削加工されたり、グラインダーやベルターなどにより研磨加工される。そのため、部材表面には、これらの加工による凹凸が形成され、しかも、加工による歪が導入されるため硬さが増大する。
HV0.025(max)≦−1.2×Rz+380・・・[1]
式を満足するものでなければならない。
・部材表面の最大粗さRzが50μm以下で、かつ
・部材の表面から深さ100μmまでの領域における最高硬さHV0.025(max)と上記Rzとが、前記の[1]式を満足する、
という条件は、例えば、切削バイトにより部材表面を切削加工した後、さらに粒度が60番より細かい番手の砥石にて1回以上表面を研磨加工することにより、安定して達成することができる。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:40〜55%、Cr:20〜35%、W:3〜10%、Ti:0.01〜1.2%、Al:0.3%以下、B:0.0001〜0.01%、N:0.02%以下およびO:0.01%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなる化学組成であって、部材表面の最大粗さRzが50μm以下であり、かつ部材の表面から深さ100μmまでの領域における最高硬さHV0.025(max)とRzとが、下記の[1]式を満足することを特徴とするオーステナイト系耐熱部材。
HV0.025(max)≦−1.2×Rz+380・・・[1]。 - Feの一部に代えて、質量%で、下記の第1群または第2群に属する1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系耐熱部材。
第1群:Ca:0.05%以下、Mg:0.05%以下およびREM:0.1%以下
第2群:Co:1%以下、Cu:1%以下、Mo:1%以下、V:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびZr:0.5%以下 - 肉厚が20mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のオーステナイト系耐熱部材。
- 請求項1から3までのいずれかに記載のオーステナイト系耐熱部材が溶接されたことにより組み立てられた構造部材。
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