JP7183808B2 - オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料、溶接金属、溶接構造物、および溶接構造物の製造方法 - Google Patents
オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料、溶接金属、溶接構造物、および溶接構造物の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP7183808B2 JP7183808B2 JP2019006889A JP2019006889A JP7183808B2 JP 7183808 B2 JP7183808 B2 JP 7183808B2 JP 2019006889 A JP2019006889 A JP 2019006889A JP 2019006889 A JP2019006889 A JP 2019006889A JP 7183808 B2 JP7183808 B2 JP 7183808B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- less
- weld metal
- content
- welding
- heat
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Arc Welding In General (AREA)
Description
また、特許文献7に開示されているのはステンレス鋼材であり、溶接材料に用いる点には着目していない。なお、仮にこのステンレス鋼材を溶接材料に転用したとすれば、Taの含有によって高温でのオーステナイト組織の安定性が低下し、高温での使用開始初期において溶接金属の割れが顕著に発生することが考えられる。
さらに、特許文献8~10に開示されているのは、特許文献7と同様にステンレス鋼材であり、溶接材料に用いる点には着目していない。また、仮にこのステンレス鋼材を溶接材料に転用したとすれば、Taを多量に含有するため、早期にTaの析出物が析出し、高温での使用開始初期において溶接金属の割れが発生することが考えられる。
<1>
質量%で、
C:0.03%~0.10%、
Si:0.15%~0.40%、
Mn:0.8%~2.3%、
P:0%~0.02%、
S:0%~0.003%、
Cu:2.0%~4.0%、
Ni:17.0%~23.0%、
Cr:25.0%~29.0%、
Mo:0.5%~1.5%、
Nb:0.25%~0.75%、
Ta:0.001%~0.100%、
N:0.15%~0.40%、
Al:0%~0.03%、および
O:0%~0.02%を含み、残部がFeおよび不純物からなるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
<2>
合金成分としての前記Feの一部に代えて、下記群から選択される少なくとも1種の元素を含有する<1>に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
群 V:0.5%以下、
Ti:0.5%以下、
Co:2%以下、
B:0.02%以下、
Ca:0.02%以下、
Mg:0.02%以下、
REM:0.06%以下
<3>
<1>または<2>に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて、オーステナイト系耐熱鋼が溶接された溶接金属。
<4>
<3>に記載の溶接金属を有する溶接構造物。
<5>
<1>または<2>に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて、オーステナイト系耐熱鋼を溶接して溶接構造物を製造する溶接構造物の製造方法。
なお、本明細書中の説明において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
また、本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、特に断りの無い限り、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本実施形態に係る溶接材料は、質量%で、
C:0.03%~0.10%、
Si:0.15%~0.40%、
Mn:0.8%~2.3%、
P:0%~0.02%、
S:0%~0.003%、
Cu:2.0%~4.0%、
Ni:17.0%~23.0%、
Cr:25.0%~29.0%、
Mo:0.5%~1.5%、
Nb:0.25%~0.75%、
Ta:0.001%~0.100%、
N:0.15%~0.40%、
Al:0%~0.03%、および
O:0%~0.02%を含み、残部がFeおよび不純物からなる。
群 V:0.5%以下、
Ti:0.5%以下、
Co:2%以下、
B:0.02%以下、
Ca:0.02%以下、
Mg:0.02%以下、
REM:0.06%以下
(a)溶接金属に発生した割れは、溶接金属の柱状晶境界に発生し、破面は延性の乏しい性状を呈しており、Sの濃化が検出された。
(b)柱状晶内にはCrやNbを構成元素とする窒化物または炭窒化物が微細、かつ多量に析出していた。
このことから、溶接金属に発生した割れは、いわゆる応力緩和割れであると考えられる。つまり、高温での使用中にNbを含む窒化物または炭窒化物が微細に析出することに起因して、粒内の変形抵抗が大きくなり、溶接により生じた残留応力が高温で開放する過程において生じるクリープ変形が柱状晶境界に集中し、開口して割れが発生したと考えられた。そして、Sは溶接中、または高温での使用中に柱状晶境界に偏析し、その結合力を低下させるため、S含有量が多くなると割れが発生しやすくなると考えられた。
これは、CrやNbを構成元素とする窒化物または炭窒化物中にTaが含まれるようになることで、前記窒化物または炭窒化物の析出が遅延し、使用初期の溶接金属内の残留応力緩和過程における変形抵抗の増大が軽減され、柱状晶境界へのクリープ変形の集中が緩和されるためであると推定される。また、Sの柱状晶境界への偏析の抑制により、結合力の低下が軽減されるためであると推定される。
そして、Taを含有させることによる高温でのオーステナイト組織の安定性の低下は、本実施形態のCr含有量の範囲においては、Niを17.0%以上およびCuを2.0%以上含有させることで軽減できることも併せて明らかとした。
本実施形態は、上記の知見により想到に至ったものである。
なお、高温での使用開始初期における溶接金属の割れの発生が顕著となる特定の条件下、例えば、複雑で拘束の強い溶接継手形状を有する溶接金属とする場合などであっても、本実施形態によれば、高温での使用開始初期の割れが抑制される。
Cは、オーステナイト生成元素であり、高温での溶接金属のオーステナイト組織の安定性を高めるとともに、微細な炭化物を生成してクリープ強度の確保に寄与する。その効果を十分得るためには、0.03%以上含有する必要がある。しかしながら、0.10%を超えて含有する場合には、炭化物が粗大かつ多量に析出し、かえってクリープ強度や高温での耐食性の低下を招く。C含有量の好ましい下限は0.04%以上であり、好ましい上限は0.09%以下である。C含有量のさらに好ましい下限は0.05%以上であり、好ましい上限は0.08%以下である。
Siは、脱酸剤として含有されるが、過剰に含有する場合、溶接時の凝固割れ感受性を増大させる。そのため、Siの含有量は0.40%以下とする必要がある。しかしながら、Si含有量の過度の低減は、脱酸効果が十分に得られず、清浄性が低下し、溶接材料の製造コストの増大を招く。そのため、0.15%以上とする。Si含有量の好ましい下限は0.18%以上であり、好ましい上限は0.38%以下である。Si含有量のさらに好ましい下限は0.20%以上であり、好ましい上限は0.35%以下である。
Mnは、Siと同様、脱酸剤として含有されるが、溶接中に溶融金属の窒素の活量を下げることにより溶融池表面からの窒素の飛散を抑制し、間接的に引張強さおよびクリープ強度の確保に寄与する。その効果を得るためには、Mnは0.8%以上含有する必要がある。しかしながら、Mnを過剰に含有すると、脆化を招くため、Mnの含有量は2.3%以下とする必要がある。Mn含有量の好ましい下限は1.0%以上であり、好ましい上限は2.0%以下である。Mn含有量のさらに好ましい下限は1.2%以上であり、好ましい上限は1.8%以下である。
Pは、不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に最終凝固部に偏析し、その融点を低下させ、凝固割れ感受性を増大させる。そのため、Pの含有量は0.02%以下とする必要がある。Pの含有量は0.015%以下とするのが好ましく、0.010%以下とするのがさらに好ましい。P含有量の下限は特に設ける必要はなく、つまり含有量が0%であってもよいが、極度の低減は溶接材料の製造コストの増大を招くため、好ましい下限は0.0005%以上、さらに好ましい下限は0.001%以上である。
Sは、Pと同様に不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下させ、凝固割れ感受性を著しく増大させる。また、これに加え、高温での使用中に柱状晶境界に偏析し、その結合力を低下させ、応力緩和割れを招く。そのため、Sの含有量は0.003%以下とする必要がある。Sの含有量は0.0025%以下とするのが好ましく、0.002%以下とするのがさらに好ましい。P含有量の下限は特に設ける必要はなく、つまり含有量が0%であってもよいが、極度の低減は溶接材料の製造コストの増大を招くため、好ましい下限は0.0002%以上、さらに好ましい下限は0.0005%以上である。
Cuは、高温での溶接金属のオーステナイト組織の安定性を高め、クリープ強度を向上させるのに有効な元素である。その効果を得るためには、2.0%以上含有する必要がある。しかしながら、4.0%を超えて含有しても、その効果が飽和する。Cu含有量の好ましい下限は2.3%以上であり、好ましい上限は3.8%以下である。Cu含有量のさらに好ましい下限は2.5%以上であり、好ましい上限は3.5%以下である。
Niは、溶接金属の高温でのオーステナイト組織の安定性を確保し、クリープ強度の向上に有効な元素である。その効果を得るためには、17.0%以上の含有が必要である。しかしながら、Niは高価な元素であるとともに、含有量が過剰であると溶接中の溶融金属の窒素溶解度を低めて、逆にクリープ強度を損なう。そのため、上限を23.0%以下とする。Ni含有量の好ましい下限は18.0%以上であり、好ましい上限は22.0%以下である。Ni含有量のさらに好ましい下限は19.0%以上であり、好ましい上限は21.0%以下である。
Crは、溶接金属の高温での耐酸化性および耐食性の確保のために含有される。加えて、炭化物または炭窒化物として析出し、クリープ強度にも寄与する。この効果を得るためには、25.0%以上の含有が必要である。しかしながら、Crの含有量が過剰になって29.0%を超えると、溶接金属の高温でのオーステナイト組織の安定性を損ない、かえってクリープ強度の低下を招く。Cr含有量の好ましい下限は25.5%以上であり、好ましい上限は28.5%以下である。Cr含有量のさらに好ましい下限は26.0%以上であり、さらに好ましい上限は28.0%以下である。
Moは、マトリックスに固溶して溶接金属のクリープ強度の向上に寄与する元素である。この効果を得るためには、0.5%以上の含有が必要である。しかしながら、1.5%を超えて含有させてもその効果は飽和するとともに、溶接金属の高温でのオーステナイト組織の安定性を低下させ、却ってクリープ強度の低下を招く。Mo含有量の好ましい下限は0.6%以上であり、好ましい上限は1.4%以下である。Mo含有量のさらに好ましい下限は0.8%以上であり、さらに好ましい上限は1.2%以下である。
Nbは、高温での使用中に微細な炭化物、窒化物または炭窒化物として粒内に析出し、溶接金属のクリープ強度の向上に寄与する。その効果を得るためには、0.25%以上の含有が必要である。しかしながら、含有量が過剰になると、効果が飽和するとともに、高温での使用初期に多量に析出し、応力緩和割れを助長する。そのため、Nbの含有量は0.75%以下を上限とする。Nb含有量の好ましい下限は0.30%以上であり、好ましい上限は0.60%以下である。Nb含有量のさらに好ましい下限は0.40%以上であり、好ましい上限は0.50%以下である。
Taは、Nbと同様に高温での使用中に微細な窒化物または炭窒化物として粒内に析出し、溶接金属のクリープ強度の向上に寄与する。また、窒化物または炭窒化物中に固溶することにより、析出開始を遅延させ、応力緩和割れを軽減する効果を有する。前記効果を得るためには、0.001%以上の含有が必要である。しかしながら、含有量が過剰になると、早期にTa主体の炭化物が多量に析出し、却って応力緩和割れ感受性を高める。そのため、0.100%以下を上限とする。Ta含有量の好ましい下限は0.002%以上であり、好ましい上限は0.060%以下である。Ta含有量のさらに好ましい下限は0.005%以上であり、好ましい上限は0.040%以下である。
Nは、高温での溶接金属のオーステナイト組織の安定性を高めるとともに、マトリックスに固溶、または窒化物として粒内に微細に析出し、クリープ強度の向上に大きく寄与する。この効果を得るためには、0.15%以上含有する必要がある。しかしながら、0.40%を超えて含有する場合、高温での使用初期に多量の窒化物を析出し、応力緩和割れ感受性の増大を招くとともに、クリープ延性も低下する。N含有量の好ましい下限は0.18%以上であり、好ましい上限は0.38%以下である。N含有量のさらに好ましい下限は0.20%以上であり、好ましい上限は0.35%以下である。
Alは、脱酸剤として含有されるが、多量に含有すると清浄性を著しく害し、溶接材料の加工性および溶接金属の延性を低下させる。そのため、Alの含有量の上限は0.03%以下とする必要がある。Alの含有量は0.025%以下とするのが好ましく、0.02%以下とするのがさらに好ましい。Al含有量の下限は特に設ける必要はなく、つまり含有量が0%であってもよいが、極度の低減は溶接材料の製造コストの増大を招くため、好ましくは0.0005%以上、さらに好ましくは0.001%以上である。
Oは、不純物として含有するが、多量に含まれる場合には、溶接材料の加工性および溶接金属の延性を低下させる。そのため、Oの含有量は0.02%以下とする。Oの含有量は0.015%以下とするのが好ましく、0.01%以下とするのがさらに好ましい。O含有量の下限は特に設ける必要はなく、つまり含有量が0%であってもよいが、極度の低減は溶接材料の製造コストの増大を招くため、好ましくは0.0005%以上、さらに好ましくは0.001%以上である。
V:0.5%以下
Vは、炭素または窒素と結合して微細な炭化物、窒化物または炭窒化物を形成し、クリープ強度に寄与するため必要に応じて含有してもよい。しかしながら、過剰に含有すると多量に析出し、応力緩和割れ感受性の増大を招くため、0.5%以下とする必要がある。好ましくは0.45%以下、さらに好ましくは、0.4%以下である。尚、含有する場合の好ましい下限は0.01%以上、さらに好ましい下限は0.02%以上である。
Tiは、Vと同様に微細な炭化物、窒化物または炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度に寄与するため必要に応じて含有してもよい。しかしながら、過剰に含有すると多量に析出し、応力緩和割れ感受性の増大を招くため、0.5%以下とする必要がある。好ましくは0.45%以下、さらに好ましくは、0.4%以下である。尚、含有する場合の好ましい下限は0.01%以上、さらに好ましい下限は0.02%以上である。
Co:2%以下
NiやCuと同様、溶接金属の高温でのオーステナイト組織の安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与するため含有してもよい。しかしながら、極めて高価な元素であるため、過剰の含有は大幅なコスト増を招く。そのため、上限は2%以下とする。好ましい上限は1.5%以下、さらに好ましい上限は1%以下である。尚、含有する場合の好ましい下限は0.01%以上、さらに好ましい下限は0.02%以上である。
高温使用中に溶接金属の柱状晶境界に偏析し、粒界を強化するとともに粒界炭化物を微細分散させることによりクリープ強度を向上させるのに有効な元素である。そのため、含有してもよい。しかしながら、過剰に含有すると、溶接中の凝固割れ感受性を高めるため、上限は0.02%以下とする。好ましくは、0.018%以下、さらに好ましくは0.015%以下である。尚、含有する場合の好ましい下限は0.001%以上、さらに好ましい下限は0.002%以上である。
Ca:0.02%以下
溶接材料製造時の熱間加工性を改善する効果を有するため、必要に応じて含有してもよい。しかしながら、過剰の含有は酸素と結合し、清浄性を著しく低下させて、却って熱間加工性を劣化させるため0.02%以下とする。好ましくは、0.015%以下、さらに好ましくは0.01%以下である。尚、含有する場合の好ましい下限は0.0005%以上、さらに好ましい下限は0.001%以上である。
Caと同様、溶接材料製造時の熱間加工性を改善する効果を有するため、必要に応じて含有してもよい。しかしながら、過剰の含有は酸素と結合し、清浄性を著しく低下させて、却って熱間加工性を劣化させるため0.02%以下とする。好ましくは、0.015%以下、さらに好ましくは0.01%以下である。尚、含有する場合の好ましい下限は0.0005%以上、さらに好ましい下限は0.001%以上である。
CaやMgと同様、溶接材料製造時の熱間加工性を改善する効果を有するため、必要に応じて含有してもよい。しかしながら、過剰の含有は酸素と結合し、清浄性を著しく低下させて、却って熱間加工性を劣化させるため0.06%以下とする。好ましくは、0.05%以下、さらに好ましくは0.04%以下である。尚、含有する場合の好ましい下限は0.001%以上、さらに好ましい下限は0.002%以上である。
本実施形態の溶接金属は、オーステナイト系耐熱鋼の母材を溶接して作製され、かつ母材を溶接する際に、前述の本実施形態のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料(溶加材)を用いて溶接されることで作製される。
尚、オーステナイト系耐熱鋼の母材としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の組成の母材が好ましいものとして例示される。すなわち、質量%で、C:0.03%~0.12%、Si:0%~0.5%、Mn:0%~1.5%、P:0%~0.03%、S:0%~0.01%、Ni:18%~22%、Cr:23%~27%、Mo:0%~0.8%、Cu:0%~4%、Nb:0.3%~0.8%、N:0.1%~0.35%、B:0.0005%~0.01%、およびAl:0%~0.03%を含有し、残部がFeおよび不純物からなる母材であることが好ましい。但し、必ずしも母材は上記の組成に限定されるものではない。
本実施形態の溶接構造物は、前述の本実施形態の溶接金属を有する構造物である。例えば、溶接構造物は、溶接金属と金属からなる他の母材とからなる。他の母材は、鋼材であると好ましい。ステンレス鋼であると、さらに好ましく、オーステナイト系耐熱鋼であれば、さらに好ましい。なお、溶接構造物の具体的形状、溶接構造物を得るための溶接の具体的態様(溶接姿勢)は特に限定されない。本実施形態の溶接構造物は、前述の本実施形態のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて、オーステナイト系耐熱鋼を溶接して製造される。
上記の母材の長手方向に、角度30°、ルート厚さ1mmのV開先を加工した。2つの母材の開先同士を突合せ、JIS Z3334(1999)に規定の「YNiCrFe-3」をフィラーワイヤとして用い、両端から20mmずつをティグ溶接により積層溶接を行い、中央60mm長さに開先面が残る試験体を作製した。その後、厚さ25mm、幅200mm、長さ200mmのJIS G 3160(2008)に規定の「SM400B」上に、被覆アーク溶接棒としてJIS Z3224(1999)に規定の「DNiCrFe-3」を用いて、四周を拘束溶接した。そして、上述した符号A~Mのカットフィラーを用いて、ティグ溶接により、入熱を9~15kJ/cmとし、残った開先内に積層溶接し、それぞれの代符について2体ずつ溶接継手を作製した。
検鏡の結果、溶接金属に割れの認められなかった溶接継手を「合格」とした。次いで、溶接ままの溶接継手および熱処理した溶接継手共に合格であったものについて、クリープ破断試験を行った。
前述の母材の長手方向に、角度30°、ルート厚さ1mmのV開先を加工した。2つの母材の開先同士を突合せ、前記断面観察試験において割れのなかった代符のカットフィラーを用い、入熱9~15kJ/cmにてティグ溶接により溶接継手を作製した。得られた溶接継手から、溶接金属が平行部の中央となるように丸棒クリープ破断試験片を採取した。この試験片について、母材の目標破断時間が約1000時間となる650℃、245MPaの条件でクリープ試験(クリープ破断試験)を行い、母材も目標破断時間の90%を超えるものを「合格」とした。
表3の「断面観察」欄における「合格」は、3個の全ての試料で溶接金属に割れがない合格の溶接継手であることを示す。一方、「不合格」は、3個の試料のうち少なくとも1個の試料の溶接金属に割れが認められたことを示す。
一方、代符GおよびIの溶接継手は、溶接材料にTaが含有されなかったため、本発明の実施例のような厳しい拘束条件下において、溶接ままでは溶接金属に割れが発生しなかったものの、熱処理後に溶接金属に応力緩和割れと判断される割れが観察された。
また、代符HおよびJは、溶接材料にTaが本発明の範囲を超えて含有されたため、本発明の実施例のような厳しい拘束条件下において、溶接ままでは溶接金属に割れが発生しなかったものの、熱処理後に溶接金属に応力緩和割れと判断される割れが観察された。
さらに、代符Kは、溶接材料のSが本発明の範囲を超えて含有されたため、本発明の実施例のような厳しい拘束条件下において、溶接ままでは溶接金属に割れが発生しなかったものの、熱処理後に溶接金属に応力緩和割れと判断される割れが観察された。
代符LおよびMは、それぞれ溶接材料のCuおよびNi含有量が本発明の範囲を下回ったため、Taを含有させることによる高温でのオーステナイト組織の安定性の低下抑制効果が十分ではなく、クリープ破断時間が目標を下回った。
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.03%~0.10%、
Si:0.15%~0.40%、
Mn:0.8%~2.3%、
P:0%~0.02%、
S:0%~0.003%、
Cu:2.0%~4.0%、
Ni:17.0%~23.0%、
Cr:25.0%~29.0%、
Mo:0.5%~1.5%、
Nb:0.25%~0.75%、
Ta:0.001%~0.100%、
N:0.15%~0.40%、
Al:0%~0.03%、および
O:0%~0.02%を含み、残部がFeおよび不純物からなるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。 - 合金成分としての前記Feの一部に代えて、下記群から選択される少なくとも1種の元素を含有する請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
群 V:0.5%以下、
Ti:0.5%以下、
Co:2%以下、
B:0.02%以下、
Ca:0.02%以下、
Mg:0.02%以下、
REM:0.06%以下 - 請求項1または請求項2に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて、オーステナイト系耐熱鋼が溶接された溶接金属。
- 請求項3に記載の溶接金属を有する溶接構造物。
- 請求項1または請求項2に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて、オーステナイト系耐熱鋼を溶接して溶接構造物を製造する溶接構造物の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019006889A JP7183808B2 (ja) | 2019-01-18 | 2019-01-18 | オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料、溶接金属、溶接構造物、および溶接構造物の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019006889A JP7183808B2 (ja) | 2019-01-18 | 2019-01-18 | オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料、溶接金属、溶接構造物、および溶接構造物の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020116584A JP2020116584A (ja) | 2020-08-06 |
JP7183808B2 true JP7183808B2 (ja) | 2022-12-06 |
Family
ID=71891639
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019006889A Active JP7183808B2 (ja) | 2019-01-18 | 2019-01-18 | オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料、溶接金属、溶接構造物、および溶接構造物の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP7183808B2 (ja) |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008087807A1 (ja) | 2007-01-15 | 2008-07-24 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手およびオーステナイト系ステンレス鋼溶接材料 |
JP2009144203A (ja) | 2007-12-14 | 2009-07-02 | Sumitomo Metal Ind Ltd | オーステナイト系高合金溶接継手およびオーステナイト系高合金溶接材料 |
JP2015107500A (ja) | 2013-12-04 | 2015-06-11 | 新日鐵住金株式会社 | オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料ならびにそれを用いてなる溶接金属および溶接継手 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH08290290A (ja) * | 1995-04-20 | 1996-11-05 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | 高Cr鋼材用高靱性溶接材料 |
JP3009658B2 (ja) * | 1998-01-20 | 2000-02-14 | 三菱重工業株式会社 | 高Cr鋼材用溶接材料 |
JP3329261B2 (ja) * | 1998-03-26 | 2002-09-30 | 住友金属工業株式会社 | 高温高強度鋼用溶接材料および溶接継手 |
-
2019
- 2019-01-18 JP JP2019006889A patent/JP7183808B2/ja active Active
Patent Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008087807A1 (ja) | 2007-01-15 | 2008-07-24 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手およびオーステナイト系ステンレス鋼溶接材料 |
JP2009144203A (ja) | 2007-12-14 | 2009-07-02 | Sumitomo Metal Ind Ltd | オーステナイト系高合金溶接継手およびオーステナイト系高合金溶接材料 |
JP2015107500A (ja) | 2013-12-04 | 2015-06-11 | 新日鐵住金株式会社 | オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料ならびにそれを用いてなる溶接金属および溶接継手 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2020116584A (ja) | 2020-08-06 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4835771B1 (ja) | Ni基耐熱合金用溶接材料ならびにそれを用いてなる溶接金属および溶接継手 | |
JP5170297B1 (ja) | Ni基耐熱合金用溶接材料ならびにそれを用いてなる溶接金属および溶接継手 | |
JP6197885B2 (ja) | Ni基耐熱合金用溶接材料ならびにそれを用いてなる溶接金属および溶接継手 | |
KR102445683B1 (ko) | 오스테나이트계 스테인리스강 용접 금속 및 용접 구조물 | |
JP6384611B2 (ja) | オーステナイト系耐熱合金及び溶接構造物 | |
JP6384610B2 (ja) | オーステナイト系耐熱合金及び溶接構造物 | |
JP6852809B2 (ja) | オーステナイト系耐熱鋼溶接金属、溶接継手、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料、および溶接継手の製造方法 | |
JP4835770B1 (ja) | オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料ならびにそれを用いてなる溶接金属および溶接継手 | |
JP6965938B2 (ja) | オーステナイト系ステンレス鋼溶接金属および溶接構造物 | |
WO2019070002A1 (ja) | オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料、溶接金属および溶接構造物ならびに溶接金属および溶接構造物の製造方法 | |
WO2019069998A1 (ja) | オーステナイト系ステンレス鋼 | |
JP6795038B2 (ja) | オーステナイト系耐熱合金およびそれを用いた溶接継手 | |
JP6638552B2 (ja) | オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料 | |
JP7183808B2 (ja) | オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料、溶接金属、溶接構造物、および溶接構造物の製造方法 | |
JP4998014B2 (ja) | オーステナイト系ステンレス鋼用溶接材料並びにそれを用いてなる溶接金属及び溶接継手 | |
JP7368722B2 (ja) | オーステナイト系耐熱鋼溶接金属、溶接継手、およびオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料 | |
JP6107170B2 (ja) | オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料ならびにそれを用いて製造される溶接金属及び溶接継手 | |
JP2019130591A (ja) | 溶接継手 | |
JP7360032B2 (ja) | オーステナイト系耐熱鋼溶接継手 | |
JP7376767B2 (ja) | フェライト系耐熱鋼異材溶接継手およびその製造方法 | |
JP3900086B2 (ja) | 溶接材料及び溶接金属 | |
JP3938057B2 (ja) | 溶接材料及び溶接金属 | |
JP2017202492A (ja) | オーステナイト系耐熱鋼溶接金属およびそれを有する溶接継手 | |
JP2021025095A (ja) | オーステナイト系耐熱合金溶接継手 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20210903 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20220516 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20220531 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20220629 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20221025 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20221107 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 7183808 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |