JP3900086B2 - 溶接材料及び溶接金属 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接材料及び溶接金属に関し、より詳しくは、ボイラ、化学装置などの耐熱、耐圧配管部材用低合金耐熱鋼の溶接に使用される溶接材料及び溶接された部材の溶接金属に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボイラ、化学装置などの耐熱、耐圧配管に用いられる高温材料としては、数%のCrを含む「低合金耐熱鋼」、9〜12%のCrを含む「高Crフェライト系耐熱鋼」、18%Cr−8%Ni鋼に代表される「オ−ステナイト系ステンレス鋼」などがよく知られている。これらの鋼のうちでも、2.25%Cr−1%Mo鋼に代表される低合金耐熱鋼は安価であるため、使用環境に応じて多量に使用されている。
【0003】
低合金耐熱鋼は、一般に焼戻しベイナイト、焼戻しマルテンサイトなどのいわゆる「フェライト系組織」からなるが、高Crフェライト系耐熱鋼に比べて高温強度が低いし、オ−ステナイト組織からなる鋼に比べても高温強度が低い。このため、近年は、数%のCrを含有する低合金鋼をベ−スに合金元素量を調整することによって、大きな高温強度の確保が可能となる低合金耐熱鋼の開発が盛んに行われ、例えば、特許文献1〜3には、W、VやNbなどの強化元素を積極的に活用した高強度低合金耐熱鋼が開示されている。
【0004】
上記の新しい高強度低合金耐熱鋼をボイラ、化学装置など溶接構造物の素材として使用するためには溶接施工を行う必要があり、このため、例えば、特許文献4〜7に、W、VやNbを含む共金系の溶接材料が開示されている。
【0005】
低合金耐熱鋼が厚肉溶接構造部材の素材としてとして用いられる場合、溶接部の継手性能を確保するために、溶接後熱処理が施されるのが一般的である。この溶接後熱処理の目的は、残留応力の緩和や除去、靱性など溶接部の性能回復、及び水素割れの防止などである。
【0006】
しかし、非特許文献1に示されているように、低合金耐熱鋼の溶接部の継手には、溶接後熱処理の過程中に、溶接熱影響部にいわゆる「再熱割れ」が発生しやすく、特に、W、VやNbなどの合金元素を含有する高強度低合金耐熱鋼の場合には、再熱割れ感受性が極めて高いので、溶接熱影響部における「再熱割れ」だけではなく、溶接金属においても、再熱割れが発生することがある。
【0007】
前述の特許文献4に開示されている溶接材料は、低合金鋼ベースの耐熱鋼の溶接における溶接時の予熱及び溶接後熱処理が不要となるように本発明者らが開発したものであり、C、Ni、O(酸素)、S及びSiの含有量を適正範囲内に調整したうえで、W、V及びNbを添加することでその目的を達した溶接材料である。すなわち、溶接後熱処理時の再熱割れについて配慮した溶接材料ではなかった。
【0008】
特許文献5に開示されている溶接ワイヤは、溶接後熱処理を行っても十分な高温強度と靱性を有する溶接部が得られる技術ではあるものの、溶接後熱処理時の再熱割れについては全く記述がなく、したがって、再熱割れに対する十分な配慮がなされた技術とは言い難い。なお、この文献中の実施例は、板厚が16mmの母材を溶接するものでしかなく、したがって、板厚が16mmを超えるような厚肉部材の溶接における、溶接後熱処理過程中の再熱割れに対して配慮された技術でないことは明らかである。
【0009】
又、特許文献6及び7に開示されている溶接ワイヤは、いずれもワイヤ中の合金元素量を調整することにより、再熱割れを防止する技術ではあるものの、板厚が16mmを超えるような厚肉部材の溶接に使用する場合、これらの溶接ワイヤによる耐再熱割れ性の改善効果は、必ずしも十分ではなかった。
【0010】
このため、たとえ特許文献4〜7で提案された溶接材料を用いても、前述のように、特に、溶接構造物の肉厚が16mmを超えるような厚肉の場合には、溶接後熱処理を施すとその過程中に、再熱割れが生じる場合があったのである。
【0011】
【特許文献1】
特開平2−217438号公報
【特許文献2】
特開平3−87332号公報
【特許文献3】
特開平10−8194号公報
【特許文献4】
特許第2622516号公報
【特許文献5】
特開平10−272592号公報
【特許文献6】
特開2001−321986号公報
【特許文献7】
特開2002−137087号公報
【非特許文献1】
社団法人日本高圧力技術協会応力焼鈍(SR)委員会編:「溶接後熱処理基準とその解説」,(1994.9.26),p.10、22〜23、100、150、[日刊工業新聞社]
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、高強度低合金耐熱鋼の厚肉溶接構造物、なかでも肉厚が16mmを超える厚肉溶接構造物の溶接において、溶接後熱処理しても再熱割れを生じない十分な再熱割れに対する抵抗性(以下、再熱割れに対する抵抗性を耐再熱割れ性という)を有し、且つ、その溶接構造物の使用時に優れた高温強度及び靱性を有する溶接金属とそのような溶接金属を形成するための溶接材料とを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)〜(4)に示す溶接材料及び(5)〜(8)に示す溶接金属にある。
【0014】
(1)質量%で、C:0.005〜0.1%、Si:0.05〜0.8%、Mn:0.1〜2%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ni:0.25%を超えて2%まで、Cr:2〜3%、Mo:0.4%を超えて0.8%まで、V:0.05〜0.3%、Nb:0.01〜0.08%、N:0.015%以下、Al:0.03%以下及びO(酸素):0.05%以下、並びに下記▲1▼式及び▲2▼式を満足する量のWを含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接材料。
【0015】
0.7%≦Mo+0.5W≦1.2%・・・▲1▼、
0.4≦Mo/W≦1.8・・・▲2▼。
【0016】
ここで、▲1▼式及び▲2▼式における元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
【0017】
(2)上記(1)に記載の成分に加えて、更に、質量%で、Ti:0.002〜0.015%を含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接材料。
【0018】
(3)上記(1)又は(2)に記載の成分に加えて、更に、下記(a)と(b)に記載の少なくともいずれかの元素を含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接材料。
(a)質量%で、B:0.0005〜0.01%、(b)質量%で、CaもしくはMgをそれぞれ0.0005〜0.005%、又は、CaとMgを合計で0.0005〜0.005%。
【0019】
(4)上記(1)から(3)までのいずれかに記載の成分に加えて、更に、質量%で、Cu:0.01〜0.5%及びCo:0.01〜0.5%の1種以上を含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接材料。
【0020】
(5)質量%で、C:0.005〜0.1%、Si:0.05〜0.8%、Mn:0.1〜2%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ni:0.25%を超えて2%まで、Cr:2〜3%、Mo:0.4%を超えて0.8%まで、V:0.05〜0.3%、Nb:0.01〜0.08%、N:0.015%以下、Al:0.03%以下及びO(酸素):0.05%以下、並びに下記▲1▼式及び▲2▼式を満足する量のWを含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接金属。
【0021】
0.7%≦Mo+0.5W≦1.2%・・・▲1▼、
0.4≦Mo/W≦1.8・・・▲2▼。
【0022】
ここで、▲1▼式及び▲2▼式における元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
【0023】
(6)上記(5)に記載の成分に加えて、更に、質量%で、Ti:0.002〜0.015%を含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接金属。
【0024】
(7)上記(5)又は(6)に記載の成分に加えて、更に、下記(a)と(b)に記載の少なくともいずれかの元素を含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接金属。
【0025】
(a)質量%で、B:0.0005〜0.01%、(b)質量%で、CaもしくはMgをそれぞれ0.0005〜0.005%、又は、CaとMgを合計で0.0005〜0.005%。
【0026】
(8)上記(5)から(7)までのいずれかに記載の成分に加えて、更に、質量%で、Cu:0.01〜0.5%及びCo:0.01〜0.5%の1種以上を含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接金属。
【0027】
以下、上記(1)〜(4)の溶接材料に係る発明及び(5)〜(8)の溶接金属に係る発明をそれぞれ(1)〜(8)の発明という。
【0028】
なお、「溶接金属」とは、溶接中に母材の一部と溶接材料が溶融混合し、凝固した部分を指す。但し、本発明でいう「溶接金属」の化学組成は、「溶接金属」の肉厚中央部における値をいう。
【0029】
ここで、上記(1)〜(4)の発明に係る溶接材料を使用して溶接が施される部材(換言すれば、溶接構造物の母材)、又は、溶接構造物の母材に溶接が施されて上記(5)〜(8)の発明に係る溶接金属が形成される際のその母材は、高強度低合金耐熱鋼である。具体的には、W、V及びNb等を含む高強度低合金耐熱鋼であり、その形状は、板状、棒状や管状など溶接接合に供することができさえすればどのような形状でも構わない。
【0030】
本発明者らは、前記した目的を達成するために、W、V及びNb等を含有する高強度低合金耐熱鋼を溶接した後で溶接後熱処理を行い、溶接部に発生する再熱割れに及ぼす析出物や残留応力の影響について詳細に検討した。その結果、次に示す[1]〜[3]の事項が明らかになった。
【0031】
[1] 再熱割れは、凝固時の柱状晶境界に発生し、割れ破面には溶融痕は認められないものの、破面上にはNの顕著な濃化が生じている。
【0032】
[2] 溶接後熱処理後の母材粒界には粗大なCr炭化物が認められるのに対し、溶接金属では粒界及び粒界近傍の粒内にVやNbの微細な炭窒化物が認められ、Cr炭化物はほとんど認められない。
【0033】
[3] 母材がWを含む場合にはWを含まない場合に比べて、後熱処理によって溶接残留応力が緩和し難い。
【0034】
上記[1]〜[3]から、下記[4]及び[5]の知見が得られた。
【0035】
[4] 溶接金属の凝固時、柱状晶境界にNの偏析が生じるために、溶接後熱処理の早い時期に粒界及び粒界近傍では微細なVやNbの炭窒化物がCrの炭化物よりも先に析出し、この微細なVやNbの炭窒化物による粒界と粒内との大きな相対的強度差によって、再熱割れが生じる。
【0036】
[5] Wを含有する高強度低合金耐熱鋼を溶接する場合には、溶接残留応力が溶接後熱処理によって緩和され難く、特に、溶接構造物が肉厚16mmを超えるような厚肉の場合には、高い引張残留応力が長時間存在することとなるので、再熱割れに対する感受性が極めて高くなる。
【0037】
そこで、肉厚が16mmを超えるような厚肉の溶接構造物においても、溶接後熱処理時の耐再熱割れ性を確保するために更なる検討を行った結果、下記 [6]に示す知見が得られた。
【0038】
[6] Mo及びWの含有量範囲を最適化することに加え、V及びNbの含有量範囲を調整することにより、粒界及び粒界近傍でのVやNbの微細な炭窒化物の早期析出を抑制することが可能になって、粒界にCr炭化物を優先的に析出させることができ、更に、後熱処理によって溶接残留応力を早期に緩和することができる。
【0039】
前記(1)〜(8)の発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の溶接材料(前記(1)〜(4)の溶接材料)及び溶接金属(前記(5)〜(8)の溶接金属)に含まれる各成分元素の作用効果とその含有量の限定理由について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
【0041】
ここで、本発明の溶接材料を使用して溶接が施される溶接構造物の母材の化学組成、又は、溶接構造物の母材に溶接が施されて本発明の溶接金属が形成される際のその母材の化学組成は、溶接材料の化学組成と類似しているため、溶接金属の化学組成も溶接材料の化学組成とほとんど同じになる。したがって、以下においては、溶接材料と溶接金属とを区別せずに説明する。
【0042】
C:
Cは、オ−ステナイト形成元素として作用し、δ−フェライトの生成を抑制して溶接金属の靱性を確保するのに有効な元素である。Cには、粒界上にCr炭化物を生成させて耐再熱割れ性を高めるとともに、粒内に微細炭化物を生成して強度を高める作用もある。しかし、その含有量が0.005%未満では前記の効果が得られない。一方、Cの過剰の添加は、溶接金属の硬さ上昇を招いて溶接低温割れに対する感受性を大きくし、特にその含有量が0.1%を超えると溶接低温割れに対する感受性が著しく大きくなる。したがって、Cの含有量を0.005〜0.1%とした。なお、Cの含有量は0.01〜0.09%とすることが好ましく、0.02〜0.08%であれば一層好ましい。
【0043】
Si:
Siは、脱酸作用を有するほか、耐酸化性、耐高温腐食性を高める作用を有する。こうした効果を得るためには、Siの含有量は0.05%以上とする必要がある。しかし、Siの過剰の添加はNの凝固偏析を促進して耐再熱割れ性を低下させるとともに、高温での長時間使用時に靱性の低下を招く。特に、その含有量が0.8%を超えると、耐再熱割れ性の低下及び高温での長時間使用時の靱性低下が著しくなる。したがって、Siの含有量を0.05〜0.8%とした。Siの含有量は0.08〜0.7%とすることが好ましく、0.1〜0.6%であれば一層好ましい。
【0044】
Mn:
Mnは、脱酸作用を有するほか、Nの活量を下げてNの凝固偏析を抑制する作用も有する。こうした効果はMnの含有量が0.1%以上で得られる。しかし、Mnを過剰に含むと高温、長時間使用後の強度低下及び靱性低下を招き、特に、Mnの含有量が2%を超えると、高温、長時間使用後の強度低下及び靱性低下が著しくなる。したがって、Mnの含有量を0.1〜2%とした。Mnの含有量は、望ましくは、0.2〜1.8%、更に望ましくは、0.3〜1.6%とするのがよい。
【0045】
P:
Pは、鋼中の不可避不純物であり、多量に含まれると溶接時に凝固割れが生じるし、粒界に偏析して溶接後熱処理時の再熱割れ感受性を高めてしまう。特に、Pの含有量が0.02%を超えると、溶接時に凝固割れの発生が著しく多くなるし、溶接後熱処理時の再熱割れ感受性も極めて大きくなる。このため、Pの含有量を0.02%以下とした。なお、Pの含有量は0.018%以下とすることが好ましい。Pの含有量は低ければ低いほど好ましい。
【0046】
S:
Sは、Pと同様に鋼中の不可避不純物であり、多量に含まれると溶接時に凝固割れを生じさせるし、粒界に偏析して溶接後熱処理時の再熱割れ感受性を高めてしまう。特に、Sの含有量が0.01%を超えると、溶接時に凝固割れの発生が著しく多くなるし、溶接後熱処理時の再熱割れ感受性も極めて大きくなる。このため、Sの含有量を0.01%以下とした。Sの含有量は0.008%以下とすることが好ましい。Sの含有量は低ければ低いほど好ましい。
【0047】
Ni:
Niは、オ−ステナイト生成元素であり、耐再熱割れ性を高めるためにNの含有量を後述のように低くする場合、δ−フェライトの生成を抑えて組織の安定性を高め、靱性を確保するために0.25%を超える含有量を必要とする。しかし、Niは高温使用中の延性を低下させ、特に、その含有量が2%を超えると、高温使用中の延性低下が著しくなる。したがって、Niの含有量を0.25%を超えて2%までとした。Niの含有量は0.25%を超えて1.8%までとすることが望ましく、0.25%を超えて1.5%までとすれば更に望ましい。
【0048】
Cr:
Crは、低合金耐熱鋼に高温での耐酸化性、耐高温腐食性及び高温強度を確保させるのに有効な元素である。Crは、溶接金属の凝固時にNの凝固偏析を抑制するとともに、溶接後熱処理時に粒界へのCr炭化物の析出を促進することで、耐再熱割れ性を高めるのにも有効な元素である。これらの効果を得るためには、Crの含有量は2%以上必要である。しかし、Crの過剰の添加は、δ−フェライトの生成を助長するとともに、高温での使用中に炭化物の粗大化をきたすので、強度及び靱性の低下を招く。特に、Crの含有量が3%を超えると、強度及び靱性の低下が著しくなる。したがって、Crの含有量を2〜3%とした。Crの含有量は、望ましくは、2〜2.8%、更に望ましくは、2〜2.6%とするのがよい。
【0049】
Mo:
Moは、マトリックス(素地)を固溶強化するとともに炭化物として析出し、クリープ強度の確保に寄与する。更に、Pとの親和力が強く溶接後熱処理時に粒界に偏析するPの量を低減させるため、再熱割れ感受性の低減にも有効な元素である。これらの効果を得るためには、Moの含有量は多い方がよいので、0.4%を超えて含有させるものとする。しかし、Moの過剰の添加は長時間使用後の靱性の低下を招き、特に、Moの含有量が0.8%を超えると、長時間使用後の靱性の低下が著しくなる。したがって、Moの含有量を0.4%を超えて0.8%までとした。なお、溶接金属のクリープ強度を確保し、溶接後熱処理時の残留応力の緩和を促進させて耐再熱割れ性を高めて再熱割れを防止するために、Moは後述するWとともに複合添加して前記の▲1▼式及び▲2▼式を満足させる必要がある。
【0050】
V:
Vは、微細な炭化物及び炭窒化物を形成し、クリープ強度の確保に寄与する。この効果を得るためには、Vの含有量は0.05%以上とする必要がある。しかし、Vの過剰の添加は、溶接後熱処理時に粒界及び粒界近傍の粒内での微細なV炭窒化物の早期析出を招いて粒界と粒内との相対的強度差を大きくし、再熱割れの発生を助長することとなる。更に、Vの過剰の添加は、高温での使用中に、炭化物の急速な凝集、粗大化を招くため、却ってクリープ強度の低下をきたすことにもなる。特に、Vの含有量が0.3%を超えると、再熱割れの発生が著しくなるし、クリープ強度の低下も大きくなる。したがって、Vの含有量を0.05〜0.3%とした。Vの含有量は0.10〜0.28%とすることが好ましく、0.12〜0.26%であれば一層好ましい。
【0051】
Nb:
Nbは、Vと同様に微細な炭化物及び炭窒化物を形成し、クリープ強度の確保に寄与する。この効果を得るためには、Nbの含有量は0.01%以上とする必要がある。しかし、Nbの過剰の添加は、溶接後熱処理時に粒界及び粒界近傍の粒内での微細なNb炭窒化物の早期析出を招いて粒界と粒内との相対的強度差を大きくし、再熱割れの発生を助長することとなる。特に、Nbの含有量が0.08%を超えると、再熱割れの発生が著しくなる。したがって、Nbの含有量を0.01〜0.08%とした。Nbの含有量は、望ましくは、0.01〜0.07%、更に望ましくは、0.01〜0.06%とするのがよい。
【0052】
N:
Nは、溶接金属の凝固時に粒界に偏析し、溶接後熱処理時に粒界及び粒界近傍の粒内での微細なNbやVの炭窒化物の早期析出を招いて粒界と粒内との相対的強度差を大きくし、再熱割れの発生を助長することとなる。特に、Nの含有量が0.015%を超えると、V及びNbの含有量を上述の範囲に規制しても再熱割れの発生が著しくなる。したがって、Nの含有量を0.015%以下とした。Nの含有量は0.012%以下とすることが好ましく、0.01%以下であれば一層好ましい。Nの含有量は低ければ低いほど好ましい。
【0053】
Al:
Alは、脱酸剤として添加されるが、過剰に添加すると清浄度が低下して加工性が損なわれ、更に、高温強度の低下が生じる。特に、Alの含有量が0.05%を超えると、加工性の低下と高温強度の低下が著しくなる。そのため、Alの含有量を0.05%以下とした。望ましくは、0.025%以下であり、更に望ましくは、0.02%以下である。なお、SiやMnなど他の元素で十分脱酸できる場合にはAlは添加する必要はないが、Alによる脱酸効果を確実に得るには、0.001%以上の含有量とするのがよい。
【0054】
O(酸素):
Oは鋼中不純物元素であり、溶接中にも外部から混入して、主に酸化物として存在し、加工性、強度及び靱性の低下を招く。特に、Oの含有量が0.05%を超えると、加工性、強度及び靱性の低下が著しくなる。したがって、Oの含有量を0.05%以下とした。望ましくは、0.045%以下、更に望ましくは0.04%以下である。Oの含有量は低ければ低いほど好ましい。
【0055】
W:
Wは、マトリックスを固溶強化するとともに炭化物を生成してクリープ強度の確保に寄与する。前記の効果は、Moと複合添加した場合に大きく現れ、特に「Mo+0.5W」で0.7%以上含有させると、極めて顕著な効果が得られる。しかし、MoとWはいずれも高価な元素であり、多量の添加は材料コストの上昇を招くので、「Mo+0.5W」で1.2%までの含有とするのがよい。したがって、本発明においては「Mo+0.5W」の値を0.7〜1.2%、すなわち前記▲1▼式を満たすように規定した。なお、「Mo+0.5W」の値は0.8〜1.1%とすることが望ましい。
【0056】
Wは強度確保に有効な元素であるものの、既に述べたように、Wを含有する高強度低合金耐熱鋼の場合には溶接後熱処理を施しても残留応力が緩和され難く、このため再熱割れに対する感受性が大きい。クリープ強度、特に溶接金属のクリープ強度を確保し、溶接後熱処理時の残留応力の緩和を促進させて耐再熱割れ性を高めて再熱割れを防止するためには、上記の「Mo+0.5W」の値を所定の範囲に調整する、つまり▲1▼式を満足させることに加えて、▲2▼式を満足させる必要がある。
【0057】
すなわち、「Mo/W」の値が小さいと溶接後熱処理を施しても高い引張残留応力が長時間存在することとなって再熱割れに対する感受性が高くなる。したがって、耐再熱割れ性の確保という点からは「Mo/W」の値を大きくするほどよいので、下限を0.4とした。一方、「Mo/W」の値が1.8を超える場合には、「Mo+0.5W」に関する▲1▼式が満たされても、十分なクリープ強度、特に溶接金属のクリープ強度を確保できない。したがって、本発明においては、「Mo/W」の値を0.4〜1.8、すなわち前記▲2▼式を満たすように規定した。なお、「Mo/W」の値は0.5〜1.7とすることが望ましい。
【0058】
前記(1)の発明に係る溶接材料及び(5)の発明に係る溶接金属は、上記のCからWまでの元素と、残部がFe及び不純物からなるものである。
【0059】
前記(2)の発明に係る溶接材料及び(6)の発明に係る溶接金属は、溶接金属のクリープ強度を一層高めることを目的として、上記(1)の発明又は(5)の発明におけるFeの一部に代えて、次に述べる量のTiを含有させたものである。
【0060】
Ti:
Tiは、添加すれば、微細窒化物を形成し、溶接金属のクリープ強度の確保に寄与する。この効果を得るには、Tiは0.002%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.015%を超えると靱性の極端な低下を招く。したがって、Tiを添加する場合には、その含有量を0.002〜0.015%とするのがよい。添加する場合のより望ましいTiの含有量は0.005〜0.012%である。
【0061】
前記(3)の発明に係る溶接材料及び(7)の発明に係る溶接金属は、耐再熱割れ性を一層高めることを目的として、上記(1)もしくは(2)の発明、又は、(5)もしくは(6)の発明におけるFeの一部に代えて、(a)0.0005〜0.01%のB、並びに(b)それぞれ0.0005〜0.005%のCaもしくはMg、又は、合計で0.0005〜0.005%のCaとMg、から選択される少なくともいずれかの元素を含有させたものである。
【0062】
上記のB並びに、Ca及びMgのいずれの元素も耐再熱割れ性を高める作用を有するので、これらの元素は、以下に述べる(a)と(b)の範囲内で単独で含有させてもよいし、(a)と(b)を複合してして含有させてもよい。
【0063】
(a)B:
Bは、添加すれば、フリ−Bとして粒界に偏析するため、NやP、Sの粒界への偏析が抑制されて粒界固着力が増大し、耐再熱割れ性が高まる。この効果を得るには、Bは0.0005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.01%を超えると高温強度の低下を招く。したがって、Bを添加する場合には、その含有量を0.0005〜0.01%とするのがよい。 添加する場合のより望ましいBの含有量は0.0008〜0.008%であり、更に望ましいBの含有量は0.001〜0.006%である。
【0064】
(b)Ca、Mg:
Ca及びMgはSとの親和力が大きいため、添加すれば、Sの粒界偏析を抑制して、耐再熱割れ性を高める。この効果を得るには、CaとMgはそれぞれを単独で添加する場合にはいずれも0.0005%以上含有させるのがよく、CaとMgを複合添加する場合には合計で0.0005%以上含有させるのがよい。しかし、CaとMgをそれぞれを単独で添加する場合には含有量が0.005%を超えると、又、CaとMgを複合添加する場合には合計の含有量が0.005%を超えると、鋼の清浄度が低下する。したがって、Ca及びMgのうちの1種又は2種を添加する場合には、CaもしくはMgをそれぞれ0.0005〜0.005%、又は、CaとMgを合計で0.0005〜0.005%含有させるのがよい。Ca及びMgのうちの1種又は2種を添加する場合、CaもしくはMgをそれぞれ0.001〜0.004%、又は、CaとMgを合計で0.001〜0.004%の含有させるのが一層よい。
【0065】
前記(4)の発明に係る溶接材料及び(8)の発明に係る溶接金属は、δ−フェライトの生成を抑えて組織の安定性を一層高めることを目的として、上記(1)から(3)までの発明のいずれかにおけるFeの一部に代えて、又は、(5)から(7)までの発明のいずれかにおけるFeの一部に代えて、0.01〜0.5%のCu及び0.01〜0.5%のCoのうちの1種又は2種を含有させたものである。
【0066】
上記のCu及びCoはいずれもδ−フェライトの生成を抑えて組織の安定性を高める作用を有するので、CuとCoは、以下に述べる範囲内でそれぞれを単独で含有させてもよいし、複合して含有させてもよい。
【0067】
Cu:
Cuは、添加すれば、δ−フェライト相の生成を抑え、組織の安定性を高める作用を有する。この効果を得るには、Cuは0.01%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.5%を超えると、高温、長時間使用中の延性低下を招く。したがって、Cuを添加する場合には、その含有量を0.01〜0.5%とするのがよい。添加する場合のより望ましいCuの含有量は0.03〜0.4%である。
【0068】
Co:
Coは、添加すれば、δ−フェライト相の生成を抑え、組織の安定性を高める作用を有する。この効果を得るには、Coは0.01%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.5%を超えると、靱性の著しい低下を招く。したがって、Coを添加する場合には、その含有量を0.01〜0.5%とするのがよい。添加する場合のより望ましいCoの含有量は0.02〜0.45%であり、更に一層望ましいCoの含有量は0.03〜0.4%である。
【0069】
以上述べたように、本発明に係る溶接材料及び溶接金属は、高強度低合金耐熱鋼の厚肉溶接構造物、なかでも肉厚が16mmを超える厚肉溶接構造物の溶接において、後熱処理しても再熱割れを生じない十分な耐再熱割れ性を確保した点に特徴を有するものである。
【0070】
したがって、本発明に係る溶接材料は高強度低合金耐熱鋼の厚肉溶接構造物、なかでも肉厚が16mmを超える厚肉溶接構造物の溶接材料として好適であり、又、本発明に係る溶接金属は、厚肉の高強度低合金耐熱鋼、なかでも肉厚が16mmを超える厚肉の高強度低合金耐熱鋼を溶接して形成された溶接構造物の溶接金属として、従来の溶接金属にはみられない優れた特性(つまり、良好なクリープ強度や靱性だけではなく耐再熱割れ性にも優れるという特性)を有している。
【0071】
前記(1)〜(4)の発明に係る溶接材料は、厚肉の高強度低合金耐熱鋼、なかでも肉厚が16mmを超える厚肉の高強度低合金耐熱鋼の溶接に使用される通常の溶接方法に用いることができる。例えば、前記(1)〜(4)の発明に係る溶接材料である「溶接ワイヤ」を使用したガスシールドアーク溶接に、又は、前記溶接材料である「溶接ワイヤ」を芯線として、炭酸塩、蛍石、SiO2 及びTiO2 などからなる被覆剤を塗布した溶接棒を用いる被覆アーク溶接に、又は、前記溶接材料である「溶接ワイヤ」とSiO2 、Al23、CaO及びMgOなどからなるフラックスを組み合わせることにより行うサブマージ溶接などに適用できる。
【0072】
前記(5)〜(8)の発明に係る溶接金属は、溶接方法によらず、その溶接金属に含まれる各成分元素が前記(5)〜(8)に記載される規定を満たすものであればよい。
【0073】
上述の成分規定を満たす前記(5)〜(8)の発明に係る溶接金属は、厚肉の高強度低合金耐熱鋼、なかでも肉厚が16mmを超える厚肉の高強度低合金耐熱鋼を通常の方法で溶接して溶接後熱処理を施す場合にも、溶接金属における再熱割れの発生を完全に抑制することができる。そして、この溶接金属は、既に述べた成分規定を満たす前記(1)〜(4)の発明に係る溶接材料を使用すれば容易に得られる。
【0074】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
【0075】
【実施例】
表1に示す化学組成を有する高強度低合金耐熱鋼板を母材とし、表2、3に示す化学組成を有する溶接材料を使用して種々の方法で溶接を行い、溶接後熱処理を行った後に溶接金属部を含む各種の試験片を切り出して、それぞれの試験片を用いて性能調査を実施した。
【0076】
【表1】
Figure 0003900086
【0077】
【表2】
Figure 0003900086
【0078】
【表3】
Figure 0003900086
【0079】
母材は、温度が550℃、負荷応力が206MPaの試験条件下でのクリープ破断時間が500時間の板厚40mmの高強度低合金耐熱鋼板であり、前記表1に示す化学組成を有するインゴットに、通常の方法で熱間での鍛造及び圧延、並びに熱処理を行い、厚さ40mmの鋼板に仕上げたものである。
【0080】
使用した溶接材料としての溶接ワイヤは28種類で、前記表2、3に示す化学組成を有するインゴットに通常の方法で熱間での鍛造と圧延、熱処理及び冷間での線引加工を行って、外径1.2mm又は4.0mmに仕上げた線材である。
【0081】
性能調査の実施に際し、先ず、図1に示したU型の開先加工を施した母材1の四周を、図2に示すように拘束板2に拘束溶接して拘束溶接試験体Aを作製した。図2において、符号3は拘束溶接部を示している。
【0082】
次いで、前記の開先に対してTIG溶接又はサブマージ溶接による多層溶接を行った。
【0083】
すなわち、250℃で予熱した後、外径1.2mmの溶接ワイヤを用いたTIG溶接により、平均入熱を25kJ/cmとして多層溶接した。又、250℃で予熱した後、外径4.0mmの溶接ワイヤと、SiO2 が30%、CaOが15%、MgOが15%及びAl23が40%からなるフラックスとを用いて、サブマージ溶接により、平均入熱を50kJ/cmとして多層溶接した。なお、図2における符号4は、多層溶接における試験ビードを示すものである。
【0084】
上記の各条件で溶接した溶接部継手にはいずれも、715℃で5時間の溶接後熱処理を施した。
【0085】
このようにして得た溶接継手の溶接金属肉厚中央部から機械加工により化学分析用試料を採取し、溶接金属の化学成分分析を行った。又、各溶接部の横断面を5断面現出して光学顕微鏡により200倍の倍率で溶接金属内の再熱割れの有無を検鏡し、溶接金属における耐再熱割れ性の評価を行った。
【0086】
表4〜7に、前記のTIG溶接又はサブマージ溶接による多層溶接で得られた溶接金属の化学分析結果を、表8に、耐再熱割れ性の評価結果を示す。なお、表4〜7には、溶接ワイヤとその寸法を併記した。表8の「耐再熱割れ性」欄における符号「○」は調査した5断面の全てに再熱割れが認められなかったことを、符号「×」は調査した5断面のうちの少なくとも1断面に再熱割れが認められたことを示す。なお、いずれの試験番号の継手においても、溶接熱影響部に再熱割れは発生していなかった。
【0087】
【表4】
Figure 0003900086
【0088】
【表5】
Figure 0003900086
【0089】
【表6】
Figure 0003900086
【0090】
【表7】
Figure 0003900086
【0091】
【表8】
Figure 0003900086
【0092】
次いで、表8に示す耐再熱割れ性の評価が「○」であった溶接部について、そのクリープ特性について評価した。試験は、溶接継手の肉厚中央部から溶接金属が試験片の中央部となるように図3に示すクリープ試験片を採取して、温度が550℃で負荷応力が206MPaの試験条件下でのクリープ破断時間を調査した。図3における符号5は溶接金属を指す。なお、溶接部のクリープ破断時間は、母材の平均クリープ破断時間である500時間の70%以上を目標とし、その場合に溶接部のクリープ特性が良好と判断した。
【0093】
又、溶接金属にノッチを持つ幅10mmのVノッチ衝撃試験片(つまり、ノッチ部全体が溶接金属にある幅10mmのVノッチ衝撃試験片)を採取し、0℃でシャルピー衝撃試験を行って吸収エネルギーを求め、靱性を評価した。吸収エネルギーは実用上十分な40J以上を目標とし、その場合に溶接部の靱性が良好と判断した。
【0094】
表8に、クリープ破断時間及び0℃での吸収エネルギーを併せて示す。
【0095】
表2〜8から、次のことが明らかである。
【0096】
すなわち、本発明例の溶接材料である溶接ワイヤを使用し、更に、溶接金属の化学組成が本発明で規定する範囲内にある試験番号1〜17の場合、溶接後熱処理後に再熱割れが認められず優れた耐再熱割れ性を有しており、溶接金属のクリープ特性及び靱性はいずれも良好である。
【0097】
これに対して、化学組成として「Mo/W」の値が1.8を上回り、本発明で規定する範囲から外れた比較例の溶接材料である溶接ワイヤを使用した試験番号18、19の場合、溶接金属における「Mo/W」の値も1.8を上回り、溶接部のクリープ破断時間は、母材のクリープ破断時間の70%に達していない。
【0098】
化学組成としてNiの含有量が本発明で規定する範囲から低めに外れた比較例の溶接材料である溶接ワイヤを使用した試験番号20、21の場合、溶接金属におけるNiの含有量も本発明で規定する範囲から低めに外れたため、δ−フェライトが生成し、0℃での吸収エネルギーは40Jを下回り、溶接金属の靱性は低いものである。
【0099】
化学組成としてVの含有量が本発明で規定する範囲から高めに外れた比較例の溶接材料である溶接ワイヤを使用した試験番号22、23の場合、溶接金属におけるVの含有量も本発明で規定する範囲から高めに外れたため、多量のV炭窒化物が生成し、溶接金属に再熱割れが発生した。
【0100】
化学組成としてNの含有量が本発明で規定する範囲から高めに外れた比較例の溶接材料である溶接ワイヤを使用した試験番号24の場合、溶接金属におけるNの含有量も本発明で規定する範囲から高めに外れたため、Nの凝固偏析が生じ、粒界及び粒界近傍の粒内に微細なNbやVの炭窒化物が多量に生成したので、溶接金属に再熱割れが発生した。
【0101】
化学組成における「Mo+0.5W」の値が本発明で規定する範囲から低めに外れるとともに、「Mo/W」の値が本発明で規定する範囲から高めに外れた比較例の溶接材料である溶接ワイヤを使用した試験番号25、26の場合、溶接金属における「Mo+0.5W」の値及び「Mo/W」の値もそれぞれ本発明で規定する範囲から低めと高めに外れたため、溶接部のクリープ破断時間は、母材のクリープ破断時間の70%に達していない。
【0102】
化学組成における「Mo+0.5W」の値が本発明で規定する範囲から高めにに外れた比較例の溶接材料である溶接ワイヤを使用した試験番号27、28の場合、溶接金属における「Mo+0.5W」の値も本発明で規定する範囲から高めに外れたため、材料コストが高いにも拘わらず、0℃での吸収エネルギーは40Jを下回り、溶接金属の靱性は低いものである。
【0103】
【発明の効果】
本発明の溶接金属は肉厚が16mmを超える厚肉であっても耐再熱割れ性、クリープ特性及び靱性に優れており、本発明の溶接金属を有する溶接継手は十分な継手性能を有する。この溶接金属は、本発明の溶接材料を使用して溶接すれば容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶接母材の開先形状を示す図である。
【図2】拘束溶接試験体を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】実施例で採取したクリープ試験片の形状を示す図である。
【符号の説明】
A:拘束溶接試験体、
1:母材、
2:拘束板、
3:拘束溶接部、
4:多層溶接における溶接ビード、
5:溶接金属。

Claims (8)

  1. 質量%で、C:0.005〜0.1%、Si:0.05〜0.8%、Mn:0.1〜2%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ni:0.25%を超えて2%まで、Cr:2〜3%、Mo:0.4%を超えて0.8%まで、V:0.05〜0.3%、Nb:0.01〜0.08%、N:0.015%以下、Al:0.03%以下及びO(酸素):0.05%以下、並びに下記▲1▼式及び▲2▼式を満足する量のWを含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接材料。
    0.7%≦Mo+0.5W≦1.2%・・・▲1▼
    0.4≦Mo/W≦1.8・・・▲2▼
    ここで、▲1▼式及び▲2▼式における元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
  2. 請求項1に記載の成分に加えて、更に、質量%で、Ti:0.002〜0.015%を含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接材料。
  3. 請求項1又は2に記載の成分に加えて、更に、下記(a)と(b)に記載の少なくともいずれかの元素を含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接材料。
    (a)質量%で、B:0.0005〜0.01%、
    (b)質量%で、CaもしくはMgをそれぞれ0.0005〜0.005%、又は、CaとMgを合計で0.0005〜0.005%
  4. 請求項1から3までのいずれかに記載の成分に加えて、更に、質量%で、Cu:0.01〜0.5%及びCo:0.01〜0.5%の1種以上を含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接材料。
  5. 質量%で、C:0.005〜0.1%、Si:0.05〜0.8%、Mn:0.1〜2%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ni:0.25%を超えて2%まで、Cr:2〜3%、Mo:0.4%を超えて0.8%まで、V:0.05〜0.3%、Nb:0.01〜0.08%、N:0.015%以下、Al:0.03%以下及びO(酸素):0.05%以下、並びに下記▲1▼式及び▲2▼式を満足する量のWを含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接金属。
    0.7%≦Mo+0.5W≦1.2%・・・▲1▼
    0.4≦Mo/W≦1.8・・・▲2▼
    ここで、▲1▼式及び▲2▼式における元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
  6. 請求項5に記載の成分に加えて、更に、質量%で、Ti:0.002〜0.015%を含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接金属。
  7. 請求項5又は6に記載の成分に加えて、更に、下記(a)と(b)に記載の少なくともいずれかの元素を含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接金属。
    (a)質量%で、B:0.0005〜0.01%、
    (b)質量%で、CaもしくはMgをそれぞれ0.0005〜0.005%、又は、CaとMgを合計で0.0005〜0.005%
  8. 請求項5から7までのいずれかに記載の成分に加えて、更に、質量%で、Cu:0.01〜0.5%及びCo:0.01〜0.5%の1種以上を含み、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする溶接金属。
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