JP3322097B2 - 溶接施工性に優れた高強度、高耐食フェライト鋼用溶接材料 - Google Patents

溶接施工性に優れた高強度、高耐食フェライト鋼用溶接材料

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JP3322097B2
JP3322097B2 JP27852695A JP27852695A JP3322097B2 JP 3322097 B2 JP3322097 B2 JP 3322097B2 JP 27852695 A JP27852695 A JP 27852695A JP 27852695 A JP27852695 A JP 27852695A JP 3322097 B2 JP3322097 B2 JP 3322097B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温で使用する高
強度、高耐食フェライト鋼の溶接に際して用いるのに好
適な溶接材料に関する。
【0002】
【従来の技術】ボイラ、化学装置などの耐熱、耐圧配管
に用いられる高温用材料としては、2・1/4Cr−1
Mo鋼、9Cr−1Mo鋼などのフェライト鋼、18C
r−8Ni鋼に代表されるオーステナイト系ステンレス
鋼がよく知られている。なかでもフェライト鋼はオース
テナイト系ステンレス鋼に比べて安価であるばかりでな
く、耐応力腐食割れ性に優れ、しかも熱膨張係数が小さ
いため温度変化に対して歪みが小さいという高温用材料
としての利点を有する。
【0003】しかし、フェライト、ベイナイト、マルテ
ンサイト等のいわゆるフェライト系の組織からなる鋼
は、オーステナイト組織からなる鋼に比べ、高温強度が
低いことが欠点である。
【0004】近年、8〜13%のCrを含有するフェラ
イト鋼をベースにMo、W、V、Nb、Alなどの含有
量を調整して、優れた高温強度を付与した新しいステン
レス鋼が数多く発明されてきた(例えば、特開昭62−
297435、同63−8256、特開平2−2323
45、同3−97832の各号公報参照)。しかし、最
近では高温強度の更なる向上を図るため、W、Coを多
量に添加含有させた鋼が提案されてきている(例えば、
特開平5−263196、同5−311344、同5−
311345、同6−29394の各号公報参照)。
【0005】また、これらのW、Coを添加含有させた
新しいフェライト鋼を溶接構造物として使用する場合に
必要な溶接材料についても、特開平5−177383、
同5−177384、同5−212582、同6−14
2981、同7−80680の各号公報に開示されてい
るような共金系溶接材料が提案されている。また、これ
ら共金系溶接材料以外にも、市販のオーステナイト系ス
テンレス鋼およびNi基合金用の溶接材料が用いられる
こともある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の既存の溶接材料
を用いて、高強度、高耐食フェライト鋼(例えば、特開
平6−293940号公報に示される合金)を溶接する
場合には、以下のような問題が残っている。
【0007】特開平5−177383、同5−1773
84、同5−212582、同6−142981、同7
−80680の各号公報に開示されている溶接材料(ワ
イヤ)を用いた場合、母材と同等の高温強度(クリープ
強度、引張強度)が得られるものの、クリープ強度の
向上を目的として、Moを0.3〜1.6%添加してい
るため、靱性の低下を招き、溶接部の十分な衝撃特性が
得られない。
【0008】十分な溶接施工性を有していない。すな
わち、溶接欠陥が生じにくい、ビード幅が均一な溶接ビ
ードが得られず、広範な溶接条件で十分な裏ビードが得
られない。
【0009】また、市販のオーステナイト系ステンレス
鋼およびNi基合金用の溶接材料を用いると、溶接高
温割れが発生しやすい。
【0010】高温使用中に母材中のCが溶接金属(オ
ーステナイト系ステンレス鋼や高Ni基合金)側に移行
し、脱炭層が生じて割れやクリープ強度の低下を招く。
【0011】本発明の課題は、高強度、高耐食フェライ
ト鋼の溶接に際し、溶接部に母材に匹敵する高温強度と
耐高温腐食性を付与し、しかも優れた溶接施工性を有す
る溶接材料を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)および(2)の高強度、高耐食フェライト鋼用材
料にある。
【0013】(1)質量%で、C:0.03〜0.15
%、Si:0.1〜0.8%、Cr:8〜13%、N
i:0.01〜1.30%、Nb:0.01〜0.20
%、V:0.1〜0.5%、W:1.5〜4.0%、C
o:0.5〜7.0%、N:0.003〜0.080
%、Al:0.01%以下、S:0.0005〜0.0
05%、それぞれ0.002〜0.15%のTa、Hf
およびNdの少なくとも1種、Mo:0〜0.3%
:0〜0.020%を含有し、残部はFeおよび不可
避不純物からなり、不純物中のPが0.025%以下、
かつMnとSとの含有量の関係が下記式、AlとO
(酸素)との含有量の関係が下記式をそれぞれ満たす
ことを特徴とする溶接施工性に優れた高強度、高耐食フ
ェライト鋼用溶接材料。
【0014】 (0.0925−12.5〔%S〕)%≦Mn≦2.0%・・・ (Al+O)≦0.02%・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:
0.1〜0.8%、Cr:8〜13%、Ni:0.01
〜1.30%、Nb:0.01〜0.20%、V:0.
1〜0.5%、W:1.5〜4.0%、Co:0.5〜
7.0%、N:0.003〜0.080%、Al:0.
01%以下、S:0.0005〜0.005%、それぞ
れ0.002〜0.15%のTa、HfおよびNdの少
なくとも1種、Mo:0〜0.3%、B:0〜0.02
0%、さらにCaおよびMgのいずれか一方または両方
を合計で:0.0005〜0.002%を含有し、残部
はFeおよび不可避不純物からなり、不純物中のPが
0.025%以下、かつMnとSとの含有量の関係が下
記式、AlとO(酸素)との含有量の関係が下記式
をそれぞれ満たすことを特徴とする溶接施工性に優れた
高強度、高耐食フェライ ト鋼用溶接材料。
【0015】 (0.0925−12.5〔%S〕)%≦Mn≦2.0%・・・ (Al+O)≦0.02%・・・・・・・・・・・・・・・・・ 上記の溶接材料において、「0%」は無添加を意味す
る。さらに、望ましい条件は次の (1)〜(4) のとおりで
ある。 (1)Al含有量の望ましい上限は0.009%、さらに
望ましい上限は0.008%である。 (2)Moを含有させる場合の望ましい範囲は0.001
0〜0.30%、さらに望ましい範囲は0.0015〜
0.29%、最も望ましい範囲は0.0020〜0.2
8%である。(3) Bを含有させる場合の望ましい範囲は0.001〜
0.020%、さらに望ましい範囲は0.0015〜
0.018%、最も望ましい範囲は0.002〜0.0
15%である。(4) CaおよびMgのいずれか一方または両方を含有さ
せる場合の望ましい範囲は0.0005〜0.0020
%、さらに望ましい範囲は0.0006〜0.0018
%、最も望ましい範囲は0.0008〜0.0015%
である。
【0016】本発明者らは、前記の課題を達成するため
に種々の実験研究を行い、以下の(イ)〜(ハ)を知見
し、本発明に至った。 (イ)Ta、HfおよびNdのうち、いずれか1種を単
独添加もしくは2種以上を複合添加すると、従来から析
出強化元素として利用されているNb、Vの炭化物より
も高温でより安定な炭窒化物を形成し、従来高温強度を
確保するためには必須成分と考えられていたMoを添加
含有させなくても、大幅に高温強度を向上させることが
でき、そのための適正なTa、HfおよびNdの含有量
範囲が存在すること。 (ロ)鋼中のSは裏波形成能(裏波溶接のし易さ)を向
上させるが、過剰の添加は溶融池の不安定を招き、溶接
ビードの均一性(ビード幅の変動がない均一な溶接ビー
ドの得られ易さ)を劣化させる。そのため、S含有量が
過剰になると裏波形成能と溶接ビードの均一性を両立さ
せることは不可能である。
【0017】SとMnとの含有量の関係について検討し
た結果、Mn含有量をS含有量によって適正に調整する
ことにより、過剰にSを添加しなくてもアーク電流の集
中の度合いを高め、溶け込み深さを増大させることがで
きること。その結果、溶接ビード幅の均一性を劣化させ
ることなく、容易に裏波溶接を施すことが可能となるこ
と。 (ハ)また、高温強度(クリープ強度)のさらなる向上
にはMo添加も有効であるが、多量の添加は高温での使
用中に脆弱な金属間化合物の成長多量析出を促進させ、
靱性の低下だけでなく、かえってクリープ強度の低下を
招くこと。すなわち、Moを添加含有させる場合、良好
なクリープ強度と靱性とを両立維持させるためには適正
なMo含有量範囲が存在すること。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の溶接材料中の各成分を前
記のように限定した理由について、作用効果とともに説
明する。%は質量%である。
【0019】C:0.03〜0.15% Cは炭化物を形成し、高温強度の確保に寄与する。さら
に、オーステナイト形成元素としてδフェライトの生成
抑制にも寄与する。この効果を得るには、最低でも0.
03%のC含有量が必要である。一方、C含有量が0.
15%を超えると溶接金属においてCr、Nb、Vと低
融点の共晶を形成し、溶接高温割れを招く。
【0020】よって、C含有量の範囲は0.03〜0.
15%とした。望ましい範囲は0.035〜0.14
%、さらに望ましい範囲は0.040〜0.13%であ
る。
【0021】Si:0.1〜0.8% Siは耐酸化性、耐高温腐食性の向上に有効である。こ
の効果を得るには、0.1%以上のSi含有量が必要で
ある。一方、Si含有量が0.8%超えると靱性の低下
を招く。
【0022】よって、Si含有量の範囲は0.1〜0.
8%とした。望ましい範囲は0.13〜0.70%、さ
らに望ましい範囲は0.15〜0.60%である。
【0023】Cr:8〜13% Crはステンレス鋼を構成する主要な元素であり、高温
での耐酸化性、耐高温腐食性の確保のために必須の元素
である。この効果を得るには、8%以上のCr含有量が
必要である。一方、Cr含有量が13%を超えると靱性
の低下を招く。
【0024】よって、Cr含有量の範囲は8〜13%と
した。望ましい範囲は8.2〜12.8%、さらに望ま
しい範囲は8.5〜12.5%である。
【0025】Ni:0.01〜1.3% Niはδフェライト相の生成を抑え、マルテンサイト単
相組織にして靱性を確保する観点から必要な元素であ
る。この効果を得るには、0.01%以上のNi含有量
が必要である。一方、Ni含有量が1.3%を超える
と、オーステナイト変態温度(Ac点)を低下させ、
その結果、溶接後熱処理時にオーステナイト変態を生じ
させ、クリープ強度の低下を招く。
【0026】よって、Ni含有量の範囲は0.01〜
1.3%とした。望ましい範囲は0.02〜1.2
%、さらに望ましい範囲は0.03〜1.1%であ
る。
【0027】Nb:0.01〜0.20% NbはNb(C、N)を形成し、クリープ強度の向上に
寄与する元素である。この効果を得るには0.01%以
上のNb含有量が必要である。一方、Nb含有量が0.
20%を超えると、靱性の低下を招くとともに溶接高温
割れを招く。
【0028】よって、Nb含有量の範囲は0.01〜
0.20%とした。望ましい範囲は0.02〜0.19
%、さらに望ましい範囲は0.03〜0.18%であ
る。
【0029】V:0.1〜0.5% VはV(C、N)を形成し、クリープ強度の向上に寄与
する元素である。この効果を得るには0.1%以上のV
含有量が必要である。一方、V含有量が0.5%を超え
ると、靱性の低下を招くとともに溶接高温割れを招く。
【0030】よって、V含有量の範囲は0.1〜0.5
%とした。望ましい範囲は0.12〜0.48%、さら
に望ましい範囲は0.15〜0.45%である。
【0031】W:1.5〜4.0% Wはマトリックスを固溶強化するとともに、微細炭化物
や金属間化合物として析出し、クリープ強度の向上に寄
与する元素である。この効果を得るには1.5%以上の
W含有量が必要である。一方、W含有量が4.0%を超
えると靱性の低下を招く。
【0032】よって、W含有量の範囲は1.5〜4.0
%とした。望ましい範囲は1.6〜3.9%、さらに望
ましい範囲は1.8〜3.8%である。
【0033】Co:0.5〜7.0% Coはδフェライトの生成を抑え、マルテンサイト単相
組織として靱性を確保する観点から必要な元素であると
ともに、金属間化合物の析出を促進してクリープ強度の
向上に寄与する元素である。この効果を得るには0.5
%以上のCo含有量が必要である。一方、Co含有量が
7.0%を超えると、オーステナイト変態温度(Ac
点)を低下させ、その結果、溶接後熱処理時にオーステ
ナイト変態を生じさせるため、クリープ強度の低下を招
く。
【0034】よって、Co含有量の範囲は0.5〜7.
0%とした。望ましい範囲は0.7〜6.8%、さらに
望ましい範囲は1.0〜6.5%である。
【0035】 Ta、Hf、Ndの少なくとも一種:それぞれ0.00
2〜0.15% Ta、Hf、Ndは、いずれもこれらを単独もしくは複
合して添加した場合、前述のNb(C、N)およびV
(C、N)に比べ、高温でより安定な炭窒化物を形成
し、クリープ強度の向上に大きく寄与する元素である。
この効果はTa、HfおよびNdのうちの少なくとも一
種の含有量が0.002%以上で得られる。
【0036】一方、その含有量が0.15%を超えて過
剰になると、靱性の低下を招く。
【0037】よって、Ta、Hf、Ndの少なくとも一
種の含有量の範囲はそれぞれ0.002〜0.15%と
した。望ましい範囲はそれぞれ0.0025〜0.14
%、さらに望ましい範囲はそれぞれ0.003〜0.1
2%である。
【0038】N:0.003〜0.080% NはNb、VさらにはTa、Hf、Ndと結合して炭窒
化物を形成し、クリープ強度の確保に寄与する元素であ
る。この効果を得るには0.003%以上のN含有量が
必要である。一方、N含有量が0.080%を超えて過
剰になると析出物の粗大化を招き、かえってクリープ強
度を損なう。
【0039】よって、N含有量の範囲は0.003〜
0.080%とした。望ましい範囲は0.004〜0.
078%、さらに望ましい範囲は0.005〜0.07
5%である。
【0040】Al:0.01%以下 Alは脱酸剤として添加される元素である。しかし、A
l含有量が0.01%を超えると、溶融池内でのスラグ
の生成を促進し、溶接金属の湯流れ性を劣化させる。そ
のため、Al含有量は0.01%以下とした。望ましい
上限は0.009%、さらに望ましい上限は0.008
%である。
【0041】なお、Al含有量の下限は特に定める必要
はない。ただし、Al含有量の極度の低減は製造コスト
の増大を招くとともに、鋼の清浄度を低下させる。この
ため、その下限は0.0005%程度、望ましくは0.
001%程度とするのが好ましい。
【0042】S:0.0005〜0.005% Sは溶融池内の対流に影響を与え、溶け込み深さを増大
させ、裏波形成能を向上させるのに有効な元素である。
しかし、Sの含有量が0.005%を超えると、アーク
の安定性を劣化させ、逆に溶接施工性劣化の原因とな
る。一方、0.0005%未満の極度の低減には、製造
コストの増大を招く。
【0043】よって、S含有量の範囲は0.0005〜
0.005%とした。望ましい範囲は0.0008〜
0.0049%、さらに望ましい範囲は0.0010〜
0.0048%である。
【0044】P:0.025%以下 Pは不可避不純物であり、低ければ低いほど望ましい
が、極度の低P化は多大なコスト増を招くため、特に下
限は定めない。一方、P含有量が0.025%を超える
と、溶接金属の加熱脆化を招くため、0.025%以下
とした。望ましい上限は0.023%、さらに望ましい
上限は0.020%である。
【0045】本発明の溶接材料では、さらに特にMnお
よび(Al+O)を次のような範囲に限定する必要があ
る。
【0046】 Mn:(0.0925−12.5〔%S〕)%≦Mn≦2.0%・・式 Mnは、その含有量をS含有量によって調整することに
より、溶接ビードの均一性を劣化させることなく、アー
ク電流の集中度合いを高めて裏波形成能を向上させる。
この効果を得るには、(0.0925−12.5〔%
S〕)%以上のMn含有量が必要である。一方、Mn含
有量が2.0%を超えて過剰になると、溶接金属部の脆
化を招く。よって、Mn含有量の範囲は、(0.092
5−12.5〔%S〕)〜2.0%とした。望ましい上
限は1.9%、さらに望ましい上限は1.8%である。
【0047】O(酸素): (Al+O)≦0.02%・・・式 O(酸素)は溶接中にAlと結合し、(Al+O)の含
有量が0.02%を超えると多量のスラグを生成して溶
接金属の湯流れ性を劣化させ、溶接ビードの均一性を劣
化させる。そのため、(Al+O)の含有量が0.02
%以下になるようにOの含有量を限定する
【0048】本発明の溶接材料では、上記の各成分に加
えてさらに、次のMoおよびBの少なくとも1種、さら
にはCaおよびMgのいずれか一方または両方を選んで
含有させることができ、これらの成分の複合添加含有も
許容される。
【0049】Mo:上限は0.3% Moは、上記のWと同様、マトリックスを固溶強化する
とともに微細炭化物や金属間化合物を析出し、クリープ
強度の向上に寄与する元素である。このため、この効果
を積極的に得たい場合に添加含有させる。しかし、添加
含有させる場合のMo含有量が0.3%を超えると、高
温での使用中に多量の金属間化合物を生成させるために
靱性の低下を招くとともに、かえってクリープ強度の低
下を招く。
【0050】よって、含有させる場合のMo含有量の上
限は0.3%とした。望ましい上限は0.29%、さら
に望ましい上限は0.28%である。なお、下限は特に
定めないが、望ましい下限は0.0010%、さらに望
ましい下限は0.0015%である。
【0051】B:上限は0.020% Bは、微量含有により炭化物を分散、安定化させ、クリ
ープ強度の向上に寄与する元素である。このため、この
効果を積極的に得たい場合に含有させる。しかし、B含
有量が0.001%未満であると上記の効果は小さい
一方、B含有量が0.020%を超えると熱間加工性を
損なう。
【0052】よって、含有させる場合のB含有量の範囲
は0.001〜0.020%であるのが望ましいより
望ましい範囲は0.0015〜0.018%、さらに望
ましい範囲は0.002〜0.015%である。
【0053】 CaおよびMgのいずれか一方または両方:上限は合計
0.002% CaとMgは、いずれも溶接材料(ワイヤ)である線材
に加工する際の熱間加工性の改善に寄与する。このた
め、この効果を積極的に得たい場合に、どちらか一方ま
たは両方を添加含有させる。しかし、その合計含有量が
0.0005%未満であると上記の効果は得られない。
一方、その合計含有量が0.002%を超えると溶接金
属の清浄度を低下させる。
【0054】よって、CaとMgのいずれか一方または
両方を含有させる場合の合計含有量範囲は0.000
5〜0.002%である。望ましい範囲は0.0006
〜0.0018%、さらに望ましい範囲は0.0008
〜0.0015%である。
【0055】以上のべたように、本発明の溶接材料は、
フェライト系ステンレス鋼製の溶接材料において、所定
量のTa、HfおよびNdの少なくとも1種を添加含有
させるとともに、Mn、Al、SおよびOの含有量を特
定の範囲に規定したことに特徴がある。本発明の溶接材
料は、通常の工業的なステンレス鋼の製造方法によって
製造することができる。精錬については、アーク式電気
炉による溶解法、AOD(アルゴン−酸素脱酸)法、V
OD(真空酸素脱炭)法などが適している。例えば、S
の低減(脱硫)については、脱炭の前工程で脱硫処理を
行うのが効果的である。また、AlおよびO含有量を本
発明の範囲内に収めるためには、所定の化学組成に成分
調整された溶鋼に対して真空処理を施し、これらの元素
の成分調整精度を向上させる方法が有効である。成分調
整された溶鋼は、連続鋳造法または造塊法によって、ス
ラブ(ビッレト)またはインゴットに鋳造する。このス
ラブまたはインゴットから、熱間圧延によって線材と
し、これをそのままあるいは冷間引き抜き加工した後、
溶接材料(ワイヤ)とする。
【0056】
【実施例】表1に示す化学組成を有し、外径200m
m、肉厚20mmの鋼管に、図1に示す形状、寸法の開
先を設ける一方、ルート間隔2mmで突き合わせ、表2
に示す化学組成を有する各種溶接材料を用いて、TIG
溶接法により10層の多層円周溶接を施した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】前記の鋼管は600℃で100000時間
のクリープ強度が15kgf/mmの高強度フェライ
ト鋼からなるものである。また、用いた溶接材料は、い
ずれも溶製、熱間加工、線引加工のプロセスにより製造
した外径2.4mmの線材である。
【0060】溶接条件は、入熱量2500J/cmとな
るように設定した。また、溶接施工後、760℃で後熱
処理を行った。
【0061】溶接施工性の評価は、溶接施工後、最終層
のビード変動幅を測定し、溶接ビードの均一性で行い、
評価基準は、溶接ビードの変動幅が2mm以下を良、そ
れより大きい場合を否とした。
【0062】さらに、全溶接線長さに対し裏波が形成し
ている長さの割合を測定し、裏波形成能を評価した。評
価基準は、裏波形成率が100%を良、それより小さい
場合を否と判断した。
【0063】次に、溶接部を中央部に含むように、長さ
55mm、幅10mm、厚さ10mm、2mmVノッチ
のシャルピー衝撃試験片、全長70mm、標点間距離3
0mm、平行部直径6mmφのクリープ試験片および長
さ40mm、幅10mm、厚さ2mmの耐食性試験片を
採取し、各試験に供した。
【0064】シャルピー衝撃試験およびクリープ試験で
は、それぞれ0℃シャルピー衝撃試験および650℃で
のクリープ試験を行った。
【0065】クリープ試験では、母材である高強度フェ
ライト鋼の破断寿命が約3000hrとなる12kgf
/mmの条件で試験を行い、溶接金属のクリープ破断
寿命を求めた。評価は、クリープ破断寿命が2700h
r以上を良、それより短い場合を否と判定した。
【0066】耐食性試験では、水蒸気中で700℃、1
000hrの加熱を行い、表面のスケール厚さを測定し
て、ボイラ用材料としての耐高温酸化性を評価した。以
上の試験結果を、表3に示した。なお、供試母材単体の
水蒸気酸化試験でのスケール厚さは約90μmであっ
た。
【0067】
【表3】
【0068】表3から明らかなように、本発明で定める
範囲内の化学組成の溶接材料(No.A1、A2およびA
)を用いてTIG溶接を行った溶接継手(No. AJ
、AJ2およびAJ6)では、溶接ビードの変動幅が
1.7mm以下、溶接ビードの均一性に優れ、また全
溶接線にわたり裏ビードが形成されている。この結果、
本発明の溶接材料は優れた溶接施工性を有し、かつ溶接
継手部は母材に匹敵するクリープ強度、耐水蒸気酸化性
および高靱性を有することが確認された。
【0069】一方、本発明で定める範囲外の化学組成を
有する比較例の溶接材料(No. B2、B6およびB8
を用いてTIG溶接を行った溶接継手(No. BJ2、B
J6 およびBJ8)では、十分な溶接施工性と継手性能
を兼ね備えたものは認められなかった。
【0070】すなわち、No. B2の溶接材料を用いた溶
接継手(No. BJ2)では、Ta、Hf、Ndのいずれ
をも含有していないため、クリープ破断時間が2455
hrで、十分なクリープ強度が得られなかった。また、
No. B2を用いた溶接継手は、S含有量が0.007%
と高いため、溶接ビード変動幅が2.4mmとなり、溶
接ビードの均一性に劣った。
【0071】No. B6の溶接材料を用いた溶接継手(N
o. BJ6)では、W含有量が1.20%と少ないた
め、クリープ破断時間が1265hrとなり、十分なク
リープ強度が得られなかった。
【0072】No. B8の溶接材料を用いた溶接継手(N
o. BJ8)では、Cr含有量が7.5%と少ないた
め、スケール厚さが110μmとなり、耐水蒸気酸化性
に劣った。さらに、Mo含有量が0.45%と高いため
に、シャルピー衝撃値が22J/cmとなり、十分な
靱性が得られなかった。またさらに、クリープ破断時間
が1450hrとなり、十分なクリープ強度も得られな
かった。
【0073】
【発明の効果】本発明の溶接材料は、高強度、高耐食フ
ェライト鋼の溶接時の施工性に優れ、この材料を使用す
ることで、十分な耐食性および高温強度を有する溶接継
手を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた開先形状と寸法を示す図であ
る。
フロントページの続き (72)発明者 小川 和博 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−365838(JP,A) 特開 平7−204885(JP,A) 特開 平3−107577(JP,A) 特開 昭63−212089(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/30

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量%で、C:0.03〜0.15%、S
    i:0.1〜0.8%、Cr:8〜13%、Ni:0.
    01〜1.30%、Nb:0.01〜0.20%、V:
    0.1〜0.5%、W:1.5〜4.0%、Co:0.
    5〜7.0%、N:0.003〜0.080%、Al:
    0.01%以下、S:0.0005〜0.005%、
    れぞれ0.002〜0.15%のTa、HfおよびNd
    の少なくとも1種、Mo:0〜0.3%、B:0〜0.
    020%を含有し、残部はFeおよび不可避不純物から
    なり、不純物中のPが0.025%以下、かつMnとS
    との含有量の関係が下記式、AlとO(酸素)との含
    有量の関係が下記式をそれぞれ満たすことを特徴とす
    る溶接施工性に優れた高強度、高耐食フェライト鋼用溶
    接材料。 (0.0925−12.5〔%S〕)%≦Mn≦2.0%・・・ (Al+O)≦0.02%・・・・・・・・・・・・・・・・・
  2. 【請求項2】質量%で、C:0.03〜0.15%、S
    i:0.1〜0.8%、Cr:8〜13%、Ni:0.
    01〜1.30%、Nb:0.01〜0.20%、V:
    0.1〜0.5%、W:1.5〜4.0%、Co:0.
    5〜7.0%、N:0.003〜0.080%、Al:
    0.01%以下、S:0.0005〜0.005%、そ
    れぞれ0.002〜0.15%のTa、HfおよびNd
    の少なくとも1種、Mo:0〜0.3%、B:0〜0.
    020%、さらにCaおよびMgのいずれか一方または
    両方を合計で:0.0005〜0.002%を含有し、
    残部はFeおよび不可避不純物からなり、不純物中のP
    が0.025%以下、かつMnとSとの含有量の関係が
    下記式、AlとO(酸素)との含有量の関係が下記式
    をそれぞれ満たすことを特徴とする溶接施工性に優れ
    た高強度、高耐食フェライト鋼用溶接材料。 (0.0925−12.5〔%S〕)%≦Mn≦2.0%・・・ (Al+O)≦0.02%・・・・・・・・・・・・・・・・・
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