JP2000301377A - フェライト系耐熱鋼の溶接継手および溶接材料 - Google Patents

フェライト系耐熱鋼の溶接継手および溶接材料

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JP2000301377A
JP2000301377A JP11108746A JP10874699A JP2000301377A JP 2000301377 A JP2000301377 A JP 2000301377A JP 11108746 A JP11108746 A JP 11108746A JP 10874699 A JP10874699 A JP 10874699A JP 2000301377 A JP2000301377 A JP 2000301377A
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Hiromasa Hirata
弘征 平田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】母材に匹敵する高温強度と耐高温腐食性を有す
る高強度なフェライト系耐熱鋼の溶接継手と、この溶接
継手を高入熱連続溶接で得ることが可能な溶接材料を提
供する。 【解決手段】C:0.03〜0.18%、Si:0.02〜0.6%、Mn:
0.1〜2%、P+S:0.025%以下、Cr:7〜15%、Nb:0.02
〜0.15%、V:0.1〜0.5%、W:1〜4%、N:0.005〜0.08
%、Al:0.1%以下、O:0.1%以下を含み、さらにZr、T
i、Ta、HfおよびNdのうちから選ばれた1種または2種
以上を式「2(10Nb+V)≦50(Zr+Ti+Ta+Hf+Nd)≦5」
を満たす量含有し、残部が実質的にFeからなる溶接金属
を有する溶接継手。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温で使用される
フェライト系耐熱鋼の溶接継手、より詳しくは高入熱で
溶接されていても溶接金属内に割れなどが存在しない健
全な溶接継手とそのための溶接材料に関する。
【0002】
【従来の技術】ボイラや化学装置などの耐熱、耐圧配管
部材に用いられる高温材料としては、2・1/4Cr−
1Mo鋼や9Cr−1Mo鋼などのフェライト鋼、18
Cr−8Ni鋼に代表されるオーステナイト系ステンレ
ス鋼がよく知られている。そのうち、フェライト鋼は、
オーステナイト系ステンレス鋼に比べて安価であるばか
りでなく、耐応力腐食割れ性に優れ、しかも熱膨張係数
が小さいため温度変化に対して歪みが小さいという高温
用材料としての利点を有する。
【0003】しかし、フェライト相、ベイナイト相およ
びマルテンサイト相などのいわゆるフェライト系の組織
からなる鋼は、オーステナイト組織からなる鋼に比べて
高温強度が低いとうい欠点があった。
【0004】そこで、近年、8〜13重量%のCrを含
有するフェライト鋼をベースにMo、W、Nb、Vなど
の添加量を調整することによって高温強度を高めた新し
いフェライト系耐熱鋼が数多く提案されている(例え
ば、特開平2−232345号公報、同3−97832
号公報など)。
【0005】また、最近では、高温強度の更なる向上を
図るために、WやCoを多量に添加したり、TaやNd
などを添加したフェライト鋼も提案されている(例え
ば、特開平6−29394号公報、同8−85849号
公報など)。
【0006】さらに、これらのWやCoなどを添加した
高強度なフェライト鋼を溶接構造物として使用する場合
に必要な溶接材料についても種々の共金系溶接材料が提
案されている(例えば、特開平7−80680号公報、
同9−122971号公報など)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記の各公報に示され
る共金系溶接材料のうち、例えば、特開平9−1229
71号に示される溶接材料は、特開平8−85849号
公報に示されるような高強度なフェライト鋼を通常の条
件でTIG溶接する場合に用いると、健全な溶接金属が
得られ、十分な性能を備えた溶接継手が容易に得られ
る。
【0008】しかし、最近のTIG溶接は、施工能率の
向上を図るためにサブマージ溶接を超えるような高い入
熱量で行われることが多く、この場合溶接割れが多発
し、その補修に手間がかかりかえって施工効率が低下す
るという問題があった。
【0009】本発明の目的は、母材に匹敵する高温強度
と耐高温腐食性を有する高強度なフェライト系耐熱鋼の
溶接継手と、この溶接継手を高い入熱での連続TIG溶
接で容易に得ることが可能な溶接材料を提供することに
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)のフェライト系耐熱鋼の溶接継手と、下記(2)
のフェライト系耐熱鋼用の溶接材料にある。
【0011】(1)重量%で、C:0.03〜0.18
%、Si:0.02〜0.6%、Mn:0.1〜2%、
P+S:0.025%以下、Cr:7〜15%、Nb:
0.02〜0.15%、V:0.1〜0.5%、W:1
〜4%、N:0.005〜0.08%、Al:0.1%
以下、O:0.1%以下を含み、さらにZr、Ti、T
a、HfおよびNdのうちから選ばれた1種または2種
以上を下記の式を満たす量含有し、残部が実質的にF
eからなる溶接金属を有することを特徴とするフェライ
ト系耐熱鋼の溶接継手。
【0012】 2(10Nb+V)≦50(Zr+Ti+Ta+Hf+Nd)≦5… ここで、式中の元素記号は溶接金属中に含まれる各元素
の含有量(重量%)を意味する。
【0013】(2)重量%で、C:0.03〜0.18
%、Si:0.02〜0.6%、Mn:0.1〜2%、
P+S:0.015%以下、Cr:7〜15%、Nb:
0.02〜0.15%、V:0.1〜0.5%、W:1
〜4%、N:0.01〜0.1%、Al:0.05%以
下、O:0.05%以下を含み、さらにZr、Ti、T
a、HfおよびNdのうちから選ばれた1種または2種
以上を合計で0.02〜0.5%含有し、残部が実質的
にFeであることを特徴とするフェライト系耐熱鋼用の
溶接材料。
【0014】上記(1)の溶接継手を構成する溶接金属
と(2)の溶接材料は、上記の成分以外に、いずれも、
3%以下のMo、2%以下のNi、3%以下のCu、7
%以下のCo、0.01%以下のB、0.01%以下の
REM、ならびに0.01%以下のCaまたはMgのう
ちのいずれか一方または両方を含むものであってもよ
い。
【0015】上記の本発明は、次の知見に基づいて完成
させた。すなわち、本発明者らは、高強度なフェライト
系耐熱鋼をサブマージ溶接を超えるような高い入熱量で
連続TIG溶接した場合に発生する割れの発生原因を究
明すべく、まず最初に発生した割れを詳細に調べた。そ
の結果、割れには、(a) 溶接金属の最終凝固部に発生す
る割れと、(b) 積層境界(溶融線)近傍の結晶粒が粗大
化した部分の結晶粒界に発生する割れの2種類に大別さ
れることが判明した。
【0016】そして、上記(a) の割れは凝固割れであ
り、これは溶接金属中に含まれるPやS等の不純物元素
の含有量低減により防止可能である。
【0017】一方、(b) の割れの破面には、溶融痕は認
められず、破面上にPとSが濃化しており、その近傍の
粒内にはVやNbの微細な炭化物が生成していることが
確認された。このことから、(b) の割れは、連続TIG
溶接時における次層の熱サイクルによりPやSの粒界偏
析が加速されて粒界の固着力が低下するとともに、その
近傍の粒内にVやNbの微細な炭化物が生成して粒内が
強化され、その相乗作用によって溶接熱応力による変形
が結晶粒界に集中する結果、発生するものと考えた。
【0018】そこで、その発生防止対策を鋭意検討した
結果、溶接金属中にはZr、Ti、Ta、HfおよびN
dのうちから選ばれた1種または2種以上を適量、具体
的には上記の式を満たす量含有させるのが有効であ
り、また、用いる溶接材料には合計量で0.02〜0.
5重量%含有させるのが有効であることも知見した。
【0019】ここで、溶接金属には上記の式を満たす
量、溶接材料には合計で0.02〜0.5重量%のZ
r、Ti、Ta、HfおよびNdのうちから選ばれた1
種または2種以上を含有させると上記(b) の割れが発生
しなくなるのは、次の理由によるものと推定される。
【0020】Zr、Ti、Ta、HfおよびNdは、V
やNbよりも高温で炭化物を形成しやすく、しかもその
炭化物はVやNbの炭化物よりも大きく、しかも粒界に
も生成しやすい。このため、粒内にVやNbの微細な炭
化物が生成する以前にZr、Ti、Ta、HfおよびN
dの大きな炭化物が粒内に生成するとともに、これらの
炭化物が粒界にも生成し、粒内に微細なV、Nbの炭化
物が生成するのを阻止する。その結果、粒内の変形能が
保たれるとともに、粒界も強化されるため、割れの発生
が防止されると推定される。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の溶接継手を構成す
る溶接金属の化学組成およびこの溶接金属を得るのに用
いて好適な溶接材料の化学組成を上記のように定めた理
由について詳細に説明する。なお、以下において、
「%」は「重量%」を意味する。また、各成分の含有量
とその限定理由は、特に断らない限り、溶接金属と溶接
材料に共通である。
【0022】C:0.03〜0.18% Cは炭化物を形成し、高温強度の確保に寄与する。ま
た、オーステナイト形成元素としてδフェライトの生成
抑制に寄与する。これらの効果を得るためには、最低で
も0.03%が必要である。しかし、0.18%を超え
て含有させると、溶接高温割れが発生するだけでなく、
長時間使用後の脆化を招く。このため、C含有量は0.
03〜0.18%とした。好ましい範囲は0.05〜
0.15%である。
【0023】Si:0.02〜0.6% Siは、母材や溶接材料の製鋼時に脱酸元素として添加
されるが、溶接金属では、耐酸化性と耐高温腐食性の確
保に寄与する。これらの効果を得るためには、最低でも
0.02%が必要である。しかし、0.6%を超えて含
有させると、溶接高温割れが発生するだけでなく、靭性
低下を招く。このため、Si含有量は0.02〜0.6
%とした。好ましい範囲は0.05〜0.5%である。
【0024】Mn:0.1〜2% Mnは、上記のSiと同様に、母材や溶接材料の製鋼時
に脱酸元素として添加される。しかし、2%を超えて含
有させると、溶接中のヒューム量が増加して作業環境が
劣化する。また、溶接継手の場合、溶接金属の脆化を招
く。このため、Mn含有量は2%を上限とした。好まし
くは1.8%以下である。また、極度の低減は母材、溶
接材料の製造コストの増大を招ため、下限は0.1%と
した。
【0025】P+S:溶接金属は0.025%以下、溶
接材料は0.015%以下、PとSは不可避不純物であ
り、溶接金属においては、凝固割れ感受性を増大させる
とともに、高入熱溶接時には粒界に偏析して粒界強度を
低下させ、高入熱連続溶接時特有の割れ発生原因にな
る。この高入熱連続溶接時特有の割れ発生は、後述する
ように、適量のZrやTiなどを添加することで防止可
能であるが、PとSの合計含有量が0.025%を超え
ると防止できなくなる。
【0026】一方、溶接材料中のPとSの合計含有量
は、溶接金属のPとSの合計量が0.025%以下を満
足するようにすればよいが、母材との希釈を考慮すると
低い方が好ましい。そのため、極端なコスト増を招かな
い0.015%を上限とした。
【0027】このため、PとSの合計含有量は、溶接金
属については0.025%以下、溶接材料については
0.015%以下とした。なお、PとSの合計含有量
は、いずれの場合も低ければ低いほど好ましく、好まし
い上限はいずれも0.002%である。
【0028】Cr:7〜15% Crは本発明で対象とするフェライト系耐熱鋼を構成す
る基本元素であり、その含有量が7%未満では所望とす
る高温での耐酸化性、耐高温腐食性および高温強度が確
保できない。しかし、15%を超えて含有させると、靭
性低下を招く。このため、Cr含有量は7〜15%とし
た。好ましい範囲は8〜13%である。
【0029】Nb:0.02〜0.15% Nbは微細な炭化物や炭窒化物を形成し、クリープ強度
の確保に寄与する。その効果を得るためには、最低でも
0.02%が必要である。しかし、0.15%を超えて
含有させると靭性低下を招くだけでなく、高入熱連続溶
接時に前述した特有の割れが発生するようになる。この
ため、Nb含有量は0.02〜0.15%とした。な
お、Nbの含有量は、0.02〜0.15%の範囲内に
おいて後述する式を満たす量にすることが必要であ
る。
【0030】V:0.1〜0.5% Vは、上記のNbと同様に、微細な炭化物や炭窒化物を
形成し、クリープ強度の確保に寄与する。その効果を得
るためには、最低でも0.1%が必要である。しかし、
0.5%を超えて含有させると、靭性低下を招くだけで
なく、高入熱連続溶接時に前述した特有の割れが発生す
るようになる。このため、Nb含有量は0.1〜0.5
%とした。なお、Vの含有量は、0.1〜0.5%の範
囲内において、上記のNbと同様に、後述する式を満
たす量にすることが必要である。
【0031】W:1〜4% Wはマトリックスを固溶強化するとともに炭化物や金属
間化合物を析出し、クリープ強度の確保に寄与する。そ
の効果を得るためには、最低でも1%が必要である。し
かし、4%を超えて含有させると靭性低下を招く。この
ため、W含有量は1〜4%とした。好ましい範囲は1.
2〜3.8%である。
【0032】N:溶接金属は0.005〜0.08%、
溶接材料は0.01〜0.1% Nは窒化物を形成し、クリープ強度の確保に寄与する。
その効果を得るためには、溶接金属においては最低でも
0.005%が必要である。しかし、0.08%を超え
て含有させると析出物が粗大化し、かえってクリープ強
度の低下を招く。一方、溶接材料中のNは溶接中に溶融
池から蒸発するが、その含有量が0.01%未満、また
は0.01%超であると、溶接金属のN含有量が0.0
05%未満、または0.08%超になることがある。こ
のため、N含有量は、溶接金属については0.005〜
0.08%、溶接材料については0.01〜0.1%と
した。
【0033】Al:溶接金属は0.1%以下、溶接材料
は0.05%以下 Alは、母材や溶接材料の製鋼時の脱酸剤として必要で
あり、添加されてさえおればよく、その下限は特に定め
る必要はない。しかし、溶接金属中のAl含有量が0.
1%を超えると所望の継手性能が確保できなくなる。一
方、溶接材料中のAl含有量が0.05%を超えると、
溶融時に多量のスラグを生成し、溶接施工性が低下す
る。このため、Al含有量は、溶接金属については0.
1%以下、溶接材料については0.05%以下とした。
【0034】O(酸素):溶接金属は0.1%以下、溶
接材料は0.05%以下 Oは不純物元素であり、溶接金属中のO含有量が0.1
%を超えると靱性が低下する。一方、溶接材料中のO含
有量が0.05%を超えると、溶融時Alと結合して多
量のスラグを生成し、溶接施工性が低下する。このた
め、O含有量は、溶接金属については0.1%以下、溶
接材料については0.05%以下とした。
【0035】Zr、Ti、Ta、Hf、Nd:溶接金属
は下記の式を満たす量、溶接材料は合計で0.02〜
0.5% 2(10Nb+V)≦50(Zr+Ti+Ta+Hf+Nd)≦5… これらの元素は、いずれも、高入熱で連続溶接する際、
次パスの溶接熱サイクルで前パスの溶接金属の粒内に微
細なVCやNbCが生成する以前に高温で安定な炭窒化
物を生成し、高入熱溶接時特有の溶接金属内の割れの発
生防止に寄与する。その効果はZr、Ti、Ta、Hf
およびNdのいずれか1種を単独または2種以上を複合
添加することで得られるが、溶接金属には上記の式を
満たす量を含有させる必要がある。これは、式「50
(Zr+Ti+Ta+Hf+Nd)」値が式「2(10
Nb+V)」値未満であると、溶接時の熱サイクルによ
り微細なVCやNbCが溶接金属の粒内に生成して割れ
が発生しやすいためである。逆に、5を超えると、クリ
ープ中に粗大な炭化物や炭窒化物が多量に生成するとと
もに、使用中のV、Nb炭化物もしくは炭窒化物の析出
量を低減させ、クリープ強度と靭性が低下するからであ
る。一方、溶接材料には、母材との希釈を考慮すると、
合計で0.02〜0.5%含有させる必要がある。これ
らのことは、後述する実施例の結果から明らかでる。
【0036】ここで、上記の元素のうち、Ndは後述す
るREMに含まれる場合があるが、そのNd含有量はR
EMとして添加される分を含む量を意味する。
【0037】Mo:0〜3% Moは添加しなくてもよい。添加すれば、上記のWと同
様に、マトリックスを固溶強化するとともに、炭化物を
析出し、クリープ強度の向上に寄与する。このため、そ
の効果を得たい場合には添加するのがよく、その効果は
0.05%以上で顕著になる。しかし、3%を超えて含
有させると、長時間使用後の靭性の低下を招く。したが
って、添加する場合のMo含有は0.05〜3%とする
のがよい。好ましい上限は2.5%である。
【0038】Ni:0〜2% Niは添加しなくてもよい。添加すれば、オーステナイ
ト生成元素であるのでδフェライト相の生成が抑制さ
れ、溶接金属がマルテンサイト単相組織となり靭性の向
上に寄与する。このため、その効果を得たい場合には添
加するのがよく、その効果は0.02%以上で顕著にな
る。しかし、2%を超えて含有させると、オーステナイ
ト変態温度(AC1変態点)を低下させ、溶接後の熱処理
時にオーステナイト変態を生じ、クリープ強度の低下を
招く。したがって、添加する場合のNi含有量は0.0
2〜2%とするのがよい。好ましい上限は1.8%であ
る。
【0039】Cu:0〜3% Cuは添加しなくてもよい。添加すれば、上記のNiと
同様に、オーステナイト生成元素であるのでδフェライ
ト相の生成が抑制され、溶接金属がマルテンサイト単相
組織となり靭性の向上に寄与する。このため、その効果
を得たい場合には添加するのがよく、その効果は0.0
2%以上で顕著になる。しかし、3%を超えて含有させ
ると、Niの場合と同様にオーステナイト変態温度(A
C1変態点)を低下させ、溶接後の熱処理時にオーステナ
イト変態を生じ、クリープ強度の低下を招く。したがっ
て、添加する場合のCu含有量は0.02〜3%とする
のがよい。好ましい上限は2.5%である。
【0040】Co:0〜7% Coは添加しなくてもよい。添加すれば、上記のNi、
Cuと同様に、オーステナイト生成元素であるのでδフ
ェライト相の生成が抑制され、溶接金属がマルテンサイ
ト単相組織としなり靭性の向上に寄与する。また、ラー
ベス相のようにクリープ強度の向上に寄与する金属間化
合物相の析出を促進させる効果もある。このため、これ
らの効果を得たい場合には添加するのがよく、その効果
は0.05%以上で顕著になる。しかし、7%を超えて
含有させると、NiおよびCuの場合と同様にオーステ
ナイト変態温度(AC1変態点)を低下させ、溶接後の熱
処理時にオーステナイト変態を生じ、クリープ強度の低
下を招く。したがって、添加する場合のCo含有量は
0.05〜7%とするのがよい。好ましい上限は6.5
%である。
【0041】B:0〜0.01% Bは添加しなくてもよい。添加すれば、炭化物を分散、
安定化させてクリープ強度の向上に寄与する。また、粒
界に偏析して粒界を強化し、高入熱連続溶接時における
特有の割れ発生防止にも寄与する。このため、これらの
効果を得たい場合には添加するのがよく、その効果は
0.0005%以上で顕著になる。しかし、0.01%
を超えて含有させると、母材や溶接材料の加工性が低下
する。したがって、添加する場合のB含有量は0.00
05〜0.01%とするのがよい。好ましい上限は0.
008%である。
【0042】REM(希土類元素):0〜0.01% REMは添加しなくてもよい。添加すれば、PやSとの
親和力が強く、PやSと化合物を形成し、粒界固着力の
低下を防いで高入熱連続溶接時における特有の割れ発生
防止に寄与する。このため、この効果を得たい場合には
添加するのがよく、その効果は0.0005%以上で顕
著になる。しかし、0.01%を超えて含有させると、
溶接時に多量のスラグが生成し、溶接施工性を損なう。
したがって、添加する場合のREM含有量は0.000
5〜0.01%とするのがよい。好ましい上限は0.0
08%である。
【0043】Ca、Mg:それぞれ0〜0.01% これらの元素は添加しなくてもよい。添加すれば、母材
や溶接材料の熱間加工性の向上に寄与する。このため、
これらの効果を得たい場合には添加するのがよく、その
効果はいずれの元素も0.0005%以上で顕著にな
る。しかし、いずれの元素も0.01%を超えて含有さ
せると、溶接金属の清浄度が低下し、靱性低下を招く。
したがって、添加する場合のCa含有量とMg含有量
は、いずれも0.0005〜0.01%とするのがよ
い。いずれの元素も、好ましい上限は0.008%であ
る。
【0044】
【実施例】表1に示す化学組成を有し、600℃、10
万時間のクリープ強度が15kgf/mm2 の高強度フ
ェライト鋼からなる厚さ40mm、長さ200mm、幅
100mmの溶接試験用の鋼板2枚と、厚さが40m
m、一辺が300mmの正方形の炭素鋼製の拘束板を準
備した。
【0045】
【表1】
【0046】次いで、溶接試験用の2枚の鋼板の長辺に
図1(c)に示す横断面形状の開先を施した後、拘束板
上に開先を対向させて載置し、図1に示すように、その
4辺全周を拘束板に溶接接合した拘束溶接試験体を作製
し、下記条件の拘束溶接試験に供した。
【0047】《拘束溶接試験条件》 溶接方法:TIG法による連続溶接、 溶接材料:表2に示す化学組成を有する10種類(外径
1.2mm)、 入熱量 :40kJ/cm、 パス回数:約40回、 パス間温度管理:実施せず。
【0048】
【表2】
【0049】そして、得られた溶接ままの各溶接継手部
の溶接金属の化学組成を調べた。
【0050】また、得られた溶接ままの各溶接継手部
(溶接金属部)の溶接線長手方向の20mmピッチの5
ヶ所から断面ミクロ試験片を採取し、溶接金属内の割れ
の発生の有無を調べた。評価は、5ヶ所の断面ミクロ試
験片の全てに割れの発生が認められなかったものを良好
「○」、一断面でも割れの発生が認められたものを不芳
「×」とした。
【0051】さらに、断面ミクロ観察の結果が良好であ
ったものについては、その継手部に740℃に60分間
保持する後熱処理を施した後、溶接金属が長手方向の中
央部に位置するクリープ試験片を採取し、下記条件のク
リープ試験に供し、溶接継手の破断時間を調べた。評価
は、破断時間が2400時間以上であったものを良好
「○」、2400時間未満であったものを不芳「×」と
した。
【0052】《クリープ試験条件》 試験温度:650℃、 負荷応力:12kgf/mm2 、 なお、上記の負荷応力は、母材の高強度フェライト鋼の
破断寿命が約3000時間になる値である。
【0053】以上の調査結果を、表3と表4に示した。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】表3と表4に示す結果からわかるように、
溶接金属の化学組成が本発明で規定する範囲内の溶接継
手(試番1〜7)は、高入熱で連続溶接したにもかかわ
らず溶接金属内に割れが発生しておらず、十分なクリー
プ強度を有していた。
【0057】これに対し、溶接金属の化学組成が本発明
で規定する範囲を外れる溶接継手(試番8〜11)は、
溶接金属内に割れが発生した。
【0058】以上の結果、本発明で規定する化学組成を
有する溶接金属を得るには、本発明で規定する化学組成
を有する溶接材料を用いるのが好適であることが確認さ
れた。
【0059】
【発明の効果】本発明の溶接継手は、溶接金属内に割れ
がなく、しかも優れたクリープ強度を有している。ま
た、その溶接金属は、本発明の溶接材料を用いれば高入
熱溶接で得ることができ、施工能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における拘束溶接試験を説明するための
図で、同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)の
イ−イ矢視断面図、同図(c)は同図(b)中のロ部の
拡大図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.03〜0.18%、S
    i:0.02〜0.6%、Mn:0.1〜2%、P+
    S:0.025%以下、Cr:7〜15%、Nb:0.
    02〜0.15%、V:0.1〜0.5%、W:1〜4
    %、N:0.005〜0.08%、Al:0.1%以
    下、O:0.1%以下、Mo:0〜3%、Ni:0〜2
    %、Cu:0〜3%、Co:0〜7%、B:0〜0.0
    1%、REM:0〜0.01%、Ca:0〜0.01
    %、Mg:0〜0.01%を含み、さらにZr、Ti、
    Ta、HfおよびNdのうちから選ばれた1種または2
    種以上を下記の式を満たす量含有し、残部が実質的に
    Feからなる溶接金属を有することを特徴とするフェラ
    イト系耐熱鋼の溶接継手。 2(10Nb+V)≦50(Zr+Ti+Ta+Hf+Nd)≦5… ここで、式中の元素記号は溶接金属中に含まれる各元素
    の含有量(重量%)を意味する。
  2. 【請求項2】重量%で、C:0.03〜0.18%、S
    i:0.02〜0.6%、Mn:0.1〜2%、P+
    S:0.015%以下、Cr:7〜15%、Nb:0.
    02〜0.15%、V:0.1〜0.5%、W:1〜4
    %、N:0.01〜0.1%、Al:0.05%以下、
    O:0.05%以下、Mo:0〜3%、Ni:0〜2
    %、Cu:0〜3%、Co:0〜7%、B:0〜0.0
    1%、REM:0〜0.01%、Ca:0〜0.01
    %、Mg:0〜0.01%を含み、さらにZr、Ti、
    Ta、HfおよびNdのうちから選ばれた1種または2
    種以上を合計で0.02〜0.5%含有し、残部が実質
    的にFeであることを特徴とするフェライト系耐熱鋼用
    の溶接材料。
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