JP3222113B2 - 高Crフェライト系耐熱鋼用溶接材料、該材料からなるテイグ溶接棒、サブマージアーク溶接棒、溶接用ワイヤ及び被覆アーク溶接棒 - Google Patents

高Crフェライト系耐熱鋼用溶接材料、該材料からなるテイグ溶接棒、サブマージアーク溶接棒、溶接用ワイヤ及び被覆アーク溶接棒

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JP3222113B2 JP08122299A JP8122299A JP3222113B2 JP 3222113 B2 JP3222113 B2 JP 3222113B2 JP 08122299 A JP08122299 A JP 08122299A JP 8122299 A JP8122299 A JP 8122299A JP 3222113 B2 JP3222113 B2 JP 3222113B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超々臨界圧発電所
に使用されるボイラチューブ、配管及び弁等の機器の溶
接に使用される溶接材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】発電所の蒸気温度及び圧力は、発電所の
熱効率に大きく影響するが、我が国の場合、1967年
以降に建設された45万KW級以上の発電所では、圧
力:246Kg/cm2、温度:538〜566°Cの
超臨界圧蒸気条件が採用されてきた。しかし、石油危機
を契機として1970年以来、蒸気の圧力温度条件を更
に高めて発電効率を向上させる超々臨界圧発電所の建設
が行なわれるようになった。これが可能となったのは、
9Cr−2Mo鋼や改良型9Cr−1Mo鋼のように、
高価なNiを含有しないフェライト系耐熱鋼が開発され
たことによる。
【0003】超々臨界圧発電所の蒸気条件は、第1ステ
ップ:316Kg/cm2×566°C、第2ステッ
プ:316Kg/cm2×593°C、第3ステップ:
352Kg/cm2×649°Cと漸次、高温高圧化が
計られる計画になっている。しかし、現実的には、第2
ステップから第3ステップに移行する過程で、例えば、
621°Cレベル等の中間的な温度条件が採用される気
運にある。
【0004】これらの蒸気条件の高温高圧化に対応し
て、現在では改良型9Cr−1Mo鋼(鍛鋼:米国材料
・試験協会[ASTM]規格:F91,鋳鋼規格:C1
2A)を適用することで第2ステップまでの発電所が建
設されている。しかしながら、この9Cr−1Mo鋼の
使用限界温度は、600°C程度であるため、超々臨界
圧発電所においては、この鋼を600°C以下の温度範
囲で使用しなければならず、600°C以上の蒸気条件
中使用できるフェライト鋼の研究・開発が進められてい
る。
【0005】この研究の結果、600°C以上の温度レ
ベルで改良型9Cr−1Mo鋼を使用するのに必要なク
リープ強度を向上させるためには、改良型9Cr−1M
o鋼におけるMo鋼のMo量を0.5重量%程度に引下
げて、その代わりにWを1.8重量%程度添加した鋼が
優れていることが判明した。
【0006】このフェライト系鋼は、SUS316H
(JIS規格)のようなオーステナイト系鋼と比較して
も、650°Cまでの高温強度が大きく、しかもNiを
含有しないため、安価であるという特徴を有している。
本鋼種は、米国機械学会(以下、「ASME」と称す)
のコードケース2179において規格化されており、継
目なし(Seamless)9Cr−2W鋼の化学成分が重量%
で、C:0.07〜0.13、Mn:0.30〜0.6
0、Si≦0.50、P≦0、020、S≦0.01
0、Cr:8.50〜9.50、Mo:0.30〜0.
60、W:1.50〜2.00、Ni≦0.40、V:
0.15〜0.25、Nb:0.04〜0.09、N:
0.03〜0.07、Al≦0.040、B:0.00
1〜0.006となっている。この鋼種は、継目なしチ
ューブ及びパイプ材について規定されたもので、化学成
分には、Nが最大0.07重量%まで含有されている。
【0007】一方、上記のような鋼に対する溶接材料と
しては、現在のところ一般に、Mn及びNiを高めた高
Mn系鋼材が使用されており、その化学成分は、重量%
で、C:0.08、Mn:1.63、Si:0.32、
P:0.007、S:0.002、Cr:8.99、M
o:0.49、W:1.41、Ni:0.56、V:
0.31、Nb:0.06となっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この高
Mn系鋼材は、クリープ強度が上述した母材の9Cr−
2W鋼より劣るという欠点があった。
【0009】一方、高温高圧機器用溶接材料の開発にお
いては、1)高温強度の中で、主としてクリープ強度が
基材と同等であること、並びに延性や靭性が高いことと
いう機械的性質の要求がある他に、2)溶接施工性に優
れていることという製造性の問題を解決する必要があ
る。
【0010】従って、本鋼種の溶接材料の開発において
は、機械的性質を良好に維持するために、溶接部にδフ
ェライトが生成しないようにしてクリープ強度を高める
適切な元素を添加すること、また、溶接性を良好に維持
するために、溶接に際して割れ等の欠陥の発生を防止す
ると共に、ブローホール(気泡)の発生を防止するため
に適切な元素を制限しなければならないという課題があ
った。。
【0011】従って、本発明は、上記課題を解決するた
めに、9Cr−2W鋼に相当する高温強度を維持しなが
ら健全な溶接部が得られる、超々臨界発電所のような6
00°C以上の蒸気条件で使用可能なボイラチューブ、
配管及び機器の耐圧部等の溶接に使用される溶接材料を
提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の主たる局面によると、高Crフェライト系
耐熱鋼用溶接材料は、化学成分が重量%で、C:0.0
6〜0.12、Si:0.28〜0.50、Mn:0.
18〜0.30未満、Cr:8.0〜9.5、Mo:
0.38〜0.50未満、W:1.50〜1.94、
V:0.15〜0.25、Nb:0.04〜0.08
B:0.004〜0.006、N:0.030〜0.0
38、Ni:0.40〜0.60、Co:0.25〜
1.50、Al:0.02以下であり、前記Cr、C及
びCo以外の前記化学成分が前記各範囲内の平均値とな
った場合に、該Cr、C及びCoが 14Cr−220C−7Co≦100 の関係式を満足することを特徴としている。
【0013】前記高Crフェライト系耐熱鋼用溶接材料
は、さらに、重量%で、化学成分Ce:0.02〜0.
10を含有するのが好ましい。また、前記各高Crフェ
ライト系耐熱鋼用溶接材料を、テイグ溶接棒、サブマー
ジ(潜孤)アーク溶接棒、溶接用ワイヤ等等に適用する
こともできる。
【0014】また、前記高Crフェライト系耐熱鋼用溶
接材料に、さらに、前記各化学成分以外からなるアーク
安定剤、スラグ生成剤あるいは粘結剤の内の少なくとも
一つを含む被覆剤を加えて、被覆アーク溶接棒等に適用
することも好ましい。
【0015】
【作用】高Crフェライト系耐熱鋼用溶接材料を上記の
ような化学成分にすると、材料生成過程においてδフェ
ライトが抑制され、クリープ強度等が低下しなくなると
共に、割れやブローホールの発生を防止し、高温強度を
維持しながら健全な溶接部が得られる。
【0016】また、上記各耐圧部用鋳鋼材料にCeを添
加することにより、溶接部表面に生じる酸化物を固定し
て、剥離しずらくすることができる。従って、剥離して
形成される薄片による溶接部および機器の侵食の促進も
防止することができる。
【0017】さらに、このような高Crフェライト系耐
熱鋼用溶接材料を例えば超々臨界圧発電所のような高温
高圧条件で使用される耐圧部等の溶接に使用するテイグ
溶接棒、サブマージアーク溶接棒、溶接用ワイヤ、ある
いは該溶接材料に、さらにアーク安定剤等の被覆材を加
えて被覆アーク溶接棒に適用すると、高温強度及び耐圧
性に優れているため、信頼性の高い溶接部や装置等が得
られる。
【0018】
【発明の実施の形態】まず最初に、本発明に従う高Cr
フェライト系耐熱鋼用溶接材料の各化学成分の割合の選
択の根拠について述べる。
【0019】本発明者は、容量1トンの高周波電気溶解
炉によって、種々の化学成分の鋼を溶解して、Φ310
×110mmの円板状試験体を鋳造し、9Cr−2W鋼
の化学成分とδフェライト量との関係、並びにブローホ
ールの発生について検討した。δフェライトが抑制でき
れば、クリープ強度等が低下しなくなり、高温強度を維
持しながら耐圧性に優れた材料が得られるからである。
【0020】次に、この結果を基にして、δフェライト
が極めて少なく、クリープ強度の大きな溶接用材料を製
作して、溶接施工試験、並びに鋼材の高温強度を決定す
る基礎となるクリープ試験を行なって、本発明に係る高
Crフェライト系耐熱鋼用溶接材料を完成した。
【0021】最初にδフェライトの抑制について説明す
る。9Cr系鋼のδフェライト量は、一般に、Cr当量
(Creq)で表されるが、Cr当量は、鋼の化学成分
をフェライト生成元素とオーステナイト生成元素とに分
類し、これらの元素のフェライト及びオーステナイト生
成能力を、一定の比率で表して合計したもので、種々の
実験式が提案されているが、本試験では、Cr当量とし
て以下の式(1)を適用した。 Creq%=(14Cr+6Si+5Mo十8W+18V+90Nb+54Al) −220(C+N)−20Ni−6Mn−7Co−146・・・(1) この式(1)で、前のカッコ内の元素がフェライト生成
元素であり、後のマイナス記号(−記号)の元素がオー
ステナイト生成元素である。
【0022】次に、δフェライトと化学成分組成のCr
当量%との関係を、9Cr−2W鋼及び9Cr−2W−
Co鋳鋼について求めたが、その試験結果を図1に示
す。この図に示すように、Cr当量とδフェライトとの
関係は、式(2)で良く表される。
【0023】 δ%=170exp0.107Creq ・・・・(2) 図1に示すように、これらの鋼のδフェライトが実際的
に機械的性質を劣化させないCr当量(δフェライト:
3%以下とする)は、式(2)を用いて計算すると、−
37.7%以下であることがわかる。
【0024】一方、溶接部は、溶接後凝固し、圧延等の
鍛造処理を受けないので、溶接時にブローホール等の欠
陥が発生すると、その欠陥は、そのまま製品に残留して
しまう。従って、溶接材料については、鋼中のN含有量
を、特に厳密に管理する必要がある。Nの含有量が多い
と、ブローホールを発生し易くなるためである。図2
は、Cr含有鋼の溶鋼が凝固する場合におけるN許容量
を示している。この図に示すように、9%Cr鋼がブロ
ーホールを生成することなく凝固できるN含有量の上限
値は、0.05%である。
【0025】従って、上記のような諸点を考慮して、本
発明に係る高Crフェライト系耐熱鋼用溶接材料用の鋼
を製造するため、化学成分の割合を以下のように選定し
た。
【0026】N(窒素)は、主としてVと結合してVN
(窒化バナジュウム)及びNbN(窒化ニオブ)とな
り、600〜650°Cのクリープ強度を引上げる元素
である。Nが0.01%の場合には、VNが十分生成さ
れないため、クリープ強度は向上しない。しかし、Nが
0.02%の場合でも、Vが0.15〜0.25%であ
れば、クリープ強度は向上する。一方、前述のように、
ブローホールの発生を防止するという観点から、溶接材
料におけるNの最大含有量は、0.038%とする必要
がある。このためNの含有量の範囲は、0.030〜
0.038%とする。
【0027】Cr(クロム)は、本鋼の耐酸化性を高め
て600°C以上での使用を可能にすると共に、マトリ
ックス(以下、「基地」と称す)をマルテンサイト化す
ることにより、Cと結合して強固な炭化物を生成し、高
温強度を高める上から重要な元素である。一方、溶接材
料では気泡の発生を防止するために、Siを0.25%
以上添加する。このSiは、Crと同様に耐酸化作用が
あるため、Si量に相当するだけCrを低減しても耐酸
化性は維持できる。例えば、Si:0.1%、Cr:9
%の鋼の耐酸化性は、Si:0.3%、Cr:8.0%
の鋼と同等である。このため、Crの下限値を8.0%
とし、上限値は、9.5%とする。従って、Crの成分
範囲は、8.0〜9.5%とする。
【0028】Mo(モリブデン)及びW(タングステ
ン)は、本鋼中に固溶してクリープ強度を向上させるの
に有効であるが、その効果は、Mo当量=Mo+1/2
Wにおいて、Mo当量が1.5%の時に最も良好とな
る。しかし、Wを2%以上添加しても、それ以上クリー
プ強度は増加しないので、Mo:0.38〜0.50%
未満、W:1.50〜1.94%とする。
【0029】V(バナジュウム)は、Nと結合してVN
(窒化バナジュウム)を生成し、クリープ強度を著しく
向上させる。しかし、V量が0.15%以下の場合では
VNの析出は少なく、Cr2Nが析出してクリープ強度
が向上しない。一方、V量が0.25%の場合には、N
量が0.06%まではVNとして結合するためクリープ
強度は向上するが、それ以上添加しても強度は増加しな
い。このためVの添加量は、0.15〜0.25%とす
る。
【0030】Nb(ニオブ)は、本鋼中に微量に含まれ
る場合には、微細なNb(C,N)(ニオブの炭窒化
物)を生成し、VNとの相乗効果によってクリープ強度
を向上させるが、多量に含まれる場合には、本鋼中に固
溶しないNb(C,N)を生成してVNの析出量を低下
させたり、Nb(N,C)が凝集粗大化したりしてクリ
ープ強度を低下させる。そのため、Nb含有量は、0.
04〜0.08%とする。
【0031】C(炭素)は、Crと結合してマルテンサ
イト組織を形成し、また、Cr、Mo、V及びNbと結
合して炭化物を生成して、本鋼の高温強度を高める上か
ら重要であるが、多量に含まれると延靭性が低下すると
共に、溶接性も低下する。しかし、式(1)に示すよう
に、Cは、AC3変態点以上の高温でオーステナイトを生
成する能力が最も大きい元素であるので、上限値を0.
12%とし下限値を0.06%とする。すなわち、式
(1)において、Cr、C、Co以外の化学成分が平均
値を取った場合に、δフェライトが3%以下となる条件
式は、式(3)で表される。
【0032】 14Cr−220C−7Co≦100 ・・・・(3) この式(3)において、Cr:8.75%(平均値)、
Co:1.50(最大値)となった場合に、C≧0.0
55%となるので、これよりCの下限値を0.06%と
する。従って、C量は、0.06〜0.12%とする。
【0033】Si(シリコン)は、製鋼時における溶鋼
の脱酸材として用いられ、ブローホールの発生を防止す
るのに必須の元素であり、また、製品使用時は製品の高
温酸化を防止する。ここで、溶接材料ではブローホール
の発生を防止するために、Si量の下限値を0.28
とする。一方、Siは、溶接部の基地の硬度を高めるた
め、多量にSiを添加すると溶接性を低下させる。ま
た、Siは、製品使用時における炭化物の分解凝集を促
進してクリープ強度を低下させる。従って、Si量は、
0.28〜0.50%とする。
【0034】Mn(マンガン)は、製鋼の過程で酸素を
除去する効果があり、また、S(サルファ)と結合して
MnSという化合物を生成し、Sが鋼の強度に及ぼす悪
影響を防止する効果があるが、Mnはオーステナイト生
成元素でもあり、δフェライトの生成を抑制する。しか
し、Mnを多量に含む場合には、炭化物の分解凝集を促
進しクリープ強度を低下させる。このため、Mnは、
0.18〜0.30%未満とする。
【0035】Ni(ニッケル)は、オーステナイト生成
能の大きな元素であるため、δフェライトの生成を抑制
するが、この元素を添加するとオーステナイト化が始ま
る温度であるAC1変態点がNi量1%当たり30°C低
下する。C量0.1%程度を含有する9Cr鋼のAC1
態点は、820〜840°Cであり、焼戻温度はAC1
態点以下に設定されるので、あまり多量にNiを添加す
ると、焼戻温度が低くなり過ぎる。また、Ni量を1%
以上添加すると炭化物の分解凝集を促進してクリープ強
度を低下させる。なお、溶接性については、Ni量が
0.6%以上含有されると、溶接時のワレを促進する。
このため、Niの成分範囲を、0.40〜0.60%と
する。
【0036】Co(コバルト)は、式(1)において、
オーステナイト生成元素である。Coを添加すると、式
(1)に従ってδフェライトが減少するため、Cの下限
値を低減させることができる。CoのAC1変態点への影
響は、Co量1%当たり5°C低下するものであり、N
iよりもはるかに小さい。また、Coは、炭素と結合し
て炭化物を生成するために、鋼のクリープ強度を向上す
る。しかし、Coを多量に添加すると、逆に炭化物の分
解凝集を促進してクリープ強度を低下させるようにな
る。従って、Coの成分範囲は、0.25〜1.50%
とする。
【0037】B(ボロン)は、鋼材の焼入性を高める元
素であり、溶接部のマルテンサイト化を促進するが、多
量に含有すると溶接性が低下してしまう。従って、B量
0.004〜0.006%とする。
【0038】Al(アルミ)は、製鋼時の脱酸材として
最も優れた元素であるが、多量に含ませると炭化物の分
解凝集を促進してクリープ強度を低下させるので、上限
値を0.02%とする。
【0039】Ce(セリュウム)は、希土類金属の一種
であるが、Alと同様に酸化され易い金属であり、脱酸
材としても作用する。しかし、このCeの酸化物は、主
として結晶粒界に介在し、製品の表面に生じる酸化物で
ある主としてCrを主体とする酸化物を固定し剥離しず
らくする効果がある。このため、製品表面の酸化物がプ
ラントの起動停止によって剥離しずらくなり、剥離して
形成される薄片による機器の侵食の促進も防止すること
ができる。また、Cr酸化物を固定することにより、C
rの耐酸化効果を高める。このようなCeによる効果
は、重量%で0.02%から現れるが、材料内部に多量
に含有されると、Ce自体が酸化を促進するところか
ら、その上限値を0.10%とする。その結果、Ceの
成分範囲を、0.02〜0.10%とする。
【0040】以上の検討によって、本発明による高Cr
フェライト系耐熱鋼用溶接材料としての9Cr−2W溶
接材料鋼の化学成分組成を、重量%で、C:0.06〜
0.12、Si:0.28〜0.50、Mn:0.18
〜0.30未満、Cr:8.0〜9.5、Mo:0.3
8〜0.50未満、W:1.50〜1.94、V:0.
15〜0.25、Nb:0.04〜0.08、B:0.
004〜0.006、N:0.030〜0.038、N
i:0.40〜0.60、Co:0.25〜1.50、
Al:0.02以下と選定した。
【0041】なお、上記の化学成分組成に、Ceを重量
%で0.02〜0.10%添加した高Crフェライト系
耐熱鋼用溶接材料も選定した。
【0042】本発明者は、高Crフェライト系耐熱鋼用
溶接材料として、上記の説明から明らかにされた化学成
分を有する鋼材について、容量1トンの高周波電気炉に
よって、Φ310mm×120mmの単量100Kgの
試験体を、A、B、C及びDの4ヒート溶製し、この試
験体から3.2〜4Φのテイグ溶接棒を製作した。な
お、この明細書の発明の詳細な説明の最後に添付した表
1に、製作した溶接棒の化学成分を示す。
【0043】作成されたこれらの溶接棒を用いて、図3
に示すような150巾×150長さ×20厚さの9Cr
−2W鋼母材を溶接し、これよりASME第9章第2条
(Sec IX, Article 2)に規定する溶接継手の引張試験
片、衝撃試験片、溶接施工性確認試験片(Weld Procedu
re Qualification Tests)を加工して、溶接性試験を実
施した。
【0044】この明細書の発明の詳細な説明の最後に添
付した表2〜表4に、各試験結果を示す。これらの表か
ら分かるように、各ヒートから製作した溶接棒で溶接し
た試験片は、総ての規格値を満足した。すなわち、本発
明の溶接性及び機械的性質が良好であることが実証され
た。
【0045】次に、クリープ試験片を溶着金属から加工
してクリープ試験を行なった、図4に、従来から使用さ
れている高Mn系溶接棒と本発明材とのクリープ破断強
度を比較して示す。この図4において、横軸は、ランソ
ン・ミラー(Larson-Miller)パラメータであり、T
は、クリープ試験温度の絶対温度(°K)、tは、破断
時間(h)である。また、縦軸は、クリープ破断応力
(MPa)を示し、各線分が上方に位置するほどクリー
プ破断強度が大きいことを表している。
【0046】この図4に示すように、本発明の溶接材料
のクリープ破断強度は、9Cr−2Wの母材と同等の強
度を示し、従来から本鋼種の溶接に適用されてきた前述
の高Mn系鋼の溶接材料に比べて、はるかに大きな値を
示した。
【0047】なお、Ceの効果は、650°Cの酸化試
験において、Ceを0.04%添加した場合の酸化物の
剥離は、Ceを含まない場合に比べて顕著に減少した。
【0048】
【発明の効果】上述したような化学組成を有する本発明
による高Crフェライト系耐熱鋼用溶接材料により、材
料生成過程においてδフェライトが抑制され、クリープ
強度等が低下しなくなると共に、割れやブローホールの
発生を防止しることにより、高温強度を維持しながら耐
圧性に優れた健全な溶接材料及び溶接部が得られる。
【0049】また、上記耐圧部用鋳鋼材料にCeを添加
することにより、製品表面に生じる酸化物を固定して、
剥離しずらくすることができる。従って、剥離して形成
される薄片による溶接部や機器の侵食の促進も防止する
ことができる。
【0050】さらに、このような高Crフェライト系耐
熱鋼用溶接材料を例えば超々臨界圧発電所のような高温
高圧条件で使用される耐圧部等の溶接に使用するテイグ
溶接棒、サブマージアーク溶接棒、溶接用ワイヤ、ある
いは該溶接材料に、さらにアーク安定剤等の被覆材を加
えて被覆アーク溶接棒に適用すると、高温強度及び耐圧
性に優れているため、信頼性の高い溶接部や装置等が得
られる。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】 試験結果から求めたCr当量(Creq%)
とδフェライトとの関係を示す図である。
【図2】 Cr系鋼に関するNの溶解度を示す図であ
る。
【図3】 9Cr−2Wの溶接用母材の形状寸法を示す
図である。
【図4】 本発明に係る溶接棒と9Cr−2W母材、及
び従来の高Mn溶接棒のクリープ破断強度を比較した図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹本 和弘 福岡県北九州市門司区中町1番14号 岡 野バルブ製造株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−187592(JP,A) 特開 平6−262388(JP,A) 特開 平7−80680(JP,A) 特開 昭52−120909(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/30

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学成分が重量%で、C:0.06〜
    0.12、Si:0.28〜0.50、Mn:0.18
    〜0.30未満、Cr:8.0〜9.5、Mo:0.3
    8〜0.50未満、W:1.50〜1.94、V:0.
    15〜0.25、Nb:0.04〜0.08、B:0.
    004〜0.006、N:0.030〜0.038、N
    i:0.40〜0.60、Co:0.25〜1.50、
    Al:0.02以下であり、前記Cr、C及びCo以外
    の前記化学成分が前記各範囲内の平均値となった場合
    に、該Cr、C及びCoが 14Cr−220C−7Co≦100 の関係式を満足する高Crフェライト系耐熱鋼用溶接材
    料。
  2. 【請求項2】 さらに、重量%で、化学成分Ce:0.
    02〜0.10を含有する請求項1に記載の高Crフェ
    ライト系耐熱鋼用溶接材料。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の高Cr
    フェライト系耐熱鋼用溶接材料からなるテイグ溶接棒。
  4. 【請求項4】 請求項1または請求項2に記載の高Cr
    フェライト系耐熱鋼用溶接材料からなるサブマージアー
    ク溶接棒。
  5. 【請求項5】 請求項1または請求項2に記載の高Cr
    フェライト系耐熱鋼用溶接材料からなる溶接ワイヤ。
  6. 【請求項6】 請求項1または請求項2に記載の高Cr
    フェライト系耐熱鋼用溶接材料に、さらに、前記各化学
    成分以外からなるアーク安定剤、スラグ生成剤あるいは
    粘結剤の内の少なくとも一つを含む被覆材を含有する被
    覆アーク溶接棒。
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