JPH10323794A - 9%Cr−1%Mo鋼溶接鋼管の製造方法 - Google Patents

9%Cr−1%Mo鋼溶接鋼管の製造方法

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JPH10323794A
JPH10323794A JP9517598A JP9517598A JPH10323794A JP H10323794 A JPH10323794 A JP H10323794A JP 9517598 A JP9517598 A JP 9517598A JP 9517598 A JP9517598 A JP 9517598A JP H10323794 A JPH10323794 A JP H10323794A
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welding
less
welded
temperature
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JP9517598A
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Kenji Hayashi
謙次 林
Toshifumi Kojima
敏文 小嶋
Michio Hayashida
道雄 林田
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 火力発電プラントの再熱蒸気管や管寄せ用の
高温大径厚肉溶接鋼管等として使用される、Nb、Vを
含有する9%Cr−1%Mo鋼鋼管において、溶接金属
部、溶接熱影響部のクリープ破断強度を母材並に向上さ
せた鋼管を提供することを課題とする。 【解決手段】 9%Cr−1%Mo鋼板から鋼管を製造
するに際して、曲げ加工した鋼板を、重量%で、C:
0.2%以下、Si:0.9%以下、Mn:1.5%以
下、Cr:8〜13%、Mo:0.05〜1.2%、
W:0.3〜3%、かつ、Mo等量(Mo+1/2
W):0.5〜2%を含有する溶接金属となる溶接材料
を用いて管状に溶接した後に、焼きならし処理を100
0℃以上1150℃以下で行った後に焼き戻し処理を7
00℃以上Ac1変態点以下の温度で行うことを特徴と
する、優れた溶接部クリープ破断特性を有する溶接鋼管
の製造方法である。また、この熱処理の後に、更に応力
除去焼鈍を目的とする熱処理を行うこともできる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、火力発電プラント
の再熱蒸気管もしくは管寄せ等としての高温大径溶接鋼
管又は主蒸気管等としての高温配管に使用される、9%
Cr−1%Mo鋼溶接鋼管の溶接部のクリープ破断特性
の改善方法に関する。なおここで、9%Cr−1%Mo
鋼とは、特にクリープ破断強度を含む高温強度の改善を
図った、Nb、Vを含有する9%Cr−1%Mo鋼であ
り、その代表的な化学成分は、C:0.1%、Si:
0.3%、Mn:0.5%、Cr:9%、Mo:1%、
Nb:0.1%、V:0.2%を含有し、残部がFe及
び不可避的不純物からなる鋼である。
【0002】
【従来の技術】火力発電プラントの再熱蒸気管等は、高
温・高圧条件の下で使用されるため、これまで、2.2
5%Cr−1%Mo鋼に代表されるCr−Mo鋼や18
−8系オーステナイト系ステンレス鋼等の耐熱鋼の中か
ら、目的に応じて好ましい材料が選択され、これらの鋼
板より溶接鋼管が製造されてきた。
【0003】例えば、2.25%Cr−1%Mo鋼は、
JIS G3458 「配管用合金鋼鋼管」の規格では
STPA24として、またJIS G4109 「ボイ
ラ及び圧力容器用クロムモリブデン鋼鋼板」の規格では
SCMV4として規格化されている。この鋼は優れた経
済性のみならず溶接性、信頼性も高く、豊富な実績を有
している。
【0004】しかし、クリープ強度を含めた高温強度は
必ずしも十分ではなく、また、Cr量が低いため、耐酸
化性あるいは耐水蒸気酸化性の点では十分とは言えず、
使用温度としては、550℃が実質的な上限温度となっ
ている。
【0005】一方、オーステナイト系の耐熱鋼である1
8−8系ステンレス鋼は、600℃以上の温度において
も高い高温強度を有し、JIS G3463 「ボイラ
・熱交換器用ステンレス鋼鋼管」の規格ではSUS30
4TBとして規格化されている。
【0006】オーステナイト系ステンレス鋼は、溶接
性、耐酸化性、耐水蒸気酸化性も良好であり、さらに高
温において長時間曝された後も高い靱性を有するため、
使い易い材料とされておりこの鋼も実績は豊富である。
【0007】しかし、オーステナイト系ステンレス鋼は
熱膨張係数が大きいこと、応力腐食割れ感受性がCr−
Mo鋼のようなフェライト系の耐熱鋼に比較して高いこ
と、また、材料価格が高価であること等の欠点を有して
いる。
【0008】こうした既存の材料の欠点を解決するため
に、高温強度を向上させる目的でNb、Vを含有したフ
ェライト系の材料である9%Cr−1%Mo鋼が開発さ
れている。この鋼は、600℃においてもオーステナイ
ト系ステンレス鋼に匹敵する高温強度を有するととも
に、熱膨張係数が小さい、耐力が高い、応力腐食割れが
起きにくい、耐酸化性に優れる等の長所を有する。この
9%Cr−1%Mo鋼は、既にASTM規格 A213
T91/P91あるいはA387−91として規格化
され、経済的な材料として普及しつつある。
【0009】しかしながら、9%Cr−1%Mo鋼は、
溶接した場合、溶接熱影響部に軟化を生ずる。このため
溶接継手部のクリープ破断試験を実施すると、実際の使
用環境に近い高温長時間側の試験条件では、溶接熱影響
部の軟化域で破断が起こり、溶接継手部のクリープ破断
強度は母材のそれと比較して低下することが知られてい
る。
【0010】特に、火力発電プラントの再熱蒸気管や管
寄せ等として使用される高温大径厚肉溶接鋼管等では、
縦シーム溶接部が存在し、溶接継手部のクリープ破断強
度の低下は特に問題となる。また、鋼管の周溶接部や配
管同士の溶接部においても、溶接継手のクリープ破断強
度が問題となる。
【0011】したがって、溶接部を含む構造物を設計す
る際には、溶接継手部のクリープ破断強度の低下を考慮
して材料全体を厚肉化せざるを得ず、Nb、Vを含有す
る9%Cr−1%Mo鋼自体の優れたクリープ破断強度
そのものを十分に生かし切れない。
【0012】このため、Cr−Mo鋼の溶接熱影響部の
軟化の発生を防止する発明がいくつかなされているが、
その多くは熱処理方法による改善である。例えば、特公
平6−92616号公報は、変態点以上の局部加熱を伴
う溶接や熱間曲げ加工が実施されるCr−Mo鋼におい
て、焼きならし後の焼き戻し処理温度を、材料のA1変
態点よりも150℃低い温度以下で行い、溶接もしくは
熱間加工後に、更に上記変態点より100℃低い温度以
上で後熱処理する方法に関するものである。
【0013】しかし、この発明においては、溶接熱影響
部において顕著に出現する局部軟化は改善されるもの
の、溶接熱影響部の硬さは依然として母材の鋼よりも低
く、溶接継手部のクリープ破断強度は母材の水準には至
らないものと推察される。
【0014】また、溶接部熱影響部の軟化を防止して溶
接継手部のクリープ破断強度を向上させる方法として、
特公平7−94070号公報が開示されている。この発
明は、配管同士を溶接した後に、溶接部近傍を焼きなら
し及び焼き戻し処理を行い、溶接した部材の熱影響部に
生ずる軟化部を、応力集中部より離れた位置に移動させ
る方法である。
【0015】この場合、熱影響部は再度焼きならし−焼
き戻し処理が施されるため、溶接熱影響部の硬さは母材
の鋼の水準にまで回復し、したがってクリープ破断強度
も母材の水準にあることが窺える。
【0016】しかし、溶接継手部には、当然のことなが
ら、母材の鋼と当該溶接熱影響部に加え、溶接金属部が
含まれており、これらが一体となって、所要の特性を有
しなければならない。しかしこれらの発明においては、
溶接金属部についての検討はなされていない。
【0017】発明者らは、9%Cr−1%Mo鋼におい
て、溶接熱影響部に生じる軟化も問題であり、その改善
を必要とするが、一方現在使用されている共金系溶接材
料、すなわち母材である鋼の化学成分とほほぼ同様の化
学組成を有する溶接材料で溶接し、溶接継手部のクリー
プ破断試験を実施すると、母材よりも低い破断強度で溶
接金属部が破断し、溶接金属のクリープ破断強度が問題
となることを知見している。
【0018】これは、この9%Cr−1%Mo鋼用の溶
接材料が、溶接後応力除去焼鈍の熱処理のみが施されて
使用されることを前提としたものであり、母材と同様の
熱処理、すなわち焼ならし−焼戻し処理を受けることを
想定して成分設計されたものではないためである。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、火力発電プ
ラントの再熱蒸気管や管寄せ用の高温大径厚肉溶接鋼管
等として使用される、9%Cr−1%Mo鋼溶接鋼管に
おいて、溶接継手部のクリープ破断強度を母材並に向上
させること目的として、適切な溶接材料を用いた鋼管の
溶接方法及び熱処理方法を提供するものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】発明者らは、9%Cr−
1%Mo鋼溶接鋼管について、溶接材料と溶接熱影響
部、及びこれらの熱処理方法が溶接継手部のクリープ破
断強度に及ぼす関係について、詳細に検討した。その結
果、溶接金属の化学組成が重量%で、Cr:8〜13
%、Mo:0.05〜1.2%、W:0.3〜3%、か
つ、Mo当量(Mo+1/2W):0.5〜2%となる
溶接材料を用いて溶接し、その後、溶接部全体もしくは
溶接部近傍を1000℃以上1150℃以下の温度で焼
ならしを行い、次いで700℃以上Ac1変態点以下の
温度で焼き戻しを行うことにより、溶接継手部のクリー
プ破断強度を母材並に向上させることを見いだし、下記
本発明をするに至った。
【0021】第1の発明は、9%Cr−1%Mo鋼板を
管状に曲げ加工し、重量%で、C:0.2%以下、S
i:0.9%以下、Mn:1.5%以下、Cr:8〜1
3%、Mo:0.05〜1.2%、W:0.3〜3%、
かつ、Mo当量(Mo+1/2W):0.5〜2%を含
有し、残部がFe及び不可避的不純物である溶接金属と
なる溶接材料を用いて管状に溶接した後に、焼きならし
処理を1000℃以上1150℃以下で行い、その後に
焼き戻し処理を700℃以上Ac1変態点以下の温度で
行うことを特徴とする9%Cr−1%Mo鋼溶接鋼管の
製造方法である。本発明により、鋼管の溶接部は母材の
鋼と同様の熱処理を受けるため、溶接熱影響部の軟化の
発生を防止でき高いクリープ破断強度を有する溶接継手
部を得ることができる。このため、信頼性の高い火力発
電プラントの再熱蒸気管や管寄せ等として使用される高
温大径厚肉溶接鋼管等が製造できる。
【0022】第2の発明は、前記溶接後、700℃以上
760℃以下の温度で応力除去焼鈍処理を行い、その後
前記焼きならし処理及び前記焼戻し処理を行うことを特
徴とする9%Cr−1%Mo鋼溶接鋼管の製造方法であ
る。本発明により、溶接後の残留応力を軽減することが
できるので、その後の熱処理作業における種々の問題の
発生を抑えることができる。
【0023】第3の発明は、9%Cr−1%Mo鋼板を
管状に曲げ加工し、重量%で、C:0.2%以下、S
i:0.9%以下、Mn:1.5%以下、Cr:8〜1
3%、Mo:0.05〜1.2%、W:0.3〜3%、
かつ、Mo当量(Mo+1/2W):0.5〜2%を含
有し、残部がFe及び不可避的不純物である溶接金属と
なる溶接材料を用いて管状に溶接した後、溶接鋼管を曲
がり管に加工し、次いで焼きならし処理を1000℃以
上1150℃以下、焼き戻し処理を700℃以上Ac1
変態点以下の温度で行うことを特徴とする9%Cr−1
%Mo鋼溶接鋼管の製造方法である。本発明により、溶
接鋼管において直管からエルボー等の曲がり管を製造す
るに際して、当該曲がり管の溶接部においても高いクリ
ープ破断強度を得ることができる。
【0024】第4の発明は、前記溶接により管状に溶接
した後、当該溶接鋼管を1000℃以上1150℃以下
の温度に加熱した後曲がり管に加工し、次いで焼き戻し
処理を700℃以上Ac1変態点以下の温度で行うこと
を特徴とする9%Cr−1%Mo鋼溶接鋼管の製造方法
である。本発明により、曲がり管の製造において、熱間
加工と焼きならし熱処理を兼用することができるため、
製造コストの低減を実現することができる。
【0025】第5の発明は、前記熱処理を行った溶接鋼
管に、更に700℃以上760℃以下の温度で応力除去
焼鈍処理を行うことを特徴とする9%Cr−1%Mo鋼
溶接鋼管の製造方法である。本発明により、溶接継手部
分が、その後冷間加工あるいは温間加工を受けたり、補
修のための溶接を施された場合に生じる、残留応力や残
留歪みを除去できるので、施工に際しての材料の信頼性
がより高まる。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明の基本となる考え方を以下
に述べる。9%Cr−1%Mo鋼は、C:0.1%、S
i:0.3%、Mn:0.5%、Cr:9%、Mo:1
%、Nb:0.1%、V:0.2%を含有する鋼であ
り、鋼の製造段階においてはNb、Vの炭窒化物を微細
に分散させて、要求される高温強度、クリープ特性を向
上させている。この鋼を溶接すると、溶接の際の熱サイ
クルにより、炭窒化物の凝集粗大化により、溶接熱影響
部の硬さが低下する。
【0027】従って、まず第1に、溶接熱影響部の軟化
防止については、鋼管溶接後に、当該溶接熱影響部を再
度焼ならし処理を行い凝集粗大化した炭窒化物を再固溶
させ、次いで焼戻し処理により再び微細に析出させるこ
とにより解決できる。これにより、溶接熱影響部の硬さ
およびクリープ破断強度を母材並に回復させることが可
能であり、その結果溶接熱影響部の性能は母材と同等と
なる。すなわちこの熱処理を溶接鋼管全体で行うと、熱
処理による軟化域は生成せず、母材および熱影響部の性
能は同等となる。
【0028】なお、この熱処理を溶接鋼管全体ではなく
溶接部近傍のみについて場合は、溶接部の母材および熱
影響部の性能は同等となるものの、溶接部から離れた位
置に熱処理の熱履歴に起因した軟化域が形成される。熱
処理による軟化域は、応力集中部から離れた位置に移動
されることにより、構造上問題とならなくすることが可
能である。
【0029】第2は、溶接金属部の性能の改善である。
前記の方法で、溶接鋼管の溶接熱影響部を母材と同等の
水準に回復させたにしても、9%Cr−1%Mo鋼に、
これまで用いられてきた共金系の溶接材料で溶接した場
合には、溶接部の焼きならし−焼戻し処理を行うと、溶
接金属のクリープ破断強度は母材よりも低下してしま
う。
【0030】これを改善するには、焼きならし−焼き戻
し処理において、優れた高温強度を有する溶接材料が必
要であるが、一方、高温強度を確保するために、合金成
分を多く含有する溶接材料は、溶接時の高温割れが発生
しやすくなる。これの解決方法としては、溶接材料中の
Cr含有量を溶接割れが起こり難い量に制限して高温強
度を確保するために、Mo及びWの含有が有効である。
すなわち、Cr:8〜13%、Mo:0.05〜1.2
%、W:0.3〜3%、かつ、Mo当量(Mo+1/2
W):0.5〜2%を含有する溶接金属となる溶接材料
を用いて溶接することで、初めて溶接部全体として母材
と同等のクリープ破断が得られることになる。
【0031】以下に、母材の化学成分との関係で溶接金
属部の化学成分の限定した理由を述べる。Cは、強度を
確保するために必要な元素であるが、過剰に含有する
と、溶接金属の靭性を損なうため、その上限を0.2%
とする。
【0032】Siは、溶接金属部の強度を向上するとと
もに、脱酸にも寄与するために必要な元素であるが、過
剰に含有すると、溶接金属部の靭性を損なうので、その
上限を0.9%とする。
【0033】Mnは、溶接金属部の強度及び靭性を向上
する必須の元素であるが、過剰に含有すると、高温強度
を低下させるので、その上限を1.5%とする。
【0034】Crは、クリープ強度を含めたクリープ破
断強度を含めた高温強度を高め、また、耐酸化性あるい
は耐水蒸気酸化性の点でも好ましい元素であるが、焼き
ならし−焼き戻し処理を前提とした高温強度の確保の観
点から、また過剰に含有すると溶接金属部の割れ感受性
が高まるため、適切な含有量として、8〜13%とす
る。
【0035】Moは、高温強度を高める効果的な元素で
あるが、0.05%未満では高温強度確保の点で十分で
はなく、過剰に含有すると靭性を低下させるので、適切
な含有量として0.05〜1.2%とする。
【0036】Wは、クリープ特性向上の点で極めて好ま
しい元素である。しかし、0.3%未満では、その効果
が十分とはいえず、過剰に含有すると靭性を低下させる
ので、適切な含有量を0.3〜3%とする。
【0037】Mo及びWは、いずれも炭化物を形成する
元素であり、Wの含有の効果はMoの1/2であること
から、前記Mo、Wの含有量の範囲において、Mo当量
(Mo+1/2W)を0.5〜2%の範囲とする。これ
は、0.5%未満では炭化物形成量が少なく、高温強度
の向上に不十分であり、また2%を超えると靭性が低下
するからである。
【0038】火力発電プラントの再熱蒸気管や管寄せ用
の高温大径厚肉溶接鋼管を製造するに際しては、厚鋼板
を冷間又は熱間で曲げ加工して管状に成形し、次いで縦
シームを溶接する。上記の化学組成を有する溶接金属と
なるように溶接した溶接鋼管について、溶接後の熱処理
条件の限定理由について述べる。焼きならし処理は、溶
接前の母材と同等の性能を確保するために、1000℃
以上1150℃以下の温度とする。1000℃未満で
は、焼きならしによる組織の均一化が十分ではなく、ま
た、1150℃を超えると、結晶粒が粗大化して靭性が
劣化するためである。
【0039】焼戻し処理は、700℃以上Ac1変態点
以下とする。炭化物を十分に生成させるためには700
℃以上の温度が必要であり、また、高温すぎると、部分
的にフェライト−オーステナイト変態が生じ、靭性に好
ましくない組織が生成するために、その上限をAc1変
態点とした。
【0040】応力除去焼鈍処理温度は700℃以上76
0℃以下の温度とする。応力除去焼鈍は、冷間加工等に
よる歪みや溶接残留応力を除去するためのものである。
焼きならし−焼き戻し処理で得られた鋼板あるいは溶接
部の所定の機械的性質を損なわないためには、焼き戻し
処理温度と同温度以下で行う必要があるため、上記温度
範囲とした。なお、応力除去焼鈍は、溶接後の鋼管につ
いて行うことにより、溶接残留応力を直接に軽減するこ
とが可能であり、その後の熱処理作業における種々の問
題の発生を抑えることができる。
【0041】本発明は、主として火力発電プラントの再
熱蒸気管等として使用されるいわゆる直管を想定した鋼
管の製造方法である。しかし、本発明の溶接鋼管に施す
熱処理方法は、直管のみならずいわゆるエルボーのよう
な曲がり管の製造にも応用することが可能である。すな
わち、かかる曲がり管の製造においては、直管(溶接鋼
管)を製造した後、通常は熱間加工又は温間加工により
大きな曲率を有する曲がり管に成形する。従って、曲が
り管加工後に1000℃以上1150℃以下の温度域で
焼きならし処理を行い、次いで700℃以上Ac1変態
点以下の温度域で焼戻し処理を行うことにより、直管と
同様の溶接部のクリープ破断特性を有する曲がり管を製
造することができる。
【0042】また曲がり管製造を熱間加工で行う場合
は、1000℃以上1150℃以下の温度域に加熱後に
曲がり管加工を行うことにより、次の焼きならし処理を
省略してその後の焼戻し処理を行うことも可能である。
この場合は、熱処理工程を1回省くことができるので、
省エネルギ効果とコスト低減効果が期待できる。なおこ
れらの場合の温度範囲を限定した理由は上記と同様であ
る。
【0043】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。図1とし
て示す表1及び表2に、溶製したNb、Vを含有する9
%Cr−1Mo鋼の化学成分と鋼管の製造方法を示す。
いずれの鋼も、ASTM A387−91の規格を満足
する化学成分である。鋼A及び鋼Bについては、熱間
(1050℃加熱)にて鋼管に成形し、また鋼Cは、鋼
板の段階で曲げ延性の向上を目的として仕上げ温度を制
御して圧延したものであり、冷間で鋼管に成形した。
【0044】溶接鋼管の製造は、図2として示す表3で
示す化学成分を有する溶接金属となるように溶接を行っ
た。ここで、溶接材料が9Cr系のものは従来の共金系
の溶接材料であり、一方、12Cr系または9Cr−W
系は、本発明の溶接材料である。
【0045】鋼管の溶接方法は、火力発電プラントの施
工方法として一般的に用いられている、被覆アーク溶接
(以下「SMAW」という。)、サブマージアーク溶接
(以下「SAW」という。)及びガスシールド非消耗電
極式アーク溶接法であるティグ溶接(以下「TIG」と
いう。)の3種類の溶接方法を用いた。図3として示す
表4に、SAWおよびTIGの溶接条件を示す。
【0046】これらの9%Cr−1%Mo鋼の溶接鋼管
について、溶接部から試験片を採取して、溶接部の継手
強度、溶接部のクリープ破断試験及び溶接金属の衝撃試
験を行った。なお、溶接部のクリープ試験は、試験片中
に母材、溶接熱影響部及び溶接金属の全てを、一の試験
片に含むものである。結果を図4として示す表5に示
す。
【0047】実施例1は、鋼Aについて熱間成形−焼き
戻し後に応力除去焼鈍(以下「PWHT」という。)を
施した母材の結果であり、試験値の基準となるものであ
る。
【0048】実施例2及び実施例3は、鋼Aについて、
従来の9Cr系溶接材料を用いてSAW溶接を行った比
較例である。ここで実施例2は、溶接後PWHTを施し
た鋼管であり、溶接部の継手クリープ試験の結果は溶接
熱影響部(HAZ)で破断し破断強度も低い。また、溶
接金属部の靭性も、この種の材料に一般的に要求される
水準をかろうじて満たすレベルである。また、実施例3
は、同じ鋼管について、溶接後焼きならし−焼き戻しを
行ったものであり、溶接金属部の化学組成が適切でない
ため、継手クリープ試験は溶接金属部で破断し破断強度
も低い。ただし、溶接部は焼きならし処理されているた
め、靭性の向上が認められる
【0049】実施例4から実施例6は、鋼Aについて、
本発明の溶接材料である12%Cr系の溶接材料を用い
てSAW溶接を行った例である。実施例4は、溶接後P
WHTのみを施した鋼管であるため、溶接部の継手クリ
ープ試験は溶接熱影響部(HAZ)で破断し破断強度も
低い。また、溶接金属の靭性も実施例2と同程度であり
十分とはいえない。一方、実施例5は、溶接後本発明の
熱処理を施したものである。溶接部の継手クリープ試験
の結果は母材部で破断しており、継手のクリープ破断強
度も、母材部の結果(実施例1)よりも高く、本発明の
効果が窺える。また、溶接金属部の靭性も良好である。
【0050】実施例6は、実施例5の熱処理後に更にP
WHTを行ったものであり、実施例5と同等のクリープ
破断強度及び靭性を有し、PWHTによってもクリープ
特性への悪影響は認められないことから、本発明の熱処
理を施した後に、例えば補修溶接等が必要となった場合
の残留応力等を軽減する方法として適している。
【0051】また、実施例13は、Cr含有量を従来の
共金系と同様に抑えその代わりにWを含有させた溶接材
料(9%Cr−W系)を用いて溶接した例である。実施
例5と同様の熱処理を施したものであるが、実施例5と
同様の優れた継手クリープ破断強度と継手靭性を有して
いる。Cr含有量を抑えた分、溶接に際しての高温割れ
感受性を低減できる利点を有する。
【0052】実施例7は、鋼Aについて、12%Cr系
の溶接材料を用いTIG溶接により溶接鋼管とした後に
焼きならし−焼き戻し−PWHT後の結果である。継手
クリープ破断強度は実施例1の母材と同様に高く、ま
た、TIG溶接のため溶接金属部の靭性は極めて高い。
【0053】実施例8〜10は、鋼BについてSMAW
で溶接鋼管を製造した結果である。本発明の溶接材料に
て溶接後熱処理を施した実施例9は、比較例である実施
例8に比べて、継手クリープ破断強度が高い。また実施
例10は、溶接鋼管を焼きならし温度に加熱後、曲がり
管加工を施し、その後焼戻し処理を行った例であるが、
実施例9と同様の良好なクリープ破断特性と溶接金属部
の靭性を有する。
【0054】実施例11及び12は、本発明の溶接材料
を用いたものであるが、本発明の熱処理を施すこと(実
施例12)で、継手クリープ破断強度と溶接金属部の靭
性が飛躍的に向上することができる。
【0055】
【発明の効果】以上のように、本発明である溶接材料を
用いて、Nb、Vを含有する9%Cr−1Mo鋼の溶接
鋼管を製造しその後、焼きならし−焼き戻し熱処理を行
うことで、従来得られなかった高い継手のクリープ強度
を実現することが可能である。また、継手クリープ試験
の破断位置は、局部的な溶接金属部あるいは熱影響部を
回避して、母材部で破断しており、溶接構造物としての
安全性が高くなる。また、本熱処理後に、更に応力除去
焼鈍(PWHT)を行っても、溶接鋼管の継手のクリー
プ破断強度にはなんら影響を与えず、構造物の安全性・
信頼性が高いと言える。
【0056】以上のことから、本発明の方法によれば、
火力発電プラントの再熱蒸気管や管寄せ用の高温大径厚
肉溶接鋼管等として使用される9%Cr−1%Mo鋼鋼
管において、一般的に母材の鋼よりも脆弱と考えられる
鋼管の溶接継手部においても、高いクリープ破断強度が
得られるので、構造物の信頼性向上に寄与するのみなら
ず、建設コストの低減に貢献するものといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に用いた鋼の化学成分(表1)及び鋼板
・鋼管の製造方法(表2)を示す図である。
【図2】実施例に用いた溶接鋼管の継手部の溶接金属部
の化学成分(表3)を示す図である。
【図3】実施例に用いた溶接鋼管を製造するのに用いた
溶接方法(表4)を示す図である。
【図4】実施例のクリープ破断強度を含む諸特性を示す
図(表5)である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C21D 9/08 C21D 9/08 F 9/50 101 9/50 101A // C22C 38/00 301 C22C 38/00 301Z 38/22 38/22

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 9%Cr−1%Mo鋼板を管状に曲げ加
    工し、重量%で、C:0.2%以下、Si:0.9%以
    下、Mn:1.5%以下、Cr:8〜13%、Mo:
    0.05〜1.2%、W:0.3〜3%、かつ、Mo当
    量(Mo+1/2W):0.5〜2%を含有し、残部が
    Fe及び不可避的不純物である溶接金属となる溶接材料
    を用いて管状に溶接した後に、焼きならし処理を100
    0℃以上1150℃以下で行い、その後に焼き戻し処理
    を700℃以上Ac1変態点以下の温度で行うことを特
    徴とする9%Cr−1%Mo鋼溶接鋼管の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記溶接後、700℃以上760℃以下
    の温度で応力除去焼鈍処理を行い、その後前記焼きなら
    し処理及び前記焼戻し処理を行うことを特徴とする9%
    Cr−1%Mo鋼溶接鋼管の製造方法。
  3. 【請求項3】 9%Cr−1%Mo鋼板を管状に曲げ加
    工し、重量%で、C:0.2%以下、Si:0.9%以
    下、Mn:1.5%以下、Cr:8〜13%、Mo:
    0.05〜1.2%、W:0.3〜3%、かつ、Mo当
    量(Mo+1/2W):0.5〜2%を含有し、残部が
    Fe及び不可避的不純物である溶接金属となる溶接材料
    を用いて管状に溶接した後、溶接鋼管を曲がり管に加工
    し、次いで焼きならし処理を1000℃以上1150℃
    以下、焼き戻し処理を700℃以上Ac1変態点以下の
    温度で行うことを特徴とする9%Cr−1%Mo鋼溶接
    鋼管の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記溶接により管状に溶接した後、当該
    溶接鋼管を1000℃以上1150℃以下の温度に加熱
    した後曲がり管に加工し、次いで焼き戻し処理を700
    ℃以上Ac1変態点以下の温度で行うことを特徴とする
    9%Cr−1%Mo鋼溶接鋼管の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記熱処理を行った溶接鋼管に、更に7
    00℃以上760℃以下の温度で応力除去焼鈍処理を行
    うことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載
    の9%Cr−1%Mo鋼溶接鋼管の製造方法。
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