JPH0913150A - 溶接継手のクリープ特性に優れた高クロムフェライト鋼 - Google Patents
溶接継手のクリープ特性に優れた高クロムフェライト鋼Info
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Abstract
強度をあわせ持つ、高クロムフェライト鋼を得る。 【解決手段】 重量%で、C:0.05〜0.18%、
Si:0.1〜0.5%、 Mn:≦0.2%、S:≦
0.005%、Cu:0.5〜3%、Ni:0.05〜
1%、Cr:10〜13%、(Mo+W/2):0.5
〜3%、V:0.1〜0.5%、Nb:0.05〜0.
25%、B:0.001〜0.02%、Al:0.00
3〜0.04%、N:0.04〜0.15%を含有し、
さらに選択元素として、Co、Ti、Ca、Mg、RE
Mを含有する高クロムフェライト鋼。
Description
再熱蒸気管用大径溶接鋼管等の、550〜650℃前後
の温度域で使用される、PWHT(溶接後熱処理)後の
高温強度、靱性、耐酸化性、耐水蒸気酸化性および熱間
加工性に優れた高クロムフェライト鋼に関する。
の550〜650℃前後の温度域では、2.25%Cr
−1%Mo鋼、9%Cr−1%Mo−V−Nb鋼や18
−8系オーステナイト系耐熱鋼が使用されており、使用
環境や経済性等を加味してこれらの内からもっとも好ま
しい材料が選択されてきた。
配管用継目無鋼管としてはSTPA24が知られてお
り、またボイラ、圧力容器用鋼板としてはSCMV4が
知られている。この鋼は優れた溶接性、信頼性、経済性
を持ち、他を寄せつけない豊富な実績を有している。
高温強度)は他の系の鋼に比較してやや劣っている。ま
た、Cr量が低いため、耐酸化性、耐水蒸気酸化性が十
分ではなく、鋼の温度で550℃が実質的な上限であ
る。
4鋼板、配管用継目無鋼管のSUS304TP等は、6
00℃以上の温度において高い高温強度を有する。ま
た、溶接性、耐酸化性、耐水蒸気酸化性も良好であり、
さらに高温において長時間使用した後も高い靱性を有し
ている。
感受性がフェライト系耐熱鋼に比較して高いこと、高価
である等の欠点がある。ただし、総合的に判断すると使
いやすい材料とされておりこの鋼も実績は豊富である。
0℃においてオーステナイト系ステンレス鋼に匹敵する
高温強度を持つ鋼として開発された。この鋼はASTM
A213 T91として知られており、前2者に比較
すると実績は少ないが、経済的な材料として普及しつつ
ある。ただし、Cr量がSUS304に比較して低く、
600℃以上の温度における耐酸化性、耐水蒸気酸化性
は必ずしも十分ではない。また、溶接部の高温強度の確
保が難しいという欠点もある。
オーステナイト系鋼にない長所がある。すなわち、熱膨
張係数が小さいこと、耐力が高いこと、応力腐食割れが
起きにくいこと、酸化スケールが剥離しにくいこと等で
ある。また、合金元素の含有量が少ないことは省資源の
点からも注目されており、経済性も高い。
つつ、高温強度、耐酸化性、耐水蒸気酸化性を改善した
鋼として、Cr量を12%程度に上げた高クロムフェラ
イト鋼が、ボイラーの伝熱用鋼管を主たる使用対象とし
て多数開発された。
報、特開平3−97832号公報、特開平5−3113
45号公報等に開示された技術がある。これらはいずれ
も600℃以上の高温環境下においても十分な強度を持
ち、耐酸化性、耐水蒸気酸化性にも優れた鋼とされてい
る。
高クロムフェライト鋼および上記した公報に開示されて
いる鋼は、必ずしも靱性、溶接熱影響部の強度、価格等
の問題を総合的に、かつ十分に解決した鋼とはなってい
ない。たちえば、火力プラントの建設時において必須で
ある溶接後の長時間PWHTを受けた後の溶接継ぎ手等
のデータは示されていない。
て、オーステナイト系耐熱鋼に比較して靱性が劣るこ
と、溶接熱影響部の高温強度が母材部に比較して著しく
低いことの2点がある。また、これらの特性が長時間の
PWHTにより、一段と劣化することも重大な問題であ
る。
確保と、溶接熱影響部の強度の確保は一般的には両立が
困難である。例えば、靱性の確保からはマルテンサイト
相1相の組織とすることが望ましいが、マルテンサイト
相1相の組織にすると溶接熱影響部の高温強度が母材部
に比較して著しく低下する傾向がある。
めには、例えばマルテンサイト相中にδ−フェライト相
を含む2相組織とすることが有効な場合もあるが、2相
組織の鋼とすると靱性が著しく低下することが多い。こ
のδ−フェライト相の靱性に対する悪影響はPWHTに
より大きくなる。
イト鋼においては、その特性の重点を、靱性の確保と溶
接熱影響部の高温強度の確保のいずれかに的を絞らざる
を得ず、このことも高クロムフェライト鋼が広く普及す
る上での障害となっていた。また、高クロムフェライト
鋼では、性能を得るために多種類の元素を含有させる
が、特にCuは熱間圧延や熱間加工時に必要な熱間延性
を低下させることが知られており、この熱間延性の確保
も重要な課題である。
テナイト系耐熱鋼に匹敵する溶接熱影響部高温強度と靱
性を有し、さらに先に示した高クロムフェライト鋼の持
つ種々の長所も持ち、かつ、優れた熱間延性を備えた高
クロムフェライト鋼の開発が待たれていた。
ロムフェライト鋼において、高い靱性と溶接熱影響部の
高温強度の両立させる課題の解決にとりくみ、マルテン
サイト相1相の組織にすることでPWHT後の靱性を確
保しつつ、Mn量を厳しく制限することにより、PWH
T後の溶接熱影響部の強度の低下も最小限に抑えること
が可能であり、さらに、低S化とCaまたはMg、希土
類元素の添加により熱間加工性(延性)が十分に確保可
能との知見を基に研究を重ねて本発明を完成させたもの
であり、第1発明は、重量%で、C:0.05〜0.1
8%、Si:0.1〜0.5%、Mn:≦0.2%、
S:≦0.005%、Cu:0.5〜3%、Ni:0.
05〜1%、Cr:10〜13%、(Mo+W/2):
0.5〜3%、V:0.1〜0.5%、Nb:0.05
〜0.25%、B:0.001〜0.02%、Al:
0.003〜0.04%、N:0.04〜0.15%を
含有し、残部が実質的にFeよりなる溶接継手のクリー
プ特性に優れた高クロムフェライト鋼である。
を第1発明の範囲含有し、さらに重量%でCo:0.5
〜3%を含有し、残部が実質的にFeよりなることを特
徴とする溶接継手のクリープ特性に優れた高クロムフェ
ライト鋼である。第1発明の範囲のC、Si、Mn、
S、Cu、Ni、Cr、(Mo+W/2)、V、Nb、
B、Al、Nを含有し、さらに重量%でCo:0.5〜
3%、Ti:0.005〜0.15%のいずれか又は両
方を含有し、残部が実質的にFeよりなることを特徴と
する溶接継手のクリープ特性に優れた高クロムフェライ
ト鋼である。
発明の各元素をそれぞれの発明の範囲含有し、さらに重
量%でTi:0.005〜0.15%を含有し、残部が
実質的にFeよりなることを特徴とする溶接継手のクリ
ープ特性に優れた高クロムフェライト鋼である。
3発明のいずれかの各元素をそれぞれの発明の範囲含有
し、さらに重量%でCa:0.0005〜0.005
%、Mg:0.003〜0.5%、希土類元素:0.0
01〜0.3%の内の1種または2種以上を含有し、残
部が実質的にFeよりなることを特徴とする溶接継手の
クリープ特性に優れた高クロムフェライト鋼である。
ェライト鋼は従来より多数開発されてきた。それらはい
ずれも耐酸化性、耐水蒸気酸化性を確保するための11
%程度のCrおよび若干量のSiと、高温強度を確保す
るための、Mo、W、C、N、B、Cu、Ni、Co、
Nb、V、(Cr)、脱酸元素のSi、Alを含んでい
る。
は上記した様に多種にわたるが、これは各々の元素の作
用が異なり、それらの相加、相乗的な効果を目的として
いる。これらの合金元素を用いて高クロムフェライト鋼
の成分設計を行なうが、その場合にはまず、鋼の組織を
マルテンサイト相1相の組織にするか、δ−フェライト
相を含む組織とするかを決定する。
ーステナイト相形成元素の割合を多くし、溶接熱影響部
の高温強度を重視する場合は、フェライト相形成元素の
割合を多くすることが行なわれてきた。これに対して、
本発明は上記したように、Mn量を厳しく制限すること
により、マルテンサイト相1相の組織の鋼においても溶
接熱影響部の高温強度の低下を最小限にしたものである
が、この様な検討は従来は行なわれてこなかった。
下の記述はいずれも焼ならし(または熱間圧延後冷却)
焼戻し後にPWHTを行なった場合に関するものであ
る。
b、Tiと炭窒化物を形成し、高温強度を高める作用を
持つ。また、オーステナイト相の安定化元素であり、鋼
をマルテンサイト組織にする重要な元素である。これら
の効果はC量が0.05%未満では十分でない。一方、
C量が高すぎ0.18%を越えると加工性、靱性、溶接
性が下がる等の問題も生じる。したがってC量の範囲は
0.05〜0.18%とする。
た、耐酸化性、耐水蒸気酸化性を上げる効果もある。そ
の含有量が0.1%未満の場合は脱酸が十分に行なわれ
ず、靱性や高温強度が確保されない。一方、Siは鋼の
脆化を促進する元素でもある。特に、高温環境に長時間
さらされる場合の脆化を促進するが、その悪影響はSi
量が0.5%を越えると著しくなる。したがってSi量
の範囲は0.1〜0.5%とする。
すべき元素である。従来、Mnは鋼に必須の添加元素と
して、相当量を添加し、また含有させることが半ば習慣
的に続けられてきた。しかし、このMnの効果および影
響は必ずしも厳密に検討されてきたわけではない。
粗大化を助長する結果、母材の靱性を低下させるのみな
らず、溶接熱影響部の高温強度も低下させることを見い
だした。また、溶接熱影響部の高温強度に対する影響に
比較すると小さくはあるが、母材のクリープ破断強度も
かなり低下する。
くなり、0.2%を越えると顕著になる。したがってM
n量は0.2%を上限とする。なお、本発明において
は、Mn量の下限は規定しない。Mnは添加しない場合
も例えばスクラップや、N等の母合金および炉壁からも
混入する。
の製鋼上の工夫、さらには、前に溶解する鋼(前チャー
ジ)を限定すると言った配慮が必要である。なお、Mn
量の低減化による効果は0.03%程度で飽和し、それ
以下に下げることはかえって経済性を損なうことがあ
る。
素とされており、また、オーステナイト相を安定化し、
焼入れ後の組織をマルテンサイト相1相の組織にする上
でも有用な元素である。しかし、熱間加工性の確保や、
オーステナイト相の安定化に必須の添加元素ではない。
は、S量が低い場合は必ずしも必要ではないことを見い
だした。たとえば、S量が0.01%以下の場合は、M
n量が0.01%程度の場合も十分な加工性を有してお
り、S量がさらに低くなれば、実質的にMnを含有させ
る必要がない。
ることが好ましい。熱間加工性を特に重要視する本発明
の場合には、S量は0.005%以下とする。
な元素である。Cuは焼戻し処理中に析出し、さらに、
高温環境において使用中にも析出して鋼の高温強度を高
める。特に、溶接熱影響部の強度の確保に有効である
が、この効果はCu量が0.5%未満の場合は明瞭でな
い。
し、鋼をマルテンサイト組織1相にする効果や対酸化性
を上げる効果もあるが、これらの効果も0.5%程度か
ら認められる様になる。一方、Cuは熱間加工性を劣化
させる元素でもある。この悪影響はCu量が3%を越え
ると著しくなる。したがって、Cu量の範囲は0.5〜
3%とする。
相を安定化し、鋼をマルテンサイト組織にする効果およ
び対酸化性を上げる効果を有する。また、熱間加工性に
対するCuの悪影響を減少させる効果もある。
明瞭になる。一方、Niは鋼のAc1変態点を下げる元素
であり、Niを多量に含有させると、必然的に焼戻し温
度を低くすることとなり、その結果、高温強度の確保が
困難になる。また、高価な元素であり経済性からも1%
以下に制限することが妥当である。したがって、Ni量
の範囲は0.05〜1%とする。
確保の上で必須の元素である。このための下限は10%
である。また、炭窒化物を形成する元素であり、高温強
度の確保の面においても重要な元素である。一方、Cr
はフェライト相形成元素であり、多量に添加すると高温
においてオーステナイト相1相の組織にならず、δ−フ
ェライト相が析出する。
損なう。Cr量が13%を越えると、δ−フェライト相
を析出させないために、CやNi等の元素の量を多くす
る必要が生じるが、オーステナイト相形成元素の含有量
を増加させることは、経済的でないと同時に変態点を下
げる等の好ましくない影響がある。したがって、Cr量
の範囲は10〜13%とする。
ロムフェライト鋼の高温強度を確保する上で重要な元素
である。しかし、フェライト相形成元素であり、多量に
添加するとδ−フェライト相が析出し、靱性、特に高温
環境に長時間保持された後の靱性が大幅に低下する。
MoとWの高温強度への寄与および、δ−フェライト相
の析出に対する影響は1原子あたりではほぼ等しいた
め、上限および下限は(Mo+W/2)の重量%で判断
してよい。この値が0.5%未満の場合は、高温強度が
不足する。また、3%を越えると、δ−フェライト相の
析出を抑えることが困難になる。したがって(Mo+W
/2)量の範囲は0.5〜3%とする。
たは影響は等価であるため、各々の元素の範囲は、Mo
単独の場合は0.5〜3%、W単独の場合は1〜6%に
なる。
して高温強度、特にクリープ強度およびクリープ破断強
度の向上に寄与する。このVの効果は0.1%未満では
明瞭でない。一方、過剰に合金化すると、溶接性、靱
性、対酸化性、高温強度を下げ、また、δ−フェライト
相を析出させるという悪影響が現れる。これらの悪影響
はVの含有量が0.5%を越えると著しくなるため、V
量の範囲は0.1〜0.5%とする。
して高温強度、特にクリープ強度およびクリープ破断強
度の向上に寄与する。このNbの効果は0.05%未満
では明瞭でない。一方、過剰に含有させた場合には、溶
接性、靱性、高温強度を下げ、δ−フェライトの析出と
いう悪影響があらわれる。これらの悪影響は含有量が
0.25%を越えると著しくなるため、Nb量の範囲は
0.05〜0.25%とする。
に分散させ、また安定化することが可能になる。このB
の効果が認められる下限の含有量は0.001%であ
る。一方。Bは低融点化合物を形成し、鋼の高温におけ
る加工性、溶接性を下げる元素でもある。これらの悪影
響はB量が0.02%を越えると著しくなる。したがっ
て、B量の範囲は0.001〜0.02%とする。
元素である。また、適当量の添加は溶接性、熱間加工性
を改善する作用もあり、さらに高温強度にも寄与する。
これらの効果はAlの量が0.003%以上で現れる。
が0.04%を越えると認められなくなるばかりか、か
えって上記の諸特性を劣化させる。したがって、Alの
含有量は0.003〜0.04%の範囲とする。
炭窒化物を形成し、高温強度に大きく寄与する。また、
オーステナイト相の形成元素でもあり、鋼をマルテンサ
イト相1相の組織とする上でも効果がある。しかし、高
温強度に対するNの効果は含有量が0.04%未満では
明瞭でないため、下限を0.04%とする。
間加工性、靱性が劣化する。また、高温強度もかえって
低下する。これらの悪影響はNの含有量が0.15%を
越えると著しくなる。したがって、N量の範囲は0.0
4〜.0.15%とする。
相の安定化元素であり、マルテンサイト1相の組織を得
る上で有用であり、靱性改善の効果がある。また、高温
強度も高める作用をもつ貴重な元素である。このCoの
効果は0.5%以上で明瞭になるため、選択元素として
含有させる場合は0.5%以上とする。上限は効果が飽
和すること、および経済性を考慮して3%とする。
窒化物を形成し、特に圧延時や再加熱時のオーステナイ
ト粒の成長を抑制して、最終的に組織を微細化して靱性
を向上させる。このTiの効果は0.005%以上で現
れるが、一方、0.15%を越えて過剰に含有させた場
合には、TiNの粗大析出物が形成され、靱性を劣化さ
せる。したがって、Ti量の範囲は0.005〜0.1
5%とする。
土類元素(REM)はS等の不純物元素を固定すること
により、熱間加工性を向上させる。特に、CuやB等を
多量に含有させた場合にその改善効果が著しい。これら
の効果は、Ca、Mg、希土類元素(REM)の量が、
それぞれ、0.0005%以上、0.0003%以上、
0.001%以上で現れてくる。
5%、0.3%を越えると、介在物が増加して靱性を劣
化させる。したがって、Ca:0.0005〜0.00
5%、Mg:0.0003〜0.5%、希土類元素(R
EM):0.001〜0.3%の範囲とする。なお、C
a、Mg、希土類元素(REM)は上記したように、ほ
ぼ同様な作用を持つが、単独で含有させても良く、複合
で含有させても良い。
不可避的不純物を含有してよい。たとえば、P、Oはお
のおの0.02%、0.007%程度は含有してよい。
ただし、熱間加工性を重要視する場合は、Oは0.00
5%以下にすることが望ましい。
記の範囲の成分を有する鋼を、電気炉または転炉で溶製
し、鋼塊に造塊、または、連続鋳造法によりスラブまた
はブルームとする。その後、分解圧延、仕上げ圧延等に
より、厚板や熱延鋼板としたり、さらには、電縫溶接鋼
管等に加工しても良い。また、ブルームを圧延してビレ
ットとし、継目無鋼管や、形鋼・条鋼・棒鋼とすること
も可能である。
明鋼の熱処理は焼きならし焼戻しである。ただし、圧延
を800℃以上で仕上げて冷却し、そのまま焼戻しを行
なってもよい。(以後、これをTMCP材とする)この
場合は、焼きならし焼戻しの熱処理(以後、これをNT
材とする)に比較して靱性やクリープ破断強度が改善さ
れる場合もある。もちろん再加熱して焼きならし焼戻し
を行なう場合に比較して経済的でもある。
分に固溶させるために、1020℃以上とする。焼戻し
は760〜840℃の温度範囲で行ない、安定した炭窒
化物を析出させる。
ることを前提としている。溶接後のPWHTは温度範
囲:700〜800℃、処理時間は1時間以上であり、
鋼の組成、製造履歴、厚さや使用目的に応じて最適温度
及び時間を決定する。この処理は構造物全体に対して行
なうため、後に述べる鋼の特性の把握は母材部も含め、
PWHTを行なった後の材料について行なっている。
の成分を示す。また、表2に比較例であるNo.51〜
No.74の成分を示す。なお、表2中の値の内で下線
を付けた値は、本発明の成分範囲を外れているものであ
る。
7〜No.24は真空下で溶解・鋳造して鋼塊とし、分
塊圧延、仕上げ圧延を経て、50mm厚さの厚板とし
た。圧延仕上がり温度は960〜1000℃である。圧
延仕上がり後に空冷し、2分割し、一方は820℃×1
時間の焼き戻しを行なった。(TMCP材)また、残部
は再度1080℃に加熱し、空冷後、820℃×1時間
の焼き戻しを行なった。
o.16は、50トン電気炉で溶解し、連続鋳造法によ
り200×1300のスラブとした。その後は他の実施
例と同様である。表2中の比較例も、No.1等と同様
のプロセスにより厚板とした。
TIG溶接継手を作製した。溶接方向は板の圧延方向で
ある。溶接材料はほぼ同様の組成の12%Cr系であ
る。溶接後に740℃×8時間のPWHTを行い、試験
片を採取した。
接線から1mm母材側に入った溶接熱影響部にノッチを
入れた衝撃試験片(JIS4号)を用いて吸収エネルギ
ーにより評価した。試験温度は0℃である。また、溶接
部からはなれた母材からも同様に試験片を採取した。ノ
ッチの方向は板の圧延方向である。
mmφ、長さ30mm)により評価したが、溶接部を持
つ試験片の採取方向は溶接方向と直角方向であり、板厚
の中央部より試験片の平行部の中央が溶接熱影響部とな
る様に採取した。
断試験においては、溶着金属破断を起こすことは極めて
少ないことが知られているため、溶接材料は個々の鋼毎
に変化させずに同一とした。クリープ破断強度は試験温
度650℃、応力100MPaにおける破断時間で評価
した。なお、母材からも圧延方向の直角方向より試験片
を採取して比較を行なっている。高温延性は、1000
℃の高温引張試験の破断伸びで評価した。
CP材の衝撃試験結果を示す。溶着金属の0℃吸収エネ
ルギーはいずれも40〜56J程度である。NT材の母
材の値は65〜98Jの範囲にある。TMCP材は64
〜97Jの範囲にあるが、平均値はTMCP材の方がや
や大きい。
や低く、NT材は48〜72Jの間、TMCP材は53
〜72の範囲にあり、やはりTMCP材がまさってい
る。なお、母材の吸収エネルギーと溶接熱影響部の吸収
エネルギーはほぼ相関している。工場で製造した材料も
同程度の値を示している。
o.52はC量が高く吸収エネルギーが低い。No.5
5はNi量が高く焼戻し時にマルテンサイト変態が起こ
ったため吸収エネルギーが低い。
が若干析出したため吸収エネルギーが低い。No.61
は(Mo+W/2)量が多くδ−フェライトが析出した
ためやはり、吸収エネルギーが低い。No.63はV,
Nbの量が多く吸収エネルギーが低い。No.66はA
l量が低いため吸収エネルギーが低い。
が低い。No.70はSi量が少なく、またNo.71
はSi量が多く、No.72はCa量が多く、No.7
3はTi量が多く、No.74はS量が高くいずれも吸
収エネルギーが低い。その他の比較例の吸収エネルギー
は実施例と同程度のレベルにある。
部を持つ試験片のクリープ破断試験結果を示す。実施例
であるNo.1〜No.24の破断時間はいずれも10
00時間を越えており、SUS304と比較しても遜色
ない。なお、N量は低いが、C量の高いNo.2、(M
o+W/2)の量の多いNo.3、No.7、No.
9、No.12の破断時間はやや長い。No.11はW
量は多いがCu量、Nb量、B量が下限近くであり、2
000時間に達していない。
破断時間がやや短い。Mn量が0.05%、0.06%
のNo.5、No.10も破断時間がやや短い。Coを
含有しているNo.8、No.9は、Cu量、(Mo+
W/2)量が同程度のNo.1、No.3と比較して破
断時間が長い。
試験片のクリープ破断試験結果を示す。No.51はC
量が低く、No.53、No.54はMn量が高く、N
o.55はNi量が高く、No.58はCu量が低く、
No.60は(Mo+W/2)の量が低く、No.62
はV、Nbの量が低く、No.63はV、Nbの量が高
く、No.64はBが添加されておらず破断時間は10
00時間未満である。
o.68、No.69はN量が少なすぎ、または多過
ぎ、No.70はSiが添加されていないため、いずれ
も破断時間は1000時間未満である。他の比較例の破
断時間は1000時間以上である。なお、破断位置はい
ずれも溶接熱影響部であった。
0℃高温引張試験結果を示した。熱間圧延においては、
破断伸びが40%以上あることが一応の目安となる。本
発明の実施例の破断伸びはいずれも、40%を越えてい
る。また、Ca、Mg、希土類元素を含むNo.16〜
No.24の破断伸びは90%以上である。また、Ca
等は添加されていないが、S量が低いNo.15の破断
伸びは82%である。
74の破断伸びは、S量が多いためまた、No.59は
Cu量が多く、No.65はBの含有量が上限以上であ
り、破断伸びはいずれも40%未満である。これらの鋼
は熱間圧延時にかなりの高温割れが発生した。その他の
比較例はいずれも40%以上の破断伸びを示している。
械試験値は良好であったが、Crの含有量が9.6%で
あり、700℃、1000時間の水蒸気酸化によるスケ
ール厚さは150μmを越えていた。これに対して、他
の鋼は実施例、比較例ともに100μm程度または、そ
れ以下であった。
は、従来の高クロムフェライト鋼では達成できなかっ
た、PWHT後の靱性と溶接熱影響部の高温強度の両立
を達成した画期的な鋼であり、さらに優れた熱間加工性
も有しており製造も容易である。本発明鋼は、オーステ
ナイト系耐熱鋼に匹敵する機械的特性と、高クロムフェ
ライト鋼の長所(耐酸化性等)を併せ持っており、優れ
た実用性と同時に経済性も兼ね備えている。
Claims (4)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.05〜0.18%、
Si:0.1〜0.5%、Mn:≦0.2%、S:≦
0.005%、Cu:0.5〜3%、Ni:0.05〜
1%、Cr:10〜13%、(Mo+W/2):0.5
〜3%、V:0.1〜0.5%、Nb:0.05〜0.
25%、B:0.001〜0.02%、Al:0.00
3〜0.04%、N:0.04〜0.15%を含有し、
残部が実質的にFeよりなることを特徴とする溶接継手
のクリープ特性に優れた高クロムフェライト鋼。 - 【請求項2】 Feを除き請求項1記載した各元素を請
求項1に記載した範囲含有し、さらに重量%でCo:
0.5〜3%を含有し、残部が実質的にFeよりなるこ
とを特徴とする溶接継手のクリープ特性に優れた高クロ
ムフェライト鋼。 - 【請求項3】 Feを除き請求項1又は請求項2に記載
した各元素をそれぞれの請求項に記載した範囲含有し、
さらに重量%でTi:0.005〜0.15%を含有
し、残部が実質的にFeよりなることを特徴とする溶接
継手のクリープ特性に優れた高クロムフェライト鋼。 - 【請求項4】 Feを除き請求項1ないし請求項3のい
ずれか1項に記載した各元素をそれぞれの請求項に記載
した範囲含有し、さらに重量%でCa:0.0005〜
0.005%、Mg:0.003〜0.5%、希土類元
素:0.001〜0.3%の内の1種または2種以上を
含有し、残部が実質的にFeよりなることを特徴とする
溶接継手のクリープ特性に優れた高クロムフェライト
鋼。
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1996
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