JP4833611B2 - 溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼及びその製造方法 - Google Patents

溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4833611B2
JP4833611B2 JP2005236502A JP2005236502A JP4833611B2 JP 4833611 B2 JP4833611 B2 JP 4833611B2 JP 2005236502 A JP2005236502 A JP 2005236502A JP 2005236502 A JP2005236502 A JP 2005236502A JP 4833611 B2 JP4833611 B2 JP 4833611B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel
weldability
strength
mpa class
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2005236502A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007051321A (ja
Inventor
義之 渡部
龍治 植森
泰 水谷
嘉秀 長井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2005236502A priority Critical patent/JP4833611B2/ja
Publication of JP2007051321A publication Critical patent/JP2007051321A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4833611B2 publication Critical patent/JP4833611B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

本発明は、建築、土木、海洋構造物、造船、貯槽タンク等の一般的な構造物に用いられる厚板、鋼管、形鋼等の引張強さ490MPa級の溶接構造用鋼として好適に用いられ、600℃の温度において1時間程度の比較的短時間における高温強度に優れた溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼及びその製造方法に関するものである。
従来、例えば、建築、土木等の分野においては、各種構造用鋼材として、JIS等で規格化された鋼材が広く利用されている。なお、一般の構造用鋼材は、約350℃から強度低下するため、その許容温度は約500℃となっている。
すなわち、ビルや事務所、住居、立体駐車場等の建築物に上記の鋼材を用いた場合には、火災時における安全性を確保するため、十分な耐火被覆を施すことが義務付けられており、建築関連諸法令では、火災時に鋼材温度が350℃以上にならないように規定されている。
この様な規定がなされた理由は、上記の鋼材では、350℃程度で強度が常温の2/3程度になり、必要な強度を下回るためである。このため、鋼材を建造物に利用する場合、火災時において鋼材の温度が350℃に達しないように耐火被覆を施して利用される。そのため、鋼材費用に対して耐火被覆工費が高額となり、建設コストが大幅に上昇することが避けられない。
そこで、この問題を解決するために、例えば、600℃で規格最小降伏強度の2/3以上の高温強度を有する耐火鋼等、様々な600℃耐火鋼が提案されている(例えば、特許文献1〜7参照)。これらの耐火鋼では、600℃での降伏強度を規格最小降伏強度の2/3以上とすることが一般的となっている。
しかしながら、これらの鋼材の多くは、Mo、Nb、Cr等の金属を多量に添加しているため、経済性、溶接性、ガス切断性に問題がある。
また、鋼中に含有される成分の炭素当量、すなわち、Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14にて表される炭素当量を0.30%以上と高く設定した鋼材も提案されている(例えば、特許文献8〜10参照)が、同様に経済性、溶接性、ガス切断性に問題がある。
また、耐火鋼中のCeq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14にて表される炭素当量に上限を設けたり、あるいは、PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bにて表される溶接割れ感受性組成に上限を設けることにより、溶接性の改善を試みた鋼材が提案されている(例えば、特許文献11、12参照)が、一般鋼と比較するとCおよび炭化物形成合金元素の添加量が多く、経済性、溶接性、ガス切断性の問題は本質的に解決されていない。
これらの例のように、600℃程度の高温強度を確保した鋼は、すでに上市されているが、他の使用性能である溶接性、ガス切断性に劣った鋼材であった。さらに、添加する金属のコストの観点から、経済性についても問題があった。
そこで、本発明者等は、CやMoの添加量を低減することでCeqやPCMを低減し、NbやBを複合添加することで組織や炭窒化析出相を限定した溶接性、ガス切断性に優れる構造用490MPa級高張力耐火鋼を提案した(特許文献13参照)。
しかしながら、本発明者等が提案した高張力耐火鋼においても、その実施例で示している通り、常温の引張強さが概ね低めである。例えば、JISに規定される建築構造用圧延鋼材SN490として見た場合、この高張力耐火鋼として例示された中にも規格最小引張強度である490MPaを下回るものが18例中5例存在し、また、490MPaを上回る場合でも、その余裕は小さく、厚手材でも工業的に安定して強度を確保することは困難であった。
また、この様なCやMoの添加量を低減しかつNbやBを複合添加した耐火鋼としては、高速変形下における耐脆性破壊特性に優れた耐火鋼が既に提案されている(特許文献14参照)。しかしながら、この耐火鋼は、規定している個々の成分範囲は、選択的に添加可能なものも含めて本発明者等が提案した高張力耐火鋼と重複はしているものの、CeqやPCMの限定がなく、また、その実施例を見ると、全ての例でBが添加されておらず、その他の成分も本発明者等が提案した高張力耐火鋼の成分範囲を逸脱している。さらに、Ceqに至っては全ての例で0.30%以下を満足するものはなく、溶接性、ガス切断性に劣ることは明らかである。
特開平2−77523号公報 特開平4−141552号公報 特開平4−293716号公報 特開平4−308033号公報 特開平4−311520号公報 特開平5−25540号公報 特開平9−176788号公報 特開平2−163341号公報 特開平3−107420号公報 特開平3−377715号公報 特開平4−6245号公報 特開平4−136118号公報 特開2004−339549号公報 特開平10−68043号公報
上述したように、従来の耐火鋼では、600℃程度の高温強度を確保することはできるものの、他の使用性能である溶接性、ガス切断性に劣っているという問題点があった。また、製造コストが高いという問題点もあった。
また、CやMoの添加量を低減しかつNbやBを複合添加した耐火鋼では、溶接性及びガス切断性については問題がないものの、常温の引張強さが概ね低めであり、特に、厚手材で強度を工業的に安定して確保することが困難であるという問題点があった。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、600℃における高温強度に優れ、溶接性及びガス切断性にも優れ、さらには経済性にも優れ、しかも、厚手でも安定して490MPa級の高張力を確保することが可能な溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼及びその製造方法を提供することを目的とする。
高温強度に優れた鋼材は、すでに建築分野でいわゆる「耐火鋼」として使用されているが、市場では溶接性やガス切断性等の使用性能に優れ、かつ廉価な鋼材への極めて強い要求がある。
鋼材の降伏強度は、一般に450℃近傍から急激に低下する。その理由は、温度上昇に伴って活性化エネルギーが低下し、転位のすべり運動に対して低温では有効であった抵抗が無効となるためである。高温強度を向上させるには、Mo、Nbの複合添加により高温にて安定な炭窒化物の析出を促進するとともに、固溶したMoおよびNbにより転位回復の遅延を図ることが効果的である。また、ミクロ組織をベイナイト主体とすることにより転位密度を増大させることも有効で、高価でガス切断性を劣化させるMo添加量の低減が期待される。しかし、ベイナイトは比較的低温で変態する硬質組織であるため、常温・高温強度バランス上、その組織分率の適正制御が重要なポイントとなる。
一般に、ベイナイト組織を得るためには、圧延後放冷して製造する場合は、鋼の合金成分を高める必要がある。この場合、溶接性やガス切断性が劣化することは言うまでもない。
そこで、合金成分を必要以上に高めることなくベイナイト組織を得る方法としては、圧延後加速冷却(水冷)する方法がある。しかし、その変態温度で特性が大きく変化するベイナイトを、加速冷却(水冷)で組織分率とともに安定的に制御することは、必ずしも容易ではない。
本発明者等は、これらの問題点を克服すべく鋭意検討した結果、Cの比較的少ない添加、Mo−Nbの複合添加、および微量のB添加をベース成分とし、鋼成分を適切にコントロールすることにより、圧延後の放冷もしくは加速冷却によっても、きわめて安定したベイナイトを主体とするミクロ組織が得られ、引張強さ490MPa級鋼として安定かつ優れた常温・高温強度バランスが得られることを見出し、これにより、ベイナイト組織が利用できるようになったことで、鋼成分、特に高価で溶接性やガス切断性を劣化させるMoを大幅に低減することができ、経済性はもとより、溶接性やガス切断性にも優れた高張力耐火鋼を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものであり、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1) 質量%で、C:0.04〜0.08%、Si:0.50%以下、Mn:0.10〜1.00%、P:0.020%以下、S:0.015%以下、Mo:0.10〜0.50%、Nb:0.01〜0.15%、B:0.0003〜0.0030%、Al:0.060%以下、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0060%以下を含有し、
かつ、N−Ti/3.4≦0.0002%であり、
さらに、Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14にて表される炭素当量が0.30%以下であり、
残部が鉄および不可避不純物からなり、
ミクロ組織がベイナイトの組織分率が70%以上であり、ポリゴナルまたは擬ポリゴナルフェライトとパーライトの組織分率が27%以下であることを特徴とする溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼。
(2) ポリゴナルまたは擬ポリゴナルフェライトとパーライトの組織分率が17%以下であることを特徴とする(1)に記載の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼。
) さらに、質量%で、Ni:0.05〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%、Cr:0.05〜0.5%、V:0.01〜0.10%の群から選択された1種または2種以上を含有してなることを特徴とする(1)または(2)に記載の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼。
) さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.004%、希土類元素:0.0005〜0.004%、Mg:0.0001〜0.006%の群から選択された1種または2種以上を含有してなることを特徴とする(1)ないしの何れか一項に記載の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼。
) PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bにて表される溶接割れ感受性組成が、質量%で0.18%以下であることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼。
(6) 旧オーステナイト粒の平均円相当径が120μm以下であることを特徴とする(1)ないし(5)のいずれかに記載の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼。
(7) (1)、(3)〜(5)のいずれかに記載の鋼成分からなる鋼片または鋳片を、1100〜1300℃の温度範囲にて再加熱し、次いで、1100℃以下における累積圧下量を30%以上70%以下として850℃以上の温度にて圧延し、その後放冷することを特徴とする溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼の製造方法。
(8) (1)、(3)〜(5)のいずれかに記載の鋼成分からなる鋼片または鋳片を、1100〜1300℃の温度範囲にて再加熱し、次いで、1100℃以下における累積圧下量を30%以上70%以下として850℃以上の温度にて圧延し、その後800℃から650℃まで0.3℃/秒以上の冷却速度にて冷却することを特徴とする溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼の製造方法。
(9) 1100℃以下における累積圧下量を30%以上60%以下とすることを特徴とする(7)または(8)に記載の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼の製造方法。
本発明の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼によれば、質量%で、C:0.04〜0.08%、Si:0.50%以下、Mn:0.10〜1.00%、P:0.020%以下、S:0.015%以下、Mo:0.10〜0.50%、Nb:0.01〜0.15%、B:0.0003〜0.0030%、Al:0.060%以下、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0060%以下を含有し、かつ、N−Ti/3.4≦0.0002%とし、さらに、Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14にて表される炭素当量を0.30%以下とし、残部を鉄および不可避不純物からなることとしたので、きわめて安定したベイナイトを主体とするミクロ組織を生成することができ、引張強さ490MPa級の鋼として安定かつ優れた常温・高温強度バランスを得ることができる。
したがって、600℃における高温強度に優れ、溶接性及びガス切断性にも優れ、さらには経済性にも優れ、しかも、厚手でも安定して490MPa級の高張力を確保することができる鋼材を提供することができる。
本発明の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼及びその製造方法の最良の形態について説明する。
なお、この実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
本発明の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼は、
質量%で、C:0.04〜0.08%、Si:0.50%以下、Mn:0.10〜1.00%、P:0.020%以下、S:0.015%以下、Mo:0.10〜0.50%、Nb:0.01〜0.15%、B:0.0003〜0.0030%、Al:0.060%以下、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0060%以下を含有し、
かつ、N−Ti/3.4≦0.0002%であり、
さらに、Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14にて表される炭素当量が0.30%以下であり、
残部が鉄および不可避不純物からなるものである。
ここで、鋼の組成を上記の様に限定した理由について説明する。
Cは、鋼材の特性に最も顕著な効果を及ぼすもので、狭い範囲に制御されなければならない。このCの含有量の範囲を上記の様に限定した理由は、Cの含有量が0.04質量%未満では厚手材の強度の安定確保が困難となる。一方、Cの含有量が0.08質量%を超えるとミクロ組織、引いては材質の冷速依存性が大きくなり安定製造が困難となる。すなわち、圧延終了後の冷却速度が過大の場合は、ベイナイト分率の増加や変態温度の必要以上の低下により強度が超過(靭性も劣化)となり、逆に冷却速度が過小の場合は、ベイナイト分率が低下して強度が不足するからである。また、一般的に知られるように、Cは溶接性に最も顕著に影響を及ぼし、多く添加すると溶接性を劣化させるため、上限を0.08質量%に限定した。
Siは、脱酸上鋼に含まれる元素であり、置換型の固溶強化作用をもつことから常温での母材強度向上に有効であるが、特に600℃での高温強度を改善する効果はない。また、多く添加すると溶接性、HAZ靭性が劣化する。そこで、上限を0.50質量%に限定した。鋼の脱酸はTi、Alのみでも可能であり、溶接部の靭性、焼入性などの観点から低いほど好ましく、必ずしも添加する必要はない。
Mnは、強度、靭性を確保する上で不可欠な元素ではあるが、置換型の固溶強化元素であることから常温での強度上昇には有効であるが、特に600℃以上の高温強度にはあまり大きな改善効果はない。したがって、本発明のような高温強度確保のためMoを含有する鋼においては、溶接性向上すなわちCeq、PCM低減の観点から1.00質量%以下に限定した。下限については、母材の強度、靭性調整上、0.10質量%以上含有することが必要である。なお、厚手材(概ね40mm以上)において、安定して常温強度を確保するためには、0.50質量%以上含有することが好ましい。
Pは、本発明鋼においては不純物であり、Pの含有量が減少すると、溶接熱影響部における粒界破壊が減少するため、少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接部の低温靭性を劣化させるため、上限を0.020質量%とした。
Sは、Pと同様、本発明鋼においては不純物であり、母材の低温靭性の観点からは少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接部の靭性を劣化させるため、上限を0.015質量%とした。
Moは、高温強度を確保する上で必要不可欠の元素であり、本発明においては最も重要な元素の一つである。ただし、Moは高価な元素であるとともに価格の変動が大きく、経済性に難点がある。したがって、下限は、高温強度ならびに後述する限定した組織を容易に得る観点からの最小値である0.10質量%に限定した。一方、上限は、含有量が多いほど高温強度確保の観点からは有効であるが、含有量が多すぎると、上述した経済性のみならず、ガス切断性や溶接性を著しく劣化させる。そこで、Mo量を極力低く抑えることを特徴の一つとし、0.50質量%以下に限定した。
Nbは、本願発明においては、後述するBとともにミクロ組織を制御し、高温強度を確保する上で、重要な役割を演ずる。まず、一般的な効果として、オーステナイトの再結晶温度を上昇させ、熱間圧延時の制御圧延の効果を発揮する上で有用な元素である。また、圧延に先立つ再加熱時の加熱オーステナイトの細粒化にも寄与する。さらに、析出強化および転位回復抑制による高温強度向上効果を有し、Moとの複合添加により、より一層の高温強度向上に寄与する。
Nbの含有量の範囲は、0.01〜0.15質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.10質量%である。ここで、含有量が0.01質量%未満では、600℃での高温時の析出強化および転位回復抑制の効果が小さく、また、0.15質量%を超えると、添加量に対し効果の度合いが減少し、経済的にも好ましくなく、また、溶接熱影響部の靭性も低下するからである。
Bは、ベイナイトの生成分率を介して強度を制御する上できわめて重要な元素である。すなわち、Bはオーステナイト粒界に偏析してフェライトの生成を抑制することにより焼入性を向上させ、圧延後放冷するような冷却速度が比較的小さい場合においても、ベイナイトを安定的に生成させるのに有効である。この効果を享受するためには、0.0003質量%以上含有することが必要である。しかし、含有量が多すぎると、焼入性の向上効果が飽和するだけでなく、旧オーステナイト粒界の脆化や靭性上有害となるB析出物を形成する可能性があるため、上限を0.0030質量%とした。
Alは、一般に脱酸上鋼に含まれる元素であるが、脱酸はSiまたはTiだけでも十分であり、本願発明においては、その含有量の下限は限定するものではなく、0%も含む。一方、Alの含有量が多くなると、鋼の清浄度が悪くなるだけでなく、溶接した際の溶接金属の靭性が劣化するので、含有量の上限を0.060質量%とした。
Tiは、まず第一に、母材および溶接部靭性を向上させる上で有用な元素である。なぜなら、TiはNと結合してTiNとしてスラブ中に微細析出し、加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑え、圧延組織の細粒化に寄与するからである。また、鋼板中に存在する微細なTiNは、溶接熱影響部組織の微細化に寄与する。さらに、Alの含有量が少ない場合、例えば、0.003質量%以下の場合には、Oと結合してTiを主成分とする析出物を形成し、粒内変態フェライト生成の核となり、溶接熱影響部の組織の微細化を介して靭性を向上させる。
Tiの第二の効果は、上述したBの焼入性向上効果を発揮させることにある。Bは、上述したようにオーステナイト粒界に偏析することで粒界からのフェライト生成を抑制し、結果として焼入性を向上させるが、この場合、Bは固溶状態である必要がある。BはNとの親和力が強く、BNを形成すると焼入性向上効果を発揮することができない。このため、BよりもNとの親和力が強いTiを含有した場合、NをTiNとして固定し、Bを固溶状態に保つ。
このように、Tiに二つの効果を発揮せしめるためには、最低0.005質量%必要である。しかし、多すぎるとTiCを形成し、母材ならびに溶接熱影響部の靭性を劣化させるので、その上限を0.030質量%に限定した。なお、上述した第二の効果は、単にTiの含有量の絶対値のみで発揮できるものではなく、後述するようにNの含有量も考慮して厳密に制御する必要がある。
Nは、不可避不純物として鋼中に含まれるものであるが、NbやTiを必須元素とする本願発明においては、Nb、Cと結合して炭窒化物を形成して強度を増加させたり、上述したようにTiと結合してTiNとして鋼の性質を高める効果がある。しかし、Nの含有量の増加は、溶接部靭性や溶接性に有害であり、Ti(およびNb)の窒化物としてNを固定できない場合、BNを形成し、焼入性を向上させる固溶Bが確保できなくなる。そこで、上限を0.0060質量%に限定した。下限は特に限定しないが、製鋼上、0.0010質量%程度以上は必然的に含有するものである。
Ti、Nそれぞれの含有量を上述のように限定した上で、さらに、両者の量的関係をN−Ti/3.4≦0.0002質量%とする必要がある。これは、化学量論的にNをTiでTiNとして固定することで、計算上残るNの含有量を0.0002質量%以下とすることを意味するもので、上述したBの含有量の範囲の中で、固溶Bを確実に確保するために限定するものである。
この量的関係は、好ましくはN−Ti/3.4≦0質量%であるが、本願発明において必須元素であるNbも(炭)窒化物を形成することなどもあって、本願発明者らの実験事実に基づき、工業生産上のばらつきも考慮して決定したものである。
上述した個々の元素の含有量をそれぞれの範囲に制限した上で、さらに総量規制とも言える炭素当量(Ceq)を0.30%質量以下とする必要がある。これは、第一義的には溶接性を向上させるためである。炭素当量は、溶接性を表す指標の一つで、低いほど溶接性に優れる。ここで、炭素当量(Ceq)が0.30質量%以下というのは、一般的に言って、引張強さ490MPa級鋼としては極めて低いレベルである。しかし、炭素当量は焼入性や溶接熱影響部の硬化性ともほぼ対応するものであり、焼入性の高いMoおよびBを必須元素とする本願発明においては、炭素当量を通常より極めて低いレベルに限定することで、溶接性のより一層の向上を図っている。なお、この炭素当量の限定は、後述する選択的に添加することができる各種元素を含有した際にも適用されることは言うまでもない。
次に、本発明の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼に、必要に応じて選択的に添加できる各種元素について説明する。
上述した基本成分に、これらの元素を添加する主たる目的は、本発明鋼の優れた特徴を損なうことなく、強度、靭性などの特性を向上させるためである。したがって、その含有量は自ずと制限されるべき性質のものである。
本発明の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼は、上記の組成に加えて、
さらに、質量%で、Ni:0.05〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%、Cr:0.05〜0.5%、V:0.01〜0.10%の群から選択された1種または2種以上を含有してなることが好ましい。
Niは、溶接性や溶接熱影響部の靭性を大きく劣化させることなく母材の強度、靭性を向上させる。これらの効果を安定して発揮させるためには、少なくとも0.05質量%以上含有することが必須である。一方、過剰な添加は、Niといえども溶接性に悪影響を及ぼす虞があり、高価な元素でもあるので、経済性も損なうことになるため、上限を1.0質量%とした。
Cuは、Niとほぼ同様の効果を有する。下限の0.05質量%は、実質的な効果が得られる最小値である。一方、過剰な添加は、溶接性の劣化に加え、熱間圧延時のCu−クラック発生の可能性が高まるため、1.0質量%を上限とした。なお、Cuを添加する場合は、前記Cu−クラック回避のため、Cu量の1/2以上のNiを添加することが好ましい。
Crは、母材の強度を向上させる効果がある。Crによる強度向上効果を確実に享受するためには、最低0.05質量%含有することが必要であるため、下限を0.05質量%に限定した。ただし、含有量が多くなると、溶接性や溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、上限を0.5質量%に限定した。
Vは、Nbとほぼ同様の効果を有するものであるが、その効果の程度は、Nbと同一の含有量に対し、概ねNbの半分程度である。したがって、効果を享受し得る最少量は0.01質量%であり、本発明ではこれを下限とした。一方、炭素当量や後述する溶接割れ感受性組成(PCM)の式に含まれることから明らかなように、Vは溶接性(および焼入性)にも影響を及ぼし、多すぎる添加は好ましくない。本発明においては、板厚や要求される強度レベルに応じて、必須元素のNbを補完する意味合いが強く、必ずしも限界的な意味合いではなく上限を0.10質量%とした。
本発明の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼は、上記の組成に加えて、
さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.004%、希土類元素(以下、REMと略記する):0.0005〜0.004%、Mg:0.0001〜0.006%の群から選択された1種または2種以上を含有してなることが好ましい。
Caは、不純物であるSと結合し、結果として熱間圧延時に延伸化して靭性その他の特性を劣化させるMnSの生成を抑制することで、靭性の向上を図ることができる。したがって、その効果を確実に享受するための最小値は0.0005質量%で、これを下限とした。一方、前記効果を有するといえども、含有量が多すぎると、かえってCa−O−S系の粗大な介在物が生成し、清浄度を劣化させ靭性を劣化させることになるため、上限を0.004質量%とした。
REMは、Caとほぼ同等の効果を有し、含有量の範囲およびその限定理由はCaと同様である。なお、CaとREMはほぼ同等の効果を有するため、添加する場合は、少なくともどちらか一方でよい。
Mgは、溶接熱影響部、特に溶接溶融線近傍の極めて高温に曝される領域のオーステナイト粒の成長をも抑制し、細粒に保つ作用があり、溶接部の靭性を向上させる。この効果を享受するためには、少なくとも0.0001質量%以上含有することが必須であり、この量を下限とした。一方、必要以上に含有量が増えても、含有量に対する効果が小さくなるばかりでなく、Mgは製鋼歩留まりが必ずしも高くないため、経済性も失することになる。これらを鑑み本発明においては上限を0.006質量%とした。
本発明の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼は、PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bにて表される溶接割れ感受性組成が、質量%で0.18%以下であることが好ましい。
この溶接割れ感受性組成(PCM)は、文字通り溶接割れ感受性を示す指標であるが、これは広義には溶接性を表す指標の一つでもある。したがって、本発明においては、溶接性に優れることを特徴、目的の一つとしているため、上述した個々の元素の総量規制として、溶接割れ感受性組成(PCM)を限定した。
この溶接割れ感受性組成(PCM)は、炭素当量同様、低いほど溶接性が優れ、通常、溶接割れ感受性組成(PCM)が0.22質量%以下であれば、溶接時の予熱が不要とされている。その上で、溶接性に優れる本発明の特徴をより明確に主張するため、溶接割れ感受性組成(PCM)をより一層低い0.18質量%以下に限定した。
本発明の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼は、ミクロ組織がベイナイトを主体とする組織であり、ポリゴナルまたは擬ポリゴナルフェライトとパーライトの組織分率が30%以下、好ましくは27%以下、より好ましくは17%以下がよい
ミクロ組織は、鋼板の板厚方向部位によっても微妙に変化するため、鋼板の最終圧延方向の板厚断面方向1/4厚位置を代表させて限定する。
このミクロ組織は、ベイナイトを主体とする組織であることが第一要件である。ベイナイトは、多種多様な中間段階変態組織の総称として用いられることも多く、それを明確に規定することは困難である。このため、本発明においては、ベイナイト以外の定義の明確な組織、すなわち、ポリゴナルまたは擬ポリゴナルフェライトとパーライトの組織分率を限定した。
この組織分率の限定範囲は30%以下であって、その真に意図するところはベイナイト分率が70%以上というものである。この数値は、概ね40mmを厚手材においても安定して常温ならびに高温強度を得るためである。ポリゴナルまたは擬ポリゴナルフェライトとパーライトの組織分率が30%超、すなわちベイナイト分率が70%未満になると、常温・高温強度とも490MPa級鋼としては不足するケースが頻発する。特に、板厚50mm以上の鋼板においては、ポリゴナルまたは擬ポリゴナルフェライトとパーライトの組織分率は20%未満が好ましい。
本発明の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼は、旧オーステナイト粒の平均円相当径が120μm以下であることが好ましい。
すなわち、鋼板の最終圧延方向の板厚断面方向1/4厚位置において、最終変態組織の旧オーステナイト粒径を平均円相当直径で120μm以下に限定する。これは、旧オーステナイト粒径が組織とともに靭性に大きな影響を及ぼすためで、特に本発明のようなMo−Nb−B複合添加鋼において靭性を高めるためには、旧オーステナイト粒径を小さく制御することは重要かつ必須である。
ここで、旧オーステナイト粒の平均円相当径を120μm以下と限定した理由は、本発明者等の実験結果に基づくもので、平均円相当直径で120μm以下であれば、強度レベルがほぼ同等の一般的な溶接構造用鋼あるいは建築構造用鋼と遜色ない靭性を確保することができる。なお、旧オーステナイト粒は、その判別が必ずしも容易でないケースも少なからずある。このような場合には、板厚1/4厚位置を中心として、鋼板の最終圧延方向と直角方向に採取した切り欠き付き衝撃試験片、例えば、日本工業規格「JIS Z 2202」に規定される2mmVノッチシャルピー試験片などを用い、十分低温で、脆性破壊させた際の破面単位を旧オーステナイト粒径と読み替え得る有効結晶粒径と定義し、その平均円相当直径を測定する。この場合でも同様に120μm以下であることが必要である。
次に、本発明の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼の製造方法について説明する。
本発明の製造方法としては、次の(1)、(2)の2つの方法がある。
(1) 本発明の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼の鋼成分からなる鋼片または鋳片を、1100〜1300℃の温度範囲にて再加熱し、次いで、1100℃以下における累積圧下量を30%以上70%以下として850℃以上の温度にて圧延し、その後放冷する方法。
(2) 本発明の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼の鋼成分からなる鋼片または鋳片を、1100〜1300℃の温度範囲にて再加熱し、次いで、1100℃以下における累積圧下量を30%以上70%以下として850℃以上の温度にて圧延し、その後800℃から650℃まで0.3℃/秒以上の冷却速度にて冷却する方法。
また、1100℃以下における累積圧下量は、30%以上60%以下とすることがより好ましい。
以下、上記の製造方法における数値限定の理由を説明する。
鋼片または鋳片の加熱温度はMo、Nb、Ti、Vをできるだけ固溶状態とするために高い温度が望ましいが、加熱時のオーステナイトの粗大化は、圧延、冷却後の最終組織をも粗大となる傾向にあり、母材の靭性を劣化させる。このため、母材靭性確保の観点から1100〜1300℃に限定した。
圧延終了温度は、低温域の圧下でNb、Ti、Vが炭窒化物として歪誘起析出するため850℃が下限の温度である。また、1100℃を超える温度で圧延を終了すると、圧延後のオーステナイト粒が十分に細粒化せず、最終変態組織も細粒化程度が不十分となって靭性が不足する。したがって、上限を1100℃とした。
同時に、上記温度範囲での累積圧下量は、オーステナイト粒の細粒化の観点から30%以上でなければならない。これは、上記温度範囲の比較的高温側(概ね950℃超)で圧延を終了した場合でも、著しい靭性劣化を引き起こさない程度にオーステナイト粒を細粒化するために必要な圧下量である。累積圧下量は、好ましくは30〜70%、より好ましくは30〜60%である。
また、常温の降伏強度および引張強度を、490MPa級高張力鋼の所要範囲、例えば、日本工業規格(JIS)にて規定される溶接構造用圧延鋼材SM490鋼または建築構造用圧延鋼材SN490鋼とするためには、圧延終了後800℃から650℃までの冷却速度を0.3℃/秒以上とする必要がある。すなわち、約25mm未満の比較的薄い鋼板は圧延後放冷(空冷)でも良いが、約25mm超の比較的厚い鋼板は必要に応じ、加速冷却(水冷)プロセスを適用して製造しても良い。なお、約40mm超の極厚材では、加速冷却(水冷)プロセスは必須となる。このような比較的遅い冷却速度で上記の組織が得られるのは、本発明の鋼成分によるものである。
ここで、上記冷却速度は、実製造ラインにて実測されたものではなく、板厚中心部における計算値である。圧延後放冷した場合、本発明者等の差分法による計算によれば、板厚40mm以下であれば、本発明が限定する0.3℃/秒以上の冷却速度が得られる。分割数など計算方法によって若干異なるが、本発明者等の実験室レベルでの熱電対埋め込みによる実測においても、ほぼ同等の結果が得られている。
したがって、本発明では、板厚40mm以下では圧延後放冷または加速冷却(水冷)し、板厚40mm超では加速冷却(水冷)することとなる。
加速冷却(水冷)する場合、0.3℃/秒以上の冷却速度を確保できるような水量密度にする必要があることは言うまでもないが、水冷ノズルの配置、形式などそれぞれの製造ライン特有のローカリティーがあるため、本発明では、あえて、水量密度ではなく冷却速度を用いることとした。
なお、本発明鋼を製造後、脱水素などの目的でAc1変態点以下の温度に再加熱しても、本発明鋼の特徴は何ら損なわれることはない。
次に、本発明の鋼を実施例1〜15及び比較例16〜21にて説明する。
まず、転炉により、表1に示す様々な組成の鋼スラブを溶製し、次いで、厚板工場において表2に示す条件にて加熱−圧延−冷却を施し、表2に示す板厚(35〜100mm)の厚鋼板を作製した。
このとき、圧延後加速冷却(水冷)を施した鋼板は、板厚中心部の800℃から650℃までの計算冷却速度が0.3℃/秒以上となるように、適宜板厚に応じた水量密度を設定した。
その後、実施例1〜15及び比較例16〜21各々の鋼板について、表2に示す母材組織、機械的性質、溶接熱影響部靭性、ガス切断粗さの評価をおこなった。
母材組織については、鋼板の最終圧延方向の板厚方向断面1/4厚位置における倍率500倍の光学顕微鏡写真から、ポリゴナルフェライトまたは擬ポリゴナルフェライトおよびパーライトのトータル面積分率を測定した。
母材の機械的性質としては、鋼板の圧延方向に直角な方向から採取した引張試験片により常温における降伏強さと引張強さ、600℃における降伏強さを、また、鋼板の圧延方向から採取した2mmVノッチシャルピー衝撃試験片により延性・脆性破面遷移温度(vTrs(℃))を測定した。
溶接熱影響部靭性については、鋼板の圧延方向から採取した試片に板厚50mm材での入熱量60kJ/mmのサブマージアーク溶接における溶融線に相当する熱サイクルを付与し、その後、熱サイクル均熱部に切り欠きを有する2mmVノッチシャルピー衝撃試験片を切り出し、0℃における衝撃吸収エネルギーを測定し、繰り返し数3の平均値で評価した。
上記の機械的性質の目標値は、常温降伏強さ325MPa以上、常温引張強さ490MPa以上、600℃における降伏強さ217MPa以上、延性・脆性破面遷移温度(vTrs)−20℃以下とし、再現熱サイクル付与材での0℃における衝撃吸収エネルギーは40J以上とした。
ガス切断面粗さについては、日本溶接協会規格WES2801「ガス切断面の品質基準」に準拠して判定し、等級「1」の場合を良(○)、等級「2」以下の場合を不良(×)と評価した。
表1に鋼組成を示し、表2に鋼板の製造方法及び諸特性を示す。
Figure 0004833611
Figure 0004833611
これらの評価結果によれば、実施例1〜15は、いずれも良好な特性を示していることが分かった。
一方、比較例16〜21は、本発明の組成範囲、製造条件等を逸脱しているために、実施例1〜15と比較して強度、靭性などの母材基本特性や溶接熱影響部靭性、ガス切断性などが明らかに劣っていた。
本発明は、C、Moの含有量を抑えながら、Nb及びBを複合添加することで、溶接性やガス切断性が良好で、かつ高温強度に優れる引張強さ490MPa級の高張力耐火鋼を低コストで提供できるようにしたものであるから、建築、土木、海洋構造物、船舶、各種貯蔵タンク等、一般的な溶接構造用鋼として広く適用可能であり、特に、高温に晒される可能性のある構造物等、高温下で使用される高強度の鋼材として最適であり、必要以上の温度上昇を避ける各種被覆の削減等、その産業上の利用価値は極めて大きい。

Claims (9)

  1. 質量%で、C:0.04〜0.08%、Si:0.50%以下、Mn:0.10〜1.00%、P:0.020%以下、S:0.015%以下、Mo:0.10〜0.50%、Nb:0.01〜0.15%、B:0.0003〜0.0030%、Al:0.060%以下、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0060%以下を含有し、
    かつ、N−Ti/3.4≦0.0002%であり、
    さらに、Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14にて表される炭素当量が0.30%以下であり、
    残部が鉄および不可避不純物からなり、
    ミクロ組織がベイナイトの組織分率が70%以上であり、ポリゴナルまたは擬ポリゴナルフェライトとパーライトの組織分率が27%以下であることを特徴とする溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼。
  2. ポリゴナルまたは擬ポリゴナルフェライトとパーライトの組織分率が17%以下であることを特徴とする請求項1に記載の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼。
  3. さらに、質量%で、Ni:0.05〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%、Cr:0.05〜0.5%、V:0.01〜0.10%の群から選択された1種または2種以上を含有してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼。
  4. さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.004%、希土類元素:0.0005〜0.004%、Mg:0.0001〜0.006%の群から選択された1種または2種以上を含有してなることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼。
  5. CM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bにて表される溶接割れ感受性組成が、質量%で0.18%以下であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項記載の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼。
  6. 旧オーステナイト粒の平均円相当径が120μm以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼。
  7. 請求項1、請求項3〜5のいずれか1項記載の鋼成分からなる鋼片または鋳片を、1100〜1300℃の温度範囲にて再加熱し、次いで、1100℃以下における累積圧下量を30%以上70%以下として850℃以上の温度にて圧延し、その後放冷することを特徴とする溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼の製造方法。
  8. 請求項1、請求項3〜5のいずれか1項記載の鋼成分からなる鋼片または鋳片を、1100〜1300℃の温度範囲にて再加熱し、次いで、1100℃以下における累積圧下量を30%以上70%以下として850℃以上の温度にて圧延し、その後800℃から650℃まで0.3℃/秒以上の冷却速度にて冷却することを特徴とする溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼の製造方法。
  9. 1100℃以下における累積圧下量を30%以上60%以下とすることを特徴とする請求項7または8に記載の溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼の製造方法。
JP2005236502A 2005-08-17 2005-08-17 溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼及びその製造方法 Expired - Fee Related JP4833611B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005236502A JP4833611B2 (ja) 2005-08-17 2005-08-17 溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005236502A JP4833611B2 (ja) 2005-08-17 2005-08-17 溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007051321A JP2007051321A (ja) 2007-03-01
JP4833611B2 true JP4833611B2 (ja) 2011-12-07

Family

ID=37915962

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005236502A Expired - Fee Related JP4833611B2 (ja) 2005-08-17 2005-08-17 溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4833611B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4516924B2 (ja) * 2006-03-23 2010-08-04 新日本製鐵株式会社 熱間圧延時の耐表面割れ性に優れた薄鋼板及びその製造方法
JP4976905B2 (ja) * 2007-04-09 2012-07-18 株式会社神戸製鋼所 Haz靭性および母材靭性に優れた厚鋼板
JP5772620B2 (ja) * 2011-01-18 2015-09-02 Jfeスチール株式会社 テーパプレートの製造方法
RU2589338C2 (ru) 2011-06-10 2016-07-10 Конинклейке Филипс Н.В. Устройство вывода света и способ его изготовления
KR101612660B1 (ko) * 2012-01-18 2016-04-14 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 테이퍼 플레이트의 제조 방법
CN103114254A (zh) * 2013-03-15 2013-05-22 济钢集团有限公司 一种核电站机械模块支撑件用高强韧钢板及其制造方法
CN109097683B (zh) * 2018-08-24 2020-08-18 南京钢铁股份有限公司 一种80mm厚低成本FH420海工钢板及其制造方法
CN111926245B (zh) * 2020-07-10 2022-01-11 南京钢铁股份有限公司 屈服强度345MPa级薄规格抗震耐火钢板及制备方法
CN112501500B (zh) * 2020-10-28 2022-03-01 南京钢铁股份有限公司 一种100mm特厚规格屈服强度345MPa级抗震耐火钢及其制备方法

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4205922B2 (ja) * 2002-10-10 2009-01-07 新日本製鐵株式会社 変形性能および低温靱性ならびにhaz靱性に優れた高強度鋼管およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007051321A (ja) 2007-03-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4833611B2 (ja) 溶接性及びガス切断性に優れた溶接構造用490MPa級厚手高張力耐火鋼及びその製造方法
JP4718866B2 (ja) 溶接性およびガス切断性に優れた高張力耐火鋼およびその製造方法
US20060016526A1 (en) High-strength steel for welded structures excellent in high temperature strength and method of production of the same
KR101189263B1 (ko) 고온 강도와 저온 인성이 우수한 용접 구조용 강 및 그 제조 방법
JP5217385B2 (ja) 高靭性ラインパイプ用鋼板およびその製造方法
JP2007231312A (ja) 高張力鋼およびその製造方法
JP7236540B2 (ja) 溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材及びその製造方法
JP5073396B2 (ja) 高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用鋼の製造方法
JP5445723B1 (ja) 溶接用超高張力鋼板
JP2012122111A (ja) 優れた生産性と溶接性を兼ね備えた、PWHT後の落重特性に優れたTMCP−Temper型高強度厚鋼板の製造方法
KR100630402B1 (ko) 고온 강도가 우수한 고장력 강 및 그 제조 방법
JP4709632B2 (ja) 高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法
JP4571915B2 (ja) 耐火厚鋼板及びその製造方法
WO2017150665A1 (ja) 低温用h形鋼及びその製造方法
JP2004124113A (ja) 非水冷型薄手低降伏比高張力鋼およびその製造方法
EP2258880A1 (en) Process for production of thick high-tensile-strength steel plates
JP7076325B2 (ja) 厚鋼板およびその製造方法ならびに溶接構造物
JP4959402B2 (ja) 耐表面割れ特性に優れた高強度溶接構造用鋼とその製造方法
JP5098207B2 (ja) 高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法
JP2011208213A (ja) 耐溶接割れ性と溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力厚鋼板
JPH06316723A (ja) ガス切断性及び溶接性の優れた建築構造用耐候性耐火鋼材の製造方法
JP2004124114A (ja) 靭性に優れた非水冷型薄手低降伏比高張力鋼およびその製造方法
JP4031730B2 (ja) 溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼ならびにその製造方法
JP4348102B2 (ja) 高温強度に優れた490MPa級高張力鋼ならびにその製造方法
JP5151510B2 (ja) 低温靭性、亀裂伝搬停止特性に優れた高張力鋼の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080306

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100225

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100506

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100705

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110628

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110823

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110913

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110922

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4833611

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20110909

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140930

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140930

Year of fee payment: 3

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140930

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees