JP2004124113A - 非水冷型薄手低降伏比高張力鋼およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.12%、Si:0.15〜0.6%、Mn:1.0〜2.5%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Nb:0.02〜0.1%、Ti:0.005〜0.035%、Al:0.06%以下、N:0.006%以下、必要に応じ、特定量のCu、Ni、Cr、Mo、V、Taのうち1種または2種以上を、Ceq:0.32〜0.45%、PCM:0.15〜0.24%となるように含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、鋼の微視組織がフェライトとセメンタイトを含む組織であるパーライトまたはベイナイトを主たる構成組織として、さらにマルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)を組織構成比率で1〜10%を含む。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に板厚15mm以下の比較的薄手で、かつAPI規格X70グレード相当以上の高張力鋼を非水冷型で、降伏比を87%以下に低く抑え得る鋼材およびその製造方法に関するもので、鉄鋼業においては、主として厚板への適用が最も好適である。本発明により得られる鋼材は、建築、土木、海洋構造物、造船、各種の貯槽タンク、建・産機、ラインパイプなどの溶接構造用鋼として広範な用途に適用できる。
【0002】
【従来の技術】
鋼材の高張力化は、鋼成分の調整ももちろんあるが、製造プロセス上ではTMCP(thermo−mechanical control process)と呼ばれる圧延温度の低温化、いわゆる制御圧延や、圧延後の加速冷却などが、過去多くの公開公報、特許公報などを含む公知文献でその技術が開示されており、当業者においては広く知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5など)。
【0003】
しかし、薄手、特に本発明が対象とする板厚15mm以下の鋼材においては、圧延後の加速冷却(一般には水冷)は、冷却の不均一に起因する形状あるいは残留応力の観点から問題が多い。形状はいうまでもなく、残留応力の不均一は切断後の変形などの問題が生じる。一方、非水冷の制御圧延ままによる方法では、降伏比が高くなるという問題があった。発明者らの経験によれば、板厚15mm以下でX70級の高張力鋼では降伏比は90%超となる。
【0004】
なお、当業者においては、低降伏比化のために、圧延後、フェライトとオーステナイトの二相域に再加熱する方法が広く知られており、これも過去多くの公開公報、特許公報などを含む公知文献でその技術が開示されている(例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11など)。
【0005】
以上のように、降伏比の低い薄手の高張力鋼を得ることは、水冷型、非水冷型(制御圧延まま)を問わず極めて困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭56−166320号公報
【特許文献2】
特開昭57−134514号公報
【特許文献3】
特開昭58−77528号公報
【特許文献4】
特開昭62−93346号公報
【特許文献5】
特開平3−162521号公報
【特許文献6】
特開平3−162521号公報
【特許文献7】
特開昭55−115921号公報
【特許文献8】
特開昭55−131130号公報
【特許文献9】
特開平4−110422号公報
【特許文献10】
特開平3−162518号公報
【特許文献11】
特開2001−226713号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来、極めて困難であった非水冷型すなわち制御圧延ままで降伏比の低い薄手の高張力鋼を工業的に安定して供給可能な方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のポイントは、制御圧延でありながら降伏比の低い薄手の高張力鋼を得ることであり、そのために、C量をはじめとする各種合金元素の適正添加とともに炭素当量(Ceq)、溶接割れ感受性組成(PCM)範囲の限定と微視組織の制御を本発明の通り限定したものである。その要旨は以下に示す通りである。
【0009】
(1) 鋼成分が質量%で、
C:0.05〜0.12%、
Si:0.15〜0.6%、
Mn:1.0〜2.5%、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Nb:0.02〜0.1%、
Ti:0.005〜0.035%、
Al:0.06%以下、
N:0.006%以下、
の範囲内で、
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14、
PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B、
と定義する炭素当量Ceqおよび溶接割れ感受性組成PCMがそれぞれ0.32〜0.45%、0.15〜0.24%となるように含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、鋼の微視組織がフェライトとセメンタイトを含む組織であるパーライトまたはベイナイトを主たる構成組織として、さらにマルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)を組織構成比率で1〜10%を含むことを特徴とする非水冷型薄手低降伏比高張力鋼。
【0010】
(2) 上記鋼成分に加え、質量%で、
Cu:0.05〜0.7%、
Ni:0.05〜1.0%の範囲でCu添加量の1/2以上、
Cr:0.05〜1.0%、
Mo:0.05〜1.0%
の範囲内で1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする(1)に記載の非水冷型薄手低降伏比高張力鋼。
【0011】
(3) 上記鋼成分に加え、さらに、質量%で、
V:0.005〜0.10%、
Ta:0.005〜0.10%
の範囲でいずれか1種または両者を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の非水冷型薄手低降伏比高張力鋼。
【0012】
(4) (1)〜(3)のいずれか1項に記載の鋼組成からなる鋳片または鋼片を、1100〜1300℃の温度に加熱し、950℃以下の温度での累積圧下量を50%以上として700℃以上の温度で熱間圧延を終了した後、放冷することを特徴とする、鋼の微視組織がフェライトとセメンタイトを含む組織であるパーライトまたはベイナイトを主たる構成組織として、さらにマルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)を組織構成比率で1〜10%を含む非水冷型薄手低降伏比高張力鋼の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明が、請求項の通りに鋼組成および製造方法を限定した理由について説明する。
【0015】
Cは鋼の溶接性に最も大きな影響を及ぼし、添加量が多くなるほど溶接性を劣化させるため、添加量は低いほど好ましい。また、鋼の靭性を向上させる上でもC量は低いほど好ましい。しかし、必要以上にC量を低減すると、強度確保の困難性、およびその結果としての強度補償のための合金添加が増えるため、下限を0.05%とした。一方、上限は、溶接性、母材および溶接部靭性の観点から0.12%に限定した。なお、溶接性などはC量のみによって決まるものではないことは周知の通りで、この上限値は必ずしも臨界的な意味を持つものではなく、工業上安定して上記の特性・特徴を享受する、いわば本発明の特徴を明確にするために限定したに過ぎない。
【0016】
Siは、一般にセメンタイト中に固溶しにくく、セメンタイトの析出を抑制するとされ、結果として圧延後放冷でも本発明が特徴とするマルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相の生成を助長する傾向にある。この効果を享受するため、Siの下限を0.15%に限定した。一方、必要以上に多く添加すると溶接性、溶接部靭性が劣化するため、上限を0.6%に限定した。
【0017】
Mnは、母材の強度、靭性を確保する上で有用な元素である。比較的安価な元素でもあるので、強度確保の観点から1.0%以上の添加を必須とする。上限については、多すぎる添加は連続鋳造スラブの中心偏析を助長したり、溶接性を劣化させるため2.5%に限定する。
【0018】
Pは、本発明鋼においては不純物であり、P量の低減は溶接熱影響部における粒界破壊を減少させる傾向があるため、少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接部靭性を劣化させるため上限を0.02%とした。
【0019】
Sは、Pと同様本発明鋼においては不純物であり、母材の低温靭性の観点からは少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接部靭性を劣化させるため上限を0.01%とした。
【0020】
Nbは、本発明においては不可欠な添加元素の一つである。その作用は、まず、圧延に先立つ加熱時において全量または部分的に固溶させることで、オーステナイトの再結晶温度を上昇させ、熱間圧延時の制御圧延の効果を享受することができる。また、Nb炭窒化物を形成することで、析出硬化としての作用も期待される。さらに、本発明においては、固溶Nbが鋼材の焼き入れ性を高めるため、放冷(制御圧延まま)でマルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相を生成しやすくする。これらの効果を発揮する上で、少なくとも0.02%以上の添加が必須である。上限については、発明者らにおいても限界を把握したわけではないが、前記効果を実験室的に確認できた範囲であること、また、溶接熱影響部靭性への悪影響が懸念されること、さらには効果に対する合金コストなども勘案した上で、0.1%に限定した。したがって、この上限値は、必ずしも前記効果に対する臨界的な意味合いはない。
【0021】
Tiは、母材および溶接部靭性に対する要求が厳しい場合には、添加することが好ましい。なぜならばTiは、Al量が少ないとき(例えば0.003%以下)、Oと結合してTi2O3を主成分とする析出物を形成、粒内変態フェライト生成の核となり溶接部靭性を向上させる。また、TiはNと結合してTiNとしてスラブ中に微細析出し、加熱時のγ粒の粗大化を抑え圧延組織の細粒化に有効であり、また鋼板中に存在する微細TiNは、溶接時に溶接熱影響部組織を細粒化するためである。これらの効果を得るためには、Tiは最低0.005%必要である。しかし多すぎるとTiCを多量に形成し、低温靭性や溶接性を劣化させるので、その上限は0.035%に限定した。
【0022】
Alは、一般に脱酸上鋼に含まれる元素であるが、脱酸はSiまたはTiだけでも十分であり、本発明鋼においては、その下限は限定しない(0%を含む)。しかし、Al量が多くなると鋼の清浄度が悪くなるだけでなく、溶接金属の靭性が劣化するので、上限を0.06%とした。
【0023】
Nは、不可避的不純物として鋼中に含まれるものであるが、Tiを添加する本発明鋼においては、TiNを形成して鋼の性質を高めたり、Nbあるいは必要に応じて添加できるV、Taと結合して炭窒化物を形成して強度を増加させる。この目的のためには、N量として最低0.001%含有することが望ましい。しかしながら、N量の増加はHAZ靭性、溶接性に対して有害であり、歪み時効性の観点からも本発明鋼においてはその上限を0.006%に限定した。
【0024】
次に、必要に応じて含有することができるCu、Ni、Cr、MoおよびV、Taの添加理由について説明する。
【0025】
基本となる成分に、さらにこれらの元素を添加する主たる目的は、本発明鋼の優れた特徴を損なうことなく、強度、靭性などの特性を向上させるためである。したがって、その添加量は自ずと制限されるべき性質のものである。
【0026】
Cuは、過剰に添加しなければ、溶接性、溶接熱影響部靭性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度、靭性を向上させる。これら効果を発揮させるためには、少なくとも0.05%以上の添加が必須である。しかし、Cuは析出硬化を示す元素としても知られ、多すぎる添加は析出硬化による材質変化が急激となって制御が困難になるのに加え、溶接性劣化や熱間圧延時にCu−クラックが発生し製造困難となるため、上限を0.7%に限定した。
【0027】
NiもCu同様、過剰に添加しなければ、溶接性、溶接熱影響部靭性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度、靭性を向上させる。これら効果を発揮させるためには、少なくとも0.05%以上の添加が必須である。一方、過剰な添加は高価なだけでなく、溶接性に好ましくないため、上限を1.0%とした。なお、Cuを添加する場合、熱間圧延時のCu−クラックを防止するため、前記添加範囲を満足すると同時に、Cu添加量の1/2以上とする必要がある。
【0028】
CrおよびMoは、母材の強度、靭性をともに向上させる。その効果を確実に享受できる最小量は0.05%である。しかし、両元素とも添加量が多すぎると母材、溶接部の靭性および溶接性を劣化させるため、それぞれの上限を1.0%とした。
【0029】
なお、Cu、Ni、Cr、Moの添加は、耐候性にも少なからず有利に作用する。
【0030】
VおよびTaは、Nbとほぼ同様の作用を有するものであるが、Nbに比べてその効果は小さい。Nbと同様の効果は0.005%未満では効果が少なく、上限は0.10%まで許容できる。これらの元素は、いずれか一方で良いが、両者を添加してもよく、それぞれ単独での効果が概ね加算的に発揮される。
【0031】
個々の元素の添加量を上述の如く限定した上で、さらに、それらの総量規制ともいうべき炭素当量Ceq、溶接割れ感受性組成PCMもそれぞれ0.32〜0.45%、0.15〜0.24%に限定する。Ceq、PCMはいずれも溶接性を表す指標として知られ、低いほど溶接性に優れるが、これらの上限は、溶接性に対して臨界的な意味合いをもつものではなく、本発明の特徴を明確にするために限定したものである。それぞれの指標の下限値については、板厚や目標とする強度レベルによって変わるものであるが、一方で強度は板厚や圧延条件によっても変わるほか、両指標に含まれない元素も強度に少なからず影響を及ぼすため、前記指標(Ceq、PCM)のみで一義的に決まるものではない。しかし、発明者らの実験により比較的容易に高張力が得られることが確認された結果をもとに、本発明の権利範囲を明確にするため、前記の通り下限値を限定した。
【0032】
両指標とも鋼成分で一義的に決まるため、強度とも比較的良い相関を有し、その低減は基本的には高張力化とは相反する。そこで、本発明の特徴をより明確に主張するため、各合金元素を前記の通り限定し、さらに鋼の微視組織および製造方法をも限定した。
【0033】
鋼の微視組織は、フェライトとセメンタイトを含む組織であるパーライトまたはベイナイトを主たる構成組織として、さらにマルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)を組織構成比率で1〜10%を含むこととする。一般に、制御圧延ままでは、フェライトとセメンタイトを含む組織であるパーライトまたはベイナイトの混合組織となるが、本発明ではさらに、マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)を組織構成比率で1〜10%を含むことを最大の特徴としている。マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)は硬くて脆いために靭性劣化要因となり、通常はその生成を極力避けることに注意が払われ、生成が避けられない場合には、それらを分解させるため焼き戻し処理が行われる。しかし、本発明では、意図的にマルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)を組織構成比率で1〜10%を生成させ、高張力化と低降伏比化に利用したものである。マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)は比較的低温で変態するため、変態歪が多く導入され、引張試験時に降伏点が不明瞭となり、極端な場合には、荷重−伸び曲線が完全なラウンドな曲線を描くようになる。このようなケースでは、降伏強さとして0.2%オフセット耐力が採られるため、降伏比は極めて低くなる。このような現象を発現するために、マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)は最低1%必要である。しかし、それらの生成量が多すぎると靭性を著しく劣化させるため、上限を10%とした。なお、これらの組織構成比率は、鋼材の圧延方向断面1/4板厚位置のもので、マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)の識別は、LePera氏液によるエッチングで白色に現出されたものとした。
【0034】
次に、製造方法を本発明の通り限定する理由について以下に説明する。
【0035】
まず、前記鋼成分を有する鋳片または鋼片に対し、圧延に先立つ加熱温度は1100〜1300℃に限定する。構造用鋼においては、強度と靭性をバランスよく両立させることが、多くの場合最大の課題の一つとなっており、組織の微細化がその有効な解決手段の一つである。加熱時のオーステナイト粒を小さくすることは、圧延組織の微細化を図る上でも有効で、本発明が加熱温度の上限として規定する1300℃は加熱時のオーステナイトが極端に粗大化しない温度である。加熱温度がこれを超えるとオーステナイト粒が粗大混粒化し、変態後の組織も粗大化するため鋼の靭性が劣化する。一方、低い加熱温度は、加熱オーステナイト粒の細粒化の点では有利であるが、圧延負荷大きくなるばかりでなく、板厚によっては後述する圧延終了温度(700℃以上)の確保が困難となる。また、圧延に先立つ加熱時にNbを少なくとも一部を溶体化させることで、オーステナイトの再結晶温度を上昇させ、熱間圧延時の制御圧延の効果を発揮させるため、加熱温度の下限を1100℃に限定した。
【0036】
前記温度範囲に再加熱した鋳片または鋼片を、圧延では950℃以下の温度での累積圧下量を50%以上として700℃以上で熱間圧延を終了する必要がある。マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)を生成利用する本発明においては、靭性への悪影響を無害化する上でそれらを微細分散生成させる必要があり、このために950℃以下での累積圧下量を十分確保し、圧延オーステナイトを細粒化しなければならない。その条件として、950℃以下の温度での累積圧下量を50%以上としなければならない。また、圧延終了温度は、700℃を下回ると変態が一部開始する可能性が高まり、最終組織に加工(圧延)組織を残す恐れがあり、靭性上好ましくないばかりでなく、降伏比の上昇を招くため、圧延終了温度は700℃以上に限定する。好ましくは、圧延終了温度は700〜800℃である。なお、これらの温度は、モニタリングの関係上、表面温度であることはいうまでもない。
【0037】
圧延後放冷とするのは、本明細書
【従来の技術】で述べたように、加速冷却とした場合の不均一冷却に起因する形状および残留応力問題を回避するためである。
【0038】
【実施例】
転炉−連続鋳造−厚板工程で種々の鋼成分の鋼板(厚さ6〜15mm)を制御圧延ままで製造し、その機械的性質を調査した。
【0039】
表1に比較鋼とともに本発明鋼の鋼成分を、表2に鋼板の製造条件および機械的性質の調査結果を示す。
【0040】
本発明法に則った成分および製造方法による鋼板(本発明鋼)は、すべてAPI規格X70グレードとして十分な特性(強度、靭性)を有し、かつ降伏比も低い。これに対し、鋼成分や製造条件が本発明の限定範囲を逸脱する比較鋼は、強度、靭性、降伏比のいずれかまたは複数で明らかに劣っている。
【0041】
すなわち、比較例16では、C量が低く、PCMも低いため、強度が低いばかりでなく、マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)が生成せず降伏比も高い。なお、C量が低いため母材靭性は良好であるが、Tiが添加されていないために溶接継手靭性が本発明鋼に比較して劣ることが確認されている。比較例17は、Mn量が低く、Ceqも低いため強度が低く、マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)の生成もないため、降伏比が高い。さらに、950℃以下の累積圧下量も小さいため、靭性にも劣る。なお、当該鋼ではCu添加量に対してNi添加量が低いため、熱間圧延時にクラックが生じ、製造が困難となった。比較例18は、Si量が低く、Nbも添加されていないため、マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)が生成しないばかりでなく、圧延時の制御圧延の効果が十分ではなく、靭性に劣るとともに、降伏比も高めである。比較例19では、C量が高く、圧延終了温度も低いため、Ceq、PCMは適正でマルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)の生成もあるが、降伏比が高く、靭性にも劣る。
【0042】
なお、表2には、溶接性として、JIS Z 3158で規定される斜めy形溶接割れ試験を予熱なし(室温)で実施した結果も併記しているが、本発明例、比較例ともCeq、PCMが低いため、いずれもまったく問題なかったことを付記しておく。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】
本発明により、API規格X70級の降伏比が低く、溶接性にも優れる高張力鋼の提供が可能となった。本発明による鋼は、比較的薄手材にも関わらず組織制御することで降伏比が低く抑えられたもので、非水冷型の制御圧延ままで得られるため、短工期で、大量かつ安価に供給できるようになった。このような鋼材を用いることにより、各種の溶接鋼構造物の安全性を一段と向上させることが可能となった。
Claims (4)
- 鋼成分が質量%で、
C:0.05〜0.12%、
Si:0.15〜0.6%、
Mn:1.0〜2.5%、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Nb:0.02〜0.1%、
Ti:0.005〜0.035%、
Al:0.06%以下、
N:0.006%以下、
の範囲内で、
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14、
PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B、
と定義する炭素当量Ceqおよび溶接割れ感受性組成PCMがそれぞれ0.32〜0.45%、0.15〜0.24%となるように含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、鋼の微視組織がフェライトとセメンタイトを含む組織であるパーライトまたはベイナイトを主たる構成組織として、さらにマルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)を組織構成比率で1〜10%を含むことを特徴とする非水冷型薄手低降伏比高張力鋼。 - 上記鋼成分に加え、質量%で、
Cu:0.05〜0.7%、
Ni:0.05〜1.0%の範囲でCu添加量の1/2以上、
Cr:0.05〜1.0%、
Mo:0.05〜1.0%
の範囲内で1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の非水冷型薄手低降伏比高張力鋼。 - 上記鋼成分に加え、質量%で、
V:0.005〜0.1%、
Ta:0.005〜0.1%
の範囲でいずれか1種または両者を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の非水冷型薄手低降伏比高張力鋼。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼組成からなる鋳片または鋼片を、1100〜1300℃の温度に加熱し、950℃以下の温度で累積圧下量を50%以上として700℃以上の温度で熱間圧延を終了した後、放冷することを特徴とする、鋼の微視組織がフェライトとセメンタイトを含む組織であるパーライトまたはベイナイトを主たる構成組織として、さらにマルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(MA−constituent)を組織構成比率で1〜10%を含む非水冷型薄手低降伏比高張力鋼の製造方法。
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