JP4031730B2 - 溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼ならびにその製造方法 - Google Patents

溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼ならびにその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築、土木、海洋構造物、造船、貯槽タンクなどの一般的な構造物に用いる500℃以上700℃以下の温度範囲において、1時間程度の比較的短時間における高温強度が優れた低合金炭素添加の建築構造用高張力耐火鋼(鋼板、鋼管、形鋼)、特に溶接性、ガス切断性に優れた構造用低降伏比490MPa級高張力耐火鋼およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、建築、土木などの分野においては、各種建築用鋼材として、JIS等で規格化された鋼材等が広く利用されている。なお、一般の建築構造用鋼材は、約350℃から強度低下するため、その許容温度は約500℃となっている。
【0003】
すなわち、ビルや事務所、住居、立体駐車場などの建築物に前記の鋼材を用いた場合は、火災における安全性を確保するため、十分な耐火被覆を施すことが義務付けられており、建築関連諸法令では、火災時に鋼材温度が350℃以上にならないように規定されている。
【0004】
これは、前記鋼材では、350℃程度で耐力が常温の2/3程度になり、必要な強度を下回るためである。鋼材を建造物に利用する場合、火災時において鋼材の温度が350℃に達しないように耐火被覆を施して使用される。そのため、鋼材費用に対して耐火被覆工費が高額となり、建設コストが大幅に上昇することが避けられない。
【0005】
上記の課題を解決するため、種々の提案がなされている(例えば、特許文献1〜15参照)。
【0006】
600℃以上の場合、一般に耐火鋼と呼称しており、例えば、600℃で常温降伏強度の2/3以上の高温強度を有する耐火鋼が提案されている(例えば、特許文献1参照)。その他の600℃耐火鋼に関する発明の例でも、600℃での降伏強度を常温降伏強度の2/3以上とすることが一般的となっている。
【0007】
また、鋼中に相当量のMoとNbを添加するとともに、ミクロ組織をベイナイトとすることにより、700℃の耐力として常温耐力の56%以上を確保する耐火鋼が提案されている(例えば、特許文献14参照)。
【0008】
従来提案されている耐火鋼の多くは、Mo、Nb、Cr等の合金を多量に添加するとともに、C量を0.04%以上添加しているため、経済性、溶接性、ガス切断性に問題がある(例えば、特許文献1、8〜13参照)。
【0009】
また、鋼中に含有される成分の炭素当量、即ち、Ceq=C+Mn/6+Si/24/+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14にて定義される炭素当量を0.30%以上と高く設定した発明があるが、同様に経済性、溶接性、ガス切断性に問題がある(例えば、特許文献2、3、5参照)。
【0010】
また、鋼中に0.2%以上のMoに加えて、0.8%以上のMnの添加を必須とした耐火鋼があるが、これも同様に経済性、溶接性、ガス切断性に問題がある(例えば、特許文献4、15参照)。
【0011】
また、耐火鋼中のCeq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14にて定義される炭素当量、あるいは、PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bにて定義される溶接割れ感受性組成の上限を設けて、溶接性の改善を試みているものがあるが、一般鋼と比較するとC及び炭化物形成合金元素の添加量は高く、経済性、溶接性、ガス切断性の問題は本質的に解決されていない(例えば、特許文献6、7参照)。
【0012】
すなわち、これらの例のように600℃程度の高温強度を確保した鋼は、すでに市場でも使用されているが、他の使用性能である溶接性、ガス切断性については劣った鋼材であり、さらに、添加合金コストの観点から、経済性についても問題があった。
【0013】
【特許文献1】
特開平02−077523号公報
【特許文献2】
特開平02−163341号公報
【特許文献3】
特開平03−107420号公報
【特許文献4】
特開平03−271342号公報
【特許文献5】
特開平03−277715号公報
【特許文献6】
特開平04−006245号公報
【特許文献7】
特開平04−136118号公報
【特許文献8】
特開平04−141552号公報
【特許文献9】
特開平04−293716号公報
【特許文献10】
特開平04−308033号公報
【特許文献11】
特開平04−311520号公報
【特許文献12】
特開平05−025540号公報
【特許文献13】
特開平09−176788号公報
【特許文献14】
特開平10−068044号公報
【特許文献15】
特開平10−265895号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように建築物に鋼材を利用する場合、通常の鋼では高温強度が低いため、無被覆や耐火被覆軽減で利用することができず、高価な耐火被覆を施さなければならなかった。
【0015】
また、新しく開発された鋼は、600〜700℃までの高温強度は優れてはいるものの、溶接性、ガス切断性、経済性については問題があり、これらの性能及び廉価に安定して製造可能な鋼材の開発が望まれていた。
【0016】
本発明の目的は500℃以上750℃以下の温度範囲における高温強度及び溶接性、ガス切断性、経済性に優れた高張力鋼及び当該鋼を工業的に安定して供給可能な製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は前述の課題を克服するために、ミクロ組織と添加合金元素量を最適範囲とすることで目的を達成したもので、その要旨は以下に示す通りである。
【0018】
(1) 鋼成分が質量%で、
C:0.005%以上0.04%未満、
Si:0.5%以下、
Mn:0.1%以上0.9%未満、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Mo:0.1以上0.5%未満、
Nb:0.01〜0.080%、
Ti:0.005〜0.025%、
B:0.0005〜0.003%、
Al:0.06%以下、
N:0.006%以下、
かつ、
Ceq(Wes)=C+Mn/6+Si/24+Mo/4
と定義する炭素当量が0.258%以下であり、かつ、
残部が鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼。
【0019】
(2) 質量%でさらに、
Ni:0.05〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%、
Cr:0.05〜0.5
:0.01〜0.1%
の範囲で1種または2種以上を含有し、かつ、
Ceq(Wes)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
と定義する炭素当量が0.258%以下であることを特徴とする上記(1)に記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼。
【0020】
(3) 質量%でさらに、
Ca:0.0005〜0.004%、
REM:0.0005〜0.004%
Mg:0.0001〜0.006%
のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼。
【0021】
(4)
CM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
と定義する溶接割れ感受性組成PCMが0.18%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼。
【0022】
(5) 常温の降伏応力により高温時の降伏応力を無次元化した高温常温降伏応力比p(=高温降伏応力/常温降伏応力)が、鋼材温度T(℃)が500℃以上700℃以下の範囲で、p≧−0.0033×T+2.47を満足することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼。
【0023】
(6) ミクロ組織が常温においてフェライト及びベイナイトの混合組織であり、火災相当の高温加熱時に、オーステナイトに逆変態する温度(Ac1)が750℃超であり、かつ、請求項2に記載の高温強度を有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼。
【0024】
(7) フェライト及びベイナイトの混合母相組織中で高温において熱力学的に安定な炭窒化析出相をモル分率にて5×10-4以上保持するとともに、BCC相中に固溶するMo、Nbの合計量がモル濃度にて2×10-3以上であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼。
【0025】
(8) ベイナイトとフェライトの混合組織として、ベイナイトの分率が20〜90%であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用低降伏比490MPa級高張力耐火鋼。
【0026】
(9) 旧オーステナイト粒の平均円相当径が120μm以下であることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力高靭性耐火鋼。
【0027】
(10) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の鋼成分からなる鋼片または鋳片を1100〜1250℃の温度範囲に再加熱後、1100℃以下での累積圧下量を30%以上として、850℃以上の温度で圧延し、圧延終了後800℃以上の温度から650℃以下の温度までの冷却速度を0.3Ks-1以上として、ミクロ組織をベイナイトとフェライトの混合組織とすることを特徴とする溶接性、ガス切断性に優れた構造用低降伏比490MPa級高張力耐火鋼の製造方法
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明者らはすでに、600℃、700℃の高温強度が優れた鋼を見出した。600℃の高温強度が優れた鋼はすでに建築分野で使用されているが、市場では溶接性やガス切断性等の使用性能が高く、かつ廉価な鋼材への極めて強い要求がある。
【0029】
高温強度増加に対しては、Mo、Nbの複合添加により高温にて安定な炭窒化物の析出を促進するとともに、ミクロ組織のベイナイト化により転位密度の増大し、さらには固溶Mo及びNbにより転位回復の遅延を図ることが有効である。しかし、硬質ベイナイトの分率が過剰であると、常温の強度が過大となるため、所要の常温強度に応じて、ミクロ組織を適切なベイナイト分率を有するベイナイトとフェライトの混合組織とする。適切なミクロ組織を造り込み、所要の常温強度範囲を達成するには低C化が有効である。低C化は、ベイナイトとフェライトの混合母相組織の高温における熱力学的安定性を高め、オーステナイトへの逆変態温度(Ac1)を上昇させる効果も持つ。しかし、この場合、ミクロ組織及び材質が圧延条件とその後の冷却条件により影響を受けやすく、安定的な製造が困難である。そこで、ミクロ組織制御と高温強度の増加に取り組んだ結果、適量のB添加及び適切な温度履歴制御が品質安定化に有効であることを知見し、本発明に至った。
【0030】
高温における強度を確保するとともに、一般的な溶接構造用鋼としての、溶接性、ガス切断性、低降伏強度比等の特性を従来と同様に具備することは、極めて困難な課題であった。この課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討し、500℃以上の高温強度はMo、Nb、V、Ti等の合金元素の複合添加による析出強化とミクロ組織のベイナイト化による転位密度の増大、さらには固溶Mo、Nb、Vによる転位回復遅延が有効であり、Tiも若干の効果があることを突き止めた。従って、500℃以上の高温強度と常温の強度、常温と高温の強度比(YS比=高温強度/常温強度)の全てを同時に確保するためには、ミクロ組織を適切なベイナイトとフェライトの混合組織とするとともに、添加合金元素量を最適範囲として、高温における母相組織の熱的安定性と適切な整合析出強化効果及び転位回復遅延効果を得ることが重要であることを見出した。
【0031】
鋼材の降伏強度は、一般に450℃近傍から急激に低下するが、これは、温度上昇に伴い熱活性化エネルギーが低下し、転位のすべり運動に対して低温では有効であった抵抗が無効となるためである。本発明者らはMo、Nb、V、Tiの複合炭窒化物は、転位のすべり運動に対して600℃程度の高温まで有効な抵抗として作用することを見出した。さらに、BCC相中に固溶したMo、Nb、V、Tiは、転位回復遅延に対して有効であり、降伏強度の急激な低下が始まる温度を高温化する効果を持つことを知見するに至った。したがって、500℃以上750℃以下の温度範囲において、鋼材温度をT(℃)として、高温常温降伏応力比p(=高温降伏応力/常温降伏応力)が、p≧−0.0033×T+2.47を満足する、すなわち、降伏応力比が500℃、600℃、700℃で、それぞれ82%、49%、16%以上となるためには、当該温度におけるMo、Nb、V、Tiの複合炭窒化物はモル分率にて5×10-4以上であるとともに、BCC相中に固溶するMo、Nb、V、Tiの合計量がモル濃度にて2×10-3でなければならない。
【0032】
高温強度発現に重要である複合炭窒化析出相の組成は、例えば電子顕微鏡やEDXによる分析により容易に同定可能である。
【0033】
また、熱力学的に安定な析出相の平衡生成量及びBCC相中の固溶合金元素量については、市販の熱力学計算データベースソフト等利用することにより、添加合金元素量より容易に算出可能である。
【0034】
ミクロ組織におけるフェライトの分率が増加し、ベイナイトの分率が20%未満に低下すると、常温及び高温の強度が低下し、Mo、Nb、Ti、V等の合金元素をより多く添加する必要が生じる。ミクロ組織に占めるフェライトの分率が過大となると、添加合金元素の増加による常温及び高温の強度確保は困難になる。逆にミクロ組織におけるフェライトの分率が低下し、ベイナイトの分率が90%超に増加すると常温及び高温の強度が上昇し、Mo、Nb、Ti、V等の合金元素添加量を低減する必要が生じる。さらに、ミクロ組織に占めるベイナイト分率が過大となると、高温強度については達成可能であるが、常温強度の上昇、HAZ靭性の劣化、溶接性の劣化が顕著となり添加合金元素の低減による所要の強度範囲、HAZ靭性及び溶接性の確保が困難となる。
【0035】
このため、本発明鋼ではミクロ組織をベイナイトとフェライトの混合組織とし、ベイナイトの分率を20%〜90%の範囲内とする。
【0036】
本発明者らは、ミクロ組織をベイナイトとフェライトの混合組織とし、かつ、ベイナイト分率を安定的に20〜90%の範囲に保つ方法について検討し、適量のB添加が必須であることを見出した。
【0037】
本発明が、請求項の通りに鋼成分および製造方法を限定した理由について説明する。
【0038】
常温と高温の強度を同時に確保するためには、高温にて熱力学的に安定な炭窒化相を形成するとともに、転位回復に対して遅延作用をもたらす、Mo、Nb、Tiの添加が必要であり、490MPa以上の高張力鋼では、Mo:0.1以上0.5%未満、Nb:0.01〜0.15%、Ti:0.005〜0.025%が必要である。
【0039】
Mo、Nb、Ti、V等は主に高温強度の確保のためであり、SiとMnの範囲限定は常温強度を所定の範囲に抑制するためである。
【0040】
鋼の加熱温度はMo、Nb、Ti、Vをできるだけ固溶状態とするために高い温度が望ましいが、母材の靭性確保の観点から1100〜1250℃に限定した。
【0041】
圧延終了温度は低温域の圧下でNb、Ti、Vが炭化物として析出するため850℃が下限の温度であり、1100℃を超える温度で圧延を終了すると靭性が不足するためである。
【0042】
なお、本発明鋼を製造後、脱水素などの目的でAc1変態点以下の温度に再加熱しても、本発明鋼の特徴は何ら損なわれることはない。
【0043】
次に、本説明に関わるその他の成分元素とその添加量について説明する。
【0044】
Cは、鋼材の特性に最も顕著な効果を及ぼすもので、狭い範囲に制御されなければならない。0.005以上0.04%未満が限定範囲である。これ未満のC量では強度が不足し、この以上となると圧延終了後の冷却速度が過大の場合はベイナイトの生成分率が増加し強度が超過、逆に冷却速度が過小の場合はベイナイトの生成分率が低下して強度が不足する。さらに、火災相当の高温加熱時に、ベイナイトとフェライトの混合母相組織を熱力学的に安定に保ち、Mo、Nb、V、Tiの複合炭窒化析出物との整合性を維持して、強化効果を確保する上でもCを0.04%未満とする必要がある。
【0045】
Siは、脱酸上鋼に含まれる元素であり、置換型の固溶強化作用を持つことから常温での母材強度向上に有効であるが、特に600℃超の高温強度を改善する効果はない。また、多く添加すると溶接性、HAZ靭性が劣化するため、上限を0.5%に限定した。鋼の脱酸はTi、Alのみでも可能であり、HAZ靭性、焼入性などの観点から低いほど好ましく、必ずしも添加する必要はない。
【0046】
Mnは、強度、靭性を確保する上で不可欠な元素ではあるが、置換型の固溶強化元素であるMnは、常温での強度上昇には有効であるが、特に600℃超の高温強度にはあまり大きな改善効果はない。したがって、本発明のような比較的多量のMoを含有する鋼において溶接性向上すなわちPCM低減の観点から0.9%未満に限定した。Mnの上限を低く抑えることにより、連続鋳造スラブの中心偏析の点からも有利となる。なお、下限については、母材の強度、靭性調整の観点から、0.1%とした。
【0047】
常温の降伏強度及び引張り強度を490MPa級以上の高張力鋼の所要範囲とするためには、圧延終了後800℃以上の温度から650℃以下の温度までの冷却速度を0.3Ks-1以上とする必要がある。すなわち、約25mm未満の比較的薄い鋼板は空冷にて、約25mm超の比較的厚い鋼板は加速冷却(水冷)を適用して製造する必要がある。
【0048】
Pは、本発明鋼においては不純物であり、P量の低減はHAZにおける粒界破壊を減少させる傾向があるため、少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接部の低温靭性を劣化させるため上限を0.02%とした。
【0049】
Sは、Pと同様本発明鋼においては不純物であり、母材の低温靭性の観点からは少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接部の低温靭性を劣化させるため上限を0.01%とした。
【0050】
Moは、700℃、800℃の高温強度を確保する上で必要不可欠の元素で、本発明においては最も重要な元素の一つである。ただし、Moは、高価な合金元素であるとともに価格の変動が大きく、経済性に問題がある。したがって、Mo添加量は可能な限り少量とすることが望ましい。そこで、下限を0.1%とした。
【0051】
Moは、高温強度増加に対しては有効であるが、多量に添加した場合、ガス切断性が劣化し、冷間でのガス切断において割れが発生する。したがって、Mo添加量は、ガス切断性を顕著に悪化させない0.5%未満とすることが必要である。また、0.5%以上の添加は、母材及びHAZ靭性の劣化の要因となり、経済性を低下させるため、0.1〜0.5%未満が限定範囲である。
【0052】
Nbは、Moを比較的多量添加する本発明においては、700℃、800℃の高温強度を確保するために重要な役割を演ずる元素である。まず、一般的な効果として、オーステナイトの再結晶温度を上昇させ、熱間圧延時の制御圧延の効果を最大限に発揮する上で有用な元素である。また、圧延に先立つ再加熱や焼きならしや焼き入れ時の加熱オーステナイトの細粒化にも寄与する。さらに、析出強化及び転位回復抑制による高温強度向上効果を有し、Moとの複合添加により高温強度向上に寄与する。0.01%未満では700℃及び800℃における析出硬化及び転位回復抑制の効果が少なく、0.080%を超えると添加量に対し効果の度合いが減少し、経済的にも好ましくない。また、溶接時の靭性も低下する。よって0.01〜0.080%、好ましくは0.03〜0.080%が限定範囲である。
Tiは、Nbと同様に高温強度上昇に有効である。とくに、母材および溶接部靭性に対する要求が厳しい場合には、添加することが好ましい。なぜならばTiは、Al量が少ないとき(例えば0.003%以下)、Oと結合してTi 2 3 を主成分とする析出物を形成、粒内変態フェライト生成の核となり溶接部靭性を向上させる。また、TiはNと結合してTiNとしてスラブ中に微細析出し、加熱時のγ粒の粗大化を抑え圧延組織の細粒化に有効であり、また鋼板中に存在する微細TiNは、溶接時に溶接熱影響部組織を細粒化するためである。これらの効果を得るためには、Tiは最低0.005%必要である。しかし多すぎるとTiCを形成し、低温靭性や溶接性を劣化させるので、その上限は0.025%である。
【0053】
Bは、ベイナイトの生成分率を介して強度を制御する上で極めて重要である。すなわち、Bはオーステナイト粒界に偏析してフェライトの生成を抑制することを介して焼入性を向上させ、空冷のような冷却速度が比較的小さい場合においてもベイナイトを安定的に生成させるのに有効である。この効果を享受するため、最低0.0005%以上必要である。しかし、多すぎる添加は焼入性向上効果が飽和するだけでなく、旧オーステナイト粒界の脆化や靭性上有害となるB析出物を形成する可能性があるため、上限を0.003%とした。なお、タンク用鋼などとして、応力腐食割れが懸念されるケースでは、母材および溶接熱影響部の硬さの低減がポイントとなることが多く(例えば、硫化物応力腐食割れ(SCC)防止のためにはHRC≦22(HV≦248)が必須とされる)、そのようなケースでは焼入性を増大させる過剰なB添加は好ましくない。
【0054】
Alは、一般に脱酸上鋼に含まれる元素であるが、脱酸はSiまたはTiだけでも十分であり、本発明鋼においては、その下限は限定しない(0%を含む)。しかし、Al量が多くなると鋼の清浄度が悪くなるだけでなく、溶接金属の靭性が劣化するので上限を0.06%とした。
【0055】
Nは、不可避的不純物として鋼中に含まれるものであるが、後述するTiやNbを添加した場合、TiNを形成して鋼の性質を高め、Nbと結合して炭窒化物を形成して強度を増加させる。このため、N量として最低0.001%必要である。しかしながら、N量の増加はHAZ靭性、溶接性に極めて有害であり、本発明鋼においてはその上限は0.006%である。
【0056】
次に、必要に応じて含有することができるNi、Cu、Cr、V、Ca、REM、Mgの添加理由と添加量範囲について説明する。
【0057】
基本となる成分に、さらにこれらの元素を添加する主たる目的は、本発明鋼の優れた特徴を損なうことなく、強度、靭性などの特性を向上させるためである。したがって、その添加量は自ずと制限されるべき性質のものである。
【0058】
Niは、溶接性、HAZ靭性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度、靭性を向上させる。これら効果を発揮させるためには、少なくとも0.05%以上の添加が必須である。一方、過剰な添加すると経済性を損なうだけでなく、溶接性に好ましくないため、上限を1.0%とした。
【0059】
Cuは、Niとほぼ同様の効果、現象を示し、上限の1.0%は溶接性劣化に加え、過剰な添加は熱間圧延時にCu−クラックが発生し製造困難となるため規制される。下限は実質的な効果が得られるための最小量とすべきで0.05%である。
【0060】
Crは、母材の強度、靭性をともに向上させる。しかし、添加量が多すぎると母材、溶接部の靭性および溶接性を劣化させるため、限定範囲を0.05〜0.5%とした。
【0061】
上記、Cu、Ni、Crは、母材の強度、靭性上の観点のみならず、耐候性にも有効であり、そのような目的においては、溶接性を損ねない範囲で添加することが好ましい。
【0063】
Vは、Nbとほぼ同様の作用を有するものであるが、Nbに比べてその効果は小さい。また、Vは焼き入れ性にも影響を及ぼし、高温強度向上にも寄与する。Nbと同様の効果は0.01%未満では効果が少なく、上限は0.1%まで許容できる。
【0064】
Ca、REMは不純物であるSと結合し、靭性の向上や溶接部の拡散水素による誘起割れを抑制する働きを有するが、多すぎると粗大な介在物を形成し悪影響を及ぼすので、それぞれ0.0005〜0.004%、0.0005〜0.004%が適正範囲である。
【0065】
Mgは、溶接熱影響部においてオーステナイト粒の成長を抑制し、微細化する作用があり、溶接部の強靭化が図れる。このような効果を享受するためには、Mgは0.0001%以上必要である。一方、添加量が増えると添加量に対する効果代が小さくなり、経済性を失するため、上限は0.006%とした。
【0066】
鋼の個々の成分を限定しても、成分系全体が適切でないと優れた特性は得られない。このため、Ceq(Wes)の値を0.258%以下の範囲に限定する。Ceq(Wes)は溶接性、とくに溶接部熱影響部靭性に関する指標で、一般的に低いほど溶接性、溶接部熱影響部靭性が向上する。本発明鋼においては、Ceq(Wes)が0.258%以下の範囲であれば優れた溶接性、溶接部熱影響部靭性の確保が可能である。なお、溶接割れ感受性組成Ceq(Wes)は以下の式により定義される。
Ceq(Wes)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
上記式中において、鋼成分に含まれない元素は0とする。
【0067】
さらに、PCMの値を0.18%以下の範囲に限定する。PCMは溶接性を表す指標で、低いほど溶接性は良好である。本発明鋼においては、PCMが0.18%以下の範囲であれば優れた溶接性の確保が可能である。なお、溶接割れ感受性組成PCMは以下の式により定義される。
CM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
上記式中において、鋼成分に含まれない元素は0とする。
【0068】
なお、Mo、Nb、Vと同様に、Wを適当量添加して、高温強度を確保することも本発明鋼の特性を向上させる有効な手段である。
【0069】
さらに、鋼板の最終圧延方向の板厚断面方向1/4厚位置において、最終変態組織の旧オーステナイト粒径を平均円相当直径で120μm以下に限定する。これは、旧オーステナイト粒径が組織とともに靭性に大きな影響を及ぼすためで、特に本発明のような比較的多量のMo添加鋼において靭性を高めるためには、旧オーステナイト粒径を小さく制御することは重要かつ必須である。前記旧オーステナイト粒径の限定理由は、発明者らの製造条件を種々変更した実験結果に基づくもので、平均円相当直径で120μm以下であれば、本発明よりも低Moである鋼と遜色ない靭性を確保できる。なお、旧オーステナイト粒は、その判別が必ずしも容易ではないケースも少なからずある。このような場合には、板厚1/4厚位置を中心として、鋼板の最終圧延方向と直角方向に採取した切り欠き付き衝撃試験片、例えば、JIS Z 2202 4号試験片(2mmVノッチ)などを用い、十分低温で、脆性破壊させた際の破面単位を旧オーステナイト粒径と読み替え得る有効結晶粒径と定義し、その平均円相当直径を測定することとし、この場合でも同様に120μm以下であることが必要である。
【0070】
【実施例】
転炉−連続鋳造−厚板工程で種々の鋼成分の鋼板(厚さ15〜50mm)を製造し、その強度、降伏比(YR)、靭性、600、700℃における降伏強さ、室温におけるガス切断時のスラブ割れの有無等を調査した。
【0071】
表1及び表2に比較鋼とともに本発明鋼の鋼成分を、表3に鋼板の製造条件および組織、表4に諸特性の調査結果を示す。
【0072】
【表1】
Figure 0004031730
【0073】
【表2】
Figure 0004031730
【0074】
【表3】
Figure 0004031730
1) 鋼板の最終圧延方向の板厚断面方向1/4厚位置での旧オーステナイト粒の平均円相当直径。
2) JIS Z 3158:斜めy形溶接割れ試験。
【0075】
【表4】
Figure 0004031730
3) 700℃における降伏強度の常温における降伏強度規格値下限に対する比。
4) 700℃における降伏強度の常温における降伏強度実績に対する比。
5) 800℃における降伏強度の常温における降伏強度規格値下限に対する比。
6) 800℃における降伏強度の常温における降伏強度実績に対する比。
7) PT:1400℃、Δt8/5=99S。
【0076】
本発明鋼No.1、2、4〜6、8〜12、14〜18の例では、全てミクロ組織がフェライト・ベイナイトの混合組織となっており、かつ旧オーステナイト粒径の平均円相当直径が120μm以下である。さらに、490MPa級鋼の常温の強度レベルを満足し、降伏比(YR)も71〜76%で80%未満である。また、700℃、800℃のYSが常温での規格降伏強度のそれぞれ、67%、25%以上の良好な値で、実績降伏強度の比についても、700℃、800℃でそれぞれ64%、23%以上の優れた値である。
【0077】
これに対し、比較鋼No.19では、Cが過剰であり、ベイナイト分率が過大となって、高温強度については高い値が得られているが、常温の降伏強度が490MPa級の上限を超える結果であった。
【0078】
比較鋼No.20では、Cが不足であり、常温、高温ともに490MPa級として降伏強度が不足である。
【0079】
比較鋼No.21では、Si+Mn量が0.6%を超えているため、常温での固溶強化効果が過剰となって、常温の降伏強度が490MPa級の規格値上限を超え、YRも80%超であった。
【0080】
逆に、比較鋼No.22では、Si+Mn量が0.2%未満のため、常温での固溶強化効果が不足となって、常温及び700℃の降伏強度、常温の引張り強度が490MPa級の規格値下限を下回った。
【0081】
比較鋼No.23では、Pが0.02%を超えているため、母材の延性脆性遷移温度、0℃での再現HAZの吸収エネルギー値ともに劣化している。
【0082】
比較鋼No.24では、Sが0.01%を超えているため、比較鋼No.23と同様に、母材の延性脆性遷移温度、0℃での再現HAZの吸収エネルギー値ともに劣化している。
【0083】
比較鋼No.25ではMoの添加量不足により、炭窒化析出相、BCC相中固溶Moがともに不足したため、常温強度、YR等は良好な結果であるが、700℃の降伏強度が217MPa(490MPa級常温規格強度の2/3)未満で、800℃の強度も62MPa(490MPa級常温規格強度の2/9)未満と低い。また、実績の高温常温降伏強度比も700℃、800℃について、それぞれ、45%、15%と低い。
【0084】
比較鋼No.26では、Mo量が過剰で、ミクロ組織がベイナイト単相となり、常温の降伏強度及び引張り強度が490MPa級の規格値上限を超えている。また、再現HAZの吸収エネルギー値も低い。
【0085】
比較鋼No.27では、Nb量が不足し、700℃、800℃において十分な析出硬化効果を得ることができなかったため、700℃、800℃の降伏強度が不足した。
【0086】
逆に、比較鋼No.28では、Nb量が過剰であるため、高温強度については高い値が得られるが、再現HAZの吸収エネルギー値は低い。
【0087】
比較鋼No.29では、Ti量が不足し、再加熱時のγ粒の粗大化抑制効果を十分に得ることができず、またTi析出物量が十分でないため、再現HAZの吸収エネルギー値は低い。
【0088】
比較鋼No.30では、Ti量が過剰であるため、母材の延性脆性遷移温度、再現HAZ吸収エネルギー値ともに劣化している。
【0089】
比較鋼No.31では、B添加量が不足し、十分な焼入れ性を得ることができず、ミクロ組織のベイナイト分率が過少のため、常温、高温ともに降伏強度が490MPa級の規格値下限を下回った。
【0090】
比較鋼No.32では、B添加量が過剰なため、母材の延性脆性遷移温度は0℃近傍にあり、再現HAZの吸収エネルギー値は低い。
【0091】
比較鋼No.33では、Al量が0.06%を超えているため、母材の延性脆性遷移温度は0℃近傍にあり、再現HAZ靭性も低い。
【0092】
比較鋼No.34では、N量が0.006%を超えているため、再現HAZ靭性は低い。
【0093】
比較鋼No.35では、PCM値が0.18%を超えており、予熱なしでのy割れ試験においてルート割れが発生した。また、再現HAZ吸収エネルギー値も低い。
【0094】
比較鋼No.36では、再加熱温度が1100℃未満のため、再加熱時に添加合金元素がオーステナイト中に固溶せずに十分な析出強化が得られず、常温については降伏強度、引張り強度、YRともに良好な結果であるが、700℃の降伏強度が217MPa(490MPa級常温規格強度の2/3)未満で、800℃の強度も72MPa(490MPa級常温規格強度の2/9)未満と低い。
【0095】
比較鋼No.37では、再加熱温度が1250℃を超えたため、再加熱時にオーステナイト粒が粗大化し、再現HAZの吸収エネルギー値が低くなっている。
【0096】
比較鋼No.38では、比較鋼No.10と同成分であるが、1100℃以下での累積圧下量が30%未満のため、旧オーステナイト粒が粗大であり、再現HAZ靭性が低い。
【0097】
比較鋼No.39では、比較鋼No.10と同成分であるが、850℃未満の温度で圧延を行ったため、Nb、Ti、Vの析出が促進され十分な析出強化が得られず、常温強度については規格値を満足するが、高温の降伏強度が不足している。
【0098】
比較鋼No.40では、Ti量とN量がともに少なく、かつ、再加熱温度も1250℃と高いため、再加熱時にオーステナイトが120μm超に粗大化し、フェライトの変態が抑制され、ベイナイト単相のミクロ組織となり、高温強度については高い値が得られているが、常温の降伏強度が490MPa級の規格上限を超過した。
【0099】
比較鋼No.41では、Si+Mn量が0.2%未満のため、常温での固溶強化効果が不足となって、常温の引張り強度が規格値下限を下回り、700℃、800℃の降伏強度についても、それぞれ、217MPa未満、72MPa未満と低い。
【0100】
逆に、比較鋼No.42では、圧延後水冷による組織強化効果に加えて、Si+Mn量が0.6%を超えているため、常温での固溶強化効果が過剰となって、常温の降伏強度、引張り強度が490MPa級の規格値上限を超え、YRも80%超であった。
【0101】
比較鋼No.43では、板厚25mm超であるため、加速冷却を適用し、0.3Ks-1以上の冷却速度の確保を図ったが、水冷開始温度が700℃未満であり、圧延終了後〜冷却開始(690℃)の冷却速度が0.3Ks-1以下となり、水冷開始前にフェライトの変態が進行したため、ベイナイト分率が20%未満となって、常温、高温ともに490MPa級として強度が不足した。
【0102】
比較鋼No.44では、Ti量とN量がともに少なく、かつ、再加熱温度も1250℃と高いため、再加熱時にオーステナイトが120μm超に粗大化し、フェライトの変態が抑制され、ベイナイト単相のミクロ組織となり、高温強度については高い値が得られているが、常温の降伏強度、引張り強度が490MPa級の規格上限を超過した。
【0103】
【発明の効果】
本発明の化学成分及び製造法で製造した鋼材は、ミクロ組織がフェライト・ベイナイトの混合組織であり、常温強度が490MPaの規格値を満足し、YRが80%以下、700℃、800℃の降伏強度がそれぞれ常温規格値の2/3以上、2/9以上等の特性を持ち、建築用耐火鋼材としての必要な特性を兼ね備えており、従来になく全く新しい鋼材である。

Claims (10)

  1. 鋼成分が質量%で、
    C:0.005%以上0.04%未満、
    Si:0.5%以下、
    Mn:0.1%以上0.9%未満、
    P:0.02%以下、
    S:0.01%以下、
    Mo:0.1以上0.5%未満、
    Nb:0.01〜0.080%、
    Ti:0.005〜0.025%、
    B:0.0005〜0.003%、
    Al:0.06%以下、
    N:0.006%以下、
    かつ、
    Ceq(Wes)=C+Mn/6+Si/24+Mo/4
    と定義する炭素当量が0.258%以下であり、かつ、
    残部が鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼。
  2. 質量%でさらに、
    Ni:0.05〜1.0%、
    Cu:0.05〜1.0%、
    Cr:0.05〜0.5
    :0.01〜0.1%
    の範囲で1種または2種以上を含有し、かつ、
    Ceq(Wes)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
    と定義する炭素当量が0.258%以下であることを特徴とする請求項1に記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼。
  3. 質量%でさらに、
    Ca:0.0005〜0.004%、
    REM:0.0005〜0.004%
    Mg:0.0001〜0.006%
    のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼。
  4. CM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
    と定義する溶接割れ感受性組成PCMが0.18%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼。
  5. 常温の降伏応力により高温時の降伏応力を無次元化した高温常温降伏応力比p(=高温降伏応力/常温降伏応力)が、鋼材温度T(℃)が500℃以上700℃以下の範囲で、p≧−0.0033×T+2.47を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼。
  6. ミクロ組織が常温においてフェライト及びベイナイトの混合組織であり、火災相当の高温加熱時に、オーステナイトに逆変態する温度(Ac1)が750℃超であり、かつ、請求項2に記載の高温強度を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼。
  7. フェライト及びベイナイトの混合母相組織中で高温において熱力学的に安定な炭窒化析出相をモル分率にて5×10-4以上保持するとともに、BCC相中に固溶するMo、Nbの合計量がモル濃度にて2×10-3以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力耐火鋼。
  8. ベイナイトとフェライトの混合組織として、ベイナイトの分率が20〜90%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用低降伏比490MPa級高張力耐火鋼。
  9. 旧オーステナイト粒の平均円相当径が120μm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の溶接性、ガス切断性に優れた構造用490MPa級高張力高靭性耐火鋼。
  10. 請求項1〜4のいずれかに記載の鋼成分からなる鋼片または鋳片を1100〜1250℃の温度範囲に再加熱後、1100℃以下での累積圧下量を30%以上として、850℃以上の温度で圧延し、圧延終了後800℃以上の温度から650℃以下の温度までの冷却速度を0.3Ks-1以上として、ミクロ組織をベイナイトとフェライトの混合組織とすることを特徴とする溶接性、ガス切断性に優れた構造用低降伏比490MPa級高張力耐火鋼の製造方法
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