JP4709632B2 - 高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法 - Google Patents

高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法に関するものである。
高温耐力の確保を目的とした建築用途でのいわゆる耐火鋼は、特開平2−77523号公報などをはじめとして多くの技術が開示されている。しかし、そのほとんどはMoを含有するものである。確かに、Moは、鋼の高温耐力を確保する上で極めて有効な元素であるが、同時に高価な元素でもある。
ところで、JIS等で規格化されている一般の構造用鋼は、約350℃から強度低下するため、その許容温度は約500℃となっている。すなわち、ビルや事務所、住居、立体駐車場などの建築物に前記の鋼材を用いた場合は、火災時における安全性を確保するため、十分な耐火被覆を施すことが義務付けられており、建築関連諸法令では、火災時に鋼材温度が350℃以上にならないように規定されている。これは、前記鋼材では、350℃程度で耐力が常温の2/3程度になり、必要な強度を下回るためである。このため、一般鋼材を建造物に利用する場合、火災時において鋼材の温度が350℃に達しないように耐火被覆を施す必要がある。したがって、耐火鋼製造においては、一般鋼+耐火被覆ならびにその施工コストに見合うものであることが前提となる。
特開平2−77523号公報
ところが、高温耐力維持を目的として一般に添加されるMoは市況変化が大きく、添加量にもよるが、耐火被覆コストと見合わない状況も出てくることもある。このため、Moを添加しない安価な高温強度保証鋼の開発・実用化が待たれていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、市況変動の大きいMoを添加せずに優れた高温強度とともに鋼材の基本性能の一つである低温靭性にも優れる溶接構造用高張力鋼を得るため、比較的低いCと比較的高いNbをベースに鋼成分を溶接割れ感受性組成PCMとともに特定範囲に限定し、さらに製造方法を限定することで、工業的に安定して、しかも低コストで供給可能な方法を提供するものである。
本発明は、高温耐力確保・維持にきわめて有効なために通常用いられるMoを添加することなく、高温耐力を安定して確保するため、比較的高いNb添加によるNb析出物(炭窒化物)を利用するものである。Moを含有しない高温耐力保証鋼は、それ自体きわめて画期的であると同時に、焼入性の高いMoを含有しないことで、溶接構造用鋼としての基本性能(強度、靭性)はもちろん、溶接性やガス切断性をもかえって向上させることにもつながる。そして本発明によれば、火災時など高温にさらされる環境でも十分な耐力を有する溶接構造用高張力鋼が大量かつ安価に供給できるため、種々の用途の広範な溶接鋼構造物の安全性向上に資することが可能になる。
本願発明は、Nb、Moのみならず、C、Si、Mnをはじめとする個々の合金元素量およびPCMを限定し、さらに製造条件を限定することで、溶接構造用鋼としての各種使用性能はもちろん、優れた高温強度と低温靭性を両立させたものであり、その要旨は以下の通りである。
本発明の高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法は、成分が質量%で、C:0.005%以上0.05%以下、Si:0.40%以下、Mn:0.8%以上2.0%以下、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Nb:0.03%以上0.30%以下かつNb≧2C、Al:0.060%以下、N:0.001%以上0.006%以下であり、Mo:0.03%以下で、残部が鉄および不可避的不純物からなり、PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bで定義されるPCM値が0.16%以下である鋳片または鋼片を、1000℃以上1300℃以下の温度に加熱し、オーステナイト未再結晶温度域での累積圧下量を30%以上として750℃以上の温度で熱間圧延を終了した後、680℃以上の温度から加速冷却を開始し、350℃以下の温度で加速冷却を停止することを特徴とする。
また本発明の高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法においては、上記の成分に加えて質量%で、V:0.01%以上0.20%以下の範囲でさらに含有されていることが好ましい。
更に本発明の高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法においては、さらに質量%で、Ni:0.05%以上0.50%、Cu:0.05%以上0.50%以下、Cr:0.05%以上0.50%以下、B:0.0002%以上0.003%以下、Mg:0.0002%以上0.005以下%、の範囲でこれら1種または2種以上の元素が含有されていることが好ましい。
更にまた本発明の高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法においては、さらに質量%で、Ca:0.0005%以上0.004%以下、REM:0.0005%以上0.008%以下、の範囲でこれら1種または2種の元素が含有されていることが好ましい。
本発明により、高温強度と低温靭性に優れた溶接構造用高張力鋼が大量かつ安価に提供できるようになった。その結果、建築構造用として、耐火被覆の軽減または省略が可能となった。また、建築以外の用途においても、強度、靭性などの基本性能を具備した上で、さらに高温強度をも具備したため、高温に晒される可能性のある溶接構造物用鋼として、構造物の安全性を一段と高めることができるようになった。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明に係る高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法は、特定の組成の鋳片または鋼片を、1000〜1300℃の温度に加熱し、オーステナイト未再結晶温度域での累積圧下量を30%以上として750℃以上の温度で熱間圧延を終了した後、680℃以上の温度から加速冷却を開始し、350℃以下の温度で加速冷却を停止する、というものである。以下、本発明に係る溶接構造用高張力鋼の製造方法について、詳細に説明する。
本発明に係る鋳片または鋼片は、例えば、転炉において成分調整がなされ、連続鋳造法により鋳造されてなるものであって、C:0.005%以上0.05%、Si:0.40%以下、Mn:0.8%以上2.0%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Nb:0.03%以上0.30%かつNb≧2C、Al:0.060%以下、N:0.001%以上0.006%、さらに、Moが不可避的不純物として含有する程度の0.03%以下で、実質的にMoを含有せず、残部が鉄および不可避的不純物からなるものである。ここで、REMとは希土類元素である。
また、本発明に係る鋳片または鋼片は、PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bで定義される溶接割れ感受性組成PCM値が0.16%以下となるものである。
以下、鋼成分の限定理由並びに溶接割れ感受性組成PCM値について説明する。
Cは、高張力鋼としてはきわめて低いレベルに限定しており、本発明の特徴の一つである。これは、後述する他の成分とともに製造方法とも密接に関係している。鋼成分の中でもCは鋼材の特性に最も大きな影響を及ぼすもので、下限0.005%は強度確保や溶接などの熱影響部が必要以上に軟化することのないようにするための最小量である。しかし、C量が多すぎると焼入性が必要以上に上がり、鋼材が本来有すべき強度、靱性のバランス、溶接性などに悪影響を及ぼしたり、さらに、後述する比較的低温で加速冷却を停止する本発明に係る製造方法においては、鋼材表層の極端な硬化や板厚断面方向の材質変動を抑えるため、上限を0.05%とした。
Siは、脱酸上鋼に含まれる元素であるが、多く添加すると溶接性、HAZ靭性が劣化するため、上限を0.40%に限定した。鋼の脱酸はTi、Alのみでも十分可能であり、HAZ靱性、焼入性などの観点から低いほど好ましく、このようなことからSiは必ずしも添加する必要はない。
Mnは、常温の強度、靭性を確保する上で不可欠な元素であり、その下限は0.8%である。しかし、Mn量が多すぎると焼入性が上昇して溶接性、HAZ靭性を劣化させるだけでなく、連続鋳造スラブの中心偏析を助長するので上限を2.0%とした。
Pは、本発明鋼においては不純物であり、P量の低減はHAZにおける粒界破壊を減少させる傾向があるため、少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接部の低温靭性を劣化させるため上限を0.020%とした。
Sは、Pと同様本発明鋼においては不純物であり、母材の低温靭性の観点からは少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接部の低温靭性を劣化させるため上限を0.010%とした。
Nbは、本発明における最も重要な元素の一つである。なぜなら、Moフリーの本発明鋼においては、高温耐力確保のためNbの析出物(炭窒化物)を利用しているからである。常温強度をNb析出物による析出硬化で増加させるためには、比較的少ない量で良いが、高温時の耐力を確保するためには、0.03%以上で、かつ、少なくともC量の2倍以上のNb含有が必要である。上限については、必ずしも限界を見極めたわけではないが、本発明者らの実験により、溶接部の大幅な靭性劣化を招かない範囲として、本発明では0.30%とした。なお、Nb添加は、オーステナイトの未再結晶温度を上昇させ、熱間圧延時の制御圧延の効果を最大限に発揮することにも寄与する。
Alは、一般に脱酸上鋼に含まれる元素であるが、脱酸はSiまたはTiだけでも十分であり、本発明鋼においては、その下限は限定しない。しかし、Al量が多くなると鋼の清浄度が悪くなるだけでなく、溶接金属の靭性が劣化するので上限を0.060%とした。
Nは、不可避的不純物として鋼中に含まれるものであるが、Nbと結合して炭窒化物を形成して強度を増加させ、また、TiNを形成して前述のように鋼の性質を高める。このため、N量として最低0.001%必要である。しかしながら、N量の増加は溶接熱影響部の靭性、溶接性に有害であり、本発明鋼においてはその上限は0.006%である。
次に必要に応じて含有することができるV、Tiの添加理由について説明する。
Vは、Nbとほぼ同様の効果を有し、本発明におけるVの役割は、Nbを補完するものである。ただし、Vは、Nbに比べて効果は小さく、焼入れ性にも影響を及ぼすため、上下限を限定したものだが、下限はV添加の効果を確実に享受できる最少量として0.01%に、上限はあくまでNbの補完的役割であることと後述するPCMへの影響も勘案し0.20%とした。
Tiは、鋼母材および溶接熱影響部の靭性向上のために必須である。なぜならばTiは、Al量が少ないとき(例えば0.003%以下)、O(酸素)と結合してTiを主成分とする析出物を形成し、このTiが粒内変態フェライト生成の核となり溶接熱影響部の靭性を向上させる。また、TiはNと結合してTiNとして鋼スラブ中に微細析出し、加熱時のγ粒の粗大化を抑え圧延組織の細粒化に有効であり、また鋼中に存在する微細TiNは、溶接時に溶接熱影響部の組織を細粒化するためである。これらの効果を得るためには、Tiは最低0.005%必要である。しかし多過ぎるとTiCを形成し、低温靭性や溶接性を劣化させるので、その上限は0.025%である。
次に、Ni、Cu、Cr、B、Mgの添加理由について説明する。
基本となる鋼成分に、さらにこれらの元素を添加する主たる目的は、本発明鋼の優れた特徴を損なうことなく、強度、靭性などの特性を向上させるためである。したがってその添加量は自ずと制限されるべき性質のものである。
Niは、過剰に添加しなければ、溶接性、溶接熱影響部の靭性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度、靭性を向上させる。これら効果を発揮させるためには、少なくとも0.05%以上の添加が必須である。一方、過剰な添加は高価なだけでなく、溶接性に好ましくない。また、Niを多く添加すると液体アンモニア中で応力腐食割れ(SCC)を誘起する可能性が指摘されている。本発明者らの実験によれば、1.0%までの添加は溶接性や液体アンモニア中でのSCCを大きく劣化させず、強度、靭性向上効果の方が大きいが、経済性を優先し、上限を0.5%とした。
Cuは、Niとほぼ同様の効果、現象を示し、上限の0.50%は溶接性劣化に加え、過剰な添加は熱間圧延時にCu−クラックが発生し製造困難となるため規制される。下限は実質的な効果が得られるための最小量とすべきで0.05%である。
Crは、母材の強度、靭性をともに向上させる。これらの効果を享受するため、添加する場合、最低0.05%が必要である。しかし、添加量が多すぎると母材、溶接部の靭性および溶接性を劣化を招き、経済性も失するため上限を0.50%とした。
Bは、オーステナイト粒界に偏析し、フェライトの生成を抑制することを介して、焼入性を向上させ、強度向上に寄与する。この効果を享受するため、最低0.0002%以上必要である。しかし、多すぎる添加は焼入性向上効果が飽和するだけでなく、靭性上有害となるB析出物を形成する可能性もあるため、上限を0.003%とした。なお、タンク用鋼などとして、応力腐食割れが懸念されるケースでは、母材および溶接熱影響部の硬さの低減がポイントとなることが多く(例えば、硫化物応力腐食割れ(SCC)防止のためにはHRC≦22(HV≦248)が必須とされる)、そのようなケースでは焼入性を増大させるB添加は好ましくない。
Mgは、溶接熱影響部においてオーステナイト粒の成長を抑制し、細粒化する作用があり、溶接部の強靭化が図れる。このような効果を享受するためには、Mgは0.0002%以上必要である。一方、添加量が増えると添加量に対する効果代が小さくなるため、コスト上得策ではないので上限は0.005%とした。
次に、Ca及びREMの添加理由について説明する。
CaおよびREMは、MnSの形態を制御し、母材の低温靭性を向上させるほか、湿潤硫化水素環境下での水素誘起割れ(HIC、SSC、SOHIC)感受性を低減させる。これらの効果を発揮するためには、最低0.0005%必要である。しかし、多すぎる添加は、鋼の清浄度を逆に悪化させ、母材靭性や湿潤硫化水素環境下での水素誘起割れ(HIC、SSC、SOHIC)感受性を高めるため、添加量の上限はCa、REMそれぞれ0.004%、0.008%に限定した。CaとREMは、ほぼ同等の効果を有するため、いずれか1種を上記範囲で添加すればよく、2種を添加してもよい。
Moは、前述したように本発明では実質的に含まず、不可避的に混入する濃度レベル(概ね0.03%以下)である。
鋼の個々の成分を限定しても、成分系全体が適切でないと優れた特性は得られない。本発明では、PCMの値を0.16%以下に限定する。PCMは一般的に溶接割れ感受性組成と呼ばれるもので、溶接性を表す指標であり、このPCMが低いほど溶接性が良好になる。一般に、PCMが0.25%以下であれば優れた溶接性の確保が可能であるが、本発明における前記限定は、本発明の特徴をより明確にすることを企図したものであり、高張力鋼としては画期的に低いものである。この上限値0.16%は、後述する比較的低温で加速冷却を停止しても、強度が過剰となったり、鋼材の表層が必要以上に硬化しないように限定したものである。下限は特に限定しないが、各成分の限定範囲から自ずと制約されるものである。
限定された鋼成分において、優れた高温強度と低温靭性を両立する溶接構造用高張力鋼を得るためには、製造条件も本願発明の通りに限定することが必要である。以下、その理由について説明する。
圧延に先立つ加熱温度を1000〜1300℃に限定した理由は、加熱時のオーステナイト粒を小さく保ち、圧延組織の微細化を図るためである。1300℃は加熱時のオーステナイトが極端に粗大化しない上限温度であり、加熱温度がこれを超えるとオーステナイト粒が粗大混粒化し、変態後の組織も粗大化するため鋼の靭性が著しく劣化する。一方、加熱温度が低すぎると、板厚によっては後述する圧延終了温度の確保が困難となるばかりでなく、オーステナイトの未再結晶温度を上昇させ、熱間圧延時の制御圧延の効果を最大限に発揮させたり、析出硬化を発現させるためのNbの溶体化の観点から下限を1000℃に限定した。
上述のような条件で加熱した鋳片または鋼片を、オーステナイト未再結晶温度域での累積圧下量を30%以上とし、750℃以上で熱間圧延を終了した後、680℃以上の温度から加速冷却する。オーステナイト未再結晶温度域での圧延を行うことによって、オーステナイト粒を顕著に細粒化するため、少なくとも30%以上の累積圧下量が必要である。圧延終了温度が750℃を下回ると、フェライトが変態析出し、フェライトを加工(圧延)する恐れがあり、低温靭性確保の点で好ましくない。このため、圧延終了温度は、750℃以上に限定する。
750℃以上で熱間圧延を終了した後、680℃以上の温度から加速冷却を開始するのは、変態域の冷速を早めることで組織を微細化し、強度と靭性を同時に向上させるためである。また、組織を微細化することは、比較的低温で加速冷却を停止する本発明においてはC濃縮相であるマルテンサイト−オーステナイト混合相(M−A constituents)が生成する可能性があるが、その場合でも微細に分散生成することになるため、鋼母材靭性への悪影響を抑えることにも寄与する。加速冷却開始温度が680℃を下回ると、粗大なフェライトが析出し始め、強度低下や靭性を劣化させるため、680℃以上からの加速冷却に限定した。この加速冷却は、350℃以下の温度で停止しなければならない。350℃を超える温度では、本発明のような比較的Cの低い鋼では、安定した高張力化が困難となる。
なお、加速冷却時の冷速は、鋼成分や意図する強度や低温靭性レベルによっても変わるため一概には言えないが、板厚1/4厚位置の加速冷却開始温度から350℃までの平均冷速で、少なくとも3℃/秒以上とすることが望ましい。
転炉における成分調整工程及び連続鋳造機による鋳造工程を経て、表1に示す組成の鋳片を製造した。
得られた鋳片について、1050〜1280℃の温度に加熱し、オーステナイト未再結晶温度域での累積圧下量を30%〜80%として720℃〜930℃の温度で熱間圧延を終了した後、650℃〜910℃の温度から加速冷却を開始し、180℃〜400℃の温度で加速冷却を停止することにより、厚さ19〜100mmの溶接構造用高張力鋼を製造した。
表1に比較鋼とともに本発明鋼の鋼成分を示し、表2に製造条件を示す。
得られた溶接構造用高張力鋼について、降伏強さ、引張強さ、vTs(遷移温度)、600℃における降伏強さ、及び予熱なしでのy割れ試験時のルート割れの有無を評価した。尚、予熱なしでのy割れ試験は、JIS Z 3158に規定されているy形溶接割れ試験である。これらの諸特性の評価結果を表2に併せて示す。
Figure 0004709632
Figure 0004709632
表2に示すように、本発明の製造方法にしたがって製造した鋼板(本発明鋼)は、すべて良好な特性を有する。これに対し、本発明によらない比較鋼は、いずれかの特性が劣っている。
例えば比較鋼11は、C量が高いため本発明鋼に比較して、vTs(遷移温度)が高くなっており、低温靭性に劣っていることがわかる。また、表2には例示しないが、比較鋼11では、加速冷却停止温度が比較的低いために、表層硬さが硬くなり、板厚内部との硬さ差がきわめて大きくなり、曲げ加工性、穿孔性などの使用性能に劣ることが予想される。
次に、比較鋼12は、Nb量の絶対値が低いため、600℃における降伏強さが低くなっており、高温強度に劣ることがわかる。
次に、比較鋼13は、鋼に含まれる個々の成分元素の組成比が本発明の限定範囲にあるものの、Nb量(0.05質量%)が、C量の2倍量(0.03質量%×2=0.06質量%)に対して低いため、600℃における降伏強さが低くなっており、高温強度に劣ることがわかる。
また、比較鋼14は、C量が低いために、常温及び600℃における降伏強さが低下していることがわかる。
次に、比較鋼15−1は、圧延後加速冷却が施されていないため、常温及び600℃における降伏強さが低下している。
比較鋼15−2は、圧延終了温度が低く、結果として加速冷却開始温度が確保できずに低くなってしまったため、常温及び600℃における降伏強さが低下している。
比較鋼15−3は、加速冷却開始温度が低いため、常温及び600℃における降伏強さが低下している。また、比較鋼15−4は、加速冷却停止温度が高いため、常温及び600℃における降伏強さが低下している。
なお、本発明鋼及び比較鋼とも、PCMは十分低いために、溶接性(y形溶接割れ試験)はいずれも良好で、明確な差は見られなかった。
ただし、比較鋼16については、C、Si、Mn、P、S、Nb、Al、N及びCrの組成比は本発明の限定範囲内にあるものの、PCMが0.16質量%を超えている。この結果、強度は過剰となり、本発明が対象とする50キロ級の強度を超過している。
本発明に係る高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼は、火災など高温時の耐力維持を目的とした建築構造用の耐火鋼に主に適用されるが、建築用途に限らず、海洋構造物、船舶、橋梁、各種貯槽タンク用など幅広い用途の溶接構造用高張力鋼に適用できる。なお、主に対象とする強度レベルは、降伏強さで325〜475MPa、引張強さで490〜640MPaの、いわゆる一般に50キロ鋼と呼ばれるクラスのものである。

Claims (4)

  1. 成分が質量%で、C:0.005%以上0.05%以下、Si:0.40%以下、Mn:0.8%以上2.0%以下、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Nb:0.03%以上0.30%以下かつNb≧2C、Al:0.060%以下、N:0.001%以上0.006%以下であり、Mo:0.03%以下で、残部が鉄および不可避的不純物からなり、PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bで定義されるPCM値が0.16%以下である鋳片または鋼片を、1000℃以上1300℃以下の温度に加熱し、オーステナイト未再結晶温度域での累積圧下量を30%以上として750℃以上の温度で熱間圧延を終了した後、680℃以上の温度から加速冷却を開始し、350℃以下の温度で加速冷却を停止することを特徴とする高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法。
  2. 上記の成分に加えて質量%で、V:0.01%以上0.20%以下の範囲でさらに含有されていることを特徴とする請求項1に記載の高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法。
  3. さらに質量%で、Ni:0.05%以上0.50%以下、Cu:0.05%以上0.50%以下、Cr:0.05%以上0.50%以下、B:0.0002%以上0.003%以下、Mg:0.0002%以上0.005%以下、の範囲でこれら1種または2種以上の元素が含有されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法。
  4. さらに質量%で、Ca:0.0005%以上0.004%以下、REM:0.0005%以上0.008%以下、の範囲でこれら1種または2種の元素が含有されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法。
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