JP3582463B2 - 低合金耐熱鋼用溶接材料および溶接金属 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低合金耐熱鋼用の溶接材料と溶接金属に関し、より詳しくは、必須成分としてWを含有する高強度な低合金耐熱鋼の溶接時に生じる再熱割れを防止するのに用いて有効な溶接材料と耐再熱割れ性に優れた溶接金属に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボイラ、化学装置等の耐熱、耐圧配管に用いられる高温材料としては、数%のCrを含む低合金耐熱鋼、9〜12%のCrを含む高Cr系耐熱鋼、18Cr−8Ni鋼に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼等がよく知られている。中でも、2・1/4Cr−1Mo鋼に代表される低合金耐熱鋼は安価であるめ、使用環境に応じて多量に使用されている。
【0003】
上記低合金耐熱鋼は、一般に、焼戻しベイナイト、焼戻しマルテンサイト等のいわゆるフェライト系の組織からなるが、高Cr系耐熱鋼やオーステナイト系ステンレス鋼に比べ、高温強度が低い。このため、近年では、数%のCrを含有する低合金鋼をベースに合金元素量を調整して優れた高温強度を付与した低合金耐熱鋼が数多く提案されている。特に、最近ではWを積極的に活用した高強度低合金耐熱鋼が多数提案されている(例えば、特開平2−217438号、同3−87332号、同10−8194号の各公報等)。
【0004】
また、これらWを積極的に活用した高強度低合金鋼用溶接材料についても多数提案されている(例えば、特開平5−269590号公報、同10−272592号公報の各公報等)。
【0005】
これらの高強度低合金耐熱鋼や溶接材料を構造物として使用する場合には、溶接割れの発生に十分配慮する必要があり、低温割れ防止の観点からは予熱、低温割れの防止に加え、残留応力除去や靱性等の溶接部の性能回復の観点からは溶接後に後熱処理を行うのが一般的である。
【0006】
しかし、これらの低合金耐熱鋼は、1994年9月26日 日刊工業新聞社発行の社団法人 日本高圧力技術協会応力焼鈍(SR)委員会編集の「溶接後熱処理基準とその解説」の10、22〜23、100および150頁に示されているように、溶接後熱処理時に溶接熱影響部で割れが発生する、いわゆる再熱割れ感受性が高いことが知られている。そして、本発明者らが検討を重ねた結果、W等を添加して高強度化を図った材料は、再熱割れ感受性が更に高くなることが明らかとなった。
【0007】
低合金耐熱鋼の再熱割れに関しては、数多くの報告がなされている。例えば、「溶接学会誌 第41巻(1972) 第1号」の59頁には、再熱割れ感受性指数が提案されており、Cr含有量が1.5質量%以下の範囲では、Cr、Cu、Mo、V、Nb、Tiの増加に伴って再熱割れ感受性が大きくなり、特に、V、Nb、Tiはその影響が大きいことが示されている。また、「溶接学会誌 第49巻(1980) 第3号」の203頁には、鋼中の不純物元素であるP、Sb、Sn、Asの増加により再熱割れ感受性が大きくなることが示されている。
【0008】
このため、母材については、耐再熱割れ性の改善を図った鋼が提案されている(例えば、特開平5−1351号、同8−144010号、同8−144011号の各公報)。また、耐再熱割れ性を考慮した溶接材料についても数多く提案されている(例えば、特開平8−150478号公報、同9−192881号公報、同10−128575号公報、同10−128576号公報、同10−137975号公報の各公報)。
【0009】
しかし、上記の各公報に示される鋼および溶接材料のうち、特開平5−269590号公報に示される溶接材料は、予後熱の省略化を図ったものでしかなく、再熱割れについては全く考慮されていない。また、特開平10−272592号公報に示される溶接材料についても、後熱後の高強度化と高靭性化を図ったものでしかなく、後熱後の再熱割れの問題については全く言及していない。
【0010】
さらに、耐再熱割れ性が考慮された上記の各公報に示される溶接材料のうち、特開平10−128575号公報と同10−128576号公報に示される溶接材料はWを含まないので、必須成分としてWを含む高強度な低合金耐熱鋼の溶接材料としては適さない。これに対してその他の溶接材料は、必須成分としてWを含む高強度な低合金耐熱鋼の溶接に適するものの、特開平9−192881号公報および同10−128575号公報に示される溶接材料は、650℃×10時間という長時間の後熱処理を必要とするために実用性が不充分であり、特開平8−150478号公報に示される溶接材料は、特定の入熱量で使用する必要があり汎用性に欠けるという問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、必須成分としてWを含む高強度な低合金耐熱鋼の広範囲な入熱量での溶接に使用でき、しかも長時間の後熱処理を実施せずとも優れた耐再熱割れ性を発揮する低合金耐熱鋼用の溶接材料と溶接金属を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)の溶接材料と、下記(2)の耐再熱割れ性に優れた溶接金属にある。
(1)質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cr:0.5〜3.5%、Mo:0.01〜0.9%未満、W:0.01〜2%、V:0.005〜0.4%、Nb:0.005〜0.2%、Ti:0.001〜0.05%、Al:0.001〜0.05%、N:0.0005〜0.03%、O(酸素):0.0005〜0.03%、並びにCuおよびNiの1種以上を合計で0.005〜2%含み、残部が実質的にFeからなり、かつTiとNの関係が下記の(1) 式を満足する溶接材料であって、Wを含む低合金耐熱鋼の溶接に用いる溶接材料。
【0013】
N−(14/47)×Ti≦0.015 ・・・・ (1)
(2)質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cr:0.5〜3.5%、Mo:0.01〜0.9%未満、W:0.01〜2%、V:0.005〜0.4%、Nb:0.005〜0.2%、Ti:0.001〜0.05%、Al:0.001〜0.05%、N:0.0005〜0.03%、O(酸素):0.0005〜0.08%、並びにCuおよびNiの1種以上を合計で0.005〜2%含み、残部が実質的にFeからなり、かつTiとNの関係が下記の(1) 式を満足する溶接金属であって、Wを含む低合金耐熱鋼を溶接して得られる溶接金属。
【0014】
N−(14/47)×Ti≦0.015 ・・・・ (1)
本発明になる上記(1)に記載の溶接材料は、P、S、CrおよびTiの含有量が、それぞれ、質量%で、0.01%以下、0.01%以下、0.5〜1.7%未満、0.002〜0.05%であることが望ましく、Cr含有量が1.7〜3.5%の範囲ではMo含有量を0.01〜0.45%未満とするのがより望ましい。
【0015】
また、上記(1)と(2)に記載の溶接材料と溶接金属は、必要により、Feの一部に代えて、質量%で、B:0.0005〜0.02%、または/およびCa:0.0005〜0.02%およびMg:0.0005〜0.02%のうちの1種以上を含んでもよく、不純物としてのSn、As、SbおよびPbの合計含有量が0.08質量%以下であることが望ましい。
【0016】
上記の本発明は、下記の知見に基づいて完成させた。すなわち、本発明者等は、Wを含有する低合金耐熱鋼の再熱割れの発生メカニズムの究明とその防止策の開発に努めた。その結果、以下のことが判明した。
【0017】
Wを含有する高強度低合金耐熱鋼の溶接金属に対する後熱処理時には、溶接金属が凝固する時に生成した粗大な結晶粒界に、割れ、いわゆる再熱割れが発生する。
【0018】
そして、この割れ破面形態観察と分析の結果、破面には溶融痕が認められず、破面上にはNの顕著な濃化が認められた。また、電子顕微鏡による観察の結果、割れ近傍の粒内には微細炭化物が生成していることが明らかとなった。さらに、Wを添加した場合には、Wが含まれない場合に比べ、溶接時の残留応力が緩和し難いことが明らかとなった。
【0019】
これらより、割れは、(a) 溶接後熱処理により、Nの粒界偏析が加速され、粒界固着力が低下すること、(b) 微細炭化物による析出強化、Wによる固溶強化により、粒内が強化されること、(c) 粗大な結晶粒界面に熱応力による変形が集中することの重畳効果により、割れが開口するものと推定される。
【0020】
そこで、発明者等は、鋭意検討を行った。その結果、必須成分としてTiを添加し、かつ、N含有量を、上記の(1) 式を満たす範囲に調整すれば、再熱割れが発生しなくなる。
【0021】
すなわち、TiはNとの親和力が強く、安定な窒化物を形成する。その結果、粒界固着力を低下させる粒界のフリーNを低減させることが可能となる。さらに、TiNは、溶接時の冷却過程で主に粒界に生成し、ピニング効果によって後続パスでの結晶粒の粗大化を抑制する効果を有する。
【0022】
そして、TiNによる結晶粒の粗大化抑制効果を十分に発揮させるためには、溶接金属中に0.001%以上のTi添加と、0.0005%以上のN添加が必要であることがわかった。
【0023】
なお、本発明では、必須元素としてTiを添加し、N量をコントロールすることが特徴である、したがって、本発明は、Tiを不純物元素としている前述の特開平9−192811号公報、同10−128575号公報、同10−128576号公報および同10−128576号公報に示される溶接材料とはその合金設計思想が異なる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の低合金耐熱鋼用溶接材料と溶接金属の化学組成を上記のように定めた理由について詳細に説明する。なお、以下の説明において、「%」は「質量%」を意味する。また、各元素の説明において、特に断らない限り、溶接材料および溶接金属ともに共通である。
【0025】
C:0.03〜0.18%
Cは炭化物を形成し、高温強度の確保に寄与する。また、オーステナイト形成元素として作用し、δフェライトの生成を抑制する。この効果を得るためには、0.03%以上が必要である。しかし、0.18%を超えるCは、溶接金属での硬さ上昇を招き、溶接低温割れ感受性および後熱処理時の再熱割れ感受性を増大させる他、長時間使用後の脆化を招く。このため、C含有量は0.03〜0.18%とした。好ましい範囲は0.04〜0.15%、より好ましい範囲は0.05〜0.14%である。
【0026】
Si:1%以下
Siは製鋼時に脱酸元素として添加されるが、耐酸化性、耐高温腐食性に有効な元素である。しかし、1%を超えるSiは、高温での長時間使用時に靭性の低下を招く。このため、Si含有量は1以下%とした。好ましい上限は0.8%、より好ましい上限は0.6%である。なお、下限は特に定める必要はないが、極度の低減はコスト上昇を招くので、0.05%以上とするのがよい。
【0027】
Mn:2%以下
Mnは、上記のSiと同様に、製鋼時に脱酸元素として添加される。しかし、2%を超えるMnは、高温、長時間使用後の強度低下および靱性低下を招く。このため、Mn含有量は2%以下とした。好ましい上限は1.8%、より好ましい上限は1.6%である。なお、下限は特に定める必要はないが、極度の低減はコスト上昇を招くので、0.05%以上とするのがよい。
【0028】
P:0.03%以下
Pは鋼中の不純物元素であり、多量に含まれると、溶接時に凝固割れが発生しやすい他、熱処理時の再熱割れ感受性を高める。このため、P含有量は0.03%以下とした。好ましい上限は0.01%である。なお、P含有量は低ければ低いほどよい。
【0029】
S: 0.03%以下
Sは、上記のPと同様、鋼中の不純物元素であり、多量に含まれると、溶接時に凝固割れが発生しやすい他、熱処理時の再熱割れ感受性を高める。このため、S含有量は0.03%以下とした。好ましい上限は0.01%である。なお、S含有量は低ければ低いほどよい。
【0030】
Cr:0.5〜3.5%
Crは、本発明が対象とする低合金耐熱鋼の高温での耐酸化性、耐高温腐食性および高温強度の確保に必須な元素である。これらの効果を得るためには0.5%以上が必要である。しかし、3.5%を超えるCrは、使用中に炭化物の粗大化を招き、かえって高温強度および靱性の低下を招く。このため、Cr含有量は0.5〜3.5%とした。好ましい範囲は0.8〜3%、より好ましい範囲は1〜2.5%である。
【0031】
Mo:0.01〜0.9%未満
Moはマトリックスを固溶強化するとともに炭化物を析出し、クリープ強度の確保に寄与する。また、Pとの親和力が強く、粒界偏析するP量を低減させるため、再熱割れ感受性の低減にも寄与する。これらの効果を得るためには0.01%以上が必要である。しかし、0.9%以上のMoは、炭化物の粗大化を招き、長時間使用後の靭性低下を招く。このため、Mo含有量は0.01〜0.9%未満とした。好ましい範囲は0.05〜0.8%である。
【0032】
なお、Moは、上記のCr量が1.7〜3.5%の範囲では、その含有量が0.45%以上であると、粒内の炭化物密度を増大させて粒内強化を招き、かえって再熱割れ感受性を高くする他、クリープ強度および靭性を低下させる。したがって、Mo含有量は、上記のCr量が1.7〜3.5%の範囲では0.01〜0.45%未満、より好ましくは0.05〜0.45%未満とするのがよく、Cr量が0.5〜1.7%未満の範囲では0.01〜0.9%未満、より好ましくは0.05〜0.8%とするのがよい。
【0033】
W:0.01〜2%
Wは、上記のMoと同様に、マトリックスを固溶強化するとともに炭化物を生成し、クリープ強度の確保に寄与する。この効果を得るためには0.01%以上が必要である。しかし、2%を超えるWは、靭性の低下を招くとともに、固溶強化による粒内強化に起因して、再熱割れ感受性を高める。このため、W含有量は0.01〜2%とした。好ましい範囲は0.05〜1.8%である。
【0034】
Ti:0.001〜0.05%
Tiは、再熱割れ感受性の低減に必須の元素であり、TiNを形成し、粒界固着力を低下させるフリーN量を低減させるとともに、ピニング効果により、結晶粒の粗大化を抑制し、再熱割れの発生を防止する。その効果を得るためには0.001%以上が必要である。一方、0.05%を超えるTiは、靱性の極端な低下を招く。このため、Ti含有量は、0.001〜0.05%とした。より好ましくは、0.002〜0.04%である。なお、溶接金属中でのTi量の歩留まりは、溶接中に減少する場合があるので、溶接金属のTi量を0.001%以上にするためには、溶接材料のTi含有量は0.002%以上、より好ましくは0.004%以上とすることが好ましい。
【0035】
O(酸素):0.0005〜0.03%
Oは不純物元素であり、過剰なOは、主に酸化物として存在し、加工性、強度、靱性の低下を招く。このため、O含有量の上限は、溶接材料では0.03%、溶接金属では0.08%とした。なお、O含有量は低ければ低いほどよいが、製造コストの観点から、溶接材料および溶接金属ともに0.0005%以上とした。溶接材料におけるより望ましい範囲は0.001〜0.02%である。また、溶接金属におけるより望ましい範囲は0.002〜0.06%である。
【0036】
N:0.0005〜0.03%
Nは溶接金属の粒界にフリーのNとして存在し、粒界固着力を低下させ、再熱割れ発生の直接の原因となる。そのため、その上限を0.03%とした。一方、極端な低減は製鋼上極めて困難であるとともに、Ti添加により、十分なTiNを生成できず、逆に再熱割れ感受性を高める結果となる。加えて、微細な窒化物の生成によるクリープ強度向上効果が得られない。そのため、0.0005%以上とする。望ましい範囲は0.001〜0.025%、より好ましい範囲は0.002〜0.02%である。なお、Nは上記Tiと後述する関係式を満足する必要がある。
【0037】
Ni、Cu:いずれか一方または両方を合計で0.005〜2%
これらの元素は、いずれもオーステナイト生成元素であり、δフェライト相の生成を抑え、組織安定性を確保するのに有効であり、その効果はいずれか一方または両方の合計含有量0.005%以上で得られる。しかし、その合計含有量が2%を超えると、高温下での使用中に延性の低下を招く。このため、これら元素の含有量は、合計で0.005〜2%とした。好ましい範囲は0.008〜1.8%、より好ましい範囲は0.01〜1.5%である。
【0038】
V:0.005〜0.4%
Vは微細な炭化物、炭窒化物を形成し、クリープ強度の確保に寄与する。その効果を得るためには0.005%以上が必要である。しかし、0.4%を超えて含有させると、溶接後熱処理時の粒内炭化物の析出密度を増大させ、再熱割れ感受性を高めるとともに、使用中には急速な炭化物の凝集、粗大化を招き、かえってクリープ強度の低下を招く。このため、V含有量は0.005〜0.4%とした。好ましい範囲は0.008〜0.35%、より好ましい範囲は0.01〜0.3%である。
【0039】
Nb:0.005〜0.2%
NbはVと同様に微細な炭化物、炭窒化物を形成し、クリープ強度の確保に寄与する。その効果を得るためには0.005%以上が必要である。しかし、0.2%を超えて含有させると、溶接後熱処理時の粒内炭化物の析出密度を増大させ、再熱割れ感受性を高めるとともに、使用中には急速な炭化物の凝集、粗大化を招き、かえってクリープ強度の低下を招く。このため、Nb含有量は0.005〜0.2%とした。好ましい範囲は0.008〜0.15%、より好ましい範囲は0.01〜0.1%である。
【0040】
Al:0.001〜0.05%
Alは脱酸元素として添加され、その効果を得るためには0.001%以上が必要である。しかし、0.05%を超えて含有させると、清浄度が低下して加工性を損なうとともに、高温強度の低下を招く。このため、Al含有量は0.001〜0.05%とした。好ましい範囲は0.001〜0.03%、より好ましい範囲は0.001〜0.015%である。なお、本発明にいうAlとは、酸可溶Al(sol.Al)のことである。
【0041】
NとTiの関係:
再熱割れは、粒界にフリーに存在するNが原因となる。そのため、Tiを添加してNをTiNとして固定することが極めて有効である。そして、再熱割れの発生を確実に防ぐためには、NとTiの関係が下式を満足する必要がある。このことは、後述する実施例の結果からも明らかである。なお、下式は、右辺の値を0.12とするのが好ましい。
【0042】
N−(14/47)×Ti≦0.015
B:
Bは添加しなくてもよい。添加すれば、BNを形成し、粒界のフリーN量を低減させるとともに、Nと結合しないBがフリーBとして粒界に存在して偏析サイトを占め、N等の粒界弱化元素の偏析を抑制し、粒界固着力を増大させ、再熱割れの防止に効果を僅かに有する元素である。したがって、この効果を得たい場合には添加してよく、その効果は0.0005%以上で顕著になる。しかし、0.02%を超えて含有させると、高温強度の低下を招く。このため、添加する場合のB含有量は0.0005〜0.02%とするのがよい。好ましい範囲は0.0008〜0.018%、より好ましい範囲は0.001〜0.015%である。
【0043】
Ca、Mg:
これらの元素は添加しなくてもよい。添加すれば、いずれの元素もSを固定し、再熱割れや凝固割れ感受性性を低減させるのに有効である。したがって、この効果を得たい場合には、いずれか一方または両方を添加してもよく、その効果はいずれの元素も0.0005%以上で顕著になる。しかし、いずれの元素も0.02%を超えて含有させると、清浄度を劣化させ、靭性の低下を招く。このため、添加する場合のこれら元素の含有量は、いずれの元素も0.0005〜0.02%とするのがよい。いずれの元素も好ましい範囲は0.0008〜0.018%、より好ましい範囲は0.001〜0.015%である。
【0044】
Sn、As、Sb、Pb:
これらの元素はいずれも不純物であり、多量に含まれると再熱割れ感受性を増加させる。しかし、これら元素の合計含有量が0.08%以下であれば特に問題なく、その含有量は低ければ低いほどよい。
【0045】
以上に説明した本発明の溶接材料は、常法によって製造すればよく、容易に製造可能である。また、本発明の溶接金属を得るための溶接方法は特に制限されず、本発明の溶接材料を芯線とし、その表面に被覆剤を塗布した被覆アーク溶接棒、さらにはサブマージ溶接法等に適用しても効果は失われない。
【0046】
【実施例】
表1と表2に示す化学組成を有する34種類の鋼を溶製し、得られたインゴットを対象に鍛造、圧延、熱処理の工程を経て、厚さ40mmの鋼板を製作し、供試母材とした。
【0047】
【表1】
【表2】
次いで、供試母材の各鋼板から、長さ200mm、幅100mmの溶接試験用の板材2枚を採取し、その長辺に図1の(c)図に示す横断面形状の開先を施した後、同図の(a)、(b)図に示すように、その4辺全周を、厚さ40mm、一辺300mmの正方形の炭素鋼製の拘束板に溶接接合した拘束溶接試験体を作製した。
【0048】
そして、表1と表2に示す鋼の溶製時に分湯して得られた同じ化学組成を有するインゴットを対象に、分塊、熱間加工、線引加工の工程を経て外径1.2mmおよび4.0mmの線材を作製し、それぞれTIG溶接材料およびサブマージアーク溶接用芯線として用いた。
【0049】
拘束溶接試験体の開先部は、250℃で予熱後、TIG溶接では入熱量25kJ/cm、サブマージアーク溶接では入熱45kJ/cmで多層溶接した。その際、パス間温度は250℃以上に管理した。その後、715℃に5時間保持する後熱処理を施した。表3と表4には得られた溶接金属の化学組成を示す。
【0050】
【表3】
【表4】
得られた各溶接継手は、その溶接部の横断面を5断面現出させ、溶接金属での再熱割れの発生の有無を調べた。評価は、5断面全てにおいて再熱割れの発生が認められなかったものを合格「○」、1断面でも再熱割れの発生が認められたものを不合格「×」とした。
【0051】
また、上記の再熱割れ評価の結果が合格のものについては、得られた溶接継手部から、長手方向の中央部に溶接金属が位置する平行部直径6mm、標点間距離30mmのクリープ試験片を採取し、下記条件のクリープ試験に供し、破断時間を調べた。
《クリープ試験条件》
試験温度:550℃、
負荷応力:197MPa、
クリープ試験の評価は、母材の破断寿命に対し、溶接継手の破断寿命が80%以上のものを合格「○」とした。
【0052】
さらに、上記の再熱割れ評価の結果が合格のものについては、溶接金属の中央部にノッチが位置するJIS(1980) Z 2202に規定されるフルサイズの4号衝撃試験片を採取し、0℃でのシャルピー衝撃試験を行い、各部の靭性を調べた。靭性の評価はそして、吸収エネルギーが実用上十分な40J以上のものを合格「○」、40J未満のものを不合格「×」とした。以上の結果を、表5にまとめて示した。
【0053】
【表5】
表5に示す結果から明らかなように、本発明で規定する条件を満たす溶接材料を用いて製造され、その金属金属が本発明で規定する条件を満たす溶接継手(継手No. J1〜J31)は、溶接後熱処理後に再熱割れが発生しておらず、かつ十分なクリープ強度と靭性を有している。
【0054】
これに対し、溶接材料、溶接金属のいずれかが本発明で規定する条件を満たさない溶接継手(継手No. J32〜J40)は、溶接後熱処理後に再熱割れが発生するか、発生してないものでもクリープ強度、靭性が悪い。
【0055】
具体的に説明すると、No. J32の溶接継手は、Tiを含まないため、Nの固定効果およびピニング効果が十分に得られず、後熱処理時に溶接金属に再熱割れが発生した。No. J33〜J36およびJ39の溶接継手は、溶接金属のTiの含有量が低すぎるため、溶接金属に再熱割れが発生した。No. J37およびJ38の溶接継手は、Moの含有量が高すぎるため、クリープ強度が僅かに簿材の80%を満たさなかった。No. J40の溶接継手は、Tiの含有量が多すぎるため、再熱割れは発生しないものの、吸収エネルギーが33Jと靭性が低かった。
【0056】
【発明の効果】
本発明の溶接材料およびそれを使用して得られる溶接金属は耐再熱割れ性に優れるので、溶接後の後熱処理時に溶接金属部に割れが発生することがない。また、そのクリープ強度と靭性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における拘束溶接試験を説明するための図で、同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のイ−イ矢視断面図、同図(c)は同図(b)中のロ部の拡大図である。
Claims (10)
- 質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cr:0.5〜3.5%、Mo:0.01〜0.9%未満、W:0.01〜2%、V:0.005〜0.4%、Nb:0.005〜0.2%、Ti:0.001〜0.05%、Al:0.001〜0.05%、N:0.0005〜0.03%、O(酸素):0.0005〜0.03%、並びにCuおよびNiの1種以上を合計で0.005〜2%含み、残部が実質的にFeからなり、かつTiとNの関係が下記の(1) 式を満足する溶接材料であって、Wを含む低合金耐熱鋼の溶接に用いる溶接材料。
N−(14/47)×Ti≦0.015 ・・・・ (1) - P、S、CrおよびTiの含有量が、それぞれ、質量%で、0.01%以下、0.01%以下、0.5〜1.7%未満、0.002〜0.05%である請求項1に記載の溶接材料。
- P、S、Cr、MoおよびTiの含有量が、それぞれ、質量%で、0.01%以下、0.01%以下、1.7〜3.5%、0.01〜0.45%未満、0.002〜0.05%である請求項1に記載の溶接材料。
- Feの一部に代えて、質量%で、B:0.0005〜0.02%を含む請求項1〜3のいずれかに記載の溶接材料。
- Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.0005〜0.02%およびMg:0.0005〜0.02%のいずれか一方または両方を含む請求項1〜4のいずれかに記載の溶接材料。
- 不純物としてのSn、As、SbおよびPbの合計含有量が、0.08質量%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の溶接材料。
- 質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cr:0.5〜3.5%、Mo:0.01〜0.9%未満、W:0.01〜2%、V:0.005〜0.4%、Nb:0.005〜0.2%、Ti:0.001〜0.05%、Al:0.001〜0.05%、N:0.0005〜0.03%、O(酸素):0.0005〜0.08%、並びにCuおよびNiの1種以上を合計で0.005〜2%含み、残部が実質的にFeからなり、かつTiとNの関係が下記の(1) 式を満足する溶接金属であって、Wを含む低合金耐熱鋼を溶接して得られる溶接金属。
N−(14/47)×Ti≦0.015 ・・・・ (1) - Feの一部に代えて、質量%で、B:0.0005〜0.02%を含む請求項7に記載の溶接金属。
- Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.0005〜0.02%およびMg:0.0005〜0.02%のいずれか一方または両方を含む請求項7または8に記載の溶接金属。
- 不純物としてのSn、As、SbおよびPbの合計含有量が、0.08質量%以下である請求項7〜9のいずれかに記載の溶接金属。
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