JP7218573B2 - フェライト系耐熱鋼溶接金属およびそれを備えた溶接継手 - Google Patents
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Description
C:0.06~0.10%、
Si:0.10~0.40%、
Mn:0.30~0.70%、
P:0.010%以下、
S:0.003%以下、
Cr:8.5~9.5%、
Mo:0.01~1.0%、
Co:2.6~3.4%、
Ni:0.01~1.10%、
W:2.5~3.5%、
Nb:0.02~0.08%、
Ta:0.02~0.08%、
V:0.1~0.3%、
B:0.007~0.015%、
Al:0.030%以下、
N:0.005~0.017%、
O:0.020%以下、
Cu:0~1.0%、
Ti:0~0.30%、
Ca:0~0.050%、
Mg:0~0.050%、
REM:0~0.10%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記の(i)~(iii)式を満足する、
フェライト系耐熱鋼溶接金属。
sol.B≧0.005 ・・・(i)
insol.B≦0.0045 ・・・(ii)
(20(C+N)+Cr+4Mo+2W+10(Nb+Ta+V)+500sol.B)/(Mn+Co+Ni)≧4.5 ・・・(iii)
但し、式中の各元素記号は、溶接金属中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、sol.Bは溶接金属中に固溶しているB含有量(質量%)、insol.Bは溶接金属中に析出物として存在しているB含有量(質量%)である。
Cu:0.05~1.0%、
Ti:0.02~0.30%、
Ca:0.001~0.050%、
Mg:0.001~0.050%、および、
REM:0.001~0.10%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)に記載のフェライト系耐熱鋼溶接金属。
フェライト系耐熱鋼溶接継手。
C:0.04~0.12%、
Si:0.05~0.60%、
Mn:0.10~0.80%、
P:0.020%以下、
S:0.010%以下、
Cr:8.0~10.0%、
Co:2.0~4.0%、
Ni:0~0.4%、
W:2.0~4.0%、
Nb+Ta:合計で0.02~0.18%、
V:0.05~0.40%、
B:0.005~0.020%、
Al:0.030%以下、
N:0.002~0.025%、
O:0.020%以下、
Nd:0.01~0.06%、
残部:Feおよび不純物である、
上記(3)に記載のフェライト系耐熱鋼溶接継手。
本発明に係るフェライト系耐熱鋼溶接金属は以下に示す化学組成を有する。各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
炭素(C)は、溶接金属のδフェライト生成を抑制し、溶接金属の主たる組織をマルテンサイト組織とする。Cはさらに、高温使用時に微細な炭化物(M23C6炭化物)を生成し、クリープ強度を高める。C含有量が低すぎると、これらの効果が得られない。一方、C含有量が高すぎると、粗大な炭化物が多量に析出し、溶接金属の靱性が低下する。したがって、C含有量は0.06~0.10%である。C含有量は0.07%以上であるのが好ましく、0.09%以下であるのが好ましい。
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する効果を有する。Siはさらに、溶接金属の耐水蒸気酸化特性を高める。Si含有量が低すぎると、これらの効果が得られない。一方、Si含有量が高すぎると、δフェライトの生成が促進され、溶接金属の靱性が低下するとともに、クリープ延性も低下する。したがって、Si含有量は0.10~0.40%である。Si含有量は0.25%以上であるのが好ましく、0.35%以下であるのが好ましい。
マンガン(Mn)は、Siと同様に鋼を脱酸する効果を有する。Mnはさらに、溶接金属の組織のマルテンサイト化を促進する。Mn含有量が低すぎると、これらの効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎると、溶接金属においてクリープ脆化が発生しやすくなる。したがって、Mn含有量は0.30~0.70%である。Mn含有量は0.40%以上であるのが好ましく、0.60%以下であるのが好ましい。
リン(P)は不純物として鋼中に含まれる元素である。Pは溶接金属の靱性を低下する。したがって、P含有量は0.010%以下である。P含有量は0.008%以下であるのが好ましく、なるべく低い方が好ましい。しかし、材料コストの観点から、P含有量は0.0005%以上であるのが好ましい。
硫黄(S)は不純物として鋼中に含まれる元素である。SはBを含有する溶接金属中の旧オーステナイト粒界およびラス界面に偏析し、粒界およびラス界面の固着力を低下させ、その結果、溶接金属の靱性を低下させる。したがって、S含有量は0.003%以下である。S含有量は0.002%未満であるのが好ましく、0.0015%未満であるのがより好ましい。S含有量はなるべく低い方が好ましい。しかし、効果および材料コストの観点から、S含有量は0.0002%以上であるのが好ましい。
クロム(Cr)は、溶接金属の耐水蒸気酸化性および耐食性を高める。Crはさらに、高温での使用中に炭化物として析出し、クリープ強度を高める。Cr含有量が低すぎると、これらの効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎると、炭化物の安定性が低下して、クリープ強度が低下する。Cr含有量が高すぎるとさらに、δフェライトの生成が促進され、靱性が低下する。したがって、Cr含有量は8.5~9.5%である。Cr含有量は8.7%以上であるのが好ましく、9.3%以下であるのが好ましい。
モリブデン(Mo)は、マトリックスに固溶して、溶接金属のクリープ強度を高める。Mo含有量が低すぎると、この効果が得られない。一方、Mo含有量が高すぎると、Moが凝固偏析し、後述するWを含有する金属間化合物および炭化物の長時間安定性を低下させる。また、金属間化合物として析出し、溶接金属の靱性が低下する。したがって、Mo含有量は0.01~1.0%である。Mo含有量は0.1%以上であるのが好ましく、0.5%以下であるのが好ましい。
コバルト(Co)は、δフェライトの生成を抑制し、マルテンサイト組織を得るのに有効である。母材と異なり、溶接金属は調質処理がされないため、上記効果を十分に得るためのCo含有量の下限は2.6%である。一方、Co含有量が高すぎると、かえってクリープ強度が低下し、クリープ延性も低下する。さらに、Coは高価な元素であるため、材料コストが高くなる。したがって、Co含有量は2.6~3.4%である。Co含有量は2.8%以上であるのが好ましく、3.3%以下であるのが好ましい。
ニッケル(Ni)は、δフェライトの生成を抑制し、マルテンサイト組織を得るのに有効である。Niはさらに、溶接金属の靱性を高める。Ni含有量が低すぎると、これらの効果が得られない。一方、Ni含有量が高すぎると、クリープ延性が低下する。さらに、Niは高価な元素であるため、材料コストが高くなる。したがって、Ni含有量は0.01~1.10%である。Ni含有量は0.04%以上であるのが好ましく、1.00%以下であるのが好ましい。
タングステン(W)は、マトリックスに固溶、または、金属間化合物として長時間使用中に析出し、溶接金属の高温でのクリープ強度を高める。W含有量が低すぎると、この効果が得られない。一方、W含有量が高すぎると、多量の析出物が生成する。さらに、δフェライトの生成が促進され、溶接金属の靱性が低下する。したがって、W含有量は2.5~3.5%である。W含有量は2.7%以上であるのが好ましく、3.3%以下であるのが好ましい。
ニオブ(Nb)は、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、溶接金属のクリープ強度を高める。Nb含有量が低すぎると、この効果が得られない。一方、Nb含有量が高すぎると、粗大な炭窒化物が多量に析出し、クリープ強度およびクリープ延性が低下する。さらに、δフェライトの生成が促進され、溶接金属の靱性が低下する。したがって、Nb含有量は0.02~0.08%である。Nb含有量は0.03%以上であるのが好ましく、0.07%以下であるのが好ましい。
タンタル(Ta)はNbと同様に、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、溶接金属のクリープ強度を高める。Ta含有量が低すぎると、この効果が得られない。一方、Ta含有量が高すぎると、粗大な炭窒化物が多量に析出し、クリープ強度およびクリープ延性が低下する。したがって、Ta含有量は0.02~0.08%である。Ta含有量は0.03%以上であるのが好ましく、0.07%以下であるのが好ましい。
バナジウム(V)はNbおよびTaと同様に、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、溶接金属のクリープ強度を高める。V含有量が低すぎると、この効果が得られない。一方、V含有量が高すぎると、粗大な炭窒化物が多量に析出し、クリープ強度およびクリープ延性が低下する。さらに、δフェライトの生成が促進され、溶接金属の靱性が低下する。したがって、V含有量は0.1~0.3%である。V含有量は0.15%以上であるのが好ましく、0.25%以下であるのが好ましい。
ホウ素(B)は、焼入れ性を高め、溶接金属においてマルテンサイト組織を得るのに有効である。Bはさらに、高温での使用中に炭化物を旧オーステナイト境界およびマルテンサイトラス境界に微細分散させ、組織の回復を抑制し、クリープ強度を高める。B含有量が低すぎると、これらの効果が得られない。一方、B含有量が高すぎると、マルテンサイト変態時にマルテンサイトラスが急激に伸長し、破壊単位が大きくなる。さらに、δフェライトの生成が促進される。そのため、溶接金属の靱性が極度に低下する。したがって、B含有量は0.007~0.015%である。B含有量は0.009%以上であるのが好ましく、0.012%以下であるのが好ましい。
sol.B≧0.005 ・・・(i)
insol.B≦0.0045 ・・・(ii)
但し、式中のsol.Bは溶接金属中に固溶しているB含有量(質量%)であり、insol.Bは溶接金属中に析出物として存在しているB含有量(質量%)である。
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する効果を有する。しかしながら、Al含有量が高すぎると、清浄性が低下し、靱性およびクリープ強度が低下する。したがって、Al含有量は0.030%以下である。Al含有量は0.010%以下であるのが好ましい。製造コストを考慮すると、Al含有量は0.001%以上であるのが好ましい。本明細書において、Al含有量はsol.Al(酸可溶Al)を意味する。
窒素(N)は、高温での使用中に微細な窒化物として粒内に微細に析出し、クリープ強度を高める。Nはさらに、δフェライトの生成を抑制する。N含有量が低すぎると、これらの効果が得られない。一方、N含有量が高すぎると、溶接金属の凝固時に粗大な窒化物が晶出し、溶接金属の靱性が低下する。したがって、N含有量は0.005~0.017%である。N含有量は0.008%以上であるのが好ましく、0.015%以下であるのが好ましい。
酸素(O)は、不純物として鋼中に含まれる元素である。O含有量が高すぎると、靱性が低下する。したがって、Oの含有量は0.020%以下である。O含有量は0.010%以下であるのが好ましい。効果および製造コストを考慮すると、O含有量は0.001%以上であるのが好ましい。
銅(Cu)は、マルテンサイト組織の生成に有効であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Cu含有量が高すぎると、溶接金属のクリープ延性が低下する。したがって、Cu含有量は0~1.0%である。Cu含有量は0.8%以下であるのが好ましい。上記の効果を得たい場合は、Cu含有量は0.05%以上であるのが好ましく、0.2%以上であるのがより好ましい。
チタン(Ti)は、Nb、TaおよびVと同様に、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、溶接金属のクリープ強度を高めるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ti含有量が高すぎると、溶接中に粗大な窒化物として晶出して、または、高温での使用中に粗大な窒化物として多量に析出して、溶接金属の靱性を低下させる。したがって、Ti含有量は0~0.30%である。上記の効果を得たい場合は、Ti含有量は0.02%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。
Mg:0~0.050%
REM:0~0.10%
カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、および希土類元素(REM)は、溶接材料製造時の熱間加工性を高めるために用いられるため、金属材料中にも必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、これらの元素の含有量が高すぎると、これらの元素が酸素と結合し、溶接金属の清浄性を低下させる。この場合、溶接金属の熱間加工性を低下させる。したがって、Ca含有量は0~0.050%であり、Mg含有量は0~0.050%であり、REM含有量は0~0.10%である。
(20(C+N)+Cr+4Mo+2W+10(Nb+Ta+V)+500sol.B)/(Mn+Co+Ni)≧4.5 ・・・(iii)
但し、式中の各元素記号は、溶接金属中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
本発明に係るフェライト系耐熱鋼溶接継手は、上述した溶接金属とフェライト系耐熱鋼からなる母材とを含む。上記母材の化学組成について、特に制限は設けないが、下記に示す化学組成を有することが好ましい。
炭素(C)は、マルテンサイト組織を得るのに有効な元素である。Cはさらに、高温使用時に微細な炭化物を生成し、母材のクリープ強度を高める。C含有量が低すぎると、これらの効果が得られない。ただし、母材は溶接金属と異なり、凝固偏析が抑制されており、調質処理された後使用される。そのため、C含有量は、溶接金属の場合より低くても、上記効果を得ることができる。一方、C含有量が高すぎると、クリープ強度向上の効果が飽和する。したがって、C含有量は0.04~0.12%である。C含有量は0.06%以上であるのが好ましく、0.10%以下であるのが好ましい。
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する効果を有する。Siはさらに、母材の耐水蒸気酸化特性を高める。Si含有量が低すぎると、これらの効果が得られない。ただし、母材は溶接金属と異なり、凝固偏析が抑制されており、調質処理された後使用される。そのため、Si含有量は、溶接金属の場合より低くても、上記効果を得ることができる。一方、Si含有量が高すぎると、母材のクリープ延性および靱性が低下する。したがって、Si含有量は0.05~0.60%である。Si含有量は0.10%以上であるのが好ましく、0.40%以下であるのが好ましい。
マンガン(Mn)は、Siと同様に、鋼を脱酸する効果を有する。Mnはさらに、母材の組織のマルテンサイト化を促進する。Mn含有量が低すぎると、これらの効果が得られない。ただし、母材は溶接金属と異なり、凝固偏析が抑制されており、調質処理された後使用される。そのため、Mn含有量は、溶接金属の場合より低くても、上記効果を得ることができる。一方、Mn含有量が高すぎると、クリープ脆化が発生しやすくなる。したがって、Mn含有量は0.10~0.80%である。Mn含有量は0.20%以上であるのが好ましく、0.70%以下であるのが好ましい。
リン(P)は、不純物として鋼中に含まれる元素である。P含有量が高すぎると、クリープ延性が低下する。したがって、P含有量は0.020%以下である。P含有量は0.018%以下であるのが好ましく、なるべく低い方が好ましい。しかし、材料コストの観点から、P含有量は0.0005%以上であるのが好ましい。
硫黄(S)は、不純物として鋼中に含まれる元素である。S含有量が高すぎると、クリープ延性が低下する。したがって、S含有量は0.010%以下である。S含有量は0.005%以下であるのが好ましく、なるべく低い方が好ましい。しかし、材料コストの観点から、S含有量は0.0002%以上であるのが好ましい。
クロム(Cr)は、母材の高温での耐水蒸気酸化性および耐食性を高める。Crはさらに、高温での使用中に炭化物として析出し、母材のクリープ強度を高める。Cr含有量が低すぎると、これらの効果が得られない。ただし、母材は溶接金属と異なり、凝固偏析が抑制されており、調質処理された後使用される。そのため、Cr含有量は、溶接金属の場合より低くても、上記効果を得ることができる。一方、Cr含有量が高すぎると、炭化物の安定性が低下して母材のクリープ強度が低下する。したがって、Cr含有量は8.0~10.0%である。Cr含有量は8.5%以上であるのが好ましく、9.5%以下であるのが好ましい。
コバルト(Co)は、母材の組織をマルテンサイト組織にして、クリープ強度を高めるのに有効である。Co含有量が低すぎると、この効果が得られない。ただし、母材は溶接金属と異なり、凝固偏析が抑制されており、調質処理された後使用される。そのため、Co含有量は、溶接金属の場合より低くても、上記効果を得ることができる。一方、Co含有量が高すぎると、母材のクリープ強度およびクリープ延性が低下する。さらに、Coは高価な元素であるため、材料コストが高くなる。したがって、Co含有量は2.0~4.0%である。Co含有量は2.5%以上であるのが好ましく、3.5%以下であるのが好ましい。
ニッケル(Ni)は、マルテンサイト組織を得るのに有効であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ni含有量が高すぎると、上記効果が飽和する。したがって、Ni含有量は0~0.4%である。Ni含有量は0.2%以下であるのが好ましい。上記の効果を得たい場合は、Ni含有量は0.05%以上であるのが好ましく、0.1%以上であるのがより好ましい。
タングステン(W)は、マトリックスに固溶、または、金属間化合物として長時間使用中に析出し、高温でのクリープ強度を高める。W含有量が低すぎると、この効果が得られない。ただし、母材は溶接金属と異なり、凝固偏析が抑制されており、調質処理された後使用される。そのため、W含有量は、溶接金属の場合より低くても、上記効果を得ることができる。一方、W含有量が高すぎると、上記効果が飽和する。したがって、W含有量は、W:2.0~4.0%である。W含有量は2.5%以上であるのが好ましく、3.5%以下であるのが好ましい。
ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)は、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、クリープ強度を高める。Nbおよび/またはTaの含有量が低すぎると、この効果が得られない。ただし、母材は溶接金属と異なり、凝固偏析が抑制されており、調質処理された後使用される。そのため、これらの元素の含有量は、溶接金属の場合より低くても、上記効果を得ることができる。一方、Nbおよび/またはTaの含有量が高すぎると、粗大な炭窒化物が多量に析出して、クリープ強度およびクリープ延性が低下する。したがって、NbおよびTaの合計含有量は0.02~0.18%である。NbおよびTaの合計含有量は0.05%以上であるのが好ましく、0.12%以下であるのが好ましい。
バナジウム(V)はNbおよびTaと同様に、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、クリープ強度を高める。V含有量が低すぎると、この効果が得られない。ただし、母材は溶接金属と異なり、凝固偏析が抑制されており、調質処理された後使用される。そのため、V含有量は、溶接金属の場合より低くても、上記効果を得ることができる。一方、V含有量が高すぎると、粗大な炭窒化物が多量に析出して、クリープ強度およびクリープ延性が低下する。したがって、V含有量は0.05~0.40%である。V含有量は0.10%以上であるのが好ましく、0.30%以下であるのが好ましい。
ホウ素(B)は、焼入れ性を高め、マルテンサイト組織を得るのに有効である。Bはさらに、高温での使用中に炭化物を旧オーステナイト境界、マルテンサイトラス境界に微細分散して、組織の回復を抑制し、クリープ強度を高める。B含有量が低すぎると、この効果が得られない。ただし、母材は溶接金属と異なり、凝固偏析が抑制されており、調質処理された後使用される。そのため、B含有量は、溶接金属の場合より低くても、上記効果を得ることができる。一方、B含有量が高すぎると、靱性が低下する。したがって、B含有量は0.005~0.020%である。B含有量は0.007%以上であるのが好ましく、0.015%以下であるのが好ましい。
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する効果を有する。しかしながら、Al含有量が高すぎると、母材の清浄性が低下して加工性が低下する。Al含有量が高すぎるとさらに、クリープ強度が低下する。したがって、Al含有量は0.030%以下である。Al含有量は0.010%以下であるのが好ましい。製造コストを考慮すると、Al含有量は0.001%以上であるのが好ましい。本明細書において、Al含有量はsol.Al(酸可溶Al)を意味する。
窒素(N)は、高温での使用中に微細な窒化物として粒内に微細に析出し、クリープ強度を高める。N含有量が低すぎると、この効果が得られない。ただし、母材は溶接金属と異なり、凝固偏析が抑制されており、調質処理された後使用される。そのため、N含有量は、溶接金属の場合より低くても、上記効果を得ることができる。一方、N含有量が高すぎると、窒化物が粗大化して、クリープ延性が低下する。したがって、N含有量は0.002~0.025%である。N含有量は0.005%以上であるのが好ましく、0.015%以下であるのが好ましい。
酸素(O)は、不純物として鋼中に含まれる元素である。O含有量が高すぎると、母材の加工性が低下する。したがって、O含有量は0.020%以下である。O含有量は0.010%以下であるのが好ましい。製造コストを考慮すると、O含有量は0.001%以上であるのが好ましい。
ネオジム(Nd)は母材のクリープ延性を改善する。Nd含有量が低すぎると、この効果が得られない。溶接中にスラグとして減少する心配のない母材においては、Ndの上記効果を有効に活用できる。一方、Nd含有量が高すぎると、熱間加工性が低下する。したがって、Nd含有量は0.01~0.06%である。Nd含有量は0.02%以上であるのが好ましく、0.05%以下であるのが好ましい。
上述の溶接継手の製造方法は、母材に対してフェライト系耐熱鋼用の溶接材料を用いて溶接する工程(溶接工程)と、溶接後の溶接金属に対して熱処理を実施する工程(熱処理工程)とを備える。以下、各工程について詳述する。
母材に対して溶接材料を用いて溶接を実施して溶接金属を形成する。溶接に用いる溶接材料の化学組成については特に制限はなく、溶接金属の化学組成が上述した組成となるよう選択すればよい。なお、母材として、上記の化学組成を有するフェライト系耐熱鋼を用いる場合には、溶接材料の化学組成は、溶接金属の化学組成で説明した各元素の含有量の範囲内とすればよい。また、母材の形状は特に限定されない。母材は鋼板であってもよいし、鋼管であってもよい。
ガスタングステンアーク溶接において、溶接入熱が低すぎると、母材の寸法形状によっては、融合不良が生じやすくなる。溶接入熱が低すぎるとさらに、冷却速度が高くなりすぎて、マルテンサイトラスの成長が促進される。この場合、破壊単位が大きくなり、溶接金属の靱性が低下する。
溶接金属を形成した後、溶接金属に対して熱処理を実施する。熱処理により、溶接金属の硬さを低下して靱性を高める。例えば、溶接金属部を含む溶接部に、バンドヒーターおよびインダクションヒーター等の熱処理装置を配置して、熱処理を実施する。または、溶接構造物全体を加熱炉内で加熱する。熱処理における熱処理温度、および、その熱処理温度での保持時間(熱処理時間)は次のとおりである。
熱処理時間:母材の厚さ25.4mm当たり、0.5~4.0時間
母材の単位厚さは、溶接施工基準等で規定されることの多い、25.4mm(1インチ)とした。熱処理温度が低すぎる場合、または、母材の単位厚さ当たりの熱処理時間が短すぎる場合、マルテンサイト組織の焼戻しが不十分となり、十分な靱性が得られない。
Claims (3)
- フェライト系耐熱鋼溶接金属であって、
前記フェライト系耐熱鋼溶接金属の化学組成が、質量%で、
C:0.06~0.10%、
Si:0.10~0.40%、
Mn:0.30~0.70%、
P:0.010%以下、
S:0.003%以下、
Cr:8.5~9.5%、
Mo:0.01~1.0%、
Co:2.6~3.4%、
Ni:0.01~1.10%、
W:2.5~3.5%、
Nb:0.02~0.08%、
Ta:0.02~0.08%、
V:0.1~0.3%、
B:0.007~0.015%、
Al:0.030%以下、
N:0.005~0.017%、
O:0.020%以下、
Cu:0~1.0%、
Ti:0~0.30%、
Ca:0~0.050%、
Mg:0~0.050%、
REM:0~0.10%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記の(i)~(iii)式を満足し、
前記フェライト系耐熱鋼溶接金属から採取された丸棒クリープ破断試験片を用いて、650℃、147MPaの試験条件においてクリープ破断試験を行った場合に、クリープ破断時間が3000時間以上であり、
前記フェライト系耐熱鋼溶接金属部分にノッチ深さ2mmのノッチ加工が施されたフルサイズのVノッチシャルピー衝撃試験片を3本採取し、各試験片に対して、0℃にて、JIS Z2242(2005)に準拠したシャルピー衝撃試験を実施した場合に、吸収エネルギー値の平均値が27J以上である、
フェライト系耐熱鋼溶接金属。
sol.B≧0.005 ・・・(i)
insol.B≦0.0045 ・・・(ii)
(20(C+N)+Cr+4Mo+2W+10(Nb+Ta+V)+500sol.B)/(Mn+Co+Ni)≧4.5 ・・・(iii)
但し、式中の各元素記号は、溶接金属中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、sol.Bは溶接金属中に固溶しているB含有量(質量%)、insol.Bは溶接金属中に析出物として存在しているB含有量(質量%)である。 - 前記化学組成が、質量%で、
Cu:0.05~1.0%、
Ti:0.02~0.30%、
Ca:0.001~0.050%、
Mg:0.001~0.050%、および、
REM:0.001~0.10%、
から選択される1種以上を含有する、
請求項1に記載のフェライト系耐熱鋼溶接金属。 - 請求項1または請求項2に記載のフェライト系耐熱鋼溶接金属と、フェライト系耐熱鋼からなる母材と、を含むフェライト系耐熱鋼溶接継手であって、
前記母材の化学組成が、質量%で、
C:0.04~0.12%、
Si:0.05~0.60%、
Mn:0.10~0.80%、
P:0.020%以下、
S:0.010%以下、
Cr:8.0~10.0%、
Co:2.0~4.0%、
Ni:0~0.4%、
W:2.0~4.0%、
Nb+Ta:合計で0.02~0.18%、
V:0.05~0.40%、
B:0.005~0.020%、
Al:0.030%以下、
N:0.002~0.025%、
O:0.020%以下、
Nd:0.01~0.06%、
残部:Feおよび不純物であり、
前記フェライト系耐熱鋼溶接継手から、前記フェライト系耐熱鋼溶接金属が平行部の中央となるように採取された丸棒クリープ破断試験片を用いて、650℃、147MPaの試験条件においてクリープ破断試験を行った場合に、母材で破断する、
フェライト系耐熱鋼溶接継手。
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