JP7360032B2 - オーステナイト系耐熱鋼溶接継手 - Google Patents
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Description
前記母材の化学組成が、質量%で、
C:0.04~0.10%、
Si:1.0%以下、
Mn:2.0%以下、
P:0.03%以下、
S:0.015%以下、
Ni:22.5~32.0%、
Cr:20.0~27.0%、
W:2.0~4.0%、
Co:0.5~3.0%、
Cu:2.0~3.5%、
Nb:0.20~0.60%、
B:0.0015~0.008%、
Al:0.003~0.05%、
N:0.10~0.30%、
O:0.02%以下、
Mo:0~0.5%、
Ca:0~0.02%、
Mg:0~0.02%、
REM:0~0.06%、
残部がFeおよび不純物であり、下記(1)式を満足し、
前記溶接金属が、下記の(2)式および(3)式を満足する、
オーステナイト系耐熱鋼溶接継手。
30C+3W+2Cu+10Nb+700B+40N≧30・・・(1)
[%BWM1]≦0.0025・・・(2)
[%NiWM3]≧30・・・(3)
ただし、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)、[%BWM1]は、初層の溶接金属に含まれるBの含有量(質量%)、[%NiWM3]は、第3層の溶接金属に含まれるNiの含有量(質量%)をそれぞれ意味する。
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
Cは、オーステナイト相を安定にする効果を有するとともに、Nとともに微細な粒内炭窒化物を形成し、高温強度の向上に寄与する元素である。しかしながら、Cの含有量が過剰になると高温での使用中に粗大な炭化物を生成し、クリープ強度の低下を招くとともに耐食性が低下する。したがって、C含有量は0.04~0.10%とする。C含有量は0.05%以上であるのが好ましく、0.085%以下であるのが好ましい。
Siは、脱酸作用を有し、また、高温での耐食性、耐酸化性に有効な元素である。しかしながら、その含有量が過剰であると、オーステナイト相の安定性を低下させて、クリープ強度および靱性の低下を招く。したがって、Si含有量は1.0%以下とする。Si含有量は0.8%以下であるが好ましく、0.5%以下であるのがより好ましい。
Mnは、Siと同様に脱酸作用を有する。Mnは、オーステナイト相の安定化にも寄与する。しかしながら、その含有量が過剰であると、脆化を招き、クリープ延性および靱性の低下をきたす。したがって、Mn含有量は2.0%以下とする。Mn含有量は1.5%以下であるのが好ましく、0.6%以下であるのがより好ましい。
S:0.015%以下
PおよびSは、合金中に不純物として含まれる元素である。これらの元素はいずれも、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下させ、凝固割れ感受性を著しく増大させるとともに、高温使用中に粒界脆化を引き起こして耐応力緩和割れ性の低下を招く元素である。したがって、含有量をそれぞれ、P:0.03%以下およびS:0.015%以下に制限する。
Niは、オーステナイト組織を得るために有効な元素であり、長時間使用時の組織安定性を確保して、所望のクリープ強度を得るために必須の元素である。一方、Niは高価な元素であるため、過剰な含有はコスト増大を招く。したがって、Ni含有量は22.5~32.0%とする。Ni含有量は24.0%以上であるのが好ましく、28.0%以下であるのが好ましい。
Crは、高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。しかしながら、過剰な含有は、高温でのオーステナイト相の安定性を低下させて、クリープ強度の低下を招く。したがって、Cr含有量は20.0~27.0%とする。Cr含有量は21.5%以上であるのが好ましく、23.5%以下であるのが好ましい。
Wは、マトリックスに固溶して高温強度の向上、なかでも高温でのクリープ強度の向上に寄与する元素である。しかしながら、W含有量が過剰になるとオーステナイト相の安定性が低下するため、却ってクリープ強度を低下させる。また、溶接金属の割れ感受性を高めるおそれがある。したがって、W含有量は2.0~4.0%とする。
W含有量は、2.3%以上であるのが好ましく、3.6%以下であるのが好ましい。
Coは、NiおよびCuと同様に、オーステナイト生成元素であり、オーステナイト組織の安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。しかしながら、Coは極めて高価な元素であるため、過剰な含有は大幅なコスト増加を招く。したがって、Co含有量は0.5~3.0%とする。Co含有量は1.0%以上であるのが好ましく、2.0%以下であるのが好ましい。
Cuは、クリープ破断強度を向上させるのに有効な元素である。しかし、過剰に含有させると、クリープ延性がかえって低下する。過剰に含有されると、脆化を招く元素である。そのため、したがって、Cu含有量は2.0~3.5%とする。Cu含有量は2.3%以上であるのが好ましく、3.2%以下であるのが好ましい。
Nbは、炭窒化物として微細に粒内析出し、高温でのクリープ強度の向上に寄与する元素である。しかしながら、Nb含有量が過剰になると、高温での使用中に炭窒化物が急速に粗大化して、クリープ強度および靱性の極端な低下を招く。また、溶接金属の割れ感受性を高めるおそれがある。したがって、Nb含有量は0.20~0.60%とする。Nb含有量は0.30%以上であるのが好ましく、0.55%以下であるのが好ましい。
Bは、粒界に偏析するとともに粒界炭化物を微細分散させることにより、粒界強化に寄与する元素である。しかしながら、B含有量が過剰になると、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下させ、凝固割れ感受性を著しく増大させる。したがって、B含有量は0.0015~0.008%とする。B含有量は0.0020%以上であるのが好ましく、0.0055%以下であるのが好ましい。
Alは、脱酸作用を有するが、多量の添加は清浄度を著しく害し、加工性および延性を劣化させる。したがって、Al含有量はAl:0.003~0.05%とする。Al含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.03%以下であるのが好ましい。
Nは、オーステナイト安定化元素であり、マトリックスに固溶するとともに、Cと同様に微細な粒内炭窒化物を形成し、高温でのクリープ強度の確保に寄与する元素である。また、耐食性の向上にも有効な元素である。しかしながら、N含有量が過剰になると、窒化物が多量に析出し、クリープ延性を低下させることに加え、熱間加工性を低下させて、母材の表面疵の原因となる。したがって、N含有量は0.10~0.30%とする。N含有量は0.15%以上であるのが好ましく、0.25%以下であるのが好ましい。
Oは、不純物として合金中に含まれ、過剰に含有すると熱間加工性が低下するとともに、靭性および延性の劣化を招く。そのため、O含有量は0.02%以下とする。O含有量は、0.018%以下であるのが好ましい。
Moは、マトリックスに固溶して高温強度の向上、なかでも高温でのクリープ強度の向上に寄与する元素である。しかしながら、Mo含有量が過剰になるとオーステナイト相の安定性が低下するため、却ってクリープ強度を低下させる。また、溶接金属の割れ感受性を高めるおそれがある。したがって、Mo含有量は0.5%以下とする。上記の効果は、微量でも発現するが、特に、0.01%以上含有させた場合に顕著となる。Mo含有量は0.1%以下であるのが好ましい。
Caは、熱間変形能を改善する効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有されたCaは、酸素と結合して清浄性を著しく低下させるので、却って熱間変形能を劣化させる。そのため、Ca含有量は、0.02%以下とすることが望ましい。Ca含有量は、さらに望ましくは0.015%以下である。上記の効果を得るためは、Ca含有量は、0.001%以上であるのが好ましく、0.002%以上であるのがより好ましい。
Mgは、Caと同様、熱間変形能を改善する効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有されたMgは、酸素と結合して清浄性を著しく低下させるので、却って熱間変形能を劣化させる。そのため、Mg含有量は、0.02%以下とすることが望ましい。Mg含有量は、さらに望ましくは0.015%以下である。上記の効果を得るためは、Mg含有量は、0.001%以上であるのが好ましく、0.002%以上であるのがより好ましい。
REMは、製造時の熱間変形能の改善に寄与する。しかしながら、過剰に含有されたREMは、酸素と結合して清浄性を著しく低下させるので、却って熱間変形能を劣化させる。そのため、REM含有量は、0.06%以下とすることが好ましい。REM含有量は、さらに望ましくは0.04%以下であり、さらに望ましくは0.03%以下である。上記の効果を得るためは、REM含有量は、0.001%以上であるのが好ましく、0.01%以上であるのがより好ましい。
30C+3W+2Cu+10Nb+700B+40N≧30・・・(1)
ただし、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
上記(1)式は、クリープ破断強度を向上させる元素について、各元素による影響の度合いを整理した式である。そして、上記(1)式左辺を計算した値が右辺の値(30)を下回ると、クリープ破断強度が低下する。上記(1)式右辺値は、31とすることが好ましく、33とすることがより好ましい。
(初層の溶接金属)
溶接金属は、母材および溶接材料に由来するものであり、その化学組成は、母材の溶接材料への希釈率によって決まる。母材の希釈率は、溶接方法などの影響を受けるが、総じて溶接金属の初層の溶接金属において最も高く、第2層以降の溶接金属において下がっていき、第3層以降の溶接金属ではほとんど変化しない。このため、B含有量が低い溶接材料を選べば、第3層以降のB含有量を低減することができ、凝固割れの抑制には寄与する。しかし、初層のB含有量は、母材の希釈率の影響を受けるため、単に、B含有量が低い溶接材料を選ぶだけでは調整することができず、初層の溶接金属の凝固割れを完全に防止するには至らない。そして、母材の希釈率を調整し、初層のB含有量を所定の範囲に収めることができれば、初層の溶接金属の割れ感受性が低く抑えることができる。具体的には、初層の溶接金属に含まれるBの含有量[%BWM1](質量%)は、下記(2)式の関係を満たす必要がある。
[%BWM1]≦0.0025・・・(2)
上記(2)式右辺値は、0.0020であることが好ましく、0.0016であることがより好ましい。
本発明においては、B含有量が低い溶接材料を選び、初層の溶接金属における凝固割れを抑制する一方で、溶接金属のクリープ破断強度を低下させないようにするべく、Niを多く含むことが重要である。すなわち、第3層の溶接金属に含まれるNiの含有量[%NiWM3](質量%)は、下記(3)式の関係を満たす必要がある。
[%NiWM3]≧30・・・(3)
上記(3)式右辺値は、40であることが好ましく、50であることがより好ましい。
より具体的には、第3層の溶接金属は、下記の化学組成を有することが好ましい。
Cは、オーステナイト生成元素であり、高温使用時のオーステナイト組織の安定性を高めるのに有効な元素である。しかしながら、C含有量が過剰である場合、溶接金属中に炭化物が多量に存在するため、延性および靭性が低下する。したがって、C含有量は0.005~0.180%とするのが好ましい。C含有量は0.008%以上であるのが好ましく、0.150%以下であるのが好ましい。
Siは、脱酸作用を有し、また、高温での耐食性、耐酸化性に有効な元素である。しかしながら、その含有量が過剰であると、オーステナイト相の安定性を低下させて、クリープ強度および靱性の低下を招く。したがって、Si含有量は1.20%以下とするのが好ましい。Si含有量は1.0%以下であるのが好ましく、0.8%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得るためは、Si含有量は、0.10%以上であるのが好ましく、0.20%以上であるのがより好ましい。
Mnは、Siと同様、脱酸作用を有する。また、Mnは、オーステナイト組織を安定にし、クリープ強度の向上に寄与する。しかしながら、Mn含有量が過剰になると脆化を招き、さらに、クリープ延性の低下も生じる。したがって、Mn含有量は0.02~4.00%とするのが好ましい。Mn含有量は0.05%以上であるのが好ましく、3.00%以下であるのが好ましい。
Pは、不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に凝固割れ感受性を増大させるとともに、クリープ延性の低下を招く。そのため、Pの含有量は0.030%以下とすることが好ましい。P含有量は0.020%以下とするのがより好ましく、0.015%以下とするのがさらに好ましい。
Sは、Pと同様に不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に凝固割れ感受性を増大させるとともに、クリープ延性の低下を招く。そのため、Sの含有量は0.010%以下とすることが好ましい。S含有量は0.008%以下とするのがより好ましく、0.005%以下とするのがさらに好ましい。
Cuは、Coと同様、溶接金属の高温での組織を安定化し、クリープ強度を向上させるのに有効な元素であるので含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させると、クリープ延性がかえって低下する。そのため、Cu含有量は3.5%以下とすることが好ましい。Cu含有量は3.0%以下であることがより好ましく、2.5%以下であることがさらに好ましい。上記の効果を得るためは、Cu含有量は、0.01%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。
Coは、溶接金属の高温での組織を安定化し、クリープ強度を向上させるのに有効な元素であるので含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させると、クリープ強度およびクリープ延性がかえって低下する。加えて、非常に高価な元素であるため、材料コストを増大させる。そのため、Co含有量は15.0%以下とすることが好ましい。Co含有量は14.5%以下であることがより好ましく、14.0%以下であることがさらに好ましい。上記の効果を得るためは、Co含有量は、0.50%以上であるのが好ましく、1.00%以上であるのがより好ましい。
Crは、溶接金属の高温での耐水蒸気酸化性および耐食性に有効な元素である。また、高温での使用中に炭化物として析出し、クリープ強度の向上にも寄与する。これらの効果を得るためには、20.0%以上含有させることが好ましい。しかしながら、過剰に含有すると、高温での組織安定性を低下させてクリープ強度が低下するおそれがあるため、Cr含有量は27.0%以下とすることが好ましい。Cr含有量は20.5%以上であるのが好ましく、21.0%以上であるのがより好ましい。また、Cr含有量は26.5%以下であるのが好ましく、26.0%以下であるのがより好ましい。
Niは、オーステナイト組織を得るために有効な元素であり、長時間使用時の組織安定性を確保して、所望のクリープ強度を得るために必須の元素である。一方、Niは高価な元素であるため、過剰な含有はコスト増大を招く。したがって、Ni含有量は30.0%~70.0%とするのが好ましい。Ni含有量は35.0%以上であるのが好ましく、40.0%以上であるのが好ましい。Ni含有量は、68.0%以下であるのが好ましく、65.0%以下であるのがより好ましく、60.0%以下であるのがより好ましい。
Moは、マトリックスに固溶し、溶接金属の高温でのクリープ強度確保に寄与する元素であるので含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させると、高温での組織安定性を低下させ、クリープ強度をかえって低下させる。したがって、Mo含有量は12.0%以下とすることが好ましい。Mo含有量は11.5%以下であることがより好ましく、11.0%以下であることがさらに好ましい。上記の効果を得るためは、Mo含有量は、0.01%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。
Tiは、Nbと同様、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、溶接金属のクリープ強度の向上に寄与するため含有させてもよい。しかしながら、含有量が過剰になると、多量かつ粗大に析出し、かえってクリープ強度およびクリープ延性の低下を招くおそれがある。そのため、Ti含有量は0.50%以下であることが好ましい。Ti含有量は0.48%以下であることがより好ましく、0.45%以下であることがさらに好ましい。上記の効果を得るためは、Tiの含有量は、0.01%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。
Wは、Moと同様に、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度の向上に寄与する元素であるので含有させてもよい。しかしながら、W含有量が過剰になるとオーステナイト相の安定性が低下するため、却ってクリープ強度を低下させる。また、溶接金属の割れ感受性を高めるおそれがある。したがって、W含有量は4.0%以下とすることが好ましい。W含有量は、3.8%以下であることがより好ましく、3.6%以下であることがさらに好ましい。上記の効果を得るためは、W含有量は、0.01%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。
Nbは、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、溶接金属のクリープ強度の向上に寄与するため一方または両方を含有させてもよい。しかしながら、含有量が過剰になると、多量かつ粗大に析出し、かえってクリープ強度およびクリープ延性の低下を招くおそれがある。そのため、Nb含有量は1.00%以下であることが好ましい。Nb含有量は0.90%以下であることがより好ましく、0.80%以下であることがさらに好ましい。上記の効果を得るためは、Nb含有量は、0.01%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。
Nは、高温での溶接金属組織安定性を高めるのに有効な元素であるため含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有する場合、高温での使用中に多量の窒化物の析出を招き、靭性および延性を低下させるため、0.30%以下とすることが好ましい。N含有量は0.28%以下とするのがより好ましく、0.25%以下とするのがさらに好ましい。上記の効果を得るためは、Nの含有量は、0.01%以上であるのがより好ましい。
Bは、粒界に偏析するとともに粒界炭化物を微細分散させることにより、溶接金属のクリープ強度に寄与する元素であるため含有させてもよい。しかしながら、B含有量が過剰になると、溶接金属の靭性を低下させる。したがって、B含有量は0.008%以下とする。B含有量は0.006%以下であるのがより好ましく、0.004%以下であるのがさらに好ましい。上記の効果を得るためは、Bの含有量は、0.0001%以上であるのが好ましく、0.0002%以上であるのがより好ましい。
Alは、Niと結合して金属間化合物として粒内に微細に析出し、溶接金属のクリープ強度向上に寄与するため含有させてもよい。一方で、過剰に含有すると金属間化合物相の過剰な析出を招き、靭性を低下させる。そのため、Al含有量は2.00%以下とすることが好ましい。Al含有量は1.80%以下であるのがより好ましく、1.60%以下であるのがさらに好ましい。上記の効果を得るためは、Alの含有量は、0.01%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。
Oは、不純物として含有されるが、多量に含まれる場合には、溶接金属の延性を低下させる。そのため、O含有量は0.020%以下とすることが好ましい。O含有量は0.018%以下とするのがより好ましく、0.015%以下とするのがさらに好ましい。
Caは、熱間変形能を改善する効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有されたCaは、酸素と結合して清浄性を著しく低下させるので、却って熱間変形能を劣化させる。そのため、Ca含有量は、0.02%以下とすることが望ましい。Ca含有量は、さらに望ましくは0.015%以下である。上記の効果を得るためは、Ca含有量は、0.001%以上であるのが好ましく、0.002%以上であるのがより好ましい。
Mgは、Caと同様、熱間変形能を改善する効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有されたMgは、酸素と結合して清浄性を著しく低下させるので、却って熱間変形能を劣化させる。そのため、Mg含有量は、0.02%以下とすることが望ましい。Mg含有量は、さらに望ましくは0.015%以下である。上記の効果を得るためは、Mg含有量は、0.001%以上であるのが好ましく、0.002%以上であるのがより好ましい。
REMは、製造時の熱間変形能の改善に寄与する。しかしながら、過剰に含有されたREMは、酸素と結合して清浄性を著しく低下させるので、却って熱間変形能を劣化させる。そのため、REM含有量は、0.06%以下とすることが好ましい。REM含有量は、さらに望ましくは0.04%以下であり、さらに望ましくは0.03%以下である。上記の効果を得るためは、REM含有量は、0.001%以上であるのが好ましく、0.01%以上であるのがより好ましい。
上記母材を溶接する際に用いる溶接材料の組成について、特に制限は設けないが、下記に示す化学組成を有することが好ましい。
Cは、オーステナイト生成元素であり、高温使用時のオーステナイト組織の安定性を高めるのに有効な元素である。さらにCは、溶接時の耐高温割れ性を高める。具体的には、Cは、溶接時の凝固過程において主にCrと結合して共晶炭化物を形成する。これにより液相の消失を早め、最終凝固部の組織を(Cr,M)23C6とオーステナイトとのラメラ状組織にする。その結果、液相の残存形態が面状から点状に変化するとともに、特定面での応力集中が抑制され、凝固割れが抑制される。さらにCは、不純物の偏析サイトとなる最終凝固界面積を増大させることから、溶接中の延性低下割れの防止および高温使用中の応力緩和割れの感受性低減にも寄与する。
Siは、脱酸剤として含有されるが、溶接金属の凝固時に柱状晶粒界に偏析し、液相の融点を下げ、凝固割れ感受性を増大させる。そのため、Si含有量は1.5%以下とする必要がある。なお、Si含有量には特に下限を設ける必要はないが、極端に低下させると、脱酸効果が十分に得られず鋼の清浄度を劣化させるとともに、製造コストの上昇を招く。そのため、Si含有量は0.02%以上であるのが好ましい。
Mnは、Siと同様、脱酸剤として含有される。Mnは、溶接金属中のNの活量を下げることによりアーク雰囲気中からのNの飛散を抑制して、強度の確保にも寄与する。しかしながら、Mnを過剰に含有する場合には脆化を招くため、Mnの含有量は2.0%以下とする必要がある。Mnの含有量は1.5%以下とするのが好ましい。
S:0.030%以下
PおよびSは、不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下させ、凝固割れ感受性を著しく増大させる。そのため、P含有量は0.020%以下、S含有量は0.030%以下とする必要がある。P含有量は0.015%以下、S含有量は0.020%以下であるのが好ましい。
Cuは、過剰に含有されると、脆化を招く元素である。そのため、Cu含有量は極力低減することが望ましく、0.15%以下とする。Cu含有量は0.10%以下であるのが好ましい。
Crは、高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。Crは、凝固過程でCと結合して、共晶炭化物を生成させ、溶接中の凝固割れおよび延性低下割れを防止するとともに、高温使用中の応力緩和割れ感受性を低減する作用も有する。これらの効果を得るためには、Cr含有量を20.0%以上とする必要がある。しかし、Cr含有量が過剰になって25.0%を超えると、高温での組織の安定性が劣化して、クリープ強度の低下を招く。このため、Cr含有量は20.0~25.0%とする。Cr含有量は20.5%以上であるのが好ましく、24.5%以下であるのが好ましい。
Moは、マトリックスに固溶して高温強度の向上、なかでも高温でのクリープ強度の向上に寄与する元素である。しかしながら、Mo含有量が過剰になるとオーステナイト相の安定性が低下するとともに高温での局部腐食が大きくなる。したがって、Mo含有量は10.0%以下とする。Mo含有量は9.5%以下であるのが好ましい。下限は特に規定する必要はなく、0%である。しかし、上記の効果を得たい場合には、Mo含有量は0.5%以上であるのが好ましく、母材中のMo含有量以上であることがより好ましい。
Wは、Moと同様に、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度の向上に寄与する元素であるので含有させてもよい。しかしながら、W含有量が過剰になるとオーステナイト相の安定性が低下するため、却ってクリープ強度を低下させる。また、溶接金属の割れ感受性を高めるおそれがある。したがって、W含有量は4.0%以下とすることが好ましい。W含有量は、3.8%以下であることがより好ましく、3.6%以下であることがさらに好ましい。上記の効果を得るためは、W含有量は、0.01%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。
Nbは、炭窒化物として微細に粒内析出し、高温でのクリープ強度の向上に寄与する元素である。しかしながら、Nb含有量が過剰になると、高温での使用中に炭窒化物が急速に粗大化して、クリープ強度および靱性の極端な低下を招く。また、溶接金属の割れ感受性を高めるおそれがある。したがって、Nb含有量は1.0%以下とする。Nb含有量は0.6%以下であるのが好ましい。下限は特に規定する必要はなく、0%である。しかし、上記の効果を得たい場合には、Nb含有量は0.1%以上であるのが好ましく、0.4%以上であるのがより好ましい。
Tiは、炭窒化物として微細に粒内析出し、高温でのクリープ強度の向上に寄与する元素であるが、その含有量が過剰になると、高温での使用中に炭窒化物が急速に粗大化して、クリープ強度および靱性の極端な低下を招くだけでなく、溶接時の液化割れ感受性の著しい増大を招く。したがって、Ti含有量は低減することが好ましく、0.50%以下とする。下限は特に規定する必要はなく、0%である。しかし、上記の効果を得たい場合には、Ti含有量は0.1%以上であるのが好ましく、0.3%以上であるのがより好ましい。
Coは、NiおよびCuと同様に、オーステナイト生成元素であり、オーステナイト組織の安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。しかしながら、Coは極めて高価な元素であるため、過剰な含有は大幅なコスト増加を招く。したがって、Co含有量は15.0%以下とする。Co含有量は14.0%以下であるのが好ましい。下限は特に規定する必要はなく、0%である。しかし、上記の効果を得たい場合には、Co含有量は0.5%以上であるのが好ましい。
Alは、脱酸作用を有する元素である。しかしながら、多量の添加は清浄度を著しく害し、加工性および延性を劣化させる。したがって、Al含有量は2.0%以下とする。下限は特に規定する必要はなく、0%である。しかし、上記の効果を得たい場合には、Al含有量は0.5%以上であるのが好ましい。
Nは、高温での溶接金属組織安定性を高めるのに有効な元素であるため含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有する場合、高温での使用中に多量の窒化物の析出を招き、靭性および延性を低下させるため、0.30%以下とすることが好ましい。N含有量は0.28%以下とするのがより好ましく、0.25%以下とするのがさらに好ましい。上記の効果を得るためは、Nの含有量は、0.01%以上であるのがより好ましい。
Bは、高温での使用中に粒界に偏析し、粒界を強化するとともに粒界炭化物を微細分散させることによりクリープ強度を向上させるのに有効な元素である。そのため、この効果を得るためにBを含有させてもよい。しかしながら、Bの過剰の含有は、ガスシールドアーク溶接中の凝固割れ感受性を高める。したがって、B含有量は0.005%以下とする。B含有量は0.0045%以下であるのが好ましい。下限は特に規定する必要はなく、0%である。しかし、上記の効果を得たい場合には、B含有量は0.002%以上であるのが好ましい。
Niは、オーステナイト組織を得るために有効な元素であり、長時間使用時の組織安定性を確保して、所望のクリープ強度を得るために必須の元素である。一方、Niは高価な元素であるため、過剰な含有はコスト増大を招く。したがって、Ni含有量は30.0%~70.0%とする。Ni含有量は35.0%以上であるのが好ましく、40.0%以上であるのが好ましい。またNi含有量は65.0%以下であるのが好ましく、60.0%以下であるのが好ましい。
Oは、不純物として含有されるが、多量に含まれる場合には、溶接金属の延性を低下させる。そのため、O含有量は0.020%以下とすることが好ましい。O含有量は0.018%以下とするのがより好ましく、0.015%以下とするのがさらに好ましい。
本発明に係るオーステナイト系耐熱鋼溶接継手は、オーステナイト系耐熱鋼からなる母材同士を所定の溶接材料を用いて溶接して溶接金属を形成することにより製造される。
オーステナイト系耐熱鋼(母材)としては、通常の方法により製造されたものが用いられる。すなわち、所定の化学組成を有する耐熱鋼を溶製し、熱間鍛造、熱間圧延、冷間圧延および固溶化熱処理により、所定形状の耐熱鋼材を製造する。
溶接には、例えば、GTAW溶接(Gas Tungsten Arc Welding)を用いることができる。溶接材料の供給速度を変更することにより、初層における母材の希釈率を変更することができる。具体的には、溶接材料の供給速度を45~800mm/minの間に変化させて、母材の希釈率を種々変化させた溶接継手を作製した。
Claims (3)
- オーステナイト系耐熱鋼からなる母材と、溶接金属とを備えるオーステナイト系耐熱鋼溶接継手であって、
前記母材の化学組成が、質量%で、
C:0.04~0.10%、
Si:1.0%以下、
Mn:2.0%以下、
P:0.03%以下、
S:0.015%以下、
Ni:22.5~32.0%、
Cr:20.0~27.0%、
W:2.0~4.0%、
Co:0.5~3.0%、
Cu:2.0~3.5%、
Nb:0.20~0.60%、
B:0.0015~0.008%、
Al:0.003~0.05%、
N:0.10~0.30%、
O:0.02%以下、
Mo:0~0.5%、
Ca:0~0.02%、
Mg:0~0.02%、
REM:0~0.06%、
残部がFeおよび不純物であり、下記(1)式を満足し、
前記溶接金属が、下記の(2)式および(3)式を満足する、
オーステナイト系耐熱鋼溶接継手。
30C+3W+2Cu+10Nb+700B+40N≧30・・・(1)
[%BWM1]≦0.0025・・・(2)
[%NiWM3]≧30・・・(3)
ただし、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)、[%BWM1]は、初層の溶接金属に含まれるBの含有量(質量%)、[%NiWM3]は、第3層の溶接金属に含まれるNiの含有量(質量%)をそれぞれ意味する。 - 前記母材の化学組成が、質量%で、
Mo:0.01~0.5%、
Ca:0.0005%~0.02%
Mg:0.0005%~0.02%および
REM:0.0003%~0.06%
から選択される1種以上を含有する、
請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋼溶接継手。 - 前記第3層の溶接金属の化学組成が、質量%で、
C:0.005~0.180%、
Si:0~1.20%、
Mn:0.02~4.00%、
P:0.030%以下、
S:0.010%以下、
Cu:0~3.5%、
Co:0~15.0%、
Cr:20.0~27.0%、
Ni:30.0~70.0%、
Mo:0.01~12.0%、
Ti:0.01~0.50%、
W:0~4.0%、
Nb:0~1.00%、
N:0~0.30%、
B:0~0.008%、
Al:0.01~2.00%、
O:0.020%以下、
Ca:0~0.02%、
Mg:0~0.02%、
REM:0~0.06%、
残部がFeおよび不純物である、
請求項1または2に記載のオーステナイト系耐熱鋼溶接継手。
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