JP4835770B1 - オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料ならびにそれを用いてなる溶接金属および溶接継手 - Google Patents

オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料ならびにそれを用いてなる溶接金属および溶接継手 Download PDF

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Abstract

【課題】溶接時に優れた耐高温割れ性を有するγ系耐熱鋼用溶接材料並びに溶接中の耐高温割れ性、高温で長時間使用中の耐応力緩和割れ性及び良好なクリープ強度を有する溶接金属と溶接継手を提供すること。
【解決手段】(1)C:0.05%超〜0.18%、Si≦0.5%、Mn≦1.5%、Ni:40〜50%、Cr:20〜25%、W:8.0%超〜13.0%、Ti:0.01〜0.2%、N:0.03%超〜0.20%及びAl≦0.01%を含み、残部がFe及び不純物からなり、不純物としてのO≦0.02%、P≦0.008%及びS≦0.005%の化学組成を有するγ系耐熱鋼用溶接材料。この溶接材料はNb<0.60%を含んでもよい。(2)上記のγ系耐熱鋼用溶接材料を用いてなる溶接金属。(3)上記溶接金属と高温強度に優れたγ系耐熱鋼の母材からなる溶接継手。
【選択図】なし

Description

本発明は、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料ならびにそれを用いてなる溶接金属および溶接継手に関する。詳しくは、発電用ボイラ等、高温で使用される機器に用いるオーステナイト系耐熱鋼を溶接するのに好適な溶接材料ならびにそれを使用して得られる溶接金属および溶接継手に関する。
近年、環境負荷軽減の観点から発電用ボイラ等では運転条件の高温・高圧化が世界的規模で進められており、それに使用される材料にも、より優れた高温強度を有することが求められている。
このような要求を満たす材料として、例えば、特許文献1に、Wを多量に含有させることにより、700℃以上の高温域において優れたクリープ強度を有するオーステナイト系の耐熱鋼が提案されている。
オーステナイト系の耐熱鋼を構造物として使用する場合、溶接により組み立てるのが一般的である。その際、母材をそのまま溶接材料として使用する場合がある。また、AWS A5.14−2005 ERNiCrCoMo−1等の高Ni合金用溶接材料を使用して溶接することもある。
しかしながら、オーステナイト系耐熱鋼からなる溶接金属は、一般的に溶接時の高温割れ感受性が高く、その防止が求められる場合がある。上記「溶接時の高温割れ」には、「凝固割れ」と「延性低下割れ」が含まれる。
さらに、母材が溶製後、圧延および熱処理による組織の調整を受けて高温強度の確保がなされるのに対し、溶接金属はほとんどの場合、凝固ままの組織で使用される。そのため、母材をそのまま溶接材料として使用すると、溶接時に十分な耐高温割れ性が得られない場合が生じたり、母材と同等のクリープ強度等の機械的特性を得ることが困難な場合がある。
また、高Ni合金用の溶接材料はクリープ強度には優れるものの、高価であることから経済性の観点から好ましくないことがあり、被溶接材料と大きく成分が異なる場合には、十分な耐溶接高温割れ性が得られないこともある。
一方、特許文献2に、Nb、Tiの共晶炭化物を活用し、溶接時の高温割れ防止とクリープ強度を両立させた、高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料が提案されている。
ところで、高温で使用されるオーステナイト系耐熱鋼からなる溶接構造物には、溶接時の高温割れ以外に、高温での長時間使用によって、溶接部で割れが発生するという問題が生じる。
例えば、非特許文献1および非特許文献2には、18Cr−8Ni系のオーステナイト系耐熱鋼の溶接部において、長時間加熱によって溶接熱影響部(以下、「HAZ」という。)に粒界割れが生じることが指摘されている。
これらの非特許文献では、HAZにおける粒界割れに影響する因子として、M236、NbC等の炭化物が示唆されている。
非特許文献3には、Ni基耐熱合金のHAZにおいて、溶接後熱処理中に粒界割れが生じることが指摘されており、γ’相の析出に加えて、Sの粒界偏析が影響することが示唆されている。
また、非特許文献4には、18Cr−8Ni−Nb系のオーステナイト系耐熱鋼溶接部の長時間加熱時のHAZにおける粒界割れの防止策についての検討が行われている。そして、適正な後熱処理の適用による溶接残留応力の低減が割れ防止に有効であるとの溶接プロセス面からの対策が提案されている。
このように、オーステナイト系耐熱鋼を長時間使用した際、HAZに割れが生じる現象は古くから知られていたものの、近年、材料の高強度化のために多様の合金元素が含有されるに伴い、溶接金属においても長時間加熱時の割れ発生が顕在化する傾向にある。
しかしながら、長時間使用中に溶接部に発生する割れについては、未だ完全な機構解明には至っておらず、さらには、割れ対策、特に、溶接金属における材料面からの割れ対策は確立されていない。
上記の特許文献2で開示された高強度オーステナイト系耐熱鋼からなる溶接金属は、溶接時の耐高温割れ性には極めて優れるものである。しかしながら、近年の過酷な使用条件の下で、長時間使用中に発生する割れ(以下、「応力緩和割れ」と称する。)に対しては、若干改善すべき余地がある。
特開2004−3000号公報 特開2008−207242号公報
R.N.Youngerら:Journal of The Iron and Steel Institute、October(1960)、p.188 R.N.Youngerら:British Welding Journal、December(1961)、p.579 井川ら:溶接学会誌、第47巻(1978)第10号、P.679 内木ら:石川島播磨技報、第15巻(1975)第2号、p.209
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、溶接時に優れた耐高温割れ性を有するオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料の提供と、それを用いてなる溶接中の耐高温割れ性、高温で長時間使用中の耐応力緩和割れ性および良好なクリープ強度を有する溶接金属の提供を目的とする。さらに、この溶接材料を用いてなる溶接金属と高温における優れたクリープ強度を有する母材とからなる溶接継手を提供することも本発明の目的である。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、先ず、高温で長時間使用中に溶接金属に発生する応力緩和割れについて詳細な調査を行った。その結果、下記(a)〜(c)の事項が明らかになった。
(a)応力緩和割れは溶接金属の柱状晶境界に発生している。
(b)割れ破面は延性に乏しく、破面上には、P、Sの濃化が確認され、特にSの濃化が顕著である。
(c)割れ部近傍のミクロ組織には、結晶粒内に微細な炭窒化物および金属間化合物が多量に析出している。
上記(a)〜(c)の判明事項から、本発明者らは、次の(d)〜(f)の結論に至った。
(d)応力緩和割れは、溶接時の凝固およびその後の高温での加熱中にPとS、特にSが偏析することに起因して弱くなった粒界に、溶接残留応力および外部応力が作用することによって開口したものである。
(e)粒内に多量の炭窒化物および金属間化合物が微細析出する場合には、粒内の変形能が低下するため、粒界面への応力集中が生じ、粒界が弱くなったこととの重畳作用によって、割れが発生しやすくなる
(f)上記の機構は、非特許文献3にHAZにおける類似の割れについて示唆されている。そして、非特許文献3には、粒界を弱くさせるSの低減またはSを固定するためにCaおよびMgを含有させることがその割れを防止するのに有効であることが示されている。しかしながら、溶接金属は凝固ままの組織で使用されるのが一般的であり、熱処理など調質された母材を元にするHAZとは現象が異なることが予想されるため、非特許文献3で提案されたHAZにおける割れ対策がそのまま、応力緩和割れに対しても適用できる可能性は小さい。具体的には、上記非特許文献3にて提案されているCaおよびMgは酸素との親和力が非常に強いため、溶接中に酸化物を形成しやすく、溶接後の溶接金属への歩留まりは溶接条件の影響を受け、その効果を安定して得るのは難しい。さらに、不純物元素の極端な低減は製鋼コストの大幅な増大を招くため、大量生産する工業製品に対して適用することは難しい。
そこで、本発明者らは応力緩和割れを防止するためにさらに詳細な検討を実施した。その結果、次の(g)および(h)によって応力緩和割れに対する感受性を低下できることが判明した。
(g)粒界に偏析して粒界を弱くさせる溶接金属中のSおよびPの含有量を特定の範囲内に規制すること。
(h)微細炭化物または金属間化合物として析出して粒内変形抵抗の増大を招く元素、具体的には、TiおよびNbの含有量を特定の範囲内に規制すること。
しかしながら、上記(g)及び(h)の対策を講じても、応力緩和割れを完全に防止するには至らなかった。加えて、析出強化効果を十分に活用できないため、所望の良好なクリープ強度が得られないことが判明した。
そこでさらに、本発明者らが検討を進めた結果、高濃度のWを含有させることによって、応力緩和割れの防止と所望の良好なクリープ強度の確保を両立させることができることが判明した。その理由は、次の(i)および(j)によるものと考えられる。
(i)W含有量の増加は高温で長時間使用中のSの粒界偏析エネルギーを低下させ、粒界へのSの濃化を軽減して、間接的に粒界が弱くなることを抑制する。
(j)Wは固溶強化元素としてクリープ強度の向上に寄与するが、この場合の粒内の変形能の低下は、微細な炭窒化物および金属間化合物が析出する場合に比べて小さい。
しかしながら、高濃度のWを含有させた場合、高温で長時間使用中に溶接金属に発生する応力緩和割れは防止できるものの、溶接中の凝固割れ感受性が逆に増大することが明らかとなった。
そこで、本発明者らはさらに、溶接中の凝固割れを防止するための検討も実施した。その結果、下記(k)の知見が得られた。
(k)CrとCの含有量を特定の範囲内に制御することによって、具体的には、質量%で、Crを20〜25%含む場合、Cの含有量を0.05%を超えて0.18%以下とすることによって、溶接中の凝固割れを防止することができる。
その理由は、溶接金属の組織観察結果から、次の(l)によるものと考えられる。
(l)CおよびCrの含有量を特定の範囲内に制御した場合、溶接金属の凝固過程でCが主にCrと結合して、(Cr、M)236とオーステナイトの共晶凝固が生じる。その結果、凝固時の液相の消失が早まるため、溶接中の凝固割れを防止することができる。
加えて、上記のCおよびCrの含有量の適正範囲への管理は、溶接中の延性低下割れの防止にも有効であることが確認できた。
以上のことから、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料としては、質量%で、Cr:20〜25%およびNi:40%を超えて50%以下の合金をベースとし、C:0.05%を超えて0.18%以下およびW:8.0%を超えて13.0%以下を含有させることによって、溶接中の耐高温割れ性、高温で長時間使用中の耐応力緩和割れ性および所望の良好なクリープ強度の確保を達成できるとの知見を得たのである。
そして、このオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて、溶接中の耐高温割れ性、高温で長時間使用中の耐応力緩和割れ性および良好なクリープ強度を有する溶接金属と、高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材からなる溶接継手を得ることができる。
この溶接材料を用いて溶接継手を得る際に、質量%で、Ni:40〜50%、Cr:20〜25%、W:6.0〜10.0%を含む高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼を母材として用いると、母材においても優れたクリープ強度を確保できることとなるので好ましい。母材として用いる高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼は、本発明に係る溶接材料と同じ化学組成を有するオーステナイト系耐熱鋼であってもよいし、異なってもよい。
なお、上記の母材としては、質量%で、C:0.04〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:40〜50%、Cr:20〜25%、W:6.0〜10.0%、Mo:0.2%以下、Nb:0.05%以上で0.60%未満、Ti:0.02〜0.20%、N:0.02%以下、B:0.005%以下およびAl:0.04%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼を用いることが好ましい。
なお、残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、溶接材料や耐熱鋼を工業的に製造する際に、鉱石あるいはスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入するものを指す。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)および(2)に示す溶接材料、(3)に示す溶接金属、そして(4)〜(6)に示す溶接継手にある。
(1)質量%で、C:0.05%超えて0.18%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、Ni:40〜50%、Cr:20〜25%、W:8.0%を超えて13.0%以下、Ti:0.01〜0.2%、N:0.03%を超えて0.20%以下およびAl:0.01%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなり、不純物としてのO、PおよびSがそれぞれ、O:0.02%以下、P:0.008%以下およびS:0.005%以下の化学組成を有することを特徴とする、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
(2)Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.60%未満を含むことを特徴とする、上記(1)に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
(3)上記(1)または(2)に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いてなる溶接金属。
(4)上記(3)に記載の溶接金属と高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材からなることを特徴とする、溶接継手。
(5)高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材が、質量%で、W:6.0〜10.0%、Ni:40〜50%およびCr:20〜25%を含有することを特徴とする、上記(4)に記載の溶接継手。
(6)高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材が、質量%で、C:0.04〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:40〜50%、Cr:20〜25%、W:6.0〜10.0%、Mo:0.2%以下、Nb:0.05%以上で0.60%未満、Ti:0.02〜0.20%、N:0.02%以下、B:0.005%以下およびAl:0.04%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とする、上記(4)に記載の溶接継手。
本発明によれば、溶接時に優れた耐高温割れ性を有するオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を提供することができ、また、それを用いて、溶接中の耐高温割れ性、高温で長時間使用中の耐応力緩和割れ性および良好なクリープ強度を有する溶接金属を提供することができる。さらに、この溶接材料を用いて、溶接中の耐高温割れ性、高温で長時間使用中の耐応力緩和割れ性および良好なクリープ強度を有する溶接金属と高温における優れたクリープ強度を有する母材とからなる溶接継手を提供することができる。
本発明において、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料の化学組成を限定する理由は次のとおりである。なお、以下の説明において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
C:0.05%超えて0.18%以下
Cは、オーステナイト生成元素であり、高温使用時のオーステナイト組織の安定性を高めるのに有効な元素である。さらにCは、本発明において、溶接時の高温割れ防止のために重要な元素である。すなわち、Cは、凝固過程で主にCrと結合して、共晶炭化物を生成させ、液相の消失を早めるとともに、最終凝固部の組織を(Cr、M)236とオーステナイトとのラメラ状組織とする。その結果、液相の残存形態が面状から点状に変化するとともに、特定面への応力集中が抑制されるので、凝固割れを防止することができる。さらにCは、不純物の偏析サイトとなる最終凝固界面積を増大させることから、溶接中の延性低下割れの防止および高温使用中の応力緩和割れの感受性低減にも寄与する。後述する本発明のCr含有量の範囲で、上記の効果を十分得るためには、Cを0.05%を超えて含有する必要がある。しかしながら、Cを過剰に含有する場合には、凝固中に炭化物とならない過剰なCが高温使用中に炭化物として微細析出し、かえって応力緩和割れ感受性を増大させる。そのため、Cの含有量は0.05%を超えて0.18%以下とする。C含有量の望ましい下限は0.06%であり、望ましい上限は0.15%である。
Si:0.5%以下
Siは、脱酸剤として含有されるが、溶接金属の凝固時に柱状晶粒界に偏析し、液相の融点を下げ、凝固割れ感受性を増大させる。そのため、Siの含有量は0.5%以下とする必要がある。Siの含有量は、0.3%以下とするのが好ましい。しかしながら、Si含有量の過度の低減は、脱酸効果が十分に得られず、鋼の清浄度が大きくなって清浄性が低下するとともに、製造コストの増大を招く。そのため、Si含有量の下限は特に設けないが、望ましくは0.01%である。少なくともSiを0.01%含んでおれば、脱酸効果を得ることができる。さらに望ましいSi含有量の下限は、0.02%である。
Mn:1.5%以下
Mnは、Siと同様、脱酸剤として含有される。Mnは、溶接金属中のNの活量を下げることによりア−ク雰囲気中からのNの飛散を抑制して、強度の確保にも寄与する。しかしながら、Mnを過剰に含有する場合には脆化を招くため、Mnの含有量は1.5%以下とする必要がある。Mnの含有量は1.2%以下とするのが好ましい。Mn含有量の下限は特に設けないが、望ましくは0.01%である。少なくともMnを0.01%含んでおれば、上記の効果を得ることができる。さらに望ましいMn含有量の下限は、0.02%である。
Ni:40〜50%
Niは、オーステナイト組織を得るために有効な元素であるとともに、長時間使用時の組織安定性を確保し、十分なクリープ強度を得るために必須の元素である。その効果を得るためには、40%以上のNi含有量が必要である。しかしながら、Niは高価な元素であり、50%を超えるNiの多量の含有はコストの増大を招く。そのため、Niの含有量は40〜50%とする。Ni含有量の望ましい下限は40.5%であり、望ましい上限は48.5%である。Ni含有量のさらに望ましい下限は41%であり、さらに望ましい上限は46%である。
Cr:20〜25%
Crは、高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。Crは、凝固過程でCと結合して、共晶炭化物を生成させ、溶接中の凝固割れおよび延性低下割れを防止するとともに、高温使用中の応力緩和割れ感受性を低減する作用も有する。これらの効果を得るためには、Crを20%以上含有させる必要がある。しかし、Crの含有量が過剰になって25%を超えると、高温での組織の安定性が劣化して、クリープ強度の低下を招く。このため、Crの含有量は20〜25%とする。Cr含有量の望ましい下限は20.5%であり、望ましい上限は24.5%である。Cr含有量のさらに望ましい下限は21%であり、さらに望ましい上限は24%である。
W:8.0%を超えて13.0%以下
Wは、マトリックスに固溶して700℃を超える高温でのクリープ強度の向上に大きく寄与する元素である。また、Wは、Sの粒界偏析エネルギーを低下させ、溶接後熱処理および高温使用中のSの粒界への濃化を軽減することで粒界が弱くなることを抑制し、間接的に応力緩和割れの防止に寄与する。こうした効果を十分に確保して、高温使用中の耐応力緩和割れ性とクリープ強度を両立させるためには、本発明を構成する他の元素との関係で、8.0%を超えるW含有量が必要である。しかし、Wを過剰に含有させてもその効果は飽和し、かえって靱性およびクリープ強度を低下させる。さらに、Wは高価な元素であり、13.0%を超えるWの多量の含有はコストの増大を招く。そのため、Wの含有量は8.0%を超えて13.0%以下とする。W含有量の望ましい下限は8.2%であり、望ましい上限は12.8%である。W含有量のさらに望ましい下限は8.5%であり、さらに望ましい上限は12.5%である。
Ti:0.01〜0.2%
Tiは、微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度の向上に寄与する。その効果を得るためには、0.01%以上のTi含有量が必要である。しかしながら、Tiの含有量が過剰になって0.2%を超えると、多量に析出し、粒内の変形抵抗を著しく高め、高温使用中の応力緩和割れ感受性を増大させる。そのため、Tiの含有量は0.01〜0.2%とする。Ti含有量の望ましい下限は0.03%であり、望ましい上限は0.15%である。
N:0.03%を超えて0.20%以下
Nは、オーステナイト生成元素であり、高温使用時のオーステナイト組織の安定性を高めるのに有効な元素である。さらにNは、マトリックスに固溶し、引張強さの向上に寄与する元素でもある。上記の効果を得るためには、0.03%を超えるN含有量が必要である。しかしながら、Nの含有量が過剰になって0.20%を超えると、長時間使用中に多量に窒化物として析出して粒内の変形抵抗を著しく高め、高温使用中の応力緩和割れ感受性を増大させるとともに、溶接時にはブローホール生成の原因となる。そのため、Nの含有量は0.03%を超えて0.20%以下とする。N含有量の望ましい下限は0.05%であり、望ましい上限は0.18%である。N含有量のさらに望ましい下限は0.07%であり、さらに望ましい上限は0.17%である。
Al:0.01%以下
Alは、脱酸剤として含有されるが、多量に含有すると清浄性を著しく害し、溶接材料の加工性および溶接金属の延性を劣化させる。そのため、Alの含有量は0.01%以下とする必要がある。Alの含有量は0.008%以下とするのが望ましい。下限は不純物程度でよい。
本発明のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料の一つは、上述のCからAlまでの元素を含み、残部がFeおよび不純物からなり、不純物としてのO、PおよびSの含有量をそれぞれ、次に述べる範囲に制限した化学組成を有するものである。
O:0.02%以下
Oは、不純物として存在するが、多量に含まれる場合には、溶接材料の加工性および溶接金属の延性を低下させる。そのため、Oの含有量は0.02%以下とする必要がある。Oの含有量は0.015%以下とするのが望ましい。
P:0.008%以下
Pは、不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下させ、凝固割れ感受性を著しく増大させるとともに、高温使用中に粒界脆化を引き起こして耐応力緩和割れ性の低下を招く元素である。そのため、Pの含有量は0.008%以下とする必要がある。Pの含有量は0.006%以下とするのが望ましい。
S:0.005%以下
Sは、Pと同様、不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下させ、凝固割れ感受性を増大させる元素である。さらには、高温使用中に結晶粒界に偏析・濃化し、応力緩和割れ感受性を著しく高める元素である。そのため、Sの含有量は0.005%以下とする必要がある。Sの含有量は0.003%以下とするのが望ましい。
本発明のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料の他の一つは、上記残部としての「Feおよび不純物」におけるFeの一部に代えて、0.60%未満のNbを含む化学組成を有するものである。
以下、任意元素であるNbの作用効果と、含有量の限定理由について説明する。
Nb:0.60%未満
Nbは、Tiと同様に微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度の向上に寄与する元素である。このため、必要に応じてNbを含有させてもよい。しかしながら、Nbの含有量が過剰になって0.60%以上になると、炭窒化物の多量析出または微細な金属間化合物の析出を招き、粒内の変形抵抗を著しく高め、高温使用中の応力緩和割れ感受性を増大させる。そのため、含有させる場合のNbの量を0.60%未満とした。含有させる場合のNbの量は、0.50%以下とすることが望ましい。
一方、前記したNbの効果を安定して得るためには、含有させる場合のNbの量は、0.01%以上とすることが望ましく、0.05%以上とすることがさらに望ましい。含有させる場合のNbの量は、0.10%以上とすれば極めて好ましい。
以上、本発明に係るオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料の化学組成について詳述したが、この溶接材料は、溶接時に優れた耐高温割れ性を有する。そして、この溶接材料を用いて、溶接中の耐高温割れ性、高温で長時間使用中の耐応力緩和割れ性および良好なクリープ強度を有する溶接金属を得ることができる。さらに、この溶接材料を用いて、溶接中の耐高温割れ性、高温で長時間使用中の耐応力緩和割れ性および良好なクリープ強度を有する溶接金属と高温における優れたクリープ強度を有する母材とからなる溶接継手を得ることができる。
なお、本発明に係るオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて溶接継手を得る際に、W:6.0〜10.0%、Ni:40〜50%およびCr:20〜25%を含有する高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼を母材として用いると、母材においても700℃以上の高温域において優れた延性およびクリープ強度を有することになるから、好ましい。母材として用いる高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼は、本発明に係るオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料と同じ化学組成を有するオーステナイト系耐熱鋼であってもよいし、異なってもよい。
ここで、母材として高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼を用いる場合、その母材は、上記のW:6.0〜10.0%、Ni:40〜50%およびCr:20〜25%を含有するものであることが好ましい理由について詳しく説明する。
W:6.0〜10.0%
Wは、溶接金属におけると同様に、マトリックスに固溶して700℃を超える高温でのクリープ強度の向上に大きく寄与する元素である。母材は凝固ままで使用される溶接金属とは異なり、熱処理によって均質化が図られ、その効果がより得られやすい。このため、母材は、Wを含有することが好ましく、その量は6.0%以上であればよい。しかし、Wは高価な元素であり、コストの増大を招くため、Wを含有する場合のその量は10.0%以下とすることが望ましい。母材におけるW含有量のさらに望ましい下限は7.0%であり、さらに望ましい上限は9.8%である。母材におけるW含有量の一層望ましい下限は7.5%であり、一層望ましい上限は9.5%である。
Ni:40〜50%
Niは、溶接金属におけると同様に、オーステナイト組織を得るために有効な元素であるとともに、長時間使用時の組織安定性を確保し、十分なクリープ強度を得るために有効な元素である。その効果を得るために、母材は、Niを含有することが好ましく、その量は、溶接金属におけると同様、40%以上とすることが好ましい。一方、Niは高価な元素であり、コストの増大を招くため、Niを含有する場合のその量は50%以下とすることが望ましい。母材におけるNi含有量のさらに望ましい下限は40.5%であり、さらに望ましい上限は48.5%である。母材におけるNi含有量の一層望ましい下限は42%であり、一層望ましい上限は47%である。
Cr:20〜25%
Crは、溶接金属におけると同様に、母材の高温での耐酸化性および耐食性の確保のために有効な元素である。溶接金属と同等の効果を得るために、母材は、Crを含有することが好ましく、その量は、20%以上とすることが好ましい。しかし、Crの含有量が過剰になると高温での組織の安定性を劣化して、クリープ強度の低下を招く。このため、Crを含有する場合、その量は25%以下とすることが望ましい。母材におけるCr含有量のさらに望ましい下限は20.5%であり、さらに望ましい上限は24.5%である。母材におけるCr含有量の一層望ましい下限は21%であり、一層望ましい上限は24%である。
高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材は、上記範囲のW、NiおよびCrに加えて、以下に述べる量の元素を含み、残部がFeおよび不純物からなるものであることがより好ましい。
C:0.04〜0.12%
Cは、溶接金属におけると同様に、オーステナイト生成元素であり、高温使用時のオーステナイト組織の安定性を高めるのに有効な元素である。母材は凝固ままで使用される溶接金属とは異なり、熱処理によって均質化が図られ、その効果がより得られやすく、また、溶接割れ防止に対する対策を必要としない。このため、母材は、Cを含有することが好ましく、その量は0.04%以上であればよい。しかしながら、Cの含有量が過剰になると高温での使用中に粗大な炭化物を生成し、かえってクリープ強度の低下を招く。したがって、Cを含有する場合、その量は0.12%以下とすることが望ましい。母材におけるC含有量のさらに望ましい下限は0.05%であり、さらに望ましい上限は0.10%である。
Si:0.5%以下
Siは、脱酸作用を有する。しかしながら、Siの含有量が過剰になると靱性を低下させる。したがって、母材がSiを含有する場合、その量は0.5%以下とすることが望ましく、0.4%以下とするのがさらに好ましい。しかしながら、Si含有量の過度の低減は、脱酸効果が十分に得られず鋼の清浄度が大きくなって清浄性が低下するとともに、製造コストの増大を招く。そのため、母材におけるSi含有量の下限は特に設けないが、望ましくは0.01%である。少なくともSiを0.01%含んでおれば、脱酸効果を得ることができる。さらに望ましいSi含有量の下限は、0.02%である。
Mn:1.5%以下、
Mnは、Siと同様、脱酸作用を有する。しかしながら、Mnの含有量が過剰になると脆化を招く。このため、母材がMnを含有する場合、その量は1.5%以下とすることが望ましく、1.2%以下とするのがさらに好ましい。母材におけるMn含有量の下限は特に設けないが、望ましくは0.01%である。少なくともMnを0.01%含んでおれば、脱酸効果を得ることができる。さらに望ましいMn含有量の下限は、0.02%である。
P:0.03%以下
Pは、不純物として含まれ、Pの含有量が過剰になるとクリープ延性の低下を招く。母材は、溶接金属の場合とは異なり、溶接割れ防止に対する対策を必要としないし、P含有量の極度の低減は製鋼コストの著しい増大を招く。このため、母材におけるP含有量は0.03%以下とすることが望ましく、0.02%以下とするのがさらに好ましい。
S:0.01%以下
Sは、Pと同様、不純物として含まれ、Sの含有量が過剰になるとクリープ延性の低下を招く。母材は、溶接金属の場合とは異なり、溶接割れ防止に対する対策を必要としないし、S含有量の極度の低減は製鋼コストの著しい増大を招く。このため、母材におけるS含有量は0.01%以下とすることが望ましく、0.008%以下とするのがさらに好ましい。
Mo:0.2%以下
Moは、Wと同様に、マトリックスに固溶して700℃を超える高温でのクリープ強度の向上に寄与する元素である。このため、母材は、Moを含有することが好ましい。しかしながら、Moは高価な元素であるともに、相安定性を低下させる元素でもあるため、Moを含有する場合のその量は0.2%以下とすることが望ましい。母材におけるMo含有量の望ましい下限は0.02%である。
Nb:0.05%以上で0.60%未満
Nbは、微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度の向上に寄与する元素であり、高温使用中の応力緩和割れ感受性が溶接金属に比べて低い母材では高強度化のために積極的に活用してもよい。このため、母材は、Nbを含有することが好ましく、その量は、0.05%以上とすることが好ましい。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると多量に炭窒化物を生成し、靱性の低下を招く。したがって、Nbを含有する場合、その量は0.60%未満とすることが望ましい。母材におけるNb含有量のさらに望ましい下限は0.10%であり、さらに望ましい上限は0.50%である。
Ti:0.02〜0.20%
Tiは、微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度の向上に寄与する元素であり、高温使用中の応力緩和割れ感受性が溶接金属に比べて低い母材では高強度化のために積極的に活用してもよい。このため、母材は、Tiを含有することが好ましく、その量は、0.02%以上とすることが好ましい。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると多量に炭窒化物を生成し、靱性の低下を招く。そのため、Tiを含有する場合、その量は0.20%以下とすることが望ましい。母材におけるTi含有量のさらに望ましい下限は0.05%であり、さらに望ましい上限は0.15%である。
N:0.02%以下
Nは、オーステナイト相を安定にするのに有効な元素であり、マトリックスに固溶し、引張強さを高めるのに有効な元素である反面、熱間加工性を著しく低下させてしまう。そのため、母材においては、溶接金属に比べて、N含有量の上限を厳しく管理するのがよく0.02%以下とすることが好ましい。母材におけるN含有量のさらに望ましい上限は0.01%である。
B:0.005%以下
Bは、高温での使用中に粒界に偏析して粒界を強化するとともに、粒界炭化物を微細分散させることによって、クリープ強度を向上させるのに有効な元素である。このため、母材は、Bを含有することが好ましい。しかしながら、Bの含有量が過剰になるとHAZの液化割れ感受性を高める。そのため、Bを含有する場合、その量は0.005%以下とすることが望ましい。母材におけるB含有量の望ましい下限は0.0002%である。
Al:0.04%以下
Alは、脱酸作用を有するが、Alの含有量が過剰になると清浄性を著しく害し、母材製造時の加工性を低下させる。しかしながら、母材においては、溶接金属の場合のように溶接中に酸化物を生成してより一層清浄性を低下させる懸念がない。このため、Alを含有する場合、その量は0.04%以下にすることが望ましい。母材におけるAl含有量のさらに望ましい上限は0.03%である。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する材料を実験室溶解して鋳込んだインゴットから、熱間鍛造、熱間圧延、熱処理および機械加工により、板厚12mm、幅50mm、長さ100mmの板材を溶接母材用として作製した。
さらに、表2に示す化学組成を有する符号A〜Fの材料を実験室溶解して鋳込んだインゴットから、熱間鍛造、熱間圧延および機械加工により、外径1.2mm、長さ1000mmの溶接材料(溶接ワイヤ)を作製した。
Figure 0004835770
Figure 0004835770
上記の溶接母材用板材の長手方向に、角度30°、ルート厚さ1mmのV開先を加工した後、厚さ25mm、幅200mmで長さ200mmのSM400BのJIS G 3160(2008)に規定の市販の鋼板上に、被覆アーク溶接棒としてJIS Z3224(1999)に規定の「DNiCrFe−3」を用いて、四周を拘束溶接した。
その後、上述した符号A〜Fの溶接材料を用いて、入熱9〜15kJ/cmでTIG溶接により開先内に多層溶接を行って、溶接材料の各符号について2体ずつ溶接継手を作製した。
溶接継手は、各符号について、1体は溶接ままで、残りの1体は700℃×500時間の時効熱処理を行ってから、次の試験に供した。
すなわち、各符号について、溶接ままの溶接継手および時効熱処理を施した溶接継手の各5か所から採取した試料の横断面を鏡面研磨、腐食した後、光学顕微鏡により検鏡し、溶接金属における割れの有無を調査した。なお、5個の全ての試料で割れのない溶接継手を「合格」とした。
さらに、検鏡の結果、溶接金属に割れの認められなかった溶接ままの溶接継手から、溶接金属が平行部の中央となるように丸棒クリープ破断試験片を採取し、母材板材の目標破断時間が約1000時間となる700℃、147MPaの条件でクリープ破断試験を行い、母材破断するものを「合格」とした。
表3に、上記各試験の結果を示す。
表3の「割れ観察結果」欄における「○」は、5個の全ての試料で割れがない「合格」の溶接継手であることを示す。一方、「×」は、5個の試料のうち少なくとも1個の試料に割れが認められたことを示す。
また、「クリープ破断試験結果」欄における「○」は母材破断した「合格」の溶接継手であることを示す。一方、「×」は母材破断しなかったことを示す。溶接材料符号Eの「−」は、溶接ままの溶接継手から採取した試料の溶接金属に割れが認められたため、クリープ破断試験を行わなかったことを示す。
Figure 0004835770
表3から、化学組成が本発明で規定する範囲にある符号A〜Cの溶接材料を用いて溶接した溶接継手の溶接金属には、時効熱処理中の応力緩和割れおよび溶接中の高温割れともに発生せず、高いクリープ強度を有することが明らかである。
これに対して、化学組成が本発明で規定する範囲から外れた符号D〜Fの溶接材料を用いて溶接した溶接継手の溶接金属には、時効熱処理中の応力緩和割れと溶接中の高温割れのうちの少なくともいずれかの発生が認められた。
すなわち、WおよびNbの含有量が本発明で規定する範囲を外れる符号Dの溶接材料を用いて溶接した溶接継手は、Nbを含む炭窒化物および金属間化合物が粒内に過剰に生成して、粒内の変形抵抗が高く、かつSの粒界濃化の軽減効果が得られなかったため、時効熱処理中に応力緩和割れが発生した。
Cの含有量が0.02%と低く、凝固過程で十分な共晶炭化物を生成するのに必要な量を下回る符号Eの溶接材料を用いて溶接した溶接継手は、溶接中に高温割れが発生した。
Wの含有量が本発明で規定する範囲を外れる符号Fの溶接材料を用いて溶接した溶接継手は、時効熱処理中に応力緩和割れが発生するとともにクリープ強度を満足しなかった。
以上述べたように、本発明で規定する範囲内の化学組成を有する溶接材料を用いた場合、溶接中の耐高温割れ性、高温で長時間使用中の耐応力緩和割れ性および良好なクリープ強度を有する溶接金属となることがわかる。
本発明によれば、溶接時に優れた耐高温割れ性を有するオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を提供することができ、また、それを用いて、溶接中の耐高温割れ性、高温で長時間使用中の耐応力緩和割れ性および良好なクリープ強度を有する溶接金属を提供することができる。さらに、この溶接材料を用いて、溶接中の耐高温割れ性、高温で長時間使用中の耐応力緩和割れ性および良好なクリープ強度を有する溶接金属と高温における優れたクリープ強度を有する母材とからなる溶接継手を提供することができる。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.05%超えて0.18%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、Ni:40〜50%、Cr:20〜25%、W:8.0%を超えて13.0%以下、Ti:0.01〜0.2%、N:0.03%を超えて0.20%以下およびAl:0.01%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなり、不純物としてのO、PおよびSがそれぞれ、O:0.02%以下、P:0.008%以下およびS:0.005%以下の化学組成を有することを特徴とする、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.60%未満を含むことを特徴とする、請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
  3. 請求項1または2に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いてなる溶接金属。
  4. 請求項3に記載の溶接金属と高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材からなることを特徴とする、溶接継手。
  5. 高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材が、質量%で、W:6.0〜10.0%、Ni:40〜50%およびCr:20〜25%を含有することを特徴とする、請求項4に記載の溶接継手。
  6. 高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材が、質量%で、C:0.04〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:40〜50%、Cr:20〜25%、W:6.0〜10.0%、Mo:0.2%以下、Nb:0.05%以上で0.60%未満、Ti:0.02〜0.20%、N:0.02%以下、B:0.005%以下およびAl:0.04%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とする、請求項4に記載の溶接継手。
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