JP5899806B2 - Hazにおける耐液化割れ性に優れたオーステナイト系耐熱合金 - Google Patents
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d≦−3300×F1+250・・・[1’]
ただし、
F1=10×B+2×P+S・・・[2]
を満足すれば、十分なクリープ強度を確保したうえで、溶接時のHAZの液化割れを防止することができる。
20≦d≦−3300×F1+250・・・[1]
ただし、
F1=10×B+2×P+S・・・[2]
であり、上記の[2]式における元素記号は、その元素の含有量(質量%)を表す。
C:0.03〜0.15%
Cは、オーステナイトを安定にするとともに粒界に炭化物を生成し、高温でのクリープ強度を向上させる。この効果を得るためには、0.03%以上のC含有量が必要である。しかしながら、Cの含有量が多くなって、特に0.15%を超えると、高温での使用中に多量の炭化物が粒界に析出して粒界の延性を低下させ、クリープ強度の低下を招く。そのため、Cの含有量を0.03〜0.15%以下とする。C含有量の好ましい下限は0.05%であり、また、好ましい上限は0.12%である。
Siは、脱酸作用を有するとともに、高温での耐食性および耐酸化性の向上に有効な元素である。しかしながら、Siの含有量が多くなって1%を超えると、オーステナイトの安定性が低下して、クリープ強度および靱性の低下を招く。そのため、Siの含有量を1%以下とする。Si含有量は、望ましくは、0.5%以下で、さらに望ましくは、0.3%以下である。
Mnは、Siと同様、脱酸作用を有する。Mnは、オーステナイトの安定化にも寄与する。しかしながら、Mnの含有量が多くなり、特に2%を超えると、脆化を招き、クリープ延性および靱性の低下をきたす。そのため、Mnの含有量を2%以下とする。Mn含有量は、望ましくは、1.5%以下で、さらに望ましくは、1.0%以下である。
Niは、オーステナイトを得るために有効な元素であり、長時間使用時の組織安定性を確保し、十分なクリープ強度を得るために必須の元素である。本発明の15〜40%というCr含有量の範囲で上記のNiの効果を十分に得るためには、40%以上のNi含有量が必要である。一方、高価な元素であるNiの80%を超える多量の含有はコストの増大を招く。そのためNiの含有量を40〜80%とする。Ni含有量の望ましい下限は42%であり、また、望ましい上限は75%である。
Crは、高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。本発明の40〜80%というNi含有量の範囲で上記のCrの効果を得るためには、15%以上のCr含有量が必要である。しかしながら、Crの含有量が過剰になって、特に40%を超えると、高温でのオーステナイトの安定性が劣化して、クリープ強度の低下を招く。そのため、Crの含有量を15〜40%とする。Cr含有量の望ましい下限は17%であり、また、望ましい上限は38%である。
Moは、マトリックスであるオーステナイトに固溶して高温でのクリープ強度の向上に寄与する元素である。この効果を得るためには、4%以上含有させる必要がある。しかしながら、Moの含有量が多くなって、特に15%を超えると、逆にオーステナイトの安定性が低下してクリープ強度の低下を招く。このため、Moの含有量を4〜15%とする。Mo含有量の望ましい下限は5%である。また、Moの含有量の望ましい上限は11%で、より望ましい上限は10%である。
Coは、Niと同様オ−ステナイト生成元素であり、オーステナイトの安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。本発明は、特に近年ニーズが高まった、高温強度と耐食性に優れる、Coを多量に含んだオーステナイト系耐熱合金であって、HAZの液化割れを考慮した成分としなければならない。Coの含有量が25%を超える場合は、HAZの液化割れ感受性が増加することに加えて、素材合金としての価格が極めて高くなってしまう。一方、上記した高温強度と耐食性に優れる耐熱合金においてCoの効果を安定して得るためには、Co含有量の下限は10%でなければならない。したがって、Coの含有量を10〜25%とする。Co含有量の望ましい下限は11%である。また、Co含有量の上限は、好ましくは20%で、さらに好ましくは18%である。
Tiは、Alとともに本発明の根幹をなす重要な元素である。すなわち、Tiは、Niと結合し金属間化合物として微細に粒内析出し、高温でのクリープ強度を確保するのに必須の元素である。しかしながら、Tiの含有量が多くなって、特に3%を超えると、高温での使用中に金属間化合物相が急速に粗大化して、クリープ強度および靱性の極端な低下をきたし、合金の製造時には清浄性の低下を招いて、製造性を悪化させる。したがって、Tiの含有量は3%以下とする。Ti含有量の上限は2.5%とすることが望ましい。
Alは、Tiとともに本発明の根幹をなす重要な元素である。すなわち、Alは、Niと結合し金属間化合物として微細に粒内析出し、高温でのクリープ強度を確保するのに必須の元素である。しかしながら、Alの含有量が多くなって、特に2%を超えると、高温での使用中に金属間化合物相が急速に粗大化して、クリープ強度および靱性の極端な低下をきたすし、合金の製造時には清浄性の低下を招いて、製造性を悪化させる。したがって、Alの含有量は2%以下とする。Al含有量の上限は1.5%とすることが望ましい。
Bは、粒界に偏析するとともに粒界炭化物を微細分散させることによって、粒界強化に寄与し、高温強度としてのクリープ強度を向上させる。この効果を得るためには、0.0005%以上のB含有量が必要である。しかしながら、Bの含有量が多くなると粒界の融点が低下し、特に、0.01%を超えると、粒界の融点低下が大きくなって、平均結晶粒径をB、PおよびSの含有量と関係する特定の範囲に規制した場合でも、溶接時にHAZの液化割れが生じる。したがって、Bの含有量を0.0005〜0.01%とする。B含有量の好ましい下限は0.0010%であり、また、好ましい上限は0.005%である。
Nは、オーステナイトを安定にするのに有効な元素である。しかしながら、Nの含有量が過剰になって0.03%を超えると、TiおよびAlの窒化物に加えてCrの窒化物を形成し、クリープ延性および靱性の低下を招く。したがって、Nの含有量を0.03%以下とする。
O(酸素)は、不純物として合金中に含まれ、その含有量が多くなって0.03%を超えると、熱間加工性が低下し、また、靱性および延性の劣化を招く。したがって、Oの含有量を0.03%以下とする。Oの含有量は、望ましくは0.02%以下である。
Pは、不純物として合金中に含まれ、溶接施工時の溶接熱サイクルによって粒界に偏析し、粒界の融点を低下させてHAZの液化割れ感受性を高める。特に、Pの含有量が0.03%を超えると、平均結晶粒径をB、PおよびSの含有量と関係する特定の範囲に規制した場合でも、HAZの液化割れを生じてしまう。そのため、不純物中のPの含有量を0.03%以下とした。不純物中のPの含有量は0.02%以下とすることが好ましい。
Sも、不純物として合金中に含まれ、溶接施工時の溶接熱サイクルによって粒界に偏析し、粒界の融点を低下させてHAZの液化割れ感受性を高める。特に、Sの含有量が0.03%を超えると、平均結晶粒径をB、PおよびSの含有量と関係する特定の範囲に規制した場合でも、HAZの液化割れを生じてしまう。そのため、不純物中のSの含有量を0.03%以下とした。不純物中のSの含有量は0.02%以下とすることが好ましい。
Caは、熱間加工性を改善する作用を有する。このため、Caを含有させてもよい。しかしながら、Caの含有量が過剰になると、Oと結合して、合金の清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、含有させる場合のCaの量に上限を設けて0.02%以下とする。Caの含有量は、望ましくは0.01%以下である。
Mgは、Caと同様、熱間加工性を改善する作用を有する。このため、Mgを含有させてもよい。しかしながら、Mgの含有量が過剰になると、Oと結合して、合金の清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、含有させる場合のMgの量に上限を設けて0.02%以下とする。Mgの含有量は、望ましくは0.01%以下である。
REMは、熱間加工性を改善する作用を有する。このため、REMを含有させてもよい。しかしながら、REMの含有量が過剰になると、Oと結合して、合金の清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、含有させる場合のREMの量に上限を設けて0.08%以下とする。REMの含有量は、望ましくは0.07%以下である。
本発明のオーステナイト系耐熱合金は、平均結晶粒径d(μm)ならびにB、PおよびSの含有量が、下記の[1]式、つまり、
20≦d≦−3300×F1+250・・・[1]
を満足するものでなければならない。
ただし、
F1=10×B+2×P+S・・・[2]
であり、上記の[2]式における元素記号は、その元素の含有量(質量%)を表す。
20≦d≦−3300×F1+250・・・[1]
の式を満たさない。
ただし、
F1=10×B+2×P+S・・・[2]
である。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.02〜1%、Mn:2%以下、Ni:40〜80%、Cr:15〜40%、Mo:4〜15%、Co:11〜25%、Ti:0.01〜3%、Al:0.001〜2%、B:0.0005〜0.01%、N:0.03%以下およびO:0.03%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPおよびSがそれぞれ、P:0.03%以下およびS:0.03%以下の化学組成であって、かつ、平均結晶粒径d(μm)が、B、PおよびSの含有量と関係する下記の[1]式を満足することを特徴とするHAZにおける耐液化割れ性に優れたオーステナイト系耐熱合金。
20≦d≦−3300×F1+250・・・[1]
ただし、
F1=10×B+2×P+S・・・[2]
であり、上記の[2]式における元素記号は、その元素の含有量(質量%)を表す。 - Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.02%以下、Mg:0.02%以下およびREM:0.08%以下(ただし、Nd:0.001%以上を除く。)のうちの1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載のHAZにおける耐液化割れ性に優れたオーステナイト系耐熱合金。
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JP2011238248A JP5899806B2 (ja) | 2011-10-31 | 2011-10-31 | Hazにおける耐液化割れ性に優れたオーステナイト系耐熱合金 |
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