JP6398277B2 - Ni基耐熱合金溶接継手の製造方法 - Google Patents
Ni基耐熱合金溶接継手の製造方法 Download PDFInfo
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Description
C:0.04〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:46〜54%、Cr:27〜33%、W:3〜9%、Ti:0.05〜1.2%、Zr:0.005〜0.05%、Al:0.05〜0.3%、B:0.0001〜0.005%、N:0.02%以下、O:0.01%以下、Ca:0〜0.05%、Mg:0〜0.05%、REM:0〜0.5%、Co:0〜1%、Cu:0〜4%、Mo:0〜1%、V:0〜0.5%、Nb:0〜0.5%、残部:Feおよび不純物である合金母材を、
化学組成が、質量%で、
C:0.06〜0.18%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:40〜60%、Cr:20〜33%、MoおよびWの1種以上:合計で6〜13%、Ti:0.05〜1.5%、Co:0〜15%、Nb:0〜0.5%、Al:1.5%以下、B:0〜0.005%、N:0.18%以下、O:0.01%以下、残部:Feおよび不純物である溶接材料で溶接した後、
保持温度T1(℃)、保持時間t1(分)および保持温度T1(℃)から500℃までの平均降温速度RC(℃/時)が、下記の<1>〜<3>式を満たす溶接後熱処理を施す、Ni基耐熱合金溶接継手の製造方法。
900≦T1≦1275・・・<1>、
−0.2×T1+260≦t1≦−0.6×T1+870・・・<2>、
0.05×T1−10≦RC・・・<3>。
500≦T2≦650・・・<4>、
5≦t2≦180・・・<5>。
[1]:Ca:0.0001〜0.05%、Mg:0.0001〜0.05%、REM:0.001〜0.5%、
[2]:Co:0.01〜1%、Cu:0.01〜4%、Mo:0.01〜1%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%。
[3]:Co:0.01〜15%、Nb:0.01〜0.5%、B:0.0001〜0.005%。
C:0.04〜0.12%
Cは、組織を安定にするとともに微細な炭化物を形成し、高温使用中のクリープ強度を向上させる。この効果を十分に得るためには、0.04%以上のC含有量が必要である。しかしながら、Cが過剰に含有された場合には、炭化物が粗大となり、かつ多量に析出するので、却ってクリープ強度の低下が生じる。特に、溶接継手に溶接後熱処理を施した場合には、炭化物の成長を促進し、クリープ強度の大きな低下を招く。したがって、上限を設け、Cの含有量を0.04〜0.12%とする。C含有量の望ましい下限は0.05%、さらに望ましい下限は0.06%である。また、C含有量の望ましい上限は0.11%、さらに望ましい上限は0.08%である。
Siは、脱酸作用を有するとともに、高温での耐食性および耐酸化性の向上に有効な元素である。しかしながら、Siが過剰に含有された場合には、組織の安定性が低下して、靱性およびクリープ強度の低下を招く。そのため、Siの含有量に上限を設けて0.5%以下とする。Siの含有量は望ましくは0.4%以下、さらに望ましくは0.3%以下である。
Mnは、Siと同様、脱酸作用を有する。Mnは組織の安定化にも寄与する。しかしながら、Mnの含有量が過剰になると脆化を招き、さらに、靱性およびクリープ延性の低下も生じる。そのため、Mnの含有量に上限を設けて1.5%以下とする。Mnの含有量は望ましくは1.3%以下、さらに望ましくは1.1%以下である。
Pは、不純物として合金中に含まれ、溶接中に溶接熱影響部の結晶粒界に偏析して液化割れ感受性を高める元素である。さらに、Pは、長時間使用後のクリープ延性も低下させる。そのため、Pの含有量に上限を設けて0.03%以下とする。Pの含有量は、望ましくは0.025%以下、さらに望ましくは0.02%以下である。
Sは、Pと同様に不純物として合金中に含まれ、溶接中に溶接熱影響部の結晶粒界に偏析して液化割れ感受性を高める元素である。さらに、Sは、長時間使用中にも結晶粒界に偏析して脆化を招き、応力緩和割れ感受性をも高める元素である。そのため、Sの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Sの含有量は、望ましくは0.008%以下、さらに望ましくは0.005%以下である。
Niは、長時間使用時の組織安定性を確保するために必須の元素である。本発明におけるCrとWの含有量の範囲で十分な効果を得るためには、46%以上のNi含有量が必要である。しかしながら、Niは高価な元素であり、多量の含有はコストの増大を招く。そのため、上限を設けてNiの含有量を46〜54%とする。Ni含有量の望ましい下限は47%、さらに望ましい下限は48%である。また、Ni含有量の望ましい上限は53%、さらに望ましい上限は52%である。
Crは、高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。また、Crは、微細な炭化物やCr富化相を形成してクリープ強度の確保にも寄与する。本発明のNi含有量の範囲で上記の効果を得るためには、27%以上のCr含有量が必要である。しかしながら、Crの含有量が33%を超えると、高温での組織安定性が劣化してクリープ強度の低下を招くとともに、溶接継手に溶接後熱処理を施した場合には、炭化物の成長を促進し、クリープ強度の大きな低下を招く。したがって、Crの含有量を27〜33%とする。Cr含有量の望ましい下限は27.5%、さらに望ましい下限は28%である。また、Cr含有量の望ましい上限は32.5%、さらに望ましい上限は32%である。
Wは、マトリックスに固溶してまたは微細な金属間化合物相を形成して、高温でのクリープ強度や引張強さの向上に大きく寄与する元素である。その効果を十分に発揮させるためには少なくとも3%以上のW含有量が必要である。しかしながら、Wを過剰に含有させても効果は飽和し、却ってクリープ強度を低下させる場合もある。さらに、Wは高価な元素であるため、過剰のW含有はコストの増大を招く。そのため上限を設けて、Wの含有量を3〜9%とする。W含有量の望ましい下限は3.5%、さらに望ましい下限は4%である。また、W含有量の望ましい上限は8.5%、さらに望ましい上限は8%である。
Tiは、微細な炭窒化物または金属間化合物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度や引張強さの向上に寄与する。その効果を十分に得るためには、0.05%以上のTi含有量が必要である。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると炭窒化物として多量に析出して、クリープ延性および靱性の低下を招く。このため、上限を設けて、Tiの含有量を0.05〜1.2%とする。Ti含有量の望ましい下限は0.2%、さらに望ましい下限は0.4%である。また、Ti含有量の望ましい上限は1.1%、さらに望ましい上限は1.0%である。
Zrは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度を向上させる。また、Zrは、Sとの親和力が強く、Sの固定によりクリープ延性も向上させる。これらの効果を得るためには、Zrを0.005%以上含有させる必要がある。しかしながら、Zrの含有量が過剰になるとクリープ延性の低下を招く。そのため、Zrの含有量に上限を設けて0.0005〜0.05%とする。Zr含有量の望ましい下限は0.008%、さらに望ましい下限は0.01%である。また、Zr含有量の望ましい上限は0.04%、さらに望ましい上限は0.03%である。
Alは、脱酸作用を有するとともに、使用中に金属間化合物として析出し、クリープ強度の向上にも寄与する。これらの効果を得るためには、Alを0.05%以上含有させる必要がある。しかしながら、Alの含有量が過剰になると多量に金属間化合物を生成し、延性が低下するとともに応力緩和割れ感受性をも高める。そのため、Alの含有量に上限を設けて0.05〜0.3%とする。Al含有量の望ましい下限は0.06%、さらに望ましい下限は0.07%である。また、Al含有量の望ましい上限は0.2%、さらに望ましい上限は0.15%である。
Bは、粒界炭化物を微細分散させることによりクリープ強度を向上させるとともに、粒界に偏析して粒界を強化するのに有効な元素である。これらの効果を得るためには0.0001%以上のB含有量が必要である。しかしながら、Bの含有量が過剰になると、溶接中の溶接熱サイクルにより溶融境界近傍の熱影響部にBが多量に偏析して粒界の融点を低下させ、液化割れ感受性を高める。そのため、上限を設けて、Bの含有量を0.0001〜0.005%とする。B含有量の望ましい下限は0.0005%、さらに望ましい下限は0.001%である。また、B含有量の望ましい上限は0.004%、さらに望ましい上限は0.003%である。
Nは、組織安定性の向上に寄与するものの、過剰に含有されると、高温での使用中に多量の微細窒化物が粒内に析出してクリープ延性および靱性の低下を招く。そのため、Nの含有量に上限を設けて0.02%以下とする。Nの含有量は望ましくは0.018%以下、さらに望ましくは0.015%以下である。
O(酸素)は、不純物として合金中に含まれ、その含有量が過剰になると熱間加工性が低下し、さらに靱性および延性の劣化を招く。このため、Oの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Oの含有量は望ましくは0.008%以下、さらに望ましくは0.005%以下である。
Caは、熱間加工性を改善する作用を有する。このため、Caを含有させても良い。しかしながら、Caの含有量が過剰になるとOと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、含有させる場合のCa量の上限を0.05%とする。Ca含有量の上限は、望ましくは0.03%である。
Mgは、Caと同様、熱間加工性を改善する作用を有する。このため、Mgを含有させても良い。しかしながら、Mgの含有量が過剰になるとOと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、含有させる場合のMg量の上限を0.05%とする。Mg含有量の上限は、望ましくは0.03%である。
REMは、熱間加工性を改善する作用を有する。すなわち、REMはSとの親和力が強く、熱間加工性の向上に寄与する。このため、REMを含有させても良い。しかしながら、REMの含有量が過剰になると、Oと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、含有させる場合のREM量の上限を0.5%とする。REM含有量の上限は、望ましくは0.2%である。
Coは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Coは、Niと同様、高温での組織安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。したがって、Coを含有させても良い。しかしながら、Coは極めて高価な元素であるため、Coの過剰の含有は大幅なコストの増加を招く。このため、含有させる場合のCo量の上限を1%とする。Co含有量の上限は、望ましくは0.8%である。
Cuは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Cuは、NiおよびCoと同様、相安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。したがって、Cuを含有させても良い。しかしながら、Cuが過剰に含有された場合には熱間加工性の低下を招く。このため、含有させる場合のCu量の上限を4%とする。Cu含有量の上限は、望ましくは3%である。
Moは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Moは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度を向上させる作用を有する。したがって、Moを含有させても良い。しかしながら、Moが過剰に含有された場合には組織安定性が低下して、却ってクリープ強度の低下を招く。そのため、含有させる場合のMo量の上限を1%とする。Mo含有量の上限は、望ましくは0.8%である。
Vはク、リープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Vは、CまたはNと結合して微細な炭化物または炭窒化物を形成し、クリープ強度を向上させる作用を有する。したがって、Vを含有させても良い。しかしながら、Vが過剰に含有された場合、炭化物または炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性の低下を招く。そのため、含有させる場合のV量の上限を0.5%とする。V含有量の上限は、望ましくは0.4%である。
Nbは、Vと同様にCやNと結合して微細な炭化物や炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度に寄与する。したがって、Nbを含有させても良い。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると炭化物や炭窒化物として多量に析出し、逆にクリープ延性および靱性の低下を招く。このため、含有させる場合のNb量の上限を0.5%とする。Nb含有量の上限は、望ましくは0.4%であり、さらに望ましくは0.35%である。
C:0.06〜0.18%
Cは、溶接金属において組織を安定にするとともに微細な炭化物を形成し、高温使用中のクリープ強度を向上させる。さらに、Cは、溶接凝固中にCrと共晶炭化物を生成し、凝固割れ感受性の低減にも寄与する。これらの効果を十分に得るためには溶接材料には0.06%以上のC含有量が必要である。しかしながら、Cが過剰に含有された場合には、炭化物が多量となり、クリープ強度や延性の低下が生じる。したがって、Cの含有量に上限を設けて0.06〜0.18%とする。C含有量の好ましい下限は0.07%、さらに好ましい下限は0.08%である。また、C含有量の好ましい上限は0.16%、さらに好ましい上限は0.14%である。
Siは、溶接材料の製造時には脱酸に有効であるとともに、溶接金属において高温での耐食性および耐酸化性の向上に有効な元素である。しかしながら、Siが過剰に含有された場合には、相安定性が低下して、靱性およびクリープ強度の低下を招く。そのため、Siの含有量に上限を設けて1%以下とする。Siの含有量は望ましくは0.8%以下、さらに望ましくは0.6%以下である。
Mnは、Siと同様、溶接材料の製造時の脱酸に有効である。また、Mnは溶接金属において高温での組織の安定化にも寄与する。しかしながら、Mnの含有量が過剰になると脆化を招き、さらに、靱性およびクリープ延性の低下も生じる。そのため、Mnの含有量に上限を設けて2%以下とする。Mnの含有量は望ましくは1.8%以下、さらに望ましくは1.5%以下である。
Pは、不純物として溶接材料中に含まれ、溶接中に凝固割れ感受性を高める元素である。さらに、Pは、溶接金属において長時間使用後のクリープ延性も低下させる。そのため、Pの含有量に上限を設けて0.03%以下とする。Pの含有量は、望ましくは0.025%以下、さらに望ましくは0.02%以下である。
Sは、Pと同様に不純物として溶接材料中に含まれ、溶接中に凝固割れ感受性を高める元素である。さらに、溶接金属においてSは、長時間使用中に柱状晶粒界に偏析して脆化を招き、応力緩和割れ感受性をも高める。そのため、Sの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Sの含有量は、望ましくは0.008%以下、さらに望ましくは0.005%以下である。
Niは、溶接金属においても組織を安定にするのに有効な元素であり、長時間使用時のクリープ強度を確保するために必須の元素である。その効果を得るためには、溶接材料のNi含有量を40%以上とする必要がある。しかしながら、Niは高価な元素であり、小規模製造の溶接材料においても多量の含有はコストの増大を招く。そのため、上限を設けてNiの含有量を40〜60%とする。Ni含有量の望ましい下限は40.5%、さらに望ましい下限は41%である。また、Ni含有量の望ましい上限は59.5%、さらに望ましい上限は59%である。
Crは、溶接金属においても高温での耐酸化性および耐食性の確保に有効であり、また、微細な炭化物やCr富化相を形成してクリープ強度の確保にも寄与する。さらに、Crは溶接中にCと共晶炭化物を形成し、凝固割れ感受性の低減に少なからず寄与する。そのため、20%以上のCrを含有させる。しかしながら、Crの含有量が33%を超えると、上記40〜60%のNi量範囲において高温での相安定性が劣化してクリープ強度の低下を招く。したがって、溶接材料のCr含有量を20〜33%とする。Cr含有量の望ましい下限は20.5%、さらに望ましい下限は21%である。また、Cr含有量の望ましい上限は32.5%、さらに望ましい上限は32%である。
MoおよびWは、いずれも溶接金属において、マトリックスに固溶または微細な金属間化合物相を形成して、高温でのクリープ強度や引張強さの向上に大きく寄与する元素である。その効果を十分に発揮させるためには、溶接材料にMoおよびWの1種以上を合計で6%以上含有させる必要がある。しかしながら、これらの元素を過剰に含有させても効果は飽和し、却ってクリープ強度を低下させる場合もある。さらに、MoおよびWはいずれも高価な元素であるため、過剰の含有はコストの増大を招く。そのため上限を設けて、MoおよびWの1種以上の合計含有量を6〜13%とする。溶接材料におけるMoおよびWの1種以上の合計含有量の望ましい下限は6.5%、さらに望ましい下限は6%である。また、MoおよびWの1種以上の合計含有量の望ましい上限は12.5%、さらに望ましい上限は12%である。
Tiは、溶接金属において微細な炭窒化物として、さらに、Niとの金属間化合物として、粒内に析出し、高温でのクリープ強度や引張強さの向上に寄与する。その効果を十分に得るためには溶接材料に0.05%以上のTiを含有させる必要がある。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると炭窒化物として多量に析出し、逆にクリープ延性および靱性の低下を招く。このため、溶接材料のTi含有量に上限を設けて0.05〜1.5%とする。Ti含有量の望ましい下限は0.06%、さらに望ましい下限は0.07%である。また、Ti含有量の望ましい上限は1.3%、さらに望ましい上限は1.1%である。
Coは、Niと同様に溶接金属のオーステナイト組織を安定にし、クリープ強度の向上に寄与する。したがって、Coを含有させても良い。しかしながら、Coは極めて高価な元素であるため、溶接材料といえども過剰の含有は大幅なコストの増大を招く。したがって、含有させる場合のCo量の上限を15%とする。Co含有量の上限は、望ましくは14%であり、さらに望ましくは13%である。
Nbは、溶接金属において、CやNと結合して微細な炭化物や炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度に寄与する。したがって、Tiを含有させても良い。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると炭化物や炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。このため、溶接材料に含有させる場合のNb量の上限を0.5%とする。Nb含有量の上限は、望ましくは0.48%であり、さらに望ましくは0.45%である。
Alは、溶接材料製造時の脱酸に有効な元素である。さらに、Alは、溶接金属において微細な金属間化合物を形成してクリープ強度の向上にも寄与する。しかしながら、Alの含有量が過剰になると合金の清浄性が著しく劣化して、溶接材料の熱間加工性および延性が低下し、製造性が低下する。加えて、溶接金属において多量の金属間化合物相を生成し、長時間使用時の応力時緩和割れ感受性を著しく高める。そのため、Alの含有量に上限を設けて1.5%とする。Alの含有量は望ましくは1.4%以下、さらに望ましくは1.3%以下である。
Bは、溶接金属においてもクリープ強度の向上に有効な元素である。しかしながら、Bの含有量が過剰になると、溶接中の凝固割れ感受性を著しく高める。そのため、Bの含有量に上限を設けて0.005%以下とする。B含有量の望ましい上限は0.004%であり、さらに望ましい上限は0.003%である。なお、B含有量の望ましい下限は0.0001%であり、0.0005%であればさらに望ましい。
Nは、溶接金属において相安定性を高め、クリープ強度の向上に有効であるとともに、固溶して引張強さの確保にも寄与する。しかしながら、過剰に含有されると、高温での使用中に多量の微細窒化物が粒内に析出してクリープ延性および靱性の低下を招く。そのため、Nの含有量に上限を設けて0.18%以下とする。Nの含有量は望ましくは0.16%以下、さらに望ましくは0.14%以下である。
O(酸素)は、溶接材料中に不純物として含まれ、その含有量が過剰になると熱間加工性が低下し、製造性の劣化を招く。このため、Oの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Oの含有量は望ましくは0.008%以下、さらに望ましくは0.005%以下である。
本発明に係るNi基耐熱合金溶接継手を得るには、化学組成が(A)項で述べた合金母材を、化学組成が(B)項で述べた溶接材料で溶接した後、
保持温度T1(℃)、保持時間t1(分)および保持温度T1(℃)から500℃までの平均降温速度RC(℃/時)が、下記の<1>〜<3>式を満たす溶接後熱処理を施す必要がある。
900≦T1≦1275・・・<1>、
−0.2×T1+260≦t1≦−0.6×T1+870・・・<2>、
0.05×T1−10≦RC・・・<3>。
前述の(A)項に記載の化学組成を有するNi基耐熱合金母材を、(B)に記載の化学組成を有する溶接材料を用いて溶接した後、溶接後熱処理して得られる溶接継手の長時間使用中のクリープ強度低下を軽減するためには、
(a)溶接後熱処理過程での粗大なM23C6炭化物の生成の抑制、および
(b)M23C6炭化物中のCr含有量を高めること、
が重要である。
溶接後熱処理の保持温度T1(℃)と保持時間t1(分)は上記の<2>式を満たすようにする必要がある。
溶接後熱処理の保持温度T1(℃)と該保持温度T1(℃)から500℃までの平均降温速度RC(℃/時)は上記の<3>式を満たすようにする必要がある。
500≦T2≦650・・・<4>、
5≦t2≦180・・・<5>。
Claims (4)
- 化学組成が、質量%で、
C:0.04〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:46〜54%、Cr:27〜33%、W:3〜9%、Ti:0.05〜1.2%、Zr:0.005〜0.05%、Al:0.05〜0.3%、B:0.0001〜0.005%、N:0.02%以下、O:0.01%以下、Ca:0〜0.05%、Mg:0〜0.05%、REM:0〜0.5%、Co:0〜1%、Cu:0〜4%、Mo:0〜1%、V:0〜0.5%、Nb:0〜0.5%、残部:Feおよび不純物である合金母材を、
化学組成が、質量%で、
C:0.06〜0.18%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:40〜60%、Cr:20〜33%、MoおよびWの1種以上:合計で6〜13%、Ti:0.05〜1.5%、Co:0〜15%、Nb:0〜0.5%、Al:1.5%以下、B:0〜0.005%、N:0.18%以下、O:0.01%以下、残部:Feおよび不純物である溶接材料で溶接した後、
保持温度T1(℃)、保持時間t1(分)および保持温度T1(℃)から500℃までの平均降温速度RC(℃/時)が下記の<1>〜<3>式を満たし、RC(℃/時)が150以上である溶接後熱処理を施す、Ni基耐熱合金溶接継手の製造方法。
900≦T1≦1275・・・<1>、
−0.2×T1+260≦t1≦−0.6×T1+870・・・<2>、
0.05×T1−10≦RC・・・<3>。 - 請求項1に記載の溶接後熱処理を施した後、さらに、保持温度T2(℃)および保持時間t2(分)が、下記の<4>式および<5>式を満たす溶接後熱処理を施す、Ni基耐熱合金溶接継手の製造方法。
500≦T2≦650・・・<4>、
5≦t2≦180・・・<5>。 - 前記合金母材の化学組成が、質量%で、下記の[1]および[2]から選択される1種以上の元素を含有する、請求項1または2に記載のNi基耐熱合金溶接継手の製造方法。
[1]:Ca:0.0001〜0.05%、Mg:0.0001〜0.05%、REM:0.001〜0.5%、
[2]:Co:0.01〜1%、Cu:0.01〜4%、Mo:0.01〜1%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%。 - 前記溶接材料の化学組成が、質量%で、下記の[3]から選択される1種以上の元素を含有する、請求項1から3までのいずれかに記載のNi基耐熱合金溶接継手の製造方法。
[3]:Co:0.01〜15%、Nb:0.01〜0.5%、B:0.0001〜0.005%。
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