JP5846074B2 - オーステナイト系耐熱合金部材およびその製造方法 - Google Patents
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HV0.1(max)≦(−1/6)×d+300
なお、上記の「HV0.1」は、試験力を0.9807N(100gf)としてマイクロビッカース硬さ試験を実施した場合の「硬さ記号」を意味する(JIS Z 2244(2009)参照)。
HV0.1(max)≦(−1/6)×d+300・・・[1]。
第1群:Ca:0.05%以下およびREM:0.1%以下
第2群:Co:1%以下、Cu:1%以下、Mo:1%以下、V:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびZr:0.5%以下。
T≧200×log10ε+900・・・[2]。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のオーステナイト系耐熱合金部材を製造する方法であって、切削バイトにより部材表面を切削加工した後、粒度が40番より細かい番手の砥石にて1回以上表面を研磨加工する、オーステナイト系耐熱合金部材の製造方法。
(5)上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のオーステナイト系耐熱合金部材を製造する方法であって、切削バイトにより部材表面を切削加工した後、900〜1200℃の温度域で0.1〜5h保持する熱処理を行う、オーステナイト系耐熱合金部材の製造方法。
(6)上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のオーステナイト系耐熱合金部材を製造する方法であって、切削バイトにより部材表面を切削加工した後、粒度が40番より細かい番手の砥石にて1回以上表面を研磨加工する工程と、900〜1200℃の温度域で0.1〜5h保持する熱処理を行う工程と、を備える、オーステナイト系耐熱合金部材の製造方法。
C:0.03〜0.15%
Cは、オーステナイトを安定にするとともに粒界に微細な炭化物を形成し、高温でのクリープ強度を向上させる。この効果を十分に得るためには、0.03%以上のC含有量が必要である。しかしながら、Cが過剰に含有された場合には、炭化物が粗大となり、かつ多量に析出するので、粒界の延性が低下し、さらに、靱性およびクリープ強度の低下も生じる。したがって、上限を設け、Cの含有量を0.03〜0.15%とする。C含有量の望ましい下限は0.04%、さらに望ましい下限は0.05%である。また、C含有量の望ましい上限は0.12%、さらに望ましい上限は0.10%である。
Siは、脱酸作用を有するとともに、高温での耐食性および耐酸化性の向上に有効な元素である。しかしながら、Siが過剰に含有された場合にはオーステナイトの安定性が低下して、靱性およびクリープ強度の低下を招く。そのため、Siの含有量に上限を設けて1%以下とする。Siの含有量は望ましくは0.8%以下、さらに望ましくは0.6%以下である。
Mnは、Siと同様、脱酸作用を有する。Mnは、オーステナイトの安定化にも寄与する。しかしながら、Mnの含有量が過剰になると脆化を招き、さらに、靱性およびクリープ延性の低下も生じる。そのため、Mnの含有量に上限を設けて2%以下とする。Mnの含有量は望ましくは1.8%以下、さらに望ましくは1.5%以下である。
Pは、不純物として合金中に含まれ、多量に含まれる場合には、熱間加工性および溶接性を著しく低下させ、さらに、長時間使用後のクリープ延性も低下させる。そのため、Pの含有量に上限を設けて0.03%以下とする。Pの含有量は、望ましくは0.025%以下、さらに望ましくは0.02%以下である。
Sは、Pと同様に不純物として合金中に含まれ、多量に含まれる場合には、熱間加工性および溶接性を著しく低下させ、さらに、長時間使用後のクリープ延性も低下させる。そのため、Sの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Sの含有量は、望ましくは0.008%以下、さらに望ましくは0.005%以下である。
Niは、オーステナイトを得るために有効な元素であり、長時間使用時の組織安定性を確保するために必須の元素である。後述の20〜35%という本発明のCr含有量の範囲で、上記したNiの効果を十分に得るためには、40%以上のNi含有量が必要である。しかしながら、Niは高価な元素であり、多量の含有はコストの増大を招く。そのため、上限を設けて、Niの含有量を40〜55%とする。Ni含有量の望ましい下限は41%、さらに望ましい下限は42%である。また、Ni含有量の望ましい上限は54%、さらに望ましい上限は53%である。
Crは、高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。上記40〜55%という本発明のNi含有量の範囲で、上記したCrの効果を得るためには、20%%以上のCr含有量が必要である。しかしながら、Crの含有量が35%を超えると、高温でのオーステナイトの安定性が劣化してクリープ強度の低下を招く。したがって、Crの含有量を20〜35%とする。Cr含有量の望ましい下限は20.5%、さらに望ましい下限は21%である。また、Cr含有量の望ましい上限は34.5%、さらに望ましい上限は34%である。
Wは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度の向上に大きく寄与する元素である。その効果を十分に発揮させるためには少なくとも3%以上のW含有量が必要である。しかしながら、Wを過剰に含有させても効果は飽和し、かえってクリープ強度を低下させる場合もある。さらに、Wは高価な元素であるため、過剰のW含有はコストの増大を招く。そのため、上限を設けて、Wの含有量を3〜10%とする。W含有量の望ましい下限は3.5%、さらに望ましい下限は4%である。また、W含有量の望ましい上限は9.5%、さらに望ましい上限は9%である。
Tiは、微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度に寄与する。その効果を得るためには0.01%以上のTi含有量が必要である。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。このため、上限を設けて、Tiの含有量を0.01〜1.2%とする。Ti含有量の望ましい下限は0.03%、さらに望ましい下限は0.05%である。また、Ti含有量の望ましい上限は1.0%、さらに望ましい上限は0.8%である。
Alは、脱酸作用を有する元素である。しかしながら、Alの含有量が過剰になると合金の清浄性が著しく劣化して、熱間加工性および延性が低下する。そのため、Alの含有量に上限を設けて0.3%以下とする。Alの含有量は望ましくは0.2%以下、さらに望ましくは0.1%以下である。
Bは、高温での使用中に粒界に偏析して粒界を強化するとともに粒界炭化物を微細分散させることにより、クリープ強度を向上させるのに必要な元素である。この効果を得るためには0.0001%以上のB含有量が必要である。しかしながら、Bの含有量が過剰になると、溶接性が劣化することに加えて、熱間加工性が劣化する。そのため、上限を設けて、Bの含有量を0.0001〜0.01%とする。B含有量の望ましい下限は0.0005%、さらに望ましい下限は0.001%である。また、B含有量の望ましい上限は0.008%、さらに望ましい上限は0.006%である。
Nは、オーステナイトを安定にするのに有効な元素であるものの、過剰に含有されると、高温での使用中に多量の微細窒化物が粒内に析出してクリープ延性および靱性の低下を招く。そのため、Nの含有量に上限を設けて0.02%以下とする。Nの含有量は望ましくは0.018%以下、さらに望ましくは0.015%以下である。
O(酸素)は、不純物として合金中に含まれ、その含有量が過剰になると熱間加工性が低下し、さらに靱性および延性の劣化を招く。このため、Oの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Oの含有量は望ましくは0.008%以下、さらに望ましくは0.005%以下である。
Caは、熱間加工性を改善する作用を有する。このため、Caを含有させてもよい。しかしながら、Caの含有量が過剰になるとOと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、Caを含有させる場合には、その含有量を0.05%以下とする。Ca含有量の上限は、望ましくは0.04%である。
REMは、熱間加工性を改善する作用を有する。すなわち、REMは、Sとの親和力が強く、熱間加工性の向上に寄与する。このため、REMを含有させてもよい。しかしながら、REMの含有量が過剰になると、Oと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、REMを含有させる場合には、その含有量を0.1%以下とする。REM含有量の上限は、望ましくは0.08%である。
Coは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Coは、Niと同様オ−ステナイト生成元素であり、相安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。したがって、Coを含有させてもよい。しかしながら、Coは極めて高価な元素であるため、Coの過剰の含有は大幅なコスト増を招く。このため、Coを含有させる場合には、その含有量を1%以下とする。Co含有量の上限は、望ましくは0.8%である。
Cuは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Cuは、NiおよびCoと同様オ−ステナイト生成元素であり、相安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。したがって、Cuを含有させてもよい。しかしながら、Cuが過剰に含有された場合には熱間加工性の低下を招く。このため、Cuを含有させる場合には、その含有量を1%以下とする。Cu含有量の上限は、望ましくは0.8%である。
Moは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Moは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度を向上させる作用を有する。したがって、Moを含有させてもよい。しかしながら、Moが過剰に含有された場合にはオーステナイトの安定性が低下して、却ってクリープ強度の低下を招く。そのため、Moを含有させる場合には、その含有量を1%以下とする。Mo含有量の上限は、望ましくは0.8%である。
Vは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Vは、CまたはNと結合して微細な炭化物または炭窒化物を形成し、クリープ強度を向上させる作用を有する。したがって、Vを含有させてもよい。しかしながら、Vが過剰に含有された場合、炭化物または炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性の低下を招く。そのため、Vを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。V含有量の上限は、望ましくは0.4%である。
Nbは、Vと同様にCやNと結合して微細な炭化物や炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度向上に寄与する。したがって、Nbを含有させてもよい。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると炭化物や炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。そのため、Nbを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。Nb含有量の上限は、望ましくは0.4%である。
Zrは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Zrは、粒界強化元素であり、高温でのクリープ強度向上に寄与し、さらに、クリープ延性の向上にも寄与する。したがって、Zrを含有させてもよい。しかしながら、Zrの含有量が0.5%を超えると熱間加工性が低下する場合がある。そのため、Zrを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。Zr含有量の上限は、望ましくは0.4%である。
前述の(A)項に記載の化学組成を有する本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、部材の平均結晶粒径d(μm)と、部材の外表面から5mm深さまでの領域における最高硬さHV0.1(max)とが、下記の、
HV0.1(max)≦(−1/6)×d+300・・・[1]
式を満足するものでなければならない。
T≧200×log10ε+900・・・[2]
式を満足するものであることが好ましい。
ε={Ra/(1−Ra)}×100。
T≧200×log10ε+900・・・[2]
式を満足する試験番号9、19および26の場合、試験片表面だけではなく内部にも割れが発生せず、熱間曲げ加工時の耐割れ性に極めて優れることが明らかである。
Claims (6)
- 発電用ボイラに用いられるオーステナイト系耐熱合金部材であって、
質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:40〜55%、Cr:20〜35%、W:3〜10%、Ti:0.01〜1.2%、Al:0.3%以下、B:0.0001〜0.01%、N:0.02%以下およびO:0.01%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなる化学組成であって、部材の平均結晶粒径d(μm)と、部材の外表面から5mm深さまでの領域における最高硬さHV0.1(max)とが、下記の[1]式を満足することを特徴とするオーステナイト系耐熱合金部材。
HV0.1(max)≦(−1/6)×d+300・・・[1] - Feの一部に代えて、質量%で、下記の第1群または第2群から選択される1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系耐熱合金部材。
第1群:Ca:0.05%以下およびREM:0.1%以下
第2群:Co:1%以下、Cu:1%以下、Mo:1%以下、V:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびZr:0.5%以下 - 加工温度T(℃)とひずみ量ε(%)が下記の[2]式を満足する熱間曲げ加工に用いられることを特徴とする請求項1または2に記載のオーステナイト系耐熱合金部材。
T≧200×log10ε+900・・・[2] - 請求項1〜3のいずれか一つに記載のオーステナイト系耐熱合金部材を製造する方法であって、
切削バイトにより部材表面を切削加工した後、粒度が40番より細かい番手の砥石にて1回以上表面を研磨加工する、オーステナイト系耐熱合金部材の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか一つに記載のオーステナイト系耐熱合金部材を製造する方法であって、
切削バイトにより部材表面を切削加工した後、900〜1200℃の温度域で0.1〜5h保持する熱処理を行う、オーステナイト系耐熱合金部材の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか一つに記載のオーステナイト系耐熱合金部材を製造する方法であって、
切削バイトにより部材表面を切削加工した後、
粒度が40番より細かい番手の砥石にて1回以上表面を研磨加工する工程と、
900〜1200℃の温度域で0.1〜5h保持する熱処理を行う工程と、
を備える、オーステナイト系耐熱合金部材の製造方法。
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