JP2014140884A - オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料ならびにそれを用いて製造される溶接金属及び溶接継手 - Google Patents

オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料ならびにそれを用いて製造される溶接金属及び溶接継手 Download PDF

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Abstract

【課題】フラックスを利用する溶接に利用される場合であっても、スラグの剥離性に優れ、かつ、溶接時の耐高温割れ性にも優れるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を提供する。
【解決手段】本実施形態によるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料は、質量%で、C:0.05%よりも高く0.18%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P:0.008%以下、Ni:40〜45%未満、Cr:20〜25%未満、W:8.0%よりも高く9.1%以下、Ti:0.01〜0.18%未満、Nb:0.01〜0.5%、N:0.0005〜0.03%、Al:0.01%未満、O:0.05%以下、及び、S:0.005%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有する。
0.003≦[S]+[有効O] (1)
[有効O]=[O]−(8/9)×[Al]
【選択図】なし

Description

本発明は、溶接材料に関し、さらに詳しくはオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料ならびにそれを用いて製造される溶接金属及び溶接継手に関する。
近年、環境負荷低減の観点から、発電用ボイラ等の高温で使用される構造物では、運転条件の高温、高圧化が世界的規模で進められている。そのため、これらの高温で使用される構造物に使用される材料には、優れた高温強度が求められる。
特開2004−3000号公報(特許文献1)及び特開2011−63838号公報(特許文献2)は、優れた高温強度を有するオーステナイト系耐熱鋼を提案する。これらの文献に開示されたオーステナイト系耐熱鋼は、W及びBを多量に含有するため、700℃以上の高温域において優れたクリープ強度を有する。
オーステナイト系耐熱鋼を構造物に利用する場合、オーステナイト系耐熱鋼は母材として溶接されて構造物に組み立てられる。このとき、母材をそのまま溶接材料として使用する場合がある。また、溶接材料規格のAWS A5.14−2005やERNiCrCoMo−1に相当する高Ni合金用溶接材料を使用する場合もある。
母材は溶製後、圧延及び熱処理により組織が調整されて高温強度が確保される。しかしながら、溶接金属はほとんどの場合、凝固ままの組織で使用される。そのため、母材をそのまま溶接材料として使用すれば、溶接金属では、母材と同等のクリープ強度等の機械的特性が得られない。さらに、オーステナイト系耐熱鋼からなる溶接金属は溶接時の高温割れ感受性が高い。特に、母材では、クリープ強度や耐水蒸気酸化性を高めるためにBやSiを含有するが、これらの元素は高温割れ感受性を高める。したがって、このような母材をそのまま溶接材料として使用するのは好ましくない。
また、高Ni合金用溶接材料はクリープ強度に優れるが、高価である。さらに、母材と成分が大きく異なる場合、十分な耐溶接高温割れが得られない場合がある。
特開2008−207242号公報(特許文献3)及び特開2011−255390号公報(特許文献4)は溶接時の耐高温割れ性に優れたオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を提案する。特許文献3に開示された溶接材料は、Nb、Tiの共晶炭化物を活用し、溶接時の高温割れを抑制しつつ、クリープ強度も優れる。特許文献4に開示された溶接材料は、W、Nb及びTiの含有量を調整して、溶接時の高温割れを抑制しつつ、高温での使用時に発生し得る応力緩和割れを抑制する。
特開2004−3000号公報 特開2011−63838号公報 特開2008−207242号公報 特開2011−255390号公報
これらの溶接材料を用いてボイラ等の大型溶接構造物を組み立てる場合、ティグ溶接だけでなく、サブマージアーク溶接や被覆アーク溶接も広く用いられる。特許文献3及び4で提案されたオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いてティグ溶接により構造物を組み立てた場合、製造された溶接金属は優れた耐高温割れ性及び耐応力緩和割れ性を有する。
しかしながら、特許文献3及び4に提案された溶接材料をサブマークアーク溶接の溶接ワイヤや被覆アーク溶接の芯線として用いて溶接した場合、フラックスが溶融して形成されたスラグが、溶接金属から剥離しにくい場合が生じる。特に、多層溶接を実施した場合、剥離しなかったスラグが積層間に残存し、溶接欠陥となる場合がある。
本発明の目的は、サブマージアーク溶接や被覆アーク溶接のようにフラックスを利用する溶接に利用される場合であっても、スラグの剥離性に優れ、かつ、溶接時の耐高温割れ性にも優れるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を提供する。
本実施形態によるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料は、質量%で、C:0.05%よりも高く0.18%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P:0.008%以下、Ni:40〜45%未満、Cr:20〜25%未満、W:8.0%よりも高く9.1%以下、Ti:0.01〜0.18%未満、Nb:0.01〜0.5%、N:0.0005〜0.03%、Al:0.01%未満、O:0.02%以下、及び、S:0.005%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有する。
0.003≦[S]+[有効O] (1)
ここで、[有効O]は次の式(2)で定義される。
[有効O]=[O]−(8/9)×[Al] (2)
式(1)及び式(2)中の[S]、[O]、[Al]には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態によるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料は、サブマージアーク溶接や被覆アーク溶接のようにフラックスを利用する溶接に利用される場合であっても、スラグの剥離性に優れる。さらに、溶接時において優れた耐高温割れ性を有する。
本実施形態によるサブマージアーク溶接用溶接ワイヤは、上記オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料からなる。本実施形態による被覆アーク溶接用溶接棒は、上記オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料からなる芯線を備える。
本実施形態による溶接金属は、上記オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて製造される。
本実施形態による溶接金属は、溶接時における耐高温割れ性に優れ、かつ、高温で長時間使用中の耐応力緩和割れ性及びクリープ強度に優れる。
本実施形態の溶接継手は、上記溶接金属と、オーステナイト系耐熱鋼からなる母材とを備える。上記母材は、質量%で、W:6.0〜9.1%、Ni:40〜48%、及び、Cr:20〜25%未満を含有してもよい。上記母材はまた、質量%で、C:0.04〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:40〜48%、Cr:20〜25%未満、W:6.0〜9.1%、Nb:0.05〜0.60%未満、Ti:0.02〜0.20%、N:0.02%以下、B:0.004%以下、及び、Al:0.04%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなる鋼でもよい。
本発明者らは、サブマージアーク溶接や被覆アーク溶接のようなフラックスを利用する溶接時のスラグの剥離現象について調査し、次の知見を得た。
(A)剥離せずに溶接金属上に残存するスラグと溶接金属との界面にはCrを主体とした窒化物が多量に存在する。
(B)溶接材料に含有される窒素(N)量が増加するほど、スラグの剥離性は低下する。
(C)スラグ剥離性は特に、溶接ビードの止端部で低い。
以上の知見から、スラグ剥離性が低い理由として、次の事項が考えられる。溶接金属中又はフラックス中に含有されるCrは、溶接金属の凝固、冷却過程において、溶接金属中に含有されるNと反応して窒化物を形成する。この窒化物は、溶接金属とフラックスとの界面において生成し、この窒化物によりフラックスが溶接金属に焼付く。溶接金属中のN含有量が増加すれば、生成される窒化物も増加する。そのため、スラグ剥離性が低下する。溶接ビードの止端部ではスラグが噛み込まれやすいため、スラグ剥離性がさらに低くなる。
上述したとおり、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料は、スラグ剥離性だけでなく、溶接時の耐高温割れ性、耐応力緩和割れ性及びクリープ強度にも優れる方が好ましい。そこで、これらの特性が得られる溶接材料を検討した結果、本発明者らはさらに次の知見を得た。
(D)スラグと溶接金属との界面において、窒化物の生成を抑制できれば、スラグ剥離性は向上する。具体的には、溶接材料中のN含有量を低くし、Cr含有量の上限値を規定する。さらに、Crを主体とする窒化物生成の駆動力を高めるW含有量を制限する。これにより、Crを主体とする窒化物の生成が抑制され、スラグ剥離性が向上する。
(E)溶接ビードの止端部でのスラグ剥離性を高めるためには、止端からの溶接ビードの立ち上がり角(フランク角)を小さくすることが有効である。溶接材料中のS含有量及び有効酸素(O)量が式(1)を満たせば、スラグが剥離しやすい程度にフランク角が小さくなり、スラグ剥離性が高まる。
0.003≦[S]+[有効O] (1)
ここで、[有効O]は有効酸素量であり、次の式(2)で定義される。
[有効O]=[O]−(8/9)×[Al] (2)
式(1)及び式(2)中の[S]、[O]、[Al]には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
以上の知見に基づいて本実施形態のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料、サブマージアーク溶接用溶接ワイヤ、被覆アーク溶接用溶接棒、溶接金属及び溶接継手は完成した。以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。
[オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料]
本実施形態によるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料は、次の化学組成を有する。以下の説明において特に断りがない場合、「%」は「質量%」を意味する。
C:0.05%よりも高く0.18%以下
炭素(C)はオーステナイト形成元素であり、溶接金属として高温使用時のオーステナイト組織の安定性を高める。Cはさらに、溶接時の耐高温割れ性を高める。具体的には、Cは、溶接時の凝固過程においてCr及びNbと結合して共晶炭化物を形成する。これにより、液相の消失を早め、最終凝固部の組織を(Cr、Nb、M)23とオーステナイトとのラメラ状組織にする。その結果、液相の残存形態が面状から点状に変化するとともに、特定面での応力集中が抑制され、凝固割れが抑制される。Cはさらに、不純物の偏析サイトとなる最終凝固界面積を増大するため、溶接中の延性低下割れが抑制され、溶接金属として高温使用中の応力緩和割れ感受性が低減する。後述するCr含有量の範囲において、C含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、凝固中において炭化物とならない過剰なCが高温での使用中に炭化物として微細析出し、かえって応力緩和割れ感受性を高める。したがって、C含有量は0.05%よりも高く0.18%以下である。C含有量の好ましい下限は0.06%であり、さらに好ましくは0.08%である。C含有量の好ましい上限は0.15%であり、さらに好ましくは0.12%である。
Si:0.5%以下
シリコン(Si)は鋼を脱酸する。しかしながらSiは溶接金属の凝固時に柱状晶粒界に偏析し、液相の融点を下げて凝固割れ感受性を高める。したがって、Si含有量は0.5%以下である。Si含有量が過剰に低すぎれば、脱酸が有効に得られにくく鋼の清浄性が低下し、製造コストが高くなる場合がある。したがって、Si含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Si含有量の好ましい上限は0.3%である。
Mn:1.5%以下
マンガン(Mn)は、Siと同様に鋼を脱酸する。Mnはさらに、溶接金属中のNの活量を下げ、溶接中のアーク雰囲気中からのNの飛散を抑制する。これにより、鋼の強度が確保される。しかしながら、Mn含有量が高すぎれば、鋼が脆化する。したがって、Mn含有量は1.5%以下である。Mn含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Mn含有量の好ましい上限は1.2%である。
P:0.008%以下
燐(P)は不純物である。Pは、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下し、凝固割れ感受性を高める。Pはさらに、溶接金属として高温で使用中に粒界脆化を引き起こして耐応力緩和割れ性を低下する。したがって、P含有量は0.008%以下である。好ましいP含有量は0.006%以下である。
Ni:40〜45%未満
ニッケル(Ni)は、オーステナイト組織を得るために有効であり、溶接金属として高温で長時間使用時の組織を安定化し、クリープ強度を高める。Ni含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Niは高価である。さらに、溶接材料をサブマージアーク溶接や被覆アーク溶接等のフラックスを利用する溶接に使用する場合、Ni含有量が高すぎれば、溶接金属へのN溶解量を減少させ、溶接金属の凝固、冷却過程において、Crを主体とする窒化物の生成を促す。これにより、間接的にスラグ剥離性が低下する。したがって、Ni含有量は40〜45%未満である。Ni含有量の好ましい下限は40.5%であり、さらに好ましくは41%である。Ni含有量の好ましい上限は44.5%であり、さらに好ましくは44%である。
Cr:20〜25%未満
クロム(Cr)は、高温での耐酸化性及び耐食性を高める。Crはさらに、凝固過程でCと結合して共晶炭化物を形成し、溶接中の凝固割れ及び延性低下割れを抑制する。Crはさらに、溶接金属として高温使用中での応力緩和割れ感受性を低下する。Cr含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、溶接材料をサブマージアーク溶接や被覆アーク溶接等のフラックスを利用する溶接に使用する場合の溶接金属の凝固、冷却の過程において、溶接金属中のNと反応し、溶接金属とスラグとの界面に窒化物を形成する。この窒化物によりスラグ剥離性が低下する。したがって、Cr含有量は20〜25%未満である。Cr含有量の好ましい下限は20.5%であり、さらに好ましくは21%である。Cr含有量の好ましい上限は24.5%であり、さらに好ましくは24%である。
W:8.0%よりも高く9.1%以下
タングステン(W)は、マトリクスに固溶して、700℃を超える高温でのクリープ強度を高める。Wはさらに、Sの粒界偏析エネルギを低下し、溶接後の熱処理及び高温使用中でのSの粒界への濃化を軽減する。これにより、粒界が弱くなるのが抑制され、間接的に応力緩和割れが抑制される。W含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、W含有量が高すぎれば、その効果は飽和する。W含有量が高すぎればさらに、溶接材料をフラックスを利用する溶接に使用する場合の溶接金属の凝固、冷却過程において、Crを主体とする窒化物の生成の駆動力が高まり、スラグ剥離性が低下する。したがって、W含有量は8.0%よりも高く、9.1%以下である。W含有量の好ましい下限は、8.1%であり、さらに好ましくは8.2%である。W含有量の好ましい上限は9.0%であり、さらに好ましくは8.8%である。
Ti:0.01〜0.18%未満
チタン(Ti)は、溶接金属として高温使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、クリープ強度を高める。Ti含有量が低すぎれば、上記効果は得られない。一方、Ti含有量が高すぎれば、炭窒化物が多量に析出し、粒内の変形抵抗を高める。その結果、高温使用中の応力緩和割れ感受性を高める。さらに、フラックスを利用する溶接に溶接材料を使用した場合、Ti含有量が高すぎれば、溶接金属の凝固、冷却過程においてCrとともに窒化物を形成し、スラグ剥離性を低下する。したがって、Ti含有量は0.01〜0.18%未満である。Ti含有量の好ましい下限は0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。Ti含有量の好ましい上限は0.16%であり、さらに好ましくは0.14%である。
Nb:0.01〜0.5%
ニオブ(Nb)は、Crとともに凝固過程でCと結合して共晶炭化物を形成する。これにより、溶接中の凝固割れ及び延性低下割れ感受性を低減する。Nbはさらに、引張強度を高める。したがって本実施形態の溶接材料においては、Nbの含有により、Nの低減による引張強度の低下を補充できる。Nbはさらに、高温使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、クリープ強度を高める。Nb含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Nb含有量が高すぎれば、炭窒化物が過剰に析出し、粒内の変形抵抗が高まる。そのため、高温使用中の応力緩和割れ感受性が高まる。フラックスを利用する溶接に溶接材料を使用する場合にNb含有量が高すぎればさらに、溶接金属の凝固、冷却過程において、NbがCrとともに窒化物を形成し、スラグ剥離性を低下する。したがって、Nb含有量は0.01〜0.5%である。Nb含有量の好ましい下限は0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。Nb含有量の好ましい上限は0.45%であり、さらに好ましくは0.40%である。
N:0.0005〜0.03%
窒素(N)は、フラックスを利用する溶接に溶接材料を使用する場合の溶接金属の凝固、冷却過程において、溶接金属及びフラックス中に含まれるCr等と反応し、溶接金属とスラグとの界面において窒化物を形成する。これにより、スラグ剥離性が低下する。一方、Nはオーステナイト生成元素であり、高温使用時のオーステナイト組織を安定化する。Nはさらに、マトリクスに固溶し、引張強度を高める。したがって、N含有量は0.0005〜0.03%である。N含有量の好ましい下限は0.0008であり、さらに好ましくは0.001%である。N含有量の好ましい上限は0.025%であり、さらに好ましくは0.020%である。
Al:0.01%未満
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。しかしながら、Al含有量が高すぎれば、鋼の清浄性が低下し、溶接材料の加工性及び溶接金属の延性が低下する。したがって、Al含有量は0.01%未満である。好ましいAl含有量は0.008%以下であり、さらに好ましくは0.006%である。Al含有量の下限は不純物レベルでよい。
O:0.02%以下
酸素(O)含有量が高すぎれば、溶接材料の加工性及び溶接金属の延性が低下する。したがって、O含有量は0.02%以下である。好ましいO含有量は0.015%以下である。一方、溶接金属中に溶解するOは、表面活性元素として作用し、界面エネルギを低下する。これにより、溶接ビードの止端部のフランク角が小さくなりスラグ剥離性が高まる。したがって、O含有量は、後述の式(1)を満たす。
S:0.005%以下
硫黄(S)含有量が高すぎれば、Pと同様に、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下し、凝固割れ感受性を高める。さらに、過剰なSは、高温使用中に結晶粒界に偏析、濃化して応力緩和割れ感受性を高める。したがって、S含有量は0.005%以下である。好ましいS含有量は0.004%以下である。一方、溶接金属中に溶解するSは、Oと同様に、表面活性元素として作用し、スラグ剥離性を高める。したがって、S含有量は後述の式(1)を満たす。
上記溶接材料の残部はFe及び不純物である。ここでいう不純物は、溶接材料の原料として利用される鉱石、スクラップ、又は、製造過程の環境等から混入する元素である。
[式(1)について]
上記化学組成はさらに、式(1)を満たす。
0.003≦[S]+[有効O] (1)
ここで、[有効O]は有効酸素量(%)を意味し、次の式(2)で定義される。
[有効O]=[O]−(8/9)×[Al] (2)
式(1)及び式(2)中の[S]、[O]、[Al]には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上述のとおり、溶接金属中に溶解するS及びOは表面活性元素として作用し、界面エネルギを低下する。これにより溶接ビードの止端部のフランク角が小さくなり、止端部でのスラグ剥離性が高まる。しかしながら、この効果を得るためのO含有量は、強い脱酸作用を有するAl含有量の影響を受ける。そこで、Oについては式(2)で定義される有効酸素量が表面活性元素として作用すると考える。
F1=[S]+[有効O]と定義する。F1が0.003%以上であれば、表面活性元素として作用するS量及びO量を十分に確保することができ、スラグ剥離性が高まる。好ましいF1は0.004%以上である。
[溶接ワイヤ及び溶接棒について]
本実施形態の溶接材料は、周知の製造方法により製造される。溶接材料はたとえば、溶加棒、サブマージアーク溶接用の溶接ワイヤ、被覆アーク溶接用の溶接棒の芯線等に加工される。
本実施形態のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料は、溶接ワイヤや芯線に利用された場合、上記のとおり優れたスラグ剥離性を有し、さらに、溶接時に優れた耐高温割れ性を有する。
[溶接金属について]
本実施形態によるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて、ティグ溶接、サブマージアーク溶接、被覆アーク溶接等の溶接により溶接金属が製造される。本実施形態による溶接材料により製造された溶接金属は、溶接中の高温割れ性に優れ、さらに、高温で長時間使用中の耐応力緩和割れ性及びクリープ強度に優れる。
[溶接継手について]
本実施形態のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて、オーステナイト系耐熱鋼を母材として溶接すれば、上記溶接金属と、オーステナイト系耐熱鋼の母材とを備えた溶接継手が製造される。この溶接継手は優れたクリープ強度を有する。
[母材について]
好ましくは、オーステナイト系耐熱鋼からなる母材の化学組成は、次の元素を含有する。
W:6.0〜9.1%
タングステン(W)は、溶接材料におけるWと同様に、マトリクスに固溶して700℃を超える高温でのクリープ強度を高める。母材は、凝固ままで使用される溶接金属と異なり、熱処理により均質化される。そのため、W含有量は6.0%以上であれば、上記効果が有効に得られる。一方、Wは高価であるため、W含有量が高すぎれば製造コストが高くなる。さらに、上記のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を、フラックスを利用する溶接に使用する場合、母材の溶融量が大きくなると、溶接金属中のW含有量が高くなる。この場合、スラグの剥離性が低下する。したがって、母材中の好ましいW含有量は6.0〜9.1%である。W含有量のさらに好ましい下限は6.5%であり、さらに好ましくは7.0%である。W含有量のさらに好ましい上限は9.0%であり、さらに好ましくは8.9%である。
Ni:40〜48%
ニッケル(Ni)は、溶接金属におけるNiと同様に、オーステナイト組織を得るために有効である。Niはさらに、高温での長時間使用時の組織安定性を確保し、クリープ強度を高める。Ni含有量が40%以上であれば、上記効果が有効に得られる。一方、Niは高価であり、製造コストが高くなる。さらに、上記のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料をフラックスを利用する溶接に使用する場合、母材の溶融量が大きくなると、溶接金属中のNi含有量が高くなる。この場合、間接的にスラグの剥離性が低下する。したがって、母材の好ましいNi含有量は、40〜48%である。Ni含有量のさらに好ましい下限は40.5%であり、さらに好ましくは42%である。Ni含有量のさらに好ましい上限は47.5%であり、さらに好ましくは47%である。
Cr:20〜25%未満
クロム(Cr)は、溶接金属におけるCrと同様に、母材の高温での耐酸化性及び耐食性を高める。Cr含有量が20%以上であれば、上記効果が有効に得られる。一方、Cr含有量が高すぎれば、高温での組織の安定性が低下し、クリープ強度が低下する。さらに、上記のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料をフラックスを利用する溶接に使用する場合、母材の溶融量が大きくなると、溶接金属中のCr含有量が高くなり、スラグの剥離性が低下する。したがって、母材の好ましいCr含有量は、20〜25%未満である。Cr含有量のさらに好ましい下限は20.5%であり、さらに好ましくは21%である。Cr含有量のさらに好ましい上限は24.5%であり、さらに好ましくは24%である。
母材が上述の元素を含有すれば、母材は、700℃以上の高温域においてさらに優れた延性及びクリープ強度を有する。母材として用いるオーステナイト系耐熱鋼の化学組成は、上述のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
好ましくは、上記母材の化学組成はさらに、次の元素を含有し、残部はFe及び不純物からなる。ここでいう不純物は、母材の原料として利用される鉱石、スクラップ、又は、製造過程の環境等から混入する元素である。
C:0.04〜0.12%
炭素(C)は、オーステナイト形成元素であり、高温使用時の母材のオーステナイト組織の安定性を高める。母材は、凝固ままで使用される溶接金属と異なり、熱処理により均質化される。さらに、溶接割れ防止に対する効果を必要としない。そのため、C含有量が0.04%以上であれば、上記効果が有効に得られる。一方、C含有量が高すぎれば、高温使用中に粗大な炭化物が生成され、クリープ強度が低下する。したがって、母材の好ましいC含有量は、0.04〜0.12%である。C含有量のさらに好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましい上限は0.10%である。
Si:0.5%以下
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Siが少しでも含有されれば、この効果が得られる。Si含有量が0.01%以上であれば、上記効果がより有効に得られる。一方、Si含有量が高すぎれば、鋼の靱性が低下する。したがって、母材の好ましいSi含有量は0.5%以下である。Si含有量のさらに好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましい上限は0.4%である。
Mn:1.5%以下
マンガン(Mn)はSiと同様に、鋼を脱酸する。Mnが少しでも含有されれば、この効果が得られる。Mn含有量が0.01%以上であれば、上記効果がより有効に得られる。一方、Mn含有量が高すぎれば、鋼が脆化する。したがって、母材の好ましいMn含有量は1.5%以下である。Mn含有量のさらに好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましい上限は1.2%である。
P:0.03%以下
燐(P)は不純物である。P含有量が高すぎれば、クリープ延性が低下する。母材は、溶接金属の場合とは異なり、溶接割れ抑制に関する対策を必要しない。また、P含有量の極度の低減は、製鋼コストを高くする。そのため、母材の好ましいP含有量は0.03%以下である。さらに好ましいP含有量は、0.02%以下である。
S:0.01%以下
硫黄(S)は不純物である。S含有量が高すぎれば、クリープ延性が低下する。上述のとおり、母材は溶接割れ抑制に関する対策を必要とせず、さらに、S含有量の極度の低減は、製鋼コストを高くする。そのため、母材の好ましいS含有量は0.01%以下である。さらに好ましいS含有量は0.008%以下である。
Nb:0.05〜0.50%
ニオブ(Nb)は、微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度を高める。母材では、高温使用中の応力緩和割れ感受性が溶接金属よりも低いため、高温強化のためにNbを含有するのが好ましい。一方、Nb含有量が高すぎれば、多量の炭窒化物が生成し、母材の靱性が低下する。さらに、上記のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料をフラックスを利用する溶接に使用する場合、母材の溶融量が大きくなると、溶接金属中のNb含有量が高くなり、スラグの剥離性が低下する。したがって母材の好ましいNb含有量は0.05〜0.50%である。Nb含有量のさらに好ましい下限は0.10%であり、さらに好ましい上限は0.45%である。
Ti:0.02〜0.20%
チタン(Ti)もNbと同様に、微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度を高める。上述のとおり、母材では、高温使用中の応力緩和割れ感受性が溶接金属よりも低いため、高温強化のためにTiを含有するのが好ましい。一方、Ti含有量が高すぎれば、多量の炭窒化物が生成し、母材の靱性が低下する。さらに、上記のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料をフラックスを利用する溶接に使用する場合、母材の溶融量が大きくなると、溶接金属中のTi含有量が高くなり、スラグの剥離性が低下する。したがって、母材の好ましいTi含有量は0.02〜0.20%である。Ti含有量のさらに好ましい下限は0.05%である。Ti含有量のさらに好ましい上限は0.18%であり、さらに好ましくは0.16%である。
N:0.02%以下
窒素(N)はオーステナイト相を安定化するのに有効である。Nはさらに、マトリクスに固溶して引張強度を高める。Nが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。しかしながら、Nは熱間加工性を低下する。したがって、母材の好ましいN含有量は0.02%以下である。N含有量のさらに好ましい上限は0.01%である。
B:0.004%以下
ボロン(B)は高温使用中に粒界に偏析して粒界を強化する。Bはさらに、粒界炭化物を微細分散させ、クリープ強度を高める。このため、母材はBを含有するのが好ましい。Bが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。しかしながら、B含有量が高すぎれば、溶接熱影響部(HAZ)の液化割れ感受性が高まる。さらに、上記のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料をフラックスを利用する溶接に使用する場合、母材の溶融量が大きくなると、多量のBが溶接金属へ流れ、Cr等と同様に窒化物を生成する。このため、スラグの剥離性が低下する。したがって、母材の好ましいB含有量は0.004%以下である。B含有量の好ましい下限は、0.0002%である。
Al:0.04%以下
アルミニウム(Al)は鋼を脱酸する。Al含有量が高すぎれば清浄性が低下して母材の加工性が低下する。しかしながら、母材では、溶接金属のように、溶接中に酸化物を生成してさらに清浄性が低下することはない。そのため、母材がAlを含有する場合、好ましいAl含有量は0.04%以下である。Al含有量のさらに好ましい上限は0.03%である。
以上の化学組成を有する母材は、700℃以上の高温域においても優れた延性及びクリープ強度を有する。
表1に示す化学組成を有する材料を溶解してインゴットを製造した。
Figure 2014140884
インゴットを熱間鍛造、熱間圧延及び機械加工して、オーステナイト系耐熱鋼からなる母材を製造した。母材は板材であり、板厚が12mm、幅が50mm、長さが100mmであった。
さらに、表2に示す化学組成を有する鋼種番号A〜Fの材料を溶解してインゴットを製造した。
Figure 2014140884
各鋼種A〜Jのインゴットを熱間鍛造、熱間圧延及び機械加工して、溶接ワイヤを製造した。各溶接ワイヤの直径は1.6mmであった。鋼種番号Aのインゴットでは、直径1.6mmの溶接ワイヤの他に、直径3.2mmの溶接ワイヤ(芯線)も製造した。そして、直径3.2mmの溶接ワイヤ(芯線)を所定の長さで切断し、ライム系の被覆剤を塗布して被覆アーク溶接棒を製造した。
上記母材の長手方向に、角度30°、ルート厚さ1mmのV開先を加工した。その後、JIS G3160(2008)に規定のSM400Bに相当する化学組成の市販の鋼板(厚さ25mm、幅200mm、長さ200mm)上に、被覆アーク溶接棒としてJIS Z3224(1999)に規定の「DNiCrFe−3」を用いて、母材の四周を拘束溶接した。
[サブマージアーク溶接試験体]
鋼種番号A〜Jの溶接材料と、市販のNi基合金用サブマージアーク溶接フラックスであって、JIS Z3352(2010)に規定の「SAZ2」とを用いて、入熱10kJ/cmでサブマージアーク溶接を実施し、溶接材料を開先内に溶接した。以上の製造方法により、表3に示す試験番号1,4〜12の試験体を製造した。
Figure 2014140884
[被覆アーク溶接試験体]
鋼種番号Aの溶接材料で製造された被覆アーク溶接棒を用いて、入熱20kJ/cmで被覆アーク溶接を実施し、溶接材料を開先内に溶接した。以上の製造方法により、表3に示す試験番号2の試験体を製造した。
[スラグ剥離性評価試験]
製造された試験番号1,2,4〜12の試験体において、溶接後、試験体に対して裏面側からハンマにて衝撃を与えた。その後、溶接ビード表面のスラグの残存長さを調査した。スラグの残存長さが、溶接ビード全体の5%以下である場合、スラグ剥離性に優れると判断した。
[耐高温割れ性及び耐応力緩和割れ性評価試験]
上記試験番号1,4〜12において、サブマージアーク溶接により、入熱10〜12kJ/cmで多層溶接を実施して、各試験番号ごとに2つの溶接継手を製造した。
同様に、試験番号2において、被覆アーク溶接により、入熱20〜24kJ/cmで多層溶接を実施して、2つの溶接継手を製造した。
さらに、鋼種番号Aの溶接材料を用いてティグ溶接により入熱10〜12kJ/cmで多層溶接を行い、表3に示す試験番号3の2つの溶接継手を製造した。
各試験番号の2つの溶接継手のうち、一方は溶接ままとし、他方は700℃で500時間の時効熱処理を実施した。以降の説明では、溶接ままの溶接継手を「溶接まま材」といい、時効熱処理を実施した溶接継手を「熱処理材」という。
溶接まま材において高温割れの有無を観察し、熱処理材において応力緩和割れの有無を調査した。具体的には、各試験番号において、各溶接まま材及び各熱処理材の5ヶ所から試料を採取した。試料の横断面を鏡面研磨した後、腐食した。腐食した横断面を光学顕微鏡で検鏡し、溶接金属での割れの有無を調査した。溶接まま材において5ヶ所すべてで割れを確認できなかった場合、優れた高温割れ性を有すると評価した。さらに、熱処理材において5ヶ所すべてで割れが確認できなかった場合、優れた耐応力緩和割れ性を有すると評価した。なお、溶接まま材で高温割れが発生した場合、時効熱処理は実施しなかった。
[クリープ強度評価試験]
耐高温割れ性及び耐応力緩和割れ性評価試験の結果、高温割れ又は応力緩和割れが確認されなかった試験番号の溶接まま材から、溶接金属が平行部の中央となるように丸棒クリープ破断試験片を採取した。そして、母材の目標破断時間が約1000時間となる700℃、147MPaの試験条件でクリープ破断試験を実施した。試験の結果、破断位置に関わらず、破断時間が母材の目標破断時間である1000時間以上となった場合、優れたクリープ強度を有すると評価した。一方、破断時間が1000時間未満となった場合、クリープ強度は低いと評価した。
[試験結果]
表3に試験結果を示す。表3中の「スラグ剥離性結果」欄の「○」印は、スラグ剥離性評価試験において、スラグ残存長さが、溶接ビードの全長に対して5%以下であったことを示し、「×」印は、スラグ残存長さが、溶接ビードの全長に対して5%を超えたことを示す。「−」印は、対象となる試験番号3がティグ溶接を用いたため、スラグ剥離性評価試験が実施されなかったことを示す。
「割れ観察結果」欄の「○」印は、5つの試料全てで割れが確認されなかったことを示し、「×」印は、5つの試料の少なくとも1つで割れが確認されたことを示す。
「クリープ破断試験結果」欄の「○」印は、溶接金属ではなく母材が破断したことを示し、「×」印は、母材ではなく溶接金属が破断したことを示す。「−」印は、対象となる試験番号11及び12の溶接継手において、耐高温割れ性及び耐応力緩和割れ性評価試験で割れが発生しているため、クリープ破断試験を実施しなかったことを示す。
表3を参照して、試験番号1〜5の溶接材料は、適切な化学組成を有し、かつ、F1値が式(1)を満たした。そのため、これらの試験番号の溶接金属では、高温割れ(溶接まま材)が観察されず、優れた耐高温割れ性を示した。さらに、熱処理材でも割れが観察されず、優れた耐応力緩和割れ性を示した。
さらに、試験番号1,2,4及び5の溶接材料でサブマージアーク溶接又は被覆アーク溶接を実施した結果、スラグ残存長さはいずれも溶接ビードの全長の5%以下であり、これらの試験番号の溶接材料を用いれば、優れたスラグ剥離性が得られた。
さらに、試験番号1〜5の溶接材料を溶接することで製造される溶接金属はいずれも、優れたクリープ強度を有した。
一方、試験番号6で用いた鋼種Dの溶接材料では、N含有量が高すぎた。そのため、フラックスを利用したサブマージアーク溶接後のスラグ残存長さが溶接ビード全長の5%を超え、スラグ剥離性が低かった。
試験番号7で用いた鋼種Eの溶接材料では、Cr含有量が高すぎた。そのため、サブマージアーク溶接後のスラグ残存長さが溶接ビード全長の5%を超え、スラグ剥離性が低かった。
試験番号8で用いた鋼種Fの溶接材料では、Cr含有量及びN含有量が高すぎた。そのため、サブマージアーク溶接後のスラグ残存長さが溶接ビード全長の5%を超え、スラグ剥離性が低かった。
試験番号9で用いた鋼種Gの溶接材料では、F1値が式(1)を満たさなかった。そのため、サブマージアーク溶接後において、溶接ビードの止端部にスラグが残存し、その長さが溶接ビード全長の5%を超えた。
試験番号10で用いた鋼種Hの溶接材料では、Nbを含有しなかった。そのため、クリープ破断試験において溶接金属が破断し、溶接金属のクリープ強度が低かった。
試験番号11で用いた鋼種Iの溶接材料では、C含有量が低すぎた。そのため、溶接中に割れが発生し、溶接まま材の溶接金属で割れ(高温割れ)が確認された。
試験番号12で用いた鋼種Jの溶接材料では、Nb含有量が高すぎた。そのため、サブマージアーク溶接後のスラグ残存長さが溶接ビード全長の5%を超え、スラグ剥離性が低かった。さらに、時効熱処材の溶接金属で応力緩和割れが確認された。時効熱処理中に過剰なNbを含有する相が析出したため応力緩和割れが発生したと考えられる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.05%よりも高く0.18%以下、
    Si:0.5%以下、
    Mn:1.5%以下、
    P:0.008%以下、
    Ni:40〜45%未満、
    Cr:20〜25%未満、
    W:8.0%よりも高く9.1%以下、
    Ti:0.01〜0.18%未満、
    Nb:0.01〜0.5%、
    N:0.0005〜0.03%、
    Al:0.01%未満、
    O:0.02%以下、及び、
    S:0.005%以下を含有し、
    残部はFe及び不純物からなり、
    式(1)を満たす化学組成を有する、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
    0.003≦[S]+[有効O] (1)
    ここで、[有効O]は次の式(2)で定義される。
    [有効O]=[O]−(8/9)×[Al] (2)
    式(1)及び式(2)中の[S]、[O]、[Al]には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
  2. 請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料からなるサブマージアーク溶接用の溶接ワイヤ。
  3. 請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料からなる芯線を備える被覆アーク溶接棒。
  4. 請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて製造される溶接金属。
  5. 請求項4に記載の溶接金属と、オーステナイト系耐熱鋼からなる母材とを備える溶接継手。
  6. 請求項5に記載の溶接継手であって、
    前記母材は、質量%で、
    W:6.0〜9.1%、
    Ni:40〜48%、及び、
    Cr:20〜25%未満を含有する、溶接継手。
  7. 請求項6に記載の溶接継手であって、
    前記母材はさらに、質量%で、
    C:0.04〜0.12%、
    Si:0.5%以下、
    Mn:1.5%以下、
    P:0.03%以下、
    S:0.01%以下、
    Nb:0.05〜0.50%
    Ti:0.02〜0.20%、
    N:0.02%以下、
    B:0.004%以下、及び、
    Al:0.04%以下を含有し、
    残部はFe及び不純物からなる、溶接継手。
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