JP2014140884A - オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料ならびにそれを用いて製造される溶接金属及び溶接継手 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本実施形態によるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料は、質量%で、C:0.05%よりも高く0.18%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P:0.008%以下、Ni:40〜45%未満、Cr:20〜25%未満、W:8.0%よりも高く9.1%以下、Ti:0.01〜0.18%未満、Nb:0.01〜0.5%、N:0.0005〜0.03%、Al:0.01%未満、O:0.05%以下、及び、S:0.005%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有する。
0.003≦[S]+[有効O] (1)
[有効O]=[O]−(8/9)×[Al]
【選択図】なし
Description
0.003≦[S]+[有効O] (1)
ここで、[有効O]は次の式(2)で定義される。
[有効O]=[O]−(8/9)×[Al] (2)
式(1)及び式(2)中の[S]、[O]、[Al]には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
(B)溶接材料に含有される窒素(N)量が増加するほど、スラグの剥離性は低下する。
(C)スラグ剥離性は特に、溶接ビードの止端部で低い。
0.003≦[S]+[有効O] (1)
ここで、[有効O]は有効酸素量であり、次の式(2)で定義される。
[有効O]=[O]−(8/9)×[Al] (2)
式(1)及び式(2)中の[S]、[O]、[Al]には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態によるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料は、次の化学組成を有する。以下の説明において特に断りがない場合、「%」は「質量%」を意味する。
炭素(C)はオーステナイト形成元素であり、溶接金属として高温使用時のオーステナイト組織の安定性を高める。Cはさらに、溶接時の耐高温割れ性を高める。具体的には、Cは、溶接時の凝固過程においてCr及びNbと結合して共晶炭化物を形成する。これにより、液相の消失を早め、最終凝固部の組織を(Cr、Nb、M)23C6とオーステナイトとのラメラ状組織にする。その結果、液相の残存形態が面状から点状に変化するとともに、特定面での応力集中が抑制され、凝固割れが抑制される。Cはさらに、不純物の偏析サイトとなる最終凝固界面積を増大するため、溶接中の延性低下割れが抑制され、溶接金属として高温使用中の応力緩和割れ感受性が低減する。後述するCr含有量の範囲において、C含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、凝固中において炭化物とならない過剰なCが高温での使用中に炭化物として微細析出し、かえって応力緩和割れ感受性を高める。したがって、C含有量は0.05%よりも高く0.18%以下である。C含有量の好ましい下限は0.06%であり、さらに好ましくは0.08%である。C含有量の好ましい上限は0.15%であり、さらに好ましくは0.12%である。
シリコン(Si)は鋼を脱酸する。しかしながらSiは溶接金属の凝固時に柱状晶粒界に偏析し、液相の融点を下げて凝固割れ感受性を高める。したがって、Si含有量は0.5%以下である。Si含有量が過剰に低すぎれば、脱酸が有効に得られにくく鋼の清浄性が低下し、製造コストが高くなる場合がある。したがって、Si含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Si含有量の好ましい上限は0.3%である。
マンガン(Mn)は、Siと同様に鋼を脱酸する。Mnはさらに、溶接金属中のNの活量を下げ、溶接中のアーク雰囲気中からのNの飛散を抑制する。これにより、鋼の強度が確保される。しかしながら、Mn含有量が高すぎれば、鋼が脆化する。したがって、Mn含有量は1.5%以下である。Mn含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Mn含有量の好ましい上限は1.2%である。
燐(P)は不純物である。Pは、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下し、凝固割れ感受性を高める。Pはさらに、溶接金属として高温で使用中に粒界脆化を引き起こして耐応力緩和割れ性を低下する。したがって、P含有量は0.008%以下である。好ましいP含有量は0.006%以下である。
ニッケル(Ni)は、オーステナイト組織を得るために有効であり、溶接金属として高温で長時間使用時の組織を安定化し、クリープ強度を高める。Ni含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Niは高価である。さらに、溶接材料をサブマージアーク溶接や被覆アーク溶接等のフラックスを利用する溶接に使用する場合、Ni含有量が高すぎれば、溶接金属へのN溶解量を減少させ、溶接金属の凝固、冷却過程において、Crを主体とする窒化物の生成を促す。これにより、間接的にスラグ剥離性が低下する。したがって、Ni含有量は40〜45%未満である。Ni含有量の好ましい下限は40.5%であり、さらに好ましくは41%である。Ni含有量の好ましい上限は44.5%であり、さらに好ましくは44%である。
クロム(Cr)は、高温での耐酸化性及び耐食性を高める。Crはさらに、凝固過程でCと結合して共晶炭化物を形成し、溶接中の凝固割れ及び延性低下割れを抑制する。Crはさらに、溶接金属として高温使用中での応力緩和割れ感受性を低下する。Cr含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、溶接材料をサブマージアーク溶接や被覆アーク溶接等のフラックスを利用する溶接に使用する場合の溶接金属の凝固、冷却の過程において、溶接金属中のNと反応し、溶接金属とスラグとの界面に窒化物を形成する。この窒化物によりスラグ剥離性が低下する。したがって、Cr含有量は20〜25%未満である。Cr含有量の好ましい下限は20.5%であり、さらに好ましくは21%である。Cr含有量の好ましい上限は24.5%であり、さらに好ましくは24%である。
タングステン(W)は、マトリクスに固溶して、700℃を超える高温でのクリープ強度を高める。Wはさらに、Sの粒界偏析エネルギを低下し、溶接後の熱処理及び高温使用中でのSの粒界への濃化を軽減する。これにより、粒界が弱くなるのが抑制され、間接的に応力緩和割れが抑制される。W含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、W含有量が高すぎれば、その効果は飽和する。W含有量が高すぎればさらに、溶接材料をフラックスを利用する溶接に使用する場合の溶接金属の凝固、冷却過程において、Crを主体とする窒化物の生成の駆動力が高まり、スラグ剥離性が低下する。したがって、W含有量は8.0%よりも高く、9.1%以下である。W含有量の好ましい下限は、8.1%であり、さらに好ましくは8.2%である。W含有量の好ましい上限は9.0%であり、さらに好ましくは8.8%である。
チタン(Ti)は、溶接金属として高温使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、クリープ強度を高める。Ti含有量が低すぎれば、上記効果は得られない。一方、Ti含有量が高すぎれば、炭窒化物が多量に析出し、粒内の変形抵抗を高める。その結果、高温使用中の応力緩和割れ感受性を高める。さらに、フラックスを利用する溶接に溶接材料を使用した場合、Ti含有量が高すぎれば、溶接金属の凝固、冷却過程においてCrとともに窒化物を形成し、スラグ剥離性を低下する。したがって、Ti含有量は0.01〜0.18%未満である。Ti含有量の好ましい下限は0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。Ti含有量の好ましい上限は0.16%であり、さらに好ましくは0.14%である。
ニオブ(Nb)は、Crとともに凝固過程でCと結合して共晶炭化物を形成する。これにより、溶接中の凝固割れ及び延性低下割れ感受性を低減する。Nbはさらに、引張強度を高める。したがって本実施形態の溶接材料においては、Nbの含有により、Nの低減による引張強度の低下を補充できる。Nbはさらに、高温使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、クリープ強度を高める。Nb含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Nb含有量が高すぎれば、炭窒化物が過剰に析出し、粒内の変形抵抗が高まる。そのため、高温使用中の応力緩和割れ感受性が高まる。フラックスを利用する溶接に溶接材料を使用する場合にNb含有量が高すぎればさらに、溶接金属の凝固、冷却過程において、NbがCrとともに窒化物を形成し、スラグ剥離性を低下する。したがって、Nb含有量は0.01〜0.5%である。Nb含有量の好ましい下限は0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。Nb含有量の好ましい上限は0.45%であり、さらに好ましくは0.40%である。
窒素(N)は、フラックスを利用する溶接に溶接材料を使用する場合の溶接金属の凝固、冷却過程において、溶接金属及びフラックス中に含まれるCr等と反応し、溶接金属とスラグとの界面において窒化物を形成する。これにより、スラグ剥離性が低下する。一方、Nはオーステナイト生成元素であり、高温使用時のオーステナイト組織を安定化する。Nはさらに、マトリクスに固溶し、引張強度を高める。したがって、N含有量は0.0005〜0.03%である。N含有量の好ましい下限は0.0008であり、さらに好ましくは0.001%である。N含有量の好ましい上限は0.025%であり、さらに好ましくは0.020%である。
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。しかしながら、Al含有量が高すぎれば、鋼の清浄性が低下し、溶接材料の加工性及び溶接金属の延性が低下する。したがって、Al含有量は0.01%未満である。好ましいAl含有量は0.008%以下であり、さらに好ましくは0.006%である。Al含有量の下限は不純物レベルでよい。
酸素(O)含有量が高すぎれば、溶接材料の加工性及び溶接金属の延性が低下する。したがって、O含有量は0.02%以下である。好ましいO含有量は0.015%以下である。一方、溶接金属中に溶解するOは、表面活性元素として作用し、界面エネルギを低下する。これにより、溶接ビードの止端部のフランク角が小さくなりスラグ剥離性が高まる。したがって、O含有量は、後述の式(1)を満たす。
硫黄(S)含有量が高すぎれば、Pと同様に、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下し、凝固割れ感受性を高める。さらに、過剰なSは、高温使用中に結晶粒界に偏析、濃化して応力緩和割れ感受性を高める。したがって、S含有量は0.005%以下である。好ましいS含有量は0.004%以下である。一方、溶接金属中に溶解するSは、Oと同様に、表面活性元素として作用し、スラグ剥離性を高める。したがって、S含有量は後述の式(1)を満たす。
上記化学組成はさらに、式(1)を満たす。
0.003≦[S]+[有効O] (1)
ここで、[有効O]は有効酸素量(%)を意味し、次の式(2)で定義される。
[有効O]=[O]−(8/9)×[Al] (2)
式(1)及び式(2)中の[S]、[O]、[Al]には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態の溶接材料は、周知の製造方法により製造される。溶接材料はたとえば、溶加棒、サブマージアーク溶接用の溶接ワイヤ、被覆アーク溶接用の溶接棒の芯線等に加工される。
本実施形態によるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて、ティグ溶接、サブマージアーク溶接、被覆アーク溶接等の溶接により溶接金属が製造される。本実施形態による溶接材料により製造された溶接金属は、溶接中の高温割れ性に優れ、さらに、高温で長時間使用中の耐応力緩和割れ性及びクリープ強度に優れる。
本実施形態のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて、オーステナイト系耐熱鋼を母材として溶接すれば、上記溶接金属と、オーステナイト系耐熱鋼の母材とを備えた溶接継手が製造される。この溶接継手は優れたクリープ強度を有する。
好ましくは、オーステナイト系耐熱鋼からなる母材の化学組成は、次の元素を含有する。
タングステン(W)は、溶接材料におけるWと同様に、マトリクスに固溶して700℃を超える高温でのクリープ強度を高める。母材は、凝固ままで使用される溶接金属と異なり、熱処理により均質化される。そのため、W含有量は6.0%以上であれば、上記効果が有効に得られる。一方、Wは高価であるため、W含有量が高すぎれば製造コストが高くなる。さらに、上記のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を、フラックスを利用する溶接に使用する場合、母材の溶融量が大きくなると、溶接金属中のW含有量が高くなる。この場合、スラグの剥離性が低下する。したがって、母材中の好ましいW含有量は6.0〜9.1%である。W含有量のさらに好ましい下限は6.5%であり、さらに好ましくは7.0%である。W含有量のさらに好ましい上限は9.0%であり、さらに好ましくは8.9%である。
ニッケル(Ni)は、溶接金属におけるNiと同様に、オーステナイト組織を得るために有効である。Niはさらに、高温での長時間使用時の組織安定性を確保し、クリープ強度を高める。Ni含有量が40%以上であれば、上記効果が有効に得られる。一方、Niは高価であり、製造コストが高くなる。さらに、上記のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料をフラックスを利用する溶接に使用する場合、母材の溶融量が大きくなると、溶接金属中のNi含有量が高くなる。この場合、間接的にスラグの剥離性が低下する。したがって、母材の好ましいNi含有量は、40〜48%である。Ni含有量のさらに好ましい下限は40.5%であり、さらに好ましくは42%である。Ni含有量のさらに好ましい上限は47.5%であり、さらに好ましくは47%である。
クロム(Cr)は、溶接金属におけるCrと同様に、母材の高温での耐酸化性及び耐食性を高める。Cr含有量が20%以上であれば、上記効果が有効に得られる。一方、Cr含有量が高すぎれば、高温での組織の安定性が低下し、クリープ強度が低下する。さらに、上記のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料をフラックスを利用する溶接に使用する場合、母材の溶融量が大きくなると、溶接金属中のCr含有量が高くなり、スラグの剥離性が低下する。したがって、母材の好ましいCr含有量は、20〜25%未満である。Cr含有量のさらに好ましい下限は20.5%であり、さらに好ましくは21%である。Cr含有量のさらに好ましい上限は24.5%であり、さらに好ましくは24%である。
炭素(C)は、オーステナイト形成元素であり、高温使用時の母材のオーステナイト組織の安定性を高める。母材は、凝固ままで使用される溶接金属と異なり、熱処理により均質化される。さらに、溶接割れ防止に対する効果を必要としない。そのため、C含有量が0.04%以上であれば、上記効果が有効に得られる。一方、C含有量が高すぎれば、高温使用中に粗大な炭化物が生成され、クリープ強度が低下する。したがって、母材の好ましいC含有量は、0.04〜0.12%である。C含有量のさらに好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましい上限は0.10%である。
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Siが少しでも含有されれば、この効果が得られる。Si含有量が0.01%以上であれば、上記効果がより有効に得られる。一方、Si含有量が高すぎれば、鋼の靱性が低下する。したがって、母材の好ましいSi含有量は0.5%以下である。Si含有量のさらに好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましい上限は0.4%である。
マンガン(Mn)はSiと同様に、鋼を脱酸する。Mnが少しでも含有されれば、この効果が得られる。Mn含有量が0.01%以上であれば、上記効果がより有効に得られる。一方、Mn含有量が高すぎれば、鋼が脆化する。したがって、母材の好ましいMn含有量は1.5%以下である。Mn含有量のさらに好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましい上限は1.2%である。
燐(P)は不純物である。P含有量が高すぎれば、クリープ延性が低下する。母材は、溶接金属の場合とは異なり、溶接割れ抑制に関する対策を必要しない。また、P含有量の極度の低減は、製鋼コストを高くする。そのため、母材の好ましいP含有量は0.03%以下である。さらに好ましいP含有量は、0.02%以下である。
硫黄(S)は不純物である。S含有量が高すぎれば、クリープ延性が低下する。上述のとおり、母材は溶接割れ抑制に関する対策を必要とせず、さらに、S含有量の極度の低減は、製鋼コストを高くする。そのため、母材の好ましいS含有量は0.01%以下である。さらに好ましいS含有量は0.008%以下である。
ニオブ(Nb)は、微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度を高める。母材では、高温使用中の応力緩和割れ感受性が溶接金属よりも低いため、高温強化のためにNbを含有するのが好ましい。一方、Nb含有量が高すぎれば、多量の炭窒化物が生成し、母材の靱性が低下する。さらに、上記のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料をフラックスを利用する溶接に使用する場合、母材の溶融量が大きくなると、溶接金属中のNb含有量が高くなり、スラグの剥離性が低下する。したがって母材の好ましいNb含有量は0.05〜0.50%である。Nb含有量のさらに好ましい下限は0.10%であり、さらに好ましい上限は0.45%である。
チタン(Ti)もNbと同様に、微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度を高める。上述のとおり、母材では、高温使用中の応力緩和割れ感受性が溶接金属よりも低いため、高温強化のためにTiを含有するのが好ましい。一方、Ti含有量が高すぎれば、多量の炭窒化物が生成し、母材の靱性が低下する。さらに、上記のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料をフラックスを利用する溶接に使用する場合、母材の溶融量が大きくなると、溶接金属中のTi含有量が高くなり、スラグの剥離性が低下する。したがって、母材の好ましいTi含有量は0.02〜0.20%である。Ti含有量のさらに好ましい下限は0.05%である。Ti含有量のさらに好ましい上限は0.18%であり、さらに好ましくは0.16%である。
窒素(N)はオーステナイト相を安定化するのに有効である。Nはさらに、マトリクスに固溶して引張強度を高める。Nが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。しかしながら、Nは熱間加工性を低下する。したがって、母材の好ましいN含有量は0.02%以下である。N含有量のさらに好ましい上限は0.01%である。
ボロン(B)は高温使用中に粒界に偏析して粒界を強化する。Bはさらに、粒界炭化物を微細分散させ、クリープ強度を高める。このため、母材はBを含有するのが好ましい。Bが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。しかしながら、B含有量が高すぎれば、溶接熱影響部(HAZ)の液化割れ感受性が高まる。さらに、上記のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料をフラックスを利用する溶接に使用する場合、母材の溶融量が大きくなると、多量のBが溶接金属へ流れ、Cr等と同様に窒化物を生成する。このため、スラグの剥離性が低下する。したがって、母材の好ましいB含有量は0.004%以下である。B含有量の好ましい下限は、0.0002%である。
アルミニウム(Al)は鋼を脱酸する。Al含有量が高すぎれば清浄性が低下して母材の加工性が低下する。しかしながら、母材では、溶接金属のように、溶接中に酸化物を生成してさらに清浄性が低下することはない。そのため、母材がAlを含有する場合、好ましいAl含有量は0.04%以下である。Al含有量のさらに好ましい上限は0.03%である。
鋼種番号A〜Jの溶接材料と、市販のNi基合金用サブマージアーク溶接フラックスであって、JIS Z3352(2010)に規定の「SAZ2」とを用いて、入熱10kJ/cmでサブマージアーク溶接を実施し、溶接材料を開先内に溶接した。以上の製造方法により、表3に示す試験番号1,4〜12の試験体を製造した。
鋼種番号Aの溶接材料で製造された被覆アーク溶接棒を用いて、入熱20kJ/cmで被覆アーク溶接を実施し、溶接材料を開先内に溶接した。以上の製造方法により、表3に示す試験番号2の試験体を製造した。
製造された試験番号1,2,4〜12の試験体において、溶接後、試験体に対して裏面側からハンマにて衝撃を与えた。その後、溶接ビード表面のスラグの残存長さを調査した。スラグの残存長さが、溶接ビード全体の5%以下である場合、スラグ剥離性に優れると判断した。
上記試験番号1,4〜12において、サブマージアーク溶接により、入熱10〜12kJ/cmで多層溶接を実施して、各試験番号ごとに2つの溶接継手を製造した。
耐高温割れ性及び耐応力緩和割れ性評価試験の結果、高温割れ又は応力緩和割れが確認されなかった試験番号の溶接まま材から、溶接金属が平行部の中央となるように丸棒クリープ破断試験片を採取した。そして、母材の目標破断時間が約1000時間となる700℃、147MPaの試験条件でクリープ破断試験を実施した。試験の結果、破断位置に関わらず、破断時間が母材の目標破断時間である1000時間以上となった場合、優れたクリープ強度を有すると評価した。一方、破断時間が1000時間未満となった場合、クリープ強度は低いと評価した。
表3に試験結果を示す。表3中の「スラグ剥離性結果」欄の「○」印は、スラグ剥離性評価試験において、スラグ残存長さが、溶接ビードの全長に対して5%以下であったことを示し、「×」印は、スラグ残存長さが、溶接ビードの全長に対して5%を超えたことを示す。「−」印は、対象となる試験番号3がティグ溶接を用いたため、スラグ剥離性評価試験が実施されなかったことを示す。
Claims (7)
- 質量%で、
C:0.05%よりも高く0.18%以下、
Si:0.5%以下、
Mn:1.5%以下、
P:0.008%以下、
Ni:40〜45%未満、
Cr:20〜25%未満、
W:8.0%よりも高く9.1%以下、
Ti:0.01〜0.18%未満、
Nb:0.01〜0.5%、
N:0.0005〜0.03%、
Al:0.01%未満、
O:0.02%以下、及び、
S:0.005%以下を含有し、
残部はFe及び不純物からなり、
式(1)を満たす化学組成を有する、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
0.003≦[S]+[有効O] (1)
ここで、[有効O]は次の式(2)で定義される。
[有効O]=[O]−(8/9)×[Al] (2)
式(1)及び式(2)中の[S]、[O]、[Al]には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。 - 請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料からなるサブマージアーク溶接用の溶接ワイヤ。
- 請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料からなる芯線を備える被覆アーク溶接棒。
- 請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて製造される溶接金属。
- 請求項4に記載の溶接金属と、オーステナイト系耐熱鋼からなる母材とを備える溶接継手。
- 請求項5に記載の溶接継手であって、
前記母材は、質量%で、
W:6.0〜9.1%、
Ni:40〜48%、及び、
Cr:20〜25%未満を含有する、溶接継手。 - 請求項6に記載の溶接継手であって、
前記母材はさらに、質量%で、
C:0.04〜0.12%、
Si:0.5%以下、
Mn:1.5%以下、
P:0.03%以下、
S:0.01%以下、
Nb:0.05〜0.50%
Ti:0.02〜0.20%、
N:0.02%以下、
B:0.004%以下、及び、
Al:0.04%以下を含有し、
残部はFe及び不純物からなる、溶接継手。
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