JP6241241B2 - オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料ならびにそれを用いてなる溶接金属および溶接継手 - Google Patents

オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料ならびにそれを用いてなる溶接金属および溶接継手 Download PDF

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本発明は、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料ならびにそれを用いてなる溶接金属および溶接継手に関する。詳しくは、発電用ボイラ等、高温で使用される機器に用いるオーステナイト系耐熱鋼を溶接するのに好適な溶接材料ならびにそれを使用して得られる溶接金属および溶接継手に関する。
近年、環境負荷軽減の観点から発電用ボイラ等では運転条件の高温・高圧化が世界的規模で進められており、その過熱器管や再熱器管に使用される材料には、より優れた高温強度や耐食性を有することが求められている。
このような要求を満たす材料として、多量の窒素を含有させた種々のオーステナイト系耐熱鋼が開示されている。
例えば、特許文献1には、NおよびNbをそれぞれ、0.05〜0.35%および0.05〜1.5%含む高温強度に優れるオーステナイト系耐熱鋼が、特許文献2には、N、CuおよびNbをそれぞれ、0.05〜0.3%、2〜6%および0.1〜0.8%含み、かつNb(%)/Cu(%)が0.05〜0.2で、溶体化処理後の未固溶Nb量が0.04×Cu(%)〜0.085×Cu(%)の範囲内にある高温強度と延性に優れたオーステナイト系耐熱鋼が、開示されている。
また、特許文献3には、Nを0.05〜0.3%、Cuを2〜6%、Y、La、CeおよびNdのうちの1種または2種以上を合計で0.01〜0.2%含み、かつMn、Mg、Ca、Y、La、CeおよびNdならびにAl、CuおよびSの関係式で表される数値が特定の範囲内にある高温強度および熱間加工性に優れたオーステナイト系耐熱鋼が開示されている。
これらの高窒素含有オーステナイト系耐熱鋼を構造物とする場合、溶接により組み立てるのが一般的である。その際、母材をそのまま溶接材料として使用する場合がある。一方では、AWS A5.14−2005 ERNiCr−3、ERNiCrMo−3等の既存の高Ni合金用溶接材料を使用して溶接することもある。
しかしながら、母材が溶製後、圧延および熱処理による組織の調整を受けて高温強度の確保がなされるのに対し、オーステナイト系耐熱鋼溶接金属は、ほとんどの場合、凝固ままの組織で使用される。そのため、母材をそのまま溶接材料として使用すると、母材と同等のクリープ強度等の機械的特性を得ることが困難な場合がある。また、高Ni合金用の溶接材料はクリープ強度には優れるものの、高価であることから経済性の観点から好ましくないことがあり、被溶接材料と大きく成分が異なる場合には、十分な耐溶接高温割れ性、具体的には耐凝固割れ性が得られないこともある。
そのため、特許文献4に、Nb、CuおよびNをそれぞれ0.1〜1.3%、2〜5%および0.07〜0.35%含有するとともに、PとSの含有量を規制し、さらにMoを0.3〜3%含有する、高温強度と耐凝固割れ性に優れる高窒素含有オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料が提案されている。
特許文献5には、NbおよびNをそれぞれ、0.01〜0.7%および0.15〜0.35%含有するとともに、PとSの含有量を規制し、さらにMgを0.01〜0.02%含有する、高温強度と耐凝固割れ性を両立させた高窒素含有オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料が提案されている。
特許文献6には、La+Ceを0.01〜0.1%、Nを0.1〜0.3%含有する、高温強度と耐高温酸化性に優れる窒素含有オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料が、特許文献7には、Cuを1〜4%、Wを1〜3%含むとともに、Nを0.2〜0.4%含有する、高温強度に優れる高窒素含有オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料が、それぞれ開示されている。
また、特許文献8には、Moを2.0〜3.0%、Nを0.06〜0.18%含むとともにδフェライト量を規制した、高温強度に優れる窒素含有オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料が、さらに、特許文献9には、Nb、WおよびNをそれぞれ0.15〜1.5%、0.5〜3%および0.1〜0.35%含む、高温強度に優れる高窒素含有オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料が、それぞれ開示されている。
ところで、これらの溶接材料を用いてボイラなどの大型溶接構造物を組み立てる場合、一般にはティグ溶接に代表されるガスシールドアーク溶接が用いられる。
上述した特許文献4〜9に提案されているオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて、ガスシールドアーク溶接により構造物を組み立てた場合、確かに特定の溶接条件下では、優れた耐溶接高温割れ性および高温強度が得られる。しかしながら、異なる溶接条件で施工した場合、得られた溶接部の高温強度にばらつきが生じ、特に、高い入熱で溶接した際には必要強度を下回ることがあり、改善すべき余地がある。
特開昭62−133048号公報 特開2000−256803号公報 特開2000−328198号公報 特開平6−142980号公報 特開平5−69187号公報 特開平8−47794号公報 特開平8−71784号公報 特開平3−169497号公報 特開平11−277292号公報
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、ガスシールドアーク溶接を行う場合、溶接金属の優れた高温強度が安定して得られるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料の提供と、それを用いて得られる高温強度に優れた溶接金属の提供を目的とする。さらに、この溶接材料を用いてなる溶接金属と高温における優れたクリープ強度を有する母材とからなる溶接継手を提供することも本発明の目的である。
本発明者らは、前記した課題を解決するために詳細な調査を行った。その結果、以下に述べる事項が確認できた。
多量の窒素を含有する溶接材料を用いてガスシールドアーク溶接する場合、溶接中の溶融池から窒素が飛散する結果、得られる溶接金属の窒素量は溶接材料中の窒素量に比して少なくなる。そして、溶接時の入熱が高くなるほど溶融池からの窒素の飛散が顕著となり、溶接金属の高温強度の低下が顕著となる。
そこで次に、本発明者らは、上述の問題を解決するべく、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料の化学組成の適正化について種々検討を加えた。
その結果、ガスシールドアーク溶接するに際し、下記の(a)を満たすオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いることによって、優れた高温強度を有する溶接金属が安定して得られることが明らかとなった。
(a)個々の元素の含有量、特に、C、Si、Mn、P、S、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、N、AlおよびOの含有量を特定の範囲に制御する(具体的には、質量%で、C:0.06〜0.15%、Si:0.05〜0.45%、Mn:1.9〜4%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cu:2〜4%、Ni:14〜18%、Cr:16〜20%、Mo:0.5〜1.5%、Nb:0.3〜0.8%、N:0.05〜0.27%、Al:0.008%未満、O:0.02%以下、残部:Feおよび不純物であるものとする)とともに、Mn含有量が下記の(1)式を満たす、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
0.08×Q+0.6≦Mn・・・(1)
ただし、(1)式中のQは、溶接時に設定される入熱(kJ/cm)であり、Mnは、上記溶接材料におけるMn含有量(質量%)を表す。
なお、上記(a)、特にMn含有量が(1)式を満たすことによって、優れた高温強度を有する溶接金属が安定して得られる理由は、次のとおりである。
ガスシールドアーク溶接中の溶融池からは窒素が飛散し、溶接時に設定される入熱(以下、単に「溶接入熱」ということがある。)が高い場合、溶融池の温度が高くなるため、窒素の飛散が顕著となる。一方、溶接材料中のMnは、溶融池への窒素の溶解量を増やすので、窒素の飛散防止に間接的に寄与することになる。そして、Mn含有量が上記の(1)式を満たせば、溶接金属において十分な窒素量を確保でき、その結果、溶接金属の高温強度の低下が抑制される。
そして、ガスシールドアーク溶接するに際し、上記(a)を満たすオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いることによって、高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材からなる溶接継手を得ることができる。
上記のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて溶接継手を得る際に、質量%で、Ni:8〜12%、Cr:16〜20%、N:0.05〜0.2%を含む高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼を母材として用いると、母材においても優れたクリープ強度を確保できることとなるので好ましい。母材として用いる高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼は、上述の溶接材料と同じ化学組成を有するオーステナイト系耐熱鋼であってもよいし、異なってもよい。
なお、上記の母材としては、質量%で、C:0.04〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Cu:2〜4%、Ni:8〜12%、Cr:16〜20%、Mo:0.8%以下、Nb:0.3〜0.8%、N:0.05〜0.2%、B:0.0005〜0.01%およびAl:0.03%以下と、残部がFeおよび不純物とからなる、高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼を用いることがさらに好ましい。
残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、溶接材料や耐熱鋼を工業的に製造する際に、鉱石あるいはスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入するもの、が例示される。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記に示すオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料、溶接金属および溶接継手にある。
(1)オーステナイト系耐熱鋼をガスシールドアーク溶接するのに用いる溶接材料であって、化学組成が、質量%で、
C:0.06〜0.15%、
Si:0.05〜0.45%、
Mn:1.9〜4%、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Cu:2〜4%、
Ni:14〜18%、
Cr:16〜20%、
Mo:0.5〜1.5%、
Nb:0.3〜0.8%、
N:0.05〜0.27%、
Al:0.008%未満、
O:0.02%以下、
残部:Feおよび不純物
であり、Mn含有量が下記の(1)式を満たす、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
0.08×Q+0.6≦Mn・・・(1)
ただし、(1)式中のQは、溶接時に設定される入熱(kJ/cm)であり、Mnは、上記溶接材料におけるMn含有量(質量%)を表す。
(2)上記(1)に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料のFeの一部に代えて、下記の[1]〜[3]から選択される1種以上の元素を含有する、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
[1]:V:0.5%以下、Ti:0.5%以下、
[2]:Co:2%以下、B:0.02%以下、
[3]:Ca:0.05%以下、Mg:0.05%以下、REM:0.2%以下。
(3)上記(1)または(2)に記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いてガスシールドアーク溶接して得られる、溶接金属。
(4)上記(3)に記載の溶接金属と高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材からなる、溶接継手。
(5)高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材が、質量%で、Ni:8〜12%、Cr:16〜20%およびN:0.05〜0.2%を含有する、上記(4)に記載の溶接継手。
(6)高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材の化学組成が、質量%で、
C:0.04〜0.12%、
Si:0.5%以下、
Mn:1.5%以下、
P:0.05%以下、
S:0.02%以下、
Cu:2〜4%、
Ni:8〜12%、
Cr:16〜20%、
Mo:0.8%以下、
Nb:0.3〜0.8%、
N:0.05〜0.2%、
B:0.0005〜0.01%、
Al:0.03%以下
残部:Feおよび不純物
である、上記(5)に記載の溶接継手。
本発明によれば、ガスシールドアーク溶接を行う場合に、溶接金属の優れた高温強度が安定して得られるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を提供することができる。また、それを用いて、高温強度に優れた溶接金属を提供することができる。さらに、この溶接材料を用いてなる溶接金属と高温における優れたクリープ強度を有する母材とからなる溶接継手を提供することができる。
本発明において、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料の化学組成を限定する理由は次のとおりである。なお、以下の説明において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
C:0.06〜0.15%
Cは、オーステナイト生成元素であり、高温使用時に溶接金属のオーステナイト組織の安定性を高めるとともに、微細な炭化物を生成し、クリープ強度の確保に寄与する。その効果を十分得るためには、Cは0.06%以上含有する必要がある。しかしながら、Cを0.15%を超えて含有する場合には、炭化物が粗大かつ多量に析出し、かえってクリープ強度の低下を招くとともに、延性および靱性の低下を生じる。そのため、Cの含有量は0.06〜0.15%とする。C含有量の望ましい下限は0.07%であり、望ましい上限は0.14%である。C含有量のさらに望ましい下限は0.08%であり、さらに望ましい上限は0.12%である。
Si:0.05〜0.45%
Siは、脱酸剤として含有されるが、過剰に含有する場合、溶接時の凝固割れ感受性を増大させる。そのため、Siの含有量は0.45%以下とする必要がある。しかしながら、Si含有量の過度の低減は、脱酸効果が十分に得られず、鋼の清浄度が大きくなって清浄性が低下するとともに、溶接材料の製造コストの増大を招く。そのため、Siの含有量は0.05〜0.45%とする。Si含有量の望ましい下限は0.07%であり、望ましい上限は0.35%である。Si含有量のさらに望ましい下限は0.1%であり、さらに望ましい上限は0.25%である。
Mn:1.9〜4%
Mnは、溶接金属中の窒素の活量を下げることによりアーク雰囲気中からの窒素の飛散を抑制して、溶接金属のクリープ強度の確保に寄与する。その効果を十分得るためには、Mnは少なくとも1.9%含有する必要がある。さらに、Mnの効果は溶接条件の影響を受けるため、安定して効果を得るためには、後述の溶接入熱との関係を満足する必要がある。しかしながら、Mnを過剰に含有する場合には脆化を招くため、Mnの含有量は4%以下とする必要がある。Mn含有量の望ましい下限は2.1%であり、望ましい上限は3.8%である。Mn含有量のさらに望ましい下限は2.3%であり、さらに望ましい上限は3.5%である。
P:0.02%以下
Pは、不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下させ、凝固割れ感受性を著しく増大させる。そのため、Pの含有量は0.02%以下とする必要がある。Pの含有量は0.015%以下とするのが望ましく、0.01%以下とするのがさらに望ましい。
S:0.01%以下
Sは、Pと同様に不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下させ、凝固割れ感受性を著しく増大させる。そのため、Sの含有量は0.01%以下とする必要がある。Sの含有量は0.008%以下とするのが望ましく、0.006%以下とするのがさらに望ましい。
Cu:2〜4%
Cuは、高温使用時に溶接金属のオーステナイト組織の安定性を確保するとともに、Cu富化相として析出し、クリープ強度を得るのに有効な元素である。その効果を得るためには、Cuを2%以上含有する必要がある。しかしながら、Cuを4%を超えて含有すると、過剰に析出して、脆化を招く。そのため、Cuの含有量は2〜4%とする。Cu含有量の望ましい下限は2.2%であり、望ましい上限は3.8%である。Cu含有量のさらに望ましい下限は2.4%であり、さらに望ましい上限は3.6%である。
Ni:14〜18%
Niは、Cuと同様、溶接金属のオーステナイト組織の安定性を確保し、クリープ強度の向上に寄与する。その効果を得るためには、後述の16〜20%というCr含有量の範囲では、14%以上のNi含有量が必要である。しかしながら、Niは高価な元素であるとともに、溶接金属への窒素溶解量を減少させ、クリープ強度向上の効果が相殺される。そのため、Ni含有量の上限を18%とする。Ni含有量の望ましい下限は14.5%であり、望ましい上限は17.5%である。Ni含有量のさらに望ましい下限は15.0%であり、さらに望ましい上限は17.0%である。
Cr:16〜20%
Crは、溶接金属の高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。この効果を得るためには、上述の14〜18%というNi含有量の範囲では、16%以上のCr含有量が必要である。しかしながら、Crの含有量が過剰になって20%を超えると、オーステナイト組織の安定性を低下させクリープ強度の低下を招く。そのため、Crの含有量は16〜20%とする。Cr含有量の望ましい下限は16.5%であり、望ましい上限は19.5%である。Cr含有量のさらに望ましい下限は17.0%であり、さらに望ましい上限は19.0%である。
Mo:0.5〜1.5%
Moは、マトリックスに固溶して溶接金属の高温でのクリープ強度の向上に大きく寄与する元素である。この効果を十分に確保するためには、0.5%以上のMo含有量が必要である。しかしながら、Moを1.5%を超えて含有させてもその効果は飽和するとともに、オーステナイト組織の安定性を低下させ、却ってクリープ強度の低下を招く。そのため、Moの含有量は0.5〜1.5%とする。Mo含有量の望ましい下限は0.6%であり、望ましい上限は1.4%である。Mo含有量のさらに望ましい下限は0.8%であり、さらに望ましい上限は1.2%である。
Nb:0.3〜0.8%
Nbは、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、溶接金属のクリープ強度の向上に寄与する。その効果を得るためには、0.3%以上のNbの含有が必要である。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると、多量かつ粗大に析出し、クリープ強度およびクリープ延性の低下を招く。そのため、Nbの含有量は0.8%を上限とする。Nb含有量の望ましい下限は0.35%であり、望ましい上限は0.75%である。Nb含有量のさらに望ましい下限は0.4%であり、さらに望ましい上限は0.7%である。
N:0.05〜0.27%
Nは、オーステナイト生成元素であり、高温使用時に溶接金属のオーステナイト組織の安定性を高めるとともに、マトリックスに固溶、または窒化物として粒内に微細に析出し、クリープ強度の向上に大きく寄与する。この効果を得るためには、少なくとも0.05%のNを含有する必要がある。一方、Nを過剰に含有する場合、高温での使用中に多量の窒化物を析出し、クリープ延性の低下を招くとともに、高温で溶融池中に溶解していた窒素がその凝固時に溶解しきれず、気体となり、溶接金属中に取り残されてブローホールとなるため、0.27%をN含有量の上限とする。N含有量の望ましい下限は0.08%であり、望ましい上限は0.25%である。N含有量のさらに望ましい下限は0.10%であり、さらに望ましい上限は0.23%である。ただし、Nがガスシールドアーク溶接中に溶融池から飛散すると、クリープ強度低下が生じる場合があり、その程度は溶接条件の影響を受ける。このため、広範な溶接条件下で、0.05〜0.27%というN含有量範囲において、上述したNの効果を安定して得るためには、前記Mn含有量範囲の制御とともに、Mn含有量が後述の(1)式を満たす必要がある。
Al:0.008%未満
Alは、脱酸剤として含有されるが、多量に含有すると清浄性を著しく害し、溶接材料の加工性および溶接金属の延性を劣化させる。加えて、スラグとして溶接ビード上に残存し、欠陥発生の原因となる。そのため、Alの含有量は0.008%未満とする必要がある。Alの含有量は0.007%以下とするのが望ましく、0.006%以下とするのがさらに望ましい。下限は不純物程度でよい。
O:0.02%以下
Oは、不純物として存在するが、多量に含まれる場合には、溶接材料の加工性および溶接金属の延性を低下させる。そのため、Oの含有量は0.02%以下とする必要がある。Oの含有量は0.015%以下とするのが望ましく、0.01%以下とするのがさらに望ましい。
本発明のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料は、化学組成が上述の元素と、残部がFeおよび不純物であり、さらにMn含有量が次の(1)式を満たすものである。
0.08×Q+0.6≦Mn・・・(1)
ただし、(1)式中のQは、溶接時に設定される入熱(kJ/cm)であり、Mnは、上記溶接材料におけるMn含有量(質量%)を表す。
前記の通り、Nは、溶接金属のクリープ強度確保に大きく寄与する元素である。しかしながら、ガスシールドアーク溶接中の溶融池からNが飛散し、クリープ強度の確保が困難になる場合がある。一方、溶接材料中のMnは、溶融池へのNの溶解量を増やして、Nの飛散防止に間接的に寄与し、Mn含有量が上記の(1)式を満たせば、広範な溶接条件下で、溶接金属の優れたクリープ強度を得るために必要なN量を安定して確保することができる。
なお、ガスシールドアーク溶接時に設定される入熱Qが3〜30kJ/cmの範囲であれば、本発明の効果が安定かつ十分に得られる。上述の入熱Qの上限は、25kJ/cmであればより好ましい。さらに、ガスシールドアーク溶接に使用するシールドガスには、Arの単独ガス、またはArに5体積%以下の窒素を含むガスを使用することが好ましい。
本発明のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料は、必要に応じてさらに、下記の元素を含有してもよい。
V:0.5%以下
Vは、炭素または窒素と結合して微細な炭化物または炭窒化物を形成し、クリープ強度の向上に寄与する。このため、この効果を得るためにVを含有させてもよい。しかしながら、Vの過剰の含有は、多量に析出してクリープ延性の低下を招く。したがって、含有させる場合のV量の上限を0.5%とする。V含有量の上限は、望ましくは0.4%、さらに望ましくは0.3%である。
一方、前記したVの効果を安定して得るためには、Vの含有量は0.01%以上とすることが望ましく、0.05%以上とすればさらに望ましい。
Ti:0.5%以下
Tiは、Vと同様に微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度の向上に寄与する。このため、この効果を得るためにTiを含有させてもよい。しかしながら、Tiの過剰の含有は、多量に析出してクリープ延性の低下を招く。したがって、含有させる場合のTi量の上限を0.5%とする。Ti含有量の上限は、望ましくは0.4%、さらに望ましくは0.3%である。
一方、前記したTiの効果を安定して得るためには、Tiの含有量は0.01%以上とすることが望ましく、0.05%以上とすればさらに望ましい。
Co:2%以下
Coは、NiやCuと同様オ−ステナイト生成元素であり、オーステナイト組織の安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。このため、この効果を得るためにCoを含有させてもよい。しかしながら、Coは極めて高価な元素であるため、過剰な含有は大幅なコスト増加を招く。したがって、含有させる場合のCo量の上限を2%とする。Co含有量の上限は、望ましくは1%である。
一方、前記したCoの効果を安定して得るためには、Coの含有量は0.01%以上とすることが望ましく、0.05%以上とすればさらに望ましい。
B:0.02%以下
Bは、高温での使用中に粒界に偏析し、粒界を強化するとともに粒界炭化物を微細分散させることによりクリープ強度を向上させるのに有効な元素である。そのため、この効果を得るためにBを含有させてもよい。しかしながら、Bの過剰の含有は、ガスシールドアーク溶接中の凝固割れ感受性を高める。したがって、含有させる場合のB量の上限を0.02%とする。B含有量の上限は、望ましくは0.01%、さらに望ましくは0.005%である。
一方、前記したBの効果を安定して得るためには、Bの含有量は0.0005%以上とすることが望ましく、0.001%以上とすればさらに望ましい。
Ca:0.05%以下
Caは、溶接材料製造時の熱間加工性を改善する効果を有する。このため、この効果を得るためにCaを含有させてもよい。しかしながら、Caの過剰の含有は、酸素と結合して清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。したがって、含有させる場合のCa量の上限を0.05%とする。Ca含有量の上限は、望ましくは0.03%、さらに望ましくは0.02%である。
一方、前記したCaの効果を安定して得るためには、Caの含有量は0.0005%以上とすることが望ましく、0.001%以上とすればさらに望ましい。
Mg:0.05%以下
Mgは、Caと同様、溶接材料製造時の熱間加工性を改善する効果を有する。このため、この効果を得るためにMgを含有させてもよい。しかしながら、Mgの過剰の含有は、酸素と結合して清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。したがって、含有させる場合のMg量の上限を0.05%とする。Mg含有量の上限は、望ましくは 0.03%、さらに望ましくは0.02%である。
一方、前記したMgの効果を安定して得るためには、Mgの含有量は0.0005%以上とすることが望ましく、0.001%以上とすればさらに望ましい。
REM:0.2%以下
REMは、CaやMgと同様、溶接材料製造時の熱間加工性を改善する効果を有する。このため、この効果を得るためにREMを含有させてもよい。しかしながら、REMの過剰の含有は、酸素と結合して清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。したがって、含有させる場合のREM量の上限を0.2%とする。REM含有量の上限は、望ましくは0.1%、さらに望ましくは0.08%である。
一方、前記したREMの効果を安定して得るためには、REMの含有量は0.0005%以上とすることが望ましく、0.001%以上とすればさらに望ましい。
なお、「REM」とは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量はREMのうちの1種または2種以上の元素の合計含有量を指す。また、REMについては一般的にミッシュメタルに含有される。このため、例えば、ミッシュメタルの形で添加して、REMの量が上記の範囲となるように含有させてもよい。
以上、本発明に係るオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料の化学組成について詳述したが、上記のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いて溶接継手を得る際に、Ni:8〜12%、Cr:16〜20%およびN:0.05〜0.2%を含有する高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼を母材として用いると、母材においても優れたクリープ強度を有することになるから、好ましい。
ここで、母材として高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼を用いる場合、その母材は、上記のNi:8〜12%、Cr:16〜20%およびN:0.05〜0.2%を含有するものであることが好ましい理由について詳しく説明する。
Ni:8〜12%
Niは、溶接金属におけると同様に、オーステナイト組織を得るために有効な元素であるとともに、長時間使用時の組織安定性を確保し、クリープ強度を得るためにも有効な元素である。母材は凝固ままで使用される溶接金属とは異なり、熱処理によって均質化が図られ、その効果がより得られやすい。そのため、Niの効果を得るためには、8%以上含有すればよい。一方、Niは高価な元素であり、コストの増大を招くため、12%以下とすることが望ましい。母材におけるNi含有量のさらに望ましい下限は8.2%であり、さらに望ましい上限は11.8%である。母材におけるNi含有量の一層望ましい下限は8.5%であり、一層望ましい上限は11.5%である。
Cr:16〜20%
Crは、溶接金属におけると同様に、母材の高温での耐酸化性および耐食性の確保のために有効な元素である。溶接金属と同等の効果を得るために、母材は、Crを含有することが好ましく、その量は、16%以上とすることが好ましい。しかし、Crの含有量が過剰になると高温使用中のオーステナイト組織の安定性を劣化して、クリープ強度の低下を招く。このため、Crを含有する場合、その量は溶接材料と同様に20%以下とすることが望ましい。母材におけるCr含有量のさらに望ましい下限は16.5%であり、さらに望ましい上限は19.5%である。母材におけるCr含有量の一層望ましい下限は17.0%であり、一層望ましい上限は19.0%である。
N:0.05〜0.2%
Nは、オーステナイト組織を安定にするのに有効な元素であるとともに、マトリックスに固溶し、また、使用中に窒化物として析出し、クリープ強度を高めるのに有効な元素である。その効果を十分に得るために、母材は、溶接金属と同様、0.05%以上のNを含有することが好ましい。しかしながら、Nの含有量が過剰になると、窒化物が多量に析出し、クリープ延性を低下させることに加え、熱間加工性を低下させて、母材の表面疵の原因となる。そのため、母材においては、N含有量の上限を厳しく管理するのがよく0.2%以下とすることが好ましい。母材におけるN含有量のさらに望ましい下限は0.06%であり、さらに望ましい上限は0.18%である。N含有量の一層望ましい下限は0.08%であり、一層望ましい上限は0.15%である。
高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材の化学組成は、上記範囲のNi、CrおよびNに加えて、以下に述べる量の元素と、残部がFeおよび不純物とからなるものであることがより好ましい。
C:0.04〜0.12%
Cは、溶接金属におけると同様に、オーステナイト生成元素として作用し、高温使用時のオーステナイト組織の安定性を高めるのに有効な元素である。母材は凝固ままで使用される溶接金属とは異なり、熱処理によって均質化が図られ、その効果がより得られやすい。このため、母材は、Cを含有することが好ましく、その量は0.04%以上であればよい。しかしながら、Cの含有量が過剰になると高温での使用中に粗大な炭化物を生成し、かえってクリープ強度の低下を招く。したがって、母材がCを含有する場合の母材におけるCの量は0.12%以下とすることが望ましい。上記の場合の母材におけるC含有量のさらに望ましい下限は0.06%であり、さらに望ましい上限は0.10%である。
Si:0.5%以下
Siは、脱酸作用を有する。しかしながら、Siの含有量が過剰になると靱性を低下させる。したがって、母材がSiを含有する場合、その量は0.5%以下とすることが望ましく、0.4%以下とするのがさらに好ましい。しかしながら、Si含有量の過度の低減は、脱酸効果が十分に得られず鋼の清浄度が大きくなって清浄性が低下するとともに、製造コストの増大を招く。そのため、母材がSiを含有する場合の母材におけるSi含有量の下限は特に設けないが、望ましくは0.01%である。さらに望ましいSi含有量の下限は、0.02%である。
Mn:1.5%以下、
Mnは、Siと同様、脱酸作用を有する。しかしながら、Mnの含有量が過剰になると脆化を招く。このため、母材がMnを含有する場合、その量は1.5%以下とすることが望ましく、1.2%以下とするのがさらに好ましい。しかしながら、Mn含有量の過度の低減は、脱酸効果が十分に得られず鋼の清浄度が大きくなって清浄性が低下するとともに、製造コストの増大を招く。そのため、母材がMnを含有する場合の母材におけるMn含有量の下限は特に設けないが、望ましくは0.01%である。さらに望ましいMn含有量の下限は、0.02%である。
P:0.05%以下
Pは、不純物として含まれ、Pの含有量が過剰になるとクリープ延性の低下を招くとともに、溶接熱影響部の耐液化割れ性を低下させる。そのため、母材におけるP含有量は、0.05%以下とすることが望ましく、0.045%以下とするのがさらに望ましい。
S:0.02%以下
Sは、Pと同様、不純物として含まれ、Sの含有量が過剰になるとクリープ延性の低下を招くとともに、溶接熱影響部の耐液化割れ性を低下させる。そのため、母材におけるS含有量は、0.02%以下とすることが望ましく、0.015%以下とするのがさらに望ましい。
Cu:2〜4%
Cuは、溶接金属と同様に、高温使用時に溶接金属のオーステナイト組織の安定性を保つことに寄与するとともに、Cu富化相として析出し、クリープ強度を得るのに有効な元素である。そのため、母材はCuを含有することが好ましく、その量は2%以上であればよい。しかしながら、Cuの含有量が4%を超えると、過剰に析出し、脆化を招く。そのため、母材がCuを含有する場合のCu含有量は2〜4%であることが好ましい。上記の場合の母材におけるCu含有量のさらに望ましい下限は2.4%であり、さらに望ましい上限は3.6%である。
Mo:0.8%以下
Moは、母材においてもマトリックスに固溶して高温でのクリープ強度の向上に寄与する。しかしながら、Moを過剰に含有すると、オーステナイト組織の安定性を低下させて、クリープ強度の低下を招く。そのため、母材がMoを含有する場合、その量は0.8%以下であることが望ましく、0.7%以下であることがさらに望ましい。母材がMoを含有する場合の母材におけるMo含有量の下限は特に設けないが、望ましくは0.01%である。さらに望ましいMo含有量の下限は、0.05%である。
Nb:0.3〜0.8%
母材おいて、Nbは、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、クリープ強度を向上させる効果を有するので、母材がNbを含有する場合、その含有量は0.3%以上であることが好ましい。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると、窒化物として多量かつ粗大に析出し、クリープ強度およびクリープ延性の低下を招く。そのため、母材がNbを含有する場合、Nbの含有量は0.8%以下であることが好ましい。上記の場合の母材におけるNb含有量のさらに望ましい下限は0.35%であり、さらに望ましい上限は0.75%である。
B:0.0005〜0.01%
Bは、母材においても、高温での使用中に粒界に偏析して粒界を強化するとともに、粒界炭化物を微細分散させることによって、クリープ強度を向上させるのに寄与する。このため、母材は、Bを含有することが好ましい。しかしながら、Bの含有量が過剰になると溶接熱影響部の液化割れ性を低下させる。そのため、母材がBを含有する場合、Bの含有量は0.0005〜0.01%とすることが望ましい。上記の場合の母材におけるB含有量のさらに望ましい下限は0.001%であり、さらに望ましい上限は0.008%である。
Al:0.03%以下
Alは、脱酸作用を有するが、Alの含有量が過剰になると清浄性を著しく害し、母材製造時の加工性を低下させる。このため、母材がAlを含有する場合、その量は0.03%以下にすることが望ましい。上記の場合の母材におけるAl含有量のさらに望ましい上限は0.02%である。
以上、本発明に係るオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料およびオーステナイト系耐熱鋼の母材の化学組成について詳述した。なお、既に述べたように、本溶接材料を使用してガスシールドアーク溶接する場合には、以下のようにして行うのが好ましい。
すなわち、ガスシールドアーク溶接時に設定される入熱Qは、3〜30kJ/cmの範囲であることが好ましく、上述の入熱Qの上限は、25kJ/cmであればより好ましい。さらに、ガスシールドアーク溶接に使用するシールドガスには、Arの単独ガス、またはArに5体積%以下の窒素を含むガスを使用することが好ましい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する材料を実験室溶解して鋳込んだインゴットから、熱間鍛造、熱間圧延、冷間圧延、熱処理および機械加工により、板厚12mm、幅50mm、長さ100mmの板材を溶接母材用として作製した。
さらに、表2に示す化学組成を有する符号A〜Gの材料を実験室溶解して鋳込んだインゴットから、熱間鍛造、熱間圧延および機械加工により、外径1.2mmの溶接材料を作製した。
Figure 0006241241
Figure 0006241241
上記の溶接母材用板材の長手方向に、角度30°、ルート厚さ1mmのV開先を加工した後、厚さ25mm、幅150mmで長さ200mmのSM400BのJIS G 3106(2008)に規定の市販の鋼板上に、被覆アーク溶接棒としてJIS Z 3224(2010)に規定の「E Ni 6182」を用いて、四周を拘束溶接した。
その後、上述した符号A〜Gの溶接材料を用いて、表3および表4に示すように、シールドガスと溶接入熱とを変化させて、ティグ溶接により開先内に積層溶接を行った。なお、初層溶接の入熱は、全ての条件で6kJ/cmの一定値とし、その後の2層目以降の溶接入熱を6、12、25または30kJ/cmとした4条件で積層溶接を実施した。
上記のようにして得られた溶接継手について下記の調査を行った。
先ず、溶接継手の各3か所から採取した試料の横断面を鏡面研磨、腐食した後、光学顕微鏡により検鏡し、溶接金属における割れおよびブローホールの有無を調査した。なお、3個の全ての試料で割れおよびブローホールがない溶接継手を「合格」とした。
次いで、「合格」と判定された溶接継手から溶接金属が平行部の中央となるように丸棒クリープ破断試験片を採取し、母材合金板の目標破断時間が1000時間となる650℃、216MPaの条件でクリープ破断試験を行い、その破断時間が、上記母材合金板の目標破断時間(1000時間)を超えるものを「良」、上記目標破断時間の80%を超えて100%以下(800時間超〜1000時間)であるものを「可」として「合格」とし、800時間以下であるものを「不合格」とした。
表3および表4に、上記各試験の結果を併せて示す。
なお、表3および表4の「断面観察結果」欄における「○」は、3個の全ての試料で割れおよびブローホールがない「合格」の溶接継手であることを示す。一方、「×」は、3個の試料のうち少なくとも1個の試料にブローホールが認められたことを示す。
また、「クリープ破断試験結果」欄における「◎」は、溶接継手クリープ破断試験結果が「良」であったもの、「○」は「可」であったものを示す。一方、「×」は「不可」であったことを示す。さらに、溶接継手G1−1〜G1−4における「−」は、光学顕微鏡による検鏡で溶接金属にブローホールが認められたため、クリープ破断試験を行わなかったことを示す。
Figure 0006241241
Figure 0006241241
表3および表4から、溶接材料について、その化学組成が本発明で規定する範囲にあり、しかもMn含有量が前記の
0.08×Q+0.6≦Mn・・・(1)
式を満たす溶接符号A1−1〜A3−4、B1−1〜B2−4、C1−1〜C1−4、D1−1〜D−3およびE1−1〜E1−2の溶接継手の場合には、割れおよびブローホールともに発生せず、かつクリープ破断試験結果は合格(「◎」または「○」)であって高いクリープ強度も有することが明らかである。
これに対して、溶接符号D1−4、E1−3およびE1−4の溶接継手の場合は、溶接材料について、その化学組成は本発明で規定する範囲にあるものの、Mn含有量が前記の(1)式を満たさず、溶接金属中に十分な量のNが歩留らないため、クリープ破断試験結果は不合格(「×」)であって、クリープ強度に劣っていた。
溶接符号F1−1の溶接継手の場合は、溶接材料について、Mn含有量は前記の(1)式を満たすものの、その値は1.3%と低く、本発明で規定するMn含有量の下限を下回る。このため、クリープ破断試験結果は不合格(「×」)であって、満足なクリープ強度が得られなかった。また、溶接符号F1−2〜F1−4の溶接継手の場合も、溶接材料について、そのMn含有量は1.3%と低く、本発明で規定するMn含有量の下限を下回り、しかも前記の(1)式を満たさないため、クリープ破断試験結果は不合格(「×」)であって、クリープ強度に劣っていた。
さらに、溶接符号G1−1〜G1−4の溶接継手の場合は、溶接材料について、そのN含有量が0.30%と高く、本発明で規定するN含有量の上限を超える。このため、溶接金属中に溶解しきれなくなったNが溶接金属の凝固中に気体となり、ブローホールとして残存した。
このように、ガスシールドアーク溶接の際に、本発明で規定する溶接材料を用いることによって、高いクリープ強度を有するとともに、割れおよびブローホールがない健全な溶接金属が得られることが分かる。
本発明によれば、ガスシールドアーク溶接を行う場合に、溶接金属の優れた高温強度が安定して得られるオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を提供することができる。また、それを用いて、高温強度に優れた溶接金属を提供することができる。さらに、この溶接材料を用いてなる溶接金属と高温における優れたクリープ強度を有する母材とからなる溶接継手を提供することができる。

Claims (7)

  1. オーステナイト系耐熱鋼をガスシールドアーク溶接するのに用いる溶接材料であって、化学組成が、質量%で、
    C:0.06〜0.15%、
    Si:0.05〜0.25%、
    Mn:1.9〜4%、
    P:0.02%以下、
    S:0.01%以下、
    Cu:2〜4%、
    Ni:14〜18%、
    Cr:16〜20%、
    Mo:0.8〜1.5%、
    Nb:0.3〜0.8%、
    N:0.05〜0.27%、
    Al:0.008%未満、
    O:0.02%以下、
    残部:Feおよび不純物
    であり、Mn含有量が下記の(1)式を満たす、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
    0.08×Q+0.6≦Mn・・・(1)
    ただし、(1)式中のQは、溶接時において各層を形成するときに3〜30kJ/cmの範囲で設定される入熱(kJ/cm)であり、Mnは、上記溶接材料におけるMn含有量(質量%)を表す。
  2. オーステナイト系耐熱鋼をガスシールドアーク溶接するのに用いる溶接材料であって、化学組成が、質量%で、
    C:0.06〜0.15%、
    Si:0.05〜0.45%、
    Mn:1.9〜4%、
    P:0.02%以下、
    S:0.01%以下、
    Cu:2〜4%、
    Ni:14〜18%、
    Cr:17.0〜20%、
    Mo:0.5〜1.5%、
    Nb:0.3〜0.8%、
    N:0.05〜0.27%、
    Al:0.008%未満、
    O:0.02%以下、
    下記の[1]〜[3]から選択される1種以上の元素、
    残部:Feおよび不純物
    であり、Mn含有量が下記の(1)式を満たす、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
    0.08×Q+0.6≦Mn・・・(1)
    ただし、(1)式中のQは、溶接時において各層を形成するときに3〜30kJ/cmの範囲で設定される入熱(kJ/cm)であり、Mnは、上記溶接材料におけるMn含有量(質量%)を表す。
    [1]:V:0.5%以下、Ti:0.5%以下
    [2]:Co:2%以下、B:0.02%以下
    [3]:Ca:0.05%以下、Mg:0.05%以下、REM:0.2%以下
  3. オーステナイト系耐熱鋼をガスシールドアーク溶接するのに用いる溶接材料であって、化学組成が、質量%で、
    C:0.06〜0.15%、
    Si:0.05〜0.45%、
    Mn:1.9〜4%、
    P:0.02%以下、
    S:0.01%以下、
    Cu:2〜4%、
    Ni:14〜18%、
    Cr:16〜20%、
    Mo:0.5〜1.5%、
    Nb:0.3〜0.8%、
    N:0.05〜0.27%、
    Al:0.008%未満、
    O:0.02%以下、
    下記の[1]〜[3]から選択される1種以上の元素、
    残部:Feおよび不純物
    であり、Mn含有量が下記の(1)式を満たす、オーステナイト系耐熱鋼用溶接材料。
    0.08×Q+0.6≦Mn・・・(1)
    ただし、(1)式中のQは、溶接時において各層を形成するときに3〜30kJ/cmの範囲で設定される入熱(kJ/cm)であり、Mnは、上記溶接材料におけるMn含有量(質量%)を表す。
    [1]:V:0.5%以下、Ti:0.5%以下
    [2]:Co:2%以下
    [3]:Ca:0.05%以下、Mg:0.05%以下、REM:0.2%以下
  4. 請求項1から3のいずれかに記載のオーステナイト系耐熱鋼用溶接材料を用いてガスシールドアーク溶接して得られる、溶接金属。
  5. 請求項に記載の溶接金属と高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材からなる、溶接継手。
  6. 高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材が、質量%で、Ni:8〜12%、Cr:16〜20%およびN:0.05〜0.2%を含有する、請求項に記載の溶接継手。
  7. 高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼の母材の化学組成が、質量%で、
    C:0.04〜0.12%、
    Si:0.5%以下、
    Mn:1.5%以下、
    P:0.05%以下、
    S:0.02%以下、
    Cu:2〜4%、
    Ni:8〜12%、
    Cr:16〜20%、
    Mo:0.8%以下、
    Nb:0.3〜0.8%、
    N:0.05〜0.2%、
    B:0.0005〜0.01%、
    Al:0.03%以下
    残部:Feおよび不純物
    である、請求項に記載の溶接継手。
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