JP2003001484A - 溶接金属の組織を微細にする溶接材料 - Google Patents

溶接金属の組織を微細にする溶接材料

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JP2003001484A JP2001187799A JP2001187799A JP2003001484A JP 2003001484 A JP2003001484 A JP 2003001484A JP 2001187799 A JP2001187799 A JP 2001187799A JP 2001187799 A JP2001187799 A JP 2001187799A JP 2003001484 A JP2003001484 A JP 2003001484A
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英隆 木村
Takashi Morohoshi
隆 諸星
Akihiko Takahashi
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 炭素鋼やオーステナイト系ステンレス鋼、N
i合金など、液相線温度から凝固点温度までの間でオー
ステナイト相を含有する金属を溶接する際に発生する溶
接割れや溶接部の強度低下を防止する。 【解決手段】 溶接後の溶接金属組織中に最大径0.0
1〜10.00μmの希土類元素の窒化物もしくはさら
に酸化物との複合析出物を、任意の断面において1個/
mm2 以上残存せしめることを特徴とする溶接金属の組
織を微細にする溶接材料。また、上記溶接材料の最大径
0.01〜10.00μmの希土類元素窒化物の少なく
とも一部が酸化物と複合析出したものであることを特徴
とする溶接金属の組織を微細にする溶接材料。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に被溶接金属が
液相線温度から凝固点温度までの間でオーステナイト相
を含有する組成の金属を溶接するための溶接材料に関す
る。
【0002】
【従来の技術】炭素鋼やオーステナイト系ステンレス
鋼、Ni合金など、液相線温度から凝固点温度までの間
でオーステナイト相を含有する金属は、凝固が進行する
際に柱状晶が発達して結晶粒径が粗大化する傾向が大き
く、また凝固偏析が大きくなりやすい。このような金属
を溶接すると、溶接金属部で割れを生じ易く、また強度
・疲労強度・靱性等の機械的性質や耐食性が母材と比べ
劣化するという問題がある。そのため、溶接構造物を設
計する際の機械的性質や耐食性は、前記のような溶接部
にあわせる必要があるなどの制約を受けていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、この
ような金属、特に溶接金属部が液相線温度から凝固点温
度までの間でオーステナイト相を含有する金属を溶接す
る際に、溶接金属の等軸晶の比率を向上させて柱状晶の
発達を妨げることにより、溶接金属の結晶粒径を微細化
し、かつ凝固偏析を微細分散化できる溶接材料を提供す
ることである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は以下の構成より
なる。 (1) 溶接後の溶接金属組織中に最大径0.01〜1
0.00μmの希土類元素の窒化物を、任意の断面にお
いて1個/mm2 以上残存せしめることを特徴とする溶
接金属の組織を微細にする溶接材料。 (2) 最大径0.01〜10.00μmの希土類元素
窒化物の少なくとも一部が酸化物と複合析出したもので
あることを特徴とする前記(1)記載の溶接金属の組織
を微細にする溶接材料。 (3) 鋼の組成が、質量%で、希土類元素:0.01
〜1.0%、 N :0.01〜0.20%を含有し、
かつO :0.001%以下であることを特徴とする溶
接金属の組織を微細にする溶接材料。 (4) 鋼の組成が、質量%でさらに、 C :0.08%以下、 Si:1.0%以下、 Mn:0.01〜16.0%、 Cr:10〜32%、 Ni:30%以下、 Al:0.05%以下、 N :0.4%以下 を含むオーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴
とする前記(3)記載の溶接金属の組織を微細にする溶
接材料。 (5) 鋼の組成が、質量%でさらに、 Cu:3.0%以下、 Mo:7.0%以下、 W :4.0%以下、 V :0.25%以下、 Ti+Nb:1.0%以下 の少なくとも1種以上を含むオーステナイト系ステンレ
ス鋼であることを特徴とする前記(4)記載の溶接金属
の組織を微細にする溶接材料。 (6) 鋼の組成が、質量%で、 C :0.05〜2.0%、 Si:3.0%以下、 Mn:0.01〜16.0%、 Al:0.05%以下、 N:0.4%以下 を含む炭素鋼であることを特徴とする前記(3)記載の
溶接金属の組織を微細にする溶接材料。 (7) 鋼の組成が、質量%でさらに、SolAl:
0.02%以上を含有することを特徴とする前記(3)
ないし(6)のいずれか1項に記載の溶接金属の組織を
微細にする溶接材料。 (8) 鋼の組成が、質量%でさらに、N:0.1%以
上を含有することを特徴とする前記(3)ないし(7)
のいずれか1項に記載の溶接金属の組織を微細にする溶
接材料。 (9) 溶接される金属が、液相線温度から凝固点温度
までの間でオーステナイト相を含有する組成の金属であ
ることを特徴とする前記(1)ないし(8)請のいずれ
か1項に記載の溶接金属の組織を微細にする溶接材料。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明者らは、特に溶接金属部が液相線温度から
凝固点温度までの間でオーステナイト相を含有する金属
中に、希土類元素の窒化物が存在すると、凝固組織中の
等軸晶の比率が増加し、結晶粒径が微細化できることを
見出した。そして、このような窒化物を溶接材料に含有
させることにより、溶接部の金属組織中の等軸晶比率を
増加できることを知見し、本発明に至ったものである。
【0006】このような効果は、希土類窒化物の最大径
が0.01〜10.00μmの場合に明瞭となる。ま
た、窒化物にCaOやTiO2 などの酸化物が隣接して
複合析出した場合に、さらに効果が明瞭となる。
【0007】窒化物の個数は、溶接金属部の任意の断面
において1個/mm2 以上で効果が明瞭となる。一方、
窒化物が10000個/mm2 を超えると、この窒化物
自体が割れの起点や強度低下の原因となるが、このよう
な数の粒子を形成させるには、溶接材料中に希土類元素
を多量に含有させなければならず、実際上の取扱いが困
難となることから、上限は特に規定しない。
【0008】なお希土類元素は15種類の元素からなる
が、いずれを用いても本発明の効果に大差はない。ただ
し入手の容易さから、La,Ce,Pr,Nd,Sm,
Eu,Gdが経済的に好ましい。または希土類元素を不
特定に含有するミッシュメタルを原料に用いても良い。
【0009】これら希土類元素窒化物の存在状態によっ
て凝固組織が微細化できる機構の詳細については、現時
点で不明であるが、本発明者らは、希土類元素の窒化物
とオーステナイト相では格子整合性が高く、これら窒化
物がオーステナイト相晶出の際の接種核となるため、希
土類元素窒化物の個数密度が一定数以上の場合には結晶
粒数が増加して、鋳造組織の等軸晶の比率が上がり、結
晶粒径が微細化されると考えている。またこのとき、希
土類元素窒化物に隣接して酸化物が存在すると、さらに
接種核としての機能が向上すると考えている。
【0010】以上のような効果を得られる溶接材料とし
ては、質量%で希土類元素を0.01〜1.0%、Nを
0.01〜0.20%含有し、かつOが0.001%以
下であることが必要である。希土類およびNは、これ未
満では十分な量の希土類窒化物が得られず、一方多すぎ
ると窒化物粒子が粗大化し、結晶粒径の微細化効果がな
くなるため好ましくない。またOが0.001%より多
いと、希土類が酸化物を優先的に形成し、窒化物が形成
されなくなるため好ましくない。
【0011】その他の組成については特に限定しない
が、液相線温度から凝固温度までの温度域においてオー
ステナイト相を含有する組成であることが、本発明によ
る効果を得る上で重要である。前記温度範囲においてオ
ーステナイト相以外の相との混相となっても構わない
が、オーステナイト相の比率が大きいほど本発明の効果
が明瞭となる。
【0012】具体的な鋼組成については特に限定するも
のではないが、例えばオーステナイト系ステンレス鋼で
は、質量%で、C:0.08%以下、Si:1.0%以
下、Mn:0.01〜16.00%、Cr:10〜32
%、Ni:30%以下、Al:0.05%以下、N:
0.4%以下を含む組成であり、さらに諸特性の向上を
狙って、Cu:3.0%以下、Mo:7.0%以下、
W:4.0%以下、V:0.25%以下、Ti+Nb:
1.0%以下の1種以上を添加してもよい。
【0013】また炭素鋼においては、質量%で、C:
0.05〜2.00%、Si:3.0%以下、Mn:
0.01〜16.00%、Al:0.05%以下、N:
0.4%以下を含む組成である。この他、Niを50質
量%以上含有するNi基合金などもこの範疇に含まれ
る。
【0014】以上の組成からなる溶接材料は、通常、ワ
イヤや溶接棒などの形で用いられる。また、溶接される
金属については特に限定されるものではないが、溶接材
料と被溶接物の組成をより近いものとすることが、溶接
金属と母材との機械特性や耐食性などの差を小さくする
上で重要である。
【0015】
【実施例】[実施例1]表1に示す成分からなる炭素鋼
を溶製し、その一部を溶接材料として、表2に示す量の
Laを添加した後、1.6mm径のワイヤに成形した。
また残りの溶鋼は従来公知の方法で熱間圧延を施して厚
さ25mmの鋼板とし、これをU字型開先になるように
成形して溶接母材とした。このU字開先部に前記のワイ
ヤを用いて4〜5層ティグ溶接を行い、溶接金属部のL
a窒化物量と金属組織の結晶粒径、および溶接割れの発
生状況を確認した。窒化物の個数は断面をSEMで観察
し、また金属組織は断面を光学顕微鏡で観察した。なお
溶接はワイヤ毎に5回ずつ行い、窒化物量と結晶粒径は
それらの平均を、溶接割れは発生したサンプル数を示し
た。結果を表2に示す。表2から明らかなように、La
窒化物の平均個数密度が1個/mm2 以上では、溶接金
属の平均結晶粒径はおよそ1mm以下と微細化でき、そ
の結果溶接割れの発生数も大幅に減少することができ
た。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】[実施例2]表3に示す成分からなるオー
ステナイト系ステンレス鋼を溶製し、その一部を溶接材
料としてミッシュメタルを種々の量添加し、表4に示す
量の希土類元素を含有させた後、1.6mm径のワイヤ
に成形した。また残りの溶鋼は従来公知の方法で熱間圧
延を施して厚さ25mmの鋼板とし、これをU字型開先
になるように成形して溶接母材とした。このU字開先部
に前記のワイヤを用いて4〜5層ティグ溶接を行い、溶
接金属部の窒化物量と窒化物・酸化物の複合析出物量と
金属組織の結晶粒径、および溶接割れの発生状況を、実
施例1と同様の方法で確認した。結果を表4に示す。表
4から明らかなように、希土類元素窒化物および複合析
出物の平均個数密度が1個/mm2 以上では、溶接金属
の平均結晶粒径はおよそ1mm以下と微細化でき、その
結果溶接割れの発生数も大幅に減少することができた。
【0019】
【表3】
【0020】
【表4】
【0021】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、溶接
金属の平均結晶粒径をおおむね1mm以下と微細化で
き、かつ凝固偏析を微細分散化できるので、溶接割れを
抑制すると共に、溶接金属部の機械的性質や耐食性を高
位に保つことができる。その結果、溶接構造物の信頼性
を増し、設計の合理化・低コスト化に寄与できるので、
産業上の価値の高いものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 明彦 北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製鐵 株式会社八幡製鐵所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶接後の溶接金属組織中に最大径0.0
    1〜10.00μmの希土類元素の窒化物を、任意の断
    面において1個/mm2 以上残存せしめることを特徴と
    する溶接金属の組織を微細にする溶接材料。
  2. 【請求項2】 最大径0.01〜10.00μmの希土
    類元素窒化物の少なくとも一部が酸化物と複合析出した
    ものであることを特徴とする請求項1記載の溶接金属の
    組織を微細にする溶接材料。
  3. 【請求項3】 鋼の組成が、質量%で、 希土類元素:0.01〜1.0%、 N :0.01〜0.20% を含有し、かつ O :0.001%以下 であることを特徴とする溶接金属の組織を微細にする溶
    接材料。
  4. 【請求項4】 鋼の組成が、質量%でさらに、 C :0.08%以下、 Si:1.0%以下、 Mn:0.01〜16.0%、 Cr:10〜32%、 Ni:30%以下、 Al:0.05%以下、 N :0.4%以下 を含むオーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴
    とする請求項3記載の溶接金属の組織を微細にする溶接
    材料。
  5. 【請求項5】 鋼の組成が、質量%でさらに、 Cu:3.0%以下、 Mo:7.0%以下、 W :4.0%以下、 V :0.25%以下、 Ti+Nb:1.0%以下 の少なくとも1種以上を含むオーステナイト系ステンレ
    ス鋼であることを特徴とする請求項4記載の溶接金属の
    組織を微細にする溶接材料。
  6. 【請求項6】 鋼の組成が、質量%で、 C :0.05〜2.0%、 Si:3.0%以下、 Mn:0.01〜16.0%、 Al:0.05%以下、 N:0.4%以下 を含む炭素鋼であることを特徴とする請求項3記載の溶
    接金属の組織を微細にする溶接材料。
  7. 【請求項7】 鋼の組成が、質量%でさらに、SolA
    l:0.02%以上を含有することを特徴とする請求項
    3ないし6のいずれか1項に記載の溶接金属の組織を微
    細にする溶接材料。
  8. 【請求項8】 鋼の組成が、質量%でさらに、N:0.
    1%以上を含有することを特徴とする請求項3ないし7
    のいずれか1項に記載の溶接金属の組織を微細にする溶
    接材料。
  9. 【請求項9】 溶接される金属が、液相線温度から凝固
    点温度までの間でオーステナイト相を含有する組成の金
    属であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか
    1項に記載の溶接金属の組織を微細にする溶接材料。
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