JPH11279684A - 超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた溶接用高張力鋼 - Google Patents
超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた溶接用高張力鋼Info
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Abstract
0kJ/cm程度でも)の超大入熱溶接熱影響部の靱性
に優れた高張力鋼を提供する。 【解決手段】 酸化物を構成する元素(ただしOを除
く)の割合が原子%で、(Ti+Mg+Al)≧80
%、Ti≧20%、Mg≧30%、Al≦40%、を満
足し、粒子径が0.2〜5.0μmの酸化物(A)を1
平方mmあたり10〜500個含有し、さらに、酸化物
を構成する元素(ただしOを除く)の割合が原子%で、
(Al+Mg)≧95%、Mg≧30%、を満足し、粒
子径が0.005〜0.1μmの酸化物(B)を核とし
てその周辺にTiNを有する大きさが0.05〜2.0
μmの酸化物(B)−TiN複合粒子を含有し、また、
C、Si、Mn、P、S、Mg、Al、O、Ti、N、
Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、Bの重量%を特定
した鋼である。
Description
柱の組み立てで適用されるエレクトロスラグ溶接、ある
いは、造船・橋梁で適用されるエレクトロガス溶接など
の超大入熱溶接における熱影響部(以下、HAZと称す
る)靱性に優れた溶接用高張力鋼に関するものである。
特に、入熱が200kJ/cm以上で、例えば、150
0kJ/cm程度でも優れたHAZ靱性を有するもので
ある。
柱が大型化し、これに使用される鋼材の板厚も増してき
た。このような大型の鋼製柱を溶接で組み立てる際に、
高能率で溶接することが必要であり、極厚鋼板を1パス
で溶接できるエレクトロスラグ溶接が広く適用されるよ
うになってきている。また、造船・橋梁分野においても
板厚が25mm程度以上の鋼板を1パスで溶接するエレ
クトロガス溶接が広く適用されるようになってきた。典
型的な入熱の範囲は200〜1500kJ/cmであ
り、このような超大入熱溶接ではサブマージアーク溶接
などの大入熱溶接(入熱は100〜200kJ/cm)
とは異なり、HAZが受ける熱履歴において1350℃
以上の高温滞留時間が極めて長くなり、オーステナイト
粒の粗大化が極めて顕著であり、HAZの靱性を確保す
ることが困難であった。最近の大地震を契機として建築
構造物の信頼性確保が急務の課題であり、このような超
大入熱溶接HAZ部の靱性向上を達成することは極めて
重要な課題である。
ては以下に示すように多くの知見・技術があるが、上記
のとおり超大入熱溶接と大入熱溶接とではHAZが受け
る熱履歴、特に、1350℃以上における滞留時間が大
きく異なるために、大入熱溶接HAZ靱性向上技術を単
純に本発明の対象分野に適用することはできない。
分類すると主に二つの基本技術に基づいたものであっ
た。その一つは鋼中粒子によるピン止め効果を利用した
オーステナイト粒粗大化防止技術であり、他の一つはオ
ーステナイト粒内フェライト変態利用による有効結晶粒
微細化技術である。
号、第68頁には、各種の鋼中窒化物・炭化物について
オーステナイト粒成長抑制効果を検討し、Tiを添加し
た鋼ではTiNの微細粒子が鋼中に生成し、大入熱溶接
HAZにおけるオーステナイト粒成長を効果的に抑制す
る技術が示されている。
lを0.04〜0.10%、Tiを0.002〜0.0
2%、さらに、希土類元素(REM)を0.003〜
0.05%含有する鋼において、入熱が150kJ/c
mの大入熱溶接HAZ靱性を向上させる技術が開示され
ている。これは、REMが硫・酸化物を形成して大入熱
溶接時にHAZ部の粗粒化を防止する作用を有するため
である。
子径が0.1〜3.0μm、粒子数が5×103〜1×
107ケ/mm3のTi酸化物、あるいはTi酸化物とT
i窒化物との複合体のいずれかを含有する鋼では、入熱
が100kJ/cmの大入熱溶接HAZ内でこれら粒子
がフェライト変態核として作用することによりHAZ組
織が微細化してHAZ靱性を向上できる技術が開示され
ている。
とSを適量含有する鋼において大入熱溶接HAZ組織中
にTiNとMnSの複合析出物を核として粒内フェライ
トが生成し、HAZ組織を微細化することによりHAZ
靱性の向上が図れる技術が開示されている。
lを0.005〜0.08%、Bを0.0003〜0.
0050%含み、さらに、Ti、Ca、REMのうち少
なくとも1種以上を0.03%以下含む鋼は大入熱溶接
HAZで未溶解のREM・Caの酸化・硫化物あるいは
TiNを起点として冷却過程でBNを形成し、これから
フェライトが生成することにより大入熱HAZ靱性が向
上する技術が開示されている。
(1975)第11号、第68頁に開示されている技術
はTiNをはじめとする窒化物を利用してオーステナイ
ト粒成長抑制を図るものであり、大入熱溶接では効果が
発揮されるが、本発明が対象とする超大入熱溶接では1
350℃以上の滞留時間が極めて長いために、ほとんど
のTiNはほとんど固溶し、粒成長抑制の効果を失う。
従って、この技術を本発明が目的とする超大入熱溶接H
AZの靱性には適用できない。
れた技術はREMの硫・酸化物を利用して大入熱溶接時
にHAZ部の粗粒化を防止するものである。硫・酸化物
は窒化物に比べて1350℃以上の高温における安定性
は高いので、粒成長抑制効果は維持される。しかしなが
ら、硫・酸化物を微細に分散させることは困難である。
硫・酸化物の個数密度が低いために、個々の粒子のピン
止め効果は維持されるとしても超大入熱溶接HAZのオ
ーステナイト粒径を小さくすることには限度があり、こ
れだけで靱性向上をはかることはできない。
れた技術はTi酸化物、あるいはTi酸化物とTi窒化
物との複合体のいずれかの粒子がフェライト変態核とし
て作用することによりHAZ組織を微細化させてHAZ
靱性を向上させるものであり、Ti酸化物の高温安定性
を考慮すると超大入熱溶接においてもその効果は維持さ
れる。しかしながら、粒内変態核から生成するフェライ
トの結晶方位は全くランダムというわけではなく、母相
オーステナイトの結晶方位の影響を受ける。従って、超
大入熱溶接HAZではオーステナイト粒が粗大化する場
合には粒内変態だけでHAZ組織を微細化することには
限度がある。
た技術は、TiN上にMnSを析出させた複合析出物か
らフェライトを変態させるものであり、大入熱溶接のよ
うに1350℃以上の滞留時間が比較的短い場合には効
果を発揮するが、超大入熱溶接においては1350℃以
上の滞留時間が長く、この間にTiNは固溶してしまう
ためにフェライト変態核が消失し、その効果が発揮でき
ない。
れた技術は、REM・Caの酸化・硫化物あるいはTi
N上にBNを形成し、これからフェライトを生成させる
ことによりHAZ組織を微細化するものであり、超大入
熱溶接においても同様な効果は期待できる。しかしなが
ら、REM・Caの酸化・硫化物の個数を増加させるこ
とは困難であり、しかもTiNは固溶してフェライト生
成核としての作用を発揮できず、粒内フェライト変態だ
けでは超大入熱溶接HAZの靱性向上には限度がある。
てで適用されるエレクトロスラグ溶接、造船・橋梁で適
用されるエレクトロガス溶接などの入熱が200kJ/
cm以上の超大入熱溶接におけるHAZ靱性に優れた溶
接用高張力鋼を提供することにある。
Alを主体とする低融点酸化物を鋼中に含有し、超大入
熱溶接HAZにおいて粒内フェライト変態を促進し、さ
らに、微細な酸化物を核としてTiNが生成した酸化物
−TiN複合粒子のピン止めによるオーステナイト粒
(γ粒)の粗大化を抑制することより、特に超大入熱溶
接のHAZ靭性の向上を図るものである。
g、Al(ただしOを除く)の割合が原子%で、 (Ti+Mg+Al)≧80%、 Ti≧20%、 Mg≧30%、 Al≦40% を満足し、粒子径が0.2〜5.0μmの酸化物(A)
を含有する鋼であることを特徴とする超大入熱溶接熱影
響部の靱性に優れた溶接用高張力鋼。
1平方mmあたり10〜500個含有する鋼であること
を特徴とする超大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた溶接
用高張力鋼。
(ただしOを除く)の割合が原子%で、 (Al+Mg)≧95%、 Mg≧30% を満足し、粒子径が0.005〜0.1μmの酸化物
(B)を核としてその周辺にTiNを有する大きさが
0.05〜2.0μmの酸化物(B)−TiN複合粒子
を含有する鋼であることを特徴とする前記(1)又は前
記(2)に記載の超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた
溶接用高張力鋼。
(ただしOを除く)の割合が原子%で、 (Al+Mg)≧95%、 Mg:30〜40% を満足し、粒子径が0.005〜0.1μmの酸化物
(B1)を核としてその周辺にTiNを有する大きさが
0.05〜2.0μmの酸化物(B1)−TiN複合粒
子を含有する鋼であることを特徴とする前記(1)又は
前記(2)に記載の超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れ
た溶接用高張力鋼。
を除く)の割合が原子%で、 Mg:95%以上 を満足し、粒子径が0.005〜0.1μmの酸化物
(B2)を核としてその周辺にTiNを有する大きさが
0.05〜2.0μmの酸化物(B2)−TiN複合粒
子を含有する鋼であることを特徴とする前記(1)又は
前記(2)に記載の超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れ
た溶接用高張力鋼。
あることを特徴とする前記(1)ないし(5)のいずれ
か1つに記載の超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた溶
接用高張力鋼。
上昇元素群を、重量%で、 0.05≦Cu≦1.5、 0.05≦Ni≦2.0、 0.02≦Cr≦1.0、 0.02≦Mo≦1.0、 0.005≦Nb≦0.05、 0.005≦V≦0.1、 0.0004≦B≦0.004 の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記
(6)に記載の超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた溶
接用高張力鋼。
更に硫化物形態制御元素群を、重量%で、 0.0005≦Ca≦0.003、 0.0005≦REM≦0.003 の1種または2種を含有することを特徴とする前記
(6)または前記(7)に記載の超大入熱溶接熱影響部
の靱性に優れた溶接用高張力鋼。
Zの組織と靱性の関係に関する詳細な調査・研究を実施
した結果、従来の大入熱溶接HAZの組織制御または靱
性向上法を超大入熱溶接にそのまま適用しても、HAZ
靱性向上は限られたものであり、粒内フェライト変態核
として効果のある酸化物を従来鋼以上に微細に分散さ
せ、さらに、粒内フェライト変態だけによるHAZ組織
の微細化には限度があるので、1350℃以上で長時間
晒されてもオーステナイト粒(γ粒)の粗大化を抑制す
ることにより、粒内フェライト変態との相乗効果により
超大入熱溶接HAZの靭性がさらに向上できると考え
た。
開示されている技術はTi酸化物を鋼中に分散し、この
酸化物を核として粒内フェライト変態をおこさせるもの
である。Tiは弱脱酸元素であり、特開平5−2475
61号公報にも開示されているとおり、Ti酸化物(T
i2O3を主体とする)は凝固中に晶出する低融点酸化物
である。従って、粒内フェライト変態核としての作用は
有するものの、酸化物の個数は凝固速度に依存するた
め、超大入熱溶接に適用できる程度に酸化物個数を確保
することが困難である。一方、特開昭61−25334
4号公報に開示された技術は、REM・Caの酸化物・
硫化物からの粒内フェライト変態を目的としたものであ
るが、REM・Caの酸化物は晶出温度・融点が高く、
この場合にも酸化物を微細に分散させることは困難であ
る。
効果を発揮する酸化物の粒径は0.5μm以上である。
これ以下のサイズの粒子は溶鋼中に保持されても凝集・
合体、浮上の程度は少ないが、0.5μm以上の比較的
大きい粒子では溶鋼中に長時間保持されると凝集・合
体、浮上がしやすい。従って、0.5μm以上の酸化物
を微細分散させるためには比較的低温で溶鋼中に晶出
し、晶出から凝固までの保持時間が短いほうが好ましい
と本発明者らは考えた。加えて、低温で晶出する酸化物
は融点も低く、溶鋼との濡れ性がよい傾向にあるので、
凝集・合体、浮上がおこりにくいので、さらに有利とな
る。ただし、上記のとおり、晶出温度が低すぎるとかえ
って微細分散が困難となる。
化物種類により大きく異なることは公知の事実である
が、本発明者らは酸化物と鋼の濡れ性が粒内フェライト
変態能に深く関与しているものと考えた。すなわち、高
温で晶出する高融点の酸化物は一般に鋼との濡れ性が悪
く、粒内フェライト変態能に劣る。その代表的なのもは
アルミナ(Al2O3)である。一方、晶出温度が低い低
融点酸化物、例えば、Ti2O3(若干のMnとAlを含
有する場合が多い)では鋼との濡れ性が高く、粒内フェ
ライト変態能は高い。粒内フェライト変態能の観点から
は酸化物の融点は低い方が好ましい。
化物において、粒内フェライト変態能確保と微細分散を
両立させるためには、酸化物に適度な融点を持たせるこ
とが必要であるとの結論に至った。具体的には、酸化物
の好ましい融点は鋼の凝固温度よりも高い範囲で、でき
るだけ低い温度であり、1550〜1700℃が適して
いると本発明者らは考えている。
意研究した結果、Ti−Mg−Alの三元系酸化物にお
いて、酸化物中のTi、Mg、Alの原子比率の特定範
囲において上記の特性を満足するものが存在することを
発見した。
l添加量を変化させた100kgの溶解鋼を製造し、酸
化物組成と粒内フェライト変態能の関係を調査した。こ
こで、鋼板の平均組成はC:0.1%、Si:0.2
%、Mn:1.5%、P:0.01%、S:0.003
%とし、脱酸前の溶鋼O濃度を50〜60ppmとした
状態で、Ti、Mg、Alの1種または2種以上を添加
した後、溶鋼を30分保持した後に鋳造し、鋼塊を製造
した。この鋼塊を熱間圧延により20mmの鋼板にした
後、断面が10mm角のサンプルを加工し、高周波熱サ
イクル装置により超大入熱溶接HAZ再現熱サイクルを
賦与した。1400℃における保持時間を40秒、80
0℃〜500℃の冷却時間を792秒とした。サンプル
断面を研磨腐食し、X線検出装置(EDX)付き走査型
電子顕微鏡(SEM)により0.5μm〜5μmの酸化
物について組成分析を行い、同時に個々の酸化物からの
粒内フェライト変態の有無を観察した。
の元素としてMn、S、などが検出されたが、これらは
総計でも10%(原子%)以下であったため、(Ti+
Mg+Al)を100%として図にプロットした。図か
ら明らかなとおり、特定のTi、Mg、Alの組成の領
域で粒内フェライト変態が生じることが明らかである。
E.M.Levin他著、Phase Diagram
s for Ceramists,American
Ceramics Society (1964)、F
ig.713に、MgO−Al2O3−TiO2三元系状
態図が記載されている。これによると、酸化物の融点が
1600℃程度の低温となる領域が存在し、その領域は
図1において粒内フェライト変態能を有する酸化物の組
成の範囲とほぼ一致し、上記の仮説が正しいことがわか
る。なお、今回の実験ではTi単独脱酸を行ったものは
なく、図1において、Tiの頂点に近い組成の酸化物は
得られなかった。これまでのTi脱酸鋼の知見によれ
ば、Ti2O3(若干のMnとAlを含有する場合が多
い)から粒内フェライトが生成することは明らかであ
る。しかしながら、上記のとおり、超大入熱溶接に適用
できる程度に酸化物個数を確保することが困難であり、
本発明の範囲外である。
の領域(A)に対応させて下記のように限定した。ここ
で、酸化物を形成する元素のうち、Oを除く酸化物構成
元素を原子%で100%とする。 Ti≧20%、 Mg≧30%、 Al≦40%。
酸化物からは粒内フェライト変態を顕著に生成させるこ
とができる。なお、酸化物中には不可避的にMn、C
a、S、REMなどが含有されることがあるが、Ti、
Mg、Al以外の元素の総量が20%未満であれば、上
記の効果は維持される。従って、(Ti+Mg+Al)
≧80%とした。
組成以外にも酸化物粒径にも依存する。粒子径が0.2
μm未満では上記組成の酸化物といえども粒内フェライ
トを生成させることは困難となる。従って、粒子径の下
限を0.2μmとした。ただし、好ましくは0.5μm
以上である。逆に、粒子径が5.0μm超となると、こ
れが脆性破壊の起点となりやすく、粒内フェライトが生
成しても靭性をむしろ低下させる場合がある。従って、
粒子径上限を5.0μmとした。ただし、靭性のばらつ
きを少なくするためには、3.0μm以下とすることが
望ましい。
物(A)とする)は融点が低く、粒内フェライト変態能
が高い上に、鋼中に容易に微細分散する。酸化物からの
粒内フェライト変態能は酸化物の融点に最も強く影響を
受けるものであり、酸化物の結晶構造などには大きく依
存しないと本発明者らは考えている。従って、酸化物の
結晶構造については特に限定を設けない。
などの硫化物、あるいはTiNなどが析出してもよい。
この場合には粒内フェライト生成はさらに促進されるの
で好ましい。ただし、MnSなどの析出物が完全に酸化
物(A)を包含してしまうと鋼マトリックスと酸化物
(A)との反応ができにくくなるので、酸化物(A)か
らのフェライト変態はむしろ阻害されるので好ましくな
い。
たり少なくとも10個存在することが望ましい。これよ
り少ないとHAZにおける粒内フェライト組織分率が低
く、靭性向上効果は少なくなる。逆に、500個を超え
ると、延性を低下させるので好ましくない。従って、好
ましい酸化物(A)の個数は1平方mmあたり10〜5
00個である。
は、元素の二次元分布測定が可能な分析装置(例えばC
MA、EPMA)により鋼板研磨面1平方mmの分析を
行い、酸化物を特定すればよい。次に、個々の酸化物の
構成元素の原子%を求め、上記酸化物(A)の組成範囲
にある酸化物の個数をカウントする。さらに精密には、
CMAあるいはEPMAで特定した個々の酸化物につい
て、EDX付きのSEMにより酸化物の組成を分析して
もよい。酸化物は溶接の熱履歴によってもほとんど変化
しないので、測定用サンプルは母材あるいは溶接HAZ
のいずれから採取しても構わない。
内フェライト変態生成により、特に超大入熱溶接HAZ
のミクロ組織を微細化してHAZ靭性の向上を図るもの
であるが、以下に示すように、γ粒の微細化によりさら
にHAZ靭性を向上させることができる。
るが、窒化物の中でも最も熱的に安定であるとされるT
iNでも1350℃以上に長時間加熱されると、ほとん
どが溶解し、ピン止め効果を失うために、超大入熱溶接
への適用には限度がある。従って、高温で安定である酸
化物粒子の利用が必須となる。しかしながら、従来技術
のREMあるいはCa酸化物(酸・硫化物も含む)で
は、超大入熱溶接HAZのγ粒粗大化抑制に十分な程度
にこれら酸化物を鋼中に微細分散させることは極めて困
難である。
討した結果、MgとAlを主体とする酸化物または複合
酸化物は溶鋼中で脱酸反応により生成した後、微細なま
まで存在し、凝固後の鋼中にも微細なままで残留するこ
とができることを発見した。このような特徴を有する酸
化物の組成(Oを除いて計算する)は原子%で、 (Al+Mg)≧95%、 Mg≧30% の範囲にある。AlとMgがこの条件式を満足すればこ
れら元素以外に、Ca、Mn、REM等が不可避的に、
もしくは意図的に含有せしめてもよい。この領域内で生
成する酸化物(以後、酸化物(B)とする)のうち、代
表的なものはMgOおよびMgAl2O4(以後、スピネ
ルと呼ぶ)である。酸化物の組成が領域(B)の範囲で
あれば微細分散が可能であるが、MgOおよびスピネル
ではTiNを容易に析出して複合粒子を形成するために
HAZのγ粒粗大化抑制に特に顕著な作用を有する。す
なわち、これらの酸化物の結晶系は両者ともに立方晶で
あり、格子定数は各々、4.21、8.08オングスト
ロームである。一方、TiNの結晶系も立方晶であり、
格子定数は4.24オングストロームである。従って、
TiNに対する格子ミスフィットは各々0.7%、5%
(ただし、スピネルの場合はTiNの格子定数の2倍と
比較した)であり、両者ともにTiNと極めて整合性が
高い。従って、TiとNが固溶している鋼中にこれら酸
化物が存在していれば、凝固後の冷却過程あるいは鋼板
の熱処理過程において容易にTiNがこれら酸化物上に
析出できる。これら酸化物とTiNの複合粒子が鋼中に
存在していれば、特に超大入熱溶接HAZにおいて13
50℃以上での滞留時間が長く(例えば、10秒以上、
100秒超でも)てもこれら複合粒子によるピン止め作
用によりγ粒粗大化を効果的に抑制することができる。
なお、酸化物を構成する元素(ただしOを除く)の割合
が原子%で、 (Al+Mg)≧95%、 Mg:30〜40% を満足していれば、この酸化物(B1とする)は実質的
にスピネルと同じ効果を発揮する。
を除く)の割合が原子%で、 Mg:95%以上 を満足していれば、この酸化物(B2とする)は実質的
にMgOと同じ効果を発揮する。
ば、いわゆる不均質核生成の機構によりMgOあるいは
スピネルでなくてもTiNを析出させることは可能であ
る。
形態を模式的に示す。酸化物(B)の粒子径は、図中に
示すように、酸化物(B)2の直径であり、酸化物
(B)−TiN複合粒子3の大きさは複合粒子の長辺の
長さ、例えば図中のd1またはd2の値である。複合粒
子としてのサイズが酸化物(B)だけの場合よりも大き
くなるので、粒子1個あたりのピン止め力は強力とな
り、その結果として超大入熱溶接HAZのγ粒径を小さ
くすることができる。なお、TiN単体では1350℃
以上に長時間滞留すると大部分のTiNは溶解してしま
うが、特にMgOあるいはスピネル上に析出したTiN
は単体のTiNに比べて安定であり、溶解し難い。その
理由の詳細は不明であるが、これら酸化物とTiNの格
子定数が極めて近く、これら酸化物がTiNを安定化し
ているものと本発明者らは考えている。なお、1350
℃以上で極めて長時間保持されれば、これら酸化物
(B)に析出したTiNといえども多くが固溶してしま
うが、核として存在する酸化物(B)自体は固溶するこ
となく安定である。従って、極めて厳しい熱履歴条件で
は酸化物(B)が粒界移動を抑制する作用を発揮するた
めに、HAZのγ粒成長抑制を維持できると考えてい
る。
005〜0.1μmに限定した。0.005μm未満で
はTiNの析出がし難くなる上にHAZの熱履歴でTi
Nが固溶した場合の粒成長抑制効果が少なくなる。逆に
0.1μm超では粒子数を確保することが困難となる。
また、酸化物(B)−TiN複合粒子のサイズを0.0
5〜2.0μmの範囲とした。0.05μm未満ではγ
粒成長抑制効果が少なくなる。また、2.0μm超では
これが破壊起点となって靭性のばらつきを大きくする可
能性が高くなる。酸化物(B)−TiN複合粒子の好ま
しいサイズは0.5μm以下である。
iN複合粒子は、鋼板でも溶接後のHAZでもその形態
はほぼ同じであると考えられるので、HAZでなく母材
部または溶接前の母鋼板で検出されれば本発明の効果は
発揮される。酸化物(B)及び酸化物(B)−TiN複
合粒子は鋼板(溶接前または溶接後)から、抽出レプリ
カを作成し、EDX付きの透過型電子顕微鏡(TEM)
で求めることができる。
ので、前記のTEMの倍率は2万〜20万倍で求めるこ
とが望ましい。また、酸化物(B)−TiN複合粒子
は、前記TEMの倍率として1万〜5万倍で複数視野を
観察すればよい。レプリカによっては前記複合粒子がう
まく抽出されない視野も存在するので、抽出された視野
にて10視野程度観察し、そのTEM写真から複合粒子
サイズを求めればよい。また、複合粒子の分布個数とし
ては必ずしも限定される物ではないが、前記の10視野
程度観察した視野中にて1.0×104〜1.0×107
個/mm2存在することが望ましい。1.0×104個/
mm2未満ではγ粒成長抑制効果にばらつきを生じる場
合がありうるのであまり好ましくない。1.0×107
個/mm2超では、鋼の清浄度が低下するとともに、母
鋼材の靭性や延性を低下させる場合もありうるのであま
り好ましくない。
影した抽出レプリカ写真で、その写真の酸化物(B)の
面積の円相当直径として粒子径を求めることもできる。
酸化物(B)−TiN複合粒子の大きさは前記のTEM
(倍率1万〜5万倍)で撮影した抽出レプリカ写真で、
その写真の酸化物(B)−TiN複合粒子でd1または
d2を求めればよい。
その核からTiNが析出した特定サイズの複合粒子が超
大入熱溶接熱履歴においてもγ粒のピン止め作用を有す
ることを本発明者らが新たに見出して成し遂げたもので
ある。TiNは酸化物(B)を核として析出すればよい
ので、必ずしもTiNは酸化物(B)を完全に覆う必要
はない。図2の酸化物(B)−TiN複合粒子の形態に
示すように、抽出レプリカのTEM写真においても酸化
物(B)の界面で部分的にTiNが存在してもよい。
中に分散させるためにはMg、Al、O、Ti、N含有
量を下記のとおり限定することが望ましい。
成に必須な元素である。0.0002%未満では必要な
酸化物(A)及び酸化物(B)を得ることはできない。
0.005%超では粗大なMg含有酸化物が生成して靭
性・延性を低下させる場合がありうる。従ってMgの範
囲を0.0002〜0.005%とした。しかし、粗大
なMg含有酸化物を抑制し、酸化物を微細でほぼ均一に
分散するためには0.0015〜0.004%とするこ
とが望ましい。
であり、0.01%超含有するとアルミナ主体の酸化物
が増加し、酸化物(A)及び酸化物(B)の生成が抑制
される。従って、Al含有量の上限を0.01%とし
た。工業的にAlを非常に低く抑えることは困難である
ので、下限を0.0002%とした。なお、酸化物
(A)の中でも特に酸化物の融点を低下させるためには
TiとMgの2元系の酸化物よりもTi、Mg、Alの
3元系酸化物のほうが好ましい。このためにはAlを
0.0005〜0.005%含有することが望ましい。
に必須の元素である。0.0005%未満では必要な粒
子数を得ることはできない。0.008%超では粗大酸
化物が生成して靭性・延性を低下させる場合がありう
る。従ってOの範囲を0.0005〜0.008%とし
た。しかし、粗大な酸化物を抑制し、微細でほぼ均一に
分散するためには0.0015〜0.005%とするこ
とが望ましい。
0.005%未満では酸化物(B)上のTiN析出量が
不十分であり、0.025%を超えると粗大なTiNが
生成するために靭性を低下させる場合がありうる。従っ
て、Ti含有量を0.005〜0.025%とした。し
かし、粗大なTiNを抑制し、TiNを微細でほぼ均一
に分散するためには0.015%以下とすることが望ま
しい。
002%未満ではTiN析出が不十分となる。0.00
8%超では粗大TiNを生成して靭性を低下させる場合
がありうる。従って、Nの範囲を0.002〜0.00
8%とした。しかし、粗大なTiNを抑制し、TiNを
微細でほぼ均一に分散するためには0.006%以下と
することが望ましい。また、TiC析出による靭性低下
を抑制するために、Ti/N比を3.4以下とすること
が望ましい。
化と粒内組織微細化だけでなく、合金元素により大きく
変化する。また、母材の強度確保のためにも適正な合金
元素を含有させる必要があるので、以下の理由により合
金元素の範囲を限定した。
0.04%未満では母材強度の確保が得られないので
0.04%を下限値とした。逆にCを多く含有すると、
脆性破壊の起点となるセメンタイトを増加させるため、
母材・HAZの靱性を低下させる。0.2%を超えると
靱性低下が顕著となるので、これを上限値とした。な
お、母材・HAZ靭性をさらに向上させるためには、
0.04〜0.15%とすることが望ましい。
0.02%未満ではこの効果が得られないので下限値を
0.02%とした。逆に、0.5%超含有すると、HA
Z組織中に島状マルテンサイトが多量に生成し、さら
に、フェライト地を硬化させるので、HAZ組織を微細
化しても靱性向上は得られない。従って、上限を0.5
%とした。なお、HAZ靭性を向上するためには0.3
%以下とすることが望ましい。
る。0.6%未満ではこの効果が得られないので下限値
を0.6%とした。逆に、2.0%超含有すると靱性低
下が顕著となる。従って、上限値を2.0%とした。
素であり、低いほうが望ましい。0.02%超含有する
と靱性低下が顕著となるので、0.02%を上限とす
る。しかし、母材・HAZ靭性をさらに向上させるため
には0.01%以下とすることが望ましい。
を低下させる。0.02%超のSを含有すると板厚方向
特性の低下が顕著となるので、上限値を0.02%とし
た。しかし、母材・HAZ靭性をさらに向上させるため
には0.01%以下とすることが望ましい。また、酸化
物(A)からの粒内フェライト変態は、この酸化物上に
MnSが析出すると促進される。このような観点からS
を極端に低くすることは好ましくなく、粒内フェライト
変態促進のために0.003%以上とすることが好まし
い。
素の限定範囲を以下の理由で決定した。
特に、時効熱処理により微細Cu相を析出させることに
より著しい強度上昇が得られる。0.05%未満では強
度上昇が得られないので、0.05%を下限値とした。
逆に、1.5%超含有すると母鋼材やHAZの脆化が顕
著となるので上限値を1.5%とした。しかし、母鋼材
及びHAZ靭性をさらに向上させるためには過度のCu
析出による硬化を防ぐ必要があり、このために1.0%
以下とすることが望ましい。
材強度上昇に効果を有し、さらに、靱性を向上させる。
0.05%未満ではこれらの効果が得られないので下限
値を0.05%とした。逆に、2.0%超含有すると焼
入れ性が高くなりすぎてHAZ硬化組織を生成しやすく
なり、HAZ靱性を低下させる。従って、上限値を2.
0%とした。しかし、HAZの硬化性を抑えて溶接性と
HAZ靭性を向上させるためには1.5%以下とするこ
とが望ましい。
02%未満ではこの効果が得られないので下限値を0.
02%とした。逆に、1.0%超含有するとHAZに硬
化組織を生成するので、HAZ組織が微細化してもHA
Z靱性を低下させる。従って、上限値を1.0%とし
た。しかし、HAZの硬化性を抑えて溶接性とHAZ靭
性をさらに向上させるためには0.5%以下とすること
が望ましい。
02%未満ではこの効果が得られないので下限値を0.
02%とした。逆に、1.0%超含有するとHAZに硬
化組織を生成するため、HAZ組織が微細化してもHA
Z靱性を低下させる。従って、上限値を1.0%とし
た。しかし、HAZの硬化性を抑えて溶接性とHAZ靭
性をさらに向上させるためには0.5%以下とすること
が望ましい。
な元素である。0.005%未満ではこれらの効果が得
られないので下限値を0.005%とした。逆に、0.
05%超含有するとHAZにおけるNb炭窒化物の析出
が顕著となり、HAZ組織が微細化してもHAZ靱性低
下が著しくなる。従って、上限値を0.05%とした。
しかし、過度の炭窒化物析出を抑制し、HAZ靭性をさ
らに向上させるためには0.02%以下とすることが望
ましい。
元素である。0.005%未満ではこれらの効果が得ら
れないので下限値を0.005%とした。逆に、0.1
%超含有するとHAZにおける炭窒化物の析出が顕著と
なり、HAZ組織が微細化してもHAZ靭性低下が著し
くなる。従って、上限値を0.1%とした。しかし、過
度の炭窒化物析出を抑制し、HAZ靭性をさらに向上さ
せるためには0.04%以下とすることが望ましい。
合に特に顕著な強度上昇の効果を発揮する。0.000
4%未満の含有量では強度上昇効果が得られないので下
限値を0.0004%とした。逆に、0.004%超含
有すると粗大なB窒化物や炭ホウ化物を析出してこれが
破壊の起点となるために、HAZ組織が微細化しても靱
性を低下させる。従って、上限値を0.004%とし
た。しかし、過度の炭窒化物析出を抑制し、HAZ靭性
をさらに向上させるためには0.002%以下とするこ
とが望ましい。
により伸長MnSの生成を抑制し、鋼材の板厚方向の特
性、特に耐ラメラテアー性を改善する。Ca、REMを
ともに0.0005%未満では、この効果が得られない
ので、下限値を0.0005%とした。逆に、0.00
3%超含有すると、Ca及びREMの酸化物が増加し、
酸化物(A)及び酸化物(B)の個数が減少する。従っ
て、Ca及びREMの上限を0.003%とした。Ca
及びREM含有量の合計をMg含有量よりも低くするこ
とが望ましい。なお、粗大な酸化物を抑制し、酸化物
(A)及び酸化物(B)を微細でほぼ均一に分散するた
めにはCaとREMの含有量の合計を0.0015%以
下とすることが望ましい。
び熱影響部(HAZ)における、粒内フェライト変態促
進とγ粒成長抑制による靭性改善は、超大入熱溶接ばか
りでなく大入熱溶接(例えば100〜200未満kJ/
cm程度)でも有効である。
650℃以下とし、溶鋼O濃度を0.010%以下とし
た状態で、まず、適量のTiあるいはTi含有合金を添
加して脱酸を行い、引き続き、適量のMgあるいはMg
含有合金を添加して脱酸を行う。さらに、必要に応じて
適量のAlを添加する。酸化物(A)は脱酸後から凝固
直前の間に微細に晶出し、これが鋼塊に残留する。凝固
中あるいは凝固直後に酸化物(A)上にMnS、TiN
などが析出する場合がある。酸化物(B)は酸化物
(A)に比べて高融点の酸化物であり、脱酸とほぼ同時
に溶鋼中に微細に晶出する。これが鋼塊に残留し、凝固
後の冷却過程において図3に示すように酸化物(B)を
核としてTiNが析出して、酸化物(B)とTiNから
なる複合粒子を鋼中に生成する。なお、耐火物などから
不可避的にAlが鋼中に混入することがあるが、酸化物
(A)及び酸化物(B)の微細化を目的としてAlを含
有させるためには、上記の順序で脱酸を行うことが重要
であり、不可避的にAlが混入するだけではこれら酸化
物を微細に分散させることは困難である。
酸化物(B)−TiN複合粒子が所定量存在すればよい
ので、鋳造後の加熱、圧延、熱処理条件は母鋼材に必要
とされる機械的性質に応じて適宜選定すればよい。さら
に、本発明の鋼は厚板、鋼管、型鋼、棒鋼、条鋼、薄板
(熱延鋼板、冷延鋼板)、表面処理鋼板などの用途に応
じて適用可能である。
鋼を溶製し、連続鋳造により厚さが240mmのスラブ
を製造した。表1に鋼材の化学成分を示す。HAZ靱性
は炭素当量にも大きく依存するので、本発明の効果を確
認するために、ほぼ同一の化学成分でAl、N、Ti、
Mg、O、Ca、REMのみを変えた鋼を溶製して比較
した。
す。表に示すとおり、圧延まま、制御圧延・制御冷却
法、直接焼入れ焼き戻し法、直接焼入れ・二相域焼入れ
・焼き戻し法、及び、焼入れ・焼戻し法により鋼板を製
造した。板厚は40〜80mmとした。
により溶接試験体を作成した。エレクトロスラグ溶接
(a)の電流は380A、電圧は46V、速度は1.1
4cm/分とした。入熱は920kJ/cmである。同
図に示すように、溶接融合線(FL)およびFLから3
mmの位置がノッチ位置に一致するようにシャルピー衝
撃試験片4を採取した。衝撃試験は0℃で行い、3本繰
り返しの平均値で靱性を評価した。また、板厚を35m
mにそろえて、入熱が200kJ/cmのエレクトロガ
ス溶接(b)も実施した。電流は610A、電圧は35
V、速度は4.1cm/分とした。エレクトロスラグ溶
接と同じノッチ位置となるようにシャルピー衝撃試験片
を採取した。また、エレクトロスラグ溶接FL直近のH
AZのミクロ組織観察を実施し、粒内フェライト面積率
とγ粒径を測定した。粒内フェライト面積率は100倍
の光学顕微鏡組織写真からポイントカウント法により測
定した。γ粒径測定には、γ粒界を現出する腐食を行っ
たサンプルを50〜100倍で観察し、切断法により測
定した。さらに、母材について、酸化物(A)と酸化物
(B)の組成と個数を上記の方法で測定した。結果を表
3と表4に示す。
(A)が多数存在することによりHAZの粒内フェライ
ト分率が高く、酸化物(B)が微細分散することにより
γ粒粗大化が抑制されるために、大入熱、超大入熱溶接
HAZの靭性が高い。発明鋼14は酸化物(B)−Ti
N複合粒子が少なく、γ粒粗大化抑制効果は少ないが、
酸化物(A)により粒内フェライト変態が顕著に生成す
るので、HAZ靭性は高い。これに対して、比較鋼のH
AZ靭性向上には限度がある。この中で、比較鋼6及び
7では低融点酸化物の生成が少なく、粒内フェライト分
率が低いために、靭性向上に限度がある。比較鋼9及び
19はTi単独脱酸鋼であり、粒内フェライト分率は高
いが、γ粒が粗大化するために、超大入熱溶接HAZ靭
性向上に限度がある。
フェライト変態核として有効な低融点酸化物を微細分散
し、さらに、γ粒成長抑制に効果を発揮する酸化物とT
iNの微細複合粒子により、特に超大入熱溶接HAZの
靭性を向上させることができる。本発明を超大入熱溶接
が適用される構造物に適用することにより、極めて信頼
性の高い溶接構造物を製造することが可能である。従っ
て、本発明は工業上極めて効果が大きい。
ライト変態能の関係を示した図である。
た図である。
条件を示す図である。
Claims (8)
- 【請求項1】 酸化物を構成する元素Ti、Mg、Al
(ただしOを除く)の割合が原子%で、 (Ti+Mg+Al)≧80%、 Ti≧20%、 Mg≧30%、 Al≦40% を満足し、粒子径が0.2〜5.0μmの酸化物(A)
を含有する鋼であることを特徴とする超大入熱溶接熱影
響部の靱性に優れた溶接用高張力鋼。 - 【請求項2】 請求項1記載の酸化物(A)を1平方m
mあたり10〜500個含有する鋼であることを特徴と
する超大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた溶接用高張力
鋼。 - 【請求項3】 酸化物を構成する元素Al、Mg(ただ
しOを除く)の割合が原子%で、 (Al+Mg)≧95%、 Mg≧30% を満足し、粒子径が0.005〜0.1μmの酸化物
(B)を核としてその周辺にTiNを有する大きさが
0.05〜2.0μmの酸化物(B)−TiN複合粒子
を含有する鋼であることを特徴とする請求項1又は請求
項2に記載の超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた溶接
用高張力鋼。 - 【請求項4】 酸化物を構成する元素Al、Mg(ただ
しOを除く)の割合が原子%で、 (Al+Mg)≧95%、 Mg:30〜40% を満足し、粒子径が0.005〜0.1μmの酸化物
(B1)を核としてその周辺にTiNを有する大きさが
0.05〜2.0μmの酸化物(B1)−TiN複合粒
子を含有する鋼であることを特徴とする請求項1又は請
求項2に記載の超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた溶
接用高張力鋼。 - 【請求項5】 酸化物を構成する元素(ただしOを除
く)の割合が原子%で、 Mg:95%以上 を満足し、粒子径が0.005〜0.1μmの酸化物
(B2)を核としてその周辺にTiNを有する大きさが
0.05〜2.0μmの酸化物(B2)−TiN複合粒
子を含有する鋼であることを特徴とする請求項1又は請
求項2に記載の超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた溶
接用高張力鋼。 - 【請求項6】 重量%で、 0.04≦C≦0.2、 0.02≦Si≦0.5、 0.6≦Mn≦2.0、 P≦0.02、 S≦0.02、 0.0002≦Mg≦0.005、 0.0002≦Al≦0.01、 0.0005≦O≦0.008、 0.005≦Ti≦0.025、 0.002≦N≦0.008 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる鋼で
あることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つ
に記載の超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた溶接用高
張力鋼。 - 【請求項7】 請求項6の鋼に、更に母材強度上昇元素
群を、重量%で、 0.05≦Cu≦1.5、 0.05≦Ni≦2.0、 0.02≦Cr≦1.0、 0.02≦Mo≦1.0、 0.005≦Nb≦0.05、 0.005≦V≦0.1、 0.0004≦B≦0.004 の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
項6に記載の超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた溶接
用高張力鋼。 - 【請求項8】 請求項6または7の鋼に、更に硫化物形
態制御元素群を、重量%で、 0.0005≦Ca≦0.003、 0.0005≦REM≦0.003 の1種または2種を含有することを特徴とする請求項6
または請求項7に記載の超大入熱溶接熱影響部の靱性に
優れた溶接用高張力鋼。
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JP09691298A JP3749616B2 (ja) | 1998-03-26 | 1998-03-26 | 超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた溶接用高張力鋼 |
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- 1998-03-26 JP JP09691298A patent/JP3749616B2/ja not_active Expired - Fee Related
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