JP4357080B2 - 凝固結晶粒微細化鋼及び凝固結晶粒微細化オーステナイト系ステンレス鋼並びにそれらの溶接継ぎ手 - Google Patents

凝固結晶粒微細化鋼及び凝固結晶粒微細化オーステナイト系ステンレス鋼並びにそれらの溶接継ぎ手 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶粒微細化鋼及び結晶粒微細化オーステナイト系ステンレス鋼の製造方法に関し、特に溶鋼の凝固時に結晶粒を微細化することにより、靱性及び加工性の優れた普通鋼およびオーステナイト系ステンレス鋼の鋳造材や溶接金属、さらに表面特性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼の鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、鋼及び溶接部の低温靱性を向上させる方法として、連続鋳造後の熱延、または、さらに焼鈍と冷延の製造条件を規定して、組織(結晶粒径)を微細化する方法が知られている。
例えば、特願平10−174365号公報では鋼片の圧延条件(圧下率と温度の関係)を規定することにより平均フェライト粒径が1μm以下の超細粒フェライト組織とし、低温靱性を向上させる方法が開示されており、また、特願平10−104679号公報では、溶鋼中にMg含有酸化物を分散させ、鋳造後の冷却あるいは再加熱―圧延中にMg含有酸化物を核にして硫化物および窒化物の何れか1方または双方の微細複合粒子を鋼中に分散析出させることで、そのピンニング効果を利用し大入熱溶接時の溶接熱影響部の靱性を向上させる大入熱溶接用鋼の製造方法を開示している。しかしながら、これらの鋼の結晶粒の微細化方法は、何れも凝固後の変態過程における組織制御で行っており、溶鋼の凝固過程での組織制御ではない。
【0003】
上記の普通鋼に限らず、オーステナイトステンレス鋼においても、母材及び溶接金属の靱性向上や熱間加工性、製品板での表面性状や製品の成形加工時の表面性状を良好にするために、その結晶粒を微細化する方法が有効である。例えば、特開平3−71902号公報では、ローピング(表面の凹凸)の発生を抑制するために鋳片の圧延条件(圧下率と温度の関係)を規定し、特開平8−277423号公報では、鋳造後の熱延および冷却条件を規定する方法が開示されている。しかしながら、これらのいずれも溶鋼の凝固後の変態挙動を利用する方法である。
【0004】
以上のように従来の普通鋼及びオーステナイトステンレス鋼の組織結晶粒を微細化する方法は、溶鋼の凝固後の冷却工程または再加熱―熱延、焼鈍―冷却における変態による組織制御を利用したものである。
一方、近年、生産性向上及び省エネルギーの目的で、厚鋼板又は薄鋼板を直接鋳造によって製造する技術が開発され、従来の熱延工程の簡略が可能となりつつある。この場合、上記の凝固後の冷却または熱延、冷延工程での変態挙動を利用することができないため、鋼の靱性等の機械的特性や表面性状の劣化に関わる問題が生じる。したがって、直接鋳造による鋼板の製造プロセスにおいても鋼の靱性等の機械的特性や表面性状の劣化の問題を解決するため、及び、鋳造後の熱延工程を含む鋼板の製造プロセスにおいても鋳造後の圧延条件の緩和のために、凝固過程における結晶粒を微細化技術の開発が近年望まれている。
【0005】
また、これら鋼の多くは溶接構造物として適用されるため、溶接部の特性確保が構造物全体の使用性能の点から重要である。特に、溶接金属は後熱処理を施される場合もあるが、多くの場合、凝固のままで使用され、圧延、熱処理を経た鋼材に比べ結晶粒径が粗大化し特性的に劣る。従って、凝固過程での結晶粒微細化技術は、上記の直接鋳造または鋳造後の圧延プロセスのみならず、製品鋼板の溶接時の凝固プロセスにもその溶接金属の靱性等の機械的特性を向上させるために重要な課題である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来技術の問題点に鑑みて、普通鋼及びステンレス鋼の製造プロセスの生産性及び省エネルギーの向上を目的とした圧延工程の省略または圧延条件の簡略時においても普通鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼の機械的特性や表面特性が優れ、さらに、それらの鋼を溶接した際にも溶接金属の機械的特性が優れる凝固結晶粒を微細化可能な普通鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼を提供するものである。
【0007】
つまり、本発明は、従来のような鋳造(凝固)条件を特に限定せず、成分のみの規定により、低温靱性や熱間加工性の優れた鋳片や溶接金属および表面性状に優れた凝固結晶粒を微細化鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するものであって、その要旨とするところは下記の通りである。
(1)質量%で、C:0.001〜0.1%、Mn:0.01〜2.0%、Al:0.002〜0.05%、Mg:0.0026〜0.01%、Ti:0.005〜0.5%、N:0.001〜0.1%を含有し、さらに、Si:0.4%以下、P:0.02%以下、S:0.02%以下に制限し、かつ、C+0.015×Mn≦0.09およびTi×N≧0.00003を満たし、残部鉄および不可避的不純物よりなることを特徴とする凝固結晶粒微細化鋼。
(2)質量%で、C:0.001〜0.1%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.01〜2.0%、Cr:10.5%以上、Ni:4.0%以上、Mo:6.5%以下、Al:0.002〜0.05%、Mg:0.0005〜0.01%、Ti:0.005〜0.5%、N:0.001〜0.1%を含有し、さらに、P:0.03%以下、S:0.01%以下に制限し、かつ、0.73×Cr当量−Ni当量≧4.4及びTi×N≧0.0005を満たし、残部鉄および不可避的不純物よりなることを特徴とする凝固結晶粒微細化オーステナイト系ステンレス鋼。
但し、Cr当量=Cr+Mo+1.5×Si
Ni当量=Ni+0.5×Mn+30×C
【0009】
(3)さらに、質量%で、Cu:0.1〜2.0%、Nb:0.01〜0.5%の少なくとも1種以上を含有することを特徴とする上記(2)に記載の凝固結晶粒微細化オーステナイト系ステンレス鋼。
(4)前記凝固結晶粒微細化鋼を溶接材料を用いずにTIG突き合わせ溶接することを特徴とする上記(1)に記載の凝固結晶粒微細化鋼の溶接継ぎ手。
(5)前記凝固結晶粒微細化オーステナイト系ステンレス鋼を溶接材料を用いずにTIG突き合わせ溶接することを特徴とする上記(2)または(3)の何れかに記載の凝固結晶粒微細化オーステナイト系ステンレス鋼の溶接継ぎ手。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、種々の元素を添加した普通鋼およびステンレス鋼について実験室で鋳造試験を行い、得られたそれぞれの鋳造材の組織および靱性、熱間加工性(引張試験の絞り値により評価)を調査した。その後、さらに鋳造材を熱延、冷延、焼鈍して製品板とし、いずれの鋼板も溶接材料を用いずにTIG突合せ溶接を行い、これらの溶接部の組織及び靱性を調査した。加えて、ステンレス鋼板については表面の凹凸(ローピング)および簡易成形試験後の表面凹凸を調査し、それらに及ぼす成分元素の影響を検討した。その結果、フェライト単相で凝固が完了する成分系にMgとTiを複合で添加することにより、鋳片組織および溶接金属組織の等軸晶化、微細化が達成され、それによって、普通鋼及びステンレス鋼板の何れも鋳片の靱性及び熱間加工性、溶接金属の靱性が向上し、さらにステンレス鋼板については、ステンレス鋼板の表面凹凸が大幅に改善されることが新たに明らかとなった。
【0011】
また、フェライト単相で凝固が完了する成分系においては、TiとN量の関係を制御することで鋼の凝固結晶粒の微細化が容易となり、靱性、熱間加工性および製品の表面性状を改善できる見通しを得た。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、下記説明における「%」とは「質量%」を示し、特に明記しない限り溶接部とは溶接材料を添加せず、鋼材自身を溶融して得られる溶接金属を意味する。
【0012】
先ずはじめに、本発明の組織の結晶粒の微細化のための技術思想について説明する。
普通鋼およびオーステナイト系ステンレス鋼は、その成分系により初晶凝固相がフェライト相もしくはオーステナイト相である成分系に分類され、さらに、これらの相が単独で凝固が完了するものとフェライト相+オーステナイト相の二相で凝固が完了するものに分類させる。
【0013】
TiNおよびMg系介在物(MgO−Al2 3 スピネル相を含む)は、フェライト相との格子整合性が非常に良好なため、フェライト相の凝固核となり、フェライト相の等軸晶化および初晶フェライト相の安定生成効果が促進され、凝固時のフェライト結晶粒を微細化するために有効となる。
一方、TiNおよびMg系介在物は、オーステナイト相との格子整合性が良くないため、オーステナイト相の凝固核にはほとんどならない。また、液相/オーステナイト相間の界面エネルギーは、液相/フェライト相間の界面エネルギーより大きいため、フェライト相上にオーステナイト相は形成されにくく、オーステナイト相は、フェライト相の生成、成長に関係なく独自に成長する。
【0014】
従って、本発明では、TiNおよびMg系介在物を核にして、フェライト相の凝固核となり、フェライト相の等軸晶化および初晶フェライト相の安定生成効果が促進され、よって凝固時のフェライト結晶粒を微細化するために、その成分系を初晶凝固相がフェライト相で、フェライト単相で凝固が完了する成分系に限定する必要がある。
【0015】
初晶フェライト相+オーステナイト相の二相凝固の成分系では、フェライト相が等軸晶凝固しても、オーステナイト相はフェライト相の生成・成長に関係なく独自に成長するため、オーステナイト相は柱状晶凝固してオーステナイト相の微細化は達成されない。
本発明者らの実験の結果、初晶凝固相がフェライト相で、フェライト単相で凝固が完了する成分系としては、普通鋼では、C+0.015×Mn≦0.09を満足し、また、ステンレス鋼では、0.73×Cr当量−Ni当量≧4.4の関係式を満足する成分系であれば、初晶凝固相がフェライト相で、フェライト単相で凝固が完了する。ここで、Cr当量及びNi当量は、以下の(1)式及び(2)式でそれぞれ規定させるものである。
Cr当量=Cr+Mo+1.5×Si . . (1)
Ni当量=Ni+0.5×Mn+30×C . . (2)
また、本発明では、凝固結晶粒の微細化のために、上記の初晶凝固相がフェライト相で、フェライト単相で凝固が完了する成分系において、初晶フェライトが凝固する前にTi窒化物が形成する必要がある。そのためには、本発明者らの実験によれば、初晶フェライト相が凝固する温度(液相線温度)より高温でTi窒化物が晶出するようにTi含有量とN含有量を限定すれば良く、普通鋼ではTi×N≧0.00003、オーステナイト系ステンレス鋼ではTi×N≧0.0005の関係を満足するように成分を制御することで初晶フェライトが凝固する前にTi窒化物が確実に生成し、凝固結晶粒微細化効果が得られる。
【0016】
以上から本発明では、初晶凝固相がフェライト相でフェライト単相で凝固が完了せるとともに、初晶フェライトが凝固する前にTi窒化物を確実に生成させることにより凝固結晶粒微細化効果を得るために、普通鋼においては、C+0.015×Mn≦0.09かつTi×N≧0.00003を満たすことを要件とし、オーステナイトステンレス鋼においては、0.73×Cr当量−Ni当量≧4.4及びTi×N≧0.0005を満たすことを要件とする。
【0017】
ここで、Cr当量=Cr+Mo+1.5×Si
Ni当量=Ni+0.5×Mn+30×C
本発明の成分の限定理由を以下に述べる。
先ず、本発明では、普通鋼及びオーステナイトステンレス鋼に共通して、本発明のTiNおよびMg系介在物(MgO−Al2 3 スピネル相を含む)を鋼中で形成するために以下の成分の含有量を規定する。
【0018】
Al:Alは脱酸工程で必要な元素であり、また鋼の熱間加工性にも有効である。さらに、Mgと共存してMgO−Al2 3 スピネル相を形成して凝固核となり、鋳造組織および溶接金属組織を微細化する。この効果を発揮するのは0.002%でありこれを下限とした。また、多量に添加するとAl酸化物が大量に生成し機械的特性が劣化するので0.05%を上限とした。
【0019】
Mg:MgはMg系介在物を形成して凝固核となり、鋳造組織および溶接金属組織を微細化する。Tiと複合で添加した場合にはさらにその効果が向上する。この効果が発揮するのは0.0005%でありこれを下限とした。また多量に添加してもその効果は飽和し、耐食性の低下や溶接部の溶込み減少、溶接ビード上にスラグ生成などの問題が生じるため、0.01%を上限とした。Mg系介在物は、酸化物、硫化物等のMgを含有する化合物であれば凝固結晶粒の微細化には効果があり、MgO−Al2 3 スピネル相も同様の効果を持つ。
【0020】
Ti:TiはTi窒化物を形成して凝固核となり、鋳造組織および溶接金属組織を微細化する。Mgと複合で添加することでさらにその効果は向上する。この効果が発揮されるのは0.005%以上であるのでこれを下限とした。しかし、0.5%を越えて添加した場合は製造性、加工性およびスラブの耐置き割れ性を低下させるので、これを上限とした。
【0021】
N:NはTi窒化物を形成して凝固核となり、鋳造組織および溶接金属組織を微細化する。この効果が発揮されるのは0.001%以上でありこれを下限とした。また、多量に添加すると硬化して加工性を損ね、また靱性も低下するため、0.1%を上限とした。
また、本発明では、普通鋼の成分として、上記共通成分に加えて、以下の成分の含有量を規定する。
【0022】
C:Cは強度を大きく上昇させる元素として、0.001%以上添加する。また、多量に添加すると加工性、靱性、耐食性が著しく低下するので0.1%を上限とした。
Mn:Mnは脱酸元素として添加するが、0.01%未満では効果が十分でなく、一方、2.0%を越えて添加すると加工性が低下するので0.01〜2.0%に限定した。
【0023】
Si:Siは脱酸元素として添加するが、多すぎると靱性が劣化するため、上限を0.4%とした。
P、S:PおよびSは、本発明において不純物元素であり、いずれも0.02%以下とする。PおよびSの低減は鋳片の中心偏析の軽減を通じて機械的特性を改善する。
【0024】
また、本発明では、オーステナイト系ステンレス鋼の成分として、上記共通成分に加えて、以下の成分の含有量を規定する。
C:Cは耐食性、特に溶接金属および溶接熱影響部の耐食性に有害であるが、強度の観点からある程度の含有が必要であるため、0.001%以上添加する。また、0.1%超では加工性、靱性が著しく低下するとともに、溶接のままの状態および再熱を受けるとCrなどと結合し、これらの領域の耐食性を著しく劣化させる。
【0025】
Si:Siは脱酸元素として添加されるが、0.01%未満ではその効果が十分でなく、一方、1.5%超ではフェライト相の延性低下に伴い、靱性が大きく低下するとともに、溶接時の溶融溶込みも減少し、実用溶接上の問題になる。したがって、0.01〜1.5%に限定した。
Mn:Mnは脱酸元素として添加するが、0.01%未満では効果が十分でなく、一方、2.0%を越えて添加すると加工性が低下するので0.01〜2.0%に限定した。
【0026】
Cr:Crはオーステナイト系ステンレス鋼の主要元素であり、耐食性に寄与する。10.5%未満では十分な耐食性が得られないため、10.5%を下限とした。
Ni:Niはオーステナイト系ステンレス鋼の主要元素であり、オーステナイト相を生成・安定にする。本発明におけるステンレス鋼は、主な相がオーステナイト相からなる鋼であり、Crを10.5%以上に限定した場合、Niは4.0%以上の添加が相バランスの観点から必要であるため、4.0%を下限とした。
【0027】
Mo:Moは特に塩化物環境での耐食性を向上させる元素であるが、6.5%を越えるとシグマ相など脆い金属間化合物を生成して靱性が低下するため、6.5%を上限とした。
P:Pは多量に存在すると凝固時の耐高温割れ性および靱性を低下させるので少ない方が望ましく、0.03%を上限とした。
【0028】
S:Sも多量に存在すると耐高温割れ性、熱間加工性、延性および耐食性を低下させるので少ない方が望ましく、0.01%を上限とした。
Cu:Cuは強度と耐食性を高めるのに顕著な効果があり、また、靱性を確保するためのオーステナイト生成元素として0.1%以上添加されるが、2.0%を越えて添加してもその効果は飽和するので、0.1〜2.0%に限定した。
【0029】
Nb:NbはCと結合してCr炭化物の析出を抑え、耐食性を向上させる。0.01%以上の添加が有効であるが、0.5%超の添加は延性、靱性を低下させる。
本発明は、上記のように普通鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼の成分を規定することにより、凝固過程での組織の等軸晶化及び微細化が可能となるため、従来のような凝固後の冷却や再加熱−熱間圧延、冷間圧延の条件を厳格に規定しなくても、普通鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼の何れについても、それらの鋳片及び熱延鋼板、冷延鋼板の靱性や加工性が向上し、オーステナイト系ステンレス鋼については、加えて鋼板表面凹凸(ローピング)が抑制でき、圧延工程の省略及びその条件の緩和ができるという顕著な効果が得られるものである。
【0030】
また、本発明では、上記のように成分を規定した普通鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼を溶接後の溶接金属の凝固過程においても同様に組織の等軸晶化及び微細化がなされるため、溶接部の靱性が優れた普通鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼の溶接継ぎ手が得られるという効果も併せて得られるものである。
【0031】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。
(実施例1)
表1に示す化学組成の鋼を溶製し、鋳片組織を観察して、等軸晶率および結晶粒径を測定した。次いで、鋳片よりシャルピー試験片と8mmφの引張試験片を採取し、シャルピー試験および1000℃で引張試験を行った。また、これら鋳片を通常の条件で熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を行い、板厚3.0mmの鋼板を作製した後、これらの鋼板をTIG突き合わせ溶接し、溶接部の組織観察およびシャルピー衝撃試験を行った。表2に、組織観察結果、シャルピー衝撃試験結果および熱間絞り試験結果を示す。
【0032】
なお、表1における凝固モードは、フェライト単相で凝固が完了するものをF、初晶フェライト+オーステナイトの二相で凝固が完了するものをFAで示す。また、表2の結晶粒径では、フェライトおよびオーステナイトの結晶粒径がともに50μm 以下で、かつ、等軸晶率が90%以上のものを○、それ以外の組織は×とした。シャルピー衝撃試験の評価は、遷移温度が0℃以下のものを○とした。また、熱間絞り試験の評価は、1000℃の引張試験において、試験前の外径と試験後破断部の径から絞り値を算出し、絞り値が60%以上のものを○とした。
【0033】
本発明鋼は、比較鋼に比べ、鋳片および溶接部は結晶粒が微細化しており、それにより靱性および熱間加工性が著しく優れている。
【0034】
【表1】
Figure 0004357080
【0035】
【表2】
Figure 0004357080
【0036】
(実施例2)
表3に示す化学組成のステンレス鋼を溶製し、鋳片組織を観察して、等軸晶率および結晶粒径を測定した。次いで、鋳片よりシャルピー試験片と8mmφの引張試験片を採取し、シャルピー試験および1000℃で引張試験を行った。また、これら鋳片を酸洗後、通常の条件で熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を行い、板厚0.4〜3.0mmの鋼板を作製し、鋼板およびそれを90゜曲げ加工した材料の表面特性を調査した。さらに、これらの鋼板をTIG突き合わせ溶接し、溶接部の組織観察およびシャルピー衝撃試験を行った。表4に、組織観察結果、シャルピー衝撃試験結果、熱間絞り試験結果および表面特性調査結果を示す。
【0037】
なお、表3における凝固モードは、フェライト単相で凝固が完了するものをF、初晶フェライト+オーステナイトの二相で凝固が完了するものをFAで示す。また、表4の結晶粒径では、フェライトおよびオーステナイトの結晶粒径がともに50μm 以下で、かつ、等軸晶率が90%以上のものを○、それ以外の組織は×とした。シャルピー衝撃試験の評価は、遷移温度が0℃以下のものを○とした。また、熱間絞り試験の評価は、1000℃の引張試験において、試験前の外径と試験後破断部の径から絞り値を算出し、絞り値が60%以上のものを○とした。鋼板の曲げ加工方法は、JIS−Z−2248の押曲げ法に準拠し、曲げ角度を90゜とした。鋼板表面特性の粗さ測定は、触針2μm の二次元粗さ計を用い、表面特性の評価は、目視では凹凸は認められないが、粗度を測定すると若干凹凸がある場合までを○とした。
【0038】
本発明鋼は、比較鋼に比べ、鋳片および溶接部は結晶粒が微細化しており、それにより靱性、熱間加工性および表面特性が著しく優れている。
【0039】
【表3】
Figure 0004357080
【0040】
【表4】
Figure 0004357080
【0041】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は、鋳造(凝固)条件を限定せず、成分のみを規定して鋳片組織および溶接金属組織を微細化し、それにより鋳片の熱間加工性、靱性、およびステンレス鋼板の表面性状は大幅に改善される。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.001〜0.1%、Mn:0.01〜2.0%、Al:0.002〜0.05%、Mg:0.0026〜0.01%、Ti:0.005〜0.5%、N:0.001〜0.1%を含有し、さらに、Si:0.4%以下、P:0.02%以下、S:0.02%以下に制限し、かつ、C+0.015×Mn≦0.09およびTi×N≧0.00003を満たし、残部鉄および不可避的不純物よりなることを特徴とする凝固結晶粒微細化鋼。
  2. 質量%で、C:0.001〜0.1%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.01〜2.0%、Cr:10.5%以上、Ni:4.0%以上、Mo:6.5%以下、Al:0.002〜0.05%、Mg:0.0005〜0.01%、Ti:0.005〜0.5%、N:0.001〜0.1%を含有し、さらに、P:0.03%以下、S:0.01%以下に制限し、かつ、0.73×Cr当量−Ni当量≧4.4及びTi×N≧0.0005を満たし、残部鉄および不可避的不純物よりなることを特徴とする凝固結晶粒微細化オーステナイト系ステンレス鋼。
    但し、Cr当量=Cr+Mo+1.5×Si
    Ni当量=Ni+0.5×Mn+30×C
  3. さらに、質量%で、Cu:0.1〜2.0%、Nb:0.01〜0.5%の少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項2に記載の凝固結晶粒微細化オーステナイト系ステンレス鋼。
  4. 前記凝固結晶粒微細化鋼を溶接材料に用いずにTIG突き合わせ溶接することを特徴とする請求項1記載の凝固結晶粒微細化鋼の溶接継ぎ手。
  5. 前記凝固結晶粒微細化オーステナイト系ステンレス鋼を溶接材料を用いずにTIG突き合わせ溶接することを特徴とする請求項2または3の何れかに記載の凝固結晶粒微細化オーステナイト系ステンレス鋼の溶接継ぎ手。
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