JP6236852B2 - レーザ溶接方法及び溶接継手 - Google Patents
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Description
(1)2枚以上の鋼板を重ね合わせ、その重ね合わせ部端部に沿って当該重ね合わせ部を貫通する溶接部を形成するようにレーザ溶接する方法であって、
前記溶接部の溶融金属中のTi含有量を0.02%超とし、
溶接ガスとしてN2含有ガスを用い、
前記溶接部に等軸晶が形成されるように溶接し、
溶接時の凝固割れを防止すること
を特徴とする鋼材のレーザ溶接方法。
(2)前記溶接ガスとして、ガス流量が30L/min以上のN 2 含有ガスを用いることを特徴とする(1)項に記載の鋼材のレーザ溶接方法。
ただし、tは、前記溶接部の溶接方向と直交する断面において、柱状晶が会合する位置における溶接金属部厚さ(mm)であり、a1、a2 は前記断面において前記溶接部の柱状晶が会合する位置における前記等軸晶の生成厚さ(mm)である。
前記溶接部の溶融金属中のTi含有量は0.02%超であり、
前記溶接部に等軸晶が形成されるように溶接され、
溶接時の凝固割れのないこと
を特徴とする溶接継手。
ただし、tは、前記溶接部の溶接方向と直交する断面において、柱状晶が会合する位置における溶接金属部厚さ(mm)であり、a1、a2 は前記断面において前記溶接部の柱状晶が会合する位置における前記等軸晶の生成厚さ(mm)である。
図8は、D材の別の溶接例で、凝固割れが生じた部分の状況を観察した写真である。凝固割れの中に部分的に等軸晶が生じている部分があり、この部分では凝固割れが止まっており、等軸晶により凝固割れが抑制出来ることを確認した。
溶接部の溶融金属中のTi含有量を0.02%以上とし、
溶接ガスとしてN2含有ガスを用い、
溶接部(溶融池)に等軸晶が形成されるように溶接し、
溶接時の凝固割れを防止する
ことを最大の特徴とする。
溶融金属中のTiは、等軸晶形成の核となるTiNを形成するための必須元素である。溶接金属中でのTi含有量はTi≧0.02%とする。好ましくは、0.03%以上より好ましくは0.05%以上である。一方で、Tiは高価な元素なので、過剰に添加するとコストアップにつながる。また、凝固割れ抑制の効果は、0.3%以上含有させても飽和する。
本発明の溶接方法では、溶接ガス(シールドガス)として、N2含有ガスを使用する。一般的には、鋼材をN2含有雰囲気中で溶接すると、ブローホールの発生が懸念されている。そのため、N含有ステンレス鋼といった特殊な鋼材の溶接でない限り、N2(又はその含有ガス)が鋼材用の溶接ガスとして用いられることは通常なく、軟鋼や高強度鋼用の溶接ガスとしてはアルゴン等が一般的に用いられる。しかしながら、本発明では、溶接凝固割れを抑制するために前述したTiNの形成の観点から、N2単体又はアルゴン等にN2を混合したガスを溶接ガスとして用いる。また、前述の事前検討や後述の各実施例ではブローホールは生じておらず、実際問題としてのブローホールの懸念は小さいと思われる。
本発明においては、溶接部(溶融池)に等軸晶を形成する。前述の通り、レーザ溶接部の凝固組織は柱状晶であって等軸晶の観察例は知られていなかったが、本発明においては、溶接部(溶融池)に等軸晶を形成する。好ましくは、以下に説明される等軸晶率が、20%以上であり、40%以上であることがさらに望ましい。
t:柱状晶が会合する位置における溶接金属部厚さ
a1、a2:前記溶接部の柱状晶が会合する位置における等軸晶の生成厚さ(mm)
本発明に係る溶接継手は、典型的には、前述したレーザ溶接方法によって、重ね合わせた2枚以上の鋼板を重ね合わせ端部に沿って、溶接部が形成されているのが好ましい。溶接部の位置は、端部が溶接時の熱で溶け落ちない範囲で、できるだけ重ね合わせ端部に近いほど、鋼材重量の低減、歩留まりの向上につながる。より具体的な形状としては、従来技術では困難であった、重ね合わせた鋼板の端部から4.0mm未満の位置に溶接部が形成されているのが好ましく、より好ましくは2.5mm未満である。後述する実施例で示すように、例えば端部から1.5mmの位置で溶接部が形成されていても凝固割れが生じない。
次に、本発明の好適範囲について説明する。
本発明においては、溶接金属中の成分及びその含有量は、Tiを除き必ずしも限定されない。そのような成分については、好適範囲を記載することとする。
C:本発明は、上述した凝固割れの解決を主たる目的とする。C含有量が0.05%未満の低C領域ではもともと凝固割れが生じ難いので本発明を適用するメリットはあまりない。これとは逆に、本発明は、凝固割れの生じ易いC含有量が0.05%以上の場合に有用であり、特に0.07%〜0.25%の場合に非常に有用である。
Si:高強度鋼を得るうえで有用な添加元素であると同時に、Tiの活量に及ぼす相互作用助係数が大きい(Tiに対する相互作用助係数として、1.43との報告あり)ので、前述したTiNの形成に有効である。したがって、好適な含有量は、他の成分との組み合わせにもよる。
Mn:Mnは、高強度鋼を得るうえで有用な成分である半面、Tiの活量をわずかながら低下させる(Tiに対する相互作用係数として、−0.043との報告あり)。そのため、Mnは3.0%以下、好ましくは2.5%以下が好ましい。
P,S:P,Sは、含有によって前述したように凝固割れの割れ感受性を高めてしまうので、低いほどよい。目安としては、P,Sの合計量で、0.03%以下、より好ましくはいずれの元素も0.01%以下であるのがよい。
N:Nは、等軸晶の形成に寄与するTiNの生成に必要な元素であるが、等軸晶が形成されて凝固割れが抑制される程度の量であればよく、溶接金属中の含有量は特に限定されない。また、Nは、溶接前の鋼板中に含まれていてもよいし、前述したようにN2含有ガスを溶接ガスとして用いる場合等は溶接前の鋼にほとんど含まれていなくても構わない。
(A)0.05%≦C≦0.07%、P+S<0.03%、Ti≧0.03%
(B)0.07%<C≦0.25%、P+S<0.03%、Mn≦1.8%、Ti>0.02%
(C)0.07%<C≦0.25%、P+S<0.03%、1.8≦Mn、Ti>0.02%、0.053%≧Ti含有量+0.067×Si含有量、又は
(D)0.25%≦C≦0.7%、P+S<0.03%、Ti≧0.02
これら以外にも、本発明の効果が発揮される範囲において、他の成分が含まれていてもよい。
前述の事例及び後述の実施例では、板厚1.2mm同士の2枚重ね溶接における事例を用いて説明したが、いうまでもなく、本発明の効果は、薄板の重ね溶接継手に適用可能で、具体的には、板厚0.5mm以上の鋼板を用いた等厚もしくは差厚の2、3枚など複数枚重ね継手のフランジ端部の溶接時に有効である。一般的に使用される自動車用鋼板の板厚は0.5mm以上である。また、自動車組立溶接に用いられるレーザ溶接機の出力(4kW程度)を考慮すると、各々の鋼板の厚さは3.2mm以下、重ね合わせた複数枚の鋼板の合計板厚は、4.0mm以下であることが望ましい。
(5)−3 レーザ溶接条件
用いるレーザ光の種類に限定されることなく、いわゆる、CO2レーザ、ファイバーレーザ、DISKレーザなどのあらゆるレーザ光を用いた薄鋼板の重ね合わせ溶接に適用可能である。
表2に示す成分の鋼板(板厚1.4mm)を用いて、前述の検討例(模式図は図4)と同様に二枚重ね溶接板組における割れ発生状況を調査した。溶接ガスとしては、Arガス又はN2ガスを使用し、N2ガスは10〜30L/minの範囲で調整した。
結果を図9にグラフで示す。
表3に示す成分、板厚の鋼板を用いて、前述の事例及び実施例1と同様に二枚重ね溶接板組における割れ発生状況を調査した。なお、この時のレーザ溶接の狙い位置は、フランジの端部からの距離が1.5mm〜4.5mmとし、◎:1.5mmで凝固割れなし、×:割れ発生(溶接金属中央部の板厚方向全長で割れ)、○:割れ改善(溶接金属中央部の板厚方向の一部のみで割れ)と評価した。溶接ガスとしてArガスを用いた。溶接金属の化学成分は、溶接される二枚の鋼板の成分の平均値である。
図11(b)は,等軸晶率と図4に示す手法で評価した割れが発生しない限界フランジ端距離との関係を示すグラフである。
供試材として、1.2mmもしくは1.4mmのC、Si、Mn、Tiの含有量が異なる平鋼板を端部が揃うように重ね合わせ、レーザ溶接した。
1a ハット型パネル
1b クロージングプレート
1c フランジ部
3 溶接部
4a、4b スポット電極
Claims (11)
- 2枚以上の鋼板を重ね合わせ、その重ね合わせ部端部に沿って当該重ね合わせ部を貫通する溶接部を形成するようにレーザ溶接する方法であって、
前記溶接部の溶融金属中のTi含有量を0.02質量%超とし、
溶接ガスとしてN2含有ガスを用い、
前記溶接部に等軸晶が形成されるように溶接し、
溶接時の凝固割れを防止すること
を特徴とする鋼材のレーザ溶接方法。 - 前記溶接ガスとして、ガス流量が30L/min以上のN 2 含有ガスを用いることを特徴とする請求項1に記載の鋼材のレーザ溶接方法。
- 下記(1)式により規定される等軸晶率が20%以上である請求項1または請求項2に記載のレーザ溶接方法。
等軸晶率={(a1+a2)/t}×100(%)・・・(1)
ただし、tは、前記溶接部の溶接方向と直交する断面において、柱状晶が会合する位置における溶接金属部厚さ(mm)であり、a1、a2は前記断面において前記溶接部の柱状晶が会合する位置における前記等軸晶の生成厚さ(mm)である。 - 前記溶接部を、前記重ね合わせ部の端部から1.5mm以上4.5mm以下の位置に形成する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のレーザ溶接方法。
- 前記重ね合わせ部の幅が8mm以内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のレーザ溶接方法。
- 前記溶接金属が、質量%で、C:0.07〜0.25%、Mn≧1.8%、Ti>0.02%、Ti+0.067×Si%≦0.053%の化学成分を有する請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のレーザ溶接方法。
- 2枚以上の鋼板が重ね合わされ、溶接ガスとしてN 2 含有ガスを用いるレーザ溶接によって、前記重ね合わせ部端部に沿って当該重ね合わせ部を貫通する溶接部が形成された溶接継手であって、
前記溶接部の溶融金属中のTi含有量は0.02質量%超であり、
前記溶接部に等軸晶が形成されるように溶接され、
溶接時の凝固割れのないこと
を特徴とする溶接継手。 - 下記(1)式により規定される等軸晶率が20%以上である、請求項7に記載の溶接継手。
等軸晶率={(a1+a2)/t}×100(%)・・・(1)
ただし、tは、前記溶接部の溶接方向と直交する断面において、柱状晶が会合する位置における溶接金属部厚さ(mm)であり、a1、a2は前記断面において前記溶接部の柱状晶が会合する位置における前記等軸晶の生成厚さ(mm)である。 - 前記溶接部が、前記重ね合わせ部の端部から1.5mm以上4.5mm以下の位置に形成されている請求項7又は請求項8に記載の溶接継手。
- 前記重ね合わせ部の幅が8mm以内である請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載の溶接継手。
- 前記溶接金属が、質量%で、C:0.07〜0.25%、Mn≧1.8%、Ti>0.02%、Ti+0.067×Si%≦0.053%の化学成分を有する請求項7から請求項10までのいずれか1項に記載の溶接継手。
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