JP6885088B2 - 溶接継手を有する鋼部材及びその製造方法 - Google Patents
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特開2010−089138号公報(特許文献1)には、複数枚の亜鉛めっき鋼板を、添加物を介して重ね合わせ、光線で加熱することにより、めっき中の亜鉛を沸点の高い亜鉛化合物とすることで、欠陥の原因となる亜鉛蒸気の発生量を低減させる手法が開示されている。
特許文献3の方法では、隙間調整工程として、溶接工程前に鋼板に対して屈曲用の光線を用いた熱処理を行う必要がある。このため、加工時間が増大するという問題がある。
少なくとも1枚の亜鉛めっき鋼板を含み、重ね合わされた複数の鋼板と、該複数の鋼板を重ね方向に柱状に貫通した、重ね方向から見て点状に存在する溶接金属とよりなり、該溶接金属により前記複数の鋼板が互いに溶接されている溶接継手を有する鋼部材であって、
前記溶接金属の重ね方向の端面は、鋼板表面に対して凹部を形成しており、かつ、一方の端面の面積は、他方の端面の面積よりも大きくなっており、
重ね合わされた複数の鋼板の最も外側に位置する鋼板のうち、前記溶接金属の端面の面積が大きい側の鋼板は1.0mm以下の厚さを有するものであり、かつ、該1.0mm以下の厚さを有する鋼板と重ねられる鋼板の間に亜鉛めっき層が存在しており、
さらに、前記溶接金属中のS含有量が0.0045質量%以下であることを特徴とする。
(2)上記(1)に記載の溶接継手を有する鋼部材は、好ましくは、前記溶接金属は円柱状であることを特徴とする。
(3)上記(1)又は(2)に記載の溶接継手を有する鋼部材は、好ましくは、前記溶接金属の端面の面積が大きい側の端面の面積は、5mm 2 以上100mm 2 以下であることを特徴とする。
少なくとも1枚の亜鉛めっき鋼板を含む複数の鋼板を重ね合わせ、この重ね合わせた鋼板を、重ね合わせ方向から加熱し、重ね合わせた複数の鋼板を貫通する柱状の溶接金属を重ね方向から見て点状に形成し、重ね合わせた鋼板を溶融溶接する上記(1)に記載の溶接継手を有する鋼部材の製造方法であって、
前記鋼板として、加熱用の熱源に面して配置される1.0mm以下の厚さを有する鋼板を含み、かつ、該1.0mm以下の厚さを有する鋼板と重ねられる鋼板の間に亜鉛めっき層が存在しており、
さらに、重ね合わせる鋼板の組み合わせによって、前記溶接金属のS含有量を0.0045質量%以下とすることを特徴とする。
以下、溶接継手について説明する。
図1を参照して、この溶接継手1は、重ね合わされた鋼板21〜22と、溶融溶接法で形成される柱状の溶接金属3とを備える。また、鋼板21および22の間には、溶接前に鋼板を重ね合わせたときに生じる隙間4を有していてもよい。
鋼板21と22のいずれか、もしくは両方が亜鉛めっき鋼板であり、少なくとも重ね面には亜鉛めっき層5が存在する。なお、図1では、鋼板22が亜鉛めっき鋼板の例を示す。
なお、鋼板21の厚さが1.0mmを超える場合で、かつ、隙間4が0〜1.0mmと小さければ、溶け落ち欠陥はあまり問題にならない。
この時、溶接金属3の重ね方向の端面6は、鋼板表面に対して凹部を形成しており、かつ、溶融溶接用の加熱源に面する側の鋼板21は、他側の鋼板22より広い面積で溶融するため、鋼板21における溶接金属の端面の面積は、鋼板22における溶接金属の端面の面積よりも大きくなっている。
大きい方の端面の面積は、継手強度を確保する観点から、5〜100mm2の範囲が好ましく、さらに10〜80mm2の範囲がより好ましい。
溶接金属中のSは低いほど好ましい。しかしながら、Sを低減するには製造コストがかかるため、溶接金属中のSの含有量の下限は、好ましくは0.0005質量%、さらに好ましくは0.0008質量%である。
溶接金属中のS量の調整は、被溶接材の母材のS量で調整すればよく、重ね合わせる各母材の板厚とS含有量から溶接金属のSの含有量が0.0045質量%以下となる組み合わせを選択する。
以下、溶接継手1の製造方法を説明する。
鋼板21〜22を互いに重ね合わせる。より具体的には、熱源に面する鋼板21を上側、鋼板22を下側に配置し、治具を用いて、鋼板21〜22を重ね合わせる。このとき、プレス精度の問題から、隙間4が形成されてしまう場合がある。
接合方法は、溶融溶接法であればいずれでもかまわないが、以下は高パワー密度の光線による溶接をもとに説明する。
光線による溶接は、固体などの媒体を用いた発振器より照射される高パワー密度の光線の照射装置(図示せず)を用いて行う。光線による溶接は、鋼板21の外表面に対して行う。より具体的には、鋼板21の上方から、鋼板21の外表面の所定の領域内に溶接用光線を照射する。これにより、鋼板21〜22において、溶接用光線の照射された部分が溶融する。その結果、図1(a)、(b)に示すように、溶接金属3が柱状(通常は円柱状)に形成される。溶接金属3は、鋼板21〜22を貫通し、鋼板21〜22を接合する。
溶接用光線の照射方向は、鉛直方向の下向きに限らず、鋼板の配置位置などに応じて上方向、横方法など、あらゆる方向であってもよい。
以上により、溶接継手1が形成される。
本発明者らは、少なくとも1枚の亜鉛めっき鋼板を含む複数の鋼板を重ね合わせて溶融溶接を行う場合、蒸気化された亜鉛による溶接金属の欠陥の発生頻度が鋼板の化学成分に依存することを見出した。
本発明の実施形態による溶接継手1では、2枚の鋼板21〜22を用いたが、この2枚の鋼板に限らず、3枚以上の鋼板を含む溶接継手であってもよい。また、鋼板は、溶接継手を形成する部分が重ね合わされる形状であればよく、鋼板からプレス成形された部材を含むものである。
また、亜鉛めっき鋼板についても、亜鉛を主体としためっきを施した鋼板であれば、特定のめっき組成や母材組成に限定されるものではなく、例えば、自動車用鋼板として用いられている合金化溶融亜鉛めっき鋼板のほか、一般的なプレス加工用溶融亜鉛めっき鋼板などがあげられる。
また、上板には厚み:0.7mmの、下板には厚み:1.4mmの鋼板を用いた。
これにより、重ね方向端面が円形状の溶接金属を形成した。溶接金属の上板側と下板側の端面は、いずれも凹状を呈しており、上板側端面の表面積は下板側の端面の表面積よりも大きかった。
表1に示すように、試料番号1〜6では、溶接金属における欠陥の発生個数が15個以下となり、欠陥の発生個数が少なかった。
21、22:鋼板
3:溶接金属
4:隙間
5:亜鉛めっき層
6:溶接金属の端面
Claims (4)
- 少なくとも1枚の亜鉛めっき鋼板を含み、重ね合わされた複数の鋼板と、該複数の鋼板を重ね方向に柱状に貫通した、重ね方向から見て点状に存在する溶接金属とよりなり、該溶接金属により前記複数の鋼板が互いに溶接されている溶接継手を有する鋼部材であって、
前記溶接金属の重ね方向の端面は、鋼板表面に対して凹部を形成しており、かつ、一方の端面の面積は、他方の端面の面積よりも大きくなっており、
重ね合わされた複数の鋼板の最も外側に位置する鋼板のうち、前記溶接金属の端面の面積が大きい側の鋼板は1.0mm以下の厚さを有するものであり、かつ、該1.0mm以下の厚さを有する鋼板と重ねられる鋼板の間に亜鉛めっき層が存在しており、
さらに、前記溶接金属中のS含有量が0.0045質量%以下であることを特徴とする鋼部材。 - 前記溶接金属は円柱状であることを特徴とする請求項1に記載の鋼部材。
- 前記溶接金属の端面の面積が大きい側の端面の面積は、5mm 2 以上100mm 2 以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼部材。
- 少なくとも1枚の亜鉛めっき鋼板を含む複数の鋼板を重ね合わせ、この重ね合わせた鋼板を、重ね合わせ方向から加熱し、重ね合わせた複数の鋼板を貫通する柱状の溶接金属を重ね方向から見て点状に形成し、重ね合わせた鋼板を溶融溶接する請求項1に記載の溶接継手を有する鋼部材の製造方法であって、
前記鋼板として、加熱用の熱源に面して配置される1.0mm以下の厚さを有する鋼板を含み、かつ、該1.0mm以下の厚さを有する鋼板と重ねられる鋼板の間に亜鉛めっき層が存在しており、
さらに、重ね合わせる鋼板の組み合わせによって、前記溶接金属のS含有量を0.0045質量%以下とすることを特徴とする鋼部材の製造方法。
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